湧々堂HOME 新譜速報: 交響曲 管弦楽曲 協奏曲 器楽曲 室内楽 声楽曲 オペラ バロック 廉価盤 シリーズもの マニア向け  
殿堂入り:交響曲 管弦楽 協奏曲 器楽曲 室内楽 声楽曲 オペラ バロック SALE!! レーベル・カタログ チャイ5



H.M.F
HARMONIA MUNDI FRANCE
(フランス)


HAF-*****
HMA-*****(Musique d'Abord シリーズ)※別ぺージ
HMC-*****(レギュラー・シリーズ)
HMD、HMDVD-*****(DVD、Bluray)
HMG-*****(HM GOLD シリーズ)
HMI - *****(イベリカ企画)
HML-*****
HMM-*****
HMN-*****(新人演奏家シリーズ)
HMO-******(マルセル・ペレス&アンサンブル・オルガヌム・シリーズ )
HMU-*****(USA企画)
HMX-*****(限定盤)
HMW-*****(イギリス企画)
HMY-*****(オペラ&声楽作品の特価品)
HMX-*****
HCX -*****(USA廉価盤)
HAF-*****(ウィリアム・クリスティ・シリーズ)
HMSA-*****(SACD・シングルレイヤー)
その他の規格


*「単価=¥0」と表示されるアイテムは廃盤です。

※表示価格は全て税込み。品番結尾に特に表記のないものは全て1CDです。
HAF-*****
品番 内容 演奏者
HAF-8901123
ミシェル・ランベール(c.1610-1696):エール・ド・クール集
1. Tout l’univers obeit a l’Amour(全世界は愛にひれ伏す)
2. Ombre de mon amant(私の愛しい人を隠しておくれ)
3. C’en est fait, belle Iris(いとしいイリスよ、もう終わったのだ)
4. Je suis ayme de celle que j’adore(私は私の敬愛する人に愛されている)
5. Il faut mourir plutost que de changer (変わるより死んだほうがましだ)
6. Le repos, l’ombre, le silence(休止、木陰、静寂)
7. D’un feu secret je me sens consume(私は秘めた炎に飲み込まれたようだ)
8. Trouver sur l’herbette(やわらかな葉の上で見つけるために)
9. Par mes chants tristes et touchants(悲しくも感動的な私の歌によって)
10. Ah ! qui voudra desormais s’engager (誰が彼に誓うのか?)
11. Iris n’est plus, mon Iris m’est ravie (イリスはもはや)
12. Pour vos beaux yeux, Iris(その美しい瞳のために、イリスよ)
13. Admirons notre jeune et charmante Deesse (若くて魅力的な女神をほめたたえよう)
14. Ma bergere est tendre et fidelle(私のいとしい羊飼いはやさしく誠実だ)
レザール・フロリサン、
ウィリアム・クリスティ(指)

録音:1983年4月
1689年、79歳の時にランベールがルイ14世のために出版・献呈した60の歌曲のコレクションは、いわば当時大流行していた「エール(エア、アリ ア)」の決定打ともいえるものでした。ランベールは、歌手、テオルボ奏者、そして作曲家として当時絶大な名声を得て活躍した作曲家の一人。「1979年に アンサンブル「レザール・フロリサン」を結成したとき、バロックのレパートリーを再び人気のあるものにするための戦いを、コンサートホールだけでなく、‘録 音’ という素晴らしい魅惑の武器を使って行いたいと思っていました。」とはクリスティの言葉ですが、まさにこの録音は、クリスティが世にその作品の真価を 問うたフランス・バロック作品録音の渾身の1枚ともいえる名録音です。声楽陣には、ドミニク・ヴィスも名を連ね、また器楽陣もダニエル・キュイエやコン ラート・ユングヘーネルら、錚々たる顔ぶれ。
HAF-8901471
ギョーム・ブジニャック(c.1587-c.1642):テ・デウム、モテット集
1. Ecce festivitas amoris(愛の祭典の日を見よ)(合唱および独唱)
2. Ecce homo(この人を見よ)(合唱および独唱)
3. Unus ex vobis(あなたがたのうちの一人が私を裏切るだろう)(合唱および独唱)
4. In pace, in idipsum(平和のうちに私は) (合唱および独唱)
5. Ha ! Plange(ああ!嘆くがよい)(合唱)
6. Vulnerasti cor meum(私の心を喜ばせたが)(四重唱)
7. Alleluia, venite amici(アレルヤ!友よ、来て下さい)(Choeur)
8. Flos in flores [器楽曲](ヴィオール・アンサンブル)
9. O Mors, ero mors tua(おお死よ)(合唱)
10. Clamant clavi(釘が鳴く棘が鳴く)(合唱および独唱)
11. Ecce Aurora(暁を見よ)(合唱および独唱)
12. Dum silentium(あらゆるものが静寂のうちに)(合唱および独唱)
13. Jubilate Deo(神に向かって喜び歌え)(合唱および独唱)
14. Salve, Jesu piissime(イエスをたたえよ!)(合唱および独唱)
15. Ave Maria(アヴェ・マリア)(合唱および独唱)
16. Tota pulchra es(汝は万物の美)(四重唱)
17.テ・デウム(合唱および独唱)
レザール・フロリサン(声楽・器楽)、
ウィリアム・クリスティ(指)

録音:1993年4月
ブジニャックは、16世紀末に生まれ、17世紀前半に活動した音楽家。その音楽は、250年以上歴史に埋もれ、発掘されてからもなお50年ほどは事実 上無視されていました。彼は宮廷や教会には仕えず、また、当時彼の楽譜が出版もされていなかったからです。しかしその作品は、大バッハに勝るとも劣ら ぬ迫力の作品。たとえば受難のシーンをモテットに仕立てた作品(トラック2)では、ピラトと群衆のやりとりが音楽で再現されたいわば「対話」のスタイル によっています。磔刑のシーンの、群衆とピラトとのやりとりがソロと合唱で繰り広げられるのですが、バッハ以前にこのようなものが書かれていたのかと驚 かされます。それにほかにも、リトルネッロのスタイルを用いて書かれたJubilate Deoなど、こんな作品があったのかと驚かされることの連続。クリスティ が率いるレザール・フロリサンのやわらかな声楽がまた見事。器楽陣には、フィリップ・ピエルロ、上村かおり、ジェローム・アンタイ、ケネス・ヴァイスといっ た錚々たるメンバーが名を連ねております。
HAF-8901507
ヘンデル:合奏協奏曲 op.6
第1番ト長調 HWV 319、第2番ヘ長調 HWV 320、第6番 ト短調 HWV 324、
第7番変ロ長調 BWV 325、第10番ニ短調 BWV 328
レザール・フロリサン、
ウィリアム・クリスティ(指)
(コンサートマスター:ヒロ・クロサキ)

録音:1994年2月
レザール・フロリサンによるヘンデルの合奏協奏曲op.6の復活!典雅な雰囲気と、溢れる音楽への喜びに満ちた、聴いていて実に幸せになる1枚です。 ヘンデルの時代、合奏協奏曲は大流行のジャンルでしたが、やはりその中でもヘンデルの作品はひときわ輝きを放っているといえるでしょう。フランス風序曲(第 10番冒頭)、リュリ風の舞曲(第6番、第10番)など多様なスタイルをさらりと書いています。もちろんイタリア風の要素が強く感じられる楽章も多く、ヘ ンデルの変幻自在の才が遺憾なく発揮されています。 (Ki)
HAF-8905309(2CD)
ジェズアルド(1566-1613):マドリガーレ集vol.2
CD1:第3集(フェッラーラ,1595)
CD2:第4集(フェッラーラ,1596)
ポール・アグニュー(指)
レザール・フロリサン
ミリアム・アレン(S)
ハンナ・モリソン(S)
ルシール・リシャード(C.A)
ショーン・クレイトン(T)
ポール・アグニュー(T)
エドワード・グリント(Bs)
レザール・フロリサンの共同指揮者、ポール・アグニューによる、ジェズアルドのマドリガーレ集第2弾です。 ジェズアルドは、1560 年頃イタリア・ナポリ王国の名門貴族として生まれ、イタリア・マドリガーレの最後を飾る作曲家です。ジェズアルドが 20 歳の頃に結婚、 しかし不義の妻と愛人を殺害し、このことが彼の人生に暗い影をおとします。ジェズアルドは、1594年(28歳頃)再婚のためにフェッラーラに赴きます。彼 の地フェッラーラは、宮廷で活躍していたルッツァスコ・ルッツァスキの影響でマドリガーレが盛んであり、ジェズアルドはこの街で生気を取り戻し、立て続けに 4巻のマドリガーレ集を出版しました。これらの曲集は、当時の様式に則りながらも、彼らしい激しい感情表現を、半音階的進行や不協和音など大胆な和声を 駆使した作品で、同時期のモンテヴェルディの作品と並び16世紀末を代表するマドリガーレ集となっています。本盤では、前作(HAF-890507)に続き第3 &4集を収録しています。レザール・フロリサンの刺激的かつ美しい演奏で、聴くことができます。 (Ki)
HMF-8932622(3CD)
モンテヴェルディ:歌劇『ポッペアの戴冠』 ポッペア:ソーニャ・ヨンチェヴァ(S)
ネローネ:ケイト・リンゼイ(Ms)
オッターヴィア:ステファニー・ドゥストゥラック(Ms)
オットーネ:カルロ・ヴィストリ(C.T)
カ:レナート・ドルチーニ(Br)
ドゥルシッラ:アナ・キンタンス(S)
乳母:マルセル・ビークマン(T)
アルナルタ:ドミニク・ヴィス(C.T)
フォルトゥーナ:テマラ・バンジェセヴィッチ(S)
ヴィルトゥ:アナ・キンタンス(S)
アモーレ:レア・デァンドル(Ms)
ウィリアム・クリスティ(指揮・チェンバロ)
レザール・フロリサン

録音:2018年8月、ザルツブルク音楽祭
クリスティが「この世でもっとも素晴らしい作品のひとつ」と語るモンテヴェルディの傑作『ポッペアの戴冠』。クリスティにとって初録音の超豪華キャストによる 演奏が再登場。2018年ザルツブルク音楽祭で絶賛された演奏です。※2019年に発売されたHAF 8902622(廃盤)の再発盤。付属していたDVDはつきま せん。
独裁者ネローネが魅力的なポッペアと恋に落ち、妻(オッターヴィア)などすべての障害を取り除き、二人は結ばれるという、清く正しい者が勝つというわけでは ない非道徳的といっても過言ではないストーリーにも関わらず、その音楽があまりに素晴らしく、今なお人を引き付けてやまない魅力に満ちた『ポッペアの戴冠』。 クリスティはチェンバロを弾きながら指揮をし、軽やかでありながら、物語のドラマティックさを最大限引き出しています。器楽アンサンブルは16名、上演では、舞 台に設えられたピットに二手に分かれて配置され、重要なパートの時には立ち上がって演奏するなど、歌い手たちと同様あたかも登場人物のように演奏していま す。歌唱陣はポッペアにブルガリア出身で2010年ドミンゴ主催の「オペラリア」で優勝し世界で活躍する歌姫ソーニャ・ヨンチェヴァ。ネローネには2019年9 月にはハーディング指揮ベルリン・フィルのベルリオーズ「ロミオとジュリエット」に出演予定、さらに10月にはウィーン国立歌劇場「ナクソス島のアリアドネ」にも 作曲家役で出演予定のアメリカ出身の急上昇歌手、ケイト・リンゼイ。他にもクリスティ「声の庭」出身の歌手など、望みうる最高の歌手たちが結集しています。全 体を通して歌唱陣は抜群の安定と余裕すら感じさせ、器楽パートも文句なしの超充実の演奏。美しい通奏低音も印象に残ります。第3幕のオッターヴィアの「さら ば、ローマよ」の通奏低音と歌い手の一体感は息をのむ美しさ。 ※HAF 8902622(廃盤)の再発盤。DVDはついておりません。 (Ki)

HMC-*****
HMC-801937(2SACD)
サーリアホ(b.1952):歌劇「彼方からの愛」 ケント・ナガノ(指)
ベルリン・ドイツSO、ベルリン放送cho
ダニエル・ベルヒャー(T/ジャウフレ・リュデル)
エカテリーナ・レキーナ(S/クレメンス)
マリー=アンジュ・トドロヴィッチ(Ms/巡礼者)

録音:2006年3月(テルデックス・スタジオ)、2008年10月(バイエルン
サーリアホ初のオペラであるこの作品は、2000年ザルツブルク音楽祭でピーター・セラーズのプロダクションで初演され、絶賛されました。時代設定は中世、登場人物は、運命の人に出会うのをただひたすら待っているアキテーヌの城に住む男リュデルと、トリポリの砦に住む女クレメンス。トリポリでクレメンスが歌う、理想の恋人を思う歌を聴いた巡礼者は、長旅の後、アキテーヌへとたどり着きます。そこでリュデルの愛の歌を聴いた巡礼者は、遠く離れたこの男女二人が、まさに運命の人同士であると確信します。リュデルは、クレメンスに会うために、はるかトリポリまで船旅をしますが、途中で重大な病にかかり、トリポリに着くころには瀕死の状態でした。二人は出会い、お互いが運命の人であることを確信しますが、リュデルはクレメンスの腕の中で息絶える、という物語。かなわぬ恋に身をこがす、中世の騎士道の物語をアマン・マールフが読み直したリブレットに、サーリアホは、緻密な幻想的絵画のような、複雑な色彩のパレットを幾重にも重ねたような音楽をつけました。ケント・ナガノは、見事な明晰さをもってこの中世の音物語の世界を描きます。 (Ki)

HMC-802156
(2SACD+DVD)
バッハ:マタイ受難曲 ヴェルナー・ギューラ(福音書家/ T)
ヨハネス・ヴァイサー(キリスト/ Bs)
ソプラノ…イム・スンヘ[12,13,27a,48,49]、
 クリスティーナ・ローテルベルク[8,30]
アルト…ベルナルダ・フィンク[5,6,27a,38,39,59,60]、
 マリー=クロード・シャピュイ[51,52]
テノール…トピ・レーティプー[19,20]、
 ファビオ・トゥリュンピ[34,35]
バス=バリトン…コンスタンティン・ヴォルフ[56,57]
バス…アルットゥ・カタヤ [22,23,30,42]
ルネ・ヤーコプス(指)
RIAS室内Cho
ベルリン大聖堂Cho
ベルリン古楽アカデミー

録音:2012年 9月/テルデックス・スタジオ・ベルリン
幼い頃、ボーイ・ソプラノとして演奏に参加したことをはじめ、ヘレヴェッヘ(1984)、そしてレオンハル ト(1990)のレコーディングにもアルトとして参加、そして何度もこの作品を指揮してきたヤーコプス。まさに、満を持して世に送り出す、記念碑的録音と いえるでしょう。
「マタイ受難曲」は、2つの合唱と管弦楽のグループを持つ大規模な作品。この初演はトーマス教会で行われましたが、教会の構造や記録等を見ても、 その時は、ひとつのグループは正面の祭壇のところに、そしてもう片方のグループは、礼拝参列者の後ろの、バルコニーのようなところで演奏されたと考 えられます(しかもそれぞれの位置は24メートルほども離れていました)。ヤーコプスは、このレコーディングに際し、合唱を、ソリストも含む24人の Principal合唱団と12人のRemote合唱団に分け、配置をこれまでのように左右に置くのではなく、前後に配置しています。このことにより、音楽面、音響(録 音)面の両方で、素晴しい効果を生んでいます。Principal合唱にはエヴァンゲリストやイエス役のソリストも含まれ、受難の物語にダイレクトに関わり、 生々しい描写をしていきます。Remoteの方は、たとえば冒頭の合唱曲では「いずこへ?」などのパートを担当、さまよえるような雰囲気を醸成していま す。管弦楽も同様の割合で分け、これまでにない音世界。ただ、これは当時の演奏を再現しようとするためのものではなく、あくまでもバッハのアイディア を具現化させようという検討と試行錯誤の結果です。 冒頭合唱が入るまでのオーケストラの前奏から、通奏低音が刻むひたひたとしたリズムに、管・弦楽器が美しく絡む極美の世界。合唱も非常に柔らか。 それぞれのアリアも、歌手が歌う言葉ひとつひとつはもちろん、器楽パートにもすみずみまで血が流れているのを感じます。通奏低音も、アルパーマンの オルガン、野入志津子のリュートなど、場面場面に非常に寄り添った音楽。ギューラのエヴァンゲリストも、出過ぎることはありませんが、物語の起伏に 寄り添った語り部ぶりで見事。DVDは、NTSC(リージョン・オール)、トータル46分、録音風景や、ヤーコプスらへのマタイ受難曲についてのインタビュー(日本語字幕はありません) (Ki)
HMC-90856(3CD)
マドリガル・コメディー集
ラッスス、ヴェッキ、バンキエリの作品
ドミニク・ヴィス(C.T,指)
クレマン・ジャヌカン・アンサンブル
HMC-901005
シャルパンティエ:聖水曜日のテネブレの読誦 ルネ・ヤーコプス(指)
コンチェルト・ヴォカーレ
HMC-901251
カンプラ:レクイエム フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
シャペル・ロワイヤル
HMC-901257(3CD)
リュリ:歌劇「アティス」 ウィリアム・クリスティ(指)
レザール・フロリサン
HMC-901272
メンデルスゾーン:詩篇集
鹿が谷川の水を慕うように/他
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
シャペル・ロワイヤル、
コレギウム・ヴォカーレ
HMC-901298
シャルパンティエ:テ・デウム
聖母被昇天のミサ/聖母マリアへの連祷
ウィリアム・クリスティ(指)
レザール・フロリサン
HMC-901308(2CD)
パーセル:歌劇「妖精の女王」 ナンシー・アージェンタ、
サンドリーヌ・ピオ(S)
B.ルーヌ(Br)
ベルナール・デルトレ、
リチャード・テイラー(Bs)他
ウィリアム・クリスティ(指)
レザール・フロリサン
HMC-901322
ブルックナー:モテット集
エクアール第1番/アヴェ・マリア/他(全7曲)
ミサ曲第1番 ホ短調
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
シャペル・ロワイヤル、
コレギウム・ヴォカーレ、
アンサンブル・ミュジック・オブリク
HMC-901326
バッハ:マニフィカト.二長調 BWV.243
カンタータ「われらが神は堅き砦」 BWV.80
バルバラ・シュリック、アニェス・メロン(S)
ジェラール・レーヌ(C.T)
ハワード・クルック(T)
ペーター・コーイ(Bs)
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
シャペル・ロワイヤル、
コレギウム・ヴォカーレ

録音:1990年1月
HMC-901341
ジル:レクイエム
モテット「主よ、我汝を愛せん」
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
シャペル・ロワイヤル
HMC-901366
ヴィヴァルディ:「ラ・フォリア」によるソナタ
2つのヴァイオリンの為のソナタ集〜[RV.68、RV.70、RV.71、RV.77]
キアラ・バンキーニ(Vn)
アンサンブル415
HMC-901367(3CD)
ラモー:歌劇「優雅なインドの国々」 ウィリアム・クリスティ(指)
レザール・フロリサン
HMC-901385(3CD)
ヘンデル:歌劇「ジュリオ・チェーザレ」 ジェニファー・ラーモア(チェーザレ)
バルバラ・シュリック(クレオパトラ)
ベルナルダ・フィンク(コルネリア)
マリアンヌ・レルホルム(セスト)
デレク・リー・レイギン(トロメオ)
ドミニク・ヴィス(ニレーノ)他
ルネ・ヤーコプス(指)コンチェルト・ケルン

録音:1991年7月
HMC-801393(1SACD)
モーツァルト:ミサ曲 ハ短調 K.427
フリーメーソンの為の葬送音楽 K.477
S.ワイア(T)
ジェニファー・ラーモア、
クリスティアーネ・エルツェ(S)
ペーター・コーイ(Bs)
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
コレギウム・ヴォカーレ、
ラ・シャペル・ロワイヤル、
シャンゼリゼO
HMC-901403
ブルターニュの詩篇〜13、14世紀の単聖歌とポリフォニー マルセル・ペレス(指)
アンサンブル・オルガヌム
HMC-901435(3CD)
ラモー:歌劇「カストールとポリュックス」 ハワード・クロック、
ジェローム・コレア、
アニェス・メロン/他
ウィリアム・クリスティ(指)
レザール・フロリサン
HMC-901453
フランス・ルネサンス・シャンソン集
ジョスカン・デ・プレ、クレメンス・ノン・パパ、
ガンベール、セルミジ、他の作品
ドミニク・ヴィス(C.T)
アンサンブル・クレマン・ジャヌカン
HMC-901456
リュリ:歌劇「アルミード」 ギユメット・ロランス、
ハワード・クルック、
ヴェロニク・ジャンス、
ジョン・ハンコック
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
シャペル・ロワイヤル、
コレギウム・ヴォカーレ
HMC-901462
パーセル:アンセム集
メアリー女王葬送の音楽
主にありて喜べ
主よ、われらが罪を思い出したもうなかれ
シオンのラッパを吹き鳴らせ
わが祈りを聞きたまえ/他
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
コレギウム・ヴォカーレ
HMC-901463(2CD)
メンデルスゾーン:オラトリオ「エリヤ」 Op.70 ペリテ・サロマ(Bs)
ソイレ・イソコフスキ(S)
M.グローブ(A)
デルフィーネ・コロット(S)
J.M.アインシュレイ(T)
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
シャペル・ロワイヤル、
コレギウム・ヴォカーレ、
シャンゼリゼO
HMC-901479
バッハ:昇天祭オラトリオ「御国にまします神をたたえよ」BWV.11
カンタータ「歓呼のうちに神は昇天したもう」 BWV.43
カンタータ「かれらは汝らを追放せん」 BWV.44
バルバラ・シュリック(S)
カテリーヌ・パトリアス(A)
クリストフ・プレガルディエン(T)
ペーター・コーイ(Bs)
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
コレギウム・ヴォカーレ

録音:1993年5月
HMC-901483
ラッスス:マドリガル「聖ペテロの涙」 フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
シャペル・ロワイヤル
HMC-901495
コルシカ島の聖歌〜17世紀と18世紀のフランチェスコ会の写本による マルセル・ペレス(指)
アンサンブル・オルガヌム
HMC-901498(2CD)
ヘンデル:オラトリオ「メサイア」 バルバラ・シュリック、
サンドリーヌ・ピオー(S)
アンドレアス・ショル(C.T)
マーク・パドモア(T)
ナタン・ベルク(Bs)
ウィリアム・クリスティ(指)
レザール・フロリサン
HMC-901513
バッハ:復活祭オラトリオ BWV249
カンタータ第66番「喜べ、汝ら、もろ人の心よ」 BWV66
バルバラ・シュリック(S)
カイ・ヴェッセル(C.T)
ジェイムズ・テイラー(T)
ペーター・コーイ(Bs)
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
コレギウム・ヴォカーレ

録音:1994年
HMC-901515(3CD)
カヴァッリ:歌劇「カリスト」 マリア・バヨ(カリスト)
マルチェロ・リッピ(ジョーヴェ)
サイモン・キーンリーサイド(メルクーリオ)
ドミニク・ヴィス(サティリーノ)他
ルネ・ヤーコプス(指)コンチェルト・ヴォカーレ

録音:1994年8月
HMC-901534
シュッツ:宗教的合唱曲集 Op.11
宗教的小コンチェルト集より SWV291他
アニェス・メロン(S)
マーク・パドモア(T)
ペーター・コーイ(Bs)
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
コレギウム・ヴォカーレ
HMC-901537
アルベニス:歌劇「ペピータ・ヒメネス」〜組曲 S.チルコット(S)
F.ガリゴーサ(T)
ジュゼプ・ポンス(指)
バルセロナ・リウレ劇場室内O&cho
HMC-901552
3大カウンター・テナー〜夢の饗宴
オー・ソレ・ミオ、「カルメン」〜ハバネラ他
ドミニク・ヴィス(C.T)
アンドレアス・ショル(C.T)
パスカル・ベルタン(C.T)
HMC-901566(2CD)
モンテヴェルディ:聖母マリアの夕べの祈り マリー=クリスティーナ・キール、
バーバラ・ボーデン(S)
アンドレアス・ショル(C.T)
ジョン・ボーウェン、
アンドルー・マーガトロイド(T)他
ルネ・ヤーコプス(指)
コンチェルト・ヴォカーレ
オランダ室内cho
HMC-901568(2CD)
ルイス・デ・パブロ(1930-):Tarde de Poetas(声とオーケストラの為の) ルイサ・カステラーニ(S)
ホルヘ・シャミネ(Br)
ジュゼプ・ポンス(指)
バルセロナ・リウレ劇場室内O、
バレンシアcho
HMC-901571

HMC-801571(1SACD)
ヴィヴァルディ:スターバト・マーテル
室内カンタータ「やめて、もうやめて」
協奏曲 RV.130/他
アンドレアス・ショル(C.T)
キアラ・バンキーニ(指)
アンサンブル415
HMC-901578
バッハ:管弦楽組曲第1番
管弦楽組曲第3番
ベルリン古楽アカデミー
HMC-901580
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ集
第7番/第8番/第9番「クロイツェル」
オリヴィエ・シャルリエ(Vn)
ブリジット・アンジェレ(P)
HMC-901584(2CD)
メンデルスゾーン:オラトリオ「聖パウロ」 マティアス・ゲルネ(Bs)他
ヘレヴェッヘ(指)
コレギウム・ヴォカーレ
シャペル・ロワイヤル
シャンゼリゼO
HMC-901588
プーランク:宗教合唱曲集
悔悟節の為の4つのモテット
ミサ ト長調/他
マルクス・クリード(指)リアス室内cho
HMC-901589

HMC-801589(1SACD)
バッハ:モテット集 BWV.225-230
主に向かって新しい歌を歌え
精霊はわれらの弱きを助けたもう
わが喜びなるイエス
恐ろるるなかれ、われ汝とともにあり
来たれ、イエスよ、来たれ
主をたたえよすべての異教徒よ
マリア=クリスティーナ・キール(S)
シルビア・ルーベンス(S)
ベルタンダ・フィンク(A)
ゲルト・テュルク(T)
ぺーター・コーイ(Bs)
ルネ・ヤーコプス(指)
ベルリン古楽アカデミー団員
リアス室内cho
HMC-901594
バッハ:クリスマス・カンタータ集
新たに生まれし嬰児 BWV 122
笑いは、われらの口に満ち BWV 110
試練に耐えうる人は幸いなり BWV 57
ヴァジリカ・イェゾブシェク(S)
サラ・コノリー(A)
マーク・パドモア(T)
ペーター・コーイ(Bs)
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
コレギウム・ヴォカーレ

録音:1995年12月
HMC-901600
シューマン:子供の情景/謝肉祭
シューマン(リスト編):時は春
 春の夜/愛の歌
クララ・シューマン(リスト編):秘密があちこちで
ブリジット・アンジェレ(P)
HMC-901603
17世紀イギリスの民謡とリュート・ソング
〜ダウランド、カンピオン、他の作品
アンドレアス・ショル(C.T)
アンドレアス・マルティン(Lute)
HMC-901605
バッハ:待降節カンタータ集
喜び勇みて羽ばたき昇れ」BWV 36
いざ来ませ異邦人の救い主よ BWV 61
いざ来ませ異邦人の救い主よ BWV 62
シビッラ・ルーベンス(S)
サラ・コノリー(A)
クリストフ・プレガルディエン(T)
ペーター・コーイ(Bs)
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
コレギウム・ヴォカーレ
HMC-801608(1SACD)
ブラームス:ドイツ・レクイエム ジェラルド・フィンリー(Br)
クリスティーネ・エルツェ(S)
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
シャペル・ロワイヤル、
コレギウム・ヴォカーレ、
シャンゼリゼO

録音:1996年6月8日&9日
HMC-901614(2CD)
バッハ:ロ短調ミサBWV232 ゾマー(S)
ジャンス(S)
ショル(C.T)
プレガルディエン(T)
コーイ(Bs)他
ヘレヴェッヘ(指)コレギウム・ヴォカーレ
HMC-901620
モーツァルト:レクイエム(ジュスマイアー版)
キリエ K.341
シビッラ・ルーベンス(S)
アンネッテ・マルケルト(A)
イアン・ボストリッジ(T)
ハンノ・ミュラー=ブラッハマン(Br)
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
ラ・シャペル・ロワイヤル、
コレギウム・ヴォカーレ(cho)
シャンゼリゼO
HMC-901626
フォン・ビンゲン:聖ウルスラのラウデス マルセル・ペレス(指)
アンサンブル・オルガヌム
HMC-901643
パーセル:聖チェチーリアの祝日の頌歌
「たたえよ、輝かしきチェチーリアを」
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
コレギウム・ヴォカーレ
HMC-901649(2CD)
A.スカルラッティ:オラトリオ「殺人の始まり」 ルネ・ヤーコプス(C−T)
グラシエラ・オドーネ(S)
ドロテア・ロシュマン(S)
リチャード・クラフト(T)
アントニオ・アベーテ(Bs)
ルネ・ヤーコプス(指)
ベルリン古楽アカデミー
HMC-901651
ドイツ・バロック・カンタータ集
シュッツ:おおイエスよ、甘き御名よSWV.308
フランツ・トゥンダー:ああ主よ、あなたの愛する天使たちに命じて
J.C.バッハ:哀歌「ああ、私の頭に涙がたくさんあったなら」
フランツ・トゥンダー:めでたし、イエスよ
ジョヴァンニ・レグレンツィ:4つのヴィオラ・ダ・ガンバの為のソナタ第5番
ブクステフーデ:哀歌「どんな墜落がもたらす事のない物を、死が
もたらさなければならないのだろうか」BuxWv.76-2
フィリップ・ハインリッヒ・エルレバッハ:おのが身を天に任せるものは
シュッツ:おお主よ、私はあなたを心から愛するSWV.348
ブクステフーデ:主に向かって喜びの声を上げよBuxWv.64
イグナーツィオ・アルベルティーニ:ヴァイオリンと通奏低音の為のソナタ第4番 ハ短調
シュッツ:どうなさったのですか
アンドレアス・ショル(C.T)
コンチェルト・ディ・ヴィオーレ
バーゼル・コンソート
HMC-901654
テレマン:大序曲「ハンブルク鎮守府の祭典」
4本のホルンと管弦楽の為の「アルスター」組曲
「ル・ミュゼット」組曲
「狩」組曲/組曲「悲劇」
ベルリン古楽アカデミー
HMC-901655
ヴィヴァルディ:チェロ協奏曲集
RV.401/RV.417/RV.423/RV.405
RV.400/RV.419/RV.415
ロエル・ディールティエンス(Vc)
アンサンブル・
エクスプロレイションズ
HMC-901660
ガスパール・ル・ルー:2台のクラヴサンの為の作品集 ミッツィ・マイヤーソン
(クラヴサン、タスカン1769年)
L.クロフォード
(クラヴサン、タスカン1783年)
HMC-901663(3CD)
モーツァルト:歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」 ヴェロニク・ジャンス(S;フィオルディリージ)
ベルナルダ・フィンク(Ms;ドラベッラ)
グラシエラ・オッドーネ(S;デスピーナ)
ヴェルナー・ギュラ(T;フェランド)
マルセル・ボーネ(Br;グリエルモ)
ピエトロ・スパニョーリ(B;ドン・アルフォンゾ)
ルネ・ヤーコプス(指)
コンチェルト・ケルン、ケルン室内cho

録音:1998年3月
HMC-901669
シューベルト:森の夜の歌/墓と月
ゴンドラ漕ぎ/詩篇第23番
昔を今に/コロナッハ/夜の明かり
夜/セレナード
水上の聖霊の歌/雷雨の中の神
ブリジット・レンメルト(A)
ウェルナー・ギューラ(T)他
マルクス・クリード(指)
RIAS室内cho
HMC-901676(3CD)
バッハ:マタイ受難曲 イアン・ボストリッジ(T;福音史家)
フランツ・ヨゼフ・ゼーリヒ(B;イエス)
シビラ・ルーベンス(S)
アンドレアス・ショル(C.T)
ヴェルナー・ギューラ(T)
ディートリヒ・ヘンシェル(Bs)
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
コレギウム・ヴォカーレ
HMC-901683
パーセル:歌劇「ディドーとエネアス」 リン・ドーソン(S:ディドー)
ローズマリー・ジョシュア(S:ベリンダ)
ジェラルド・フィンリー(Br:エネアス)
ドミニク・ヴィス(CT:第一の魔女)
マリア・クリスティーナ・キール(S)他
ルネ・ヤーコプス(指)
エイジ・オブ・エンライトゥンメントO
クレア・カレッジ・チャペルcho
ジョン・トール(Cemb)
ナイジェル・ノース(テオルボ)
ポーラ・シャトーヌフ(G)

録音:1998年10月
HMC-901685
アンドレアス・ショル〜オンブラ・マイ・フ
歌劇「テッサリアの王アドメート」
歌劇「セルセ」/歌劇「ジュリアス・シーザー」
歌劇「ロンゴバルドの女王ロデリンダ」
歌劇「アルチーナ」からのアリア、レチタティーヴォ、名場面と管弦楽曲集
合奏協奏曲「アレグサンダーの饗宴」
「ラダミスト」組曲
アンドレアス・ショル(C.T)
ベルリン古楽アカデミー
HMC-901687
ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」 メラニー・ダイナー(S)
ペトラ・ラング(A)
エンドリンク・ヴォトリヒ(T)
ディートリヒ・ヘンシェル(Bs)
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
シャペル・ロワイヤル、
コレギウム・ヴォカーレ、
シャンゼリゼO
HMC-901689
ヘンデル:ドイツ・アリア集
先なる日々の思い煩い
燃えるばら、大地の飾り
私の魂は見つつ、聞く
快い茂みの中に」/他(全9曲)
テレマン:フルート,ヴァイオリン,チェロと通奏低音の為の四重奏曲集
 フルート,オーボエ,ヴァイオリンと通奏低音の為の四重奏曲集
ドロテア・レーシュマン(S)
ベルリン古楽アカデミー

録音:1998年12月
HMC-901693
ロッシーニ:スターバト・マーテル クラシミラ・ストヤノヴァ(S)
ペトラ・ラング(Ms)
ブルース・フォウラー(T)
ダニエル・ボロフスキ(Bs)
マルクス・クリード(指)
ベルリン古楽アカデミー
RIAS室内cho
HMC-901694

HMC-801694(1SACD)
バッハ:カンタータ集
第4番/第106番/第196番/第12番
コンラート・ユングヘーネル(指)
カントゥス・ケルン
HMC-901695
ドビュッシー:前奏曲集第1巻&第2巻 アラン・プラネス(P)
HMC-901696
マルチェッロ:詩篇集
第10番/第40番/第3番/第47番/第44番
コンラート・ユングヘーネル(指)
カントゥス・ケルン

録音:1999年5月
HMC-901697
シューベルト:ピアノソナタ第18番「幻想」
楽興の時
アラン・プラネス(P)

録音:1999年5月
HMC-901704
メンデルスゾーン:宗教的合唱曲集
詩篇100番 全地よ主に向かいて喜びの声をあげよ
詩篇2番 Op.78-1/詩篇43番 Op.78-2
詩篇22番 Op.78-3
われら人生の半ばにありて Op.23-3
主よ今こそあなたはこのしもべを Op.69-1
わが魂は主をあがめ
ミサ・ブレヴィス(キリエ・エレイソン/天なる神に栄光あれ/聖なるかな)
主よ、われらの願いに慈悲をたれたまえ
マーカス・クリード(指)
RIAS室内cho

録音:1999年9月
HMC-901709
ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第14番 Op.105
弦楽四重奏曲第13番 Op.106
メロスQ

録音:1999年11月
HMC-901713
シューベルト:ピアノ・ソナタ第17(19)番ニ長調 D850(Op.53)
ピアノ・ソナタ第13(15)番イ長調 D664(遺作)
アラン・プラネス(P)

録音:2000年2月
HMC-901714(3CD)
カイザー:歌劇「クロイソス」 ロマン・トレケル(クロイソス)
ヨハネス・マンノフ(キュロス)
ドロテア・レシュマン(エルミーラ)
ヴェルナー・ギュラ(アティス)他
ルネ・ヤーコプス(指)
ベルリン古楽アカデミー、
RIAS室内cho

録音:1999年1月
HMC-901718(3CD)
モンテヴェルディ:「倫理的・宗教的な森」(完全全曲) コンラート・ユングヘーネル(指)
カントゥス・ケルン
HMC-901722
歌劇座のクラリネット
マスカーニ:「カヴァレリア・ルスティカーナ」幻想曲
ロッシーニ(ジローラモ・サリエーリ編):「エドゥアルドとクリスティーナ」による導入・主題と変奏曲
プッチーニ(デッラ・ジャコマ編):「トスカ」幻想曲
ベッリーニ(ルイジ・バッシ編):「夢遊病の女」
ヴェルディ(ルイジ・バッシ編):協奏幻想曲「リゴレット」
アレッサンドロ・カルボナーレ(Cl)
アンドレア・ディンド(P)
HMC-901723
シューベルト:ピアノ・ソナタ集
第7番変ホ長調 Op.122 D.568
第16番イ短調 Op.42 D.845
アラン・プラネス(P)
HMC-901724
ロッシーニ:小ミサ・ソレムニス クラシマ・ストヤノワ(S)
ビルギット・レンメルト(A)
スティーヴ・ダヴィスリム(T)
ハンノ・ミュラー=ブラハマン(Bs)
マルクス・クリード(指)
RIAS室内cho
フィリップ・マイヤーズ、
フィリップ・モル(P)
もろおかりょうこ(ハルモニウム)
HMC-901727
アンニーバレ・パドヴァーノ(1527-1575):24声のミサ パウル・ファン・ネーフェル(指)
ウエルガス・アンサンブル
HMC-901729
ルネサンス時代フランス・フランドル楽派の酒の歌
クレメンス・ノン・パパ、デカレッラ、
セルトン、セルミジ、アペンツェラー、
ダンベール、ゴンベール、ルロワ、
ジョスカン・デプレ、パストン、
ミタンティエ、ル・ユルテュール、
バルビオン、セリエール・デ・エダン、
スザートの作品
ドミニク・ヴィス(指)
アンサンブル・クレマン・ジャヌカン
HMC-901730
ジャン・リシャフォール(1480-1548):レクイエム「ジョスカンの思い出に」(6声)
主に従う者よ、主によリて喜び歌え」(4声)
悲しみがわれらにのしかかり(4声)
サルヴェ・レジナ(5声)
心配するな、わが心よ(4声)
ぐびっ、ぐびっ、ぐびっ、今が飲み時」(3声)
甘くすてきな人生なんてない(4声)
パウル・ヴァン・ネーヴェル(指)
ウエルガス・アンサンブル
HMC-901732
パオロ・ダ・フィレンツェ(1390-1425):マドリガル集〜見つめるナルシス
波荒き暗礁の中にて/さすらう鳥は
愛よ、教えておくれ/レーナ、貞節にして
エスタンピー「イサベッラ」(器楽曲)
もはや不幸では/ビーナス(ウェヌス)は
エスタンピー(器楽曲)/喜べ、フィレンツェよ
美しき鷹は/エスタンピー(器楽曲)
ペドロ・メメルスドルフ(指)
マーラ・プ二カ

録音:1999年9月
HMC-901734
イギリスの合唱作品集
ブリテン:神聖と世俗 Op.91
ヴォーン・ウィリアムズ:3つのシェイクスピア歌曲
エルガー:パートソング集
スタンフォード:青い鳥
ディーリアス:2つの無伴奏パート・ソング
マルクス・クリード(指)
RIAS室内cho
HMC-901736(2CD)
モンテヴェルディ:「戦いと愛のマドリガーレ集」(全曲) ルネ・ヤーコプス(指)
コンチェルト・ヴォカーレ
[マリア・クリスティーナ・キール(S)他]
HMC-901739
ヴェルギリウスの歌〜ルネサンス音楽における古典詩
ジョスカン・デプレ、デ・ローレ、
ラッスス、デリック・ヘラルデ、
ゼンフル、マルブリアヌス・デ・オルト、
ヴィラールト、リシャール・ド・ランヴォワジ
ドミニク・フィノの作品、
作曲者不詳の作品(全15曲)
パウル・ヴァン・ネーヴェル(指)
ウエルガス・アンサンブル
HMC-901742(2CD)
グルック:歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」 ベルナンダ・フィンク(Ms;オルフェオ)
ヴェロニカ・カンジェーミ(S;エウリディーチェ)
マリア・クリスティーナ・キール(S;アモール)他
ルネ・ヤーコプス(指)
フライブルク・バロックO
リアス室内cho
HMC-901744
テレマン:「ラ・ビザール(風変わり)」
組曲 ニ長調/組曲「諸国民」 変ロ長調
ヴァイオリン協奏曲 イ長調「3匹の蛙」
組曲「風変わり」 ト長調
ミドリ・ザイラー(Vn独奏)
スティーヴン・メイ(第1Vn)
ベルリン古楽アカデミー
HMC-901745
ヴィヴァルディ:チェロ協奏曲集 Vol.2
 イ短調R.420/変ホ長調R.408/
 ニ短調R.407/イ短調R.421
ヴァイオリン,チェロ,弦楽と通奏低音の為の二重協奏曲 ヘ長調「プロテウス」R.544/
2挺のチェロ,ヴァイオリン,弦楽と通奏低音の為の協奏曲 ニ長調R.561
クリスティーヌ・ブッシュ(Vn)
クヒテ・ヴァン・
デル・メール(第2Vc)
ロエル・ディールティエンス(Vc)(指)
アンサンブル・エクスプロージョンズ
HMC-901748(2CD)
バッハ:ヨハネ受難曲(第2稿、1725) シビッラ・ルーべンス(S)
アンドレアス・ショル(C.T)
マーク・パドモア(T)
セバスティアン・ノアック、
ミヒャエル・ヴォッレ(Bs)
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
コレギウム・ヴォカーレ
HMC-901751
R.シュトラウス:歌曲集
献呈/何もなく/夜/ダリア/待ちわびて
もの言わぬ花/サフラン
万霊節/セレナード
おお、あなたがわたしのものなら
あなたはわたしの心の王冠
ああ恋人よ、わたしは別れねばならない
春よ/ひそやかな誘い
二人の秘密をなぜ隠すのか
憩え、わが心ときめく心
わたしはおまえを愛する
15ペーニヒで
わたしの父は言いました/崇拝
ビルギット・レンメルト(A)
ヤン・シュルツ(P)
HMC-901754
ラモー:新しいクラヴサンの為の組曲(1728/ピアノ版)
ドビュッシー:ラモーを讃えて
アレクサンドル・タロー(P)
HMC-901760
チプリアーノ・デ・ローレ(1516-1565):ミサ・プラーテル・レールム・セリエム
モテットとマドリガーレ集
パウル・ヴァン・ネーヴェル(指)
ウエルガス・アンサンブル

録音:2001年7月
HMC-901765
ハイドン:エステルハージ家の為のカンタータ集
世俗カンタータ「目覚めよ、われを信ずる者たち」 Hob.XXIVa:2*
世俗カンタータ「主君の幸運の期間を祝い」 Hob.XXIVa:3+
世俗カンタータ「今やいかなる疑いが」 Hob.XXIVa:4*
交響曲第12番 ホ長調 Hob.I:12#
イム・スンヘ(S;*/+)
ヨハンナ・ストイコヴィチ(S;*/+)
マックス・チェレク(T;*/+)
アンドラーシュ・シュペリング(指)(*/+)
ニコラス・クレーマー(指)#
カペラ・コロニエンシス、
ケルン声楽アンサンブル*
HMC-901767
ハイドン:交響曲集
第6番「朝」/第7番「昼」/第8番「晩」
ペトラ・ムレヤンス(コンサートマスター)
フライブルク・バロックO
HMC-901769
シマノフスキ:神話 Op.30
 ヴァイオリン・ソナタ ニ短調 Op.9
 パガニーニのカプリス第24番(ピアノ伴奏付け)
ストラヴィンスキー:協奏的二重奏曲
 イタリア組曲
グラフ・ムリャ(Vn)
ナターリャ・グス(P)
HMC-901771
フォーレ:レクイエム(フル・オーケストラ版:1998年出版新校訂譜使用)
フランク:交響曲 ニ短調
ヨハネッテ・ゾマー(S)
シュテファン・ゲンツ(Br)
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
ラ・シャペル・ロワイヤル
コレギウム・ヴォカーレ
シャンゼリゼO
HMC-901772
W.F.バッハ:シンフォニア ニ長調/ヘ長調
アダージョとフーガ.ニ短調/ヘ短調
チェンバロ協奏曲 ホ短調
ベルリン古楽アカデミー
ラファエル・アルバーマン(Cemb)
HMC-901773
シューベルト:ピアノ4手連弾作品集
ハンガリー風ディヴェルティメント.ト短調 D.818
創作主題による8つの変奏曲変イ長調 D.813
幻想曲 ヘ短調 D.940
アレクサンドル・タロー(P)
チュ・シャオ=メイ(P)
HMC-901774
ディンディア:マドリガーレとカンツォネッタ集
ディンディア:わが愛しきシターン
やわらげ、わが涙
私の心が愛の虫によって
独りぼっちのある日
私の厚かましい口づけ、その口づけをあなたは咎める
ああ、フィッリ、おまえに口づけしたいけど
さあ、シターンを取り上げ/
私のアウローラ
お聞きなさい、小夜鳴き鳥が−彼は少しつぶやくと、突然歌い出した
つれないぼくのフィッリは
私をあざ笑え、残酷な方よ
穏やかな西風が還り
森の中で孤独の恐怖に/天よ止めよ
不幸なディド(ディドの嘆き)
奥様は嘆くが、私は/徳
トラバーチ:ガリアルダ
ルッジェーロの旋律によるパルティータ
マイオーネ:半音階演奏が鍵盤楽器によるトッカータ第5番
マック:ストラヴァガンツァ第2番
マリア・クリスティーナ・キール(S)
ジャン=マルク・エメ(指)
コンチェルト・ソアーヴェ

録音:2001年12月
HMC-901775
ベートーヴェン:ピアノの為の変奏曲集
エロイカ変奏曲 Op.35
32の変奏曲 ハ短調 WoO80
「ルール・ブリタニア」による5つの変奏曲 ニ長調 WoO79
6つの変奏曲 ニ長調 Op.76
6つの易しい変奏曲 ヘ長調 Op.34
5つの易しい変奏曲 ト長調 WoO77
「ゴッド・セイヴ・ザ・キング」による7つの変奏曲 ハ長調 WoO78
セドリック・ティベルギアン(P)
HMC-901777
バルトーク:バレエ「中国の不思議な役人」
Op.19 Sz.73(オリジナル復元版)
舞踏組曲 Sz.37
4つの管弦楽組曲 Op.12 Sz.51
デイヴィッド・ロバートソン(指)
リヨン国立O
HMC-901778

HMC-801778(1SACD)
ファリネッリの為のアリア集
ポルポラ:歌劇「オルフェーオ」(1736/ロンドン)〜オルフェーオのアリア「いかなる苦悩からも」
歌劇「ポリフェーモ」(1735/ロンドン)〜甘く清々しいそよ風
今や嵐の雪が(ハッセ作曲:歌劇「アルタセルセ」への追加アリア;1724/ロンドン)
リッカルド・ブロスキ:歌劇「イダスペ」(1730/ヴェネツィア)〜ダーリオのアリア「忠実な霊よ、われもまた」
戦場のあの兵士
ジェミニアーノ・ジャコメッリ:歌劇「シリアのハドリアヌス帝」(1733/ヴェネツィア)〜ファルナスペのアリア「おお神よ」
歌劇「メローペ」(1734、ヴェネツィア)〜エピディーデのアリア「あの夜鳴きうぐいすは」
ガルッピ:4声の協奏曲ハ短調
ハッセ:歌劇「アルタセルセ」
(1730、ヴェネツィア/1734、ロンドン)〜アルバーチェのアリア「この甘き抱擁もて」
ヴィヴィカ・ジュノー(Ms)
ルネ・ヤーコプス(指)
ベルリン古楽アカデミー

録音:2002年1月
HMC-901780
コルンゴルト:歌曲集
12の歌曲「神様とパパはこう遊んだ」
6つのやさしい歌曲 Op.9〜3曲
4つの別れの歌 Op.14/3つの歌曲 Op.18
5つの歌曲 Op.38/他(全36曲)
ディートリヒ・ヘンシェル(Br)
ヘルムート・ドイチュ(P)
HMC-901781(2CD)
バッハ:ライプツィヒ時代のクリスマス・カンタータ集
第63番「キリスト者よ、この日を銘記せよ」BWV.63
第91番「たたえられよ、イエス・キリスト」BWV.91
第121番「われらまさにキリストをたたえるべし」BWV.121
第133番「われは汝のうちにありて嬉し」BWV.133
マニフィカト 変ホ長調 BWV.243a
ドロテー・ブロツキー=ミールズ(S)
キャロライン・サンプソン(A)
マーク・ダンツ(T)
ペーター・コーイ(Bs)
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
コレギウム・ヴォカーレ
HMC-801781(2SACD)
バッハ:ライプツィヒ時代のクリスマス・カンタータ集
第63番「キリスト者よ、この日を銘記せよ」BWV.63
第91番「たたえられよ、イエス・キリスト」BWV.91
第121番「われらまさにキリストをたたえるべし」BWV.121
第133番「われは汝のうちにありて嬉し」BWV.133
マニフィカト 変ホ長調 BWV.243a
ドロテー・ブロツキー=ミールズ(S)
キャロライン・サンプソン(A)
マーク・ダンツ(T)
ペーター・コーイ(Bs)
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
コレギウム・ヴォカーレ
HMC-901783(2CD)
アルトバッキッシェス・アルヒーフ(古きバッハ一族の書庫)〜バッハの祖先の音楽
ヨハン・クリストフ・バッハ(1642-1703):カンタータ「戦いが始まる」
モテット「われらの心の喜びは終わった」
モテット「主よ、振り返りて慈悲を」
ヨハン・バッハ(1604-1673)、
ゲオルク・クリストフ・バッハ(1642-1697)、
ヨハン・ミヒャエル・バッハ(1648-1694)、
他の作品(全24曲)
コンラート・ユングヘーネル(指)
カントゥス・ケルン
コンチェルト・パラティーノ
HMC-901785
放浪のヴァイオリン
パガニーニ(クライスラー編):ラ・カンパネラ
チャイコフスキー:ワルツ=スケルツォ
ポンセ(ハイフェッツ編):エストレリータ
サラサーテ:カルメン幻想曲
バルトーク(セーケイ編):ルーマニア民俗舞踊
フロローフ:ブルース形式による小品
クレイン:ヘブライ奇想曲
ライナ:タランテラ
シリル・スコット(クライスラー編):蓮の国
シチェドリン:アルベニスを摸して
クロール:バンジョーとヴァイオリン
ウラジゲロフ:ホロ
グラフ・ムリャ(Vn)
ナターリヤ・グス(P)
HMC-901786
シューベルト:ミサ曲第5番 変イ長調D.678
メンデルスゾーン:詩篇第42番
アンナ・コロンディ(S)
アンケ・フォンドゥング(Ms)
アンドレアス・カラジアク(T)
カイ・スティーファーマン(Bs)
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
シャンゼリゼO、
RIAS室内cho

録音:2002年3月フィルハーモニー・ホール、ベルリンライヴ
HMC-901789
シューベルト:ピアノ・ソナタ第4番 イ短調D.537
ピアノ・ソナタ第9番 ロ長調D.575
ピアノ・ソナタ第14番 イ短調D.784
アラン・プラネス(P)
HMC-901790
シューベルト:「さすらい人」幻想曲 D.760
ピアノ・ソナタ第11番 ヘ短調D.625
ピアノ・ソナタ第15番 ハ長調D.840「レリーク」
アラン・プラネス(P)
HMC-901793
ヤナーチェク:ヴァイオリン・ソナタ
ルトスワフスキ:スビト/パルティータ
シマノフスキ:神話
イザベル・ファウスト(Vn)
エヴァ・クビェツ(P)
HMC-901794
ロマンティック・クリスマス・ソングズ
メンデルスゾーン、レーヴェ、ブルックナー、
ブルッフ、他の作品
ウーヴェ・グロノスタイ(指)
RIAS室内cho
HMC-901796(3CD)
ヘンデル:歌劇「リナルド」 ヴィヴィカ・ジェノー(Ms:リナルド)
インガ・カルナ(S:アルミーダ)
ローレンス・ザゾ(CT;ゴッフレード)
ミア・パーション(S;アルミレーナ)
ドミニク・ヴィス
(CT;キリスト教徒の
魔法使いの隠者)他
ルネ・ヤーコプス(指)
フライブルク・バロックO

録音:2002年
HMC-801799(1SACD)
ラ・スパーニャ〜32のコントラプンクト
コンスタンツォ・フェスタ(1490-1545):「ラ・スパーニャ」の旋律による125のコントラプンクト(抜粋)
第46番/第41番/第105番/第101番
第88番/第76番/第124番/第81番
第60番/第77番/第122番/第25番
第118番/第47番/第35番/第40番
第8番/第14番/第108番/第9番
第85番/第37番/第70番/第125番
第71番/第117番/第28番/第104番
第58番/第121番/第123番/第34番
パウル・ファン・ネーヴェル(指)
ウエルガス・アンサンブル

録音:2002年6月、聖フィンセントゥス修道院
HMC-901800
シューベルト:ピアノ・ソナタ第20番 イ長調D.959
ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調D.960
ポール・ルイス(P)
HMC-901801
ベートーヴェン:歌曲集
希望に寄すOp.94/
うずらの鳴き声 WoO129
遠い国からの歌 WoO137
やさしき愛(君を愛す) WoO123
アデライーデOp.46
ポロネーズOp.89*
6つの歌曲Op.48
ファンタジーOp.77*
新しき愛、新しき生命Op.75-2
彩られたリボンもてOp.83-3
ゲーテのファウストよりOp.75-3
アンダンテ・ファヴォリ WoO57
遥かなる恋人に寄すOp.98
ひとりごと WoO114
ディートリヒ・ヘンシェル(Br;*以外)
ミヒャエル・シェーファー(P)
HMC-901802
ベートーヴェン:オラトリオ「オリブ山上のキリスト」Op.85 リューバ・オルゴナソヴァ(S;天使セラフィム)
プラシド・ドミンゴ(T;イエス)
アンドレアス・シュミット(B;ペテロ)
ケント・ナガノ(指)
ベルリン・ドイツSO、
ベルリン放送cho
HMC-901803
J.C.バッハ:交響曲 変ホ長調 Op.6-2
 交響曲 ト短調 Op.6-6
C.P.E.バッハ:フルート協奏曲 ニ短調 Wq.22
ラファエル・アルバーマン(Cemb)
クリストフ・フンゲバース(Fl-tr)
ベルリン古楽アカデミー

録音:2002年10月
HMC-901805(3CD)
A.スカルラッティ:歌劇「グリゼルダ」 ドロテア・レシュマン(S)
ローレンス・ザゾ(C.T)
ヴェロニカ・カンジェミ(S)
ベルナルタ・フィンク、
シルヴィア・トロ・サンタフェ(Ms)
ルネ・ヤーコプス(指)
ベルリン古楽アカデミー
高名なアポストロ・ゼーノの台本による、グァルディエーロ王の妻グリゼルダの物語。初演当時不運に見舞われたこの作品も、20 世紀後半に「発見」され、今では大スカルラッティの代表作として高く評価されています。ヤーコプスのこの演奏は、「グリゼルダ」がまさにオペラ史上に燦然と輝く宝石であることを知らしめています。歌手も、幾多の共演でおなじみのレッシュマン、ザゾ、フィンクに加え、ベルリンでのリナルドを歌ったトロ・サンタフェ、ミュンヘンでのバロックオペラの常連カンジェミなど、この上ないもの。オーケストラの音色も実に充実、ハイブリッドの高音質でさらに楽しみが増すというものです。 (Ki)
HMC-901808
ヒナステラ:バレエ「エスタンシア」〜4つの舞曲Op.8a
ハープ協奏曲Op.25*
南米のファウスト序曲Op.9
協奏的変奏曲Op.23
マグダレーナ・バッレーラ(Hp;*)
ジュゼプ・ポンス(指)グラナダ市O
HMC-901809
モーツァルト:セレナード第6番 ニ長調 K.239
「セレナータ・ノットゥルナ」
ディヴェルティメント ニ長調 K.136
ディヴェルティメント 変ロ長調 K.137
ディヴェルティメント へ長調 K.138
ペトラ・ミュレヤンス(指)
フライブルク・バロックO

録音:2002年12月
HMC-901810
ブロッホ:チェロ作品集
無伴奏チェロ組曲第1番−第3番
ユダヤ人の生活より(3つのスケッチ)
ニルヴァーナ(涅槃)
バール・シェム〜ニーグン(即興、朗吟)
エマニュエル・ベルトラン(Vc)
パスカル・アモワイヤル(P)
HMC-901811(2CD)
ラヴェル:ピアノ作品全集
鏡/水の戯れ
亡き王女の為のパヴァーヌ
古風なメヌエット/前奏曲
シャブリエ風に/ボロディン風に
ハイドンの名によるメヌエット
マ・メール・ロワ/クープランの墓
夜のガスパール
ソナチネ/高雅で感傷的なワルツ
パレード(バレエの為のスケッチ)*
メヌエット 嬰ハ短調*
アレクサンドル・タロー(P)
HMC-901816
ハイドン&モン:チェロ協奏曲集
ハイドン:チェロ協奏曲第1番 ハ長調 Hob.VII:b-1/
 チェロ協奏曲第2番 ニ長調 Hob.VII:b-2
モン(1717-1750):チェロ協奏曲 ト短調
ジャン=ギアン・ケラス(Vc)
ペトラ・ミュレヤンス(指)
フライブルク・バロックO
HMC-801817(1SACD)
ブルックナー:交響曲第3番「ワーグナー」(1873年第1稿) ケント・ナガノ(指)
ベルリン・ドイツSO
HMC-901818(3CD)

HMC-801818(2SACD)
モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」 サイモン・キーンリーサイド(アルマビーヴァ伯爵)
ヴェロニク・ジャンス(伯爵夫人)
パトリツィア・ツィオーフィ(スザンナ)
ロレンツォ・レガッツォ(フィガロ)
アンジェリカ・キルヒシュラーガー(ケルビーノ)
マリー・マクローリン(マルチェリーナ)
コビー・ヴァン・レンズブルク(バジリオ)
アントーニオ・アベーテ(バルトロ/アントーニオ)
ニコラウ・デ・フィゲレイド(P)
ルネ・ヤーコプス(指)
コンチェルト・ケルン、
コレギウム・ヴォカーレ・ヘント
HMC-901822
月に寄せる〜シューベルト:リート集
月に寄せるさすらいの歌 D.870
あこがれ D.879/戸外にて D.880
りんご園に寄せて D.197
愛の陶酔 D.179/生きる勇気 D.883
舟人 D.536
双子座に寄せる舟人の歌 D.360
水の上で歌う D.774/海の静けさ D.216
小人 D.771/墓掘人の歌 D.869
夜の曲 D.672/弔いの鐘 D.871
墓掘り人の郷愁 D.842
秋の夜の月に寄す D.614
さすらい人 D.649
ヴィルデマンの丘を越えて D.884
悲しみ D.772/ブルックの丘にて D.853
ディートリヒ・ヘンシェル(Br)
ヘルムート・ドイチュ(P)

録音:2003年5月
HMC-901823
ハイドン:弦楽四重奏曲集
ニ長調 Op.64-5「ひばり」
ニ短調 Op.76-2「五度」/ト長調 Op.77-1
エルサレムSQ

録音:2003年4月
HMC-901824
ドヴォルザーク:歌曲集
愛の歌 Op.83 B.160
クラローヴェー・ドヴールの写本による歌曲集 Op.7 B30
4つの歌曲 Op.2 B.124
エクシュカ・クラースノホルスカーの詩による愛の歌
4つの歌曲 Op.82 B.157
4つの歌曲「民謡調で」Op.73 B.146
歌曲集「ジプシーの歌」 Op.55 B.104
ベルナルダ・フィンク(Ms)
ロジャー・ヴィニョールス(P)

録音:2003年5月
HMC-901826(2CD)
ヘンデル:歌劇「シローエ」(1728) アン・ハレンベリ(シローエ)
グンター・シュミット(メダルセ)
ゼバスティアン・ノアック(コズローエ)
ヨハンナ・ストイコビチ(エミーラ)他
アンドレアス・シュペリング(指)
カペラ・コロニエンシス
HMC-901828
ラッスス:ペトラルカ作「カンツォニエーレ」によるマドリガーレ集
独り物思いにふけって人けない野原を(5声)
もし愛の誠意が(8声)/思いから思いへ(6声)
ひねもす泣き暮らし(5声)
私はかつて歌い、今は泣く(5声)
魂よ、おまえは何をしているのか(7声)
夜明けの光に向かって(5声)
私の優しい運命と楽しい生活とが(5声)
耐えがたい重荷の下で私は疲れ(5声)
私の過ぎ去ったときに涙し(5声)
パウル・ヴァン・ネーヴェル(指)
ウエルガス・アンサンブル

録音:2003年7月
HMC-901829(2CD)

HMC-801829(2SACD)
ハイドン:オラトリオ「四季」 マルリス・ペーターゼン(S;ハンネ)
ウェルナー・ギューラ(T;ルーカス)
ディートリヒ・ヘンシェル(Br;シモン)
ルネ・ヤーコプス(指)
フライブルク・バロックO、
RIAS室内cho

録音:2003年8月、インスブルック
HMC-901831(2CD)
ラッスス:ダヴィデの懺悔の詩篇(1584年、ミュンヘン刊)
主よ、怒りもて罰したもうなかれ
その悪行を許され
主よ、怒りもて罰したもうなかれ
神よ、われを憐れみたまえ(ミゼレーレ)
主よ、わが祈りを聞きたまえ
深き淵より、われ汝を呼ぶ
主よ、わが祈りを聞きたまえ]
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
コレギウム・ヴォカーレ
2005 年に創立35 周年を迎えた世界屈指の古楽合唱団コレギウム・ヴォカーレの、満を持してのラッスス最新録音です。ヘレヴェッヘとコレギウム・ヴォカーレ声楽のみの録音は実に久しぶり。あらためて彼らの絆の深さ、実力に驚かされるばかりです。ルネサンス時代の抽象的なポリフォニーの美しさと、言葉の粒立ちの美しさがえもいわれぬバランスで丁度よく融合した、実に見事な演奏です。この「ダヴィデの懺悔の詩篇」は、ミュンヘンで1584 年に出版され、400 年以上たった現在も、世の人々を驚かせる美しさに満ちたものとして愛されています。 (Ki)
HMC-901833
ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調 Op.53*
ピアノ三重奏曲 ヘ短調 Op.65+
イザベル・ファウスト(Vn)
イジー・ビェロフラーヴェク(指)
プラハ・フィルハーモニア*
ジャン=ギアン・ケラス(Vn)+
アレクサンダー・メルニコフ(P)+

録音:2003年9月、12月
HMC-901836
R.シュトラウス:ロマンス.ヘ長調
 チェロ・ソナタ.ヘ長調Op.6
レーガー:チェロ・ソナタ第2番 ト短調Op.8
 小ロマンス.ニ長調Op.79-2
エマニュエル・ベルトラン(Vc)
パスカル・アモワイヤル(P)

録音:2004年2月
HMFが力を入れるチェリスト、エマニュエル・ベルトランが、瑞々しく潤い感のある美音で若き日の名作を理想的に歌い上げています。アルカン作品集(HMC.901758)、ブロッホ作品集(HMC.901810)に続くアモワイヤルとのコンビも完璧。  (Ki)
HMC-901837
ヴォルフ:管弦楽伴奏歌曲集
思っておくれ、おお心よ/祈り
古い絵に/眠る幼な児イエス
聖週間/明け方に/火の騎士
新しい愛/どこに慰めを求めよう
ため息/ヴァイラの歌/眠りに
彼が来た(春だ)/花を摘みに行くなら
私の巻髪に包まれて
優しい恋を失った人は
心よ、がっかりするのはまだ早い
ミニヨン/ねずみ捕りの男
竪琴弾きの歌 I/同 II/同 III
アナクレオンの墓/プロメテウス
ユリアーネ・バンゼ(S)
ディートリヒ・ヘンシェル(Br)
ケント・ナガノ(指)
ベルリン・ドイツSO
偉大なリート作曲家、フーゴ・ヴォルフは、気に入ったリートの伴奏を管弦楽に編曲していたことは、わりと知られています。しかし、R.シュトラウスの管弦楽伴奏歌曲に比べると、録音に関してはあまり顧みられてこなかったようです。もちろん、これらは素晴らしい音楽!後期ドイツロマン派ファンならば、瞬く間に魅了されてしまうことでしょう。そして待望の新録音が登場。なんとバンゼ、ヘンシェルと、こうした曲を歌わせたら今一番の歌手二人を起用という贅沢。さらに指揮はケント・ナガノですから、実に強力!ヴォルフ・ファンの渇きを潤す抜群のCD です。 (Ki)
HMC-901838(2CD)
D・スカルラッティ:ソナタ集 K.1-30 アラン・プラネス(Fp)

録音:2003年
HMC-901842
シューマン:リーダークライス Op.24
クララ・シューマン:あの方は来ました Op12-2
 なぜあなたは周りの人にたずねるの Op.12-11
 ひそやかな語らい Op.23-3
 わたしは暗い夢のなかにいた Op.13-1
 彼らは愛し合っていた Op.13-2
 どうして泣くの、小さな花よ Op.23-1
それは響くような日Op.23-5
ブラームス:ドイツ民謡集 WoO33〜10曲
ウェルナー・ギューラ(T)
クリストフ・ベルナー(P)

録音:2003年11月
HMC-901843
バッハ:カンタータ集
泣き、嘆き、憂い、怯えBWV.12
深き苦しみから我汝に叫ばんBWV.38
貧しき者は食らいてBWV.75
キャロリン・サンプソン(S)
ダニエル・テイラー(C.T)
マーク・パドモア(T)
ペーター・コーイ(Bs)
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
コレギウム・ヴォカーレ

録音:2003年12月
ヘレヴェッヘの明るく優しい肌触りのバッハは今回も聞き逃せません。加えて歌手がキャロリン・サンプソン、ダニエル・テイラー、マーク・パドモア、ペーター・コーイと、美声かつ的確な様式を身に付けた四人を揃え、特に清潔感に満ちたサンプソンの歌声と、これ以上のバロック・テノールはいないのじゃないかというパドモアに注目! (Ki)
HMC-901844
ブラームス:ピアノ作品集
7つの幻想曲 Op.116
3つの間奏曲 Op.117
6つの小品Op.118/4つの小品 Op.119
シュテファン・ヴラダー(P)

録音:2003年12月
HMC-901845
リスト:ピアノ作品集
ソナタ ロ短調/灰色の雲
リヒャルト・ワーグナー−ヴェネツィア
不運/4つのピアノ小品/夢の中に
眠れぬ夜、問いと答え
悲しみのゴンドラ
ポール・ルイス(P)

録音:2003年12月
HMC-901850(2CD)
シュッツ:シンフォニア・サクラ第3集 Op.12(1650) コンラート・ユングヘーネル(指)
カントゥス・ケルン
[ヨハンナ・コスロフスキ、
モニカ・マウク(S)
エリザベス・ポピエン、
ヘニング・ヴォス(A)
ハンス=イェルク・マメル、
ヴィルフリート・ヨッヘンス(T)
シュテファン・シュレッケンベルガー、
ヴォルフ・マティアス・フリードリヒ、
マティアス・ゲルヒェン(Bs)]
コンチェルト・パラティーノ
シュッツの不朽の名作、シンフォニア・サクラ第3集が、カントゥス・ケルンとコンチェルト・パラティーノという夢のような組み合わせで登場です。管の響きはどこまでも華麗で、声のアンサンブルも一糸乱れず実に見事です。17 世紀半ば、ザクセンの宮廷楽長として音楽的に絶大な権力をもち、その名声をほしいままにしていたシュッツ。彼の当時の音楽的支配力を感じさせる豪奢な音作りには圧倒されます。 (Ki)
HMC-901852
ハンブルク・歌劇の序曲集
フィリップ・ハインリヒ・エルレバッハ(1657-1714)、
ゲオルク・カスパール・シュルマン(1672-1751)、
ヘンデル、カイザー、他の作品
ベルリン古楽アカデミー
北ドイツの大商業都市、ハンブルクでは、1678年から1738年までの60年間、ゲンゼマルクト歌劇場が栄えていました。この劇場はドイツで初めての公開の歌劇場で、宮廷と関係がなかったため市民の娯楽としての自由なオペラ活動ができました。その結果、カイザー、ヘンデル、テレマンといった人々がこの劇場で活躍していました。このCDにはさらにフィリップ・ハインリヒ・エルレバッハ(1657-1714)や ゲオルク・カスパール・シュルマンらの作品も含めて、序曲や管弦楽組曲を紹介しています。 (Ki)
HMC-901854
ハイドン:クラヴィーア協奏曲集
クラヴィーア協奏曲 ト長調 Hob.XVIII:4
クラヴィーアとヴァイオリンの為の協奏曲ヘ長調 Hob.XVIII:6*
クラヴィーア協奏曲 ニ長調 Hob.XVIII:11
アンドレアス・シュタイアー(Fp)
ゴットフリート・フォン・デア・ゴルツ(指)
フライブルク・バロックO

録音:2004年3月
※使用楽器:1785年、ウィーンのワルター製の複製
HMC-901855
モンテヴェルディ:「音楽の諧謔」
[悲しみの冬は去り/愛する人よ、私はどうすればよいのか/リディア、私の心の刺/とても美しいダミジェッラ/あのあざけるような眼差し/あなたはもう私に微笑もうとはしない/苦しみが甘美なものならば/愛しのクローリ/甘い光に/これまで武装し続けた私/かつて君はすべて私のもの/面影よ、呪われよ/仕えることの報いを望んだのに/東方に夜明けが来る時/もし私の気だるい眼差しが/ああ、私は倒れてしまう/私は倒れてしまう/美しさにふさわしい賞賛/他
マリア・クリスティーナ・キール(S)
ステファン・マクラウド(Br)
ジャン=マルク・エメ(指)
コンチェルト・ソアーヴェ

録音:2004年3月
モンテヴェルディの声楽アルバムにまた一つ注目のCD が登場です!古楽界の代表的ソプラノの一人、マリア・クリスィーナ・キールと、BCJなどとの共演で日本のファンにもすっかりおなじみのステファン・マクラウドの二人がコンチェルト・ソアーヴェと共演しています。しばしば見られる表現意欲の先走るモンテヴェルディではなく、あくまで明るく美しく開放感のあるとても聞きやすくて心地よい演奏に仕上げています。コンチェルト・ソアーヴェはキールと鍵盤楽器奏者のエメによって創立された団体。イタリアの初期バロック音楽を中心としていています。 (Ki)  
HMC-901856
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第10番、
第11番「トルコ行進曲付き」、
ピアノ・ソナタ第12番
アンドレアス・シュタイアー(フォルテピアノ)
※1785年頃のウィーン、アントン・ワルター製フォルテピアノのコピー1986年、マルブルク、モニカ・メイ作製

録音:2004年3月
第4番K.282と第14番K.457他のCD(HMC.901815及びSACD hybrid HMC.801815)(に続くシュタイアーのモーツァルト第2弾。いつもながら、シュタイアーの演奏には学究的な無機質さが微塵もなく、音楽の根底に眠る魅力まで自然に引き上げ、生命力に溢れています。
「第10番」第1楽章は実に自然なテンポが心地よく、さり気なく付加される即興的な装飾音も嫌味がなく、耳をくすぐります。展開部の美しさは、この楽器だからこそ醸し出せる不思議な幻想性に満ち、いきなり別世界に舞い込んだような錯覚に陥ります。この繊細な転調の揺らめき感じ切った幻想的な空気は、いつまでも消えないで欲しいと願いたくなるほど魅惑的です!第2楽章は最初の数小節の主題だけでも、その音楽的な呼吸に言葉を失います。特に長い音符の懐の深さと香り高い余韻!終楽章では、両手が完全なユニットになっているのはもちろんですが、フレーズの変わり目であえて低音部を強調することで、音楽に独特のメリハリをつけ、それによって真に躍動が漲る推進力ももたらしているところが印象的。第12番の第2楽章も、音楽性満点!主題が短調に転じる直前で自然にテンポを落とし、影を落としながら滑り込むまでのほんの数秒の間に、音の一つ一つををこれほど感じ切った演奏は決して多くないと思います。
逆に短調から長調に変わる際の鮮やかさに驚くのが「トルコ行進曲」!冒頭は音量を抑えて翳りを保ち、主題を繰り返す際に早速リズムを変え、チャーミングな装飾音が印象的ですが、そこから長調で大きく羽ばたく際の一呼吸が絶妙の極みなのです!その後更に腰を抜かすのがアバンギャルドなまでの即興風アレンジ!しかも気付くととてつもない高速に達しています!決して威嚇的なスリリングさではなく、この手作りのワクワク感がシュタイアーの演奏を味わう醍醐味の一つではないでしょうか?【湧々堂】
HMC-901857

HMC-801857(1SACD)
ブルックナー:交響曲第7番(ノヴァーク版) フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
シャンゼリゼO

録音:2004年4月
HMC-901860
バッハ:カンタータ「鳴り交わす絃の相和せる競いよ」BWV.207
カンタータ「鳴れ、太鼓よ!響け、トランペットよ!」BWV.214
キャロライン・サンプソン(S)
マーク・パドモア(T)
シュテファン・ゲンツ(Br)
ペーター・コーイ(Bs)
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
コレギウム・ヴォカーレ

録音:2004年6月
ヘレヴェッヘによるカンタータ・シリーズ。今回は、【鳴り交わす絃の相和せる競いよ】BWV207、ライプツィヒ大学の法学博士、ゴットリー・コルテの教授就任祝賀用に作曲された作品と、《鳴れ、太鼓よ!響け、トランペットよ!》BWV214、ザクセン選帝侯妃マリーア・ヨーゼファの誕生日を祝って上演された「音楽劇」です。【鳴り交わす絃の相和せる競いよ】BWV207 は、「幸福」「感謝」「勤勉」「名誉」という寓意的人物を中心に繰り広げられる音楽劇。歌詞にふさわしい華麗な曲調で、ヘレヴェッヘの明るく滑らかな演奏が聞きもの。また、歌手陣のサポートも強力。高水準の実力を兼備えた4人。サンプソンの純度の高い洗練された美声、コーイの深みのある豊かな音楽も特筆すべきものがあります。鳴れ、太鼓よ!響け、トランペットよ!》BWV214 は、壮麗な作品で、侯妃を祝福する女神たちの歌声が美しく響き渡る曲。華々しい歌手らの歌声はバロック・ファン必聴の演奏となっています。 (Ki)
HMC-901861
ヨハン・ローゼンミュラー(1619頃-1684):クリスマス物語
野原に羊飼いがいました
何ものも太陽の下に新しいものはない
キリストは私の命
死は私の益、愛する主なる神よ!
いと高きところの神の栄光
私はあなたに喜び
おお、イエスの名は/慄け、自然よ
コンラート・ユングヘーネル(指)
カントゥス・ケルン
コンチェルト・パラティーノ

録音:2004年6月
HMC-901862
サン=サーンス: ピアノ三重奏曲第1番,第2番 トリオ・ワンダラー

録音:2004年8月
第1番は1864年の作品。30歳を前にした、若く瑞々しい楽想の溢れる曲。第2番は1892年、50代後半になったサン=サーンスの筆さばきも充実した傑作です。どちらも聞けば一発で気に入るような名曲にもかかわらず、長いことお世辞にも人気作とはいえない状況でした。近年になって急速に人気が上昇している注目作品。特長の違うこの2作品、トリオ・ワンダラーはどちらも万全の演奏を披露してくれています。ことのより手強い第2番での強いテンションと真っ直ぐな意志の音楽は見事。サン=サーンスの隠れた傑作の真価を世に問うこと必至の名演です。 (Ki)
HMC-901863
クロード・ル・ジュヌ(1530頃-1600):シャンソン集
戦い/私はみじめだ
僕の耳には蚤がいる、ああ!
僧院長とその小姓
風がさらっていくだろう/他(全16曲)
ドミニク・ヴィス(指)
アンサンブル・クレマン・ジャヌカン

録音:2004年6月
HMC-901864
ニーノ・ロータ:「道」(管弦楽組曲)
「山猫」(レオパルドの為の舞曲)
ピアノ協奏曲「夕べの協奏曲」
ベネデット・ルポ(P)
ジュゼプ・ポンス(指)グラナダ市O
映画音楽の巨匠ニーノ・ロータは、ピツェッティに学び、ストラヴィンスキーとも親交を持ち、様々な技法を自分の中に取り込んだクラシック様式の作曲家としても忘れるわけにいきません。多数の写真、インタビュー記事、経歴、フィルモグラフィー付き。 (Ki)
HMC-901865
ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲集 Vol.2
第1番 ハ長調 Op.49
第4番 ニ長調 Op.83
第9番 変ホ長調 Op.117
エルサレムSQ
メンバーはイスラエル人ですが、メンバー全員が旧ソ連の出身で、そこで音楽の基礎を学んだ彼らは、ロシアの音楽家と言ってもさしつかえないほどこの国の音楽に精通。しかもイケメンの4人。 (Ki)                      (04012)
HMC-901866
ヤコブス・デ・ケルレ(1531/32-1591):ダ・パーチェム・ドミネ パウル・ファン・ネーヴェル(指)
ウエルガス・アンサンブル
16世紀の多声音楽というと、やや複雑に過ぎるイメージがあるかもしれませんが、ケルレの作風は、凝っていながら明快という実に美しい響きです。オランダ、イタリア、ドイツ、そしてプラハと各地活躍したケルレは、当時の礼拝音楽が形式を重んじるあまりに複雑をきわめた傾向にあったのに反して、シンプルな響きで言葉がはっきりと聴き取れる音楽をつくりました。このことから、教会音楽の救世主はケルレであり、パレストリーナではない、と言う人もいます。16世紀声楽音楽のパイオニア、ネーヴェルと手兵ウエルガス・アンサンブルが、ケルレの色褪せることのない美しい音楽を、悠久の時を超えて蘇らせます。 (Ki)
HMC-901867

HMC-801867(1SACD)
ドヴォォルザーク:チェロ協奏曲ロ短調
ピアノ三重奏曲第4番「ドゥムキー」*
ジャン=ギアン・ケラス(Vc)、
イザベル・ファウスト(Vn)、
レクサンドル・メルニコフ
イルジー・ビエロフラーヴェク(指)
プラハPO

録音:2004年8月プラハ、ルドルフィヌム、12月ベルリン、テルデック・スタジオ*
今を代表するスタープレイヤー、ケラスがチェロ協奏曲の最高峰“ドヴォコン”を録音!潤いを湛えた骨太の音色と、柔剛いずれもよくする鮮やかなテクニック。ケラスにとって初めてとなるこの録音、瑞瑞しい感性と覇気にあふれ、颯爽と弾き切るさまはじつに気持ちの良いものです。ビエロフラーヴェクが94 年に創設した精鋭オケ、プラハ・フィルハーモニアの響きも鮮烈で、風通しの良さが魅力。なお、カップリングは同じドヴォルザークの傑作トリオ「ドゥムキー」となんともぜいたくな上に、豪華な顔合わせ。まず、先にこちらもヴァイオリン協奏曲(HMC.901833) を同じバックで録音したファウスト。そして、かなめのピアノはリヒテルの高弟メルニコフ。新しい世代による、ほとばしる情熱のぶつかり合いがこの上なく刺激に満ちています。 (Ki)
HMC-901868
メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲 変ホ長調 Op.20*
協奏的変奏曲 Op.17(+/#)
無言歌 ニ長調 Op.109(+/#)
アルバムの綴り ホ短調#
アンサンブル・エクスプロラション
[クリスティーネ・ブッシュ、
リディア・フォーベス、チャン・チャン、
フランシス・ルーセンス、
マルガレーテ・アドルフ(Vn)
グース・イェケンドリュプ、
マルテン・ベーケン(Va)
ルル・ディールティエンス、
ゲールト・ドビエーヴル(Vc)]
ルル・ディールティエンス(Vc)+
フランク・ブラレイ(P)#

録音:2004年8月
HMC-901869
バッハ:パルティータ集
第2番 ハ短調 BWV.826
第3番 イ短調 BWV.827
第4番 ニ長調 BWV.828
セドリック・ティベルギアン(P)

録音:2004年8月
1998年のロン=ティボー・コンクールで優勝し一躍その名が知られたティベルギアン。デビュー盤のドビュッシー、HMC企画第一弾のベートーヴェンの変奏曲集と、いずれもきわめて高い評価を得て、次に挑んだ新録音は王道バッハのパルティータ3 曲。ここでも意志のはっきりしたクリアな音楽作りと、ガシッと本質を掴むたくましさ、そして知的でかつ音楽を楽しむ余裕のある懐の広さと、あらゆる点で唸らせられます。 (Ki)
HMC-901870
シューベルト:ヴァイオリンとピアノの為の作品集
幻想曲 ハ長調 Op.159 D.934/二重奏曲 イ長調 D.574/
(華麗な)ロンド ロ短調 Op.70 D.895
イザベル・ファウスト(Vn)
アレクサンドル・メルニコフ(P)
HMC-901871
バッハ:クラヴィーア協奏曲集
ニ短調 BWV.596〜シシリエンヌ/ト短調 BWV.975
パストラーレ.ヘ長調 BWV.590
イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV.971/ニ短調 BWV.974/ハ短調 BWV.981/ト長調 BWV.973
ロ短調 BWV.979〜アダージョ
アレクサンドル・タロー(P)

録音:2004年9月
有名なイタリア協奏曲をはじめ、いずれも協奏曲の名が付きながらソロの曲を収録。いずれもイタリアの協奏曲様式で書かれ、さらに大半がイタリアの作曲家の作品を元にした編曲作品です。BWV.596、BWV.975、BWV.973はヴィヴァルディ、BWV.974はA・マルチェッロ、BWV.981 はB・マルチェッロ、BWV.979はトレッリが原曲。つまりバッハとイタリアの協奏曲の邂逅がこのCD のテーマです。タローは、ピアノでしか出せない深い情感が豊かで、加えて知性的なコントロールも見事、現代におけるピアノ演奏のバッハの意義を十全に感じさせてくれる出来ばえです。スタインウェイの上品な響きも特筆。 (Ki)
HMC-901872
プーランク:無伴奏合唱作品集
7つの歌[白い雪/ほとんどゆがまずに/新しい夜のためにすべての権利/美とそれに似たもの/マリー/光る]
小カンタータ「ある雪の夕暮れ」
カンタータ「人間の顔」
アッシジの聖フランシスコの4つの小さな祈り
酒飲みの歌
ダニエル・ロイス(指)
RIAS室内cho

録音:2004年9月
HMC-801873(1SACD)
タリス&ピッツ:40声の合唱作品
タリス:汝のほかに望みなし
パーセル:主よ、わが祈りを聞きたまえ
バッハ:フーガの技法〜対位1
ハーヴェイ:聖霊よ、おいでください
クヌート・ニューステット(1915-):不滅のバッハ
コダーイ:オルガン讃歌
サンドストレム:主よ、わが祈りを聞きたまえ
ピッツ:XL他
サイモン・ハルゼー(指)
ベルリン放送cho
アフィート・ガスト(Org)

録音:2004年9月
ベルリン放送合唱団は、ラジオ放送の誕生から間もない1925 年に創立、戦後は名匠ヘルムート・コッホに育てられました。1980年代から、現代音楽も盛んに取上げるようになり、今日高い評価を得ています。2001年からサイモン・ハルゼーが指揮にあたっています。このCD には、コダーイの名作「オルガン讃歌」、タリスの「汝のほかに望みなし」といった合唱マニアおなじみの名作があれば、バッハの「フーガの技法」の冒頭曲を無伴奏合唱で歌ったり、ノルウェーの作曲家、クヌート・ニューステット(1915-)らの作品、さらにグレゴリオ聖歌など、多彩。演奏は極上!しかも作品によって、合唱の配置とマイクを工夫し、SACD での再生ではサラウンド効果がバッチリ!合唱マニアはもちろん、オーディオ・マニアも必聴! (Ki)
HMC-901874
アルフォンソ・フェラボスコ(1543-1588):わが魂よ、主に祝福を与えよ(詩篇103)
日々罪を犯し/主は私たちの罪によってではなく(以上モテット)
甘い怒り/あなたは黒いが美しい/あのいつも苦い(以上マドリガル)
あなたのそばに(シャンソン)
パウル・ファン・ネーヴェル(指)
ウエルガス・アンサンブル

録音:2004年9月
16世紀のヨーロッパで、アルフォンソ・フェラボスコ・イル・パードレ(1543-1588)はかなり波乱万丈の生涯を送った人物です。ボローニャ出身、1550 年代後半にイタリアを離れ、ロレーヌ枢機卿シャルル・ド・ギーズのもとで名声を高め、ついに英国女王エリザベス1 世お抱えとなりました。ところが1577 年、誤解から英国を追い出されフランスへ、さらに翌年にイタリアに帰るや教皇の命で逮捕され、3 年も投獄されます。フランスのカトリーヌ・ド・メディチの嘆願で釈放され、何とか静かな余生を過ごすことが出来ました。16 世紀ヨーロッパの大物が何人も関わるほど、フェラボスコの音楽の魅力は強いものだったのです。意外なことに、フェラボスコ単独のCD は非常に少ないのが現状。そこに登場したのが、パウル・ファン・ネーヴェル率いるウエルガス・アンサンブルの演奏するこのCD。詩篇103 番「わが魂よ、主に祝福を与えよ」を中心に、モテット、マドリガルなどを収録。エリザベス1 世を虜にした、安らぎに満ちた美しい音楽にヒタヒタとつかることができます。 (Ki)
HMC-901875
旅へのいざない
ヴォーン・ウィリアムズ:旅の歌(全9曲)
マーラー:さすらう若人の歌(全4曲)
ピッツェッティ:ペトラルカの3つのソネット
デュパルク:旅への誘い/波と鐘
 恍惚/フィディレ/ロズモーンドの館
 溜め息
ディートリヒ・ヘンシェル(Br)
フリッツ・シュヴィングハンマー(P)
フィッシャー=ディースカウの後継者と目され、23歳でのデビュー以来その名声をほしいままにしているヘンシェル。次なる新譜は、「旅への誘い」。「旅」にまつわる歌曲を中心に集めた一枚です。白眉はやはりタイトルにもなっているデュパルク。シュヴィングハンマーのピアノの前奏から心がぞわぞわとさせられ、時にテノールをも思わ分の美声に、別世界へと連れて行かれそうになります。別世界とははたして異国なのか、それとも死後の世界なのか・・・いろいろな「旅」を味わうことができる、深い内容です。この表現の深さでまだ40歳になるかならないか(1967 年生まれ)の年齢とは、ヘンシェルの今後に目が離せません。シュヴィングハンマーというこれまたドイチュ的系列の名リート・ピアニストを相手に迎え、文句なしの1枚です。  (Ki)
HMC-901876
バッハ:ヴァイオリン協奏曲 BWV.1052(オリジナル復刻版)
2台のチェンバロの為の協奏曲 BWV.1062(2つのヴァイオリンの為の協奏曲 BWV.1043より編曲)
2つのフルートとチェンバロの為の協奏曲 BWV.1057(ブランデンブルク協奏曲第4番 BWV.1049より編曲)
オーボエとヴァイオリンの為の協奏曲 BWV.1060(オリジナル復刻版 BWV.1060a)
ステファン・メイ
ミドリ・ザイラー
ラファエル・アルパーマン他
ベルリン古楽アカデミー

録音:2004年11月
「ヴァイオリン協奏曲BWV1052」は消失したとされるヴァイオリン協奏曲で、カンタータ(BWV 146)→オルガン協奏曲(BWV 188)→チェンバロ協奏曲(BWV 1052a)と編曲されています。このオリジナル復刻版は、C.P.E.バッハのチェンバロ作品の断章をもとにミドリ・ザイラーが編曲したもの。ファンタジー豊かで、華麗な音楽。ロマン派の音楽家たちも「バッハ最大の傑作のひとつ」と魅了されていた作品です。ベルリン古楽アカデミーは、ドイツの歴史と伝統に培かわれたアカデミックな品格漂う演奏。名手たちの卓越したテクニックに裏付けされた見事なアンサンブルです。特に「オーボエとヴァイオリンのための協奏曲BWV1060」では、オーボエの木の香りを感じさせる暖かい音色は、他の楽器と調和して艶やかで洗練された響きに聞き惚れてしまいます。  (Ki)
HMC-901877(2CD)

HMC-801877(2SACD)
ヘンデル:オラトリオ「サウル」 ギドン・サックス(Bs:サウル)
ローレンス・ザゾ(CT:ダヴィデ)
ジェレミー・オヴェンデン(T:ヨナタン)
ローズマリー・ジョシュア(S:ミカル)
エンマ・ベル(S:メラブ)他
ルネ・ヤーコプス(指)
コンチェルト・ケルン
RIAS室内cho

録音:2004年
1739 年に初演され、ヘンデルの英語声楽作品への道を決定付けた傑作。旧約聖書のサムエル記に名高いユダヤの指導者サウルの物語。サウルは若き英雄ダビデに激しく嫉妬し、息子ヨナタンの訴えも聞かずダビデを殺そうとしたが、結局破滅してしまう、という人間の心の弱さを深くえぐった傑作です。ヤーコプスは既に「フラーヴィオ」、「ジューリオ・チェーザレ」、そして「リナルド」と、ヘンデルのオペラでは世界的に大喝采を浴びています。そして「メサイア」よりも先に、より劇的で掘り込みの深い「サウル」を選んだところに、自身の程が伺えます。歌手も充実。  (Ki)
HMC-901879
R.シュトラウス:歌曲集
献呈 Op.10-1/なにも! Op.10-2
夜 Op.10-3/誰がしたのか?Op.10-6
解き放たれて Op.39-4
万霊節 Op.10-8
4つの歌 Op.27[憩え、わが心/ツェツィーリエ/ひそやかな誘い/あすの朝]
懐かしい面影 Op.48-1
私はお前を愛す Op.37-2
5つの素朴な歌 Op.21[私の思いのすべて/あなたは私の心の王冠/ああ恋人よ、私は別れねばならない/ああ悲しい、不幸なる者よ/女たちは時にはつつましく]
たそがれの夢 Op.29-1
夜の逍遥 Op.29-3
「はすの花びら」からの6つの歌 Op.19[おとめよ、それがなんの役にたつというのか/あなたの黒髪を私の頭に広げてください/美しく、しかし冷たい空の星よ/二人の秘密をなぜ隠すのか/希望と失望/私の心は沈黙し冷える]
私は恋を抱いて Op.32-1
あこがれ Op.32-2/悪天候 Op.69-5
ヨナス・カウフマン(T)
ヘルムート・ドイチュ(P)
1993年にニュルンベルクのマイスタージンガーコンクールで見事優勝したヨナス・カウフマンは現在36歳。チューリヒ歌劇場でもひっぱりだこ、超人気者の彼は、ケント・ナガノ指揮の「ヤコブのはしご」(HMC 801821)で「指名されたもの」を熱唱、また、ノリントン指揮のベートーヴェンの第九(93.088)のソロでも凛々しい美声を披露していました。タミーノやアルフレートなど、どちらかというとリリックテナーの王子タイプの役が多いですが、リートを歌わせるとなんとも頼もしい声。リートを歌う時に必ずパートナーとなる巨匠ドイチュのピアノとあいまって、シュトラウスの歌曲の魅力をじっくり味わわせてくれます。変幻自在、怪物的ともいえるその実力に脱帽するばかりの名テナーの魅力を心ゆくまで堪能できます。  (Ki)
HMC-901880
ドヴォルザーク:ピアノ五重奏曲イ長調 Op.81、
バガテル Op.47(2 つのヴァイオリン、チェロとハルモニウムのための)
フランク・ブラレイ(P、ハルモニウム)、
ロエル・ディールティエンス(Vc)、
アンサンブル・エクスプロラシオン
[クリスティーネ・ブッシュ(Vn)、
ヒュン=ジョン・カン(Vn)、
アンナ・ルイス=ディーヴァ(Va)]
ブラレイと、温厚派のディールティエンス率いるアンサンブル・エクスプロラシオンがここまでヒートアップするとは、ちょっと驚きもののピアノ五重奏曲に思わず釘付けです。カップリングのバガテルがこれまた素晴らしく、歌心に満ちています。和声やリズムのセンスがひと際光るブラレイのハルモニウムと、弦のからみあいには心奪われてしまいます。 (Ki)
HMC-901882
ヴォルフ:メーリケ詩集
[祈り/散歩/時は春/春に
古い絵に(古画に題す)/希望の復活
/旅路/四月の黄色い蝶/庭師
めぐりあい/鼓主/狩人の歌
つきることのない愛/朝早く
思え、おお魂よ/愛する人に
ペレグリーナ その1
ペレグリーナ その2/さようなら
世をのがれて/火の騎士
こうのとりの使い/別れ]
ウェルナー・ギュラ(T)
ヤン・シュルツ(P)
ギュラは、ヴォルフが愛してやまなかったメーリケの詩によるこれらの歌曲を、時に軽やかに、時にしっとりとした涙のように歌います。ドラマティックな内容のときでも、格調たかいギュラの声は激情に流されることなく、詩のもつドラマを表現します。ピアノも長年のパートナー、ヤン・シュルツ。もともと彼はコンセルトヘボウ管弦楽団などでホルン奏者もつとめた実力者で、今は指揮者としても幅広く活躍しています。ギュラにぴったりと寄り添った伴奏は実に見事です。 (Ki)
HMC-901883
ガーシュウィン:パリのアメリカ人(ウィリアム・ドリーによるピアノ・ソロ版)
ラプソディ・イン・ブルー(作曲者によるピアノ・ソロ版)
ソング・ブック(全18曲)
ジョン・ブラウンのブルース
3つの前奏曲/2つのワルツ.ハ長調
2つの調の為の即興曲
メリー・アンドルー
前奏曲 メロディー17番
前奏曲 4度のノヴェレット
スリー・クォーター・ブルース
プロムナード−前奏曲
フランク・ブラレイ(P)

録音:2004年12月
シューベルトの見事の演奏から早10年。ガーシュウィンのジャジーな味を生かしつつ、クラシック音楽としての上質さを存分に引き出した妙技を披露。
HMC-901884
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 Op.98
シェーンベルク:管弦楽の為の変奏曲 Op.31
ケント・ナガノ(指)
ベルリン・ドイツSO
2000年から6年間、ベルリン・ドイツ交響楽団の音楽監督をつとめたケント・ナガノ。音楽監督としてハルモニアムンディレーベルに録音した最後の作品は、ブラームスの第4 番とシェーンベルク。毎回深い思慮に満ちた演奏を聞かせるケント・ナガノのブラームスの第4 番は文句のない出来ばえです。第1 楽章の冒頭から、ただならぬ緊張感と集中力に満ちており、その空気は神々しささえ感じさせます。つづくシェーンベルクの変奏曲も、オケの技量の高さ、そしてケント・ナガノの構成力の確かさ、すべてが最高水準で、圧倒的な完成度です。12音で書かれた作品ではありますが、細部にいたるまで巧みに色づけが施されており、あたたかみ、時に官能性すら感じさせる演奏です。ケント・ナガノは、今後はバイエルン歌劇場とモントリオール交響楽団の音楽監督というポストを得、あらたにその活動を展開させていくことになっています。また、ひきつづきベルリン・ドイツ交響楽団でも首席客演指揮者として演奏を重ねていくこととなっています。 (Ki)
HMC-901889
ロカテッリ:合奏協奏曲集Op.1 より
第2番/第4番/第7番−第9番
ゴットフリート・フォン・デア・ゴルツ(指)
フライブルク・バロックO
ロカテッリは、バロック時代、作曲家としてはもちろんヴァイオリニストとしても大活躍していました。そんな彼が作曲したコンチェルト・グロッソに弦楽器奏法の粋が盛り込まれているのは当然のこと。結果として得られた作品は、弦楽器の変幻自在な魅力に満ちたものです。こんな難しい技法を盛り込んだ弦楽器ものをパガニーニより100年も前に書いていたとは!ロカテッリ、おそるべしです。フライブルク・バロック・オーケストラの面々の妙技が冴え渡る名演となっています。 (Ki)
HMC-901890
シューマン:ピアノ作品集
蝶々Op.2、謝肉祭Op.9
ウィーンの謝肉祭の道化Op.26
シュテファン・ヴラダー(P)
ヴラダーは生粋のウィーン育ちのピアニストです。今やウィーン音楽大学の教授もつとめ、若干41 歳にして名実ともに巨匠の仲間入りを果たした音楽家の一人。そんな彼の新譜は、シューマンのピアノへの創作意欲がもっとも活発だったころの作品集です。謝肉祭はクララへの愛の歌、さらにはショパンへのオマージュなど、詩・文学的な面からみても実に興味深い楽章がちりばめられており、ヴラダーはそれらひとつひとつをかみしめるように、しかし熱さをもって弾いています。また、「ウィーンの謝肉祭の道化」は謝肉祭の前の仮面をつけた人々が集うお祭の喧騒が感じられる曲ですが、ヴラダーの演奏は一人一人の仮面の下までをも想像させるような、イマジネーションと独創性に満ちたものとなっています。 (Ki)
HMC-901891
モーツァルト:交響曲第35番「ハフナー」
交響曲第36番「リンツ」
イルジー・ビエロフラーヴェク(指)
プラハ・フィルハーモニア
ビエロフラーヴェクのHMF初録音!オーケストラは、1994年の設立から緊密なプラハ・フィルハーモニア。演奏は、小オーケストラの特性を生かして、キビキビとした端麗系でありながら、隅々までビエロフラーヴェクの目が行き届ていて、実に素晴らしい演奏になっています。 (Ki)
HMC-901892
アルゼンチンの歌曲集
カルロス・グァスタビーノ(1912-2000):魅惑/カンパヌラよ、どこへ行くの?
 パンパマパ
 小さなハンカチを貸しておくれ
ルイス・ヒアンネオ(1897-1968):6つのコプラ
アベル・フレウリ(1903-1958):忘れっぽいあなた/あなたの思い出
カルロス・ロペス・ブシャルド(1881-1948):荷馬車屋の歌
 ペリコの歌/もし彼女を見かけたら
 ヴィダラ(愛の歌)/ユイェーニャ
 かよわくつないだ手
アンヘル・E・ラサーラ:満天の星
 アストル・ピアソラ:迷い鳥
 ジャチント・チクラーナ(ボルヘス詩)/操り人形(同 詩)
マヌエル・ゴメス・カッリーロ(1883-1968):フアイニート
フローロ・M・ウガルテ(1884- 1975):クレオール(クリオーリョ)の小さな馬
マヌエル・ゴメス・カッリーロ:トルバドゥールの捧げ物
アルベルト・ウィリアムス:恋を忘れた女のミロンガ
マヌエル・ゴメス・カッリーロ:バイレシート
カルロス・グァスタヴィーノ:朝の門
 チャパナイのワイン
 サン・ペドロの男/小さな村、私の村
ベルナルダ・フィンク(Ms)
マルコス・フィンク(Br)
カルメン・ピアッツィーニ(P)
ベルナルダ・フィンクは、今年11 月のウィーン・コンツェントゥス・ムジクス来日公演の「メサイア」でアルト・ソロを務めるなどますますその活躍の幅を広げているメゾソプラノ歌手。このたび、ちょっと趣向を変えて、アルゼンチンの作曲家の作品を集めた歌曲集をリリースします。名手カルメン・ピアッツィーニをピアニストにむかえてのピアソラは、聴いていてなにか血が騒ぐような、忘れかけていた情熱を呼び覚ましてくれるような力に満ちています。時にやさしく、時に熱く激しく、情熱で私たちを包みこんでくれるようなアルバムです。 (Ki)
HMC-901893
ドビュッシー:ベルガマスク組曲
2つのアラベスク/子供の領分
映像第1集/同第2集
アラン・プラネス(P)

使用楽器:1902年、ブリュートナー製
HMC-901894
ボッケリーニ:2つのチェロを伴う弦楽五重奏曲集
弦楽五重奏曲集Op.18〜第3番変ホ長調 G.287
弦楽五重奏曲集Op.29〜第6番ト短調 G.318
弦楽五重奏曲集Op.41〜第2番ヘ長調 G.347 Op.37-22
ロエル・ディールティエンス(Vc)(指)
アンサンブル・エクスプロラシオン
ボッケリーニの弦楽五重奏曲は、どのパートをとっても役割が重要で、さらにスタイルも実に様々。特にここにおさめられた3 曲の五重奏曲は、ボッケリーニの真骨頂が味わえる名曲ばかりです。瑞々しい弦の音色、まばゆい音型、メリハリのある作品が、アンサンブル・エクスプロラシオンのメンバーたちによって見事に演奏されています。 (Ki)
HMC-901895(2CD)
シュッツ:Opus ultimum 〜白鳥の歌(13 のモテット)
【CD1】
いかに幸いなことでしょうSWV.482、あなたのしもべのためにお計らい下さいSWV.483、主よ、あなたのおきてに従う道を示して下さいSWV.484、あなたのしもべへの御言葉を思い起こして下さいSWV.485、あなたはしもべに善きことをなさいます、主よSWV.486、私の魂はあなたの救いを乞い求めSWV.487、私はあなたの律法をどれほど愛していることでしょう! SWV.488
【CD2】
移り気な心の者を私は憎みSWV.489、あなたのあかしは驚くべきものですSWV.490、心を尽くして呼び求めますSWV.491、地位ある人々が理由もなく迫害しますがSWV.492、全地よ主に向かって喜びの叫びを上げよSWV.493〔詩篇第100〕、私の魂は主をあがめSWV.494(1671)[2cho, 器楽]〔ドイツ語マニフィカト〕
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
コンチェルト・パラティーノ、
コレギウム・ヴォカーレ
俗世から断ち切られた静寂のなか、一人部屋にこもって瞑想をしているような気分になる、シュッツ最晩年の作品。1660 年代に なると、70歳を過ぎたシュッツは自身の「死」というものを意識しはじめるようになりました。彼は、自分の仕事の集大成として、 詩篇の内で最も長い、詩篇119(176の節をもつ)に曲をつけるという作業を始めます。演奏されることを特別には念頭におかずに。 何年かのち、シュッツのこの最期の作品は、二つの合唱のための11 のモテットであると考えられ、現在の13のモテットとしての 曲集のかたちに再構成され、演奏されるようになったのは1990年になってからのことでした。ヘレヴェッヘの演奏により、ひとつ 名演奏の録音が加わりました。彼が指揮をすると、コンチェルト・パラティーノの奏でる音色もひときわ柔らかで美しいものになるのは、まさにヘレヴェッヘ・マジックならではと申せましょう。  (Ki)
HMC-901897
モーツァルト:交響曲31番「パリ」
フルートとハープの為の協奏曲 ハ長調 K.299
協奏交響曲 K.297b
スザンヌ・カイザー(Fl)
アナ=カトリン・ブリュッグマン(Ob)
バビエル・サフラ(Fg)
アーウィン・ウィアリンガ(Hrn)
マーラ・ガラッシ(Hp)
ゴットフリード・フォン・デア・ゴルツ(指)
フライブルグ・バロックO
ドイツの古楽器アンサンブル、フライブルガー・バロック・オーケストラは、リーダーでありヴァイオリンのゴットフリード・フォン・デア・ゴルツを筆頭に名手揃いの個性派アンサンブル。《パリ交響曲》での凄腕アンサブル、フライブルガー・バロックの精緻で輝かしい演奏は、緩急の差、作品の壮大さを見事に表現しています。《フルートとハープのための協奏曲》は典雅なフランス風音楽で独奏楽器の艶やかな音色が際立つ甘美な演奏。協奏交響曲では、ゴットフリード・フォン・デア・ゴルツ率いるアンサンブルの名人芸が光っています。 (Ki)
HMC-901898
ハンブルク 1734〜18世紀ドイツの鍵盤音楽
ヘンデル:シャコンヌ ト長調HMV.435
テレマン:「忠実な音楽の師」〜組曲ブルレスケ.ニ短調[ポロネーズ風序曲/ルール/ガヴォットとロンドー/ブーレ/メヌエット/ジグ]
ブクステフーデ:前奏曲とフーガ ト短調 BuxWV.163
マッテゾン:「通奏低音大教本」〜上級問題第13番,同第7番
ゲオルク・ベーム:前奏曲,フーガと後奏曲 ト短調
テレマン:「水の音楽−ハンブルクの潮の干満」組曲 ハ長調〜[ルール(恋におちたネプチューン)/ブーレ(テティスの目覚め)/ガヴォット(ナイアデスの遊戯)/ハレルキナーダ(おどけたトリトン)/ジグ(潮の干満)](アンドレアス・シュタイアー編曲、チェンバロ版)
ヴェックマン:トッカータ第4番 イ短調
シャイデマン:涙のパヴァーヌ ニ短調
テレマン:組曲「アルスター川」ヘ長調〜[ハンブルクのカリヨン/カエルとカラスのコンサート/白鳥の歌/アルスターの羊飼いの陽気な音楽]
ブリス・ポセ:アントレー〜アンドレアスの為の
(デューラーの「ヒエロニムス」より)
アンドレアス・シュタイアー(Cemb)

使用復元楽器モデル:1734年、ヒエロニムス・アルブレヒト・ハス製
モーツァルトのソナタ集(HMC.901856)では私たちの度肝を抜く「トルコ行進曲」を聴かせてくれたことでも記憶に新しいですが、今回は時代を少し遡って、バロック時代の音楽のリリース。テレマンの名曲『ハンブルクの潮の干満』や、『アルスター川』の演奏からは、神話にでてくる神々が戯れている様子や、カリヨンが華やかに町に鳴り響く情景が目に浮かぶようです。目玉なのがマッテゾンの「通奏低音大教本」の録音。マッテゾンは、18世紀前半当時のドイツの音楽界の大御所で、この「通奏低音大教本」は当時のオルガニストたちの必携の書でした。シュタイアーがどのように通奏低音に即興的な和声づけを施すか、大いに興味をそそられるところです。モーツァルトの「トルコ行進曲」で見せた達者なアレンジャーぶりが遺憾なく発揮された、創意に富んだ一枚です。当時のチェンバロ製作一家、ハスの作による楽器のレプリカを使用しており、チェンバロなのにオルガンのような厚い響きが堪能できます。 (Ki)
HMC-901899
ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第12番 ヘ長調 Op.96「アメリカ」
ピアノ五重奏曲 イ長調 Op.81*
シュテファン・ヴラダー(P)
エルサレムSQ
来日公演のたびに、演奏内容はもちろん甘いマスクと親しみ易いキャラで人気上昇中のイェルサレム四重奏団のハイドン(HMC.901823)、ショスタコーヴィチ(HMC.901865) につづく第3 弾。ピアノはこのところ急速に円熟味を増しているヴラダー。大家への道を着実に歩む彼が、若手とともに味わい深い音楽を作っています。  (Ki)

HMC-901900
オリヴィエ・グレフ(1950-2000):ソナタ・ダ・レクイエム Op.283
ピアノ三重奏曲[深き淵より/ジャヴァ/ロマンツェ/アッラ・ブレーヴェ]
エマニュエル・ベルトラン(Vc)
パスカル・アモワイヤル(P)
アンティエ・ヴァイトハース(Vn)
1950年から2000年、音楽の世界が無調、アヴァンギャルドと様々な方向に向かっていく中で、それらの流れと無関係な独自の音世界を守り続けたオリヴィエ・グレフ。メータ、ミシェル・ダルベルトといった名だたる演奏家たちから高く評価を受け、オリヴィエ・グレフ財団及びアパックス社が設立され、様々な作品が出版されています。「私はこれまでにそんなにたくさんの作品をつくったつもりはない。もし私がこの多作ぶりについて自分自身にたずねるとしたら、私の人生は音楽そのものであるからだ、と答えるであろう。作曲することをやめたら、私は死ぬ。」1998年、このCDに収録されているピアノ・トリオを書き終えたときの言葉です。1曲目は死を喪失、旅、魂の黙想の3つの観点から見つめた、死者への優しいなぐさめの音楽。2曲目のトリオは、ショスタコーヴィチを思わせる味付けのちょっとアクセントのきいた曲想です。 (Ki)
HMC-901902
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ集
第16番 ト長調 Op.31-1
第17番 ニ短調 Op.31-2「テンペスト」
第18番 変ホ長調 Op.31-3
ポール・ルイス(P)

録音:2005年4月
ルイスはロンドンでベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏会を敢行、新時代のベートーヴェン弾きとして高い評価を受けています。日本でもこの6 月に東京の武蔵野市民文化会館小ホールでこの3 曲(と「テレーゼ」) を演奏、大喝采をうけたのは記憶に新しいところです。ルイスのピアノは、決して髪を振り乱して力んで引くようなものではなく、徹頭徹尾、真面目に曲に向き合い、丁寧に、そして密度濃く音楽を掘り下げていったもの。ぱっと見、派手さがないベートーヴェンなので、ちょっと物足りないような気がしても、聴き進めていくうちに「こりゃスゴイ!」と言うことに気がつくはずです。「ブレンデルの高弟」という“お墨付き”で語られることの多いルイスですが、すでにそんな領域はとっくに脱して、自らの境地を確立しています。これから先が益々期待できるピアニストです。 (Ki)
HMC-901903(3CD)
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ集 Vol.2
第8番「悲愴」 ハ短調 Op.13
第11番 変ロ長調 Op.22
第28番 イ長調 Op.101
第9番 ホ長調 Op.14-1
第10番 ト長調 Op.14-2
第24番 嬰ヘ長調 Op.78
第21番「ワルトシュタイン」 Op.53
第27番 ホ短調 Op.90
第25番 ト長調 Op.79
第29番「ハンマークラヴィーア」
ポール・ルイス(P)

録音:2005年12月、2006年3月
ブレンデルの薫陶を受けたポール・ルイスのベートーヴェンは師匠仕込みのきわめて端正なもの。ワルトシュタインの第1楽章など、比較的若いピアニストだとついつい力で弾いてしまいがちですが、見事なコントロールによる絶妙なテンポ加減で、曲のもつエネルギーに流されることなく聴かせてくれます。「悲愴」の冒頭のテンポは彼にしかなしえない「遅すぎない」ギリギリのところです。若くしてこれだけの抑制のきいた境地でベートーヴェンを弾くことができるとは、ポール・ルイスは将来なかなかおそろしい大物になるかもしれません。 (Ki)
HMC-901906(3CD)
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ集Vol.3
第1番ヘ短調Op.2-1、第2番イ長調Op.2-2
第3番ハ長調Op.2-3、第4番変ホ長調Op.7
第22番ヘ長調Op.54、第23番「熱情」
第12番変イ長調Op.26(「葬送行進曲」)
第13番変ホ長調Op.27-1、第14番「月光」
ポール・ルイス(P)

録音:2006年3月30日、10月31日&11月1−3日、2007年2月3−6日 ベルリン・テルデックス・スタジオ
2005年から2007年にかけて、ポール・ルイスが母国イギリスをはじめ欧米で敢行しているベートーヴェンのソナタ全曲演奏会。これに並 行して進むハルモニアムンディのプロジェクトはそのまま実演での確かな手応えを感じさせます。人気の「月光」や「熱情」が登場する第3 弾でも、ちょうど若き日の師ブレンデルの録音がそうであったように、若さにまかせてバリバリ弾くというより、じっくりていねいに聴かせ てゆくスタイルに共鳴する方も多いのでは。 (Ki)
HMC-901909(3CD)
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ集vol.4
第5番ハ短調Op.10-1、
第6番ヘ長調Op.10-2、
第7番ニ長調Op.10-3、
第15番「田園」ニ長調Op.28、
第19番ト短調Op.49-1、
第20番ト長調Op.49-2、
第26番「告別」変ホ長調Op.81a、
第30番ホ長調Op.109、
第31番変イ長調Op.110、
第32番ハ短調Op.111
ポール・ルイス(P)

録音:2005年4月、2006年6月、2007年4月&6月
しなやかな鋼を思わせる強靭なテクニックと、自在に揺れ動く叙情とリズムを兼ね備えた逸材、ポール・ルイスによるベートーヴェンのソナタ・ツィクルスの完結編。なかなか弟子をとらないブレンデルに認められ彼のもとでも研鑽を積んだルイス、澄んだ音色は師匠ゆずり。若手世代のベートーヴェン全集の金字塔ともいえる、堂々の演奏です。6月には来日公演も予定されており、ますます目が離せません。  (Ki)
HMC-901912
ブクステフーデ:カンタータ「われらがイエスの四肢」BuxWV.75
同「われらより取り去りたまえ、主よ」BuxWV.78
コンラート・ユングヘーネル(指)
カントゥス・ケルン
ブクステフーデは北ドイツのリューベックにある聖マリア教会のオルガニストでした。北ドイツのオルガン楽派最大の音楽家であり、J.S. バッハのオルガン音楽に最大の影響を与えました。またブクステフーデはオルガン曲だけでなく、多くの宗教的なカンタータを残しています。その彼の傑作のひとつ「われらがイエスの四肢」。オルガニストであったブクステフーデの重厚な響きを、小編成ながらも透明感を帯びた美しい演奏に仕上げています。 (Ki)
HMC-801913(1SACD)
ストラヴィンスキー:バレエ・カンタータ「結婚」(ロシア語歌唱)
ミサ (1944;ラテン語歌唱)
古いイギリスのテクストによるカンタータ (1952;英語歌唱)
キャロライン・サンプソン(S)
スーザン・パリー(A)
フセヴォロド・グリヴノフ、
ヤン・コボウ(T)
マクシム・ミハイロフ(Bs)
ダニエル・ルイス(指)RIAS室内cho
ミュジーク・ファブリク
4台のピアノと各種打楽器が合唱に彩りを添える「結婚」はストラヴィンスキーならではの声楽作品で、「春の祭典」を思わす古代の儀礼的な雰囲気とバーバリスティックな音響に満ちています。これまで数種の録音がありましたが、SACDハイブリッド盤のクリアな録音で、初めてストラヴィンスキーの意図した驚くべきオーディオ効果を実感しました。RIAS室内合唱団がまた巧い! (Ki)

HMC-802236
(2SACD+DVD)
バッハ:ヨハネ受難曲

[特典] メイキングDVD(56分)
ヴェルナー・ギュラー(福音史家/テノール)
ヨハネス・ヴァイサー(Br)
スンハエ・イム(S)
ベンノ・シャフトナー(A)
セバスティアン・コールヘップ(T)
ベルリン古楽アカデミー
RIAS室内Cho
ベルリン大聖堂Cho
ルネ・ヤーコプス(指)

録音:2015年7月、テルデックス・スタジオ、ベルリン
ヤーコプスは「マタイ受難曲」(HMC.802156) に引き続き「ヨハネ受難曲」を録音しました。満を持して登場した「マタイ受難曲」は、長年の経験 と研究に裏打ちされた記念碑的録音であったので、今回の「ヨハネ受難曲」も大いに期待できる内容です。
「ヨハネ受難曲」は、バッハの生前に計4回演奏され、毎回新たな変更が加えられてきた作品です。バッハがその時の演奏で使える楽器や演奏家に影 響され改訂された場合が多いですが、もっとも大幅に変更されたのが1725年の第2稿です。例えば、冒頭の合唱部分には、当時まだ作曲されていない マタイ受難曲第1部の終曲を使用し、作品後半にも数曲異なるアリアを使用しています。ヤーコプスはこの第2稿のみで追加、差し替えされた5曲(第 1曲合唱「おお、人よ、汝の大いなる罪を悲しめ」に変更。第11曲テノールのアリアを追加。第13曲テノール・アリアを別の曲に。第19曲テノール・ アリアを別の曲に。第40曲カンタータBWV23終曲合唱「キリスト、汝 神の子羊」に変更。)をアルバムの最後に収めています。ヤーコプスは、この 第2稿について是非とも注目して聞いて欲しいと語っています。パッケージにボーナスとして収められている第2稿を入れ込んで再構築させた録音をハイレ ゾダウンロード(harmoniamundi.comウェブサイトを参照)で通して聞くことができます。
ボーナスDVDには録音風景を収録したメイキング映像が収められています。「マタイ受難曲」同様に録音配置にもこだわっています。ヤーコプスは合唱 団の歌詞を最大限に明瞭にするため、そしてオーケストラにも最大限クリアな響きを求めるために、いくつかのパートに分類することを要求しました。福 音史家と通奏低音のパートは中央に、オーケストラは左に、右側には合唱、そこから各アリアを歌うソリストが現れ出るという、配置で録音されました。5.1 サラウンドで再生すると異なる4つのセクションが聞き手のまわりに配置されているように再生される臨場感溢れる録音となっています。
HMC-901915(2CD)
ブラームス:ピアノ三重奏曲全集
第1番 ロ長調 Op.8
第2番 ハ長調 Op.87
第3番 ハ短調 Op.101
ピアノ四重奏曲第1番 ト短調 Op.25*
トリオ・ヴァンダラー
[ジャン=マルク・フィリップ=ヴァルジャブディアン(Vn)
ラファエル・ピドゥ(Vc)
ヴァンサン・コック(P)]
クリストフ・ゴーゲ(Va;*)
ラ・フォル・ジュルネ音楽祭で昨年、今年と来日し、聴衆を魅了しているトリオ・ワンダラーの今度の新譜はブラームス。プライヴェートではメンバー一人一人がマイペースなグループですが、演奏となると背中がゾクゾクするような息のぴったりあったアンサンブルを繰り広げてくれます。弦の二人のしたたるような美音もさることながら、叙情と情熱に溢れるヴァンサン・コック(写真中央)のピアノの素晴らしさは際立っており、アンサンブルを見事に統率しています。ピアノ四重奏曲に加わったクリストフ・ゴーゲのヴィオラも、トリオ・ワンダラーの3人と巧みに絡み合い、ピアノ四重奏曲も聴く者の琴線に触れる名演となっています。  (Ki)
HMC-901917
テレマン:組曲 イ短調 TWV.55a:a21
協奏曲 ハ長調 TWV51:C1
水の音楽「ハンブルクの潮の干満」組曲 ハ長調
モーリス・シュテーガー(リコーダー)
ベルリン古楽アカデミー
1705 年から1725 年にかけて作曲されたテレマンの作品集です。リコーダー奏者のみならず、オーケストラにも、熟練の技術、そしてフランス、イタリア、ドイツの様式を熟知していることを要求する超絶技巧の曲ばかり。リコーダーのシュテーガーのヴィルトゥオジティの華やかにして快刀乱麻、胸のすくような見事な吹きぶりには圧倒され通しです。ハンブルクの潮の干満も、テレマンの管弦楽の中でも最高傑作といわれるのも納得の力演です。  (Ki)
HMC-901919
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ イ短調 Op.23-4
ヴァイオリン・ソナタ ハ短調 Op.30-2
モーツァルトの「フィガロの結婚」の「もし伯爵様が踊るなら」による12の変奏曲 ヘ長調 WoO40
ダニエル・ゼペック(Vn)*
アンドレアス・シュタイアー(P)#

使用楽器:1700年頃、ザルツブルク製(ボン、ベートーヴェンハウス所蔵)*/1840年、グラーフ製#
ラ・フォル・ジュルネにはじまった5 月の来日でますますファンを魅了させたアンドレアス・シュタイアーの次なる新譜は、ダニエル・ゼペックとのベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ。ゼペックは、フランクフルトの音楽大学に学び、その後アルバン・ベルクのメンバーでもあるゲルハルト・シュルツのもとでも研鑽を積み、ブレーメン室内管弦楽団の奏者として、またドイツのみならず国際的室内楽奏者として活躍しています。シュタイアーともドイツ内外でたびたび共演をかさね、機知に富んだアンサンブルで聴く者をうならせるコンビです。使用した楽器は、リヒノフスキーがベートーヴェンにプレゼントした弦楽器のクヮルテット用4 つの楽器の中のヴァイオリン。ボンのベートーヴェン・ハウスが初めて録音のための使用を許可したというなんとも意義深いものです。モーツァルトの「トルコ行進曲」で我々の度肝をぬいたシュタイアー、ベートーヴェンでも時折光る独創性がなんとも魅力です。 (Ki)
HMC-901920
マーラー:歌曲集「子供の不思議な角笛」 サラ・コノリー(Ms)
ディートリヒ・ヘンシェル(Br)
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
シャンゼリゼO
ヘレヴェッへのマーラーといえば、あの斬新なシェーンベルク=リーン編曲の室内オケ版による「大地の歌」(HMA.1951477) が録音されたのが93 年。いままたここにヘレヴェッへが手兵シャンゼリゼ管とともに衝撃的なマーラー演奏をおくり出してきました。オリジナル楽器オケを伴った初めての「角笛」歌曲集の登場です。曲名に由来する同名の詩集は、詩人アルニムとブレンターノとがまとめあげたドイツの民謡詩集。およそ1887 年から1901年にかけての15 年以上に渡り、マーラーはこれにはまり好んで音楽をつけています。聴けばすぐに分かるように、第2 番から第4番までの交響曲群と内容的に密接にリンクするこの一連の歌曲は、マーラーの音楽宇宙の精髄を成す重要な作品です。ここでヘレヴェッへがロマン派の作品、たとえばシューマンやブルックナーの交響曲を手がける時にみせる異常なほど苛烈なアプローチを思い起こしてみてください。オリジナル楽器の繰り出す清新な響きの持ち味も相俟って、この歌曲をトータルに彩る軍楽調の箇所のなんとも刺激的なこと!その一方でバッハにも相通じるハーモニーの美しさは、まぎれもなくヘレヴェッへのもの。「美しいラッパが鳴り響くところ」など、どこからともなく怪しく退廃的な色香が匂い立ち、こ惑的な表情が濃密に折り重なってゆきます。さらに当代随一、合唱音楽のスペシャリストとして、もはや“人の声だけが織り成す美を究めているからでしょうか。最も旬のヘンシェル、バッハのカンタータ・シリーズでもおなじみのコノリーとソリスト各々の魅力を存分に引き出すあたりほとんど天才的。ヘレヴェッへが作り上げた画期的な「角笛」歌曲集。このアルバムからはいよいよますます交響曲シリーズへの想像と期待とが大きく膨らむに違いありません。 (Ki)
HMC-901921
ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」(ノヴァーク版) フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
シャンゼリゼO
美しいハーモニーを作り上げることにかけては天下一品のヘレヴェッヘ。すでに第1楽章冒頭の弦のトレモロが鳴り出す瞬間から釘づけで、弱音の繊細な表情はオリジナル楽器のオケならでは。主部に入ってからも見違えるように生気を取り戻したような音楽。ヴァイオリン両翼型配置のオケが立体的にこだまする、陰影豊かなアンダンテ。このあたり彼のバッハにも通じる深遠な世界が拡がります。力強く弾むスケルツォから充実し切ったフィナーレにかけての金管群の剛毅な響きも格別。もう曲が閉じられるまでがあっという間。すばらしい録音です。 (Ki)
HMC-901922
音楽芸術の第5元素
ラッスス:ミサ曲「すべての悲しみよ」、
トマス・アシュウェル(1478頃-1513以降):ミサ「アヴェ・マリア」、
パレストリーナ:ミサ「ウト・レ・ミ・ファ・ソ・ラ」
パウル・ファン・ネーヴェル(指)
ウエルガス・アンサンブ
このCDのタイトルは、録音が行われた、リスボンにある水の博物館に由来しています。第五の元素とは、気・火・地・水の4 要素のほ かにあると考えられた元素のこと。この場所自体がもつただならぬ雰囲気、そしてその音響は、これらの作品が普遍的で時空を超えた内 容(=「第五の」要素)をもっているということを私たちに示しています。厳格な対位法を用いて書かれたパレストリーナのミサ曲、イ ングランドが生んだ後期ゴシック様式の作品をのこしたアシュウェルのミサ曲、そして多声音楽爛熟期のラッススのミサ曲。これらの作品が、生きたものとして聴く者にせまってきます。ネーヴェル率いるウエルガス・アンサンブルの精鋭たちが織り成す、声の饗宴を味わ うことのできる1 枚となっています。 (Ki)
HMC-901923(2CD)

HMC-801923(2SACD)
モーツァルト:歌劇「ティートの慈悲」 マーク・パドモア(T:ティート)
アレクサンドリーナ・ペンダチャンスカ(S:ヴィテッリア)
ベルナルダ・フィンク(Ms:アンニオ)
スンハエ・イム(S:セルヴィーリア)
セルジョ・フォレスティ(B:プブリオ)
ルネ・ヤーコプス(指)
フライブルク・バロックO
RIAS室内cho

録音:2005年
《ティートの慈悲》は、1791年に皇帝レオポルト2 世のボヘミヤ王戴冠を祝うために急遽依頼されたオペラ・セリア。時間がなかったためレチタティーヴォをジュスマイアー任せにしたり、メタスタージオの台本が古めかしかったり、初演を見た王妃が駄作と貶したりと、せっかくの大作なのに200 年以上不遇な扱いを受けてきました。しかし近年ではモーツァルト晩年ならではのオペラ・セリアの傑作として人気が高まっています。セリアなら当然、時代楽器演奏が映えるというもの。この録音は、2005年11月のパリ、ブリュッセルでの上演と連動したもの。ヤーコプスの面目躍如たる輝かしい音楽は絶賛されました。また古楽最新世代の優れた歌手が見事な歌を聞かせてくれます。何と言ってもパドモアの柔らかくも情熱に満ちたテノールが最高!一方ヴェルディやドニゼッティのプリマドンナから古楽ソプラノに転向し成功を収めているペンダチャンスカも目を見張る出来ばえ。古楽メッツォのベテラン、フィンクは言うまでもなく見事。そしてクリスティの秘蔵っ子で、つい先日ヴィヴァルディの「バジャゼット」で聴衆を魅了した美声ソプラノ、イムが絶妙に華を添えています。「ティート」の魅力にまだ開眼していない方にこそお聞きいただきたい、画期的名演です! (Ki)
HMC-901925
ジョリヴェ:ヴァイオリン協奏曲
ショーソン:詩曲 Op.25
イザベル・ファウスト(Vn)
マルコ・レトーニャ(指)
ベルリン・ドイツSO
今をときめくヴァイオリニスト、イザベル・ファウストの待望の新譜の登場です。ファウストは2005 年11 月にもアルミンクと新日フィルの公演で共演し、ハルトマンの難曲「葬送協奏曲」を、超越的な集中力と非常に安定した音程とテクニックで見事に演奏して、日本の聴衆を圧倒しました。今確実にそのファンが増えている作曲家、ジョリヴェのヴァイオリン協奏曲は、オーケストラ、ヴァイオリンの両者にものすごいエネルギーと技巧を要求する難曲。ファウストは、このマグマのような熱い作品に、自身のもつしなやかさ、強さ、そして優しさ、すべてのパワーを全開にして立ち向かっています。エネルギーと叙情の核融合的作曲家、ジョリヴェのヴァイオリン協奏曲の決定盤といってもよい名演奏の誕生です。つづくショーソンの詩曲は、オケの前奏からしてただならぬ雰囲気。ファウストのヴァイオリンのソロが奏でられる瞬間、聴いていて体がとろけてしまいそうなほどの美しさにノックアウトされます。 (Ki)
HMC-901926
ブラームス:歌曲集
私の思いはあなたの許へ,
調べのように僕に,サッフォー風の頌歌,
野にひとり,夜鶯, 落胆,古い歌,
夜鶯に,乙女は語る,君の青い目,秘密,
セレナード,永遠の愛につい て,
死はすがすがしい夜,教会の墓地にて,
五月の夜,余韻,スペインの歌,
乙女の歌, 日曜日の朝に,愛の誠,
甲斐のないセレナード,乙女,テレーゼ,
乙女の歌,狩り,鍛冶 屋,
恋しい人のもとへ,日曜日,乙女の歌,
子守歌
ベルナルダ・フィンク(Ms)、
ロジャー・ヴィニョールズ(P)
ヤーコプスが絶大な信頼をおくメッゾソプラノ、ベルナルダ・フィンク。彼女はアルゼンチン生まれですが、両親はスロヴェ ニアからの移民。数々のバロック声楽曲で名高いフィンク、しかしリート・ファンの間では、ドイツリートでも高く評価されて いる人です。既にシューマンの「女の愛と生涯」(HMC 901753)などで高い評価を得ています。そしてブラームス。メッゾならで はの滋味溢れるブラームスをたっぷり楽しめます。伴奏には、英国の名伴奏ピアニスト、ロジャー・ヴィニョールズを迎え、万全です。 (Ki)

HMC-901927
ショパン:ワルツ(全19曲)
モンポウ:ショパンの主題による変奏曲
アレクサンドル・タロー(P)

録音:2005年
これは信じがたい芸術的センス!曲の配列が上記のとおり独自の配慮がなされていることからも分かるとおり、各曲のニュアンスが美しく連動するように配置されており、実際の演奏の素晴しさがその意義を確かなものにしています。いきなり陰りの濃い「第19番」で開始されますが、これでもうイチコロ!憂いと余韻を漂わせるセンス、汚れを知らぬタッチの妙、短い文節をしなやかに連鎖させる力量など、どこをとても惚れ惚れするばかりです。「第7番」はテンポ設定が実に見事。アゴーギクをアゴーギクと感じさせずにニュアンスを揺らし、明るい中間部ではカラッとしたタッチに変貌させますが、根底に潜む憂いの表情は決して捨て去りません。「第8番」も、スコアに込められた陰影がこれほど美しく立ち上る演奏も少ないでしょう。「第13番」は最初の2音がショッキング!前に進むのを拒むようなこの滑り出しの何という悲しさ!音のニュアンスを直感的に感じ取る力が尋常ではないことの証です!「第14番」は活力を何面に封じ込め、泣きじゃくりたい感情をひたひたと表出。一音たりとも聴き逃せません。「小犬」は、よくありがちな小犬が無邪気に駆け回る安直な描写とは比較にならない究極の逸品!愉しいニュアンスを生かしつつも、エレガントかつアンニュイな雰囲気を放ち、そのブレンド感がたまらない魅力です。「第10番」は、3拍子のリズムの民族色をかなり意識しているのが意外ですが、全く泥臭くならず、そればかりか、中間部のノスタルジックな表情と共に格調高い全体の構築を実現しているのには驚きを禁じ得ません。
これらの雰囲気を引き継ぎながらさりげなく置かれた最後のモンポウも心を捉えます。タローの音楽センスを知る最適なCDであると共に、ショパンのワルツ集を前奏曲集のように一貫したコンセプトで描いた成功例として、不滅の価値を誇るは必定。録音もきわめて優秀です。【湧々堂】 
HMC-901928(2CD)
ヘンデル:オラトリオ「メサイア」 シャスティン・アヴェモ(S)
パトリシア・バードン(A)
ローレンス・ザゾ(C.T)
コビー・ヴァン・レンズブルク(T)
ニール・デイヴィス(Bs)
ルネ・ヤーコプス(指)
フライブルク・バロックO、
クレア・カレッジcho

録音:2006年1月
競合盤ひしめく「メサイア」の中、ヤーコプスは最高の演奏を届けてくれました。フライブルク・バロック・オーケストラを自在に操りながら、ヤーコプスならでは知的刺激と熱い情熱の入り混じったヘンデルはお見事の一言。ヘンデルの音楽に浸る喜びに溢れています。この録音では1750 年に上演した時の形態を元にし、ソリストを5 人立てています。ソプラノは、スウェーデン出身で、ここ数年猛烈な勢いで人気急上昇のシャスティン・アヴェモ。ヘンデルなどバロック音楽から、「ルル」のタイトルロールまで得意とする恐るべき人です。アルトには、充実した深いアルトの美声が素敵なアイルランドのパトリシア・バードン。カウンターテナー、テノールには、ローレンス・ザゾ、コビー・ヴァン・レンズブルクとヤーコプス組というべきお馴染みの面々。バスにはこれもバロックで大活躍のウェールズのバス、ニール・デイヴィス。 (Ki)
HMC-901930
シューベルト:アルペジオーネ・ソナタ
 「美しき水車小屋の娘」〜さすらい/焦燥
ウェーベルン:チェロとピアノの為の3つの小品Op.11
シューベルト:鳥たち
 ピアノとヴァイオリンの為のソナタD.384 Op.posth.137
  子守歌D.498
ベルク:4つの小品Op.5(原曲:クラリネットとピアノの為の)
シューベルト:夜と夢D.827
ジャン=ギアン・ケラス(Vc)
アレクサンドル・タロー(P)
日本にもたびたび来日しているチェロのケラスと、先日のショパンのワルツ集でもますます冴え渡る音色を聴かせてくれたピアノのタロー、2名による夢のデュオの登場です。ウィーン出身の3人の作曲家たちによる作品を集めたもので、シューベルトの名曲中の名曲「アルペッジョーネ・ソナタ」をはじめ、シューベルト歌曲のチェロへの転用、ウェーベルンの作品など、ヴァラエティに富んだ内容。特筆すべきなのはなんといってもケラスのますます磨きのかかったストレートに心に響く音色と、タローのピアノのタッチ。思わずため息が出てしまいそうに美しいアンサンブルで、体験したことのない深い世界に引き込まれます。ケラスは11月に来日が予定されており、ますます楽しみです。  (Ki)
HMC-901931
シューベルト:歌曲集
歌曲集「白鳥の歌」 D.957、
出会いと別れ D.767、月に寄せて D.259、
羊飼いの嘆きの歌 D.121、ミニョンに D.161
あこがれ 、ミューズの子 D.764
ウェルナー・ギューラ(T)、
クリストフ・ベルナー(P)
ギューラの初となるシューベルトのリート集です。メインに「白鳥の歌」を据え、さらにゲーテの詩による歌曲を6 曲収録しています。ギューラの柔らかい美声がシューベルトにピッタリなのは言うまでもありません。加えて、節度のある適切な表現と、詩句に対する読み込みの深さが、良い味わいを出しています。伴奏のベルナーも優れもの。 (Ki)
HMC-901932
ラヴェル:5 つのギリシア民謡、
ベルリオーズ
:夏の夜Op.7、
ラヴェル
:シェエラザード
ケント・ナガノ(指)ベルリン・ドイツSO、
ベルナルダ・フィンク(Ms)
ケント・ナガノ&ベルリン・ドイツ響最新盤は、歌手にベルナルダ・フィンクを迎えての、ラヴェルとベルリオーズの歌曲。シェエ ラザード以外もともとはピアノと声のために書かれたものですが、のちにオーケストラと声のために編曲されたものです。ラヴェルも ベルリオーズも、オケの時計細工師と称されることもあるほどの完璧主義者だけあって、オーケストラパートの美しさは格別。緻密に 書かれた微妙な色彩の木管パートなど、ベルリン・ドイツ響のうまさが際立ちます。フィンクのどこまでも透明ながら深い色合いを帯 びた声は、不思議な魅力で聴く者の心をぐっと掴んで離しません。透明な響き、完璧なバランス、そして歌とオケとの絶妙な調和・・・ 聴いていると瞬く間に時が過ぎてしまいます。
HMC-901935(2CD)
フランク・マルタン:「魔法の酒」
(7つの弦楽器とピアノ伴奏による12人の独唱者のための世俗オラトリオ)
ダニエル・ルイス(指)RIAS室内cho、
シャロウン・アンサンブル、
シュトックハウゼン=リーゲルバウエル(P)、
サンドリーヌ・ピオー(イズー/ S)、
ステファン・ダヴィスリム(トリスタン/ T)、
ユッタ・ベーネルト(ブランゲーネ(ブランジァン)/ S)、
ヒルデガルト・ヴィーデマン(白い手のイズー/ S)、
ウルリケ・バルチュ(イズーの海/ A)、
ヨナタン・E・デ・ラ・パス・サエンス(マルケ王/ B)
ヨアヒム・ブールマン(カエルダン/ T)
愛の秘薬を誤って飲みかわしてしまった王妃イズーと王の甥トリスタン。この時から2人は死に至るまでやむことのない永遠の 愛に結びつけられる…。ヨーロッパ中世最大の恋物語「トリスタン・イズー物語」に基づく、フランク・マルタンの声楽作品。 ジョゼフ・ベディエ編の小説(岩波文庫からも単行本が出版されています)に則って、プロローグ、3 つの章(「媚薬」、「モロアの 森」、「死」)、エピローグを持つ形式となっています。登場人物は台詞を歌い、合唱は動作を語り、場面を説明する語り部の役割を 担います。ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」とは一線を画したものを、と考えたマルタンは、ソリストの旋律に十二音技法 を採用、さらに合唱の響きの中に、官能的でありながらどこか空虚な響きを用いるなど、ワーグナーのとはまったく趣の異なるト リスタンを作り上げました。トリスタンの「死」の場面も、ワーグナーのオペラではトリスタンが切々と歌い上げますが、マルタ ンのものは、瀕死の状態のトリスタンにすがる白い手のイズー(カエルダンの妹、トリスタンは二人のイズーを愛した)や、合唱 による淡々とした語りの合間に、トリスタンが切れ切れに言葉を発する、というもので、トリスタンが弱ってしまって死にゆく様 がおそろしいほど克明に描写されています。録音があまり多くないこの名作、ひとつの決定盤ともいえるものの登場といえましょう。  (Ki)
HMC-901939(2CD)
バッハ:ミサ曲 イ長調BWV 234、
ミサ曲ト長調BWV 236、
ミサ曲 ト短調BWV 235、
ミサ曲 ヘ長調BWV 233
コンラート・ユングヘーネル(指)
カントゥス・ケルン、ザビーネ・ゲッツ、
ガブリエーレ・ヒエルダイス(S)、
エリサベス・ポピエン、
アレクサンダー・シュナイダーア、
ヴィルフリード・ヨッヘンス、
ハンス・イエルク・マンメル(T)、
ヴォルフ・マティアス・フリードリヒ、
セバスティアン・ノアック(Bs)

録音:2006年1月、5月
ユングヘーネルによる、バッハの珠玉のミサ曲の登場。声楽メンバーも大分入れ替わった、新生カントゥス・ケルンによる声楽は、時に幻想的な美しさに満ち、時に刺すように鋭く、えもいわれぬ神々しさに満ちています。以前に増して表情豊かになっています。ミサ曲ト短調は、名作の誉れ高い作品。なんともいえぬ優しさに満ちた冒頭の器楽による前奏はこの世のものとは思えない美しさです。歌が始まると一転、余計なものがそぎ落とされたストイックな声部間の掛け合い、そしてストイックな声楽と温かみのある楽器の音色との交わりに心奪われます。 (Ki)
HMC-901941
モーツァルト:am Stein Vis-a-vis、
転調するプレリュード(ハ長調から変ロ長調へ)(Modulierendes Pradludium)KV 284a、ピアノ連弾ソナタ 変ロ長調KV.358*、
転調するプレリュード(ヘ長調からホ短調へ)Modulierendes Praeludium KV deest(ケッヘル番号なし)、
カンデツァKV.624(626a)、
パイジェッロの歌劇「哲学者気取り」の「主に幸いあれ」による6つの変奏曲 ヘ長調 KV.398、
前奏曲とフーガ ハ長調KV.394 (383a)、
ショルンスハイムとシュタイアーによる即興演奏*、
ピアノ連弾ソナタ ニ長調KV.381*
6つのドイツ舞曲KV.509(ピアノ連弾編曲版)*
アンドレアス・シュタイアー&クリスティーネ・ショルンスハイム*(ピアノフォルテ)

※使用楽器:ヴィザヴィ(1777年シュタイン製)
これは!シュタイアーにモーツァルトが乗り移ったかのような、はたまたモーツァルトにシュタイアーが乗り移ったのか・・・。 1 曲目の「プレリュード」からシュタイアー大暴れ、聴くものの度肝をぬくような過激さ。モーツァルトの「プレリュード」は意外 になじみがないかもしれません。当時「プレリュード」は元来、ピアニストの技量をひけらかすために即興で演奏されることが多 かったもの。「私は即興ができない(わ)・・・」というピアニストの方々のために、即興演奏を譜面に書き起こしたものが当時の 「プレリュード」だったのです。(もちろん、ソナタなどのメイン楽曲の前に演奏されたり、楽器の具合を見るために演奏されたりす ることもありましたが。)ここに録音されているプレリュードはまさにモーツァルトの天才即興ぶりが譜面に記されたもの。ほかで は聴けない奇跡的な演奏がここにあります。
さらに楽器がまたすごい!この録音で用いられたシュタイン製の「ヴィザヴィ」(1777年)という楽器は、巨大な長方形のケース の中に二つの鍵盤楽器が組み込まれ、二つの短辺には鍵盤が付けられ、2人の奏者が向き合って演奏できるよう設計されたものです。 片側が一段鍵盤のピアノ、反対側が二段または三段鍵盤のチェンバロになっていますが、チェンバロ側の鍵盤の一つはピアノのため のもので、反対側にあるピアノ専用鍵盤と連動するというもの。同様の楽器は今回録音に用いられたものも含めて2台しか現存して いません。シュタインのピアノ工房を、モーツァルトは1777年に訪れたことがあり、シュタインのピアノを大層気に入りました。し かし、高価であったために購入を断念、父への手紙にも、今まではシュペート製のピアノが一番好きだったが、シュタインのピアノ を聴いて断然こちらの方がよいと思う、という記述がみられます。シュタイン製のこのゴージャスで鮮烈な音色、そして演奏者に対 する反応の良さをモーツァルトはおそらく気に入ったのかもしれません。楽器もすごいし楽曲も貴重だし、演奏はまさに奇跡的名演。 ものすごい一枚です。 (Ki)
HMC-901942
モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番
幻想曲 ニ短調 K.397
ロンド ニ長調 K.382
ピアノ協奏曲第24番 ハ短調 K.491
シュテファン・ヴラダー(P)(指)
カメラータ・ザルツブルク
生粋のウィーン流ピアニスト、ヴラダーによるモーツァルトのピアノ協奏曲の登場です。しかも弾き振り!むかえうつは伝統あるカメラータ・ザルツブルク。冒頭の弦楽器と管楽器のかけあいから、まさにこれしかないという絶妙な間の取り方とぴちぴち感に満ちています。続くピアノの入りもきらきらとまばゆいばかり。ピアノのソロの曲も入魂の仕上がり。幻想曲の深刻な空気から、21 番の澄み切った幸福感まで、モーツァルト・ワールドがたっぷりと堪能できます。モーツァルト・イヤーのしめくくりにもぴったりの、とびっきりの一枚です。 (Ki)
HMC-901943
ショパン&ブラームス:バラード集
ショパン:バラード(全4曲)
ブラームス:バラード Op.10
セドリック・ティベルギアン(P)

録音:2006年4月
1998年のロン=ティボー・コンクールで優勝し一躍その名が知られたティベルギアン(1975 年〜)。待望の新譜はショパンとブラームスのバラード集。ショパンのバラードの第1番の冒頭から、ものすごい音楽の推進力にたちまち引きこまれ、比較的たっぷりしたテンポで寄せては返す波のようなメロディーに酔いしれます。彼の紡ぎだす研ぎ澄まされたハーモニーは、倍音の先の先にまで耳を澄ましているかのようで、崇高さすら感じさせます。ブラームスのバラードもロマンの薫りが濃厚でありながらどこかはかなく、32 歳にしてすでに隔世の感のある演奏となっています。 (Ki)
HMC-901944
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲
ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」
イザベル・ファウスト(Vn)、
イルジー・ビエロフラーヴェク(指)プラハPO
アレクサンドル・メルニコフ(P)
若い世代でもっとも注目を集めるファウストがベートーヴェンの2大ヴァイ オリン名曲、協奏曲とクロイツェルをなんと一挙に録音。その格調の高さ、たおやかな美しさ、楽曲のスケールとすべ ての条件を満たして、王座に君臨するベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。麗しの音色でしっとりと歌い上げるファウストの ヴァイオリンは、ラルゲットではどこまでも幸福感に満ちて甘美のきわみ。いっぽう、ヴァイオリニスト泣かせの名うての難曲 で、10曲あるソナタの最高峰「クロイツェル」。協奏曲とはガラっと 変わって熱く激しいやりとりで、いまにも火花が飛び散るかのような燃焼度。いま、どこでも引っ張りだこという人気ぶりも頷 けるファウストの魅力が全開のアルバムとなっています。 (Ki)
HMC-901945
ブラームス:愛の歌Op.52(全18曲)、
3つの四重唱曲Op.64(全3曲)、
新・愛の歌Op.65(全15曲)
マーリス・ペーテルセン(S)、
ステッラ・デュフォワ(A)、
ヴェルナー・ギューラ(T)、
コンラート・ヤルノット(Bar-Bs)、
クリストフ・ベルナー(P)、
カミッロ・ラディッケ(P)
ブラームスの詩情ゆたかな四重唱曲集。多くの声楽曲、そしてハンガリー舞曲集などすぐれたピアノ四手のための作品をのこしたブラー ムス。そんな彼が、ウィーンの伝統音楽にインスピレーションを受けて書いた贅沢な編成の重唱曲集です。これらの曲集は、発表される とすぐにウィーンの音楽サロンで大ヒットとなりました。恋をしたうきうき気分から、失恋の悲しみまで、その歌詞の内容は恋のすべて を語りつくします。 (Ki)
HMC-901946
モーツァルト:ホルン協奏曲第1番/第4番
ファゴット協奏曲、オーボエ協奏曲
トゥーニス・ファン・デァ・ズヴァールト(Hrn)
ドナ・アグレル(Fg)、
カタリナ・アルフケン(Ob)、
ぺトラ・ミュレヤンス(指)
フライブルク・バロックO
オリジナル楽器による精鋭アンサンブルきってのトップメンバーたちが繰り広げる愉悦のひととき。フルートとハープ、協奏交響曲 (HMC.901897)に次いで、FBO によるモーツァルトの協奏曲集に第2 弾が登場します。 ここに収められた名曲の数々がロイトゲープ、デュルニッツ男爵、フェルレンディスといった名手たちとの出会いによって生み出された ことは有名ですが、わたしたちの時代の名人たちも負けてはいません。ナチュラル・ホルンは当FBO とブリュッヘンの18世紀オーケスト ラで首席を務め、先ごろ出たOLC のポストホルン・セレナード(TDKAD.023)でもゲスト参加していたズヴァールト。同じく18 世紀オー ケストラ、鈴木秀美率いるOLC のメンバーで、デン・ハーグの王立音楽院やバーゼル・スコラ・カントルムでも教鞭をとる首席ファゴッ トのアグレル。首席オーボエのアルフケンもまた古楽の牙城バーゼル・スコラ・カントルムで学び、いまでは教鞭もとる第一人者です。 当時をほうふつとさせるオリジナル楽器のなんとも味わい豊かな響きととびきりの演奏によって、聴きなれた名曲が活き活きとよみがえ りました。   (Ki)
HMC-901947(2CD)
ドビュッシー:忘れられた映像、
ボヘミア舞曲、夢想、マズルカ、
ロマンティックなヴァルス、バラード、
舞曲、夜想曲、ピアノのために、版画
コンクール用小品、ハイドンを讃えて、
小さい黒人、レントより遅く、
6つの古代のエピグラフ(独奏版)、
英雄的子守歌、
慈善団体「負傷兵の衣類」のための小品
エレジー、燃える炭火に照らされた夕べ
リア王の眠り(ロジェ=デュカス編曲)
アラン・プラネス(P)
いつも高い評判を受けているプラネスのドビュッシー・シリーズがついに完成です。今回は「版画」など名作から、連弾曲「6 つの古代のエピグラフ」のドビュッシー自身による独奏版や最近楽譜が出版された絶筆「燃える炭火に照らされた夕べ」といっ た珍品、さらに初期の美しい小品まで盛りだくさん。「燃える炭火に照らされた夕べ」はすでにいくつか録音もありますが、プ ラネス級の名手によるものは初めて。ようやく曲の真価を知ることができます。 (Ki)
HMC-901949(2CD)
ヘンデル:オタトリオ「ソロモン」 サラ・コノリー(A ソロモン)、
スーザン・グリットン(S ソロモンの王妃,第1 の遊女)、
キャロリン・サンプソン(S シバの女王,第2 の遊女)、
マーク・パドモア(T ザドク,従者)、
デイヴィッド・ウィルソン=ジョンソン(Bs レヴィ人)、ダニエル・ロイス(指)
ベルリン古楽アカデミー,RIAS 室内cho
「ソロモン」は、1748年、既に63歳に達していたヘンデルが作曲したオラトリオです。旧約聖書に現れる古代イスラエルの王ソロ モンを題材にし、第2 幕には「大岡裁き」の場面があることでも知られています。今日では専ら、第3 幕の前奏曲である「シバの女王 の入城」ばかりが有名ですが、作品全体も晩年のヘンデルの名曲が多々あります。このHMF による新録音では、サラ・コノリー、スー ザン・グリットン、キャロリン・サンプソン、マーク・パドモアと、古楽界のスター歌手が揃えられ、しかもベルリン古楽アカデミー とRIAS室内合唱団という鉄壁の布陣。そして指揮のロイスが知性と愛情100%の指揮を繰り広げてくれています。 (Ki)
HMC-901951
マルティヌー:ヴァイオリン協奏曲第2番H.293、
弦楽セレナード第2番H.216、
トッカータと2つのカンツォン(Pfと弦楽合奏のための)
イザベル・ファウスト(Vn)、
セドリック・ティベルギアン(P)、
イルジー・ビェロフラーヴェク(指)プラハPO
東欧諸国からパリに集まった作曲家のグループ「エコール・ド・パリ」のメンバー中、もっとも演奏・録音に恵まれているチェコ出身のボフスラフ・マルティヌー。何とイザベル・ファウストの演奏で協奏曲が登場です。それも急進的な傾向の強い第1番でなく、かのエルマンに捧げられた叙情的な第2番というのが意外です。マルティヌーの作品の中でもとりわけ美しい旋律にあふれ、平和で田園的な世界が続きます。ファウストの美音も冴え、ビェロフラーヴェクのボヘミア的濃厚な伴奏も絶品。マルティヌー観の変るアルバムと申せましょう。もうひとつの注目は、ピアノの協奏的作品「トッカータと2つのカンツォン」の独奏をイケメン名手ティベルギアンが務めていること。明るい喜悦性に富んだ曲で、あまり知られていない曲ですが、存分に楽しめます。  (Ki)
HMC-901952
聖週間のための哀歌〜 Lamentations for Tenebrae
[聖水曜日]
カリッシミ(1605-1674):エレミアの哀歌、ここに始まる
カリッシミ:「おとめシオンより、栄光はことごとく去り」
ロッシ(c.1601-1656):トッカータ・クヮルタ
フレスコバルディ(1583-1643):「敵はその手を下し」
パレストリーナ(c.1525-1594):「主よ、救いたまえ」
[聖木曜日]
作曲者不明:エレミアの哀歌
作曲者不明:彼らが傷ついた者のように
カプスベルガー(c.1580-1651):トッカータ・クィント
[聖金曜日]
作曲者不明:エレミアの哀歌
作曲者不明:トッカータ・アルペッジャータ
マルコレッリ(c.1615-c.1675):なにゆえ黄金は光を失い
作曲者不明:預言者エレミアの祈り
マリア・クリスティーナ・キール(S)、
ジャン=マルク・エメ(指、Org.)
コンチェルト・ソアーヴェ
キールによる最高純度の結晶のような歌声。受難を前にしたキリストを悼む哀歌が、澄み切った空気の中に響きます。器楽のみの楽曲も、リュートをつまびく音一つ一つが真珠の涙の粒のような美しさです。至高の慰めがここにあります。キリスト教では、枝の主日(キリストが、十字架につけられる前にロバに乗ってエルサレムに入城した日。人々は棕櫚の枝を掲げてイエスを迎えたことから「枝の主日」と呼ばれる)から、復活の主日までを聖週間といいます。この期間の夕刻からロウソクの火が消えて教会が暗闇と化す時まで朗唱された音楽が、「ルソン・ド・テネブル」の原型。声楽の場合、エレミアの哀歌の聖句が、歌詞の大部分を占めます。ルネッサンス時代にこのジャンルは誕生し、ルイ14世下のフランスで発展を遂げました。イタリアでは、17世紀の前半にこのジャンルは流行し、ボローニャにある音楽博物館には、当時ローマで活躍していたあらゆる音楽家たちによる哀歌の23種類の曲集の譜が残されています。マリア・クリスティーナ・キールとコンチェルト・ソアーヴェが、これらの資料から、聖週間のための哀歌を再構築したものです。歌詞にも現れるdolor(悲しみ)、lamentatio(哀れみ)といった言葉を、他に類を見ない純度の高い美しい結晶にして蘇らせ、聴く者の心に溶け入るように聴かせます。
HMC-901953
ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第6番、第8番、第11番 エルサレムSQ
[アレクサンダー・パヴロフスキー(Vn1)、
アミハイ・グロス(Vn2)、
セルゲイ・ブレスラー(Vla)、
キリル・ズロトニコフ(Vc)]
2004年の初来日につづき、今回が2度目の来日となる、エルサレム弦楽四重奏団。4人の間にただよう音楽の空気感は、なん とも気高くよい雰囲気です。若手ながら技巧にはしることなく、常に作品に対して真摯な態度で接しているのがよくわかる、知 性にも裏打ちされた演奏をするクヮルテット。チェロの奏者が使用している楽器は、ジャクリーヌ・デュ・プレが愛用していた セルジオ・ペレッソンで、ダニエル・バレンボイムより貸与されている逸品です。 (Ki)
HMC-801954
(1SACD)
40 Voices
ヴィレム・キュレーアス:35声によるNomen mortis infame、
フアン・バウティスタ・ゴメス
:12声によるグローリア、
ジョスカン・デプレ
:12声による「いと高き神の保護のもとに住み」、
ロベルト・ウィルキンソン:クレド〜 13声による、
アレッサンドロ・ストリッジョ
:見よ、祝福されたる光が〜 40声による、
ピーター・メーセンス
:リヨンの狩人〜 16声による、
ジョアン・ローレンソ・レベーロ
:祝福されしイェルサレム〜 16声による、
ジョヴァンニ・ガブリエッリ
:主よ、あなたを呼びます〜 16声による、
トマス・タリス:エレミアの哀歌〜 40声による
パウル・ファン・ネーヴェル(指)
ウエルガス・アンサンブル
ルネッサンス期の声楽作品を中心に演奏活動を展開しているネーヴェルとウエルガス・アンサンブルの活動35周年記念コンサートのライヴ録音です。ルネッサンス期は、ヨーロッパ各地に立派な教会が次々と建立され、声楽を主とする教会音楽がもっともさかんに書かれた時期。音響効果も抜群なカテドラルの中、人の声のみによる美しい音楽が響きわたるとき、聴衆は神の存在を感じずにはいられなかったことでしょう。タリスの「エレミアの哀歌」がよく訓練された40 人の歌い手たちによって歌われるさまは、この世のものとは思えない美しさと迫力です。 (Ki)
HMC-901955
ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第3番 ハ短調 Op.1-3、
ピアノ三重奏曲第5番 ニ長調 Op.70-1「幽霊」、
フンメル:ピアノ三重奏曲第4番Op.65
アンドレアス・シュタイアー(ピアノフォルテ)、
ダニエル・ゼペック(Vn)、
ジャン=ギアン・ケラス(Vc)
ムンディならではの豪華なメンバーによるピアノ・トリオの登場。泣く子も黙るシュタイアー、アルカント・クヮルテットでも味わ い深いヴァイオリンを披露しているゼペック、そしてチェロには絶好調のケラスという顔ぶれによるベートーヴェンは、実に新鮮、あ ざやか。ベートーヴェン初期の作品第3 番は、お得意のハ短調。1音目から3人の間に飛んでいる火花が見えてくるようです。つづく 第5番は、なんといっても第2楽章のシュタイアーが見もの。「幽霊」のタイトルの由来にもなっている、この特徴的で幻想的な楽章を、病的に、そしてまぼろしのように演奏しています。それに絡む2 人の弦も絶品としかいいようがありません。カップリングのフンメル は、ベートーヴェンがライヴァルと目していた人物。彼のピアノ三重奏曲は、ロマンティックさと若々しい魅力に満ちており、ベートー ヴェンの2作品とは趣は異なりますが、この夢のトリオのさわやかな魅力が味わえる一枚となっています。なお、シュタイアーとゼペッ クはオリジナル楽器を、そしてケラスは、モダン楽器のボディにオリジナルのブリッジや弦を用いたものを使用しています。  (Ki)
HMC-901956
F. クープラン:作品集
神秘的なバリケード(第6組曲より)、
ティク・トク・ショック(第18組曲より)、
クープラン(第21組曲より)、
信心女たち(第19組曲より)、
さまよう亡霊たち(第25組曲より、
編み物をする女たち(第23組曲より)、
シテール島の鐘(第14組曲より)、
居酒屋のミュゼット(第15組曲より)*、
葦(あし)(第1組曲より)、
アタラント(第12組曲より)、
パッサカリア(第8組曲より)、
プラチナ色の髪のミューズ(第1組曲より)
奇術(第22組曲より)、闘いの響き(「凱旋」より/第10組曲より)、
子守歌またはゆりかごの中のいとしい子(第15組曲より)、
空想にふける女(第25組曲より)、
ロジヴィエール(第5組曲より)、
双生児(第12組曲より)、
かわいい子どもまたは愛らしいラジュール(第20組曲より)、
デュフリ
(1715 〜 1789):ラ・ポトゥワン(クラヴサン曲集第4巻より)
アレクサンドル・タロー(P)、
パブロ・ピコ(タンブール)*
まさに衝撃的な一枚の登場。かけた瞬間、ドビュッシー作品かと錯覚するほどの色彩感、量感、情感。ゆったりとふくよか、 ビロードのようでありながら、立ち上がりがどこまでもくっきりとした不思議な音色は、聴く者をとらえて放しません。リリー スを重ねるたびに、ますますそのタッチに磨きがかかるアレクサンドル・タロー、待望の新譜は、ピアノによるF. クープラン。 タロー本人が「play する、という考えに基づいて曲をきめました。自分がしばしばコンサートでも演奏するティク・トク・ショ クを中心に据えました。F. クープランのもっとも「ピアニスティック」な作品を集め、これらのplay-ful な側面を強調してい ます。」と語っているように、どの曲もきわめて清冽かつ明確に演奏されています。冒頭に収録されている「神秘的なバリケー ド」は、一音一音にしっかりと意志と力強さがこめられており、聴いていてストレートに心に響く演奏。また、「ティク・トク・ ショック」も、これほどまでにクープラン作品が超絶技巧だとはと驚かされるもの。最後にデュフリの作品が収録されているの も心憎いところです。 (Ki)
HMC-901957
ヘンデル:麗しのアマリッリHMV82*、
カンタータ「優しい時に」HWV135b、
カンタータ「愛の神が見て」HWV175、
トリオ・ソナタOp.2-1 ロ短調、
カンタータ「私の心は騒ぐ」HWV132c
アンドレアス・ショル(C-T)、
エレーヌ・ギユメット(S)*、
オッターヴィオ・ダントーネ(指& Cem)、
アカデミア・ビザンチーナ
[ステファノ・モンタナーリ(Vn)、
フィオレンツァ・デ・ドナティス(Vn)、
マルチェッロ・ガッティ(フラウト・トラヴェルソ)、
マルコ・フレッツァート(Vc)、
ティツィアーノ・バニャーティ(アーチリュート、テオルボ)、
マルタ・グラツィオリーノ(Hrp]
アンドレアス・ショルがハルモニア・ムンディで活動再開です。再登場第1弾は渾身のヘンデル。やわらかさ、深さとハリのある強さを併せ持つ摩訶不思議な魅力的美声は健在、いやむしろますます磨きがかかって他の追随を許さないものとなっています。バックは今をときめくアカデミア・ビザンチーナ。ショルの美しい声と比類なき技巧に触発されたのか、極めてハイテンションの演奏を繰り広げており、ヘンデル作品のもつ力強い描写、劇的な変化、アンサンブルの妙、すべてが極上の仕上がり。至福の時を味わうことができます。今後もショルはムンディ・レーベルで続々リリース予定、ますますの充実ぶりに目が離せません。
まるでオペラのように劇的かつ豪華な音作りの「麗しのアマリッリ」は、1708年頃に完成されたとされています。1994年に初めて出版されており、後に傑作オペラ「リナルド」や「フラーヴィオ」にも転用されることとなる2 曲目のアリアをはじめ、どの曲も宝石のような輝きを放った名作です。他にもヘンデルの最初期の頃のカンタータとされる「愛の神が見て」など、ショル・ファンのみならず全ての方に聴いていただきたい絶品の一枚です。 
HMC-901958
モーツァルト:交響曲第38番「プラハ」、
第41番「ジュピター」
ルネ・ヤーコプス(指)
フライブルク・バロックO
ヤーコプスというだけでも胸踊るのに、曲は「プラハ」と「ジュピター」。「プラハ」は、「フィガロの結婚」と「ドン・ジョヴァンニ」の作曲時期のちょうど中間に書かれており、まさに円熟の極みの名作。冒頭の序奏部からしてイキのよさが断然違い、何が起こるのかわくわくしてしまいます。つづく主部であらわれる様々な動機も、まさにヤーコプス・マジック、すべての要素がくっきりといきいきと聴こえてきます。第2 楽章は、まさにモーツァルト円熟期の結晶ともいえる楽章ですが、ヤーコプス・マジック120%炸裂、思わず息をのんで聴き入るばかりです。そして「ジュピター」。なといっても白眉は終楽章。生命力に富んだフーガを怒涛の推進力で展開しています。どの楽章をとっても、そして一音一音が、ぴちぴちとした躍動感に満ちている1 枚です。フライブルク・バロック・オーケストラの奏者一人一人の集中力、そしてヤーコプスの棒の冴え具合ともにかつてないものすごさ。 (Ki) 
HMC-901959
モーツァルト:交響曲第39番/第40番 ルネ・ヤーコプス(指)
フライブルク・バロック・オーケストラ

録音:2008年10月
第39番メヌエットのソロ楽器の旋律の立たせ方など、オペラもシンフォニーも知り尽くしたヤーコプスにしかできないもの。続くフィナーレも細部にいたるまで丁寧にアーティキュレーションやディナーミクが施され、同時に大きな和声の動きのダイナミックさも併せ持つ快演。第40番の冒頭の有名な音型は、美しいディナーミクの弧を描きます。終楽章フーガでは、ホルンの咆哮もパオーンと効果的に響きます。ヤーコプスの緻密な指揮と、フライブルク・バロック・オーケストラの面々の巧さが絶妙にマッチした、見事なモーツァルトの登場です! (Ki)
HMC-901960
バッハ:初期作品集
トッカータニ長調BWV912(1707/13頃)、
パルティータ「おお神よ、汝義なる神よ」BWV767、
トッカータホ短調BWV914(1707/13頃)、
組曲イ短調BWV818a(1720年頃)、
トッカータト長調BWV916(1707/03頃)、
カプリッチョ変ロ長調(「最愛の兄の旅立ちに寄せて」)BWV992(1704または03頃)
アンドレアス・シュタイアー(Cemb)
※使用楽器:AnthonySideyd'apresHass
「行進できない」トルコ行進曲(HMC901856)で我々の度肝を抜き、モーツァルトの転調の妙技、さらにはショルンスハイムとの連弾で我々を楽しましてくれた(HMC901941「amSteinVis-a-vis(1777)」)シュタイアー、待望のソロは堂々、若き日のバッハ作品集と相成りました。「音楽の父」として音楽史上に大きく聳え立つ存在の大バッハ。シュタイアーは、ここに収められた初期作品の演奏を通して、バッハが若くしてすでに尋常ならざる気魄を備えた究極の音楽家であったことを我々に示してくれています。若き日の名曲として有名な「最愛の兄の旅立ちに寄せて」のアリアなど、シュタイアーの鬼才ぶりが遺憾なく発揮された名演。また、パルティータ「おお神よ、汝義なる神よ」の8曲目の半音階が多用された楽曲など、聴いていると足下の地面がぐんにゃりと変形して、異次元へと迷い込んでしまったかのような気分になる異様な半音階ぶりとなっています。
HMC-901961
メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第1番/第2番 トリオ・ワンダラー
高貴な薫りに満ちた弦楽器は、まさに「美のツボ」をおさえた音色。官能的で時にむせび泣くような表現に引き込ま れます。ピアノがまた素晴らしい!たとえば第2 番のスケルツォ楽章で、真珠の粒のように美しく転がる音が、弦とたわむれ、時に熱 いうねりとなって盛り上がる様子は、神がかりともいえる美しさです。トリオ・ワンダラーが誘う、たまらなく官能的でディープなメ ンデルスゾーンです。  (Ki)
HMC-901962
サン=サーンス:チェロのための作品集
チェロ・ソナタ第1番、祈りOp.158、
ロマンスOp.36、ガヴォットOp.16-3、
タランテラOp.10-5、
チェロとピアノのための組曲Op.16
ロマンスOp.51、
白鳥(オリジナル版による2台ピアノとチェロのための)「動物の謝肉祭」より*
エマニュエル・ベルトラン(Vc)、
パスカル・アモワイヤル(P,*=重録音)
サン=サーンスが、たいへんなピアノの名手であり、オルガニストだったことは有名ですが、彼はまたチェロの名手でもありました。 そんな彼が書いたチェロのための作品は、チェロのパートもピアノのパートも実に雄弁。チェロ・ソナタ第1 番は、ベートーヴェンや シューマンを思わせる、重厚で熱い旋律が迸ります。「祈り」や「ロマンス」は軽めの作品ですが、どれも起伏に富んでいて楽しめる 内容。ベルトランの、地の底から湧き上がるような力強い生命力のある音色と、アモワイヤルの硬質な響きの調和が極めて魅力的な一枚となっています。 (Ki)
HMC-901963
バルトーク:弦楽四重奏曲第5番、第6番 アルカントQ
【アンティエ・ヴァイトハース(1Vn)、
ダニエル・ゼペック(2Vn)、
タベア・ツィンマーマン(Va)、
ジャン=ギアン・ケラス(Vc)】

録音:2006年10月
なんとも豪華な顔ぶれによる弦楽四重奏団が結成されました。その名もアルカント・クヮルテット(イタリア語の「アルコ(弓)」と 「カント(歌)」を組み合わせた造語)。ヴァイオリンにウィーンの名手ヴァイトハースと、シュタイアーとのベートーヴェンの録音(HMC 901919)でも評価が高い、モダンもオリジナルもマルチにこなすゼペック、そして今ひっぱりだこで大活躍のヴィオラ奏者タベア・ツィ ンマーマン、そしてチェロにいわずとしれたケラスという錚々たる面々。2006 年11 月には日本でのお披露目公演もあり、その深みの ある表現と精緻なアンサンブルが話題となりました。記念すべき第1 弾のリリースは、泣く子もだまるバルトーク。第5番第1 楽章冒 頭の激しいリズム、第2楽章のチェロの極端に低いどこか無機質な響き、その後現われる柔らかな旋律、第3楽章の複雑なリズムの絡 み合いは名手たちの真骨頂、そして第4、第5 楽章でも、エッジの効いた演奏に圧倒。続く第6 番では、タベア・ツィンマーマンによ る冒頭のヴィオラ・ソロの深みのある歌に、一気に世界に引き込まれます。第3 楽章の四分音の掛け合いも、絶妙なことこの上なしで す。終楽章、静寂へと帰ってゆく終結部は、死者の魂が天へと静かに昇ってゆくような神聖さに満ちています。 (Ki)
HMC-901964(3CD)

HMC-801964(3SACD)
モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」(1788年ウィーン稿)

【補遺:1787年プラハ初演稿の楽曲】
・第2幕第2場レチタティーヴォ「それじゃ、さっき私のマゼットを(Dunque quello sei tu)」(ツェルリーナ、ドンナ・エルヴィラ、ドン・オッターヴィオ、マゼット)
・第20番アリア「ああ、おゆるしください」(レポレッロ)
・第2幕第10場レチタティーヴォ「Ferma, perfido, ferma」(ドンナ・エルヴィラ、マゼット、ツェルリーナ、ドン・オッターヴィオ)
・第21番アリア「今こそ僕の愛しい人を慰めてあげて下さい(Il mio tesoro intanto)」(ドン・オッターヴィオ)
ルネ・ヤーコプス(指)
フライブルク・バロックO、RIAS室内cho、
ヨハネス・ヴァイサー(ドン・ジョヴァンニBr)、
ロレンツォ・レガッツォ(レポレッロBs)、
アレクサンドリーナ・ペンダチャンスカ(ドンナ・エルヴィラ S)、
オリガ・パシフニク(ドンナ・アンナ S)、
ケネス・ターヴァー(ドン・オッターヴィオ T)、
スンハエ・イム(ツェルリーナ S)、
ニコライ・ボルシェフ(マゼット Br)、
アレッサンドロ・グエルツォーニ(騎士長 Bs)
快進撃のとまらないヤーコプス、遂にモーツァルトのダ・ポンテ三部作完結編となる「ドン・ジョヴァンニ」の登場。2006年のインスブルック音楽祭で上演された直後の録音で、ヤーコプスの練り上げられた統率のもと、一音一音がショッキング!序曲冒頭の和音でいき なり奈落の底に突き落とされるような衝撃と迫力です。名手フライブルク・バロック・オーケストラの面々が、いななく管、激流の弦で 大爆発です。楽しさ、おそろしさ、美しさをとことんつきつめた表現は壮観、まさに音絵物語です。ドン・ジョヴァンニ役は、1980年ノ ルウェー出身の若き貴公子、ヨハネス・ヴァイサー。色気たっぷりですが、ドン・ジョヴァンニ=騎士身分の品格もきちんと感じさせま す。レガッツォによるレポレッロは、ドン・ジョヴァンニに仕える憎めない役どころをきちんと演じていますが、あまりに上手くてカッ コよすぎるかも、と思う瞬間もあるほど。ドン・ ジョヴァンニに翻弄されるドンナ・エルヴィラは今をときめくペンダチャンスカ。ドンナ・アンナには、Opus111 でもおなじみのウクラ イナ出身の清潔感あふれるソプラノ、パシフニク。驚異的な息づかいの長さで、しっとりと歌いあげるさまは圧巻。ツェルリーナ役のス ンハエ・イムは、韓国出身の期待のソプラノ。LFJ 音楽祭2006 でも来日、そのピンと透き通った歌声をご記憶の方もいらっしゃるのでは。 レチタティーヴォでのフィゲイレドのチェンバロも冴えまくりで、一音たりとも聞き逃せません。 さらに、さすがヤーコプス!と思わず膝を打ってしまいたくなるのが、プラハ初演稿の楽曲もディスク3の最後に収録されていること。 ドン・オッターヴィオのアリアの瑞々しいこと!どこまでもカンペキな「ドン・ジョヴァンニ」。 (Ki)
HMC-901969
バッハ:カンタータ集
「たれぞ知らん、わが終わりの近づけるを」BWV27、
「われはわが幸に満ち足れり」BWV84、
「キリストこそ わが生命」BWV95、
「ああ、いまわれ婚宴に行かんとして」BWV161
ドロテー・ミールズ(S)、
マシュー・ホワイト(T)、
ハンス・イエルク・マンメル(T)、
トーマス・バウアー(Bs)、
ヘレヴェッヘ(指)コレギウム・ヴォカーレ
ヘレヴェッヘによる久々のバッハの登場。陶器を思わせる美しい音色が魅力のヘレヴェッヘですが、ますますその美しさに磨きがかかっています。器楽アンサンブルの弦楽器のしたたるような音色と、心の底から自然に出てくる祈りや叫びを思わせる管楽器の奏でる旋律には涙が出そうになります。歌い手一人一人の言葉ひとつひとつ、音符ひとつひとつに対する表現の細やかさにも圧倒されます。ヘレヴェッヘがますます高い境地に達していることに驚かされる1枚です。   (Ki)
HMC-901970
(2CD+1DVD)
バッハ:無伴奏チェロ組曲(全曲) ジャン=ギアン・ケラス(Vc)
※使用楽器:1696 Gioffred Cappa
ジャン=ギアン・ケラスによる待望のバッハの登場!ハリとバネのあるチェロの美しい音色、そして 甘いマスクは、これまでにも多くのファンを魅了してきたところ。第1番の有名なプレリュードは、ゆったりとしていながら実にアグレッ シブ。舞曲のような独特の躍動感です。第3 番も、プレリュードは、滾々と湧き出る泉のよう。湧き出た水は、時に速く、時にゆったりと、 自在に姿を変えて大海原へと流れ行きます。つづく舞曲も実にしなやか。「バッハの組曲では、弓をまるで剣の名手のように使いこなせる ことが要求される。フェンシングのチャンピオンみたいに。」と語るケラスによる華麗なる弓さばきが生み出す絶妙な間とタイミングに、 最終曲のジーグまで引き付けられどおしです。組曲がもつ独特の祈りのような深い精神性と、自由闊達な躍動感が見事に共存した稀有な 演奏となっています。ボーナスDVDでは、組曲第3番全曲の演奏姿がおさめられており、彼の見事な弓づかいをじっくり見ることができ ます。また、レコーディング風景や、ケラスがバッハについて語る映像も収録(英語字幕あり)。耳でも目でもたのしめる素晴らしいバッ ハのセットとなっています。  (Ki)
HMC-901972
シューマン:交響曲第1番「春」/第3番「ライン」 フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)シャンゼリゼO
遂に遂に、ヘレヴェッヘ&シャンゼリゼ管による至高のシューマン交響曲集が完成しました!第1弾の第2番と第4番がリリー スされてから長い月日がたち、ようやくヘレヴェッヘがシューマンの交響曲の残り2 曲を録音。第1 番の冒頭から高らかに鳴り響 く管楽器は、ピリオド楽器だからこそ味わえる鮮烈さに満ちており、またたくまに聴く者をシューマンの世界に引きずり込みます。 第2楽章も、シューマンの叙情たっぷりな世界を、一音一音磨きあげられた玉のような音色で展開しています。一音一音の息を呑 むような美しさにここまで感動できるのは、やはりヘレヴェッヘ・マジックとしかいいようがありません。第3番の冒頭も、比較的厚めの響きが強調されがちな演奏が多い中で、一音一音のまばゆいばかりの輝きとエネルギーがひときわ異彩を放っています。ピ リオド楽器オーケストラの風雲児は未だ健在、心踊る内容となっています。 
HMC-901973
21世紀のチェロ協奏曲集
ブルーノ・マントヴァーニ(1974-):チェロとオーケストラの為の協奏曲*
フィリップ・シェーラー(1957-):風の目(チェロとオーケストラの為の協奏曲;#)
ジルベール・アミ(1936-):チェロとオーケストラの為の協奏曲+
ジャン=ギアン・ケラス(Vc)
ギュンター・ヘルビッヒ(指)*
ザールブリュッケン放送SO*
アレクサンダー・ブリジェ(指)#
ラジオ・フランスO#
ジルベール・アミ(指)パリO+

録音:2005年9月*/2008年5月#/2006年9月+
実感できる現代ものの登場。もともとケラスはブーレーズ率いるアンサンブル・アンテルコンタンポランに所属していたこともあり、同じ今という時代を生きている作曲家の作品を演奏し、作曲家とともに音楽を作り上げることに関して特別な思い入れがあります。作曲家のいかなる要求をも実現するテクニックは群を抜いています。そんなケラスによる、現代を代表する作曲家たちの力作がそろいました。すべて世界初録音です。マントヴァーニの作品は、2003年にケラスのために書かれたもの。シューマンのチェロ協奏曲と同じオーケストラ編成で書かれています。暗い洞窟の中で様々な音が不気味に響くような冒頭部に始まり、激しい盛り上がりを見せ、最後はサラリと終わります。心の原風景を映し出すようなシェーラーの「風の目」。アミの作品は、武満徹の思い出に捧げられており、2000年にケラスによってサントリーホールで初演されました。技巧的な部分もありますが、武満を思わせるような、静寂を聴かせる作品です。どれもケラスの技が光る作品となっています。  (Ki)
HMC-901974
ティエリー・ペク(1965-):作品集
数え切れない鳥たち、ピアノとオーケストラの為の協奏曲(2006)*)
記憶のむこう〜変動成分(2004)#
鍵盤の為の小さな本(1995)
ラモーのあとに、ひとつのサラバンド?(2001)+
ラモー:新しいクラヴサンの為の組曲(1728)
〜サラバンド##
アレクサンドル・タロー
(P;*, #, ##/ポジティブOrg;+/エピネット;+/クラヴィコード;+)
アンドレア・キン(指)*
パリOアンサンブル*
HMC-901975
ヴィヴァルディ:協奏曲集
弦楽合奏のための協奏曲RV 156 ト短調
二つのオーボエのための協奏曲RV 535 ニ短調
「調和の霊感」Op.3 より第12番RV 265 ホ長調
2つのチェロのための協奏曲RV.531 ト短調
2つのヴァイオリンのための協奏曲RV.522 イ短調
ヴァイオリン,2本の狩猟用ホルン,2本のオーボエとファゴットのための協奏曲 RV 574 ヘ長調
ベルリン古楽アカデミー
好評だった「ハンブルク・オペラの序曲集(HMC 901852)」に引き続きベルリン古楽アカデミーがお届けするのは、「赤毛の司祭」ヴィ ヴァルディの協奏曲集。ヴィヴァルディは、様々な楽器がソロとして活躍する協奏曲を書いたことで、音楽史上に大きな足跡を残してい ますが、そんな彼の手によるとりわけ華やかな作品ばかりが並べられたこのディスクでは、様々な楽器のヴィルトゥオーゾ性が光ってい ます。二重協奏曲は、二人のソリストを擁するコンチェルト。二人のソリストのかけあいや重奏、オーケストラとのかけあいと、見どこ ろ聴きどころ満載です。 (Ki)
HMC-901976
ブルックナー:ミサ曲第3番ヘ短調 インゲラ・ボーリン(S)、
インゲボルク・ダンツ(A)、
ハンス=イェルク・マンメル(T)、
アルフレート・ライター(Br)、
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
シャンゼリゼO、RIAS室内cho
ホ短調ミサにモテット集、交響曲第4番と第7番につづいておくる、ヘレヴェッヘのブルックナー。最新作はことし3月にベルリンのフィルハーモニーでも、テノール(このときはスティーヴ・ダヴィスリム)をのぞいて同じ顔ぶれで演奏され、高い評価を得たミサ曲第3番。とりわけ交響曲が不動の人気を誇るブルックナーにあって、総じて声楽作品は交響曲に通じる動機や音型が随所に散りばめられていることもあり、ブルックナー好きのあいだではその魅力が語られてきました。じっさい、このジャンルの最高峰とも云われる第3番も、たとえば、まさに天国的という形容がぴったりのベネディクトゥス動機が第2交響曲第2楽章のコーダや第4楽章に引用されるなど、聴きどころの宝庫。思えばチェリビダッケが傾倒して、息の長いフレージングによる特異で巨大な演奏を聴かせていたのもこの作品でした。ヘレヴェッヘの新録の特徴は、どこか素朴なひびき味わいが内容に好ましいピリオド楽器による手兵シャンゼリゼ管と、なにより、もっとも重要な役割を担うコーラスにRIAS室内合唱団を起用したことでしょう。ふわりとやわらかく包み込むようなサンクトゥス。グローリア、そして最大の山場クレドにおける、強じんでありながらもあたたかみのあるハーモニー。さすがは合唱指揮者としてまず名を成したヘレヴェッヘと、現代最高水準のアンサンブルとの顔合わせ。いま、あらためて名作の魅力に目を開かせてくれる演奏の登場です。 (Ki)
HMC-901977
ブラームス:ピアノ協奏曲第1番、
ハイドンの主題による変奏曲
セドリック・ティベルギアン(P)、
イルジー・ビエロフラーヴェク(指)BBC響

録音:2007年
ピアノ協奏曲第1番は、オケによる冒頭の序奏から、この演奏がただならぬものであることを感じさるもの。重厚感を漂わせながらも決し て重くなりすぎず、ビエロフラーヴェクの怒涛の推進力で音楽が展開していきます。高雅なすすり泣きのように入ってくるピアノの音色は、 クリスタルを思わせる清潔感あふれるもので1975年生まれのティベルギアンが30代をむかえ、ますます音楽的に充実していることを感じさ せます。終楽章のオケとピアノのかけあいでも、ティベルギアンは、硬質で美しい音色を損なうことなく、力強く聴かせます。聴き終えたと きには爽快感と充実感が押し寄せ、感動的です。カップリングのハイドンの主題による変奏曲では、オケの各パートにひとつひとつの主題を 丁寧に歌わせており、こちらでもビエロフラーヴェクの手腕と、オケの仕事ぶりが光ります。 (Ki)
HMC-901978
ラフマニノフ:練習曲「音の絵」Op.39(全9曲)、
コレッリの主題による変奏曲 Op.42、
6つの歌曲 Op.38
アレクサンドル・メルニコフ(P)、
エレーナ・ブリロワ(S
ラフマニノフはピアニストとして多忙だったのと、ロシアを離れてから創作欲を失ったため、後半生の作品は多くありませんが、それら は執拗なまでに念入りな技法の追求がみられます。その時期の3篇にロシアの俊英メルニコフが挑戦。リヒテルのファンタジーとプレトニョ フの端正さを併せ持つピアニズムが魅力です。
HMC-901979
モーツァルト:歌曲とピアノ作品集
秘めごとK.518、別れの歌K.519、
何と私は不幸なことかK.147、
孤独に(私の慰めであってださい)K.391、
幻想曲ニ短調K.397、
結社員の旅のための歌K.468、
偽りの世K.474、小さなジーグK.574、
春へのあこがれK.596、春の初めにK.597
すみれK.476 (12)ロンドヘ長調K.494、
夢のなかの面影K.530、
寂しい森の中でK.308、
「わがいとしのアドーネ」による6つの変奏曲K.180、
クローエに寄すK.524、満足K.473、
ラウラに寄せる夕べの思いK.523
ヴェルナー・ギューラ(T)、
クリストフ・ベルナー(ピアノフォルテ/Streicher)

録音:2007年
モーツァルトの歌曲は、彼の人生の重要な節目(大切な人との別れや、フリーメイソンへの入会など)にあわせて作曲されたものが多く、彼の人生の絵本のような存在といえるでしょう。ギューラは、歌詞のひとつひとつに繊細な超琢を施した表情豊かな歌唱を繰り広げていて、一曲一曲小さな歌曲でありながら、見事な広がりを見せています。1971年生まれのウィーン出身のベルナーは、2003年チューリッヒのゲザ・アンダコンクールで、シューマンとモーツァルトの演奏で特に高い評価を得たピアニスト。ギューラの清潔感のある美しい声と、ピアノフォルテのやさしい音色が見事に融けあった、魅力的なモーツァルト・アルバムとなっています。(Ki)
HMC-901980
モーツァルト:最後の協奏曲
ピアノ協奏曲第27番、クラリネット協奏曲
ゴットフリード・フォン・デア・ゴルツ(指)
フライブルク・バロック・オーケストラ、
アンドレアス・シュタイアー(ピアノフォルテ)、
ロレンツォ・コッポラ(Cl)
イアーと名手コッポラをソリストに迎えてのモーツァルトの最後の協奏曲。メンバーを聞くだけで、とっても気になってしまう1枚の登場です。
まず、ピアノ協奏曲では、冒頭のオーケストラから、上品さは保たれたまま、とってもピチピチとした音楽。思わず心がうきうきしてしまいます。シュタイアーは、「行進できないトルコ行進曲」で我々の度肝を抜いたのと同一人物とは思えない、実に丁寧な仕事ぶり。手入れの行き届いた演奏で、一音一音が胸に染み入ります。しかし、期待を裏切らない(?)ハッチャケぶりを見せてくれているのが第3楽章のロンド。ロンド主題が回帰する直前に挿入されるソロの部分が、実になんとも「シュタイアー節」で、毎回毎回ロンド主題が回帰するのが待ち遠しくなってしまいます。最後のカデンツでは、「ちゃんと主題に戻れるのだろうか・・・」と少し心配になってしまう即興ぶりです。興味深いのが、自筆譜でピアノパートに「ソロ」と書かれた部分のオケの弦楽パートが弦楽四重奏編成になっていること(トゥッティの部分は別)。これは、オケのメンバーが当時の演奏習慣を様々に研究、検証した結果なのですが、このことにより、各パートとピアノとの絡み合いがくっきりと浮かび上がっており、また、合いの手の管楽器の音色が極めて効果的に響いてきます。
うってかわってクラリネット協奏曲は、どこまでもしっとりと曲の美しさが探求されたもの。それだからこそ、オーケストラのメンバーの一人一人のうまさも輝きます。思わず神の存在を感じるような、天上から降りてくる一筋の光のような第2楽章はただただ呆然と聴き入ってしまうのでございます。クラリネットのソロのコッポラは、リベラ・クラシカの2月の演奏会でもソリストとして招かれることになっています。 (Ki)
HMC-901981
ブラームス:ホルン三重奏曲変ホ長調、
ヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調「雨の歌」
幻想曲集Op.116
イザベル・ファウスト(Vn)…ストラディヴァリウス「スリーピング・ビューティー」(1704)、
トゥーニス・ファン・デア・ズヴァールト(ナチュラルHrn)…ローレンツ(1845)、
アレクサンドル・メルニコフ(P)…ベーゼンドルファー(1875年)
ホルン三重奏曲が完成した1865年、ブラームスは母を亡くしました。この作品は母に捧げる悲歌とも言われています。第1楽章冒頭、慈しむような優しさに満ち溢れた旋律が、ヴァイオリンから他の楽器に受け継がれてゆくところから、一気に引き込まれてしまう集中した熱演。終楽章の疾走するパッセージの見事さはまさに圧巻。とにかく上手い!ブラームス当時のサウンドを蘇らせようと、それぞれのアーティストが思いを込めて、丁寧に音楽を構築しているのがよくわかります。新時代の巨匠達の誕生を感じずにはいられない、名演奏が誕生しました。
ブラームスは幼い頃からホルンに親しみ、その音色を愛していました。これは彼の交響曲などでも、ホルンが極めて重要な役割を果たしていることからもよくわかります。ホルンが登場する室内楽は、唯一この作品のみ。ブラームスはここで、ナチュラル・ホルンが、豊かな音色や柔らかなレガート効果も得られること、そしてブラームス自身がこの楽器に親しんでいたことからナチュラル・ホルンを指定しています。フライブルク・バロック・オーケストラの首席ホルン奏者を務めている世界的な名手スヴァールトが、素晴らしい音色とテクニックで聴かせます。ピアニストのメルニコフはこの録音のために、19世紀のベーゼンドルファーを購入したということ。これがまた素晴らしいピアノで、音色の玉手箱のような楽器で、メルニコフのタッチの多彩さと的確さが冴え渡ります。もちろんファウストの磨き抜かれたヴァイオリンの音色と、音楽の推進力はますますパワーアップ。「雨の歌」が入っているのも泣かせるところです。なんとも嬉しい内容とメンバーによるブラームス作品集です。   (Ki)
HMC-901982
ショパン:前奏曲集Op.28(全曲)、
モンポウ
:ひそやかな音楽第15番(ショパンの前奏曲第4番による)、
ショパン:3つの新しいエチュード、
モンポウ:プレリュード第9番、
ショパン:前奏曲嬰ハ短調Op.45、
 小プレリュード変イ長調(遺作)、
モンポウ
:Ellago(湖)〜Paisajes(風景)より
アレクサンドル・タロー(P)
2007年10月に来日し、我々を魅了したピアニスト、アレクサンドル・タロー。その清冽にして多彩な独特のピアノのタッチと、聴くものの心をわしづかみにして金縛りにかけてしまうような、驚異的なまでに集中した音楽は、人々に強烈な印象を与えました。「音楽の友」誌2008年2月号の「2007ベスト・コンサート22」にもランク・インしています。自分の部屋にピアノをもたないことや、座禅を組むなどといった独特のライフスタイルもあって、年末の音楽界の話題をさらった彼の待望の録音は、ショパンとモンポウの作品です。ショパンの前奏曲第1番から始まるこのディスク、いきなり豊かな響きに胸をわしづかみにされます。第15番「雨だれ」の冒頭の有名な旋律の繊細な歌わせ方はさりげなく絶品。中間部の嬰ハ短調は、ショパンをすでに蝕んでいた病魔、死の影すら感じさせる壮絶な音楽となっています。モンポウの「ひそやかな音楽」第15番は、ショパンの前奏曲第4番をもとに書かれたもの。ショパンの心の原風景を見るかのような、心の中の暗がりをはてしなく彷徨っているような演奏です。「湖」では、念入りに彫琢を施された音型が重なり合い、聴く者の心をふるわせ、絶えない感動のさざなみを呼び起こします。
HMC-901983
英国ルネッサンスのバラードと舞曲〜エルフィン・ナイト
ウィッティンガム・フェア(エルフィン・ナイト)
グリーンスリーヴス、スカボローフェア他
ヨエル・フレデリクセン、
アンサンブル・フェニックス・ミュンヘン
この録音は、フレデリクセンがいなければ実現しえなかったでしょう。自身でリュートを奏でながらしびれるような低い声で歌う彼は、 現代に蘇った騎士のよう。バックに彼と息のばっちり合ったミュンヘン生まれのアンサンブル集団を従え、我々を英国とアメリカの伝統 に属する、ポピュラーなバラードの魅力を探る旅へと誘います。サイモン&ガーファンクルでおなじみの「スカボローフェア」は19世紀 末に編曲されたバージョンを元にしていますが、ここではその原点とされているバージョンも収められています(譜例参照)。騎士道の時 代の香り、当時の町の喧騒を感じることのできる、タイムスリップの魔法のようなひとときをお約束します。  (Ki)
HMC-901984
ラッスス:Cancione Sacrae sex vocibus(6声による宗教音楽)
神々の酒と食べ物、服従の日々は延ばされぬ
わが生命は嘆きのうちに尽きたり、神を畏るる者は
われは知りぬ、主は人の道を見たもう、主を畏るることは知恵の初め
われは苦しめらるる時主に対し、われは策略を見たり、神への畏れを知る者
彼らはモーゼの歌を歌いぬ、神はイスラエルに対し、
力強き主よわれは御身を愛し奉る、慈悲深きイエスよ心に留めたまえ
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
コレギウム・ヴォカーレ

録音:2007年5月
その指揮から引き出される音の美しさと響きのあたたかさが、至高の域に達しつつあるヘレヴェッヘによる最新録音。モテットの巨匠ラッススの、最後の作品にして、彼の最高傑作といえる作品です。言葉のニュアンスを引き出すために複雑な書法を用いたパレストリーナと対照的に、ラッススは、知と情の完璧な均衡が保たれた平素な作品にしたてています。ヘレヴェッヘは、敬虔に丁寧に作品を読み込み、完璧なバランスで合唱を響かせています。まさに「天上の響き」とはこのこと、と思わずにはいわれない、私たちの心にダイレクトに届く滋味溢れる名演です。  (Ki)
HMC-901985
リゲティ:ルクス・エテルナ(永遠の光)、  ヘルダーリンによる3つの幻想曲、
 無伴奏ヴィオラ・ソナタ〜第1,2,3楽章、
ロベルト・ヘッペナー:岩の(パウル・ツェラン詩)(全6曲)
ダニエル・ロイス(指)
カペラ・アムステルダム、
スザンヌ・ヴァン・エルス(Va)
リゲティの「ルクス・エテルナ(永遠の光)」は、キューブリック監督の映画「2001年宇宙の旅」に使用され、リゲティの名を世界的にした作品。この曲が欲しいという映画ファンからの問い合わせも多いので大歓迎のリリースと申せましょう。それもフォル・ジュルネ等でおなじみ、評価の高いロイス率いるカペラ・アムステルダムによるので嬉しさ倍増。さらに「ヘルダーリンによる3つの幻想曲」や無伴奏ヴィオラソナタの冒頭3楽章まで、倒錯のリゲティ・ワールドにひたれます。   (Ki)
HMC-901986
グリーグ:チェロ・ソナタ.イ短調Op.36
叙情小品集〜Op.12-1、Op.43-5、Op.54-3、Op.68-3、Op.43-4、Op.62-5、Op.57-4、Op.54-2、Op.57-6、Op.57-1、Op.71-7
アレグレット.ホ長調/インテルメッツォ.イ短調
エマニュエル・ベルトラン(Vc)、
パスカル・アモワイヤル(P)

録音:2007年7月
たまらなく濃密なグリーグ作品集の登場。2001年にコンクールで優勝して以来、徐々に人気上昇中のチェリスト、ベルトラン。デュティユーにも一目おかれた彼女は、ベリオの作品の世界初演を手がけたこともある実力者です。彼女をささえるアモワイヤルもフランスの実力派ピアニスト。ソナタで見せる二人の熱い掛け合い、二人で奏でるクライマックスは、思わずクラクラしてしまうような歌に満ちています。   (Ki)
HMC-901987
「世の終わりのための四重奏曲」
メシアン:世の終わりのための四重奏曲、
主題と変奏(ヴァイオリンとピアノ)
トリオ・ワンダラー
[ジャン=マルク・フィリップス=ヴァイジャブディアン(Vn)、
ラファエル・ピドゥ(Vc)、
ヴァンサン・コック(P)]、
パスカル・モラゲス(Cl)
「世の終わりのための四重奏曲」は、メシアンが第2次世界大戦でドイツの捕虜となり、ゲルリッツ収容所にいたときに作曲されました。収容所内で確保できる人員で演奏できるようにしなければならないという難しい状況下で書かれたこの作品ですが、メシアンの革新的試みがいたるところに見られます。その一つがリズムです。変拍子があるのはもちろんのこと、拡大されたり縮小されたりするリズムは、音楽の新しい可能性をまたひとつ拡げたと同時に、この作品の地位を、20世紀を代表する室内楽作品のひとつへと高めています。この大作をトリオ・ワンダラーのとんでもなく腕の立つメンバーとモラゲスが演奏する、というだけでも興味をそそられますが、期待を裏切らない名演となっています。特に、ピアノのヴァンサン・コックの硬質のダイヤのような音色がまさにメシアン作品にうってつけ。モラゲスの名人ぶりとトリオ・ワンダラーの一糸乱れぬアンサンブルで、20世紀最大の室内楽作品の理想的名演奏が誕生しました。  (Ki)
HMC-901988
マティアス・ゲルネ・シューベルト・エディション第1集
シューベルト:冥府への旅D.526,
沈むよろこびD.700,涙するD.926,
漁夫の愛の幸せD.933,冬の夕べD.938,
メムノンD.541,
双子座に寄せる舟人の歌D.360,
舟人D.536,あこがれD.636,
小川のほとりの若者D.638,
エンマにD.113,巡礼者D.794,,
タルタルスの群れD.583,希望D.295,
人間の限界D.716
マティアス・ゲルネ(Br)、
エリザーベト・レオンスカヤ(P)

録音:2007年2−3月,ベルリン
今日最も人気の高いリート歌手といえば、マティアス・ゲルネを外すわけには行きません。若々しいのに深みのある美声と、丁寧に掘り起こし言葉の意味を具現化する知性。あらゆる点で現代におけるリート歌手の模範といって良いでしょう。そのゲルネが、HMFにシューベルト・エディションを開始。この第1集では、ヨハン・マイアホファー、カール・ゴットフリート・フォン・ライトナー、フリードリヒ・シラー、そしてヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの詞をバランスよく配置、詩によって微妙に変化するシューベルトの姿を多面的に描いています。特筆すべきは伴奏、何とエリザーベト・レオンスカヤ!この偉大なピアニストが、出しゃばらず、しかし恐ろしいほど意味と存在感を感じさせる伴奏を弾き、世界を一層高めています。リート・ファンだけのものにしてはもったいない名盤の登場です! (Ki)
HMC-901989
バッハに捧ぐ〜シューマン:ピアノ作品集
子供のためのアルバムOp.68〜第4番「コラール」/第14番「小練習曲」/
第27番「カノン風な歌」/第28番「追憶」/第23番「曲馬」/第30番「無題」/
第34番「テーマ」/第42番「装飾されたコラール」
スケルツォ、ジーグ、ロマンツェとフゲッタOp.32、
フゲッタ形式の7つのピアノ小品Op.126〜第4,5,6,7番、森の情景、子どもの情景
アンドレアス・シュタイアー(P) 
※使用楽器:1837年エラール社製ピアノ

録音:2007年8月
シュタイアー待望のソロ新譜はシューマン作品集。シュタイアーが尊敬してやまないバッハのことを、シューマンもまた大いに尊敬していました。このアルバムは、シュタイアーがバッハへ敬意を表するために編まれました。
「子どもの情景」は第1曲目から意外なテンポの速さに驚き。しかしこれは、メトロノーム記号に準じているから。有名な「トロイメライ」も思いのほか速く感じられます。聴き手が消えゆく和音の余韻を味わい、夢のような甘い世界に浸ることを阻止するかのようです。「夢」というもののはかなさ、夢は所詮夢さ、とでも言うような、ちょっと大人の哀愁すら感じてしまう「トロイメライ」です。いつも曲にあった楽器を選ぶシュタイアー、ここでもエラール社製のピアノのあたたかく美しく響く音色が印象的です。音と音との天才的な「間」に、シュタイアーの鬼才ぶりを実感します。   (Ki)
HMC-901990
シューベルト:弦楽四重奏曲第12番「四重奏断章」、
第14番「死と乙女」
エルサレムSQ
HMC-901991
シューベルト:歌曲集
シラーの「ギリシアの神々」の一節D677、
音楽に寄すD547、ガニュメートD544、
ミニョンの歌Op.64-4、
糸を紡ぐグレートヒェンD118、
悲しみの喜びD260、たゆみなき愛D138、
湖上でD543b、愛はいたるところにD239/6、
シルヴィアにD891、ナイチンゲールに寄すD196、
月に寄すD193、はなだいこんD752、
子守歌D527、星の世界D307、
ロマンツェOp.26、若い尼僧D828、
リーゼン山頂に立ってD611、春にD882、
挨拶を送ろうD741、
それらがここにいたことはD775、
君こそわが憩いD776、笑いと涙D777、
沈みゆく太陽に寄せてD457、
夕映えの中でD799
ベルナルダ・フィンク(Ms)、
ゲルハルト・フーバー(P)

録音:2007年9月
女性らしい深い優しさ、そして同時に力強さをたたえた歌声のフィンクによるシューベルト。彼の天才の煌きというよりも、心の闇がそこかしこにフッと翳る演奏。何も足さない、何も引かない、シューベルトの世界がここに見事に存在しています。   (Ki)
HMC-901992
メンデルスゾーン:合唱作品集
「野に歌う」Op.41/「野に歌う」Op.48
「野に歌う」Op.59/6つの歌 Op.88
4つの歌 Op.100
ハンス=クリストフ・ラーデマン(指)
RIAS室内cho

録音:2007年9月
HMC-901993
(1CD+DVD)
CrystalTears〜ジョン・ダウランドとその同時代人
ダウランド:「Go Crystal Tears」「Now, O now, I needs must part」、「Go nightly cares」、「Sorrow, come!」、「Semper Dowland semper dolens*」、「The Lady Rich her galliard*」、「A Fancy*」、「Time stands still」、「From silent night」、「Come, heavy sleep」
ジョン・ウォード(1571-1638):ファンタジアno.4, no.3
ロバート・ジョンソン(1583-1633):Have you seen the bright lily grow?
ウィリアム・バード(1543-1623):Though Amatyllis dance in green
ジョン・ベネット(1599?-1614):Venus bird whose mournful tunes
パトリック・マンド(1600 年頃):Like as the day
フェラボスコII(c.1578-1628):四つの音によるパヴァーヌ
作曲者不明:O Death, rock me asleep
リチャード・マイコ(c.1590-1661):ファンタジアOp.13
アンドレアス・ショル(C.T)
ジュリアン・ベールLute、* ソロ)
コンチェルト・ディ・ヴィオーレ
エリザベス朝を代表するダウランドとその同時代人たちによる作品集。同じメンバーとほぼ同じプログラムで何度かコンサートで表現を掘り下げて練り上げた上での録音だけあって、比類なきクオリティの高みにある演奏ばかりです。中でも特におすすめなのが、ジョン・ベネットの作品。。「Venus bird whose mournful tunes」と題されたこの歌曲、ヴィーナスの鳥は、私の傷つき不安な心のためにララバイを歌ってくれる、といった内容のもの。ショルの口笛も挟みながらメランコリックな旋律が続き、リュートの鄙びた音色とともに、日常の様々な瑣末なことに疲れた私たちの耳と心を優しく慰めてくれます。聴けば聴くほど深い静寂に包み込まれるような気分になる、不思議な力を持っています。なお、ボーナスDVDでは、ベネット作品の演奏風景のほか、演奏家同士やプロデューサーとの、フレンドリーながらも厳しいやりとりも収められており、創作の過程を垣間見ることのできる興味深い内容となっています。 (Ki)
※ボーナスDVDは、日本で再生可能なNTSC方式です。
HMC-901995
シューベルト:歌曲集「美しい水車小屋の娘」 マティアス・ゲルネ(Br)、
クリストフ・エッシェンバッハ(P)

録音:2008年9月6-8日,ベルリン
ゲルネによるシューベルトのリート集、第3巻はシューベルトの三大歌曲集の一つ「水車小屋の娘」です。ゲルネの歌うシューベルトの素晴らしさはもはや言うまでもないでしょう、現代的な知性と、類い稀な美声の理想的な融合は絶品と言うしかありません。ゲルネは既に2001年にこの歌曲集を録音していますが、7年間で芸術家として大きく成熟したことがまざと感じられます。そして伴奏はなんとエッシェンバッハ!既に指揮者としても大家のエッシェンバッハだけに、強烈な存在感を放っています。この個性派二人による「美しい水車小屋の娘」が普通で終わるはずもなく、何とビックリの70分越え!基本のテンポは極端に遅いわけではありませんが、「朝の挨拶」、「涙の雨」、「休み」、「好きな色」、「しおれた花」などは通常よりかなりじっくりと演奏され、ことに最後の「小川の子守歌」は9分超!尋常ではありません。ゲルネとエッシェンバッハの生み出す独特の世界にどっぷり漬かってしまいましょう!  (Ki)
HMC-901996
ジョヴァンニ・ベネデット・プラッティ(1697−1763):コレッリに基づく合奏協奏曲第10番ヘ長調(544)
チェロ・オブリガートをともなう合奏曲([)ニ長調、コレッリに基づく合奏協奏曲第4番ヘ長調(540)
「オーボエのための」協奏曲ト短調(644)、コレッリに基づく合奏協奏曲第5番ト短調(541)
ベルリン古楽アカデミー、
シェニア・レッフラー(Ob)、
セバスティアン・ヘス(Vc)、
ゲオルク・カルヴァイト(コンサートマスター、独奏Vn)

録音:2007年11月
プラッティは、イタリアに生まれ、ドイツのヴュルツブルクの宮廷に仕えた作曲家。自身、オーボエのとてつもない名手であったため、最初はオーボエ奏者として雇われたそうですが、ほどなくして作曲家としても才覚を発揮した人物です。オススメはトラック6から始まる(2)のチェロ・オブリガートを伴う協奏曲。痛快なテンポで刻まれる弦楽器による前奏を経て、チェロが上下にめまぐるしく動く旋律を奏でてゆきます。ベルリン古楽アカデミーの面々の一糸乱れぬアンサンブルは見事。そしてオーボエ協奏曲は、多感様式を思わせるような雰囲気を漂わせる豊かな表情が印象的です。   (Ki)
HMC-901997
ユーゴーの詩による歌曲集
リスト:わが子よ、私が王ならば
 おお!僕がまどろむ時
フォーレ:五月/君なくて、
アーン
:星のない夜は
 私の歌に翼があったなら/Viens!
サン=サーンス:朝/エクスタシー
 鐘/ジャン王の軍隊の行進ほか(全19曲)
コンスタンティン・ヴォルフ(Bs-Br)
トゥルング・サム(P)

録音:2007年11月
ユーゴーの詩は、激しく荒れ狂う波を連想させたかと思えば、どこまでもはてしなく続く大地を感じさせるものなど、そのスケールがあまりにも大きいものが多い。個人的な感情を歌うものが多い歌曲のジャンルの詩にしては「破天荒」とすら言えます。それでも作曲家たちはユーゴーの詩を愛し、これらの優れた曲が生み出されたのです。詩とメロディーの両方の世界を見事に制したバリトン、ヴォルフは1978年生まれのホープ。カールスルーエに学び、ヨーロッパの歌劇場で活躍の場を広げており、徐々に人気を博しつつあります。   (Ki)
HMC-901998
J.S.バッハ:カンタータ集
「イエス十二弟子を召寄せて」BWV22
「汝まことの神にしてダビデの子よ」BWV23
「主イエス・キリスト、真の人にして神よ」BWV127
「見よ、われらエルサレムにのぼる」BWV159
ドロテー・ミールズ(S)
マシュー・ホワイト(C.T)
ヤン・コボウ(T)
ペーター・コーイ(Bs)
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
コレギウム・ヴォカーレ
円熟の極み、ますますの充実をみせるヘレヴェッヘによるカンタータ最新盤。BWV22、23は、トーマス教会のカントル採用試験のために書かれた作品で、試験提出用作品ということもあり、凝りに凝った作品となっています。22番は優美な作品、23番は厳粛な作品で、バッハの作曲の能力の幅広さを示しています。127番も、「ヨハネ受難曲」の改訂稿上演を控えていた時期に作曲されたため、受難と復活の預言を主題とするものになっており、充実した作品となっています。ヘレヴェッヘならではの陶器を思わせるしっとりとした合唱と管弦楽の音色に心打たれる一枚です。(Ki)
HMC-901999
16世紀イタリアの声楽作品
モンテヴェルディ:「私は怠惰の中に生まれ」、
カプスベルガー(1580頃−1651):「死にゆく者を憐れみたまえ」、
ファルコニエーリ(1585−1656):「つれなきアルミッラ」、
カッチーニ(1551−1618):「東方より」、「誰がわたしを慰めてくれるのだろうか?」他
ディンディア、プリアスキらによる作品(全17曲)
ヨエル・フレデリクセン(バス、アーチLute)
アンサンブル・フェニックス

録音:2007年11月
第1弾の「エルフィン・ナイト」(HMC)で、スカボロー・フェアの原型のメロディをそのしびれるような美しい低い声で見事に聴かせてくれたフレデリクセン。第2弾は、バロック時代のイタリアに生きたシンガー・ソングライター達による作品集。カッチーニやカプスベルガー、プリアスキといった作曲家たちは、自身のリュート伴奏で自作品を歌っており、とりわけバスの声域のために優れた作品を残しています。中には2オクターブ半という広い音域に渡る作品も含まれており、言葉と旋律、フレデリクセン自身によるアーチリュートの音色、何よりしびれる低声が耳と心に染み渡ります。  (Ki)
HMC-902000
ブラームス:弦楽四重奏曲集
弦楽四重奏曲第1番ハ短調Op.51-1、
ピアノ五重奏曲へ短調Op.34
アルカントSQ
[アンティエ・ヴァイトハース、
ダニエル・ゼペック(Vn)、
タベア・ツィンマーマン(Va)、
ジャン=ギアン・ケラス(Vc)]、
ジルケ・アーヴェンハウス(P)
ジャン=ギアン・ケラス率いるアルカント・クヮルテットのCD第2弾は、ブラームス。ブラームスにとって、交響曲と同様、弦楽四重奏というジャンルにおいても、ベートーヴェンという存在はとてつもなく大きなものでした。ベートーヴェンの影から逃れるために長い年月をかけて作曲された第1番は、それだけに重厚で充実した作品となっています。時に弦楽四重奏、弦楽器という枠を超えているかのような大きな音楽で、様々な音色が求められる各パートですが、そこはさすが名手揃いのアルカント、見事なアンサンブルで聴かせます。ピアノ五重奏曲も、冒頭のユニゾンの暗い旋律から、ものすごい求心力で一気に作品に引き込まれます。ピアノのアーヴェンハウスも、ヴァイオリンのヴァイトハースとの共演も多く、メンバーとも気心の知れた仲間として、熱く融けあった見事なアンサンブルを展開しています。(Ki)
HMC-902001
聖母マリアのための夕べの祈り
ヴィルジーリオ・マッツォッキ(1597-1646):主は言われた
 幸いなる御母
 ほめたたえよ、しもべ達よ
 主が家を建てられるのでなければ
 イェルサレムよ、主をたたえよ
 マニフィカト
カリッシミ:わが心よ起きよ
おお、かくも美しき御名マリアよ
  サルヴェ・レジーナ
フレスコバルディ:二つのホルンのカンツォーナ、
パレストリーナ
:マリア星よ
コンラート・ユングヘーネル(指)
カントゥス・ケルン、
コンチェルト・パラティーノ

録音:2008年2月
16〜17世紀に書かれたマリアの賛歌を集めたもの。モンテヴェルディの「聖母マリアの夕べの祈り」の原型は、17世紀にマッツォッキが書いたものでした。このディスクには、マッツォッキの作品のほか、同時代を生きたカリッシミ、フレスコバルディの作品が収録されています。フレスコバルディの「二つのホルンのカンツォーナ」は華やかな管楽器によるアンサンブル、そしてコンチェルト・パラティーノの名人芸が冴え渡ります。教会の残響を美しくとらえた録音はさすがハルモニアムンディ。カントゥス・ケルンの美しい歌声、そしてコンチェルト・パラティーノの名手たちが奏でる、天上から降ってくるような管楽器の音色に聴き入ってしまいます。  (Ki)

HMC-902002(2CD)

シューベルト:ピアノ三重奏曲集
ピアノ三重奏曲第1番Op.99D.898変ロ長調、
ノットゥルノ変ホ長調D.897、
ピアノ三重奏曲第2番Op.100D.929変ホ長調、
ソナタ楽章変ロ長調D.28
トリオ・ワンダラー

録音:2000年7月(原盤:LDC2781132)
トリオ・ワンダラーは、2007年に結成20周年を迎えた大家トリオ。一人一人をとっても物凄い名手、そんな三人による音楽は、どこまでも自然で、横の流れの美しいもの。お互いの音楽性を認め合って、お互いの音楽性を知り尽くしているからこその結晶といえるでしょう。トリオ第2番の2楽章冒頭、「バリー・リンドン」でも使われた有名な旋律は感涙もの。名手ヴァンサン・コックによるピアノは、でしゃばることは決してありませんが、抗いがたい魅力を放ち続けます。もちろんヴァイオリンもチェロも、その高貴な音色は特筆に価します。こんなすごいトリオの生演奏が低価格で聴けてしまうのですから、ラ・フォル・ジュルネ音楽祭、おそるべし。
HMC-902004(2CD)
マティアス・ゲルネ・シューベルト・エディション第2集「
若者と死D.545、緑の中の歌D.917、秋の夜D.404、静かな国へD.403、
秋の夕べD.405、遠くへの渇望D.770、私の心へD.860、さすらい人D.649
ヴィルデマンの丘を越えてD.884、嘆きD.371、春の小川のほとりでD.361
リュートに寄せてD.905、娘の恋の立ち聞きD.698、まなざしの歌D.297
君はわが憩いD.776、音楽に寄せてD.547
泉に寄せてD.530、岩のそばの歌手D.482
竪琴との別れD.406、歌の終わりD.473、郷愁D.456、ドナウ河の上でD.553
ウルフルが釣りをする時D.525、星の夜D.670、帰り道D.476、秘密D.491
ゴンドラの舟人D.808、夕べの星D.806、勝利D.805、夜の曲D.672、解消D.807
語らずともよい黙っているがよい(ミニョンの歌)D.877-2、
ただ憧れを知るひとだけが(ミニョンの歌)D.877-4、ミニョンにD.161
竪琴弾きの歌D.480(孤独に身を委ねる者は,涙を流しながらパンを食べたことのない者は,家々の門辺に歩み寄り)
流れのほとりでD.160、恋人の近くにD.162
漁師D.225、湖上にてD.543
悲しみの喜びD.260、出会いと別れD.767
マティアス・ゲルネ(Br)、
ヘルムート・ドイッチュ(P)、
エリック・シュナイダー(P)
今回はなんと一気に43曲!ゲルネならではの美声と知性の見事な融合が、シューベルトの歌曲に新たな生命をもたらしています。伴奏は、ドイッチュとシュナイダーの両ベテランが担当、質においても量においても圧倒的なアルバムです!  (Ki)
HMC-902010
マルティン・イ・ソレール:ハルモニームジーク音楽集
歌劇「椿事」〜木管アンサンブルのためのアリア編曲集、
ディヴェルティメント第2番変ロ長調/第3番変ロ長調/第4番変ロ長調
ホアン・エンリク・ルナ(指)
ムーンウィンズ

録音:2008年2月
モーツァルトのCDと間違えたかな、と思ってしまうほど、高貴さと美しいメロディに満ちた曲が並ぶ、「ヴェネツィアのモーツァルト」と称されるソレール作品集。それもそのはず、1作品目の歌劇「椿事」の木管編曲版は、モーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」の地獄落ち直前の晩餐のシーンで引用されていた楽曲です。ハルモニームジークとは、18世紀に流行した木管アンサンブル編成の音楽のことで、当時の上流階級の人々の食事会や集まりなどでよく演奏されました。ムーンウィンズとしては2枚目のディスク(第1弾はHMI987071)。また、ホアン・エンリク・ルナはクラリネット奏者としても活躍しており、東京クヮルテットとのブラームス:クラリネット五重奏曲(HMI98)でも名演を聴かせています。  (Ki)
HMC-902011
ブルックナー:交響曲第5番変ロ長調 フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)シャンゼリゼO

音:2008年2月メス、アーセナル
ヘレヴェッへ&シャンゼリゼ管によるブルックナー交響曲シリーズ第3弾は、2008年2月に収録された交響曲第5番。第4番に引き続いて、初の本格的なピリオド楽器演奏によるアルバムの登場となります。ブルックナーのシンフォニーのなかでもオルガン的とか宗教的といったイメージをもっとも想起させる第5交響曲。これまでも時代考証派によるブルックナーの交響曲第5番では、アーノンクールがウィーン・フィルを振った録音、同じく古楽演奏からキャリアを積んだボルトン&モーツァルテウム管などの録音があり、なかでもアーノンクール盤はモダン楽器のオケながら弦のノンヴィブラート奏法を導入したことで、第2楽章アダージョなどに一定の成果を上げて注目されました。1991年の設立以来、長年に渡りピリオド楽器のアンサンブルとして数多くの実績を重ねてきたヘレヴェッへ&シャンゼリゼ管は、着実に深化を遂げているのでしょう。交響曲第7番や第4番、そして前作のミサ曲第3番で真価を示してきた、ほかならぬ当コンビによるだけにこのたびの第5番もやはり強く惹かれるものがあります。まず、第1楽章では低弦のピッツィカートで開始される序奏、つづいてヴィオラ、第2ヴァイオリン、第1ヴァイオリンの順に対位法を形成してゆくあたり、ヴァイオリン両翼型の配置から生み出される立体的な音響がここでも効果的。過度に華美に陥らぬファンファーレもオリジナル楽器特有のあたたかみのある響きで好ましく感じられます。さらに、アダージョも試みとしてではなく、ヴィブラートフリーを徹底的に実践した結果、かつていかなる録音でも味わったことのないこのうえない透明感を獲得しています。そして、切れ味も鋭く美しく幻想的なスケルツォを経て、神聖にして壮麗というほかないフィナーレで閉じられるまで、まるで宗教曲の深い祈りの場面にも似た感触は耳の肥えたファンといえども片時も聞き逃せないものです。なお、テンポについて快速な傾向を指摘されることの多いピリオド・アプローチにあって、当盤の総演奏時間は、ヘレヴェッヘが理想とするヴァントによるNDR響との1度目のレコーディング(1989年)にほぼ近いものとなっているのも注目されるところです(73分29秒)。また、クオリティの高い音楽制作で知られるTORITONUSのチームが録音を担当しているのも大きな魅力といえるでしょう。   (Ki)
HMC-902012
ドビュッシー:チェロ・ソナタ第1番、
 レントよりも遅く、
プーランク
:チェロ・ソナタ、
 バガテル,ニ短調(原曲:Vn&P)、
 「陽気な歌」〜セレナード(原曲:歌とP)、
 フランス組曲(全7曲/Vc&P版)、
ドビュッシー:スケルツォ、インテルメッツォ
ジャン=ギアン・ケラス(Vc)、
アレクサンドル・タロー(P)
2007年のバッハ:無伴奏チェロ組曲の衝撃的名演奏のリリースの記憶も生々しいケラス。そして、2007年秋に来日し、強烈な個性と集中した演奏で事実上の日本デビューを果たしたタロー。2人の共演による夢のリリースは、フランスの室内楽です。異様に研ぎ澄まされたタローのピアノの音色に、ケラスの颯爽としたチェロがからまる様は、まさにフランスのエスプリそのもの。「レントより遅く」でのたゆたうような雰囲気に酔い、プーランクの「フランス組曲」の終曲カリヨンでの音色の鮮やかさに圧倒されます。今もっとも注目の二人による、堂々の1枚です。   (Ki)
HMC-902013(2CD)
テレマン:ブロッケス受難曲 ルネ・ヤーコプス(指)RIAS室内cho、
ベルリン古楽アカデミー、
ダニエル・ベーレ(T/福音史家、信仰心Y)、
ヨハネス・ヴァイサー(Br/イエス、信仰心X)、
マリー=クロード・シャピュイ(Ms/ユダ、信仰心V、娘T)、
ドナート・ホーヴァール(T/ペトロ、ピラト、信仰心W、)、
ブリギッテ・クリステンセン(S/シオンの娘T、信仰心T、マリア、女T)、
リディア・トイシャー(S/シオンの娘U、信仰心U、娘U)

録音:2008年3月
ブロッケスは、18世紀ドイツ文学界の重要人物。彼が書いたこの受難曲のテキストには、テレマンのほかにも、ヘンデルやカイザー、マッテゾンら13人もの作曲家が付曲しています。テレマンの受難曲は1716年4月2日に初演、大成功をおさめ、かの大バッハ1739年(45歳頃、自らがマタイ・ヨハネ両受難曲を作曲した後)に全曲を写譜して研究したほどに有名曲となりました。ヤーコプスは、人間味豊か、絡み合う音が魅力のテレマンの名作を、大変見事に、瑞々しく現代によみがえらせました。
序曲は器楽によるシンフォニア。まるでオーボエ協奏曲のような充実したシンフォニアを、名団体ベルリン古楽アカデミーで聴けるとは!バッハの受難曲が福音書家の役割が非常に大きいのに対し、テレマンの作品は、それぞれのソリストが「信仰心」という役割を持ち、場面場面で、二重唱や三重唱で信者(=わたくし)の心を代弁、活躍します。イエスが十字架上で「わが神、わが神、なぜ私をお見捨てになったのですか」と言う場面は、実に人間味に溢れていてドラマティック。終曲コラールでは、トランペットの響きも高らかに、イエスの死による私たちが罪から救い出されるということを力強く讃美していて、大変輝かしい終結となっています。ヤーコプスの完璧なコントロールの指揮の下、歴史的名曲に理想的な名演が誕生しました。資料としても大変貴重なセットです。  (Ki)

HMC-902015
ブラームス:ハンガリー舞曲第1-10番(作曲者編による独奏版)、
8つの小品Op.76、
ワルツ集Op.39(作曲者編による独奏版)
セドリック・ティベルギアン(P)
一見優男風ながら、硬質でクリアなタッチと深い音楽性で辛口な演奏を繰り広げるティベルギアン。彼の新譜はブラームス、それも作曲者自身による連弾名作の独奏版を中心とした個性的選曲。ハンガリー舞曲集の独奏版は、音の詰ったオクターヴの連続で非常に弾き難く、テンポを遅めたり流れの途切れた演奏になりがちですが、さすがティベルギアン、そのようなことは一切なく、ブラームスならではの迫力と重厚さで一気に聴かせます。この歳でこれほど深みのあるブラームスを実現したティベルギアン、ただものではありません。  (Ki)
HMC-902016
J.S.バッハ:ソロ・カンタータ集
「神にのみわが心を捧げん」BWV169、
「満ち足れる安らい、うれしき魂の悦びよ」BWV170、
「霊と心は驚き惑う」BWV35
ベルナルダ・フィンク(Ms)、
ぺトラ・ミュレヤンス(指)
フライブルク・バロックO、
ヴォーカルコンソート・ベルリン(合唱)、
ヴォルフガング・ツェラー(Org)

録音:2008年4月
バロック・アンサンブルの雄、フライブルク・バロック・オーケストラによる、バッハのカンタータ集の登場。1曲目に収められている169番の第1曲シンフォニアは、チェンバロ協奏曲ホ長調(BWV1053の第1楽章)と同じ音楽。ソロ・パートはオルガンで演奏され、オルガン・ソロ(ヴォルフガング・ツェラー)の巧さが際立ちます。3本のオーボエも活躍、フライブルク・バロック・オーケストラの面々の一人ひとりがパワー全開で演奏した実に密度の濃い演奏。35番も第1曲シンフォニアはオルガン協奏曲。ソロを彩り支えるファゴットの響きも実に豊か、通奏低音旋律の一音一音がふくよかに歌い上げられています。旋律楽器から通奏低音まで実に生き生きとしており、各パートが実に濃密。実に贅沢なカンタータ集となっています。これらのカンタータはすべて同時期に作曲された、アルト・ソロのためのもの。当時のライプツィヒには優れたカストラートがいたと考えられています。ヨーロッパで絶大な人気を誇るベルナルダ・フィンクがソロを務めています。  (Ki)
HMC-902017(2CD)
エリック・サティ:最後から2番目の思想
[CD1]ピアノ・ソロ編
(1)グノシェンヌ第1番、
(2)舞踏への小序曲、
(3)ジムノペディ第1番、
(4)本当にぶよぶよした前奏曲、
(5)グノシェンヌ第2番、
(6)嫌らしい気取り屋の三つのワルツ、
(7)グノシェンヌ第3番、
(8)ピカデリー、(9)自動記述法、
(10)グノシェンヌ第4番、
(11)操り人形は踊っている、
(12)メドゥーサの罠、
(13)冷たい小品、
(14)最後から2番目の思想、
(15)いくぶん生き生きと(モンマルトルのエスキースとスケッチより)、
(16)乾からびた胎児、
(17)グノシェンヌ第5番、
(18)ワルツーバレエ、
(19)世紀ごとの時間と瞬間的な時間、
(20)ばら十字団の最初の思想、昨金の粉、グノシェンヌ第6番
[CD2]デュオ編
(1)梨の形をした3つの小品(1台4手のための)、
(2)ジュ・トゥ・ヴ、
(3)お医者さんのところで、
(4)僕には友達がいた、
(5)エンパイア劇場のプリ・マドンナ、
(6)風変わりな美女(1台4手による)、
(7)右や左に見えるもの、
(8)シネマ(ミヨー編曲による1台4手版)、
(9)ダフェネオ、
(10)リュディオン(潜水人形)、
(11)再発見された像(C管トランペットとピアノのための嬉遊曲)、
(12)シテール島への船出、
(13)いいともショショット
[CD1&2]アレクサンドル・タロー(P)
(※CD1(12)はプリペアード・ピアノ)
[CD2](1)(6)(8)エリック・ル・サージュ(P)、(2)(3)(4)(5)ジュリエット(声)、
(7)(12)イザベル・ファウスト(Vn)、
(9)(10)(13)ジャン・ドゥルスクルーズ(T)、
(11)ダヴィッド・ゲリエ(Tp)

録音:2008年4、5月
洒落ていて物憂くてエスプリたっぷりでどこか不気味・・・そんなサティの音楽。考えてみれば、タローほどサティ作品にぴったりなピアニストはそういないのではないでしょうか。タローは持ち前の抜群のセンスで、プリズムのように刻一刻と変わる曲のニュアンスや洒落っ気を気持ちよく描いてみせてくれます。「指先の魔術師」タローが奏でる独特の音色にはドキッとさせられます。ピアノ・ソロだけでも充分たのしめますが、disc2の「デュオ」での豪華共演者陣も注目です。ル・サージュとのデュオは、これ以上ない、と思えてしまうくらいに息も音色もセンスもぴったり。本当にうまいフランス人がフランスものを弾くとこうなるのか、と思わず脱帽。ジュリエットは、タローが「理想のサティ歌い」と絶賛するシャンソン歌手で、パリのちょっと古びたカフェを連想させる、雰囲気たっぷりの歌を聴かせてくれます。「右や左に見えるもの」では、イザベル・ファウストが変幻自在の活躍。ヴァイオリンという楽器がもつ音色の意外な響きをたのしませてくれます。ゲリエのトランペットも実に見事。パリっとおしゃれに決まった、サティの新たなる名盤の登場です。
ブックレットの裏表紙に書いてあるサイトにアクセスし、パスワードを入れると、ボーナストラックなどが入手できるという趣向もあります。
※ジャケットに用いられているイラストは、ジャン=コクトーによるサティ像。  (Ki)
HMC-902019
(2CD+DVD)
ショスタコーヴィチ:24の前奏曲とフーガOp.87

■DVD…クリスティアン・ルブレ制作によるメルニコフとシュタイアーのインタビュー
アレクサンドル・メルニコフ(P)
ショスタコーヴィチ壮年期の「24の前奏曲とフーガ」はその巨大さ、深さ、技術的難度ゆえ、ピアニストにとって最高峰のひとつとなっています。全曲の録音も多くはなく、いまだに初演者ニコラーエワのものが超えるものなき決定盤の地位を保っています。しかし、今回ロシアの俊英メルニコフがまさに命をかけてチャレンジした録音は驚くべき完成度で、この世のものとは思えぬ域に達しています。この音楽的深み、さらに時折見せる暗黒の情念など30代とは思えぬ成熟度、さらにニコラーエワにはない21世紀的な新しさなど、どこをとっても非の打ちどころなし、ついにニコラーエワの盤を超える演奏の出現と思えます。特典にクリスティアン・ルブレ制作のDVD付。第24番の実演に加え、個人的にも親しい間柄のアンドレアス・シュタイアーをインタビュアーに、作品について約23分真摯に語る姿が収められていますが、両者ともわかりやすい英語(日本語字幕なし)で、非常に興味深い内容となっています。 (Ki)
HMC-902021
シューベルト:ピアノ作品集
ピアノ・ソナタト長調「幻想」D894、
4つの即興曲Op.142D935
アンドレアス・シュタイアー(フォルテピアノ)
※クリストファー・クラークによる1827年コンラート・グラーフのレプリカ(1996年)

録音:2008年7,8月
2008年秋にソロで来日し、深く集中したシューマンの世界で聴衆を魅了したシュタイアー。次なる新譜はシューベルト作品集です。死の2年前に書かれた「幻想」では、寄せては返す波のような冒頭から、シュタイアーの巧みな語り口によって静謐の世界へといざなわれます。終始シューベルトの歌に満ちており、楽器のあたたかく豊かな色彩を帯びた響きをシュタイアーは見事に操っています。4つの即興曲も、美しく愛らしい宝ものが並べられた宝箱を眺めているような、大切な思い出のアルバムをめくっているような、なんとも幸せな気分になります。   (Ki)
HMC-902024
VENEZIA,1625
G.B.フォンターナ(1571?-1630):ソナタ第2番、第3番、第6番(原曲:ヴァイオリン・ソナタ)、
ウッチェッリーニ(1603-1680):シンフォニアXX(ラ・ヴァーミンガルダ)、
 ソナタXXIV、
 ベルガマスクに基づくアリア、
 シンフォニアXIV「ラ・フォスキーナ」、
 シンフォニアXVII「ラ・ストゥチャルダ」他
ベルナルド・ストラーチェ(17世紀):シャコンヌに基づく即興演奏
メールラ:チャッコーナ、
 カンツォン「ラ・ストラーダ」
ロッシ:シンフォニアXIイン・エコー、
ピッチニーニ:トッカータ2番
モーリス・シュテーガー(リコーダー)
古楽やモダンの垣根をひらりと越えて、リコーダー1本で世界を圧倒しつづけているスター、シュテーガーの新譜。リコーダーでここまで技巧を楽しむことができるとは!原曲がヴァイオリンのための書かれた作品もシュテーガーの手にかかれば天衣無縫のリコーダー作品となって現れます。実に見事!10月には武蔵野市民文化会館と兵庫県立芸術文化センターでの来日公演が予定されています。  (Ki)
HMC-902025(3CD)
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集
◆CD
ソナタ第1番〜第8番ト長調Op.30-3
◆dual-disc
[CD面]ソナタ第9番「クロイツェル」(HMC901944と同音源)*
[DVD面]録音メイキング風景+ソナタ第10番〜第1楽章演奏風景
イザベル・ファウスト(Vn)、
アレクサンドル・メルニコフ(Vn)

録音:2008年、2006年5月*
3CD+1dualdisc(CD&DVD)の仕様。)しなやかな力強さと細やかな感受性をあわせもつファウストの新譜は、ベートーヴェンのソナタ集。ファウストのヴァイオリンで聴くベートーヴェンというだけでも心踊るのに、メルニコフがピアノだなんて、なんと贅沢なことでしょう。ファウストは、第5番「春」の第1楽章の有名な冒頭で、実に繊細で可憐な表情を見せており、彼女のセンスと知性が光ります。ピアニストのメルニコフも、弱音でもくっきりとした発音とピリッと線の通った和声感、一糸乱れぬピアニズムで聴かせます。お互いに自由に羽ばたいているのに、息はピタリと合っており、見事の一語です。ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ集にうれしい名演奏の登場です。 (Ki)
HMC-902028
ルネッサンス、19〜21世紀の歌
作者不詳(16世紀):パリのすべての雄叫びによる新しい歌(プロヴァンス地方で踊られた舞踊「ヴォルト」の歌)
レジ・カンポ(b.1968):マルセイユの雄叫び
エドゥアルド・ドゥランサール(19世紀):通りの雄叫び
クレマン・ジャヌカン(c.1485-1558):パリの雄叫び
ヴァンサン・ブショー(b.1966):パリの雄叫び
アルフレート・ルボー(1835-1906):僧院の鐘の音(器楽作品)
ジャン・ジョルジュ・カストナー(1810-1867):パリの雄叫び
ジャン・セルヴァン(1530-1596):パリの雄叫びのフリカッセ(ごった煮)
クロード・ルドゥ(b.1960):ブログの雄叫び「14才で私は捨てられたの」
アルフレート・ロラン(1797-1874):バニェルの雄叫び
ブルーノ・デュコル(b.1949):私は叫ぶの。叫ぶの。叫べるんだってば。
ヴァンサン・スコット(1874-1952):兵隊サンの雄叫び
ドミニク・ヴィス(C-T、指)&アンサンブル・クレマン・ジャヌカン
〔ウゲス・プリマール(T)、ヴァンサン・ブショー(Br)、フランソワ・フォシェー(Bs)、ルノー・ドゥレイグ(Bs)〕、
エリック・ベロック(Lute)、エリサベス・ガイゲ(Org)、ヴァンサン・ルトゥルム(P)、ニコラ・クロッセ(Cb)

録音:2008年8月
ジャケットのあまりの強烈さに、思わず「雄叫び」としましたが、原題の「Cri(英語でcry)」は物売りの声のこと。古くから、道を行く行商人(時にはチンドンヤ)たちは、独自の売り文句の歌を持っていました。ヨーロッパでは16世紀頃から、この行商人やチンドンヤの声をとりいれた音楽が生み出されました。こうした中世・ルネッサンスの「雄叫び」世俗音楽は、1978年に結成されたアンサンブル・クレマン・ジャヌカンの十八番。このほかに、現代を生きる作曲家たちによる雄叫び音楽が収められているのがなんとも興味をそそられるところ。.の「ブログの雄叫び」は、インターネットのブログに見られるような不思議な文字の羅列が歌われ、私小説風なブログの散文が朗読されるなど、実に現代風。.の「私ハ.・・・」は、街角で人々が突発的に出してしまった独り言や、何か言おうとして飲み込んだ言葉の断片が集められたような曲。人が発する歌や言葉は空気に溶けて消えてしまうもの。しかし、ここに集った名人たちは、空気や歴史、さらにはインターネットの渦の中に埋もれていた様々な言葉を楽譜へと「二次元」化、それを実際に音にすることにより、様々な言葉を聴く人の脳裏、耳の奥に焼き付けます。  (Ki)
HMC-902030
ハイドン:弦楽四重奏曲集
弦楽四重奏曲ヘ短調Op.20-5,Hob.III:35
ハ長調Op.33-3,Hob.III:39「鳥」
ニ長調Op.76-5,Hob.III:79
エルサレムSQ
〔アレクサンダー・パヴロフスキー(Vn1)アミハイ・グロス(Vn2)
セルゲイ・ブレスラー(Va) 
キリル・ズロトニコフ(Vc)〕

録音:2008 年9月
ハイドン・イヤーを記念して発売されたHMX 2962030の再発売。旧メンバーによる若々しさに満ちた魅力の1枚です。 (Ki)
HMC-902031
シューマン:歌曲集
ミルテの花Op.25より6曲
メアリー・スチュアート女王の詩Op.135
リュッケルトの詩による歌曲より 
「おお太陽よ、海よ、ばらよ」、「献身の花」、
「おお、殿方よ」、「東方のばらより」、
「ジャスミンの香り」、「Liebster,
deineWortestehlen」、
「MeinschonerStern!」
リーダークライス(全曲)
ベルナルダ・フィンク(Ms)
アントニー・シピリ(P)

録音:2008年10月
ヨーロッパを中心に活躍めざましいメゾ・ソプラノ、フィンクの新譜は彼女の瑞々しい知性とたしかな技術が光るシューマン。ピアニストに、草津音楽祭でもおなじみの名手シピリを迎えているのも興味をそそります。鈴を転がすような高音部、美しいドイツ語、寸分の狂いのない音程、フィンクのゆるぎない芸術を堪能できる1枚です。 (Ki)
HMC-902032
フォーレ:ピアノ四重奏曲集
ピアノ四重奏曲第1番Op.15ハ短調
ピアノ四重奏曲第2番Op.55ト短調
トリオ・ワンダラー、アントワーヌ・タムスティ(Va)

録音:2008年10月
きらめくようなアンサンブルでファンを魅了するトリオ・ワンダラー最新盤は、ヴィオラ界のスター、タムスティをゲストに迎えてのフォーレ:ピアノ四重奏曲集。自身が非常に優れたピアニストでもあった、フォーレのピアノ書法が光る、充実した2曲です。第1番は、傑作ヴァイオリン・ソナタと同じ時期(1876年)に着手されましたが、同年末に結婚する予定であった婚約者マリアンヌ・ヴィアルド(ポーリーヌ・ヴィアルドの娘)に婚約を破棄され、大きなショックを受け、完成したのは1879年。初演は成功に終わりましたが、終楽章が不評だったため、書き直したものが現行のものとなっています。第2番は84年に着手、87年に初演されました。アダージョ楽章は、子供時代に聞いた、隣村から響いてくる鐘の音の思い出が反映されている、という、フォーレにしては珍しい(唯一の)謝辞が添えられています。 (Ki)
HMC-902033
スヴェーリンク:フランス語の聖歌&シャンソン集 ダニエル・ロイス(指)カペラ・アムステルダム

録音:2008年10月
作曲家、オルガニスト、オルガン製作者、そして国際的にも名の通った教師として活躍していたスヴェーリンクは、彼が生きていた当時「アムステルダムのオルフェウス」と呼ばれるほどに、声楽分野でも知られた存在でした。当時最もよく歌われていたラテン語聖歌にまったく引けをとらない力強い表現に満ちています。特にマニフィカトは、必聴ものの素晴らしさです。 (Ki)
HMC-902034
マティアス・ヴェックマン(1618頃-1674):宗教モテット&哀歌集
なにゆえ、独りで座っているのか(哀歌1 : 1, 2, 8, 9, 12, 20, 21)
死は勝利にのみ込まれた(コリントの信徒への手紙115 : 54, 55, 57)
カンツォン \ *
泣くな、見よ(ヨハネの黙示録5 : 5, 12-14 )
おめでとう、恵まれた方主があなたと共におられる(ルカによる福音書1 : 28-38)
疲れた者、重荷を負う者は、だれでもわたしのもとに来なさい(マタイによる福音書11 : 28, 29) / カンツォンII *
シオンは言う、主はわたしを見捨てられた(イザヤ書49 : 14-16)
都に上る歌(詩篇124章)
コンラート・ユングヘーネル(指)
カントゥス・ケルン
[ヨハンナ・コスロフスキー(S)
アレクサンダー・シュナイダー(C.T)
ハンス・イェルク・マンメル(T)
ヴォルフ・マティアス・フリードリヒ(Bs)]
コンチェルト・パラティーノ*、
ブルース・ディッキー(コルネット)他

録音:2008年10月
HMC-902035
(CD+DVD)
ゲルネ/シューベルト歌曲集第4集
ギリシャの神々D.677/フィロクテートD.540
アイスキュロスからの断章D.450b
赦されたオレステスD.699
ヘリオポリス1D.753/ヘリオポリス2D.754
竪琴に寄すD.737/アティスD.585
海の静けさD.216/トゥーレの王D.367
ブロンデルからマリアへD.626(
茂みD.646/羊飼いD.490
巡礼の歌D.789/さすらい人の夜の歌D.224
春の想いD.686/郷愁D.851
十字軍D.932/別れD.475

◆メイキングDVD(リージョン・オール NTSC 17'38 字幕:英仏)
マティアス・ゲルネ(Br)
インゴ・メッツマッハー(P)

録音:2008年10,11月,2009年2月,ベルリン
大好評のゲルネのシューベルト歌曲集、第4集の登場です。今回は、古代ギリシャや伝説、十字軍など、古代に題材を採った詩の曲が多いのが特徴です。遥か昔に思いを馳せるロマンティシズムが、ゲルネならではの滑らかで暗い美感に溢れた声でしっとりと歌われています。リート・マニアなら唸らされること請け合いの見事な出来栄えです。しかも伴奏ピアニストは、指揮者メッツマッハーというから驚き。さすが知性派指揮者、音楽を丹念に掘り込みつつ、様式感は崩さぬ名人芸を披露しています。ボーナスとしてメイキング映像を収録したDVDが付いています。 (Ki)
HMC-902036
(DVD+DVD)
モーツァルト:歌劇「イドメネオ」 リチャード・クロフト(Tイドメネオ)、
ベルナルダ・フィンク(Msイダマンテ)、
スンヘ・イム(Sイリア)、
アレクサンドラ・ペンダチャンスカ(Sエレットラ)、
ケニス・ターヴァー(Tアルバーチェ)、
ニコラ・リヴァンク(Br大祭司)、
ルカ・ティットート(Bs声)、
ルネ・ヤーコプス(指)
フライブルク・バロック・オーケストラ,
RIAS室内cho

録音:2008年12月,ヴッパータル
モーツァルトのダ・ポンテ三部作、「ティートの慈悲」に続いてヤーコプスが取り上げたのは、セリアの傑作「イドメネオ」。ヤーコプスは、2008年11月に、バリャドリッド(スペイン)、ケルン、ブリュッセル、パリとこのオペラを演奏会形式で集中的に上演、その直後の12月にセッション録音をしています。名作として録音も多数あるこのオペラですが、ヤーコプスの演奏はさすが次元が違う!これまでの成果を生かし、オーケストラはいよいよ熱く雄弁にモーツァルトの意図を音にしています。そして古楽界の名歌手をずらりと並べた歌手!ことにタイトルロールのクロフトは、至難なことで知られる第2幕のアリアを鮮やかに歌い切り、思わずブラヴォーと叫びたくなるほど。さらにはフィンク、イム、ペンダチャンスカ、ターヴァーと、ヤーコプスのモーツァルト・シリーズで活躍した歌手たちが適材適所で起用、その上大祭司にはベテラン、リヴァンクを配するという豪華さ。またいつも通り、この演奏でもフォルテピアノが雄弁に活躍しています。基本的にミュンヘン初演稿に基づいており、幕切れのバレエも演奏されています。加えて第3幕には、初演時には外されたイダマンテのアリア、エレットラのアリア、イドメネオのアリアが追加されており、分量がだいぶ増えています。さらに補遺として、神秘の声の別ヴァージョンを収録。モーツァルティアンなら、絶対必携のCDです!! ボーナスDVD(メイキング映像)つき。  (Ki)
HMC-902039(2CD)
ハイドン:「天地創造」 ユリア・クライター(S:ガブリエル,エファ)
マキシミリアン・シュミット(T:ウリエル)
ヨハネス・ヴァイサー(Br:ラファエル,アダム)
ルネ・ヤーコプス(指)フライブルク・バロックO,
RIAS室内cho

録音:2009年1月
歌手は、バロック音楽から近代ものまで幅広く活躍している、ドイツの超美声ソプラノ、クライター。バリトンは、ヤーコプスが「ドン・ジョヴァンニ」の主役に抜擢して話題となったヴァイサー。そしてテノールには、ここ数年で人気急上昇中のドイツの美声テノール、シュミットを起用。瑞々しいシュミットのテノールは聞きものです。RIAS室内合唱団の精緻な合唱も最高。名盤のひしめく「天地創造」の中にあっても、ずば抜けて高いクオリティの録音です! (Ki)
HMC-902041
ヘンデル:アン女王の誕生日のための頌歌HWV74
主は言われたHWV232
アンドレアス・ショル(C.T)
エレーヌ・ギユメット、ゾフィー・クルスマン(S)
マルコルム・E・べテット(T)
アンドレアス・ヴォルフ(Bs)
マークス・クリード(指)
ベルリン声楽コンソート、ベルリン古楽アカデミー

録音:2008年2月
アン女王の誕生日のための頌歌は、イギリスの地に落ち着いた直後、1713年のスペイン王位継承戦争の終わりを告げるユトレヒト条約に関連して作曲されました。ベルリン古楽アカデミーの管楽器の名手たちが活躍する場面も多く、上手さが際立ちます。「主は言われた」は、イタリアオペラから学んだ表現を宗教音楽に取り入れた劇的な作品。ショルの力の抜けた歌唱が光ります。 (Ki)

HMC-902042(4CD)

テレマン:ターフェルムジーク(完全全曲)

[CD1]
=第T部=
(1)序曲ホ短調
(2)四重奏曲ト長調
(3)フルート,ヴァイオリンとチェロのための協奏曲イ長調
[CD2]
(1)トリオ.ホ長調
(2)フルート・ソナタ.ロ短調
(3)シンフォニアホ短調「終結部」
=第U部=
(4)序曲ニ長調
(5)五重奏曲ニ短調
[CD3]
(1)3つのヴァイオリンのための協奏曲
(2)トリオ.ホ短調
(3)ヴァイオリン・ソナタ.イ長調
(4)終結部ニ長調
[CD4]
=第V部=
(1)序曲変ロ長調
(2)四重奏曲ホ短調
(3)2つのホルンと弦のための協奏曲変ホ長調
(4)トリオニ長調
(5)オーボエ・ソナタ.ト短調
(6)終結部変ロ長調
[CD1]
カール・カイザー(Fl)
ペトラ・ミュレヤンス(Vn)

[CD2]
(1)(2)カール・カイザー(Fl)

[CD3]
(1)ペトラ・ミュレヤンス、ゴットフリート・フォン・デア・ゴルツ、アンヌ・カタリーナ・シュライバー(Vn)
(2)カール・カイザー(Fl)
アン=カトリン・ブリュッゲマン(Ob)
ステファン・ミューライゼン(Vc)
ミヒャエル・ベーリンガー(Cem)
(3)ペトラ・ミュレヤンス(Vn)

[CD4]
=第V部=
(1)(2)(3)(4)カール・カイザー&スザンネ・カイザー(Fl)
ヒル・パール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
リー・サンタナ(Lute)
トルステン・ヨハン(Cem)
(5)カタリーナ・アルフケン(Ob)
グイド・ラリッシュ(Vc)
ミヒャエル・ベーリンガー(Cem)
ハルモニアムンディ・フランスから、「ターフェルムジーク」完全版新録音の登場!どのディスクのどの楽章をかけても、活きがよく、縦横のラインがたっぷりと豊かに絡み合うアンサンブル、たっぷりと潤いをたたえた美しい音の魅力にあふれたうれしい4枚組。アンサンブルの巧さと、音色の調和の見事さは言うまでもありませんが、特に管楽器のソロの素晴らしさには驚かされます。Disc4の「2つのホルンと弦のための協奏曲」でのホルンの豊かな音色は必聴。オリジナル楽器のホルンはこんなにも音色豊かだったのか、と耳が開かれる思いです。弦楽器のアンサンブルも、中音域のたっぷりとした響きに豊かな気分になれます。完全全曲収録、すべて聴くには4時間3分かかりますが、音楽の愉悦に浸って次々とディスクを換えていくうちに、一息に4枚すべて聴けてしまいそうな活力と美しさに満ちています。 (Ki)
HMC-902046
マヌエル・ブラスコ・デ・ネブラ(1750-1784):ピアノ・ソナタ集
ソナタ第1番ハ短調(アダージョ-アレグロ)
第2番変ロ長調(アダージョ-アレグロ)
第5番嬰へ短調(アダージョ-プレスト)
マニュスクリプト2998(モンセラート古文書館より)
第3番ニ長調(アダージョ-アレグロ)
第4番ハ長調(アダージョ-アレグロ)
第6番ホ短調(アダージョ-アレグロ)
パストレーラ第2番ヘ長調(アダージョ-パストレーラ-メヌエット)
パストレーラ第6番ホ短調(アダージョ-パストレーラ-メヌエット)
ハビエル・ペリアネス(P)

録音:2009年7月
アンダルシア出身の知られざる作曲家、ブラスコ・デ・ネブラの作品集。現存するネブラの作品は、わずか30のみ。24のソナタと、モンセラートの修道院に眠っていた6曲のパストレーラ(器楽によるパストラーレ)です。D.スカルラッティを尊敬していたネブラは、自身の才能と、D.スカルラッティのスペイン=ナポリ風作風をうまく融合。このディスクに収録されているソナタとパストレーラは、夭折の天才のまさに神がかり的な才能を私たちに伝えてくれます。奏でるピアニストは、ネブラと同じアンダルシア出身のペリアネス。スペイン出身のピアニストというと意外と少ないですが、ペリアネスはラ・ローチャ亡き後、確実に注目度・重要度とも増してくるピアニストとなることでしょう。バロック時代の最後に書かれたこれらの作品を、見事に現代のピアノで演奏しており、装飾音はチャーミングで心が震えるようです。 (Ki)
HMC-902048
シューマン:ピアノとヴァイオリンの為のソナタ〜エラール・ピアノによる
バッハ(シューマン編):シャコンヌニ短調(ヴァイオリンとピアノの為の〜バッハのシャコンヌBWV1004に基づく)
シューマン:ヴァイオリン・ソナタ第1番イ短調Op.105
 暁の歌Op.133
 ヴァイオリン・ソナタ第2番ニ短調Op.12
ダニエル・ゼペック(Vn)
※Laurentius-Storioni、Cremona、1780年
アンドレアス・シュタイアー(P/Erard、パリ、1837年)

録音:2009年5月
(フォルテ)ピアノ奏者としてのシュタイアーの最新盤は、アルカント・カルテットのヴァイオリン奏者メンバーでもあるダニエル・ゼペックと組んでのシューマン作品集。シューマンの「子供の情景」が収録されたCDでは、詩情豊かながら静かな語り口と新たなテンポ設定で私たちを驚かせたシュタイアー、ここでは作品にふんだんに込められたシューマンの詩情を爆発させ、豊かに響かせています。シュタイアーの熱さと怒涛のような音楽に呼応してか、アルカント・カルテットでも冴えた音色を響かせるゼペックがこれまた情熱と冷静さの同居した素晴らしい音楽を展開。シャコンヌでゼペックが魅せる狂気と正気すれすれの表情にシュタイアーの合いの手が絶妙に絡みます。ヴァイオリン・ソナタでゼペックは、一転やわらかな風合いの濃密な歌を聴かせますが、しかし音楽自体は聴き手の心にストレートに切り込む真摯なもの。シュタイアーのピアノは熱を帯びつつゼペックのヴァイオリンと見事に融け合います。シュタイアーのソロ「暁の歌」の熱さと激しさに完全にノックアウトされる、シューマンの詩情に満ち満ちた1枚となっています。 (Ki)
HMC-902049
クシェネク(1900-1991):作品集
フランツ・カフカの言葉に基づく6つのモテット(1959) 
5つの祈り(1944)
カンタータ「この世のはかなさ」(ソプラノ、合唱とピアノのための)(1932)
モンテヴェルディ/クシェネク編:ニンファの嘆き(1932)
3つの無伴奏混声合唱曲Op.22(1923)
ジェムズ1世時代の2つの合唱曲Op.87(1939)
カロリーヌ・シュタイン(S)、
フィリップ・マイヤース(P)
RIAS室内cho
ハンス=クリストフ・ラーデマン(指)
キャロライン・シュタイン、
フィリップ・マイヤース(P)

録音:2009年5月
フランツ・カフカの言葉に基づく6つのモテットは、RIAS室内合唱団の委嘱を受けて作曲されました(1959年)。声部の旋律が鏡のように対称に動く部分が印象的。聴くだけで演奏するのが大変な難曲であることがわかりますが、RIASのメンバーは見事に精確に演奏しています。「怠惰は諸悪の根源であると同時に、あらゆる徳の中で最も尊いものである」と、人間が生きる意味についての意味を聴く者に考えさせつつも、真実の答は見つからないことも示している、皮肉な作品です。 (Ki)
HMC-902050
シューマン:重唱作品集
スペインの歌遊びOp.74
恋のたわむれOp.101
スペインの恋の歌Op.138
マーリス・ペーテルセン(S)、
アンケ・フォンドゥンク(Ms)、
コンラート・ジャルノー(Bs-Br)、
クリストフ・ベルナー(P/Op.74&138)、
カミッロ・ラディケ(P/Op.101&138)

録音:2009年6月(ベルリン、テルデックス・スタジオ)
現代のオペラ・リート界で活躍するペーテルセンらが参加した、シューマンの重唱作品集。エマニュエル・ガイベル編纂によるスペインの詩の訳集にインスピレーションを受けたOp.74とOp.138。これらの詩は、中央ヨーロッパの色彩をうっすらと帯びた、ぴりっとした「スペイン」スタイルの音楽にぴったりの素材でした。間にはさまれた、親密な雰囲気の「恋のたわむれ」は、聴き手をスペインの世界からドイツのロマンティシズムの世界へと移動させます。 (Ki)
HMC-902051
オスヴァルト・フォン・ヴォルケンシュタイン(1376頃―1445):歌曲集

「事は起こった」、「心、精神、身体、魂」、
「汝おそるべし天使よ」、
「いとしい人よ、来ておくれ」他
アンドレアス・ショル(C.T)
シールド・オブ・ハーモニー【キャスリーン・ディネーン(S,Hrp)、マルク・レヴォン(G,Lute他)、マルギット・ユーベルラッカー(ダルシマー)、クロフォード・ヤング(指、Lute,G)】

録音:2009年6月
ショルの新譜は、西洋音楽史上もっとも謎めいた人物の一人、ヴォルケンシュタインの作品集。ドイツ文学のキーパーソンでもある彼は、15世紀のヨーロッパ中を旅し、様々なアンソロジーに自分の作品を掲載しました。ショルとその仲間たちは、旅と歌をこよなく愛した遍歴騎士のテクストを読み込み、鮮やかによみがえらせています。器楽パートはノスタルジック味満点で魅力的。ショルの歌声はますます磨きがかかって透明度を増しており、ドイツ語の語感も大変美しい秀逸の一枚です。 (Ki)
HMC-902052
プレイエルの家にて
ショパン:アンダンテ・スピアナートOp.22ト長調 
バラード第3番、夜想曲Op.48-1 
夜想曲Op.48-2、前奏曲Op.28-13 
前奏曲Op.28-11、前奏曲Op.28-4 
前奏曲Op.28-9、練習曲Op.25-1 
練習曲Op.25-2、練習曲Op.25-12 
夜想曲Op.9-2、夜想曲Op.27-2 
前奏曲Op.45、前奏曲Op.28-15 
マズルカKKIIb-5、マズルカOp.41-2 
マズルカOp.41-3、即興曲Op.51、ワルツOp.42
アラン・プラネス(P/プレイエル社製1836年)

録音:2009年3月
ショパンが1842年2月21日、パリのプレイエル邸で行ったリサイタルを再現したアルバム。ショパンも演奏したかもしれない、1836年プレイエル社製のピアノを用いて、名人プラネスが美しくショパンの世界を奏でます。バラード第3番も、このピアノで聴くと、現代のピアノで聴くのとはかなり印象が違います。ショパンが人前で演奏するのをあまり好まなかった、という話が残っていますが、これは、ショパンの性格もあるかもしれませんが、ピアノの演奏効果にもあったのかもしれない、などと想像しながら聴いてみるのも興味深いかもしれません。 (Ki)
HMC-902053(3CD)
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲集全集 ポール・ルイス(P/スタインウェイ)
イルジー・ビエロフラーヴェク(指)BBC響

録音:2009年7,11月&2010年3月
注目ピアニスト、ポール・ルイスによるベートーヴェンのピアノ協奏曲。師ブレンデルにも太鼓判を押された、ポール・ルイスの美しく隙のないタッチと、どこまでも自然で余裕ある音楽運びはさすが。第1番の軽妙さ、第2番の気品あふれる愛らしさ、第3番の第3楽章でのスポーツ的な要素、第4番の冒頭のピアノ・ソロの美しき弱音、そして「皇帝」での輝かしいタッチ、そしてベートーヴェン独特の高音域でやや夢心地に展開される部分、すべてが雄弁なピアノには脱帽するほかありません。すべてが理想的に輝いており、ベートーヴェンはこうでなきゃ、ベートーヴェンはこう弾くものなのか、と思わされるピアノです。巨匠ビエロフラーヴェク指揮によるうまい語り口のオーケストラ伴奏も見事。ソロ楽器とピアノのかけあいも思わず聴き入ってしまいます。近年稀にみる素晴らしいベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲録音の登場といえるでしょう。 (Ki)
HMC-902056(2CD)
マルタン:ゴルゴタ
[第1部](CD1)
1.合唱「父よ!父よ!」 
2.枝(エルサレム入城) 
3.寺院でのイエス、4.最後の晩餐 
5.ゲッセマネの丘
[第2部](CD2)
6.瞑想、7.大祭司の前のイエス 
8.ピラトとイエス 
9.ゴルゴタの丘(カルヴァリの丘)
10.復活(「おお、死よ」)
ユディト・ゴーティエ(S)、
マリアンヌ・ベアーテ・キーランド(A)、
アドリアン・トンプソン(T)、
マッティス・ファン・デ・ヴェール(Br)、
コンスタンティン・ヴォルフ(Bs)
カペラ・アムステルダム
エストニア・フィルハーモニー室内cho
ダニエル・ロイス(指)エストニア国立SO

録音:2009年4月
フランク・マルタンの大作「ゴルゴタ」の登場。ゴルゴタは、イエスが十字架にかけられた丘の名前。マルタンは、宗教作品を書くことを避けていましたが、レンブラントの「3つの十字架(1653年)」のエッチングを見て、この作品を書くに至りました。マルタン自身敬愛していたバッハの影を常に感じながら、1945年から58年、10年以上の歳月をかけて、このイエスの受難の物語の音楽を生み出しました。バッハの受難曲で福音史家にあたる語り部は、基本的にバスのソリストが担当。イエスはバスが担当します。新約聖書のみでなく、旧約聖書などからの引用も多くみられるのが特徴です。冒頭の「Pere!(父よ!)」の不協和音は、実に鮮烈。第2部の、8分以上続くピラトの尋問の場面は圧巻で、ピラトの心の揺れ、「イエスに死を」と叫ぶ民衆の叫びなどが、大規模なオーケストラとともに聴く者に突き刺さります。終曲の神への賛美の合唱も、時にメシアンを思わせるような極彩色の世界。全体的に幻想的かつ大規模に描かれており、バッハの受難曲を聴きなれた耳に大変鮮烈に響くこのフランスの巨匠による受難曲、是非ご体験いただきたい世界です。 (Ki)
HMC-902058
バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV 988
■ボーナスDVD…『 アンドレアス・シュタイアー、バッハの「ゴルトベルク変奏曲」を弾く』
アンドレアス・シュタイアー(Cemb/ Anthony Sidey harpsichord after Hass)

録音:2009年7月
※ボーナスDVD (NTSC/ 約23分)
シュタイアー、ついにゴルトベルクの登場です!まず、トータル80分超えという演奏時間もさることながら、録音も大変素晴らしい!まるでシュタイアーが、目の前で自分のためだけに弾いてくれているようなリアルな息遣いが感じられ、親密さと細やかさに満ち、しかしダイナミックさも併せ持つ演奏に圧倒されます。演奏CDだけでも素晴らしいものですが、特典DVDがまた実に興味深い!シュタイアーは、「バッハという人は、周囲にいた演奏者にだけではなく、親しい人、彼を愛する人にとっても大変難しい人物だったのではないか。完璧主義者で、自分と同じレベルのものを他人にも要求するようなタイプだったのではないか」と言っています。なので、1時間以上かかる鍵盤音楽を作曲依頼された時も、バッハは、「あなたは私のことを好いてはいらっしゃらないかもしれませんが、このような依頼に対して、自分ができるすべてのものを注ぎこみましょう、そして、他の誰もがなしえないものを作りましょう、依頼主に最高レベルのものを呈しつつも、どこか反発するような気分も交じっていたのではないか」とシュタイアーは語っています。深い学びに裏打ちされた、シュタイアーのバッハ私見を聞ける、とても興味深い内容のDVDとなっています。さらに、シュタイアーは実際に鍵盤に触れながら、様々な要素が手を変え品を変え変奏されていること、曲の大きな構造などについて語り、自分がどのようにして音色を選択しているかなどについても語ります。これを見てからCDを聴くと、また違った風に聴こえてきます。ゴルトベルクとは、演奏者にとっても聴き手にとっても、汲めども尽きぬ大海のような作品なのです。
HMC-902059
バッハ:無伴奏ソナタ&パルティータ集
無伴奏ヴァイオリンパルティータ第2番
無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番
無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番
イザベル・ファウストv

録音:2009年9月1-4日テルデックス・スタジオ(ベルリン)
しなやかでチャーミング、そして力強く確かに歩む音楽で私たちを魅了しているヴァイオリニスト、イザベル・ファウスト。待望のバッハの登場です。2009年に来日した際にも、しなやかかつ自然なバッハで聴衆を虜にしたファウスト。「シャコンヌ」というと、冒頭の次々と掻き鳴らされる重音に、聴き手も覚悟を決めてこの楽章に臨む、というイメージがありますが、ファウストの演奏は、この楽章が舞曲(それも、どちらかといえば跳躍の多い)に起源を持つことを思い出させてくれるもの。自然に紡ぎだされる様々な楽想では、なにかダンサーが一人で時にエレガントに、時に激しく、無心に踊っている部屋を覗いているような不思議な錯覚をおぼえます。ファウストのエレガントかつ自然体な人柄と、並外れたテクニック、そしてあくなき探求、すべてが見事に調和したからこそ生まれた演奏があますところなく収められています。録音も秀逸。
=ファウストの言葉より(ブックレット抄訳)=
バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータの自筆譜を見た人は、その筆致の美しさ、完璧さに驚かされる。一貫して変わらない筆跡は、支柱、装飾、荘厳な構築性を兼ね備えた大聖堂のような総合芸術へと私たちを誘う。ここで見られるハーモニー、均衡はなんということか!この自筆譜の特徴を耳で聴けるかたちにするのは大変に骨の折れる作業である。演奏者は尽きることのない疑問と戦い、ゴールが果てしなく遠いことに気が遠くなることもある。この録音は、偉大なバッハに対する敬礼のようであり、きわめて親密なスナップであり、そして果てなく続くプロセスの中の一つの結晶のきらめきのようなものである。
HMC-902060
リスト:トリスティア(オーベルマンの谷より)〜ピアノ三重奏曲版、
 ノンネンヴェルトの僧房(VnとP)、
 忘れられたロマンス(VnとP)、
 エレジー第1番(VcとP)&第2番(VnとP)、
 悲しみのゴンドラ(エレジー第3番)(VcとP)
スメタナ:ピアノ三重奏曲Op.15
トリオ・ヴァンダラー
[ジャン=マルク・フィリップス・ヴァイジャベディアン(Vn)、ラファエル・ピドゥ(Vc)、ヴァンサン・コック(P)]

録音:2009年9月
円熟のトリオ、トリオ・ヴァンダラーによるリストとスメタナ作品集。スメタナのピアノ三重奏曲は、娘の死の悲しみの中で書かれました。冒頭の苦しみにもだえるようなパッセージから物凄い緊張感。続いて怒濤のように入るチェロもピアノも圧倒的で、作品に込められた激しい哀しみ、怒り、そして深い愛を、トリオ・ヴァンダラーのメンバーたちは濃密なアンサンブルで聴かせます。えもいわれぬ恍惚が香り立つリスト作品の数々ですが、時として死神の凍りつくような美しい微笑を垣間見せます。骨の髄までとろけてしまいそうな熱さと情念に満ちた1枚です。
HMC-902061
四大元素&四季
ルベル:「四大元素」
ヴィヴァルディ:協奏曲集「四季」
ミドリ・ザイラー(Vnソロ)、
ベルリン古楽アカデミー

録音:2009年9月(ベルリン、テルデックス・スタジオ)
生々しい「感触」「手触り」に満ちたルベルとヴィヴァルディ。好評だったダンスとのコラボレーション・ステージのDVD(HMD9909026、発売中)の音楽のみを2009年9月に新たに録音したもの。冒頭の「カオス」の不況和音は、耳と心にざらざらとした感触を与えますが、決して不快ではないところが、さすがベルリン古楽アカデミー。一気に世界に引き込まれます。ヴィヴァルディの「四季」も、「夏」の嵐も、弦楽器の弓が弦にひっかかる感触、ミドリ・ザイラーのソロは、まるでロックかと思うような印象。アンサンブルが刻むリズムも、単に激しいだけでなく、打ち付ける雨粒、足元からずぶぬれになるような錯覚をおぼえるようです。美しい風景画ではなく、どこまでもリアルな感触の「四季」をご堪能ください。 (Ki)
HMC-902062
「変容」
バルトーク:弦楽四重奏曲第4番Sz.91
リゲティ:弦楽四重奏曲第1番「夜の変容」
クルターク:12のミクロリュードOp.13「アンドラーシュ・ミハーイに捧ぐ」
カザルスSQ【アベル・トマス・レアルプ(Vn)、ヴェラ・マルティネス・メネル(Vn)、ジョナサン・ブラウン(Va)、アルノー・トマス・レアルプ(Vc)】

録音:2009年5月(テルデックス・スタジオ/ベルリン)
若手最注目株カルテット、カザルス弦楽四重奏団の新譜は、バルトーク、リゲティ、クルターク作品集。彼らの演奏はドライな精確さを保ちつつ、どことなく優しさ、柔らかさのようなものも存在しており、そのバランスが実に絶妙。勝負に打って出た、といった感の意欲的なプログラムです。バルトークの作品はスタイリッシュな民俗色の豊かな作品。バルトーク独特の激しく刻むリズムも4人の息がぴったり合っていて、聴かせます。リゲティの作品は、4つの核となる音が様々に変容して姿を現す作品。8つの楽章からなりますが、間をおかずに演奏されます。落ち着いたテンポと急速なテンポの楽章がほぼ交互に置かれた形で、一曲だけワルツのリズムで優雅に演奏される楽章があります。各楽章の性格を鮮やかに描き分けた演奏は見事。クルタークの作品は、12の楽章からなり、それぞれがオクターヴ内のすべての音から始まる(CからBまで)というもの。クルタークはバッハのことを崇拝しており、彼の作品をいくつも編曲しているほどで、この作品の配列も平均律に則ったものといえるでしょう。ウェーベルン的な要素(コントラストや突然の休止など)などを漂わせつつも、クルターク独自の世界が広がっているこの作品を、カザルス弦楽四重奏団の面々はドライさ、精確さと柔らかさのバランスを絶妙にとりながら見事に演奏しています。 (Ki)
HMC-902063
シューベルト:歌曲集
夜と夢D827/盲目の少年D833
あこがれD637/墓堀人の歌D869
私はすべての安らぎを奪われてD876
老年の歌D778/墓掘り人の郷愁D842
月に寄すD193/5月の夜D194
シルヴィアにD891/セレナードD889
羊飼と騎馬の人D517/夏の夜D289
収穫の歌D434/秋の歌D502
愛らしい星D861/恋人にD303
マティアス・ゲルネ(Br)
アレクサンダー・シュマルツ(P)

録音:2008年9月
知的なバリトン、ゲルネ待望のシューベルト新譜。ヴィブラートは控えめながらも振幅に富んだよく響いた声で、冒頭の「夜と夢」から魅了されます。ビロードのようにつややかな声で、静かに静かにシューベルトが描いた世界を私たちの目の前に立ち昇らせてくれます。言葉の一つ一つに明確なイメージを感じさせる歌唱は、さすがとしか言いようがありません。シューマン音楽大学で教鞭をとる傍ら、世界各地でマスタークラスを開講する、シューベルトなどのリートを伴奏させたら世界一のシュマルツのピアノが、ゲルネにぴたっと寄り添い、ゲルネが語るイメージに豊かな背景を添えます。 (Ki)
HMC-902064
バッハ:「フーガの技法」
コラール「深き悩みの淵より,われ汝に呼ばわる」(BWV38)
『フーガの技法』
コントラプンクトゥス(以下CP)1(4声〜2つのVnによる)
CP2(4声〜チェンバロによる)
CP3(4声〜Ob,テノールOb,Trb,Fgによる)
CP4(4声〜トゥッティによる)
8度のカノン(2声〜チェンバロによる)
CP5(4声〜トゥッティによる)
CP6(4声〜トゥッティによる)
CP7(4声〜チェンバロ、2つのVn、Vla,Vcによる)
10度のカノン(2声〜VnとVlaによる)
CP8(3声〜Vn,Vla,Vcによる)
CP9(4声〜トゥッティによる)
CP10(4声〜2つのVn,Vla,Vcによる)
CP11(4声〜トゥッティによる)
12度のカノン(2声〜Vn,Vcによる)
CP12-a(4声〜トゥッティによる)
CP12-b(チェンバロソロによる)
CP13-a(Ob,tenoroboe,Fgによる)
CP13-b(Vn,Vla,Vcによる)
反行形による拡大カノン(Vn,Vla,Vcによる)CP18/3つの新主題による未完フーガ
ベルリン古楽アカデミー

(BWV38コラール演奏:ラファエル・アルパーマン(オルガン))

録音:2009年10月、テルデックス・スタジオ(ベルリン)
「フーガの技法」というと、ついしかめっ面でバッハが築いた対位法の複雑な砦に頭から突っ込んで迷ってしまいそうになりますが、ベルリン古楽アカデミーの面々の手にかかると、なんとエキサイティングに響くことでしょう!もちろん、バッハが知の限りを尽くした線と線、点と点のからみあいが織り成す堅固な形式はもちろんまったく損なわれておりません。「ああ、これが主要主題でこちらが対旋律だな」とわかる演奏は多々あれど、これだけ主要主題と対旋律の双方が拮抗しながらお互いの効果を高め合い、緊張感とエキサイティング性、そして崇高なまでの「美」を保った演奏は他ではなかなか得難いものといえるでしょう。バッハが残した知の迷宮にメンバーも全力で応え、楽器の編成もそれぞれの曲が効果的に響くように考えられていることがよくわかります。BWV38のコラールが最初に収録されていますが、これは原調ではなく、ニ短調で演奏されており、聴き手にとって「フーガの技法」のよき導入になるのでは、というメンバーの考えに基づくもの。メンバーの意見によると、バッハがこのフーガの技法を書くときにこの主題が頭の中にあったかどうかはわかりませんが、主題の構造に類似性が認められるといいます。また、メンバー全員、実際の録音の時にもまずこの曲を聴いてからでないとフーガの技法に入れないこともあったとか。古楽界の雄、ベルリン古楽アカデミーの面々が真剣勝負で挑む、バッハが残した「知」の果てることなきゲームの目撃者となってください! (Ki)
HMC-902065
19-20世紀のスロベニアの歌とデュエット
アントン・ラヨビチ(1818-1960):わが祖国,
 ジャミー来てごらん!,セレナーデ
アロイジ・ゲルツィニク(1915-2008):悲しい手紙,
 秋の歌,ほこり,春の喜び
ルチヤン・マリア・スケルヤンク(1900-1973):秋の歌,ビジョン,
 夕べの印象,山の向こうの月,歌,白い雲
ヨシップ・パヴチッチ(1870-1949):片足のおじいさん,
 ララバイ第2番,チチバン、チチフイ
ベンヤミン・イパベチ(1829-1908):春の憩い,
 夜に,野薔薇と蔦,春の夜,けし,
 てんとうむし,思い出の本に,春の風
カミロ・マセク(1831-1859):窓の下で
フラン・ゲルビチ(1840-1917):どこへ?,
 少女が糸を紡ぐのを見ていよう,夜に
エミル・アダミチ:サクラソウ,ララバイ
ダヴォリン・イェンコ(1835-1914):異国に
ベルナルダ・フィンク(Ms)、
マルコス・フィンク(Bs-Br)、
アントニー・シピリ(P)

録音:2009年10月
ヨーロッパ地図の長靴の付け根の右側に位置するスロベニアで生まれた歌曲集。バルカン半島の民謡の影響を色濃く漂わせながら、ロマン派の雰囲気を漂わせた独特の世界が魅力です。フィンク兄妹の両親はスロベニア出身ということもあり、思い入れもひとしおに聴かせます。ベルナルダ・フィンクのふくよかで優しい歌声、マルコス・フィンクのシピリのピアノのクリアーな音色、そして全体的に優しげな曲が多いのが印象的。 (Ki)
HMC-902066
シューベルト:冬の旅(全24曲) ヴェルナー・ギューラ(T)
クリストフ・ベルナー(フォルテピアノ/Ronisch1872年)
録音:2009年10月
知的な声で宗教からオペラ、リートと柔軟に活躍しているギューラによる「冬の旅」の登場。ギューラの抑えの効いた知的な表情と、語尾に至るまでシャープに際立てられた子音が冬の世界を感じさせます。フォルテピアノの音色が絶妙で、第1曲の和音の連続もほどよい響きで、耳から寒さが伝わってくるよう。「菩提樹」の豊かな響きは聴き手を包み込みます。一転、「春の夢」は極めて儚く、夢はあくまでも夢に過ぎないことを思い出させ、厳しく辛い現実を聴き手につきつけます。 (Ki)
HMC-902067
ドビュッシー:弦楽四重奏曲ト短調Op.10
デュティユー:「夜はかくの如し」(弦楽四重奏のための)
ラヴェル:弦楽四重奏曲ヘ長調
アルカントQ

録音:2009年10月
2009年度のレコード芸術レコード・アカデミー賞を受賞し、注目度急上昇中の弦楽四重奏団、アルカント・カルテットの最新盤の登場。今回はカルテットの王道レパートリー、ドビュッシーとラヴェルにデュティユーという魅力のプログラムです。ドビュッシーの冒頭の各声部が反行しながら動くさま、陽が差したような明るい音色のハーモニー、くすんだハーモニー、辛口でパンチの利いたハーモニー、官能的に薫る旋律など、刻一刻と表情が変わるので、息つく間もありません。ラヴェルの第1楽章冒頭、息が深めにとられた絶妙なテンポ設定で、各パートの奏者たちの奏でる旋律線が、絡み合いながら上下に動く様の完璧な「美」を堪能できます。「夜」に秘められた妖しくも官能的な世界が薫るデュティユー作品では、ピチカート、グリッサンド、トレモロ、ハーモニクスなど様々な技巧が用いられていて、各パートが各楽器界の第一線で活躍する奏者たちによる夢のカルテットの腕が冴えわたります。アンサンブルの密度もますます濃密なものとなったアルカント・カルテット、ますます目が離せません! (Ki)

HMC-902068(3CD)
モーツァルト:歌劇「魔笛」 ダニエル・ベーレ(T タミーノ)
マリス・ペーターゼン(S パミーナ)
ダニエル・シュムッツハルト(Br パパゲーノ)
イム・スンヘ(S パパゲーナ)
アンナ=クリスティーナ・カーッポラ(S 夜の女王)
マルコス・フィンク(Bs-Br ザラストロ)
クルト・アツェスベルガー(T モノスタトス)
インガ・カルナ(S 第1 の侍女)
アンナ・グレヴェリウス(Ms 第2 の侍女)
イザベル・ドリュエ(Ms 第3 の侍女)
コンスタンティン・ヴォルフ(Bs-Br 弁者)ほか
ルネ・ヤーコプス(指)ベルリン古楽アカデミー,
RIAS 室内cho

録音:2009年9,10月,ベルリン
ヤーコプスがついに「魔笛」を録音しました!もちろん今回も充実の内容。ヤーコプスは2009 年7 月にエクサン・プロヴァンス音楽祭で「魔笛」を 上演しており、その経験を踏まえた上で秋にベルリンのテルデック・スタジオで入念なセッション録音。ヤーコプスならではの大胆に踏み込んだ雄弁 な音楽を鳴らしつつ、歌芝居としての「魔笛」の楽しさ面白さもたっぷり生かしています。しかも今回はベルリン古楽アカデミーとRIAS 室内合唱団と いう超一流の団体のバックアップ。さらに歌手も充実。パミーナにはドイツで大人気のソプラノ、ペーターゼン。タミーノはまだデビューして数年という ハンブルク出身のテノール、ベーレを大抜擢、柔らかい甘い美声はまさに王子様。パパゲーノは、オーストリアのバリトンでウィーン・フォルクスオーパー の人気者、シュムッツハルト。パパゲーナは、ヤーコプスのオペラの常連、スンヘ。夜の女王は、2007 年にメトロポリタン歌劇場でもこの役を歌ったフィ ンランドのソプラノ、カーッポラ。ザラストロにはこれもヤーコプスの長年の協力者フィンクと、ベテラン、若手を巧みに配しています。また今回の「魔笛」 では台詞部分にたいへん力を入れており(詳しくはヤーコプス自身の解説(英独仏)で詳細に説明されています)、様々な創意工夫が凝らされています。 永遠の名作「魔笛」を、また新鮮な気持ちで聞けるヤーコプス・マジックをお楽しみください!
HMC-902071
ベートーヴェン:ディアベリ変奏曲Op.120 ポール・ルイス(P)

録音:2009年12月
2011年4月から全5回に渡り、銀座・王子ホールにてシューベルト・チクルス演奏会が予定されているなど今注目されているポール・ルイス。彼はシューベルトも得意ですが、ベートーヴェンもまた得意としています。2010年夏には、プロムス史上初めてベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲を一人で演奏したピアニストとして世界中で注目を浴びました(指揮者、オーケストラは様々)。師匠のブレンデルの十八番でもあったディアベリ変奏曲ですが、ポール・ルイスの演奏は実にすばらしい。パッセージやモティーフひとつひとつの子音の立ち上がりの種類の細かさ、あくまで自然なフレージング、一寸の乱れもない美しい音色で、語り口の巧さは同世代のピアニスト達の中でも群を抜いているといえるでしょう。奇を衒ったような表現は一切ありませんが、それだけにベートーヴェン作品のもつ斬新さや面白さがくっきりと浮き彫りにされています。ベートーヴェンの魅力がこれほどストレートに伝わってくる演奏は稀有。さわやかな感動をおぼえる快演です。 (Ki)
HMC-902072
ヴィヴァルディ:シンフォニア「聖なる墓にて」RV169
ペルゴレージ:サルヴェ・レジーナ(2声のための)、
 スターバト・マーテル
ロカテッリ:アリアンナの嘆き〜4声のコンチェルト 変ホ長調
ベルナルダ・フィンク(Ms)
アンナ・プロハスカ(S)
ベルリン古楽アカデミー
ベルンハルト・フォルク(コンサートマスター)

録音:2009年12月
アーノンクールとの来日も待ち遠しいフィンクの新譜は、ペルゴレージを中心に据えたバロックの宗教作品集。コントロールの効いた、落ち着いた歌声が、十字架の下で嘆き悲しむ母マリアを切々と歌いあげます。ソプラノに迎えられたのは、1983年生まれの若手注目ソプラノ、アンナ・プロアスカ。彼女は、2006年ベルリン国立歌劇場でのバレンボイム指揮のカルメンのフラスキータ役で一挙に世界から注目される存在となりました。現代ものから古楽まで、そのピンと筋のとおった美声で歌いこなします。このディスクのペルゴレージやサルヴェ・レジーナは、曲のこれまでのイメージを一新するような鮮烈な出来栄え。器楽パートをうけもつベルリン古楽アカデミーの血の滴るような哀切感漂う演奏に支えられ、この世のものとは思えない美しさです。ディスクの冒頭に収録されているヴィヴァルディのシンフォニアも見事の一語。充実の1枚です。 (Ki)
HMC-902073
ショパン:マズルカ集
マズルカOp.68-2/マズルカOp.6-3
マズルカOp.7-1/スケルツォ第1番
マズルカOp.17-2/マズルカOp.17-4
マズルカOp.24-2/マズルカOp.24-4
夜想曲Op.48-1/マズルカOp.56-1
マズルカ59-1/マズルカOp.59-2
マズルカOp.59-3幻想ポロネーズOp.61
マズルカOp.63-3/マズルカOp.68-4
セドリック・ティベルギアン(P)

録音:2010年1月
1975年生まれの注目株、ティベルギアンの最新盤はショパンの作品集。バラード第1番での鋼のような音色、マズルカで魅せる完璧なコントロールが生み出す、時にあたたか、時に涙に煙るような音色など様々な音に驚かされます。そしてティベルギアン持ち前の物凄い推進力、集中力、そして一曲一曲の余韻にただよう辛口の香りが、聴く者をとらえて離しません。ティベルギアンはブックレット掲載のインタビューで、「2、あるいは3拍目にアクセントがくるというマズルカのシンプルな大原則に則りながら、これだけの多様な音楽を生み出したショパンには敬服するほかありません」と語っています。ショパンが残した多彩なマズルカを、これだけ見事に1曲1曲弾き分ける腕をもつティベルギアン。これからますます目が離せません。 (Ki)

HMC-902075
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲
弦楽六重奏曲第2番Op.36*
イザベル・ファウスト(Vn/‘スリーピング・ビューティ’1704年ストラディヴァリウス)
ダニエル・ハーディング(指)
マーラー・チェンバー・オーケストラ

イザベル・ファウスト(Vn)、
ユリア=マリア・クレッツ(Vn)
ステファン・フェーラント(Va)、
ポーリーヌ・ザクセ(Va)
クリストフ・リヒター(Vc)、
シェニア・ヤンコビチ(Vc)
録音:2010年2月(SociedadFilarmonica(ビルバオ))、2010年9月(テルデックス・スタジオ(ベルリン))*
近年目を瞠る充実ぶりの女性ヴァイオリニスト、イザベル・ファウスト。前作のバッハも世界中で非常に高い評価を得ています。そんなファウストの待望の新録音は、ブラームスのヴァイオリン協奏曲。ファウストによるブラームスというだけでも心躍るのに、ハーディング指揮によるマーラー・チェンバー・オーケストラとの共演となれば、さらに期待が高まります。ヴァイオリン・ソロの冒頭から、ファウストの高度の集中としなやかさに耳を奪われます。第2楽章での高音による旋律では、ファウストの繊細かつ芯のある美音が冴えわたります。第3楽章で見せるエネルギー、それでいてどこか可憐な風合いもある表情はファウストの魅力全開です。全体を通してハーディングの巧みな造形が光る音楽運びも見事です。なお、ファウストは、ブゾーニのカデンツァを採用。「表情豊かで、作品への畏敬の念に満ち、構造的には単純ながらオリジナリティに溢れ、ブラームスらしさを保ちつつも、ヴァイオリニストの技量の見せどころもちりばめられている」とファウスト自身が熱く語るブゾーニのカデンツァ、注目です。カップリングの弦楽六重奏曲は、繊細な冒頭から見事なアンサンブル。マーラー・チェンバーの若手奏者のほか、ナヴァラやフルニエに師事したクリストフ・リヒターなど世代を超えたメンバーによる演奏で、親密でロマンティックな名曲をたっぷりと聴かせます。(Ki)
HMC-902076
モーツァルト:弦楽四重奏曲集
弦楽四重奏曲第4番ハ長調K.157、
第17番変ロ長調「狩」k.458、
第22番変ロ長調「プロシャ王第2番」K.589
エルサレムSQ
〔アレクサンダー・パヴロフスキー(Vn1)、アミハイ・グロス(Vn2)、セルゲイ・ブレスラー(Va)、キリル・ズロトニコフ(Vc)〕

録音:2010年2月
ハルモニアムンディのデビュー盤のハイドンでも彼らが古典派の世界をきっちり演奏できる正統派であることは証明済みですが、デビューから経験を重ねた今取組んだモーツァルトの出来栄えは格別。各パート奏者の音程がピチっとはまっており、気持ちのよいモーツァルト。緩徐楽章でみせる気品に満ちた音楽性には圧倒されます。アレグロ楽章での心地よい快活なスピード感、なにより4人の間に流れるテンポ間が一糸乱れることなく存在しています。これからますますたのしみな弦楽四重奏団です。
HMC-902077
(1CD+DVD)
ヘンデル:オペラ・アリア集
「ゴールのアマディージ」、
「アグリッピーナ」、「リッカルド・プリーモ」
「エジプト王トロメーオ」、「オルランド」、
「ロドリーゴ」、「ラダミスト」、
「ロデリンダ」*、「ソザルメ」*
からのアリア集

■ボーナスDVD:メイキング映像付(約15分)
ベジュン・メータ(C.T)、
はローズマリー・ジョシュア(S)*
ルネ・ヤーコプス(指)フライブルク・バロックO

録音:2010年3月
1968年生まれのアメリカのカウンターテナー、ベジュン・メータのハルモニアムンディ・デビュー盤。シュタルケルの5回目のバッハ:無伴奏チェロ組曲録音のプロデューサーも務めたという異才。ジョージ・ベンジャミンが彼を主役にしたオペラを書いているなど、世界が注目する才能です。カウンターテナーというと、どこか声の奥に硬さがある歌い手などなかなかむずかしい面も有りますが、メータの歌唱は男性ならではの力強さと透明感を完璧にあわせもった天性のカウンターテナー。高い音域ではますますやわらかく、低い声でも自然さを失わない歌唱は驚異的です。ヤーコプス率いるフライブルク・バロック・オーケストラの伴奏もメータの劇的な歌唱をこれでもかと煽り盛り上げます。メータが楽しげに歌う姿が魅力的なメイキング映像つき。優れた歌手を見出す天才ヤーコプスがメータを絶賛して語る姿も印象的です。 (Ki)
HMC-902078
チェロは語る
ブリテン:無伴奏チェロ組曲第3番Op.87
カサド:無伴奏チェロ組曲
パスカル・アモワイヤル:Itinerance
コダーイ:無伴奏チェロ・ソナタOp.8
エマニュエル・ベルトラン(Vc)

録音:2010年6月
1996年、東京の日本室内楽コンクールで優勝、2001年にはヴィクトワール・ドゥ・ラ・ムジーク・クラシックのソリスト部門で1位を獲得し、一挙にヨーロッパでも認められる存在となった女性チェリスト、エマニュエル・ベルトラン。彼女の演奏の魅力はしなやかな音色と余裕あるテクニック。ブリテン、カサド、コダーイというチェロの近代作品の金字塔の作品と、自身の演奏上のパートナーであり夫でもある、パスカル・アモワイヤルのスケールの大きな自然を思わせる無伴奏作品を並べた意欲的なプログラムです。世界の伝統的な民謡のエッセンスや、先人達の作品の一部など、様々な要素を含む彼らの作品を、ベルトランが巧みな語り口と音色で提示してくれます。ブリテンの組曲では、ベルトランの演奏はしなやかさに満ち、急速な上下行でも常に余裕を感じさせ、朗々と語る高僧のような風格すら漂います。 (Ki)
■ベルトランの言葉(ライナーノーツより抄訳)
「チェロは語る」?楽器が「語る」、というこのタイトルは突飛なようにみえるだろう、しかし、このタイトルには純粋で単純な隠喩以上のものを見てとる向きもあることと思う。たしかに、チェロの音色は、音域が重なる部分が多いという理由で、人の声と比較されることが多い。このような定着したイメージをはずして、楽器そのものをまぎれもない「subject=主体」とすることはできないのだろうか?このプログラムには、そうした意図がある。楽器というものは仲介者であり、何か異なるものと対面させてくれ、さらに多様な文化を提示して、聴き手や弾き手に異文化を体験させてくれる。ここでは、チェロは、自身の歴史を語っている。
HMC-902079
バッハ:モテット集
霊は弱い私たちをBWV226
来たれ、イエスよ、来たれBWV229
イエス、わが喜びBWV227
おそるることなかれBWV228
主をたたえよ、すべての異教徒よBWV230
われを祝福したまわずは、われ汝を離さじBWVAnh159
主に向かって新しき歌を歌えBWV225
マルクス・クリード(指)
ヴォーカルコンソート・ベルリン

録音:2010年3月
2003年に設立された声楽アンサンブル、ヴォーカルコンソート・ベルリンによる極上のバッハ・モテット集。きわめてソフト、声部間で繰り広げられる短い音型のやりとりは、1ミリの隙もなく溶け合い、まるで様々な色の水が流れ解け合い美しい模様を描いてゆくようです。モテットは18世紀のはじめには時代遅れとなっており、あまり知られなくなっていた存在でした。そうした時期にあってなおバッハがモテットを、しかもこれだけの高い水準のものを書き、すでに当時時代後れになっていたにも関わらず、後世に受け継がれていることは、バッハがいかに優れた作曲家であったか、そしていかに偏屈だったか、ということを示しているといえるでしょう。ライプツィヒの聖トーマス教会の合唱団の力量がいかに優れていたかという名残を濃厚に現代に伝える貴重な作品群ともいえます。 (Ki)
HMC-902080
ヨハン・ルートヴィヒ・バッハ(1667-1731):葬送のための アンナ・プロハスカ(S)
イヴォンヌ・フックス(A)
マキシミリアン・シュミット(T)
アンドレアス・ヴォルフ(Bs)
RIAS室内cho、
ハンス=クリストフ・ラーデマン(指)
ベルリン古楽アカデミー

録音:2010年3,4月
「マイニンゲンのバッハ」とも呼ばれる、バッハ一族に属するヨハン・ルートヴィヒ・バッハ。J.S.バッハの曽祖父の弟にあたる人物の玄孫にあたると考えられます。この作品は、J.L.バッハのパトロンであったエルンスト・ルートヴィヒ候が自身の葬儀のために書いた詞に作曲したもの。2つの合唱団を要するものですが、この作品はJ.S.バッハがマタイ受難曲を作曲する5年前。大バッハより前に、このような大規模な作品を作っていたという点でも興味深いものがあります。作品は第1部「おお主よ、私は汝の僕です」第2部「私は天上の生活をもとめ」第3部「私は感謝祭のいけにえを汝にささげます」の3部から成ります。哀悼のための音楽ではありますが、死者が天にのぼり神とともに過ごすことへの喜びの雰囲気に満ちた作品となっており、希望と明るさに満ちています。ベルリン古楽アカデミー、RIAS室内合唱団のアンサンブルの妙も堪能できる内容です。 (Ki)
HMC-902081
ドヴォルザーク:歌曲集
ジブシーの歌Op.55(全7曲)
モラヴィア二重唱曲集Op.32(全13曲)
聖書の歌Op.99(全10曲
ゲニア・キューマイヤー(S)、
ベルナルダ・フィンク(Ms)、
クリストフ・ベルナー(P)

録音:2010年4月、テルデックス・スタジオ・ベルリン
ザルツブルクが誇るソプラノ歌手ゲニア・キューマイヤーと世界的メゾ・ソプラノ歌手ベルナルダ・フィンクによる、注目必至の共演CDがリリース!ウィーン国立歌劇場やミラノ・スカラ座といった名歌劇場はもちろん、ザルツブルク音楽祭、バイロイト音楽祭といった数々のフェスティヴァルに引っ張りだこの二人が、ドヴォルザークの3つの歌曲集を全曲収録しました!キューマイヤーが歌う「ジプシーの歌」は、民族的なリズムと艶やかな旋律の中にもどこか気品を感じさせる独特の魅力にあふれたもの。丁寧に、しかし情感たっぷりに謳われる伸びやかな美しい高音に心奪われます。「聖書の歌」では、スロヴェニア人の両親を持ち、ドヴォルザークの作品にも造詣深いフィンクが落ち着いた深みのある歌声をいかんなく発揮!本CDの聴き所でもある二重唱では、見事にマッチした二人の歌声のハーモニーに感嘆の一言。どこか里歌を思わせるような郷愁に駆られる旋律が、力強くも美しく歌い上げられています。伴奏を担当するのは名手クリストフ・ベルナー。過度な主張のない巧みな伴奏で、二人の歌姫の華麗な歌声に色を添えています。 (Ki)
HMC-902082
メンデルスゾーン:協奏曲集
ピアノと弦楽のための協奏曲イ短調MWV02(1822)
ヴァイオリン,ピアノと弦楽のための協奏曲ニ短調MWV04(1823)*
クリスティアン・ベズイデンホウト(フォルテピアノ)

ゴットフリート・フォン・デア・ゴルツ(指&Vn*)
フライブルク・バロックO


録音:2010年4月(Teldexスタジオ)
■フォルテピアノの申し子、クリスティアン・ベズイデンホウト。近年は王子ホールでのリサイタルや、オーケストラ・リベラ・クラシカとの共演のために毎年のように来日、どのコンサートでも、実に感動的な演奏を聴かせてくれており、日本での評価も急速に高まりつつあります。ホグウッド指揮NHK交響楽団との演奏会ではモダンピアノでの素晴しい演奏を聴かせてくれましたが、自身「音楽活動のうち95〜98%はフォルテピアノ」と言う通り、彼の真骨頂はフォルテピアノ。一音一音の表情が実に多彩で、時に笑いかけ、時に涙するような、変幻自在の柔らかな音楽性で聴き手を包み込みます。
■ピアノ協奏曲イ短調は、姉のファニーのために書かれ、1822年12月5日の日曜音楽会で初演されました。半音階的な第2主題など、モーツァルトを思わせる空気も感じさせます。第2楽章はレチタティーヴォ風にピアノが優雅に歌う楽章で、ベズイデンホウトの音楽性の天賦の才が輝きを放ちます。第3楽章は全体的にイ長調的な明るさに満ちていますが、最後に怒濤のようなイ短調の激しいコーダがあらわれ、イ短調の作品として全体をググっと引き締めています。
■ニ短調の二重協奏曲は、1823年の5月に最初に完成、その後7月にティンパニなどに手を加えたかたちでここに演奏された版が完成しました。メンデルスゾーン自身のピアノと、彼の幼い頃からの親友でヴァイオリン教師でもあったエドゥアルド・リーツ(1802-32)によって初演されました。第2楽章の夢のように美しいピアノとヴァイオリンのかけあいがとにかく見事、ロマン派を予感させます。
■メンデルスゾーンの才能、そしてベズイデンホウトの音楽の豊かさがまばゆいばかりに広がる、見事な出来栄えの1枚です。ベズイデンホウトの今後の活動からますます目が離せません。き
HMC-902083(2CD)
C.P.E.バッハ:鍵盤協奏曲集Wq43
協奏曲第1番ヘ長調、第2番ニ長調、
第3番変ホ長調、第4番ハ短調、
第5番ト長調、第6番ハ長調
アンドレアス・シュタイアー(Cemb/Hieronymus Albrechthass、ハンブルク1834のコピー(2004年パリ、Anthony SideyandFredericBal))
フライブルク・バロック・オーケストラ、
ペトラ・ミュレヤンス(指、コンサートミストレス)

録音:2010年5月/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
シュタイアー待望の新譜は、C.P.E.バッハの鍵盤協奏曲集。オーケストラはフライブルク・バロック・オーケストラとこれ以上望みようがないくらいに最高の布陣での、満を持しての演奏です。とにかくチェンバロもオケもうまい!この録音のために、事前にコンサートに臨み、万全の態勢で録音を迎えたというから気合が違います。アレグロなどの快速楽章でのフライブルク・バロック・オーケストラの快活なリズムの刻みは、愉悦の極み。快速なパッセージによるかけあいも、シュタイアーが駆け巡る音型を奏でている間のオケの合いの手も、すべてに思わず笑みがこぼれてしまう素晴らしさです。また、緩徐楽章でのシュタイアーの冴えわたりかたはものすごいものがあります。 (Ki)
HMC-902085
シャロンのばら〜アメリカ音楽の100年
Lay me low 〜シェイカーの聖歌
【自由を求めての戦い】〜ベンジャミン・フランクリン・ホワイト(1800-1879):朝のトランペット
ヘンリー・カーリー(1687-1743):He comes, the hero comes!
フィリップ・ファイル(1734-1793):The President's March
The Death
of General Wolfe(アメリカの歌)
ジェファーソンと自由(The Gobby O) 〜(アイルランドの歌)
【アメリカ合唱音楽の父】ウィリアム・ビリングス(1746-1800):アメリカ;神は王なり;私はシャロンのばら
【Shape Notes and Singing Schools】やさしい兵隊(英国)、Leander、Drumdelgie、北の大地、キャプテン・キッド、驚くべき愛
【Shaker Spirituals】生活よ、シェイカーの生活よ/おお愛よ、甘き愛よ
さあ、いとしの人よ/柳のようにしなやかに
現世の命/頑固なオーク
Tis the gift to be simple
【市民戦争からの音楽】The Army of the Free、メリーランド・マイ・メリーランド、Lorena、ディキシーズ・ランド、ダンス・
ミー・ア・ジグ
【Revival Meetings and Spirituals】ステファン・コリンズ・フォスター(1826-1864):ハード・タイムズ・カム・アゲイン・ノー・モア
伝統歌 Sinner Man
M.M. ウォーナー(1836-1900):Hear, O Lord, when I cry
ヨエル・フレデリクセン(Bs、ギター)
アンサンブル・フェニクス・ミュンヘン

録音:2010年5月
ヨーロッパとくらべて、アメリカの古楽復興運動は近年になって注目される動きとなっています。新大陸へと移住した人々が、新天地の音楽と自分の音楽とを融合させていく変遷をたどるのは実に興味深い営みです。ヨーロッパ伝来の作曲法をとりいれながら、音楽は、次第に独自色豊かなものになりました。ここに収められているのは、アメリカの独立戦争(1775-83)から市民戦争(1861-65)にかけての時期に生まれたアメリカ音楽。アメリカに生まれアメリカで育った作曲家たちによる作品が中心に収録されています。メリーランド・マイ・メリーランドは「もみの木」として特にクリスマス音楽として日本で親しまれている曲。ほかにも耳にしたことのあるクリスマスソングの原型と思しき音楽もいくつか収録されており、大変興味をもちやすい内容となっています。「アメリカのパッチワークのようなプログラムの1枚。ひとつひとつの作品はパッチワークのパーツのようにばらばらですが、ひとつにまとまってみると見事なタペストリーとなっています。ヨーロッパ以外の国で発展、繁栄し、アメリカ大陸で独自の道をたどった豊かな伝統のほんの一部ではありますが、皆さまにお聴き頂きたく、このプログラムを考えました。」=ヨエル・フレデリクセンの言葉より  (Ki)
HMC-902086
ブラームス:ピアノ作品集
ピアノ・ソナタ第2番嬰ヘ短調Op.2、
スケルツォホ短調Op.4、
ピアノ・ソナタ第1番ハ長調Op.1
アレクサンドル・メルニコフ(P/1875年ベーゼンドルファー)

録音:2010年5月
ブラームス最初期のピアノ作品集。ここに収められている二つのソナタを作曲した時(1852-53年)、ブラームスはまだ19歳でした。ブラームスは、作曲当時、シューマンの前でこのソナタを演奏し、シューマンがこれを受けて「新しい道」と題してブラームスに関する美しい評論を書いた、音楽史上大きな作品です。ベーゼンドルファーによる演奏はメルニコフ自身が熱望したもの。きわめて柔らかな弱音から力強いフォルテでのいぶし銀のような音色、また情緒たっぷりのところで豊かに香り立つ詩情あふれる音色など、メルニコフは楽器を完全に手の内に入れてブラームスの充実の初期作品群を弾き切っています。ブックレットにメルニコフがコメントを寄せているので、以下に抜粋編集掲載させていただきます。=ハンガリー舞曲第1番の作曲家自身のピアノ演奏による記録(音質の面では極めて貧相ではあるが)を聴くと、ブラームスにとって、ハンガリー色というものが重要な要素であったことが窺われる。ルバートやアクセントの付け方、さらにそれを拡大して大きな形式のものにも適用することができよう。==ブラームスをどのピアノで弾くべきか、という問題は、それほど重要なものとして取り上げられることは比較的少なかったというべきであろう。ピアノ協奏曲の第2番に関して、モダンのスタインウェイもしくはベヒシュタインというブラームス自身による楽器の選択についての記述が残されている。19世紀後半、堅固な鋼鉄のフレームに囲われたスタインウェイ社のピアノは、調律の手間が既存のピアノに比べて格段にかからなくなったため、ヨーロッパ中を席巻していた。さらに、ウィーンのピアノに関して、ブラームスは批判的であった。しかし、1853年に初めてクララ・シューマンとロベルト・シューマンの前で自作のソナタを弾いたとき、ブラームスはウィーンの楽器を弾いていた。この時の演奏を聴いたシューマンが後に「新しい道」と題してブラームスを絶賛する美しい評論を書いたことは有名である。時のうつろいとともに、文化的にも美的にも価値観というものは変化しつづける。演奏者としても、そして聴く者も、「正しい」ことを見つける術は存在していないのである。=メルニコフがここで私たちに提示してくれる音色の香り高さと演奏の力強さ、そして強く意識されたハンガリー色が、一つの新しいブラームスの世界を見せてくれていることは間違いありません。 (Ki)
HMC-902087
シュメルツァーのソナタ&バレット集
シュメルツァー(1626頃-1680):古いアリアによるセレナータ
ポーランドのバッグ・パイプ
ソナタ・アマビリス(4声)
牧師とニンフのバレット
2声のソナタ/バレット第1番
宗教的・世俗的合奏曲集第4番6声のソナタ
「美しい羊飼い」による変奏曲
そよ風のバレット
スコルダート調弦のヴァイオリンの2声のソナタ
7声のソナタ(「戦い」)
フライブルク・バロック・コンソート
【ペトラ・ミュレヤンス(Vn)
コンサートミストレス】

録音:2010年5月、パウルス教会音楽ホール(フライブルク
2012年1月に初来日し、日本でも高い注目を集める「古楽のベルリン・フィル」こと名門フライブルク・バロック・オーケストラの精鋭メンバーからなるアンサンブル団体、フライブルク・バロック・コンソートによるシュメルツァーのソナタ&バレット集。シュメルツァーは17世紀ウィーンに活躍したヴァイオリンの名手で、宮廷を占拠していたイタリア人のヴィルトゥオーゾたちを退け、ドイツ人として初めて楽長となった人物でもあります。同時代に活躍したリュリ、シュッツ、パーセルらと比べると、現在では殆ど取り上げられなくなってしまったシュメルツァーですが、17世紀のオーストリア・バロック音楽を聴くには欠かせない音楽家といえましょう!本CDではシュメルツァーが残した珠玉のソナタとバレット(シンプルな舞曲風の器楽曲)の数々を収録。心に優しく沁み入る古楽器の温かい響きと、気品あふれる優美な旋律に心癒されます。「古いアリアによるセレナータ」や「そよ風のバレット」では軽快なリズム感が心地よく、様々なパーカッションの響きと共に、活気あふれるアンサンブルを聴くことが出来ます。知る人ぞ知る名曲の数々に触れる希少な名盤です!
フライブルク・バロック・コンソートはフライブルク・バロック・オーケストラのメンバーからなる古楽器演奏団体。17世紀〜18世紀半ばの音楽を中心に、今日では忘れ去られてしまった作品の再発見に尽力することを目的として結成されました。テレマンのパリ四重奏曲(HMA1951787)でも好評を博した丁寧なアンサンブルと心和ませる優しい響きは今回も健在。今後はどのような知られざる名曲を我々に提供してくれるのか…これからの活動に注目必至の団体です! (Ki)
HMC-902088(3CD)
ヘンデル:歌劇「アグリッピーナ」 アレクサンドリーナ・ペンダチャンスカ(Sアグリッピーナ)
ジェニファー・リヴェラ(Msネローネ)
スンヘ・イム(Sポッペーア)
ベジュン・メータ(CTオットーネ)
マルコス・フィンク(Bs-Brクラウディオ)
ニール・デイヴィス(Bs-Brパッランテ)
ドミニク・ヴィス(CTナルチーゾ)
ダニエル・シュムッツハルト(Bsレスボ)
ルネ・ヤーコプス(指)
ベルリン古楽アカデミー

録音:2010年7月、テルデックス・スタジオ・ベルリン
ヤーコプスの新録音は、ヘンデルの名声を全欧に広めた傑作「アグリッピーナ」。イタリア各地で修行を続けてきたヘンデルは、その総決算として1709年12月にヴェネツィアで「アグリッピーナ」を発表、これが大受けになって、ヴェネツィアっ子が「ザクソン人万歳!」とヘンデルを賞賛。この成功によってヘンデルの名前は全ヨーロッパ的に知られるようになり、やがてヘンデルがロンドンで活動する布石となりました。ヘンデルのイタリアオペラの代表作の一つとして、近年の人気は高く上演も頻繁にあります。ヤーコプスは2009年2月にベルリンで「アグリッピーナ」を上演(クリスチャン・ラクロワが衣装を手がけて話題となりました)、ポッペーア以外はこの時と同一メンバーです。風刺の利いた物語ということで皮肉な味わいを生かした演奏が多い中、ヤーコプスの「アグリッピーナ」は非常に生々しく劇的。しかもタイトルロールのアレクサンドリーナ・ペンダチャンスカの硬派な歌いっぷりは、これまでのアグリッピーナのイメージを覆さんばかりです。そしてスンヘ・イム、ベジュン・メータ、マルコス・フィンク、ドミニク・ヴィスと、ヤーコプス組の素晴らしい歌手が集められ、脇役のパッランテにニール・デイヴィスを配するという贅沢なもの。ヤーコプスは今回、「アグリッピーナ」初演前の初期稿の音楽を随所で採用しています。ヘンデルは様々な事情から初演直前に楽譜を手直しし、今日上演される「アグリッピーナ」はほぼ初演時の形態を踏襲しています。初期稿で特に注目されるのは、第3幕でポッペーアがネローネを騙した後の場面。一般的なものではオットーネとポッペーアがそれぞれアリアを歌って退出という型通りの音楽ですが、初期稿では二人の美しい二重唱が歌われており、とても魅力的です。多々発売されているヘンデルの録音の中でも、これはことにクオリティの高いもの、バロック声楽ファン、オペラマニアはぜひ! (Ki)

HMC-902091
ディアベッリ変奏曲〜アントン・ディアベッリのワルツ主題に基づく50の変奏より(1824年出版、ウィーン)
ディアベッリ(1781-1858):テーマ
ツェルニー:変奏W
フンメル:変奏XVI
カルクブレンナー:変奏XVIII
ケルツコフスキー:変奏XX
クロイツァー:変奏XXI
リスト:変奏XXVI
モシェレス:変奏XXVI
ヨハン・ペーター・ピクシス:変奏XXXI
F.X.W.モーツァルト:変奏XXVIII
F.シューベルト:変奏XXXVIII
アンドレアス・シュタイアー:‘イントロダクション’
ベートーヴェン:ディアベッリ変奏曲Op.120 (全曲)
アンドレアス・シュタイアー(フォルテピアノ/コンラート・グラーフモデル)

録音:2010年9月/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
2011年度アカデミー賞受賞アーティスト、近年ますますの充実を見せているアンドレアス・シュタイアー待望のソロ・アルバムの登場です!今回シュタ イアーがとりあげたのは、ベートーヴェンが腕によりをかけて主題を33回に渡って変容させたディアベッリ変奏曲。近年誰もがアクセス可能となったベー トーヴェンの自筆譜ファクシミリを入念に研究した説得力満点の力演です。さらに他の作曲家の手による変奏も収録、さらに自作の「イントロダクション」 も収録したという、いつもながらのこだわりぶり。シュタイアーの演奏が霊感に満ちて素晴しいことは言うまでもありませんが、ペダルの使い方(音色の 選択)が実に新鮮!ヤニチャーレン(ジャニサリー)・ペダル(トルコ親衛兵の軍隊音楽の打楽器の音色を思わせるガシャーンという音のするストップ)を使っ ての変奏23のドン・ジョヴァンニ変奏曲風楽章、変奏24のチェルニー練習曲カリカチュア風楽章の冒頭の和音は、なんともショッキング!シュタイアー 渾身のディアベッリ、大注目です!
もともとディアベッリ変奏曲は、当時のヴィーンの有名な出版社で音楽家でもあったディアベッリが、自分が作った主題を当時人気のあった作曲家たち 50人に渡して、それぞれに変奏曲を作曲させ、それをまとめて1つの変奏曲の作品として出版しようとしたもの。発注は1819年春頃で、大抵の作曲家(リ ストやシューベルトら)は注文のとおりに変奏を書きましたが、ベートーヴェンは当時「ミサ・ソレムニス」の作曲に従事していたことなどもあり、本腰を 入れ始めたのは1822年頃のことでした。最終的にベートーヴェンの作品は33もの変奏からなる大曲となったので、ディアベッリはベートーヴェンの作 品は単独で出版、他の作曲家たちによるものはまた別に1824年に出版されました。
ベートーヴェンの作品が33もの変奏曲から成る大作になったことについて、シュタイアーは、「これは偶然ではない」と語ります。ベートーヴェンはこ の主題のことを「靴屋の継ぎ皮」として、他の作曲家と一緒にされたくなかったからこんな巨大な作品にしたのだろう、などと語られることもありますが、 そのような理由だけで書いたにしては、その自筆譜からは、あまりにもベートーヴェンが苦労したあとが窺われる、と。バッハのゴルトベルク変奏曲は30 の変奏から成り、また、自作主題による変奏曲は32から成ることをベートーヴェンは強烈に意識していたはずと語ります。
ディスクの前半で、シュタイアーは、シューベルトによるシンプルながら天賦の才能に満ちた変奏、リストによるピアニスティックな変奏など、ヴァラエティ 豊かなセレクションを聴かせてくれます。注目なのが、シュタイアーによる「イントロダクション」。シュタイアーは、他の作曲家によるものと、ベートーヴェ ンの偉大なツィクルスの間に何か聴覚的・時間的な間を置きたかったと語ります。1819年、ベートーヴェンが発注を受けた際に残したスケッチに着想を 得てシュタイアーが創りあげたイントロダクションは、幻想的で不思議な即興演奏のような空気の中、時折ベートーヴェンのソナタの断片を思わせるよう なモティーフもちりばめられていて、実に面白い仕上がりです!
ベートーヴェンの作品は「変奏曲」と呼ばれていますが、コピストの手による楽譜の原語タイトルにはVeranderungenとあり、厳密には変奏というよ りも「変容」といった意味の強いもの。ベートーヴェンは、主題に内在される要素を原子レベルにまで分解、それを徹底的に動機、あるいはリズム、フー ガ的な手法で発展させています。ベートーヴェンの創意に満ちた作品を、こだわりやのシュタイアーが弾く。大注目の演奏です! (Ki)
HMC-902092
ボッケリーニ:作品集
弦楽五重奏曲ハ長調G.324,Op.30-6
弦楽五重奏曲第6番ホ長調G.275,Op.11-5
弦楽四重奏曲ト短調G.205,Op.32-5
ギター五重奏曲第6番ニ長調G.448
カザルスSQ
[アベル・トマス・レアルプ(Vn)、ヴェラ・マルティナス・メーナー(Vla)、ジョナサン・ブラウン(Vc)、アルノー・トーマス・レアルプ(Vc)、エッカルト・ルンゲ(Vc)]
カールス・トレパット(G)
ダニエル・トゥンマー(カスタネット)

録音:2010年4月
ボッケリーニといえば、あのメヌエット(弦楽五重奏曲第6番の第3楽章)がなんといっても有名ですが、このディスクに収録されている他の楽曲を聴けば、彼がいかに天才のきらめきに満ちた音楽を遺したか、ということをあらためて実感できるでしょう。ギター五重奏終楽章ファンダンゴでのカスタネットの巧みな使用、弦楽四重奏曲のエレガントなウィーン様式など、多様なスタイルには圧倒されます。また、弦楽五重奏曲ハ長調G.324,Op.30-6「マドリッドの夜の音楽」は、描写音楽。町の教会がアヴェ・マリアを奏でる情景から始まり、盲人の乞食のメヌエット(この描写場面では、チェロ奏者は楽器をギターのようにかまえ、指で弦をかきならすことが要求されます)、さらには真摯な祈りなど、人々が行き交う通りで繰り広げられる様々なドラマが巧みに描かれており、ボッケリーニの腕が冴えます。1997年にマドリッドで結成されたカザルス弦楽四重奏団のメンバーによる、スペインの血の通ったエネルギー溢れる演奏は見事。アルテミス弦楽四重奏団の創設者でありチェロ奏者、ゲスト奏者のルンゲが参加しての、弦楽五重奏は感動的です。ギターのカールス・トレパットは、世界的なコンクールで優勝した実力者で、フラメンコ・アーティストとの共演も多く、また、マリナーらクラシックの大御所との共演経験もるなど、幅広く世界的に活躍しています。ボッケリーニの作品の魅力、独特のスペインの薫りが実に生き生きと引き出された秀逸の1枚。 (Ki)
HMC-902093
20世紀の英国の歌
ハウエルズ(1892-1983):デイヴィッド王
 やもめの鳥/迷子の小さな子
クィルター(1877-1953):それは愛する人とその恋人だった
 来たれ、死よ/おお、僕の恋人
 吹けよ、吹け、
 冬の風/持って行け、あの唇を
 ヘイホー、風と雨
アイヴァー・ガーニー(1890-1937):サリーの庭
ヴォーン・ウィリアムズ:静かな午後
 リンデン・リー/輝かしき言葉の輪
フィンジ(1901-1956):2月のミドル・フィールド・ゲート
 ため息/私たちが愛したから
バークリー(1903-1989):馬術家
スタンフォード:サン・メルシーの美しい貴婦人
ウォーロック(1894-1930):ジリアン・オフ・ベリー
ヘリー=ハッチンソン(1901-1947):ヘンデル様式で
パーセル(ブリテン編):Lord, what is man?
 ヨブの災い
パーセル(ティペット編):嘆きのうた
ベジュン・メータ(C.T)
ジュリアス・ドレイク(P)

録音:2010年9月
大陸席巻中の人気カウンターテナー、ベジュン・メータ最新盤はイギリスの作品集。シェイクスピアの詞によるクィルター作品の魅力的な世界から、パーセル作品のブリテンやティペットによる編曲ものなど、メータは自由自在な表現力で聴かせます。「カウンターテナー」ということを忘れさせる、中性的ともいえる不思議な魅力に満ちた声をご堪能下さい。 (Ki)
HMC-902094
ゲーテ歌曲集
クルシェネク:アリア「ステラの独白」Op.57
シューマン:「夜の歌」Op.96/1
ブラウンフェルス:「太鼓が鳴ると」(世界初録音)Op.29-2
リスト:「喜びに満ち、悲しみに満ち」
ケンプ:「さすらい人の夜の歌」(世界初録音)Op.61/4
ワーグナー:「安らぎは消え」
ゾンマー:「ああ、悲しみに満ちた聖母マリアよ」
アイヴズ:「イルメナウ」
ディーペンブロック:ミニョン「君よ知るや南の国」
チャイコフスキー:6つの歌より「ただあこがれを知る者だけが」Op.6/6
ヴォルフ:「悲しそうに歌わないで」
 「私に言わせないで」
シューマン:ミニョン「大人になるまでこのままに」
メトネル:「さすらい人の夜の歌」Op.6/1
シューベルト:ズライカ その1(通称「東風」)D.720
メンデルスゾーン:「ああ、お前の湿った羽ばたきが」
ゾンマー:「さすらい人の夜の歌」(世界初録音)
トロヤーン:「よく賞賛されるが、悪口もよく言われる」(世界初録音)
リスト:「さすらい人の夜の歌」
マリス・ペーターゼン(S)、
イェンドリク・シュプリンガー(P)

録音:2010年10月、テルデックス・シュトゥーディオ(ベルリン)
ヤーコプス四季のハイドンの「四季」や、「魔笛」のパミーナ役などで持ち前の美声を発揮し、高い評価を得ているペーターゼン。2005年にはメトロポリタン歌劇場でアルバン・ベルクのオペラ「ルル」のルルを熱演するなど、古典から現代作品まで幅広いレパートリーを持つ実力派ソプラノ歌手です。
今回、ペーターゼンが収録したのはゲーテの詩を用いた歌曲集。シューベルトの「魔王」などをはじめ、これまで多くの音楽家たちがゲーテの詩に音楽をつけてきました。「女性」をテーマとした本CDでは、ステラやエグモントといったゲーテの戯曲に登場する女性のために作られたアリアやリートをまとめて収録。シューベルトやシューマンといった有名曲だけでなく、ケンプやゾンマーなどの世界初録音となる作品も多く収録した希少なCDです!録音にあたり、「一般的にリートというジャンルに結び付けられない作曲家や、殆ど知られていない作曲家を選ぶことで、出来るだけゲーテの詩に新しいアプローチをもたらしたかった」と意欲を語った演奏者の二人。時代や作曲家ごとに異なる作品それぞれの魅力を見事に表現しわけるペーターゼンの歌唱力には圧巻の一言!様々な曲調を楽しめると同時に、ペーターゼンの多彩な歌声に魅せられる名盤です! (Ki)
HMC-902095
ジャン=ギアン・ケラス/ヴィヴァルディ他
ヴィヴァルディ:「テンペのドリッラ」VR709〜シンフォニア
 協奏曲ト短調RV416〜2つのソロ・ヴァイオリン,オブリガート・チェロとチェンバロのための
カルダーラ:シンフォニア第12番イ短調「我らの主,イエス・キリストの受難」
ヴィヴァルディ:チェロ協奏曲へ長調RV422
 協奏曲ハ長調RV114
 チェロとファゴットのための協奏曲ホ短調RV409*
 協奏曲ニ短調RV565#
 チェロ協奏曲ロ短調RV424
カルダーラ:シンフォニア第6番ト短調「苦痛を受けし聖エレナ」
ヴィヴァルディ:チェロ協奏曲イ短調RV419
ジャン=ギアン・ケラス(Vc/Gioffredo Cappa(1696))
ベルリン古楽アカデミー、
ゲオルク・カッルヴァイト(指、Vn)
クリスティアン・ブーズ(Fg)*
ゲオルク・カッルヴァイト(Vn)#、
エルファ・ルン・クリスティンスドッティル(Vn)#
ヤン・フライハイト(Vc)#
ラファエル・アルパーマン(Cemb)#
シモン・マルティン=エリス(Lute)#
ワルター・ルーマー(Cb)#

録音:2010年10月/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
2年連続レコードアカデミー賞受賞アーティスト、アルカント・カルテットのチェロ奏者としても大変充実した演奏を聴かせてくれているケラス。待望の最新盤はヴィヴァルディのチェロ協奏曲集。芯のある美しく語る音色、常に本質を突く鋭敏なケラスの音楽はヴィヴァルディにぴったり。管弦楽は録音では初共演となる名門、ベルリン古楽アカデミー。ケラスの類まれなる美音にして鋭敏な音楽と、みずみずしくアグレッシブなベルリン古楽アカデミーは、まさに絶品の組み合わせといえるでしょう。ケラス自身「初めてコンサートで共演したときの電流が走ったような衝撃は忘れられない」と語っているほどに、両者の演奏は霊感に満ち、まさに火花が散るよう。細かなパッセージの一音一音にまで神経が行き渡り、息の通った見事な演奏です。終曲のイ短調RV419終楽章のオーケストラとケラス両者の俊敏な動きは特に聴きものです。聴き手の心にストレートに響くケラスの美音から、オーケストラの豊かな響き、低弦の敏捷な刻み、すべてを見事にとらえた録音のクオリティもさすがハルモニアムンディ。心躍る1枚の登場です。 (Ki)
■ケラスとヴィヴァルディ〜ブックレットより抜粋
「ヴィヴァルディは私に、幼い日の思い出を洪水のように呼び起こします。私が何度も繰り返し聴いた初めての盤は、ビルスマとコレギウム・アウレウムの演奏によるヴィヴァルディのチェロ協奏曲でした。チェロを学び始めた年にヴィヴァルディのソナタを学び始めました。さらに言いますと、アマチュアのピアニストである母は、私が母のお腹にいたとき、伴奏でヴィヴァルディのチェロ・ソナタをよく弾いていたということです。」25歳の時、バッハ作品のマスタークラスでビルスマと出会ったケラスは、その後ビルスマの自宅に招かれます。「『アラジンの洞窟』のような空間には膨大な量の紙資料(どれもバロック音楽に関する大変貴重な研究資料)が収められていました。ビルスマ先生は、ご自身の書き込みがびっしりとあるヴィヴァルディの協奏曲などの楽譜をいくつも私に下さいました。」「ヴィヴァルディのチェロ協奏曲は、ごくわずかの例外を除いて、急―緩―急の3楽章で書かれています。どの作品も独創性に満ちていますが、必ずしも、これらの作品は連続して演奏されるために書かれてはいないのでは、という考えに至りました。こうして私たちは異なった楽章構造をもつ作品を間に挟んで演奏することに決めたのです。このアイディアを膨大な知識と経験をもって最終的に実現可能にしてくれたのは、指揮者でもあるカルヴァイトであることは、述べておかねばなりません。このことにより、魅力的なコントラストに満ちた素晴しいCDになったと思っています。」

HMC-902096
ムソルグスキー:展覧会の絵
シューマン:幻想曲 ハ長調 op.17
ポール・ルイス(P)

録音:2014年2月(ムソルグスキー)、2010年11月(シューマン)
世界をまたにかけて展開されたシューベルト・ツィクルスは、2014年12月初旬に東京と名古屋で演奏されたシューベルト三大歌曲の演奏会(歌手 はマーク・パドモア)をもって日本でも大盛況に終わり、ますますの充実をみせるピアニスト、ポール・ルイス。次なる新譜は、ムソルグスキーとシュー マンという組み合わせ。ポール・ルイス初のシューマンという意味でも、また、ムソルグスキーでの完璧な超絶技巧も注目の1枚です。
これら2作品は、一見不思議な組み合わせでありますが、「標題」を越えた音楽の世界があるという点で共通しています。ムソルグスキーの「展覧会の絵」 は、友人であったヴィクトル・ハルトマンの絵画展で印象に残った絵画にインスピレーションを得て書かれたものですが、その音楽は、ハルトマンの絵 画のイメージ世界を越えたもので、時に曖昧で、時に絵画のイメージとは必ずしも一致しないものもあります。シューマンの幻想曲については、この作 品は当初、各楽章に、イメージを喚起する標題がつけられていました。最終的にそれらは外され、各楽章にはシュレーゲルの詩がモットーとして掲げ られるにとどまっています。標題が喚起するイメージの世界を越えた壮大なスケールの世界が広がる、シューマンの傑作です。
清冽で一点の汚れもない音色で、その音楽には作曲家の肉声を生々しいまでに感じさせるポール・ルイス。19世紀の傑作2曲のイメージを一新さ せてくれるような、音楽的価値の真価を問うような演奏となっています。ますますの充実ぶりを感じる1枚です。 (Ki)
HMC-902097
ヤナーチェク:モラヴィア合唱曲集
6つのモラヴィア合唱曲(原曲:ドヴォルザーク:モラヴィア二重唱曲集)〔もし大鎌が鋭く磨かれていたら/スラヴィコフの小さな畑/もみじの木にいる鳩/仲よく別れよう/野ばら/若者よ緑にもえよ〕
野鴨/狼の足跡
カンタータ「わが娘オルガの死を悼む悲歌」
わらべ歌(序奏と18曲とエピローグ)
我らの夕べ/アヴェ・マリア
我らの父
ダニエル・ロイス(指)
カペラ・アムステルダム
トーマス・ウォーカー(T)
フィリップ・マイヤーズ(P)
ラジオ・ブレイザーズ・アンサンブル(わらべ歌)

録音:2010年11月、アムステルダム
ヤナーチェクの創作の重要分野のひとつが合唱で、生涯にかなりの作品を残しています。多くがモラヴィアの民謡を源泉としているもので、ヤナーチェクならではの深いメランコリーと苦みに満ちた独特の味わいがあります。ここには民俗的なものと宗教的なものから魅力的な7作品が選ばれ、ヤナーチェクの合唱世界を俯瞰できるようになっています。
興味深いのは母国の偉大な先輩ドヴォルザークの「モラヴィア二重唱曲集」から6曲をヤナーチェクが混声合唱に編曲したもので、ヤナーチェク特有の和声がますます民俗色を濃くしています。ドヴォルザークとヤナーチェクふたりの天才性が倍加する稀有な宝と申せましょう。また、愛娘を失った慟哭「わが娘オルガの死を悼む悲歌」の悲痛さも心を打つ内容となっています。一方、伝承音楽に基づく「わらべ歌」は全20曲から成り、カラフルな東欧色にあふれ、音による小旅行を楽しめます。
1970年結成のカペラ・アムステルダム。ダニエル・ロイスの指揮のもとに、古典から近現代まで、幅広いレパートリーを誇っていますが、ここでも民族色豊かなユニークな世界を見事なチェコ語で再現しています。1961年生まれのダニエル・ロイスは、ロッテルダム音楽院で合唱指揮を学び、1990年にカペラ・アムステルダムの指揮者に就任、2000年にはRIAS室内合唱団の指揮デビューも飾っています。 (Ki)
HMC-902098
ヨハン・クリスティアン・バッハ(1735-1782):レクイエム〜入祭唱&キリエ.ヘ長調(T208/5)、怒りの日ハ短調(T202/4)
ミゼレーレ変ロ長調(T207/5)
レネケ・ルイテン(S)、
ルース・サンドホフ(A)、
コリン・バルツァー(T)、
トーマス・バウアー(Bs)、
ハンス=クリストフ・ラーデマン(指)
ベルリン古楽アカデミー、
RIAS室内cho

録音:2010年11月
以前、ヨハン・ルートヴィヒ・バッハの「葬送のための音楽」(HMC902080)が好評だったラーデマンによるバッハ一族の音楽再発見シリーズの第2弾!今回は、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685-1750)の末息子であるヨハン・クリスティアン・バッハ(1735-1782)を取り上げます。18世紀後半の最も多作な作曲家で、モーツァルトに影響を与えた重要な音楽家でもあるヨハン・クリスティアン。生前はドイツ、イタリア、イギリスなど様々な都市で活躍し、とりわけロンドンではアーベルと共に公開演奏会の確立に多大な貢献を果たしました。彼の音楽性はイタリア・オペラに由来しており、今回収録された「レクイエム」にも当時のイタリア教会音楽様式が垣間見えます。彼の作品は生前大きな名声を得たものの、後進のハイドン、モーツァルトらの出現によって、没後はその作品の多くが歴史の影に埋もれてしまいました。今回は彼の教会音楽作品の中でも代表的な「レクイエム」、「ミゼレーレ」を収録。これまでバッハ一族の音楽を数多く復興してきたラーデマンによって、ヨハン・クリスティアン・バッハの優美かつ壮麗な響きが蘇ります! (Ki)
HMC-902099
ファリャ:ピアノ曲集
交響的印象「スペインの庭の夜」
4つのスペイン小品
ベティカ幻想曲
ドビュッシーの墓に捧げる賛歌
デュカスの墓に捧げる賛歌
歌(1900)/夜想曲(1896)
マズルカ(1899)
アンダルシアのセレナータ(1900)
ハヴィエル・ペリアネス(P)

ジュゼップ・ポンス(指)BBC響
1978年スペイン出身のハヴィエル・ペリアネス、独特の繊細なピアニズムで世界の注目を集める俊英。彼が母国の大作曲家ファリャのピアノ曲に挑戦しました。ファリャの音世界は先輩のアルベニスやグラナドスと比べ、より儚げで翳がありペリアネスにぴったり。かねてグラナダ国際音楽舞踊祭のライヴCDでペリアネスの奏するファリャの「歌」が絶品であるとの声が高かったもので、今回ついに主なピアノ曲を集めた魅惑のアルバムの登場となりました。
メインは協奏作品である「スペインの庭の夜」。今回の録音のために、ペリアネスと指揮者のポンスはグラナダのファリャ・アーカイヴで自筆譜を詳細に検討、出版譜との違いを多数発見して演奏に反映させているのが興味津々。至難な技巧の要求されるこの大作を、驚くほどデリケートかつ雄弁に弾き切っています。濃厚なスペイン色も最高。
ファリャのピアノ音楽は技巧的に複雑なものが多いわりに、音楽はデリケートの極みで微妙なニュアンスを最重要視しています。ペリアネスの演奏は、「歌」や「夜想曲」が予想通りの絶品なうえ、「4つのスペイン小品」はファリャ自身のピアノロール録音を超える名演と申せましょう。ペリアネスを聴いてしまうと、他のどの演奏も無神経に聴こえてしまうほど、究極のピュアな感性が光ります。超オススメ。 (Ki)

HMC-902100(4CD)
ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲全集
変ホ長調 Op.1-1、 ト長調Op.1-2
ハ短調 Op.1-3、変ロ長調 Op.11-1、
変ホ長調Op.44、ニ長調Op.70-1「幽霊」、
変ホ長調 Op.70-2
変ロ長調 Op.97「大公」、
ト長調 Op.121a 「私は仕立て屋カカドゥ」の主題による10の変奏曲とロンド、
変ホ長調 WoO 38、変ロ長調 WoO 39
トリオ・ヴァンダラー
【ジャン=マルク・フィリップス=ヴァイジャベディアン(Vn、ペトルス・グアルネリウス(1748、ヴェネツィア))
ラファエル・ピドゥー(Vc、Goffredo Cappa(1680))
ヴァンサン・コック(P)】

録音:2010年12月、2011年9月/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
これ以上の演奏は望めないのでは、と思わされてしまうベートーヴェン。結成25周年を迎える名トリオ、トリオ・ヴァンダラーによるピアノ三重奏全集 の登場です。まず何と言っても、ヴァンサン・コックのピアノの粒のそろったタッチ(特に初期作品)がひときわ輝きを放ちます。ベートーヴェン自身が素 晴しいピアニストであったことを実感させる、素晴しく充実したピアノ・パートは圧巻です。魅惑の旋律とかけあいを展開するヴァイオリンとチェロも、全 てが完璧に融合しています。それぞれの奏者の技量の高さが同じくらいにハイレヴェルで、音楽の方向も同じだからこそのこのアンサンブルは、他ではな かなか得られないものではないでしょうか。
18世紀の終り、ピアノ三重奏曲は、ピアノ・ソナタの延長線上にあるもの、いわばヴァイオリンやチェロが、ピアノの補強やアクセント的な役割を担う ものとされ、弦楽四重奏よりも一段軽めなジャンルで、三楽章構成で、最終楽章は軽やかで優雅なロンドで書かれるのが常でした。ベートーヴェンはこの 慣習に終止符を打つべくピアノ三重奏曲Op.1を1795年、世に出しました。弦楽四重奏曲と同じように四楽章構成にし、終楽章をソナタ形式で書くこと により、音楽に深いドラマと交響曲のように雄大さを与えました。そして自身がピアニストとして舞台に招かれることを前提として作曲したため、とりわけ このOp.1はピアノ・パートの充実が目立ちます。そんな野心に溢れた若きベートーヴェンのOp.1に始まり、交響曲第3,5,6番などを書いた充実期(1810 年前後)に生み出されたOp.70など、ベートーヴェンが折に触れ作曲し続けたピアノ三重奏曲は、どの作品も、またどの作品の各パートも目を見張る充 実ぶり。慣習の3楽章構成で、最終楽章がロンドの作品もありますが、どれもベートーヴェンの野心と情熱、才能と創意に満ちています。そんなピアノ三 重奏の全曲を、トリオ・ヴァンダラーの素晴しい演奏で心行くまで堪能できる、贅沢なセットです。
トリオ・ヴァンダラーはパリ国立高等音楽院の卒業生三名によって1987年に結成されました。1999年にハルモニアムンディで録音をはじめ、これま でに発売されたCDはどれも極めて高く評価され、特にメンデルスゾーンのトリオ集(HMC 901961)はニューヨーク・タイムズ紙でも決定盤として紹 介されました。古典派、ロマン派から現代までの幅広いレパートリーを可能にするそれぞれのメンバーの技量の高さで、テレパシーともいわれるまでに息 のあったアンサンブルによる極めて上質の演奏で常に我々を魅了しています。 (Ki)
HMC-902104
ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番ハ短調Op.35
ヴァイオリン・ソナタOp.134
ピアノ協奏曲第2番ヘ長調Op.102
アレクサンドル・メルニコフ(P)、
イザベル・ファウスト(Vn)、
イェルン・ベルヴァルツ(Tp)、
テオドール・クルレンツィス(指)
マーラー・チェンバーO
ショスタコーヴィチの難物「前奏曲とフーガ」全曲で衝撃を与えたメルニコフが協奏曲に挑戦しました。しかも指揮が話題のクルレンツィス、オーケストラがマーラー・チェンバーというのも注目です。こだわり派のメルニコフはショスタコーヴィチの自作自演盤を研究し、独奏・オーケストラともにテンポ、フレージング、表現等々ソックリなまでの影響を受けています。とは言っても単なるコピーではなく、メルニコフらしさやクルレンツィスらしさが横溢し、21世紀らしい新鮮さも欠けていません。
協奏曲第1番のトランペット独奏はベルギーの若手イェルン・ベルヴァルツが務めていて、その巧さにも驚愕。メルニコフの演奏はまさに才気煥発の極みで、テクニックはもちろん、ヒリヒリした皮肉と緊張感が理想的にブレンドされています。長大で深遠な交響曲第11番と同時期に書かれたピアノ協奏曲第2番は、平易で軽い作品と思われがちですが、メルニコフの演奏で聴くと一筋縄ではいかない力作であることを再認識させられます。クルレンツィスの指揮は評判となった交響曲第14番のディスクを彷彿させる充実ぶりで、メルニコフのピアノと互角に競い合います。
フィルアップのようでアルバム一番の大作ヴァイオリン・ソナタは、何とイザベル・ファウストとメルニコフの共演。これは超驚愕の凄さ。ファウストとメルニコフは、オイストラフがショスタコーヴィチのピアノ伴奏で1968年にプライヴェート録音した音源の噂を聞き、オランダのコレクターを訪ねてそれを聴かせてもらい、目から鱗が落ちたとのこと。確かに背筋の凍るような緊張感と不思議な美しさは自作自演にソックリですが、セッション録音ゆえ、その凄さは倍増され、ちょっと人間業とは思えぬ境地に至りました。ファウスト屈指の名演なだけでなく、意外に名盤に恵まれないこの作品のベストであることは歴然と申せましょう。 (Ki)
 
HMC-902105
ベルク:ヴァイオリン協奏曲(ある天使の思い出に)
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲
イザベル・ファウスト(Vn)
 ※使用楽器:スリーピング・ビューティ(Stradivarius, 1704)
クラウディオ・アバド( 指)モーツァルトO

録音:2010年11月/ボローニャ(Auditorio Manzoni)
クラウディオ・アバドが、是非に、と申し出るかたちで実現したレコーディングです。アバドとオケが全身全霊 でファウストの音楽を支えているのがよく感じられ、ベルクの協奏曲では、爛熟したハーモニーをオケが醸す上で、ファウストが変幻自在な音で飛翔し ます。ファウスト独特のタッチが生みだす美しい高音には思わず息をのむほどです。ベートーヴェンでも、何度も聴いたことがあるはずの第1主題から、 なんとも神々しい響き。第2 楽章の天国的な美しい音色はショッキングですらあります。終楽章の活き活きと、そして愛らしさも漂う表情はファウスト ならでは。カデンツァは、ベートーヴェンがこのヴァイオリン協奏曲をピアノ用に編曲した際に、ベートーヴェン自身が書いたものに基づいています。ヴァ イオリン界の新女王、という一言だけでは表現しきれない音楽と魅力的な表情、そして衝撃的に美しい音。ファウストとアバド、モーツァルト管が、神 に許された人にしか立ち入ることのできない領域の音楽を展開しています。 .「私がマエストロ・クラウディオ・アバド(マーラー室内管)と共演したのは2008 年のことでしたが、この経験は、ベートーヴェンの協奏曲を理解 し体験する新しい道を私に見出させました。このあと、アバド氏は、今度はモーツァルト管と、アルバン・ベルクの協奏曲を共演しましょうと申し出て くださいました。この二つの傑作をリハーサルし、コンサートにかける機会を幾度が経たあとで、これら2 作品をCD に録音するということは、彼にとっ て、自然の流れだったようです。この2 つの傑作を同時に持ち続けるということは私にとってまったく新しい体験でした。2010 年にボローニャで行っ た幾度にも亘るリハーサルでは、ベルクが終わるとベートーヴェン、という風に、2 作品を交互に演奏していました。アルバン・ベルクの、悲しみと苦 しみの世界から、バッハの魂の浄化のコラールを経て、ベートーヴェンの最も輝かしく、この世のすべての苦しみから一見解放されたようにみえるフィナー レへの非常に密度の濃い旅は、演奏に携わる私達をこの上なく魅了しました。アバドとの音楽作りは、至上の歓びであり、音楽のマジックを知るため の本物の鍵でした。彼が私を信頼して下さったことに心から感謝し、彼の芸術性に心からの賛辞を捧げます。」(イザベル・ファウストのコメント、ライ ナーノーツより). (Ki)
HMC-902106
シューベルト:弦楽五重奏曲ハ長調D956 アルカント・カルテット
【アンティエ・ヴァイトハース(1Vn)、
ダニエル・ゼペック(2Vn)、
タベア・ツィンマーマン(Va)、
ジャン=ギアン・ケラス(Vc)】
オリヴィエ・マロン(第2Vc)

録音:2010 年12月13-16日
ケラス率いる豪華メンバーによるアルカント・カルテット、待望の新譜はシューベルトの最高傑作、弦楽五重奏曲。ケラスの高弟オリヴィエ・マロンを 第2チェロに迎え、心に刺さる冴えまくった名演を展開しています。
第1楽章冒頭、心に突き刺さるような、研ぎ澄まされたハーモニーから、この演奏のただならぬ凄味を感じます。シューベルト独特の、うつろいゆく気 分、哀しみと喜びが共存するような表情をもらさずとらえており、圧巻。続く第2楽章では極限の集中と柔和な表情のバランスに、彼らの冴えたセンスが 光ります。第3楽章スケルツォの一気呵成に聴かせる絶妙に軽快なテンポ設定はさすがです。5人の音色が風のように駆け抜けます。終楽章は聴きもの。 執拗に繰り返されるシンコペーションのリズムが浮き彫りにするシューベルトの心の闇、そして終幕の駆け上がるパッセージと最後の和音は何とも悲痛な 叫びのように、聴き手の心に刺さってきます。この作品の意外性を存分に聴かせると共に、シューベルトの心の闇にもくまなく光を当てた、注目の演奏と いえるでしょう。第2チェロを担当するオリヴィエ・マロンも、エッジの効いた音色で本質にズバっと切り込むアルカント・カルテットの面々の音色に見事 に融け込んで、時に甘く時に悲痛に、美しい低音を響かせています。レコード・アカデミー賞(銅賞)を二年連続で受賞するなど、日本で、そして世界中 でもますます高い評価を得ているカルテットの、危険といってしまえるかもしれないくらいに鋭く心に刺さる演奏に、心して向き合いたい一枚です。
=オリヴィエ・マロン=
1980年フランクフルト生まれ。リヨン音楽院にてジャン・デュプラスに、そしてシュトゥットガルトでジャン=ギアン・ケラスに師事。2004年7月、J.S.バッ ハコンクール(ライプツィヒ)で1位。ジュネーヴの現代音楽アンサンブル「アンサンブル・コントルシャン」に所属、ブーレーズら20-21世紀の現代作 品の演奏にも積極的に関わっている。2009-11年にかけて、ケラスのアシスタントとしてドイツ国立シュトゥットガルト音楽大学にて教鞭をとる。 (Ki)
HMC-902107
マティアス・ゲルネ・シューベルト・エディション第9集
シューベルト:「冬の旅」
マティアス・ゲルネ(Br)
クリストフ・エッシェンバッハ(P)

録音:2011年1,5月/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
マティアス・ゲルネ・シューベルト・エディションの最終巻の登場。エッシェンバッハをピアニストに迎えての「冬の旅」です。まろやかさを失うことなく、 ときに劇的な表情を見せるゲルネの声が、物語の情景を克明に描き出します。エッシェンバッハの、ゲルネの歌の表情に寄り添いながらもどこか淡々と冷 たい感じさえもおぼえる抑えの利いたピアノも見事。詩の主人公の心の闇までをも照らし出しているかのような心を打つ名演となっています。なお、ゲルネ は今後、マーラーなどの歌曲でハルモニアムンディでのレコーディングを続けるということです。 (Ki)

HMC-902108
ウェーバー:ヴァイオリンのオブリガートつきのピアノのための6つの段階的ソナタ(アマチュアのために作曲、捧げられた)op.10
 第1番 ヘ長調op.10-1
 第2番 ト長調op.10-2
 第3番op.10-3 ト長調
 第5番 イ長調op.10-5
 第6番 ハ長調op.10-6
四重奏曲(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロとピアノのための)変ロ長調 op.8
イザベル・ファウスト(Vn/1704年製ストラディヴァリス「スリーピング・ビューティ」)
アレクサンドル・メルニコフ(フォルテピアノ‘Lagrassa’(1815年ca.,エドウィン・ボインクのコレクションより))
ボリス・ファウスト(Va/ガエターノ・ポラストリ)
ヴォルフガング・エマニュエル・シュミット(Vc/マッテオ・ゴフリラー)

録音:2011年 6月、テルデックス・スタジオ(ベルリン)
【ジャケット絵画:ロヴィス・コリント(1858-1925):ヴァイオリンを弾く女(1900年)】
今もっとも輝いているヴァイオリニスト、イザベル・ファウスト。注目の最新盤は、ウェーバーの作品集です。ドイツにおけるロマン主義運動の重要な先 駆者であり、多芸多才な楽長、明晰な批評家として、さらには華々しいピアニストとしても活躍したウェーバー。「魔弾の射手」やピアノ曲が非常に有名ですが、 室内楽はわずか9曲(完成されたもの)しかのこしていません。そのうち8曲は、ウェーバー自身、かなりの名手であった楽器、ピアノを含む編成のものとなっ ています。イザベル・ファウストを中心とする豪華メンバーのこの録音では、ウェーバーの才能の輝きに満ちた室内楽作品が、ファウストにしか奏でること のできないまばゆい音色に導かれ、いきいきと再現されています。メルニコフの溌剌とした気魄に満ちたフォルテピアノの音色も見事。なお、四重奏曲で 共演しているヴィオラのボリス・ファウストは、イザベルの兄。そしてチェリストも来日経験もある中堅シュミットということで、注目盤の登場といえましょう。
6つのヴァイオリン・ソナタは、1810年の夏の終り頃、出版社のヨハン・アントン・アンドレの依頼を受けて作曲されたもので、家庭内で、いわゆる アマチュアの人々が音楽演奏を楽しむための楽曲がならびます。ウェーバーはあまりこの仕事に乗り気ではなかったことが手紙などにも残されていますが、 その内容は実に多彩で、ウェーバーの才気に満ちたもの。カスタネットが打ち鳴らされるようなボレロ(第2番第1楽章のキャッラテーレ・エスパニョー ロ)や、バラライカの音色を思わせるエア・リュス(第3番第1楽章)など、多国籍の情緒が感じられ、また、魅力的なメロディー、そこかしこに、魔 弾の射手のアリアを彷彿とさせる華やかなパッセージも盛り込まれていて、「アマチュアのための」とされてはいますが、非常に充実した内容となっています。 アンサンブルをたのしむことにも主眼がおかれた作品だけあって、ファウストとメルニコフとの、丁々発止のやりとりにも注目です!
四重奏曲は、1809年9月、ウェーバーが22歳のときに完成された作品。なんといっても聴きどころは第2楽章。弦楽器の半音的な動きをみせるハー モニーに始まる印象的な問いかけにピアノが応えたかと思うと突然の休止小節、そしてピチカートによるカデンツァが続く、というなんとも謎めいた出だし の楽章です。この楽章だけ、1806年に完成、残りの楽章は後になって書かれたことがわかっています。ピアノの短い導入に始まり、瑞々しいロマンティッ クなメロディーのきらめきが美しい第1楽章、弦楽器の美しい音色が冴えわたる充実した第2楽章、エスプリの効いた短い第3楽章、そして、終楽章では、 弦楽器3者のフーガ風なやりとりの中、ピアノが縦横無尽に華麗にかけめぐります。
ファウストの、どこまでもまっすぐな音色で奏でられるウェーバーの書いた旋律美、メルニコフの才気と知性が冴えるピアノ・パート、そしてアンサンブ ルの妙。すべてがとびきりのクオリティのウェーバー作品集。珠玉の1枚の登場です。 (Ki)
HMC-902111
『ピンク・ムーン』へのレクイエム
ニック・ドレイク(1948-1974):ロード
 レクイエム・エテルナム(フレデリクセン編)
ドレイク:ピンク・ムーン/ホーン
ダウランド:歌曲集第1巻〜「彼の金髪も時が銀髪に変えて」(フレデリクセン編)
ドレイク:プレイス・トゥー・ビー
カベンディッシュ(c.1565-1628):ワンドリング・イン・ディス・プレイス(フレデリクセン編)
ドレイク:Which Will
ダウランド: 歌曲集第1巻〜「しばし休め、むごき心の痛みよ」(フレデリクセン編)
ドレイク:ライダー・オン・ザ・ホイール
ダウランド:歌曲集第3巻〜「時間は静止して、あの人の姿に見とれる」(フレデリクセン編曲)
ドレイク:タイム・ハズ・トールド・ミー
フレデリクセン:海
ドレイク:ハンギング・オン・ア・スター
キャンピオン(c.1567-1619):歌曲の本より「荒天に船出するな」(フレデリクセン編曲)
ドレイク:ホーン
 レクイエム(フレデリクセン編)
ドレイク:ヴォイス・フロム・ザ・マウンテン
 ノーザン・スカイ
 ハーヴェスト・ブリード
ダウランド:歌曲集第1巻より「来たれ深き眠り」(フレデリクセン編曲)
 ドレイク:フロム・ザ・モーニング
 レクイエムU(フレデリクセン編曲)
ヨエル・フレデリクセン(バス、リュート)、
アンサンブル・フェニックス

録音:2011年3月、ノイマルクト
深々と心に響くしびれる低音で多くの聴衆を魅了するバス歌手ヨエル・フレデリクセンが、伝説のイギリス人シンガーソングライター、ニック・ドレイク の名盤『ピンク・ムーン』をカバーした新譜をリリース!リュートを弾きながら歌うフレデリクセンのスタイルは今回も健在。彼自身大きな影響を受けたと いうドレイクの優しくも物悲しい歌の数々を、持ち前の艶やかな低音でしっとりと歌いあげています。原曲よりも低く、落ち着いたフレデリクセンの歌声は 原曲とは違った魅力があります。また、ドレイクの各作品の合間にはイギリス・ルネッサンス歌曲の数々を挿入。ドレイクの「ホーン」の旋律に乗せたレク イエムなど、彼へのオマージュを強く感じさせるオリジナリティあふれる内容に仕上がっています。
ニック・ドレイクは1948年ビルマ(現ミャンマー)生まれ、イギリス育ちのシンガーソングライター。哀愁漂う繊細な歌声による弾き語りは専門家から 高い評価を受けるも、商業的成功には恵まれず、晩年はうつ病と闘いながら細々と活動を行った不遇のアーティストとしても知られています。生前に発表 したアルバムはわずか3枚。今回収録された『ピンク・ムーン』は1972年、彼が亡くなる2年前にリリースされた最後のアルバムとなります。2004年 に未発表音源集が発売されたり、メルドーらもドレイク作品をカバーしているなど、その人気はむしろ死後根強く広まっており、近年もまだまだ再評価の 動きの止まないドレイク。2012年は『ピンク・ムーン』発売10周年ということもあり、往年の名歌手に想いを馳せるにふさわしいアルバムといえましょう。 (Ki)
HMC-902112
シューベルト:歌曲集
「野ばら」D.257/「子守歌」D.527
「子守歌」D.867/「秘めごと」D.719 
「ガニュメート」D.544
「ブルックの丘にて(橋の上で)」D.853
「漁夫」D.225
「それら(美と愛)がここにいたことは」D.775
4つのリフレインの歌〜第2番「ただあなたのそばに」D.866
「船乗り」D.536/「歓迎と別れ」D.767
「さすらい人」D.493/「森で」D.834
「さすらい人の夜の歌」D.224
「孤独な人」D.800/「冬の夕べ」D.938
「秋」D.945/「ロザムンデのロマンス」D.797
「夜の曲」D.672
ヴェルナー・ギューラ(T)
クリストフ・ベルナー(P)

録音:2011年1月、Reitstadel、ニューマルクト(オベルプファルツ)
気品あふれる歌声で人気のテノール歌手ヴェルナー・ギューラによるシューベルトの歌曲集。古楽からロマン派まで幅広いレパートリーを持つギューラですが、シューベルトの歌曲は彼の得意とするレパートリーの1つといえましょう。ギューラの歌声は相変わらずふくよかで、過度な表現を抑えた自然な歌い方がシューベルトの繊細な音楽観に見事にマッチしています。ピアノ伴奏を務めるのは多くの録音を共にしてきた相方、クリストフ・ベルナー。リブレットの中で、シューベルトの代表作「冬の旅」や「美しい水車屋の娘」の形式をオマージュし、ある架空の人物の人生を物語るようなプログラムとなるよう選曲を行ったと語るベルナー。これまでシューベルトの歌曲に多く携わってきた名コンビだからこそ成せる、オリジナリティあふれるプログラムといえましょう。収録作品はシューベルトの若き頃の作品から晩年期の作品まで多岐にわたり、シューベルトらしい美しくも陰りのある旋律の魅力にしっとりと浸ることができます。ギューラとベルナーの息の合ったアンサンブルにも注目の1枚です! (Ki)
HMC-902113(2CD)
バッハ:管弦楽組曲(全曲)
組曲第4番ニ長調BWV1069〔3Ob、Fg、3Trp、timp、弦、通奏低音〕
組曲第2番ロ短調BWV1067〔Fl、2Vn、Vla、通奏低音〕
組曲第1番ハ長調BWV1066〔2Ob、Fg、弦、通奏低音〕
組曲第3番ニ長調BWV1068〔2Ob、Fg、3Trp、timp、弦、通奏低音]
フライブルク・バロック・オーケストラ

録音:2011年1,2月/パウルス・ザール(フライブルク)
2012年1月、いよいよ待望の初来日となる、フライブルク・バロック・オーケストラによる最新盤、日本での演奏曲目でもある「管弦楽組曲」堂々の登場。古楽器オーケストラの雄、とよく言われますが、まさにその証明となる圧巻の出来栄えです。どのパートもとにかくうまいですが、特に印象に残るのが通奏低音を奏でるファゴットの超絶技巧。また、オーボエなどの木管群の細やかで雄弁なテクニックには圧倒されます。第3番では、トランペットとティンパニが加えられてより華やかな響きになった稿が採用されています。有名なアリア(「G線上のアリア」)では、メロディーが美しいのは言うまでもありませんが、通奏低音を奏でる低弦の歩みの確かさが心にしみます。続くガヴォットの、エレガントでありながらきびきびした動きとのコントラストも心憎いまでに完璧です。細かなところまで完璧、曲の内部の細やかな旋律や、曲同士のコントラストも絶妙で、まさに望みうる最高の管弦楽組曲の登場といえるでしょう。 (Ki)

HMC-902115(2CD)
シューベルト:ピアノ・ソナタ集
ピアノ・ソナタ第17番.ハ長調Op.53/D850
ピアノ・ソナタ第18番.ト長調Op.78/D894「幻想」
即興曲Op.90/D899
ピアノ・ソナタ第15番「レリーク」
3つのピアノ曲D946
ポール・ルイス(P)

録音:2011年3,6月/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
王子ホールでの「シューベルト・チクルス」も好評のポール・ルイス最新盤はシューベルトの作品集。シューベルトの天才の煌めきに満ちた4つの即興曲(Op.90)は、ピアノ学習者でも演奏することもある作品ですが、うつろう気分や繊細なデュナーミクなど、ポール・ルイスは意のままに演奏しています。ト長調「幻想ソナタ」での極美の弱音は聴き手を別世界へといざないます。一音一音がピアノの芯を見事にとらえていて、「他のどの楽器よりも、ピアノという楽器に対して、自分の身体が実にしっくりとなじむ」と語る通り、楽器を完璧にコトロールするポール・ルイスの演奏は、ピアノという楽器の存在を忘れさせ、そこにシューベルトがいるような、そんな気分にさせられます。どこまでも優しく、しかし雄弁に語りかける、ポール・ルイスの類を見ないシューベルト作品集です。 (Ki)
HMC-902118
バッハ:無伴奏フルート・ソナタ.イ短調BWV.1013
ベリオ:セクエンツァ第7
ブリテン:オヴィディウスによる6つの変容Op.49
カーター:インナーソング
C.P.E.バッハ:フルート・ソナタ.イ短調Wq.132
セリーヌ・モワネ(Ob)

録音:2011年4-5月、テルデックス・シュトゥーディオ(ベルリン)
秀麗眉目な外見、それにも増して美しいオーボエの音色で欧米を中心に人気沸騰中のオーボエ奏者セリーヌ・モワネが、ついにハルモニアムンディとのコラボレーションを開始!全世界が注目する待望のファーストCDがついにリリースされます!J.S.バッハとC.P.E.バッハのフルート・ソナタに、ベリオとブリテンの現代作品を合わせた意欲的なプログラムとなっており、バロックから現代に至るまで人々を魅了し続けるオーボエという楽器の魅力に迫る1枚となっています。バッハ親子のフルート・ソナタでは田園を思わせる柔らかな音色、ブリテンの作品では抒情に満ちた甘い響きにうっとり。モワネの奏でるオーボエの音色には一切の澱みがなく、どこまでも続いていくかのような息の長いメロディラインの表現力には圧巻。一方、合間に挿入されたベリオ、カーターの作品からはオーボエの新たな表現の可能性が垣間見えます。破裂音のように力強い音の連続、張り詰めた糸のごとく緊張感のある旋律の魅力はバッハやブリテンからは感じられないもの。屈指の難曲ですが、モワネの卓越した演奏技術によって作品の魅力が見事に表現されています。
セリーヌ・モワネは1984年リール(フランス)生まれ。パリ国立高等音楽院でダヴィッド・ヴァルター、モーリス・ブルグらにオーボエ、室内楽を師事しました。同院卒業後、2004、2005年にクラウディオ・アバド率いるグスタフ・マーラー・ユーゲント管で活動。その活躍が認められ、ベルリン・ドイツ交響楽団、北ドイツ放送交響楽団などドイツ各地の名門オーケストラの首席客演奏者に相次いで抜擢されます。2006~2008年までマンハイム国立劇場オーケストラ、2008年以降はドレスデン国立歌劇場で首席オーボエ奏者として活躍。2011年にはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団から招待を受け、現在アジアとオーストリアを回るグランドツアーに参加しています。この他にもソロ奏者、室内楽奏者として世界的に活躍しているモワネ。2013年3月には新日本フィルハーモニー管弦楽団との来日公演が予定されており、今後ますます注目されること必至のアーティストです!(Ki)

HMC-902119(2CD)
スメタナ:歌劇「売られた花嫁」(チェコ語歌唱) ダナ・ブレショヴァー(S マジェンカ)
トマーシュ・ユハース(T イェニーク)
ヨゼフ・ベンツィ(Bs ケツァル)
スヴォタプルク・セム(Br クルシナ)
スタニスラヴァ・イルク(S ルドミラ)
アレシュ・ヴォラーチェク(T ヴァシェク)
ヤロスラフ・ブジェジナ(T サーカス団長)
カテリーナ・クネージコヴァー(S エスメラルダ)
ルチエ・ヒルシェコヴァー(Ms ハータ)
グスターヴ・ベラーチェク(Bs ミーハ)
オンドレイ・ムラーズ(Bs インディアン役のサーカス団員)
マキシム・ドゥセク(BS 第一の子供)
バベッテ・ルスト(S 第二の子供)
イルジー・ビエロフラーヴェク(指)
BBC響、BBCシンガーズ

録音:2011年5月、ロンドン
スメタナのオペラの代表作、「売られた花嫁」の新録音がharmonia mundiから発売です。チェコの名指揮者イルジー・ビエロフラーヴェクが、首席 指揮者を務めるBBC交響楽団を指揮したもの。2011年5月20日にロンドンのバービカンセンターで演奏会形式で上演されており、その際にBBC第 3放送と共同で収録したものです(harmonia mundiのCDにはライブとの表記はなく、また拍手も聞かれないので、総練習を中心とした収録のようで す)。ビエロフラーヴェクといえば、プラハ交響楽団、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団、自ら創設したプラハ・ フィルハーモニア、BBC交響楽団と、名門オーケストラを多数率いてきた名匠。しかも彼はこの10月からチェコ・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮 者に復帰、60代後半を迎えてますますの円熟が期待されています。この新録音は、2006年から首席指揮者を務めるBBC交響楽団との成果が示された すごぶる充実した演奏で、これ見よがしなところは一つもないのに、ボヘミアの旨みがグワッと広がってくる音楽は久しく味わえなかったものでしょう。 ヒロインのマジェンカは、プラハ国民劇場で大活躍しているソプラノ、ダナ・ブレショヴァー。2008年のブルノ歌劇場来日公演でのワーグナー「タンホイ ザー」でエリーザベトを歌って評判になりました。若い頃マジェンカで名声を築いた人だけに、まさにハマリ役。透明感と温かみと強さを兼ね備えた美声 はとても素敵です。イェニークのトマーシュ・ユハースはスロヴァキア生まれのテノール。まだデビューして数年という若手ですが、既にチェコ、スロヴァ キアでは人気の高いテノール。2011年12月、ヤクブ・フルシャが東京都交響楽団を指揮したドヴォルザークのスターバト・マーテルでテノール・ソロを 歌いました。重要な役所である結婚仲介人のケツァルは、スロヴァキアのバス、ヨゼフ・ベンツィ。 驚いたことにチェコ語の「売られた花嫁」の新録音は、1981年のズデニク・コシュラーのSUPRAPHONE録音以来、実に30年ぶり。まさに待望の 新録音です。 (Ki)
HMC-902121
シューベルト:弦楽四重奏曲第10番変ホ長調Op.125/1
弦楽四重奏曲第15番ト長調 Op.161
カザルスQ
【ヴェラ・マルティネス・メーネル(Vn)
アベル・トマース・レアルプ(Vn)
ジョナサン・ブラウン(Va)
アルマウ・トーマス・レアルプ(Vc)】

録音:2011年6月、テルデックス・スタジオ(ベルリン)
1997年の結成以来、若手ながらベテラン顔負けの風格漂う演奏で今最も注目を集める若手アンサンブル団体、カザルス四重奏団によるシューベルト の四重奏曲集。これまでにharmonia mundiレーベルより数々の四重奏曲集をリリースしてきたカザルス四重奏団ですが、シューベルトの四重奏曲を収 録したのは今回が初めて。2011年の来日公演では第13番「ロザムンデ」の名演も話題となっただけに、期待必至の新譜といえましょう!注目の収録内 容は、シューベルトが16歳の頃に作曲した第10番と、亡くなる2年前、最晩年に作曲した第15番。作曲時期も曲調も対照的な2曲だけに、カザル ス四重奏団の多彩な表現力が一層光ります。青年期ならではの瑞々しい旋律が爽やかな第10番では、1stヴァイオリンを担当しているメーネルの清廉な ソロが見事。若手らしい活気あふれる演奏で魅せる第10番から一転、第15番では重々しくも堂々たる演奏で冒頭からぐぐっと引き込まれます。メロディ だけでなく、伴奏隊もアグレッシブ!毅然としたフォルテと抒情的なピアノの鮮やかなコントラストが素晴らしく、全体的にメリハリの利いた演奏といえましょ う。情感豊かながらも一糸乱れぬカザルス四重奏団のアンサンブルは流石の一言。ソリストらの息の合った掛け合いと溌溂とした演奏が圧巻の名盤です! (Ki)
HMC-902122
シューマン:室内楽作品集
ピアノ四重奏曲 変ホ長調 Op.47
ピアノ五重奏曲 変ホ長調 Op.44
アレクサンドル・メルニコフ(P/1875年製ベーゼンドルファー)
エルサレムSQ
【アレクサンドル・パヴロフスキ(Vn)、
セルゲイ・ブレスラー(Vn)、
オリ・カム(Va)、キリル・ズロトニコフ(Vc)】

録音:2011年7月/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
なんとも充実のシューマンの室内楽作品CDがリリースされます。2012年2月に来日し、もの凄いショスタコーヴィチの演奏会と、ファウストとのベートー ヴェン・デュオのコンサートで日本の聴衆の度肝を抜いたメルニコフと、エルサレム弦楽四重奏団(ヴィオラの元メンバー(アミハイ・グロス)が、ベルリン・フィ ル首席ヴィオラ奏者に就任し、離団したため、新たにオリ・カムをヴィオラ奏者メンバーに迎えた新編成)による室内楽の登場。メルニコフが演奏してい るのは、ブラームス作品集(HMC.902086)でも用いた、1875年ベーゼンドルファー製のピアノ。エルサレム弦楽四重奏団の研ぎ澄まされた清冽な音 色で展開されるアンサンブルと、メルニコフのピアノのコンビネーションは絶品です。
ここに収められている室内楽曲は、どちらも1842年、「室内楽の年」(42年6月から43年1月までの比較的集中した時期)に書かれたもの。この 時期、3つの弦楽四重奏曲、そして、ピアノ四重奏曲と五重奏曲が書かれました。溢れるイマジネーションをピアノ・ソロの作品で表現するには「制約が ありすぎる」とクララに語っていたといいます。五重奏は、ワーグナーにも強い影響を与えたと言われています。ベートーヴェン、メンデルスゾーンやシュー ベルトが残した同ジャンルの偉大な作品からエネルギーを得て、自身の創作力を全て注ぎこんだ力作です。四重奏曲終楽章のフィナーレや、五重奏曲の有 名な冒頭での、メルニコフのピアノは圧巻。メルニコフが描く細かな歌いまわしを、エルサレムの面々も見事にキャッチ。親密な雰囲気と、心地よい緊張 感に満ちた稀有な演奏が展開されています。 (Ki)
HMC-902123
カルロ・ジェズアルド(1560?-1613):聖歌集第2巻(1603)
(1)【カンティクル(冒頭)】ミゼレーレ(レスポンソリア1611)
(2)【救済の祈り】ヴィルゴ・ ベネディクタ/オー・オリエンス/オー・ベアタ・マーテル/ヴェルバ・メア/ヴェニ・ クレアトール・スピリトゥス/アヴェ・サンクティッシマ/サナ・メ・ドミネ
(3)【絶望と嘆き】ディシェディテ・ア・メ・オムネス/オー・アニマ・サンクティッシマ/アルデンス・エスト・コル・メウム
(4)【平和と希望】ダ・パーチェム・ドミネ/ネ・デレリンクアス・メ/フランシスカス・ヒュミリス・エト・パウパー/ガウデアムス・オムネス
(5)【賛美と感謝】アドラムス・テ・クリステ/オー・サクルム・コンヴィヴィウム/アド・テ・レヴァヴィ/アスンプタ・エスト・ マリア/ヴェニ・スポンサ・クリスティ/イルミナ・ノス
(6)【カンティクル(終結)】ベネディクトゥス(レスポンソリア1611)
ヴォーカルコンソート・ベルリン
ジェームズ・ウッド(指)
2013年に没後400年を迎えるルネサンスの作曲家カルロ・ジェズアルド。ジェズアルドの生涯は1度目の結婚のスキャンダラスな事件の印象が強い ですが、フェッラーラのエステ家のレオノーラと再婚した2度目の結婚は彼の音楽性に大きな影響を与えています。エステ家には様々な芸術家が出入りし、 華やかな宮廷文化に触れることとなります。 ジェズアルドは亡くなる前の10年間に3つのモテット集を出版しています。1603年に出版された第1巻は5声のためのモテット集、同じく1603年に 出版された第2巻は6、7声のモテット集、そしてジェズアルドの代表作「聖週間のレスポンソリウム」は1611年に発表されています。ここに収録され ている第2巻の一部分は不幸にも失われてしまっており、これまで演奏されることはありませんでした。ジェームズ・ウッド氏は3年間にわたり熱心に研 究を続け、ヴォーカルコンソート・ベルリンによって今回世界初録音することができました。ジェズアルドの作曲技法は大胆な対位法や半音階を駆使し、 かなり高度なものでした。第2巻もジェズアルド独自の音楽手法がふんだんに盛り込まれ、繊細さと熱情が入り混じった魅力的な作品です。(Ki)

HMC-902124
バッハ:無伴奏ソナタ&パルティータ集 VOL.2
ソナタ 第1番 ト短調 BWV 1001
パルティータ 第1番 ロ短調 BWV 1002
ソナタ 第2番 イ短調 BWV 1003
イザベル・ファウスト(Vn)
※ヴァイオリン/1704年製ストラディヴァリス「スリーピング・ビューティー」

録音:2011年 8,9月
イザベル・ファウスト、待望のバッハの完結編の登場です。第1弾となる無伴奏ソナタ&パルティータ集 BWV 1004-1006(HMC 902059)は世界中 で絶賛され、その後も、ブラームス(HMC 902075)の協奏曲と六重奏曲というカップリングで魅せた比類なきアンサンブル、そしてアバド指揮モーツァ ルト管とのベートーヴェン&ベルク協奏曲(HMC 902105)の神がかり的な美しい演奏のディスクで私たちをたのしませてくれました。さらに来日公演も 高評価だっただけに、期待が高まります!
聴き手の耳と心に焼きつく強烈な美しさを放つファウストの音。重力を感じさせない、しかし軽いというわけでは決してない、実に不思議な弓使いから 生み出される彼女の音色は、一度聴いたら忘れられないもの。今回のバッハでも、銘器ストラディヴァリウス「スリーピング・ビューティー」の特徴でも ある美しい音色、彼女自身「レーザーのようにまっすぐで、宙を射る光の線のようにまばゆい」と述べる音色で、聴き手の心にまっすぐに響いてくるバッハ を聴かせてくれます。
ソナタ第1番第1曲アダージョ冒頭の、平衡感覚にすぐれた、持続する緊張感はファウストならでは。ただこの緊張感というのが、聴き手を金縛りに させるような強烈なものとはまた違った、ファウスト独特の不思議な緊張感なのですが、冒頭からファウストの世界にぐいぐい引き込まれてしまいます。パ ルティータ第 1 番 1 曲目のアルマンドは、アルマンドが舞曲であることを痛感させる浮遊感あるリズムに乗って、淡々と奏でられます。4 曲目ドゥーブルの 無窮動では、細かな音符が一部の隙もなく急速にくるくると押し寄せてきて、その遠心力で一種の無重力状態が生じているような、不思議な世界が広がり ます。ソナタ第2番の終曲アレグロでは、ファウストのかっこよさが炸裂しています。イザベル・ファウストという演奏家、そしてこの素晴らしい音色を秘 めた「スリーピング・ビューティー」という楽器、両者が最高の状態で出会い、ただならぬバッハの世界を創りあげています。 (Ki)
HMC-902125
ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲集
第6番 変ホ長調 op.70-2
第7番 「大公」変ロ長調 op.97
アレクサンドル・メルニコフ(フォルテピアノ/Alois Graff, 1828頃(エドウィン・ボインクによる修復、メルニコフ蔵)
イザベル・ファウスト(Vn/1704 年ストラディヴァリウス「スリーピング・ビューティ」)
ジャン=ギアン・ケラス(Vc/Geoffredo Cappa 1696年)

録音:2011年9月/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
今、もっとも世界が注目する音楽家、ヴァイオリン奏者イザベル・ファウスト、チェリストのケラス、ピアニストのメルニコフ。このなんとも豪華な三名 によるベートーヴェンの登場です!このメンバーは、2004年にドヴォルザークのピアノ三重奏曲第4番ホ短調Op.90「ドゥムキー」を録音していますが、 それから時を経て、三人とも深みを増してからの録音とあって、期待が高まるところです。
第6番は、「幽霊」とならんで作品70として出版されたもので、「傑作の森」と称される中期に生み出された作品。ベートーヴェンのピアノ三重奏曲の 中では比較的地味な存在ですが、ベートーヴェン自身が非常に高く評価していた作品で、晴れやかな楽想が印象的な名作です。ファウストのヴァイオリン の伸びやかな音色で聴くメロディがえもいわれぬ美しさ。それをささえるメルニコフの溌剌としたフォルテピアノと、ケラスのハリのある音色が、活き活き と美しいアサンブルを奏でます。
「大公」は歴史上に燦然と輝く名曲にして大曲。冒頭のメルニコフによるひたひたとしたピアノ独奏に、ファウストのまばゆくまっすぐな音色のヴァイオ リンと、ケラスの豊かな響きと推進力のあるチェロが加わると、これから始まる雄大な世界への期待が高まります。三人ともひとつひとつのフレーズを慈し むように、実に細やかに表情づけを施しながら演奏しており、息をのむような美しい瞬間が随所に現れます。それでいて、作品の雄大なスケール感を感じ させる、音楽の広がり具合も見事。奏者の懐の深さゆえの余裕のある出来栄えです。スケルツォでの弾むリズム、緩徐楽章での弦が織り成す美しいレガー トは絶品です。終楽章の華やかなコーダは圧倒的です。室内楽史に燦然と輝く名曲の、決定的な名演がここに新たに誕生しました。 (Ki)
HMC-902126(3CD)
モーツァルト:歌劇「偽の女庭師」 ソフィー・カルトホイザー(S サンドリーナ)
ジェレミー・オヴェンデン(T ベルフィオーレ伯爵)
アレックス・ペンダ(S アルミンダ)
ニコラ・リヴァンク(Br 市長)
マリー=クロード・シャピュイ(Ms 騎士ラミーロ)
スンヘ・イム(S セルペッタ)
ミヒャエル・ナギ(Bs ロベルト)
ルネ・ヤーコプス(指)フライブルク・バロック・オーケストラ

録音:2011年9月/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
ジャケット絵画:ポンパドゥール夫人(「美しい庭師」)(部分)/ヴァン・ロー作(1760年)[プチ・トリアノン蔵]
HMFが誇るルネ・ヤーコプスのモーツァルトのオペラのシリーズ、新刊は「偽の女庭師」です。1775年1月13日にミュンヘンで初演されたオペラブッ ファで、初演時モーツァルトは19歳目前、1774年というと交響曲第28番の頃ですので、既に神童を脱した立派な作曲家に成長していました。物語は、 かつて恋人ヴィオランテに大怪我を負わせて音信不通にしてしまったが今はアルミンダと婚約しているベルフィオーレ伯爵の前に、サンドリーナを騙り庭師と して働くヴィオランテが現れ、周囲を巻き込んで騒動になる、といったお話。モーツァルトはかなり力を入れて作曲し、初演も好評だったことが伝えられて います。この作品はモーツァルトの生前にドイツ語の上演が広まり、そのためオリジナルのイタリア語オペラブッファは20世紀まで埋もれていました。近年、 青年期のモーツァルトの傑作として上演が増えています。
サンドリーナのソフィー・カルトホイザーはベルギー出身のソプラノ。モーツァルト・ソプラノとして活躍しており、2005年に大野和士率いるモネ劇場の 来日公演「ドン・ジョヴァンニ」でゼルリーナを歌っていました。ベルフィオーレ伯爵のジェレミー・オヴェンデンは英国のテノール。バロックから古典派の 声楽作品で活躍しており、ヤーコプスは既にヘンデル「サウル」で彼を起用しています。アルミンダのアレックス・ペンダとは、ヤーコプスが「イドメネオ」 や「ティートの慈悲」などで重用しているアレクサンドラ・ペンダチャンスカのこと。最近、長すぎる名前を短縮するようになったんだそうです。彼女と、こ れもヤーコプスの声楽作品の常連、ソプラノのスンヘ・イム、そして大ベテランのニコラ・リヴァンクなどなど、キャストは充実しています。
「偽の女庭師」は、復活が遅れた経緯から、最近の映像はいくつかあれど、しっかりした録音があまりありません。ヤーコプスの気合の入ったこの新録 音はモーツァルティアン、オペラマニア、どちらからも大歓迎されることでしょう! (Ki)

【版について】
この「偽りの女庭師」は、1775年にミュンヘンで初演(3回上演、うち2度目は短縮版)されたました。その後同じオリジナルのかたちで上演されることはなく、1779年以降、いくつかのカット、レチタティーヴォの語り芝居への変更を施したドイツ語上演が、1780年代後半までひろく行われました。モーツァルトを愛した街、プラハで上演されたのは1796年、モーツァルトの死後のこと。この時に作られた楽譜資料が2つ残されており(Namest、Oels)、このヤーコプス演奏はNam??t版に基本的に準拠しています。このNamest版には、ドイツ語の歌詞とオリジナルのイタリア語の歌詞が併記されており、新モーツァルト全集(NMA)がこのオペラを出版した際の土台となっています(ただしNMAのオーケストレーションはNamest版よりもシンプルな、モーツァルトのオリジナルに近いもの)。このNamest版では、オリジナルのオーケストレーションはかなり大がかりなものへと変更されています。特に顕著なのが、アリアの伴奏で、管楽器パートに著しい充実がみられること。このオーケストレーションの変更を誰が手掛けたのかは不明なのですが、ヤーコプスは、モーツァルトのドン・ジョヴァンニやティートがプラハで初演され、この地から世界に広まったことを例にとり、この「偽りの女庭師」もプラハで上演されてから再び上演される機会が増えたことなどを考慮して、プラハにのこされたNam??t版に基本的に基づいたと語っています。ただし、Namest版でも見られるいくつかのカットは適宜修復を施していること、さらに、録音時にはセリフや歌詞などにも演奏効果などを考えて小さな変更を加えるなど、様々な資料にあたった上で練りあげられた注目の演奏となっています!
HMC-902129
リーム(1952-):7つの情熱(2001-2006)
「ラインの上で」より「アストラリス」(2001)
情熱の断片(1968)
ハンス=クリストフ・ラーデマン(指)
RIAS室内cho

録音:2011年9-11月、イエス・キリスト教会(ベルリン)
今年で生誕60周年を迎える現代作曲家、ヴォルフガング・リーム。非常に多作な作曲家としても有名で、これまでに作曲した数は500を優に超えています。近年は体調不良で活動が危ぶまれた時期もありましたが、2010年には新作オペラを発表するなど、その創作意欲はまだまだ衰えを見せない様子。今後ますますの活躍が期待される現代作曲家の一人です。アニバーサリーを記念した本CDに収録されているのは、受難曲2作と小品「アストラリス」。「アストラリス」は「ラインの上で」という作品から抜粋した小品。音量を最大にしても聞こえないほどの小さな音量から静かに始まり、夜明けの空に光が満ちていくように、壮大な音の世界がゆっくりと広がっていきます。「出来うる限り長く、そして柔らかく」というリームの指示通り、切れ目なく展開されていく様々な音のハーモニーは、我々を瞑想の世界へと誘ってくれます。「7つの受難」は近年の作品で、中世の瞑想の祈りの音楽も思わせる柔らかくも神秘的なハーモニーに満ちた作品。一方の「受難の断片」では、息の長いハーモニーの合間に囁き合うような話し声や叫ぶ声が用いられており、「7つの受難」とはまた違った雰囲気に浸ることができます。それぞれ異なる時期に作曲された2曲の受難曲から、リームの作曲様式の変化も垣間見ることが出来るプログラムといえましょう。ベルリン・フィルの録音会場としても馴染み深いイエス・キリスト教会に、リームの独創的な音響世界が広がります! (Ki)
HMC-902130
シューベルト:歌曲と四重唱曲集
四重唱曲「踊り」D826
4つのリフレインの歌より「見分け」Op.95-1,D866
四重唱曲「人生の喜び(交際上手)D609
「ラクリマス」からの2つの劇唱より「デルフィーネの歌」 D857-1
歌びとD149
三重唱曲「婚礼の焼肉」D930
二重唱曲「光と愛」D352
四重唱曲「祝いの日」D763
四重唱曲「嵐の中の神」D985
全能の神D852
四重唱曲「無限なるものへの讃歌」D232
埋葬の歌D168
四重唱曲「祈り」D815
マリス・ペーターゼン(S)
アンケ・ヴォンドゥング(Ms)
ウェルナー・ギューラ(T)
コンラッド・ジャーノット(Bs)
クリストフ・ベルナー(フォルテピアノ/Ronisch)

録音:2011年10月
シューベルトが親しい友人たちと開いた私的な演奏会「シューベルティアーデ」。そのようなサロンのなかで歌われていたシューベルトの歌曲そして重唱 曲を集めたアルバム。ウェルナー・ギューラやマリス・ペーターゼンなどシューベルトに深い愛着を持つ歌手らが繰り広げる極上のアンサンブルを楽しむ ことができます。三重唱曲の「婚礼の焼肉」は、ペーターゼンとギューラの生き生きとした絡み合いが愉しく、コミカルな掛け合いがオペラのよう。結婚 式を翌日に控えたカップルが式の料理のために密かに兎狩りをし、猟師に見つかり脅され、結果的にはその猟師も式に招待し焼肉を用意してくれるという 内容。また「無限なるものへの讃歌」などの四重唱では見事な堅密なアンサンブルで聴かせてくれます。 (Ki)
HMC-902132
J.P.グラウン:序曲とアレグロ.ニ短調
ニシェルマン:チェンバロのための協奏曲ハ短調
フリードリヒ2世:フルートと通奏低音のためのソナタ「ポツダムのために」ハ短調
グラウン:ヴィオラ・ダ・ガンバのためのソナタ イ短調
C.P.E.バッハ:シンフォニア.ト長調 Wq.173
ベルリン古楽アカデミー

録音:2011年11月、ベルリン・テルデックス・シュトゥーディオ(セッション)
2012年、生誕300年となるフリードリヒ大王を記念し、ベルリン古楽アカデミーがフリードリヒ大王と、彼に仕えた宮廷音楽家たちの作品集をリリース!音楽を非常に好み、自身も優れたフルート奏者であったフリードリヒ大王。18世紀ベルリンの音楽史を語る上で彼の存在は欠かせません。フリードリヒ大王のフルート・ソナタは優雅かつ繊細な旋律が美しい作品。一大軍事国家を作り上げた啓蒙君主のイメージとはまた違った大王の一面を垣間見ることが出来ましょう。また、本CDではフリードリヒ大王の作品に加え、グラウン、ニシェルマン、C.P.E.バッハら大王に仕えた宮廷音楽家たちの作品も収録。ニシェルマンは現代では殆ど忘れられてしまった作曲家ですが、今回収録されたチェンバロ協奏曲は隠れた名曲と言えるかもしれません。弦楽器との繊細かつ抒情的な掛け合いが非常に美しい作品です。全体的に気品あふれる旋律と、軽やかながらも重厚なハーモニーを持つ作品が多く収録された本CD、大王の宮廷に響いていたであろう当時の音楽に思いを馳せる1枚となっています。
演奏するベルリン古楽アカデミーは今年30周年を迎える名門。古楽、古典音楽を主なレパートリーとし、日本においても高い評価を受ける実力派古楽団体です。12月には来日も予定されており、今後ますますの注目が期待されましょう。これまで多くの名演を世に生み出してきた彼らが、今回も卓越した演奏技術で心地よい古楽の響きを堪能させてくれます。フルートの軽やかな高音の響きから、ヴィオラ・ダ・ガンバの深みたっぷりの低音まで、18世紀宮廷音楽の魅力にたっぷりと浸ることが出来るおすすめ盤です! (Ki)
HMC-902133
ファリャ:7つのスペイン民謡
 3つの歌/ロンダのパン
 お前の黒い瞳
ロドリーゴ:3つのスペインの歌
 4つのユダヤ人の歌
 恋する羊飼いの歌
 かっこう鳥の歌/小さなグラス
 4つの愛のマドリガル
グラナドス:昔風のスペインの歌曲集
ベルナルダ・フィンク(Ms)
アントニー・シピリ(P)

録音:2011年11月
ヨーロッパで圧倒的な人気を誇るメゾ・ソプラノのベルナルダ・フィンクによるスペイン歌曲集。ここに収録されている作品は1902年から1965年に かけて作曲され、20世紀スペイン歌曲の発展とフランス歌曲への傾倒が表れています。ファリャの名曲「7つのスペイン民謡」とロドリーゴの「3つのス ペインの歌」や「4つのユダヤ人の歌」のエレガントな珠玉の名品などスペイン旅情を感じることの出来る内容です。 (Ki)
HMC-902134
ハンス・アイスラー(1898-1962):厳粛な歌〜Brと器楽アンサンブルのための*
ホテルの部屋1942号/脱出
卓上ラジオに/早朝に/春
食糧貯蔵庫1942/帰郷
亡命の風景/そして暗い時は
今も続く/自殺について
失恋/復活祭の日曜日
庭園の撒水/サクランボ泥棒
お金の活力の歌
水車のバラード/連帯の歌
ピアノ・ソナタOp.1
マティアス・ゲルネ(Br)、
トーマス・ラルヒャー(P)、
アンサンブル・レゾナンツ*

録音:2012年9月、2013年2,3月/テルデックス・スタジオ・ベルリン
シューベルトの歌曲で孤高の境地を示すマティアス・ゲルネですが、アイスラーも得意としていて、1998年にはユニバーサル・レーベルから「ハリウッ ド・ソングブック」をリリースしています。それから15年を経て第2弾に挑戦。重複している曲も多いものの、ゲルネの成長ぶりが如実に現れていてむ しろ大歓迎と申せましょう。誰にも真似できない見事さで、アイスラー芸術の理想像を作りあげています。アイスラーは当初シェーンベルクに師事し、初期には新ウィーン楽派的な作風を示しました。しかし疑念を憶え、師と決別後はブレヒトと組み、左翼的 な作品を発表して才を現しました。しかしナチスの台頭で活動を禁じられ1938年に亡命、その地でも共産主義者ということで1948年に国外追放となっ ています。戦後は東独に戻り、同国国歌の作曲者としても知られています。
当アルバムはアイスラー最初期1922-3年の「ピアノ・ソナタ」、創作の絶頂期のブレヒト・ソング、1962年、死の数週間前の絶筆「厳粛な歌」まで 彼の全創作期を俯瞰できます。アイスラー音楽の魅力はポピュラー・ソングばりのキャッチーなメロディと、軍歌のようなカッコよさで、ゲルネにぴったり。 ハイネの詩による「失恋」での叙情詩人ぶり、アイスラー作品でも特に有名な「連帯の歌」(ブレヒト詩)の颯爽とした姿はまるでポップ歌手のようです。 ゲルネの新しい魅力を発見できます。
さらにトーマス・ラルヒャーのピアノも透明な味わいが独特。これまで聴く機会の少なかった力作「ピアノ・ソナタ」の素晴らしさを発見させてくれます。 (Ki)

HMC-902135
(1CD+DVD)
ナポリのフォリア〜1725年
ドメニコ・サッロ(1679-1744):協奏曲第11番 イ短調
A.スカルラッティ:パルティータ「スペインのフォリア」に基づく即興
ニコラ・フィオレンツァ(1700(ca.)-1764):交響曲イ短調
D・スカルラッティ:交響曲第1番 イ長調
フランチェスコ・バルベッラ(1692-1732):協奏曲第3番 ハ長調
フランチェスコ・マンチーニ(1672-1737):ソナタ第11番 ト短調
レオナルド・レオ(1694-1744):協奏曲 ト長調
モーリス・シュテーガー(リコーダー)
フィオレンツァ・デ・ドナティス、アンドレア・ロニョーニ、アナイ・チェン(Vn)
マルギット・ウーベルラッカー(プサルテリウム)
北谷直樹(チェンバロ、オルガン)ほか

録音:2011年11月
1971年スイスのヴィンタール生まれ、リコーダーの天才モーリス・シュテーガーの最新盤。シュテーガーは、チューリッヒ音楽大学にてパドロ・メメ スドルフとケース・ブッケに、シュトゥットガルトではマルクス・リードに師事し、1995年にソリスト・ディプロマ “With Highest Honors” を、2002 年にはカラヤン賞を受賞するなど、輝かしい経歴を遺しています。ウィグモアホール、ゲヴァントハウス、コンセルトヘボウなどで演奏会を重ねているほか、 ベルリン古楽アカデミーなどの古楽アンサンブルやモダン・オーケストラとも共演。来日演奏も行っており、その技量と、舞台を縦横無尽に駆け回って演 奏するパワー溢れるパフォーマンスで聴衆を魅了しました。
なんといっても光るのが非常にダイナミックかつ華麗な音楽!リコーダーという小さな楽器からこんなにも様々な音色と音型が飛び出してくるとは、とた だただ圧倒されます。バックで支えるアンサンブルのメンバーも、シュテーガーと共演も多い北谷直樹(チェンバロ&オルガン)をはじめ、ツワモノぞろい。 シュテーガーのめまぐるしく変わる表情に負けじとアグレッシブな音楽が展開されています!
タイトルにある1725年は、フリードリヒ大王のフルート教師を務めたことでも歴史にその名を刻む名フルート奏者クヴァンツが、A.スカルラッティに会 うためにナポリを訪れた年。クヴァンツは1月から3月までナポリに滞在、フルート(リコーダー)の魅力をナポリの人々に広めるべく努めました。1725 年以前、ナポリでは声楽作品が非常に盛んで、リコーダー音楽はそれほど多く残されていませんが、この1725年を境に、リコーダー音楽も多く書かれ るようになりました。これは、クヴァンツのナポリ訪問が大きなきっかけになったと考えられます。このCDに収録されている楽曲も、1725年前後の楽 譜に基づいています。リコーダーという楽器の魅力を、歴史的にも興味深い切り口で鮮やかに提示してくれている力作です。ボーナスDVDには、演奏風 景や、シュテーガーがイタリアにおけるリコーダー音楽に語ったインタビュー映像が収録されています。 (Ki)
HMC-902136(2CD)
シューベルト:ピアノ・ソナタ集
幻想曲「さすらい人」D.760
即興曲集op.142
ピアノ・ソナタ第16番イ短調op.42
楽興の詩op.94
アレグレット.ハ短調 D.915
ポール・ルイス(P)

録音:2012年2月
ブレンデルの愛弟子であり、次代巨匠の強力候補として高い注目を集めているイギリスの名手ポール・ルイスによるシューベルトのピアノ・ソナタ集!銀 座の王子ホールで2011年より行っている好評のシューベルト・チクルスが2013年2月にいよいよ最終公演を迎えるのを前に、注目必至のアルバムと いえましょう。巨匠ブレンデルの流れをくむルイスのシューベルトは、早くも「世界最高のシューベルト弾き」との声も高いほどの素晴らしさ。柔らかく均 質なレガート奏法、聴く人の内面を深く穿つ弱音の響き……透明感のあるピアノの優しい音色とともに、一人真摯に聞き入るアルバムに仕上がっています。 ピアノ・ソナタ第19番〜第21番(HMC 901800)、第15番・第17番・第18番(HMC902115)に引き続く今回は、ピアノ・ソナタの第16番ほか、 さすらい人幻想曲や楽興の詩など、これまでの来日公演でも絶賛された作品の数々を収録。メジャーな大作と共に、演奏される機会が少なめな小品アレ グレット(ハ短調)を組み込んでいるあたり、ルイスのこだわりが感じられるよう。ピアノの芯をとらえた強音と弱音の自然なコントラストから生まれる絶 妙な静寂が美しく、明朗と憂愁のうつろいも秀逸な表現力にしっとりと聴き入ります。シューベルトファンの方は是非にも聞き逃せない名盤といえましょう。 2013年2月に行われるシューベルト・チクルス最終公演では、最晩年のソナタ3作を予定しているルイス。今後も注目必至のアーティストです! (Ki)

HMC-902138
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ集〜Moto perpetuo
第12番変イ長調「葬送ソナタ」Op.26
第22番ヘ長調Op.54
第17番ニ短調「テンペスト」Op.31-2
第27番ホ短調Op.90
ハヴィエル・ペリアネス(P)

録音:2011年12月、テルデックススタジオ(ベルリン)
バレンボイムやハーディング、メータといった巨匠たちと次々共演を果たし、今や母国スペインだけに収まらない世界的な注目を集める若手ピアニスト、 ハヴィエル・ペリアネス。ファリャやモンポウなど故郷スペインの作曲家に焦点を当てた意欲的なアルバムを相次いでリリースしてきたペリアネスですが、 今回の新譜で収録したのはベートーヴェン!2007年の初来日公演でベートーヴェンを演奏し、高い評価を得たペリアヌスだけに、期待必至の新譜とい えましょう。ペリアネスの演奏の持ち味といえばやはり哀愁と翳りを含んだ弱音の流麗な響き。シューベルトのピアノ作品集(HMI 987080)でも魅せてく れた極上のピアニッシモは今回も健在です。えもいわれぬ深みを湛えたピアニッシモの音色に、耳だけでなく心まで吸い寄せられてしまいます。いずれの 作品も、是非とも周りの音が聞こえない静かな環境でじっくりと聴き入って頂きたいほど。特に第12番「葬送ソナタ」の第3楽章、そして「テンペスト」 の第3楽章はペリアネスの持ち味炸裂の美しさです。2009年の来日以降、ほぼ毎年日本で公演を行っているペリアネス。次の来日も待ち遠しく、今後 の活躍に注目必至のアーティストです。
このディスクにはMoto perpetuo(常動曲)という副題がつけられていますが、ここに収録されたソナタはどれも終楽章が常動曲のスタイルで書かれ たもの。といっても、「テンペスト」のように非常に速い動きのものもあれば、Op.90の終楽章(第2楽章)のようにゆったりとした流れの中での隠れた 無窮動など、そのスタイルは様々。単なる急速な動きというだけでなく、疾走する音符に、様々な感情の起伏をも巧みに盛り込んだベートーヴェンの手腕に、 あらためて感嘆する思いの 1 枚です。 (Ki)
HMC-902139(2CD)
シューベルト歌曲集第6集
「白鳥の歌」D.957(「秋」D.945追補版)
ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調D.960
マティアス・ゲルネ(Br)
クリストフ・エッシェンバッハ(P)

録音:2010年2月、2011年1月、ベルリン
バリトン界屈指のリート歌手ゲルネと豪華な伴奏陣とのアンサンブルが好評のシューベルト・エディション、待望の新譜!2007年より収録が開始された本シリーズも、今回の第6集を以て完結となります。伴奏者には第3集(HMC 901995)でも強烈な存在感を放っていた名匠エッシェンバッハが満を持しての再登場!第3集でも好評だった個性派二人のアンサンブルは今回も聴き応え十分。軽快な「春のあこがれ」、重々しくも美しい「海辺で」など、様々な曲調の歌曲が一つに詰まった「白鳥の歌」では、ゲルネの巧みな表現力と艶やかな歌声に圧倒されます。特に「海辺で」や「遠い国で」などでは、重めのテンポでたっぷりと美声を堪能できます。今回はさらに、エッシェンバッハによるピアノ・ソナタ第21番も収録。49分を越える壮大な演奏で、エッシェンバッハの思い入れたっぷりです。知的個性派二人による名演でシューベルト最晩年の傑作の数々を堪能できる、シリーズを締めくくるにふさわしい名盤といえましょう! (Ki)

HMC-902141
シューベルト:歌曲集第7集〜「魔王」
夕映えの中でD.799
さすらい人D.493
夜咲きすみれD.752/森にてD.834
ノルマンの歌D.846
精霊の踊りD.116
宝堀り人の願いD.761
月に寄せてD.259/魔王D.328
湖のほとりでD.746/アリンデD.904
反映D.949/鱒D.550/流れD.693
夕焼けD.690/嘆きD.415/川D.565
漁夫の歌D.881/
ブルックの丘にてD.853
マティアス・ゲルネ(Bs)
アンドレアス・ヘフリガー(P)

録音:2012年1月、ベルリン
現代最高のリート歌手の一人マティアス・ゲルネによるシューベルト・エディションの第7弾。 今回は「魔王」「鱒」を含む内容で、ゲルネの艶やかな声と巧みな表現力が十二分に発揮された1枚です。冒頭の「夕映えの中で」は静かに美しく心に 響く美声を聴かせ、「魔王」では魂のこもった歌唱と情感溢れる表現力で圧倒し、懐の深さを感じる味わい豊かな歌声で聴かせる「鱒」など、シューベル トを歌い込んできたゲルネならではの表現力を堪能できます。 また豪華な伴奏陣が話題となっているこのシリーズ、このアルバムではアンドレアス・ヘフリガーが担当。スイスの名門音楽一家に生まれ、世界の名立た るオーケストラと共演しソリストとしてはもちろん、タカーチQや東京クヮルテット、そして彼の妻でフルート奏者のマリーナ・ピッチニーニなど室内楽方 面でも多数共演し、その実力は高く評価されています。 (Ki)
HMC-902142
ショスタコーヴィチ:チェロ作品集
チェロ協奏曲第1番変ホ長調Op.107
チェロとピアノのためのソナタ ニ短調Op.40
チェロとピアノのためのモデラート
エマニュエル・ベルトラン(Vc)
スカル・アモワイヤル(P)
パスカル・ロフェ(指)BBCウェールズSO

録音:2012年1月BBCホディノット・ホール、2012年3月テルデックス・スタジオ・ベルリン
フランスの女流チェリスト、エマニュエル・ベルトランによるショスタコーヴィチのチェロ作品集。天才ロストロポーヴィチのために作曲され、凄まじい 高度なテクニックを必要とするチェロ協奏曲第1番。彼女は驚くべき緊張感で見事この難曲を構築しています。また情感溢れる旋律がロマン的なチェロ・ ソナタ。哀愁たっぷりのベルトランの演奏で濃厚に聴かせます。チェロのためのモデラートは抒情的で感傷的な短い曲で、ショスタコーヴィチの死後に手 稿が発見されチェロ・ソナタと同時期に書かれたとみられています。ベルトランのテクニックが惜しげもなく披露され、また濃厚な音色が印象的なアルバム となっています。 (Ki)
HMC-902143
…pour passer la melancolie
フローベルガー:組曲第30番イ短調 
ダングルベール:「オルガンのための種々のフーガ」〜基礎のフーガ.イ短調
J.C.F.フィッシャー:「音楽のパルナッソス山」
 組曲「ウラニア」ニ短調〜トッカータ/パッサカリア
L・クープラン:組曲ヘ長調 
ダングルベール:「クラヴサン小品集」〜プレリュード/シャンボニエール氏のトンボー/シャコンヌ.ロンドー.イ長調 
J.C.F.フィッシャー:「音楽のアリアドネ」〜リチェルカーレ「イエスが十字架にかけられしとき」
クレランボー:「クラヴサン曲集第1巻」〜組曲ハ短調
ムッファト:「オルガン音楽の練習」〜パッサカリア.ト短調
フローベルガー:皇帝フェルディナント4世陛下の悲しい死に寄せる哀悼歌
アンドレアス・シュタイアー(Cemb.)
【使用楽器:17世紀末フランス製クラヴサン“Anonyme Collesse”(2000-2004年、ロラン・ソマニャック)】

録音:2012年2月、テルデックス・スタジオ(ベルリン)
鍵盤奏者として確固たる地位を築く名手、アンドレアス・シュタイアー待望の新譜!2012年にリリースされたベートーヴェンの「ディアベッリ変奏曲(HMC 902091)」での名演も記憶に新しいシュタイアーですが、今回はチェンバロ・ファン必見のオール・チェンバロ・プログラム。17世紀のフランス&ドイツ・ バロックの鍵盤作品を対象に、特にトンボーや哀悼歌など「憂鬱(メランコリア)」あふれる作品に焦点を当てたアルバムとなっています。近年はより深み のある音色と表現に磨きをかけてきているシュタイアー。本アルバムでも期待を裏切らぬ素晴らしい演奏で魅せてくれます。
今回のプログラムについて、「『トンボー』や『嘆き』はフランスのリュート音楽において典型的な様式ですが、クラヴサン奏者のレパートリーとしても等 しく重要なのです」と語ったシュタイアー。フローベルガーやダングルベールといった初期バロックの作品から、クレランボーやムッファトなどの後期バロッ ク作品に至るまで幅広く収録しており、たっぷりとバロック・メランコリーを堪能するアルバムに仕上がっています。フィッシャーのリチェルカーレ「イエス が十字架にかけられしとき」やムッファトの「パッサカリア」など、オルガン作品をチェンバロで演奏しているところにも注目されましょう。
当時のヨーロッパにおいては、「憂鬱」という言葉には「瞑想」のイメージが多く含まれていたそうで、本アルバムに収録されている作品も、全体的に「瞑想」 という言葉がしっくりくるような落ち着いた曲調の作品が目立ちます。とはいえ、決して暗く沈みこんだ雰囲気に徹することがないのは、シュタイアーの緩 急鮮やかな表現力が成せる業。音の響きの重みはそのままに、ドイツとフランスそれぞれの響きをしっかりと表現し分けているところも名手の面目躍如と いったところでしょうか。バッハの「ゴルトベルク変奏曲(HMC 902058)」でも絶賛された、明瞭な音捌きと圧倒的な響きの厚みは今回も健在。まさ に骨太の演奏に定評のあるシュタイアーの魅力の真髄に聴き入るにぴったりのアルバムです! (Ki)
HMC-902144
ハイドン:スコットランド歌曲集
リー・リグ(The Lea-Rig)Hob.XXXIa:31bis
モラグ(Morag)Hob.XXXIa:143bis
眠っているの、それとも起きているの?(Sleep’st thou, or wak’st thou)Hob.XXXIa:157
おおかしこき勇敢なウィリー(O wise and valiant Willy)Hob.XXXIa:227
三重奏曲 ハ短調 Hob.XV:27よりアレグロ
それは暗い真夜中のときだった(Twas at the hour of dark midnight)Hob.XXXIa:31bis
Jenny’s Bawbee Hob.XXXIa:252
メリーの夢(Mary’s Dream)Hob.XXXIa:1bis
三重奏曲 ハ短調 Hob.XV:27よりアンダンテ/夜に喪服を着て(The night her silent sable wore)Hob.XXXIa:219bis
ウィリアムとマーガレット(Willian and Margaret)Hob.XXXIa:153
ベッシー・ベルとメリー・グレイ(Messy Bell and Mary Gray)Hob.XXXIa:38
三重奏曲 ハ短調 Hob.XV27よりプレスト
とある小娘がいた(There was a lass)Hob.XXXIa:4bis
孤立した谷(Highland Air: The Lone Vale)Hob.XXXIa/
彼女は私の恋人だがまだ小娘だ(My Love she’s but a lassie yet)Hob.XXXIa:194
ヴェルナー・ギューラ(T)
クリストフ・ベルナー(フォルテピアノCollard&Collard)
ユリア・シュレーダー(Vn)
ロエル・ディールティエンス(Vc)

録音:2012年 3月、ライトシュターデル(ノイマルクト)
ハイドンは、スコットランドの伝統的なメロディ(「エア」と呼ばれる)を数多く編曲しました(約375曲)。新しい伴奏や、時によってはオブリガート・ヴァ イオリン、通奏低音などを加えたかたちで編曲しています。どれもがハイドンらしいウィットにとんだものですが、その多くは演奏される機会に恵まれない ものとなっています。
ハイドンは、1791から1795年にかけて2度イギリスを訪れており、交響曲「ロンドン・セット」などの傑作を書いたわけですが、このころにスコッ トランドの伝統的なエアにも出会ったと考えられます(スコットランドの伝統的な音楽には、古くはパーセルやC.P.E.バッハも影響を受けており、特有の リズムや旋律を取り入れた作品を残しています)。はじめの100曲は当時深刻な経済危機にあった印刷会社を助けるために無料で提供、1792年に出版 されました。この盤におさめられているのは、そのあと、1800-1804年にかけて手がけられた、より意欲的な編曲コレクションからのもの。この編曲の 大部分を依頼したのはジョージ・トムソン(1757-1841)。アマチュア音楽家で、退職したあとはスコットランドのエアの楽譜を出版していた人物。ハイ ドンは四季などを作曲していたころで、まだまだ彼の書く力も権力もピークにあったころ。ハイドンはそれぞれのエアを腕によりをかけて編曲しています。 なお、エアから歌曲へと編曲される場合、その歌詞の内容も変えられることが一般的でしたが、ハイドンは依頼されたときにそれぞれのエアにどのような 新しい歌詞がつけられるかわからないまま作曲したものもあったそうですが、こうした歌曲の歌詞は、良家のサロンで演奏されるにふさわしい適度にセン チメンタルな内容のものが多いため、特に問題はなかったと考えられます。古くから多くの作曲家たちを魅了したスコットランドの伝統的な旋律を、ハイド ン流の楽しいしかけいっぱいの編曲でたのしめる1枚です。 (Ki)
HMC-902145
J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲集
2つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調BWV1043
ヴァイオリン協奏曲ホ長調(第2番)BWV1042、
ヴァイオリン協奏曲イ短調(第1番)BWV1041
3つのヴァイオリンのための協奏曲ニ長調BWV1064R*
フライブルク・バロック・オーケストラ
ぺトラ・ミュレヤンス(Vn、指)
ゴットフリード・フォン・デア・ゴルツ(Vn,指)
アンヌ・カタリーナ・シュライバー(Vn)*

録音:2012年4月フライブルク、パウルス・ザール
フライブルク・バロック・オーケストラによる最新盤はバッハのヴァイオリン協奏曲集。 バッハはヴァイオリンによる協奏曲を3曲残しており、ここではそれに加えてチェンバロ協奏曲から編曲した合計4曲が収録されています。第1番の協奏 曲は威厳に満ちた音楽で宗教曲のような崇高さを感じられる曲。第2番は対照的に明るい曲調で愉しさに溢れています。そして2つのヴァイオリンのため の協奏曲は、対位法を駆使した2つのヴァイオリンと合奏の3者の掛け合いが魅力的な作品です。フライブルク・バロック・オーケストラの演奏は、バッ ハの溌剌としたリズムや楽器間の精緻なアンサンブルが見事で、特に緩徐楽章は、伸び伸びと表現され軽やかに愉しげに演奏されています。フライブルク・ バロック・オーケストラのヴァイオリンの名手たちの鮮やかな技巧が冴え、バッハの音楽と向き合った充実した演奏を聴かせてくれる1枚です。 (Ki)

HMC-902146
バルトーク:ヴァイオリン協奏曲集
ヴァイオリン協奏曲第1番 Sz36(遺作)
ヴァイオリン協奏曲第2番 Sz112
イザベル・ファウスト(Vn/1704年製スリーピング・ビューティ(ストラディヴァリウス))
ダニエル・ハーディング(指)
スウェーデンRSO

録音:2012年4月/ベルヴァルトホール(ストックホルム)
人気・実力とも急上昇中のヴァイオリニスト、イザベル・ファウストの新譜の登場!ブラームスの協奏曲でもファウストとの素晴しいアンサンブルで魅せ てくれたハーディングの(指)オーケストラは、ハーディングが音楽監督を務めているスウェーデン放送交響楽団という最強の布陣による、バルトークのヴァ イオリン協奏曲集です。
バルトークは、ファウストの魅力が炸裂する作曲家の一人といえるでしょう。ファウストの衝撃のデビュー盤は、バルトークの作品集でした【HMG 508334(2CD)の「バルトーク:無伴奏ヴァイオリン・ソナタSz.117/ヴァイオリン・ソナタ第1番(ピアノ:エヴァ・クピーク)、1996年収録」】。この盤は、 新人としては異例の「グラモフォン」エディターズ・チョイス、97年度グラモフォン賞に輝くなど、世界の耳を驚かせた衝撃の名演。デビュー当時から格 別なものがあるファウストのバルトークということで、期待が高まります。
第1番は、バルトークが26歳の頃に書かれたもの。当時熱い思いを寄せた女性ヴァイオリニスト、シュテフィ・ガイエルに献呈されましたが、一度も 演奏されないままに、彼女もバルトークの死後10年ほどでこの世を去ってしまい、ふたりの死後しばらくしてからこの作品の存在が知られることとなった、 遺作です。ファウストはこの録音にあたり、草稿など様々な資料にあたり、バルトーク自身による書きこみなどを発見。バルトークの思いを可能な限り汲 んだ力演を聴かせています。冒頭の長七の和音を静かに上行する4つの音からなる音型は、シュテフィ・ガイエルをあらわすモティーフ。ファウストが奏 でる内省的な音色から、一気に世界に引き込まれます。ハーディング率いるオーケストラとのアンサンブルも緊張感に満ち、見事。第2楽章のゆるやかに 上下行をくりかえす旋律を奏でるオーケストラの微妙な揺れと、ファウストが奏でる旋律が絶妙に融けあう様は息をのむほど美しく、官能的ですらあります。 終盤で聴かれるドイツ民謡の引用は、バルトークがこの作品を書いた1907年の夏、ガイエルと二人で休暇を共に過ごした時に聴いたもの。しかしつか の間の平穏な雰囲気は霧散し、最後は緊張感のあるクライマックスを迎えます。この作品が完成した2日後、二人の関係は終わりました。にも関わらず バルトークはこの作品を彼女に献呈、作品ページ冒頭には、別れの挨拶が、そして最後には哀しみのメッセージが書かれています。こうした作品成立の背 景を考えながら聴くと、また一層の味わいがあります。(なお、ライナーノートはファウスト自身の筆によるもので、曲の背景やファウストが見つけた事実 などが述べられており、実に興味深い内容となっています)
第2番はバルトークの中期、最も創作的に充実していた時期に書かれたもの。ハンガリー民謡的な旋律、抒情的な旋律、五音音階から十二音技法、 さらには四分音まであらわれる、多種多様の素材が見事に融合・構築され、高度の集中を要求するこの作品には、バルトークのすべてが詰まっていると いっても過言ではないでしょう。激しいクライマックスで締めくくられる第1楽章、様々に変容する旋律でファウストの美しい音色が官能的に輝く第2楽章、 そして野性味すら感じさせる力強いリズムに満ちた第3楽章まで、緊張感に満ちたファウストのソロと、ハーディング率いるオーケストラとのアンサンブル が見事に弾き切っています。幼いころから室内楽に親しみ、アンサンブル能力にたけたファウストだからこそ実現できる演奏といえるでしょう。 ファウストとハーディングによるバルトーク。今もっとも活躍する音楽家たちによる注目盤です! (Ki)
HMC-902147
モーツァルト:ピアノ協奏曲第17番ト長調K453
ロンド.イ長調K 386
ピアノ協奏曲第22番変ホ長調 K482
クリスティアン・ベザイデンホウト(フォルテピアノ/ポール・マクナルティ、ディヴィソフ、チェコ共和国、2009年/Anton Walter & Sohn、ウィーン、1805モデル)
フライブルク・バロックO

録音:2012年5月、ブライブルク、アンサンブルハウス
フォルテピアノの申し子、天才ベザイデンホウトによるモーツァルトのピアノ協奏曲集の登場。ベザイデンホウトといえばこれまでにモーツァルトのソロ作 品集を3枚リリース、そのどれもが高い評価を得ていますが、今回は協奏曲での登場です!管弦楽を務めるのは、古楽界のベルリン・フィルとも称される 名人集団フライブルク・バロック・オーケストラ。ベザイデンホウトの奏でる装飾の巧さ、カデンツァでの神がかり的な美しさと創造性、そしてオーケスト ラとの掛け合いの妙。どこをとっても、うれしい驚きに満ちた素晴らしい1枚の登場です!
ベザイデンホウトが興味深い録音ノートを寄せています。まず、配置に関して、「フォルテピアノが真ん中に、管楽器がピアノ奏者と向かい合うかたちで 一列に、弦楽器はピアノ奏者の背後を含め周りを囲うかたちで配されている。これにより、管楽器の音色が前面に出、さらに、ピアノと管楽器間のより自 然で活き活きとした対話が可能となった。これにより、時折出会うような、いわゆるピアノ前面型の演奏から、E.T.A.ホフマンが言ったような、オブリガート・ ピアノを伴う交響曲になった。ピアノは、ソロと通奏低音の両方を担当し、オーケストラの豪華なサウンドの中を自在に駆け回り、時には前面に出、時に は伴奏にまわる。」と述べており、実に素晴らしいアンサンブルもじっくりたのしめる演奏となっています。また、「モーツァルトが即興の名手であったこと はよく知られており、ピアノ・パートには明らかに装飾をして演奏しなければならない部分があるが、ということは、オーケストラにもやはりそうした部分 があるのでは、と考えた」ということで、今回管楽器奏者の奏でる美しい旋律にもそこかしこに通例とは異なる表現が!時にはセッション中に実際に即興 された部分もあるということ。あまりの美しさに思わずハッとしてしまう瞬間に満ちています。
協奏曲の前奏から思わず胸がときめくようなオーケストラの巧さ、その合間にベザイデンホウトがさりげなく入れる通奏低音のセンスのよさ、もちろんベ ザイデンホウトのソロの素晴らしさ、そこかしこにちりばめられた天才的なひらめきに満ちた装飾音、17番第2楽章での仰天のカデンツァなど、聴きどこ ろの瞬間に満ちた 1 枚です! (Ki)

HMC-902148
エルガー:チェロ協奏曲ホ短調 op.85
ドヴォルザーク:ロンドop.94、
 森の静けさop.68/5
チャイコフスキー:ロココ風の主題による変奏曲(フィッツェンハーゲン版)
ジャン=ギアン・ケラス(Vc)
イルジー・ビエロフラーヴェク(指)
BBC響

録音:2012年5月、ロンドン、BBCマイダ・ヴェール・スタジオ
ケラス待望の新譜は、エルガーの協奏曲!冒頭のカデンツァから、渋みと深みの極み。えぐるような、しかし決して力技にならない、研ぎ澄まされたバラ ンス感覚の音色で切々と歌う旋律は絶品。第2楽章では、ビエロフラーヴェク率いるオーケストラが、ケラスの抒情豊かな表情に見事なまでにぴったりと 寄り添った表情で応えています。ケラスというと、アルカント・カルテットのバルトークで魅せるような、凄味や、カミソリのような切れ味などが思い浮か ぶかもしれませんが、このエルガーは、濃密な歌に満ちていて、ちょっとその表情の豊かさに驚かされるほど。もちろん、いつもの通り、音楽の核心を突 く真摯な演奏を展開していることはいうまでもありません。最後の一音まで聴き逃せないような、迫真の演奏の登場です。続いて収録されているドヴォルザー クも、ノスタルジックで詩情に満ちたロンドと、夢見るような「森の静けさ」など、柔らかな表情で聴かせます。「ロココ主題の変奏曲」は、非常にノーブ ルな音色と明るい歌い回しで、甘く品格ある世界を展開しています。緩徐楽章でのメランコリーもぐっときます。クライマックスでの速いパッセージも、実 に軽やかに完璧に弾きこなしているのはさすがです。
エルガーでの渋みと深み、ドヴォルザークでの詩情、チャイコフスキーでの明るさなど、ケラスのもつ底知れぬ表情表現力とテクニックを究極まで味わう ことのできるプログラミングといえるでしょう。また、ビエロフラーヴェクは、もともとチェロ弾きだったということもあり、ケラスも完全に信頼しているの がわかります。指揮者、ソリスト、オーケストラ全員が、真摯に作品世界に入り込んでいることがわかる力演です。
チャイコフスキーで、ケラスはフィッツェンハーゲン版を採用。この理由について、「チャイコフスキーが、自身のオリジ ナル版の通りにこの作品が演奏されることを意図したとはどうしても考えることができませんでした。もちろんチャイコフス キーは、フィッツェンハーゲンが自作を改訂したことについて非難しましたが、それは、改訂したことにではなく、相談もな しに為されたことに対してだったのではないでしょうか。チャイコフスキーは、この版をレパートリーとして暗黙のうちに認 めていましたし、自身のスケッチ的なオリジナル版を完成させて、フィッツェンハーゲンの版を排除しようとしたりしません でした。また、フィッツェンハーゲンの版は非常に成功していると思うのです。」と語ります。 (Ki)

HMC-902149
プーランク:テネブレの七つの応唱
スターバト・マーテル
キャロリン・サンプソン(S)
カペラ・アムステルダム、
エストニア・フィルハーモニー室内Cho
ダニエル・ロイス(指)

録音:2012年 6月
これは、今までのプーランクのイメージを一新する画期的な一枚!パステル調の色彩とは無縁で、ひんやりした精緻なテクスチュアで一貫。それでいて音楽の芯は熱く、「テネブレ」ではキリストの受難をリアルに表現しようとするニエル・ロイスの強固な意思が隅々まで浸透しています。
第2曲“極悪なる商人ユダは”では、強弱対比が激烈なコントラストを伴って迫り、第3曲では、サンプソンの可憐で切ない美声が心に染み、そこへまた合唱の暗く冷たい響きが覆い被さります。第5曲は、なんという熱いうねり!特にハープが一瞬絡むシーンの求心力は凄まじく、かつてないほど正確な音程を保つ合唱の威力と相まって、この作品の素晴らしさを再認識させてくれます。
「スターバト・マーテル」もかつての曖昧模糊としたニュアンスとは趣きが異なり、ニュアンスを明確に打ち出します。第1曲冒頭の男声の低音はひたひたと恐怖を煽り、響き全体のトーンはあくまでも透徹。特に3:10からの和声の揺らぎをここまで克明に表出した例はかつてなかったのでは?第3曲では合唱の並外れた巧さを唖然。プーランクの合唱曲は、テクスチュアの統一感と音程の正確さが命であることを再認識させれます。明るい曲調の第3曲では、透明感溢れる合唱の魅力が満載。ここまで不純物を排除した演奏は、聴いたことがありません。そして、終曲の神々しさ!華やかなコーダに達しても手綱を緩めず厳しい造型を崩さない点にも、ロイスの力量を感じさせます。このテイストで「グローリア」を演奏したらどうなるか…考えただけでも鳥肌が立ちます。
これは、プーランクの傑作を、モーツァルトの「レクイエム」等と同様に真に世界的な共有財産に格上げさせた名演奏と言っても過言ではいでしょう。【湧々堂】
HMC-902150
ベルク:抒情組曲(弦楽合奏版/全6楽章)【第2,3,4楽章:ベルクによる編曲/第1,5,6楽章:テオ・ファーヴェイによる編曲(※世界初録音)】
シェーンベルク:浄夜 op.4(弦楽合奏版)
ジャン=ギアン・ケラス(Vc)
アンサンブル・レゾナンツ

録音:2013 年 6,9月/ハンブルク、フリードリヒ・エーベルト・ハレ
近年日本での人気も急上昇中のチェリスト、ジャン=ギアン・ケラス。エルガーで魅せた真摯で熱きソロ、アルカント・カルテットの活動も注目されますが、 この度、若き音楽家によって結成されたアンサンブル・レゾナンツをリードしての弦楽合奏作品の録音に臨みました。アンサンブル・レゾナンツは、2002 年にハンブルクで結成され、古の時代の巨匠、そして現代の巨匠による音楽を組み合わせたプログラムで活動を展開し、特に最近は近代の弦楽作品の普 及に取り組んでいます。2010から3年間にわたり、ケラスがアーティスト・イン・レジデンスを務めました(13年からはヴィオラのタベア・ツィンマー マンが後任しています)。この録音は、3年間に渡る彼らのコラボレーションの集大成といえるものとなっており、注目です!
「抒情組曲」は、ベルクが当時激しく恋をしていたハンナ・フックスへの思いが込められたもの(ハンナは人妻でしたが)。ベルクは彼女に「この思い を表現するためには歌が最適だと思うが、言葉は私を裏切りかねない、なので、歌詞‐ ‐ ‐この歌詞は、特定の人、あなただけにしかわからないもの‐ ‐ ‐のない歌になるだろう。弦楽四重奏曲の形をとるだろう!」と述べています。この作品は、Hanna Fuchsの頭文字HとF、Alban Bergの頭文字AとB、 といった要素が鍵となって構築されており、ベルクのハンナ・フックスに対する熱き思いに満ちた音楽となっています。この演奏も、火花が散るような情熱 に満ちています。
抒情組曲はもともとは弦楽四重奏のための作品ですが、出版社からの「弦楽合奏のための編曲を」というリクエストにより、ベルクは2,3,4楽章を弦 楽合奏版に編曲しています。この弦楽オーケストラ版による第2,3,4楽章は、1929年1月31日にホーレンシュタインの指揮で初演され、好評を博しま した。2006年に、オランダの作曲家テオ・ファーヴェイ(b.1959)(ベルク:ピアノ・ソナタを管弦楽のために編曲、シャイー指揮コンセルトヘボウ管が 演奏したことでも話題となりました)が、ベルクが編曲をしなかった第1,5,6楽章を弦楽オーケストラ版に編曲、2010年にケラス率いるアンサンブル・ レゾナンツがフランス初演しました。全曲版としては世界初録音となります。
続く「浄夜」も、マティルデ・フォン・ツェムリンスキーに、オフィシャルにではありませんが献呈されたもの(ツェムリンスキーの妹で、後にシェーン ベルクは彼女と結婚します)。ベルクの「抒情組曲」同様、作曲者の女性に対する「愛」を秘めていると言えるでしょう。デーメルの詩「浄夜」(月下で の男女の語らいの詩)に基づいた、うねる旋律と半音階技法を多用した濃密な和声が織り成す官能性たっぷりの音楽です。ケラス率いる弦楽合奏の演奏は、 表現の振幅も感情の起伏も非常に豊か。名曲にまたひとつ名録音が生まれました。 (Ki)
HMC-902151
メンデルスゾーン:交響曲第2番 変ロ長調「賛歌」op.52(交響曲カンタータ)
第1部 シンフォニア(交響曲)
第2部 カンタータ
パブロ・エラス=カサド(指)
バイエルンRSO&Cho
クリスティアーネ・カルク、
クリスティーナ・ラントシャメル(S)
ミヒャエル・シャーデ(T)

録音:2012年6月フィルハーモニー・アム・ガスタイク(ミュンヘン)
第2番交響曲は1840年6月、印刷 術の発明者グーテンベルク400年記念祭のために作曲されたもので、行事の一環としてバッハゆかりのトーマス教会で初演されました。3楽章のシンフォ ニア(交響曲)と、続く9曲のカンタータ部分から成る、演奏時間約70分の、メンデルスゾーンの才と、神々しいような輝かしさに満ちた大曲です。 冒頭に現れる勝利的な主題が高らかに奏でられ、3楽章の活き活きとした交響曲部分が始まり、その後、合唱を中心としたカンタータ部分へと続きます。 カンタータ部の第7曲コラールの冒頭、八声部無伴奏合唱で演奏されるルター派のコラールは非常に印象的で(バッハもこのコラールを用いてカンター タBWV 9、192を書いています)、管弦楽が加わってますます世界は広がっていきます。終曲は大規模な合唱フーガで、冒頭に現れる勝利的な主題が高 らかに奏でられるなか、感動的なフィナーレを迎えます。エラス=カサドの指揮は非常にふくよかな音作りで、ひとつひとつのフレーズをやわらかに導きます。 それでいて作品のもつ祝祭的な雰囲気をそこなうことは全くありません。歌唱陣も、ヤンソンス率いるバイエルン放送響の第九公演でもソロを務めたカル クとシャーデ、また、シャイーのマタイ受難曲に賛歌しているラントシャメルと充実の顔ぶれ。ドイツ最高峰のオーケストラ、バイエルン放送交響楽団の厚 みとやわらかさを兼ね備えた堅固なアンサンブル、美しい合唱、すべてが混然一体となって、最高のメンデルスゾーンの世界が展開されています。 (Ki)
HMC-902152
ブラームス:弦楽四重奏曲第2番イ短調Op.51-2、
クラリネット五重奏ロ短調Op.115
エルサレムQ
シャロン・カム(Cl)

録音:2012年6月ベルリン
若き実力派カルテット、エルサレム四重奏団によるブラームス。 クラリネット五重奏曲には、イスラエル出身の天才女流クラリネット奏者シャロン・カムと共演しています。ブラームスが名クラリネット奏者リヒャルト・ミュー ルフェルトのために書いた傑作クラリネット五重奏曲。弦楽器とクラリネットの響きが溶け合う、なんとも美しい作品です。エルサレム四重奏団は、卓越し た演奏技術はもちろんのこと、音楽に寄り添った表現に徹した真摯な演奏。そしてシャロン・カムの伸びやかな歌い方、洗練された音色が音楽に深みを 与えています。 またベートーヴェンの影響が強く感じられる弦楽四重奏曲ですが、重厚さと切々とした旋律線がブラームスらしい曲。エルサレム四重奏団は、完璧なテクニッ クと強固なアンサンブルで気合の入った演奏を聴かせてくれます。 (Ki)
HMC-902153
ウォルフガング・リーム(1952-):交響曲「Nahe fern(近くと遠く)」
たそがれは空より降り(ゲーテ詩)*
ジェームズ・ガフィガン(指)ルツェルンSO
ハンス・クリストフ・ベゲマン(Bs)*

録音:2012年6月
戦後ドイツを代表する作曲家ウォルフガング・リーム。多作家として知られる現代作曲家ですが新作は交響曲。ルツェルン交響楽団とルツェルン音楽祭 からの委嘱作品で、2012年8月20日にルツェルン音楽祭で全曲初演されました。 4つの部分からなる作品で、ブラームスの4つの交響曲へのオマージュとなっています。リームはすでにブラームスへのオマージュとして何作品か作曲して おり、ルツェルン音楽祭側がブラームスとリームのチクルスを計画し、作曲を依頼することとになりました。アルバムには、ブラームスも作曲したゲーテの 詩による歌曲「たそがれは空より降り」をリームによるバリトンとオーケストラ伴奏で交響曲第 2 部の前におかれています。 (Ki)

HMC-902154
シューベルト:交響曲第3番ニ長調 D200
交響曲第4番ハ短調 D417「悲劇的」
パブロ・ヘラス=カサド(指)
フライブルク・バロックO

録音:2012年7月、グラナダ、オーディトリウム・マヌエル・デ・ファリャ
注目指揮者パブロ・ヘラス=カサドが、ハルモニアムンディから交響曲CDをリリースします!オーケストラは「古楽界のベルリン・フィル」とも称され るフライブルク・バロック・オーケストラ、そして演目はアンサンブルと繊細な表情づけがものをいうシューベルトの初期交響曲という興味津々の内容です。 パブロ・ヘラス=カサドは1977年グラナダ生まれ。2007年にルツェルン音楽祭の指揮者コンクールで、現代音楽の解釈でとりわけ高い評価を受け優勝。 ブーレーズの招きでフェスティヴァル・アカデミーを2度指揮しています。2009年にはサントリー音楽祭のシュトックハウゼン「グルッペン」公演の指揮 で来日、話題となりました。2011年5月には細川俊夫の新作オペラ「松風」を世界初演し世界の注目を集めたほか、10月にもベルリン・フィルにデビュー、 2012年からはニューヨークのセントルークス管弦楽団首席指揮者に就任しています。これまでに、シカゴ響、サンフランシスコ響、バイエルン放送響、 フライブルク・バロック・オーケストラ、マリインスキー劇場管、コンセルトヘボウ、ベルリン・フィルなどといった名だたるオーケストラのほか、ベルリン・ ドイツ・オペラなどでも活躍。2013/14シーズンは、11-12月、メトロポリタン歌劇場で「リゴレット」を指揮してのデビュー、2014年にはニューヨー ク・フィルのデビューも決まっています。非常に歯切れのよいリズム感覚と、情景感たっぷりながら見通しのよい音楽、そしてバロックから現代音楽、オペ ラから交響曲まで幅広く柔軟、そして的確な指揮ぶりで、世界を席巻しています。
第3 番は1815年7月、シューベルトが18歳の頃に作曲されたもの。第1楽章の堂々たる幕開けで轟くティンパニ、続いて管楽器で奏でられる第1 主題など、カサドの絶妙のテンポと各楽器のエッセンスの効かせ方が実に巧みです。FBOの巧さも冒頭からひしひしと実感できます。第2楽章は、管楽 器と弦楽器のかけあいもたのしいアレグレット。きびきびとした第3楽章のメヌエットは、リズムの刻みが耳に心地よく響きます。終楽章は非常に歯切れ よいテンポで、終始ノリのよい雰囲気でさっそうと駆け抜けます。決して前面に出過ぎることはありませんが、カサドの統率力が光ります。 第4番は、有名な歌曲「魔王」の作曲から数ヵ月後の、1816年4月27日に作曲されたもの。1816という年は、シューベルトは音楽教師の職に就く ことができなかったり、結婚も諦めたりした試練の年でした。この交響曲は編成も比較的大きく、吹き荒れるホルン(C管2、Es管2)などはFBOで聴 くと迫力満点、ピリオド楽器のおもしろさの際立つ演奏となっています。死を宣告するような不吉な和音から、続くアレグロ部も非常にドラマティック。オ ペラの序曲のような、様々な情景を喚起するような演奏です。第2楽章のアンダンテも、美しい旋律が次々と奏でられるなか、独特の緊張感を保っていま す。第3楽章の突き刺すようなリズムとトリオ部分の典雅なメヌエットの対比も鮮やかです。第4楽章も細かな表情付けが見事。 オペラも得意とするカサドの歌心、そして抜群のリズム感と音楽の推進力、それにこたえるFBOのうまさが最高のかたちで結実したシューベルトとなって います! (Ki)

HMC-902155
ペルゴレージ:オラトリオ「十字架上のキリストの最後の7つの言葉」 ルネ・ヤーコプス(指)
ベルリン古楽アカデミー
ソフィー・カルトホイザー(S)
クリストフ・デュモー(CT)
ユリエン・ベーア(T)
コンスタンティン・ヴォルフ(Bs)

録音:2012年8月ベルリン
イエス・キリストが十字架上で語ったとされる7つの言葉。ハイドンやシュッツなどの作曲家がこの題材で作品を書いています。ここではナポリ楽派の 作曲家ペルゴレージによる「十字架上のキリストの最後の7つの言葉」をヤーコプスとベルリン古楽アカデミーの演奏で収録しています。最近の研究でペ ルゴレージの作品ではないかとされ、2012年7月のボーヌ古楽音楽祭でヤーコプスによって初演され、その後録音されました。 ペルゴレージの傑作「スターバト・マーテル」は亡くなる直前1736年に書かれましたが、この作品は1730年頃から1736年頃の間に作曲されたとさ れています。この作品を研究したラインハルト・フェーリング氏はこの様に語っています。「この作品がペルゴレージの作品であるかどうかは大きな問題で はない。大事なのはここに素晴らしい作品があるという事実だけだ。」そしてヤーコプスも「このオラトリオを見たとき、私の研究心に火がつきました。そ してより詳しい研究により、それを確証しました。」と言うほどこの作品に魅了され、演奏にとりかかりました。 それぞれ2つのアリアを含む7つのカンタータで構成されています。均整のとれた楽曲構成と美しいハーモニー、そして巧みな楽器編成は「スターバト・マー テル」に勝るとも劣らない名作です。 (Ki)
HMC-902159
アダージョとフーガ〜W. A. Mozart after J. S. Bach
プレリュードとフーガ.ニ短調 K405/4(J.S.バッハ:平均律第2巻第8番 嬰ニ短調 BWV 877)
ラルゲット・カンタービレ ニ長調&フーガ K405/5(J.S.バッハ:平均律第2巻第5巻 ニ長調 BWV 874)
アダージョとフーガ.イ短調(J.S.バッハ:平均律第1巻第22番 変ロ短調 BWV 867)
アレグロ.ハ短調 K.Anh.44&2台チェンバロのためのフーガ K426
アダージョ・カンタービレ&フーガ 変ホ長調(平均律第2巻第7番 変ホ長調 BWV 876)
弦楽のためのアダージョとフーガ.ハ短調 K546
アダージョとフーガ.ホ長調 K405/3(平均律第2巻第9番 ホ長調 BWV 878)
アダージョとフーガ.ロ短調(平均律第1巻第4番 嬰ハ短調 BWV 849)
アダージョとフーガ.ニ短調(平均律第1巻第4番 嬰ハ短調 BWV 849)
ベルリン古楽アカデミー

録音:2012年9月13-15日/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
ベルリン古楽アカデミー久々のアンサンブルもの新譜の登場。圧巻の「フーガの技法」(HMC 902064)のあとは、ヤーコプスのプロジェクトで「魔笛」 や「マタイ受難曲」、またペルゴレージの作品などで鮮烈な音色を聴かせてくれていれていたベルリン古楽アカデミー。このたびリリースされるのは「W. A. Mozart after J. S. Bach」と題された、モーツァルト編曲のバッハ作品を中心とした1枚です。  興味深いのが、平均律の室内楽編曲版。バッハの平均律が出版されたのは1801年のことでしたが、モーツァルトは、ヴァン・スヴィーテン伯爵を介し て、バッハの平均律の存在を知ります。モーツァルトは、来る日も来る日もオリジナルの資料にあたって平均律を研究、4声体の5つのフーガを2つのヴァ イオリン、ヴィオラ、チェロのために編曲しました。これはKV 405というコレクションの中に収められており、ヴァン・スヴィーテン伯爵のサロンでのマ チネー演奏会で演奏されたと考えられています(1782から83年にかけてのこと)。この盤には5曲のうち3曲が収められています。プレリュードはバッ ハの平均律のプレリュードとは必ずしも同じものではありませんが、すべてモーツァルトによる(と考えられる)ものです。  K番号が付されていないものは、オーストリア国立図書館に収蔵されている、モーツァルトと非常に関連が深い(コピストが同じ、など)と考えられる ものの、作曲者不詳の楽曲。K.546の弦楽のためのアダージョとフーガは、K.426の2台のクラヴィーアのためのフーガのモーツァルト自身による編曲 版ですが、一層声部の動きが明瞭で、ベルリン古楽アカデミーの面々の腕も冴えわたっています。  天才モーツァルトを介して知るバッハの新しい世界に興味津々の一枚です! (Ki)
HMC-902160
ブラームス:合唱作品集
何ゆえ悩む者に光があたえられたのか op.74-1(2 つのモテット op.74 より)
間奏曲 op.119-1(ピアノ独奏)
5つの歌 op.104
運命の歌 op.54(4 手ピアノ伴奏を伴う)
3つのモテット op.110
3つの四重唱曲 op.31
祝辞と格言 op.109
ダニエル・ロイス(指)
カペッラ・アムステルダム
フィリップ・メイヤーズ、
アンゲラ・ガッセンフーバー(P)

録音:2012年10月
1970年に設立された名門合唱グループ、カペッラ・アムステルダムによるブラームスの合唱作品集。非常にやわらかな空気感で、ひとつひとつのフレー ズのすみずみまで行き届いています。 (Ki)
HMC-902161
アレンスキー:ピアノ三重奏曲第1番ニ短調Op.32
チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲イ短調Op.50「偉大な芸術家の思い出」
トリオ・ヴァンダラー
【ジャン=マルク・フィリップ=ヴァルジャブディアン(Vn)、
ラファエル・ピドゥー(Vc)、
ヴァンサン・コック(P)】

録音:2012年11月1日
1987年結成のトリオ・ヴァンダラー。円熟著しいベテラン・ピアノ三重奏団ですが、チャイコフスキーの名作は何と初めての録音。2012年のラ・フォ ル・ジュルネ音楽祭でも披露されましたが、これが稀代の名演で、感動のあまり言葉少なく帰る観客が目につきました。今回、待望のCDリリース。カッ プリングがこれまたロシア・ピアノ・トリオの名作アレンスキーの第1番。これほど流麗かつオシャレなアレンスキーは初めてで、あらためて聴き惚れてし まいます。全く隙のないアンサンブル、各楽器の難技巧も何なくこなし、さらにアレンスキーとチャイコフスキーの音楽の中にある、フランス的な洗練も憎 いまで絶妙に表現。新しい決定盤の登場と申せましょう。 (Ki)
HMC-902163
バルトーク:ピアノ作品集
舞踊組曲 Sz 77
15のハンガリー農民歌 Sz 71より「4つの古い悲歌」
ピアノ・ソナタSz 80
ルーマニア民族舞曲Sz 56
14のバガテル op.6 Sz 38
アラン・プラネス(P)

録音:2012年11月、テルデックス・スタジオ(ベルリン)
アンサンブル・アンテルコンタンポランで腕をならしたフランスきってのベテラン、アラン・プラネス。久々の新譜は、彼の表情豊かな音色と精確なリズ ム感覚、ハーモニーのセンスが光るオール・バルトーク・プログラムです。舞踊組曲はもともとは管弦楽曲ですが1925年にバルトーク自身がピアノ版に 編曲したもの。ブダ市とペスト市の合併50年記念式典のために委嘱されたもので、バルトークのほかに、コダーイ、ドホナーニも同じ機会のために作曲 しています。1908年作曲の14のバガテルは、ハンガリーの民謡とドビュッシーの影響を感じさせる作風の14の小品集。リストやブラームスを思わせる 厚い音の曲から、打楽器的な曲、そして不協和音など、バルトークの初期作品ながらバルトークのその後の要素の粋が詰まった意欲作で、プラネスの技 巧とハーモニーの把握センスが冴えています。ルーマニア民族舞曲も、エネルギーだけで推し進めるのではなく、鋭く抜群のリズム感覚とハーモニー感覚で、 目からうろこの名演奏を聴かせてくれます。「4つの古い悲歌」は、15のハンガリー農民歌の冒頭の4曲。オリジナルの民謡の語りかけるような性格をそ のまま保っている作品で、プラネスが表情豊かな節回しで聴かせます。ちなみにジャケットのイラストはプラネス自身による自画像。彼の多才ぶりもまた興 味深い 1 枚です。
アラン・プラネスは、1948年リヨン生まれ。ジャック・フェヴリエのもとで学んだあと、アメリカに渡り、メナヘム・プレスラー、フランコ・グッリ、ウィ リアム・プリムローズらに師事。チェロのシュタルケルのピアニストとしても活躍しました。アンサンブル・アンテルコンタンポランでも卓越した音色を聴かせ、 ブーレーズ、ベリオ、リゲティ、シュトックハウゼンの作品などで比類なき解釈で現代もののスペシャリストとして世界中から認められる一方、ハイドンか ら現代もの、見事な色あいのドビュッシーや、フォルテピアノを演奏してのショパンなど変幻自在の才で魅せてきたフランスの名手。 (Ki)

HMC-902165(2CD)
シューベルト:後期ピアノ・ソナタ集
CD1
ピアノ・ソナタ第14番 イ短調 D784/ op.posth.143
ピアノ・ソナタ第19番 ハ短調 D958
CD2
ピアノ・ソナタ第20番 イ短調 D959*
ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D960*
ポール・ルイス(P)

録音:2013 年 3-4月/2002 年 9月* テルデックス・スタジオ(ベルリン)
[CD1]の第14番も第19番も、清冽で健康的な音色、自然 な音楽運びでありながら、聴き手の目の前に描かれていくのはシューベルトの心の世界。時に希望の光がさすものの、シューベルトの心の奥底の絶望感ま でもが浮き彫りにされているような壮絶さもあわせもつ演奏です。ポール・ルイスのシューベルト観がますます研ぎ澄まされていることを感じさせる録音と いえるでしょう。[CD2]は[CD1]よりも10年ほど前の録音で、あらためて聴いてみると、音色の清冽さは同じですが、平和で健康的な印象で、[CD1] の壮絶な世界の後に聴くと少しほっとするような2枚組となっております。 (Ki)
HMC-902168
モーツァルト:クラリネット五重奏曲 イ長調 K581
弦楽四重奏曲第15番 ニ短調 K421
アルカント・カルテット
【アンティエ・ヴァイトハース(1Vn)、
ダニエル・ゼペック(2Vn)、
タベア・ツィンマーマン(Va)、
ジャン=ギアン・ケラス(Vc)】
イェルク・ヴィトマン(Cl)

録音:2013年1月/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
ジャケット絵画/フラゴナール:馬乗り遊び(Le cheval fondu)[1870年頃]
スター奏者を揃え、2年連続でアカデミー賞を受賞、演奏会シーンでも活躍と、常に注目の存在のアルカント・カルテット、待望の新譜はモーツァルト。 ゲストに、注目のクラリネット奏者イェルク・ヴィトマンを迎えたクラリネット五重奏曲と、弦楽四重奏曲第15番という魅惑のプログラム。
クラリネット五重奏曲の冒頭の和音のスーッとした入りから、鳥肌もの。つづいてヴィトマン奏でるクラリネットの上行和音から立ち上る香気で一気に別 世界に引き込まれます。全体に甘さを抑えた表現なのが却って作品本来の素晴しさと高貴さを引き立てているようです。弦楽四重奏曲第15番ニ短調は、 ハイドン・セットの中の唯一の短調の曲で、この作品のもつ暗さが、アルカント・カルテットの無駄を一切排除した表現で浮き彫りになっています。第 1 楽章冒頭の神秘的な仄暗さ、第3楽章のトリオの長調部分のむなしい明るさ、終楽章の変奏曲の、高貴なる悲しさなど、常に美しさは湛えながらも、壮 絶なペシミスティック感漂う演奏で、ただならぬモーツァルトとなっています。
2002年に結成された、スター揃いのアルカント・カルテット。これまでのリリースは4枚(バルトーク[廃盤]、ブラームス[廃盤]、ドビュッシー& ラヴェル&デュティユー[HMC 902067/ KKC 5108]、シューベルト[HMC 902106/ KKC 5235]、および日本限定でSACDボックスも発売中[HMSA 0006/4枚組(廃盤のものも含む)])ですが、尋常でない緊張感に満ちた演奏で、常に音楽シーンで注目の的となっています。待望の新譜に注目です!
イェルク・ヴィトマン(b.1973)は、作曲家・クラリネット奏者として注目の存在。ミュンヘンに生まれ、クラリネットを、ミュンヘン音楽大学でゲルト・シュ タルケに、その後ジュリアードでチャールズ・ナイディッチに師事。作曲を、リーム、ヘンツェらに師事、彼らをはじめ様々な作曲家からクラリネット協奏 曲を献呈され、初演を行っています。世界の名だたるオーケストラと共演、また作曲家としても活躍している異能の存在。フライブルク音楽大学ではクラリネッ トと作曲の両方で教授を務めています。
HMC-902169
シャルパンティエ(1643-1704):ギーズ家のためのモテット
ミゼレーレ H.193 
アンティエンヌ H.526* 
Annuciate superi H.333
序曲 H.536* 
聖母マリアのリタニー H.83
アンサンブル・コレスポンダンス
セバスティアン・ドゥセ(指)

録音:2013年1月
(*は器楽曲)
Zig-Zagなどでもリリースを重ねている人気古楽団体、アンサンブル・コレスポンダンスとそれを率いるドゥセがハルモニアムンディ初登場。第1弾 に彼らが選んだのはシャルパンティエ。シャルパンティエがパリのギーズ家のために書いたミサ曲がならびます。ギーズ家は、シャルパンティエのキャリ アの初期段階で非常に縁のあった家(ギーズ家に「仕えた」、あるいはギーズ家の「お気に入り」だったとする説などがあります)。シャルパンティエは、 1670年代初頭にギーズ家と出会い、1688年、最後のギーズ家一族の人、マリー・ド・ロレーヌ嬢が亡くなるまでパリにいました。このマリー嬢は、ギー ズ家の財産を受け継ぎ、フランスで当時最大とされる音楽サロンを持っていた人物で、また、信仰心厚い女性としても知られています。とりわけマリア信 仰に厚い人物で、シャルパンティエも彼女のために聖母マリアのためのリタニー(連?)をいくつか残しています。ここに収録されている「聖母マリアのた めのリタニー」は、6パートの混声+2パートの器楽という広音域にわたる比較的珍しい編成のもので、当時の聴衆の耳には非常に斬新に響いたものと 思われます。演奏の際には、シャルパンティエ自身もカウンターテナーとして参加したといわれています。 (Ki)
HMC-902171
シューマン:変奏曲&幻想小曲集
アベッグ変奏曲 op.1
幻想小曲集 op.12
3つの幻想的小曲 op.111
主題と変奏 変ホ長調 ―最後の楽想による幻覚の変奏曲(精霊の変奏曲)
アンドレアス・シュタイアー(フォルテピアノ/ 1837 年エラール製、エドウィン・ボインク・コレクション)

録音:2013年2月、テルデックス・スタジオ・ベルリン
アンドレアス・シュタイアーが、シューマン・ピアノ作品集の第3弾となるアルバムを録音しました(第1弾はシューマン:「子供の情景」(廃盤)、第 2弾はピアノとヴァイオリンの作品集(廃盤))。今回シュタイアーは、作品1の「アベッグ変奏曲」に始まり、最晩年の精神病院に入る直前の作品「主題 と変奏(精霊の変奏曲)」(遺作)で終わるというシンメトリックなプログラムを組んでいます。
前半の2作品は、若きシューマンの詩情ときらめきに満ちた演奏。アベッグ変奏曲冒頭の主題提示の豊かな詩情とやさしい音色にまず引き込まれます。 幻想小曲集も、各曲の性格の描き分けも鮮やかに、シュタイアーの語りを聞いているような気分になる演奏です。時を隔てて作曲された続く後半2作品は、 ぐっと深みが増し、ときに不安定でもある和声や、彷徨っているような旋律も耳に残る曲。シュタイアーの非常にやわらかい語り口は、アベッグ変奏曲の ころから様々なことに見舞われ疲れ切ったシューマンをいたわるかのよう。と同時に、聴き手にシューマンの言葉(詩)を代弁してくれているようでもあり ます。エラールのフォルテピアノのあたたかな音色と、ペダルを使ったときに際立つ豊かで優しい響きも完ぺきにコントロールしながら、シュタイアーが優 しさに満ちたシューマンの世界を展開しています。 (Ki)
HMC-902173
マーラー:歌曲集〜A LIFE IN SONGS
1. 春に(1880)(詩:マーラー)
2. 冬の歌(1880)(詩:マーラー)
3. 夏に小鳥はかわり(1887-90)(「若き日の歌」第三集より(子供の不思議な角笛/詩:フォン・アルニム&ブレンターノ))
4-7. さすらう若人の歌(1884-85)(シェーンベルクによる室内アンサンブル編曲版)(詩:マーラー)
8. トランペットが美しく鳴り響くところ(1898)(子供の不思議な角笛/詩:フォン・アルニム&ブレンターノ)
9. もう会えない!(1887-90)(「若き日の歌」第三集より(子供の不思議な角笛/詩:フォン・アルニム&ブレンターノ)
10-14. 亡き子をしのぶ歌(1901-04)(詩:リュッケルト)
15. 春の朝(「若き日の歌」第一集より)(詩:レアンダー)
16. 私は仄かな香りを吸い込んだ(1901)(詩:リュッケルト)
17. 美しさゆえに愛するのなら(1902)(詩:リュッケルト)
18. 真夜中に(1901)(詩:リュッケルト)
19. 私はこの世に捨てられて(1901)(詩:リュッケルト)
ベルナルダ・フィンク(Ms)
アントニー・シピリ(P(1-3, 9, 15, 17-18))
グスタフ・マーラー=アンサンブル(4-7)
アンドレス・オロスコ=エストラーダ(指)ニーダーエステライヒ・トンキュンストラーO(8, 10-14, 16, 19)

録音:2013年4, 5月
ヨーロッパで活躍のメゾ・ソプラノ、ベルナルダ・フィンク。ルネ・ヤーコプス指揮の「マタイ受難曲」(HMC 802156/ HMC 902156)でも素晴し い歌唱を聴かせていた彼女ですが、新譜はマーラー。名手シピリのスケール感の大きなピアノも見事なピアノ伴奏歌曲では細やかな表情づけが印象にのこ ります。さすらう若人の歌はシェーンベルクがウィーンでの演奏会のために室内楽編成に編曲したものというのもポイント。エストラーダ指揮による亡き子 をしのぶ歌も、深みのある表情で聴かせます。美しいドイツ語の発音、充実のきわみにあるフィンクによる、聴きどころ満載のマーラー歌曲集の登場です。 (Ki)
HMC-902174
ブラームス:プラーテンとダウマーによるリートと歌op.32
ハインリヒ・ハイネの詩による歌曲〔「夏の夕べ」op.85-1、「月の光」op.85-2、「死は冷たい夜」op.96-1、「花は見ている」op.96-3、「航海」op.96-4〕
4つの厳粛な歌 op.121
マティアス・ゲルネ(Br)
クリストフ・エッシェンバッハ(P)

録音:2013年4月、2015年12月/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
世界的バリトンとしてまさにあぶらの乗った活躍ぶりのマティアス・ゲルネ。ハルモニアムンディでのシューベルト・エディションの三大歌曲(「美しき水 車小屋の娘」HMC 901995、「冬の旅」HMC 902107、「白鳥の歌」HMC 902139)でも共演したエッシェンバッハをピアニストに迎えてのブラーム スの登場です。 ブラームスは生涯のうち40年ほどにわたり、膨大な数の歌曲を作曲しましたが、残すことを許したのは200曲あまり。ブラームスにとって歌曲は特別なジャ ンルでした。ここに収録された歌曲はハイネをはじめ様々な詩人による詩に作曲したもの。旧約および新約聖書からテキストがとられている4つの厳粛な 歌は、ブラームスが亡くなる前年に完成された作品で、自らの死を予感した辞世の作、とも言われています。ゲルネとエッシェンバッハが、ブラームス最 晩年の深遠な世界を濃密に展開しています。 (Ki)
HMC-902179
プーランク:歌曲集
2つの詩〔1. セー 2.華やかな宴〕(L.アラゴン)
矢車菊(G.アポリネール)
「月並み」より〔4. パリへの旅 2. ホテル〕(G.アポリネール)
モンパルナス(G.アポリネール)
ルイーズ・ラランヌの3つの詩〔1. 贈物(M.ローランサン) 2. 歌(G.アポリネール) 3. 昨日(M.ローランサン)〕
このやさしい小さな顔(P.エリュアール)
手は心の意のまま(P.エリュアール)
ある日ある夜〔1. よい一日 2. こわれた貝殻 3. 破れた旗のような額 4. 瓦を葺いた家形馬車 5. まっしぐらに 6. みすぼらしい草   7. 君を愛したいだけ 8. 熱烈で残忍な姿 9. ふたりは闇をつくる〕(P.エリュアール)
ヴォカリーズ・エチュード
気まぐれな婚約〔1. アンドレ夫人 2. 草の中に 3. 飛んでる 4. 私の屍は長手袋のように柔らかだ 5. ヴァイオリン 6. 花〕(L.de ヴィルモラン)
ファンシー(W.シェイクスピア)
くじびき(M.カレーム)〔1. 眠り 2. なんてことだ 3. ハートのクイーン 4. バ、ブ、ビ、ボ、ビュ 5. 音楽家の天使たち 6. 小さな水差し 7. 4月の月〕
イヴォンヌ・プランタンのための2つの歌〔1. ギターに寄せる(ロンサール) 2. 愛の小道(J.アヌイ)〕
ゾフィー・カルトホイザーs
ユージン・アスティ(P)

録音:2013年6月
プーランクの歌曲を集めた魅惑のCDの登場です。演奏するのは、ベルギー出身のソプラノ、ゾフィー・カルトホイザー。モーツァルトの「偽りの女庭師」 やペルゴレージのオラトリオ「十字架上のキリストの最後の7つの言葉」(HMC 902155)でもヤーコプスの指揮の下素晴しい歌声を披露するなど、特 にバロックから古典にかけて世界で高く評価されていますが、今回はプーランクでの登場。「セー」での抑えの効いた表情から「愛の小道」の洒脱な雰囲 気まで、一曲一曲変幻自在な表情と、美しく無駄のないフランス語の発声が印象的です。ピアニストのユージン・アスティは、フェリシティ・ロットなどと も共演を重ねる、歌手からの信頼も篤い実力派ピアニストの一人で、カルトホイザーの表情の変化にぴたりと寄り添ったピアノも光っています。 (Ki)
HMC-902180
マーラー:「若き日の歌」(ベリオによるオーケストラ編曲版(1986-87))より
夏に小鳥はかわり(『子供の魔法の角笛』)
シュトラスブルクの砦に(『子供の魔法の角笛』)
もう会えない(『子供の魔法の角笛』)
いたずらな子をしつけるために(『子供の魔法の角笛』)
思い出
ハンスとグレーテ(『子供の魔法の角笛』)
私は緑の森を楽しく歩いた(『子供の魔法の角笛』)
春の朝
ドン・ファンの幻想
別離と忌避(『子供の魔法の角笛』)
ベリオ:シンフォニア(1968)
マティアス・ゲルネ(Br)
BBC響
シナジー・ヴォーカルズ
ジョセプ・ポンス(指)

録音:2015年9月25-26日/マイダ・ヴェール・BBCスタジオ(マーラー)、2012年12月7日、バービカン・センター(ベリオ)
ゲルネによるマーラー歌曲、ベリオによるオーケストレーション版を用いての演奏の登場。オーケストラは名門BBC響、指揮はポンスと注目の布陣に よる演奏です。「マーラーに音楽には音楽史すべてがある」とはベリオがシンフォニアを書いた10年後に書いた言葉。ベリオのシンフォニアは、マーラー の交響曲(第2番)がベースになる部分も多く、いわばマーラーへのオマージュともいえる作品。ベリオはマーラーを強く意識していました。シンフォニ アを作曲してから10年もたたずに、ベリオは、マーラーが『子供の魔法の角笛』のテキストに付曲した歌曲(マーラーはピアノと声のために作曲)をオー ケストレーションしています。ワーグナーや、後期のマーラー作品の成熟を思わせる、これらの若書きの歌曲の多様性に光を当てたかった、と語るベリオ。マー ラーに敬意を払いながらベリオが作った、二人が作り上げた音の世界に、ゲルネのバリトンの声が素晴らしくマッチしています。「シンフォニア」も、ベリ オが盛り込んだ様々な要素が活き活きとした秀演。 (Ki)

HMC-902181(2CD)
J.S.バッハ:チェンバロ協奏曲集
協奏曲第1番 ニ短調 BWV 1052
協奏曲第2番 ホ長調 BWV 1053
協奏曲第7番 ト短調 BWV 1058
協奏曲第3番 ニ長調 BWV 1054
協奏曲第4番 イ長調 BWV 1055
協奏曲第5番 ヘ短調 BWV 1056
協奏曲第6番 ヘ長調 BWV 1057
アンドレアス・シュタイアー(Cemb)
アンソニー・サイディ&フレデリク・バル、パリ、2004
(ヒエロニムス・アルブレヒト・ハース、ハンブルク、1734年製モデル))
フライブルク・バロック・オーケストラ〔ディレクション&ヴァイオリン:ペトラ・ミュレヤンス〕

録音:2013年7月
シュタイアーがついにバッハのチェンバロ協奏曲集を録音しました!オーケストラは古楽器オーケストラの雄、フライブルク・バロック・オーケストラとい う最高の布陣。ペトラ・ミュレヤンスがリーダーとなってのレコーディングです。
ライプツィヒ大学の学生を中心とした楽団「コレギウム・ムジクム」の指揮者として招かれたバッハは、コーヒー店や市郊外の庭園などでコンサートを 開いていました。この折の重要なレパートリーとなったのが、チェンバロ協奏曲でした。原作が存在する作品は、すべてヴァイオリンをソロとした協奏曲 が原曲となっておりますが、ピアノ協奏曲の充実した先駆者的な存在として今なお大きな魅力をもっています。
全篇をとおしてシュタイアーのソロがとにかく際立っています。さらにオーケストラとのアンサンブルも見事。シュタイアーとオーケストラが常に最高のバ ランスで聴こえてきます。緩徐楽章では絶品のラルゴを堪能、シュタイアーが時折混ぜ込んでくる刺激的かつ超絶技巧のパッセージに圧倒されます。期待 を裏切らないバッハのチェンバロ協奏曲集の登場です!  (Ki)

HMC-902183(2CD)
ベートーヴェン:チェロとピアノのための作品全集
モーツァルトの『魔笛』の「娘か女か」の主題による12の変奏曲 ヘ長調 op.66
チェロ・ソナタ第1番 ヘ長調op.5-1
チェロ・ソナタ第2番 ト短調 op.5-2
ヘンデルの『ユダ・マカベア』の「見よ勇者は帰る」の主題による12の変奏曲 ト長調WoO.45
チェロ・ソナタ第3番 イ長調 op.69
モーツァルトの『魔笛』の「恋を知る男たちは」の主題による7つの変奏曲 変ホ長調 WoO.46
チェロ・ソナタ第4番 ハ長調 op.102-1
チェロ・ソナタ第5番 ニ長調 op.102-2
ジャン=ギアン・ケラス(Vc)
アレクサンドル・メルニコフ(P)

録音:2013 年 10&12 月/テルデックス・スタジオ・ベルリン
人気、実力とも当代ナンバーワンのジャン=ギアン・ケラスの新譜は万全のベートーヴェン。ピアニストのメルニコフがパートナーを務める注目盤です!
チェロのケラスは、ソロ活動ではますます冴えわたった弓さばきを展開しているほか、アルカント・カルテットのメンバーとしての活動も充実。2014年 秋にはアルカント・カルテットでも来日が予定されている、押しも押されぬ人気奏者。メルニコフも、近年充実著しいピアニスト。フォルテピアノとモダン のピアノを縦横無尽に弾きこなしておりますが、ここではモダンのピアノを奏でています。
ケラスとメルニコフ両者の、透明感と密度の高さ、精確性を兼ね備えた音質が非常に美しく、1ミリの狂いもないアンサンブルで、ベートーヴェンの世 界を自在に駆け巡る伸びやかさが心地よい演奏です。
第1番第1楽章、アレグロ部分でのベートーヴェンならではの溌剌としたパッセージも実に活き活きとしており、抜群に息の合った掛けあいには聴きいっ てしまいます。有名な第3番の冒頭、チェロが奏でるのびのびとした第一主題も、ケラスは実に楽々と奏で、チェロを受けて入るメルニコフのピアノも絶 妙の表情です。第4、5番が書かれたのは1815年、ベートーヴェン後期の世界を感じさせるもの。とくに第4番は、「ピアノとチェロのための自由なソ ナタ」とも題されているように自由な形式のソナタで、作品全体がひとつの幻想曲のような作品。第5番は古典的なソナタ形式に忠実ではありますが、フー ガのような部分が目立つことや、緩徐楽章(チェロ・ソナタ5曲のうち唯一)での瞑想性など、やはり後期の特徴が表れております。ケラスもメルニコフ も、研ぎ澄まされた音色で独特の世界を表現しています。ベートーヴェン得意の変奏曲では、ケラスとメルニコフは実に颯爽と軽やか、表情豊か。快心の 出来栄えのベートーヴェンです! (Ki)
HMC-902185
ヴェネツィアの黄金時代〜ヴィヴァルディ、ポルタ、マルチェッロ
ウリ・ロム(b.1969):「オリンピアーデ」協奏曲(ヴィヴァルディとテッサリーニのパスティッチョ風)
ヴィヴァルディ:協奏曲 ホ短調 RV 134〜弦と通奏低音のための
マルチェッロ:協奏曲 ニ短調〜オーボエ、弦と通奏低音のための
ジョヴァンニ・ポルタ(c.1675-1755):シンフォニア ニ長調〜弦,2つのオーボエ,ファゴットと通奏低音のための
ヴィヴァルディ:協奏曲 変ロ長調 RV 364, RV Anh.18による〜ヴァイオリン,オーボエ,弦と通奏低音のための
協奏曲「ザクセン選帝侯のために」 ト短調 RV 576〜ヴァイオリン・ソロ,オーボエ・ソロ,第2オーボエ、2つのフルート、弦と通奏低音のための
テッサリーニ(1690-1766):「ラ・ストラヴァガンツァ(風変わり)」序曲 ニ長調〜弦と通奏低音のための
ヴィヴァルディ:協奏曲 ハ長調 RV450〜オーボエ,弦と通奏低音のための
クセニア・レフラー(バロックOb)
ゲオルク・カッルヴァイト(独奏Vn、コンサートマスター)
ベルリン古楽アカデミー

録音:2013年10月、2014年2月/テルデックス・スタジオ、ベルリン
ヴェネツィアの黄金時代に生まれた名曲の数々を、ベルリン古楽アカデミーと、バロック・オーボエの名手クセニア・レフラーの演奏で!クセニア・レフラー は、ガーディナーのカンタータ巡礼プロジェクトにも参加、さらにバルドルファー・ホーフカペレやコレギウム1704などでも活躍している名手。収録され た作品はどれも活気に満ちた表情が魅力の曲ばかり。レフラーのオーボエの美音と、ベルリン古楽アカデミーのエッジの効いた伴奏を堪能できる1枚です。
ポルタは、ヴィヴァルディの同僚としてピエタ音楽院で音楽活動を展開していた生まれついてのヴェネツィア人。マルチェッロは、ヴェネツィアの貴族の 息子で、有力者として活動する傍ら音楽・芸術にも素晴しい功績を残し、J.S.バッハもマルチェッロの作品を素晴しい装飾を付けてチェンバロ独奏用に編 曲しています(BWV 974)。そしてテッサリーニは、ヴェネツィアの音楽院で教師を務め、ヴァイオリニスト、オーケストラのリーダー、作曲家、そして 音楽出版の分野でも活躍しました。1曲目に収録されている2013年作のウリ・ロムの作品は、ベルリン古楽アカデミーの委嘱によるもので、クセニア・ レフラーに献呈されています。ヴィヴァルディとテッサリーニの作品を参考にしたパスティッチョ(ごった煮)的作品に仕上がっています。 (Ki)

HMC-902186
モーツァルト:弦楽四重奏曲集[ハイドン・セットより]
弦楽四重奏曲第14番 ト長調 「春」 K.387
弦楽四重奏曲第16番 変ホ長調 K.428/ 421b
弦楽四重奏曲第19番 ハ長調「不協和音」 K.465
カザルスSQ
〔アベル・トマス・レアルプ(Vn)、ヴェラ・マルティナス・メーナー(Vn)、ジョナサン・ブラウン(Vla)、アルノー・トーマス・レアルプ(Vc)〕

録音:2013年9月、テルデックス・スタジオ(ベルリン)
なまめかしいまでに美しい弦の音色、絶妙な声部間のバランス感覚、抜群の新鮮味。カザルス弦楽四重奏団によるモーツァルトの登場です!モーツァル トが2年を費やし完成させたハイドン・セットは、モーツァルトの弦楽四重奏曲の中でも特に傑作ぞろいとして高い人気があります。1997年にスペイン(マ ドリッド)で結成して以来、ヨーロッパを中心に活躍、中堅として圧倒的な存在感をかもしつつあるカザルス弦楽四重奏団による演奏は非常に高貴でのび やか、新鮮味抜群。「不協和音」冒頭の不穏なハーモニーも、ヴィブラートを抑えた表現で実に生々しく響きます。モーツァルトの充実の作品を、抜群の 新鮮味溢れる演奏で聴ける、嬉しい一枚です。 (Ki)
HMC-902187
ブラームス:クラリネットとピアノのためのソナタ集
クラリネット・ソナタ第1番 ヘ短調 op.120-1
6つのピアノ小品 op.118
クラリネット・ソナタ第2番 変ホ長調 op.120-2
ロレンツォ・コッポラ(Cl/ B 管、ベルマン・オッテンシュタイナーのモデルによる、シュヴェンク&セゲルケ製、
バンベルク、2001年)
アンドレアス・シュタイアー(P[ ニューヨーク・スタインウェイ、1875 年製 ])

録音:2013 年10月
鍵盤楽器の鬼才アンドレアス・シュタイアーの新譜はブラームス。ブラームス最晩年の屈指の名曲クラリネット・ソナタ、およびピアノ小品(ソロ)と いうプログラムです。クラリネットを演奏するのは、フライブルク・バロック・オーケストラのメンバーでもあり、モーツァルトの最後の協奏曲【HMC 901980(廃盤)】でクラリネット協奏曲を収録、世界を魅了したロレンツォ・コッポラ。
コッポラとシュタイアーによるクラリネット・ソナタというだけでも既に心躍りますが、もうひとつ注目なのが、楽器です。クラリネットは、ブラームスが クラリネット作品を書くきっかけを与えた当時の天才奏者ミュールフェルトも使用していたベルマン&オッテンシュタイナー・モデルの楽器を使用。1875 年製のスタインウェイと、バランス的にも音色的にも、素晴らしく融け合っています。
クラリネット・ソナタ第1番では、冒頭のシュタイアーの前奏から、ただならぬ雰囲気。終楽章の活発なピアノに触発されたようなコッポラのクラリネッ トも圧巻です。第2番では、やさしく甘い第1楽章の旋律で、コッポラがとろけそうな音色を奏でます。幻想曲風な第3楽章の幕切れも、ピアノの音色 が独特の世界をいっそう盛り上げます。クラリネット・ソナタ2作の間に収録されているのはシュタイアーのソロ。晩年のブラームスが自分の作品ひいて は人生を振り返って懐かしんでいるような作品を、シュタイアーが、彼ならではのやわらかな語り口と、スタインウェイの銘器の音色を最大に活かしながら、 いつくしむように奏でています。


HMC-902188

ドヴォルザーク: 交響曲第6番ニ長調 op.60 B112
組曲「アメリカ」イ長調 op.98B B190(原曲:ピアノ独奏曲/作曲者自身による管弦楽編曲)
ジェームズ・ガフィガン(指)
ルツェルンSO

録音:2013年10月
アメリカの若手指揮者ジェームズ・ガフィガン。ルツェルン交響楽団とのHMF第2弾は、ドヴォルザーク。ブラームスやベートーヴェンの影響も強く感 じられる、ロマン色濃厚な第6番。ガフィガン率いるルツェルン響の面々の活き活きとした表情が印象的な好演。第3楽章のフリアントの激しいリズムも きまっています。組曲「アメリカ」はもとはピアノ作品。「アメリカ」という副題は最近になってつけられたものです。1894年春に作曲され、翌年、ドヴォ ルザークが祖国に戻る直前に管弦楽用に編曲されました。アメリカ先住民とアフリカ系アメリカの音楽といった素材を、ボヘミアのアクセントで巧みに味 付けし、非常に親しみやすい組曲となっています。 ルツェルン交響楽団は、1806年に創立されたスイス最古のオーケストラ。現代音楽演奏でも非常に高い評価を得ており、これまでにもグバイドゥーリ ナやシチェドリン、ファジル・サイ、デュサパンやダルバヴィー、リームなどに作品を委嘱して演奏もしています。 ジェームズ・ガフィガンは、1979年生まれのアメリカの指揮者。2004年のショルティ国際指揮コンクールで優勝したのを皮切りに、世界の名だたるオー ケストラと演奏、2011/12のシーズンからルツェルン交響楽団の首席指揮者、およびオランダ放送フィルや、ケルン・ギュルツェニヒ管などで首席客演指 揮者を務めています。2011/12には「ラ・ボエーム」でウィーン国立歌劇場デビュー、その後も「ドン・ジョヴァンニ」(2012/13)で再登場、さらにグ ラインドボーンでも指揮するなど、オケ作品のみならずオペラ作品でも世界にその名を着実に広めています。リームの作品集(HMC 902153)でも高い 評価を得ており、緻密な指揮ぶりが光ります。k (Ki)
HMC-902189
イタリア&フランスのカンタータ集
ペルゴレージ(1710-1736):オルフェオ〜ソプラノ、弦と通奏低音のためのカンタータ
クレランボー(1676-1749):オルフェ〜ソプラノと室内オーケストラのためのカンタータ
A.スカルラッティ(1660-1725):オルフェオ〜独唱と弦を伴うカンタータ
ラモー:オルフェ〜ソプラノと‘サンフォニー’(フルートと弦)のためのカンタータ
イム・スンヘ(S)
ベルリン古楽アカデミー

録音:2013年11月、2014年2月、テルデックス・スタジオ・ベルリン
ヤーコプスが指揮するオペラでも、愛らしさと強さを兼ね備えた歌声で圧倒的な存在感を示しているイム・スンヘ。彼女のソロ・アルバムの登場です! プログラムは、オルフェウスを題材にした4つのカンタータ。ギリシア神話の歌と音楽の天才、オルフェウス。その歌声でけだものの心や岩までをも揺り 動かし、黄泉の国で愛する妻と再会するもまた引き離されてしまうという物語は、今なお人々を魅了しています。フランス、およびイタリアの作曲家たちが この人気の題材で書いた秀作カンタータを、イム・スンヘの演技力たっぷりの歌唱で堪能できます。 (Ki)
HMC-902190
ヴィヴァルディ:リコーダー協奏曲集
協奏曲 ト長調 RV 443
協奏曲 ト短調「夜」RV 439
協奏曲 ニ長調「ラ・パストレッラ」RV 95 
協奏曲 ニ短調 RV 566
協奏曲 変ホ長調 RV 375
協奏曲 ト短調 RV 103
協奏曲 ニ長調「ごしきひわ」RV90
モーリス・シュテーガー(リコーダー)
使用楽器:RV 443/ フラウティーノ(フラジョレット)、デスカント・リコーダー(c1)
RV 439, 566, 103/ トレブル・リコーダー(f1)
RV 95, 90/ トレブル・リコーダー(g1)
RV 375/ デスカント・リコーダー(b1)
ディエゴ・ファゾリス(指)
イ・バロッキスティ

録音:2014 年 3-4月、アウディトリオ・ステリオ・モーロ、RSIルガーノ
名手シュテーガーによるヴィヴァルディの登場。今回も目にもとまらぬ超絶技巧で、ヴィヴァルディの名曲リコーダー協奏曲を一気呵成に聴かせます。 管弦楽はこれまた切れ味抜群、ファゾリス率いるイ・バロッキスティ。シュテーガーが繰り出す、リコーダーとは思えない超絶技巧に負けじと、火花の散 るようなアンサンブルが展開されています!
モーリス・シュテーガーは、ヴィヴァルディの書法を注意深く読み解き、それぞれの作品に適したリコーダーを使い分けているのもポイント。たとえば 有名な「夜」などでは、当時のドイツでみられた、非常に高い音域を避けるような、どちらかというと低めの音域でのスムースな音色を想定して書かれ ている、として、クリアで高い音色が出る楽器ではなく、繊細で丸みを帯びた低めの音域の楽器を用いています。これにより、それぞれの作品の魅力が 200%引きだされているといえるでしょう。管弦楽の音色も実にカラフルで、非常に楽しい一枚です。 ≪モーリス・シュテーガー(リコーダー):1971年スイス生まれ。リコーダーと古楽をペドロ・メメルスドルフ、ケース・ベーケ(ブリュッヘンのリコーダー の弟子)らに師事。指揮をマークス・クリードに師事。2002年、カラヤン賞受賞。ベルリン古楽アカデミーをはじめとする古楽オーケストラとの共演多数、 ソリストとして、そして指揮者として世界で活躍する、世界トップのリコーダー奏者。≫ (Ki)
HMC-902191
KKC-5622
日本語帯・解説付
税込定価
ブラームス:ピアノ協奏曲第1番Op.15
4つのバラードOp.10*
ポール・ルイス(P)
スウェーデンRSO
ダニエル・ハーディング(指)

録音:2014年5月ストックホルム・ベルワルドホール*、2016年1月テルデックス・スタジオ・ベルリン
アルフレッド・ブレンデルの薫陶を受けるイギリスの名手ポール・ルイスは、ヨーロッパでひっぱりだこの人気ピアニスト。ベートーヴェンのピアノ・ソ ナタ全集(HMX.2901902)、ピアノ協奏曲全集(HMC.902053)やシューベルトのピアノ・ソナタ集などハルモニアムンディからリリースされている数々 の録音はいずれも高い評価を受けています。日本にも度々来日し、2015年12月に行った「ベートーヴェンの後期3大ソナタ」公演は、音楽の本質を 射抜いたかのような演奏を聴かせてくれました。
このアルバムは、ダニエル・ハーディングとスウェーデンRSOとの「ブラームスのピアノ協奏曲第1番」とルイスのソロで「4つのバラード」 が収録されています。ピアノ協奏曲第1番は、2014年新日本フィルとハーディングが行った「ブラームス・プロジェクト」の一貫でポール・ルイスがゲ ストとして参加した際に演奏された曲目。その際もハーディングがルイスとの共演を熱望したということで、完成度の高い演奏を披露しました。
ピアノ協奏曲第1番はブラームス初期の傑作で、恩人シューマンの不幸とクララへの憧れが入り混じった意欲的な作品。第1楽章はブラームスらしい 重厚なシンフォニックな響き、弦楽器とファゴットの穏やかな旋律で開始される第2楽章には、シューマンへの追悼そしてクララへの思いを示したラテン語 の祈祷文が書かれています。力強いピアノの主題からはじまる第3楽章は疾走感がありピアノが華やかに躍動します。ルイスのピアノは端正で味わい深く、 第2楽章では幻想的に静かに語りかけるように、第3楽章では生き生きと爽快にダイナミックに聴かせてくれます。ハーディングの絶妙な指揮も聴きどこ ろで、ピアノの音を引き立てつつ、重厚に音を響かせ、ときにはピアノと共に繊細な音を作り出し、特に木管陣の美しさ上手さに魅了されます。 そしてブラームスの初期のピアノ・ソロの中でも人気の高い「4つのバラード」。若々しいブラームスの抒情溢れる名作。ルイスは若きブラームスの音楽 からにじみ出る「孤独」を、透明感あるピアノの音色で描き出しています。 (Ki)
HMC-902192
ピエルネ:ピアノ三重奏曲ハ短調Op.45
フォーレ:ピアノ三重奏曲ニ短調Op.120
トリオ・ワンダラー
【ジャン=マルク・フィリップ=ヴァルジャブディアン(Vn)、
ラファエル・ピドゥー(Vc)、
ヴァンサン・コック(f) 】

録音:2014年2月/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
ラ・フォル・ジュルネ音楽祭でもお馴染みのトリオ・ヴァンダラー、彼らが母国フランスの香り高いピアノ三重奏曲2篇に挑戦。フォーレ唯一のピアノ 三重奏曲は最晩年1923年の作で、簡素な中にも驚くべき深さと高貴さに満ちています。終楽章の主題がレオンカヴァッロの「道化師」のアリア「さらば 歌え、道化師よ」と似ているとされています。カップリングのピエルネ作品はあまり聴く機会がないものの、メロディにあふれたまさに隠れた名作。1922 年2月の初演の際は、エネスコがヴァイオリンを、ピエルネ自身がピアノを受け持ちました。トリオ・ヴァンダラーはまさにフランス的伝統美を披露、洗 練と清潔感に満ちた絶妙な表現による新しい決定盤の登場と申せましょう。 (Ki)
HMC-902193
F.クープラン:讃歌集
トリオ・ソナタ「壮大なもの」(1690年頃)
リュリ讃(1725)/コレッリ讃(1724)
4声のソナタ「スルタン妃」(1695年頃)
アマンディーヌ・ベイエ(Vn)
リ・インコーニティ

録音:2014年1月4-7日/グラディニャン、四季劇場(ジロンド)
フランス古楽界の新世代を代表するバロック・ヴァイオリン奏者、アマンディーヌ・ベイエ。2014年11月にはアンサンブル・リ・インコーニティを率 いての来日が予定されています。この度、久々にハルモニアムンディからの登場となる当盤のプログラムは、F.クープランの「リュリ讃」と「コレッリ讃」 というなんとも嬉しい組み合わせ。ベイエの魅力である喜びに溢れたようなリズム、愛に満ちた明るい音色があますところなくとらえられています。 CDのプログラムは、「壮大なもの」で幕を開けます。「少しクセのある、色鮮やかな不協和音に満ちたハーモニーのキラキラとしたつむじ風にたちまち 耳を奪われる」とベイエ自身述べている作品を、非常にチャーミングに響かせています。
F.クープランの「コレッリ讃」と「リュリ讃」は、両作品とも各楽章に表題が付けられており、「コレッリ讃」では音楽の神が住まうパルナッソス山にコレッ リが導かれる様子が描かれ、「リュリ讃」では、コレッリに続いてパルナッソス山へ登ったリュリが、そこで出会ったコレッリと共に演奏を行う、という物語 になっています。フランスでは、「トンボー」というジャンルで、先人の肖像画的な音楽を作るという伝統がありましたが、このクープランの「リュリ讃」「コレッ リ讃」は、それぞれの作曲家のスタイルに厳密に従っているわけではなく、また、その規模などから、音楽史上でも特殊な作品として輝きを放っています。 ベイエとアンサンブルの面々が、活き活きとしたリズムでひとつひとつのハーモニーまでも逃さず味わいつくすように演奏しています。
最後に収録されているスルタン妃は比較的初期の作品ですが、繊細なテクスチュア、柔軟な舞曲のリズム、抒情性、モティーフのキャラクターづけの巧 さなどが光る秀作です。 (Ki)
HMC-902194
エティエンヌ・ムリニエ(1599-1676):作品集
おお、甘きイエスよ(5声)
シオンよ、救い主を讃美せよ(5声)
わたしの肉はまことの食物である(5声)
アントワーヌ・ベッセ(1586-1643):おおイエスよ、われわれの救いよ(4声、5声)*
主に向かいて新しき歌をうたえ(5声)
おお、甘きイエスよ(器楽)
賢者が星を見て(5声)
おお、イエスという甘き名よ(5声)
聞け、私は見る(5声)
フランソワ・ドゥ・シャンシー(c.1600-1656):アルマンド(ト調)*
アントワーヌ・ベッセ:人よ、私は汝らに何をしただろうか*
忘れてください(5声)
フランソワ・ドゥ・シャンシー:アルマンド(ハ調)*
私は野の花
王が休んでいる間に
ルイ・コンスタンティン(c.1585-1657): ラ・パシフィック*
私の配偶者よ、来たれ
salutaris hostia(器楽)/連祷(5声)
花があらわれ

*以外はムリニエ作品
セバスティアン・ドゥセ(指)
アンサンブル・コレスポンダンス

録音:2014年2月
エティエンヌ・ムリニエは、フランスのバロック初期作曲家で、ルイ13世のただ一人の弟であったガストン(オルレアン公)(1608-60)に仕えました。 このガストンは、気まぐれで反抗的な人物でしたが、芸術や文学の非常によき支援者としても知られ、ムリニエは、1627から1660年の30年余の長き にわたって、様々な作品を彼のために作曲しました。世俗の作品は比較的よく知られていますが、ここに収められている宗教作品は、ほぼ顧みられること なく埋もれていました。しかし、どれも非常に個性豊かで美しいものばかり。17世紀中期のフランスの音楽の発展にも重要な役割を果たしたムリニエの 力作を、精緻にしてやわらかな美しい歌声と、心ふるわすような通奏低音の音色のアンサンブル・コレスポンダンスが見事によみがえらせました。 (Ki)
HMC-902195
メンデルスゾーン:無言歌集
無言歌集より〜「甘い思い出」op.19-1/「ヴェネツィアの舟歌 第1」op.19-6/「ヴェネツィアの舟歌 第2」op.30-6/「デュエット」op.38-6/「海辺で」op.53-1/「胸さわぎ」op.53-3/「ヴェネツィアの舟歌 第3」op.62-5/「瞑想」「失われた幻影」「巡礼の歌」op.67-1,2,3/「子守歌」op.67-6/「悲歌」op.85-4/「寄る辺なく」op.102-1/「そよぐ風」op.102-4/「信仰」op.102-6
変奏曲 変ホ長調 op.82
ロンド・カプリッチョーソ op.14
6つの前奏曲とフーガop.35より第1番
厳格な変奏曲 ニ短調 op.54
ハヴィエル・ペリアネス(P)
静謐の中、しっとりとした風合いの美しい音色で独自の世界を紡ぐスペインの俊英、ハヴィエル・ペリアネス。今回の新譜はメンデルスゾーンです。 文学的側面も含む、余計なものを一切排除した「無言歌集」。メンデルスゾーンの、魔術的な雰囲気を作り出す名手としての才が発揮された「ロンド・ カプリッチョーソ」。古典的な秩序へのやまない敬意が現れた「厳格なる変奏曲」。そしてバッハへの敬意が色濃く表れた「前奏曲とフーガ」。ペリアネス らしい静かなたたずまいの中、メンデルスゾーンの息遣いまでをも感じる1枚となっています。 (Ki)

HMC-902196
(1CD+DVD)
シューマン:ヴァイオリン協奏曲 WoO 1 ニ短調
ピアノ三重奏曲 第3番 ト短調 op.110

■ボーナスDVD
シューマン:ヴァイオリン協奏曲 WoO1 ニ短調
イザベル・ファウスト(Vn/1704 年製ストラディヴァリウス[ スリーピング・ビューティー])
ジャン=ギアン・ケラス(チェロ/ジョフレド・カッパ[1696 年 ])
アレクサンドル・メルニコフ(フォルテピアノ/ジャン=バティスト・シュトライヒャー[ウィーン, 1847年、エドヴィン・ボインク・コレクション])
パブロ・エラス=カサド(指)フライブルク・バロックO

[CD]録音:2014年5,8,9月/テルデックス・スタジオ・ベルリン
[ボーナス DVD]収録:2014年5月8日、ベルリン・フィルハーモニー(ライヴ)
イザベル・ファウスト(ヴァイオリン)、ジャン=ギアン・ケラス(チェロ)、アレクサンドル・メルニコフ(P)という、いまや世界が認める存在となっ た三人による、シューマン・プロジェクトが始動します。シューマンの協奏曲3曲(ピアノ・ヴァイオリン・チェロ協奏曲)+ピアノ三重奏曲3曲のレコー ディングをするというこのプロジェクトは、3人が、ヨーロッパでシューマンのピアノ三重奏曲を演奏するツアーを行った際に持ち上がったといいます。楽 器は、ガット弦の弓を張った弦楽器、そしてフォルテピアノで、ということになり、オーケストラもソロ楽器に合った編成のフライブルク・バロック・オーケ ストラに決定。指揮は俊英エラス=カサド。オケとソロ楽器の素晴らしいバランス、自然なアーティキュレーションで作品に対する既成概念を払拭するような、 まさにこの顔ぶれでしか為し得ない水準での、新しいシューマン像が完成しました。
プロジェクト第1弾は、ヴァイオリン協奏曲を中心に据えたプログラム。シューマンのヴァイオリン協奏曲は、晩年の1853年の作。当時のヴァイオリ ンの名手、ヨーゼフ・ヨアヒムとの出会いがこの作品を生みだしました。完成の翌年にシューマンが療養所に入ったことなどからしばらく日の目を見ない ままになっていましたが、1907年にヨアヒムが所蔵していた楽譜がベルリン図書館に売却され、1937年には初演および出版のはこびとなりました。力 強い第1楽章、第2楽章の美しい旋律はファウストの美しい音色と音楽の真骨頂を見るようです。この旋律は後にシューマンの耳に「天使の歌」として あらわれ、この旋律に基づいて、変奏曲(精霊の主題による変奏曲)が書かれています。第3楽章は3拍目に重点がくるポロネーズのリズムで、オーケ ストラとソロ楽器の充実の対話の中しめくくられます。カップリングのピアノ三重奏曲は、1851年に作曲されたもの。シューマン家でクラーラのピアノで 初演されたのち、1852年に公開初演されました。クラーラ自身、この作品を情熱的で創意に満ちていると非常に気に入っていたようすの日記が遺されて います。充実していたシューマンの、情熱と創意に満ちたトリオを、メルニコフのフォルテピアノの音色、そしてファウストとケラスの奏でる音色が織り成 す抜群のバランスで堪能できます。ボーナスDVDには、シューマンのヴァイオリン協奏曲のライヴ映像が収録されているというなんとも嬉しい特典つきです。 (Ki)

HMC-902197
(1CD+DVD)
KKC-5618
(1CD+DVD)
日本語帯・解説付
税込定価
シューマン:チェロ協奏曲 イ短調 op.129
ピアノ三重奏曲第1番ニ短調op.63
ジャン=ギアン・ケラス(Vc/ジョフレド・カッパ1696年)
イザベル・ファウスト(Vn/1704年ストラディヴァリウス[スリーピング・ビューティー])
アレクサンドル・メルニコフ(フォルテピアノ/ジャン=バティスト・シュトライヒャー 1847年、ウィーン
いずれもエドヴィン・ボインク・コレクション)
パブロ・エラス=カサド四フライブルク・バロックO

CD録音:2014年8,9月、テルデックス・スタジオ・ベルリン
ボーナスDVD収録:2014年5月8日、ベルリン・フィルハーモニー(ライヴ)
シューマンの協奏曲3 曲(ピアノ・ヴァイオリン・チェロ協奏曲)+ピアノ三重奏曲3曲のレコーディングをするというこのプロジェクトは、3人が、ヨー ロッパでシューマンのピアノ三重奏曲を演奏するツアーを行った際に持ち上がったといいます。楽器は、ガット弦を張った弦楽器、そしてフォルテピアノで、 ということになり、オーケストラもソロ楽器に合った編成のフライブルク・バロック・オーケストラに決定。指揮は俊英エラス=カサド。オケとソロ楽器の 素晴らしいバランス、自然なアーティキュレーションで作品に対する既成概念を払拭するような、まさにこの顔ぶれでしか為し得ない水準での、新しいシュー マン・シリーズとして世界が注目しています。
チェロ協奏曲は、シューマンがデュッセルドルフ市の音楽監督に就任直後の創作意欲旺盛の時期に書かれた作品。チェロ独特の深みのある響きと哀愁 に満ちた音色、ロマン的な抒情に溢れています。ヴァイオリン、ピアノの華やかな協奏曲に比べると、チェロ協奏曲は渋味がありソリストが主役ではなく、 管弦楽部分とチェロの技巧が一体となり響きあう曲。どんな作品でもエレガントに弾きこなすケラスは、チェロの技巧が駆使される第3楽章のオケの伴奏 付カデンツァでも、クールに洗練された演奏を披露しています。華美な技巧性はなく、オケとチェロの密度が高く内なる情熱を秘めた作品ですので、エラ ス=カサドとフライブルク・バロック・オーケストラ、そしてケラスの知性と情熱が静かに呼応するかのような味わい深い演奏です。
ピアノ三重奏曲第1番は1847年に完成。妻クララへの誕生日プレゼントのために作曲されました。メンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番ニ短調に 影響を受けて作曲され、この2作品はロマン派を代表するピアノ三重奏として広く認知されています。クララも気に入ったという第1楽章は、ピアノ、チェロ、 ヴァイオリンが織り成す優美で伸びやかな旋律から開始されます。そしてこの作品はチェロが素晴らしく響く音域を効果的に使っており、チェロ協奏曲のカッ プリングとして最適な演目と言えるでしょう。ケラスのチェロの響き、ファウストの美音、メルニコフの温かみのある音色が見事なバランスで聴こえてきて、 終楽章のコーダへ向かう圧巻のアッチェレランドは聴きどころです。 ボーナスDVDには、チェロ協奏曲のライヴ映像が収録されています。

HMC-902198(CD+DVD)
シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 op.54
ピアノ三重奏曲 第2番 ヘ長調 op.80
アレクサンドル・メルニコフ(フォルテピアノ/【協奏曲】1837年製エラール、【ピアノ三重奏曲】ジャン=バティスト・シュトライヒャー(ウィーン, 1847年)/いずれもエドヴィン・ボインク・コレクション)
イザベル・ファウスト(Vn/1704年製ストラディヴァリウス[スリーピング・ビューティー])
ジャン=ギアン・ケラス(Vc/ジョフレド・カッパ[1696年])
パブロ・エラス=カサド(指)
フライブルク・バロックO

[CD]録音:2014年8,9月、テルデックス・スタジオ・ベルリン
[ボーナスDVD]収録:2014年5月8日、ベルリン・フィルハーモニー(ライヴ)
シューマンの協奏曲3曲(ピアノ・ヴァイオリン・チェロ協奏曲)+ピアノ三重奏曲3曲のレコーディングをするというこのプロジェクトは、3人が、ヨー ロッパでシューマンのピアノ三重奏曲を演奏するツアーを行った際に持ち上がったといいます。楽器は、ガット弦を張った弦楽器、そしてフォルテピアノで、 ということになり、オーケストラもソロ楽器に合った編成のフライブルク・バロック・オーケストラに決定。指揮は俊英エラス=カサド。オケとソロ楽器の 素晴らしいバランス、自然なアーティキュレーションで作品に対する既成概念を払拭するような、まさにこの顔ぶれでしか為し得ない水準での、新しいシュー マン・シリーズとして世界が注目しています。
ピアノ協奏曲は冒頭から切っ先鋭いテンポ。その後のピアノとオーケストラの掛け合いは実に流麗にしてロマン味溢れております。主題の「ドシララ(ド イツ音名でC-H-A-A)」は愛する妻クララのイタリア名Chiaraを暗示しているとする説がありますが、メルニコフも意味深長に主題を響かせています。 全篇をとおしてメルニコフの生き生きとしたフォルテピアノが際立っており、彼の音楽の充実ぶりをあらためて実感します。オーケストラ間奏もまるで交響 曲を聴いているような、エネルギー全開の演奏となっています。カップリングのピアノ三重奏曲第2番は、1847年に第1番と同時期に作曲されました。 次第にシューマンを苦しめる心の病から逃れるかのように、明るく前向きな内容で、シューマン自身「甘やかで生き生きとした印象」としており、後にクララ・ シューマンはこの作品について「私の魂の深いところをあたたかく包み、最初から最後まで私を喜ばせる作品」であり「大好きで何度も演奏したい」と述 べました。明るく生き生きとした第1楽章冒頭、優しく愛に溢れた第2楽章、穏やかに何かを懐かしむような第3楽章、そしてうねる楽想の終楽章。名 手3人が見事なアンサンブルですべての楽想を慈しむように奏でています。
ボーナスDVDはベルリン・フィルハーモニーで行われたライヴの模様(協奏曲)が収録されています。 (Ki)
HMC-902199
ショパン〜1846年、ノアンでの最後の年
舟歌 op.60
3つのマズルカ op.63〔第1番 ロ長調、第2番 ヘ短調、第3番 嬰ハ短調〕
チェロ・ソナタ.ト短調 op.65
ワルツ op.64〔第1番 変ニ長調、第2番 嬰ハ短調、第3番 変イ長調〕
マズルカ op.67-4 イ短調
2つの夜想曲op.62〔第1番 ロ長調、第2番 ホ長調〕
エマニュエル・ベルトラン(Vc)
パスカル・アモワイヤル(P)

録音:2014年6月
ジョルジュ・サンドと別れることとなる1847年の前年の夏、ショパンはノアンでの最後の夏を過ごしました。数あるショパンの名曲でも中核を成す作 品がこの時期に書かれています。それらを集めたのがこの1枚。ピアノのアモワイヤルはシフラの直系の名手で、ここでも珠玉の音色でショパンの傑作の数々 を奏でています。チェロ・ソナタはショパンの生前に出版された最後の作品。チェロ奏者を務めるのは、アモワイヤルの公私にわたるパートナー、ベルトラン。 非常に繊細で、涙なしには聴けない名演となっています。 (Ki)
HMC-902200(2CD)
エミリオ・デ・カヴァリエーリ(c.1550-1602):音楽劇「魂と肉体の劇」(1600) 魂:マリー=クリード・シャピュイ
肉体:ヨハネス・ヴァイサー
時/ 忠告:ギューラ・オレント
知/ 喜び:マーク・ミルホーファー
喜びの第 1 の使者:キュンフォ・キム
世界/ 喜びの第2の使者/ 地獄に落ちた魂:マルコス・フィンク
現世の生活:ルチアーナ・マンチーニ
守護天使:クリスティーナ・ローターベルク
幸多き魂たち/ 天使たち:クリスティーナ・ローターベルク、エリザベス・フレミング、ベンノ・シャフトナー、フローリアン・フェット、フーゴー・オリヴェイラ
賢人/ 分別:セレーナ・マルカンジ、ロレダナ・ジントーリ
ベルリン国立歌劇場合唱
コンチェルト・ヴォカーレ、ベルリン古楽アカデミー
ルネ・ヤーコプス(指)
〔基本の楽器群〕
マラ・ガラッシ、ロレダナ・ジントーリ、マサコ・アート、キアラ・グラナタ(ハープ)、野入志津子(リュート)、ドロレス・コストヤス(リュート、ギター)、ニコラス・アハテン(リュート、チェテローネ)、ヴィープケ・ヴァイダンツ(オルガン、チェンバロ)、アンドレアス・キュッパース(オルガン、レガール)、ヤン・フライハイト(ヴィオラ・ダ・ガンバ(バス))、ダヴィド・ヤクス(トロンボーン(バス))、バーバラ・ケルニヒ(Vc)、ワルター・ルマー(ヴィオローネ)、クリスティアン・ブーゼ(ドルシアン)
〔装飾的な楽器群〕
ヴァイオリン、ヴィオラ、ヴィオラ・ダ・ガンバ、小型リラ、リコーダー、コルネット、トロンボーン、打楽器
録音:2014年5月、テルデックス・スタジオ・ベルリン
ヤーコプスの最新録音は、カヴァリエーリによる、現存する最古の音楽劇「魂と肉体の劇」。様々な記述などにあたり、充実した通奏低音楽器群を従えた、 カヴァリエーリの世界を生き生きと再現した見事な演奏です。
カヴァリエーリは、芸術家を輩出したローマの貴族の生まれ。父はミケランジェロの親しい友人で、ヴァチカンにも影響力のあった、非常なる有力者だった と言われています。カヴァリエーリ自身は作曲家、オルガン奏者、声楽教師など音楽の分野で活躍したほか、行政官、外交官としても手腕を発揮したようです。 現存する最古の音楽劇(全体に音楽がつけられた劇作品)である本作「魂と肉体の劇」の作曲者として名を残しています。また、数字付き低音を用いた印 刷譜が遺されていますが、こちらも最初期の例となっています。
この音楽劇「魂と肉体の劇」は、プロローグの語りを除いては、音楽のみで構成されていること、さらに、舞曲も含まれていることから、ヤーコプスは、 この作品をオペラといっても間違いではないだろう、としています。様々な編成のアンサンブル、合唱、さらに器楽の楽章を含んだ多彩な音楽がちりばめられ、 変化に富む構成。レチタティーヴォは完全に韻を踏んだかたちで書かれており、歌手が歌うテキストの世界を、充実した通奏低音楽器群がさらにイメージを 広げ盛り上げます。
ヤーコプスは当時の記述などから、数字付きの通奏低音を担当する基本の楽器群として、ハープやリュートなど、さらには管楽器も採用。非常に豊かな音 色のパレットを得ることに成功しています。全体を通して通奏低音パートが美しく響き、ストーリー展開にも重要な役割を果たすかたちの演奏となっています。 なお、カヴァリエーリの指示には、器楽奏者は舞台には上がらず、袖などで、歌い手の息遣いに合わせて演奏するように、とあることから、ヤーコプスも、こ の作品を劇場で実際に上演した際には、可能な限り器楽奏者を袖に配置するようにしたといいます。 (Ki)

HMC-902202
プロコフィエフ: ピアノ・ソナタ第2番ニ短調Op.14
ピアノ・ソナタ第6番イ長調Op.82
ピアノ・ソナタ第8番変ロ長調Op.84
アレクサンドル・メルニコフ(P)

録音:2014年7月8-10日、2015年8月3-5日/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
ショスタコーヴィチの「24の前奏曲とフーガ」や協奏曲で神業を聴かせたメルニコフがプロコフィエフのソナタに挑戦しました。ロシア・ピアノ音楽史 上の名作だけに、メルニコフがどう解釈するのか興味が募ります。 もともとメルニコフの敬愛するリヒテルの十八番として、いくつか残る録音は今日も決定盤とされている作品ばかり。メルニコフの解釈は、リヒテルゆず りの辛口な解釈ながら、リヒテルのような骨太さよりは繊細で、プロコフィエフのうつろいやすい気分を絶妙に表現しています。まさに21世紀風プロコフィ エフ演奏と申せましょう。 プロコフィエフが通称「戦争ソナタ」(ピアノ・ソナタ第6〜第8番)を作曲したのは第2次世界大戦中の1939-44年での厳しい状況下で、主に疎 開先で書かれましたが、中央でない干渉のなさゆえか、プロコフィエフ本来の才気と天才性が輝きをみせています。プロコフィエフの作曲当時、メルニコ フの祖父母の作曲家ニコライ・チェンベルジとザーラ・レーヴィナはすぐ近くにおり、まさに誕生に立ち会っていました。そうした遺伝子上のつながりも、 演奏に思い入れを増しているように思える凄さです。 (Ki)
HMC-902205
グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調*
抒情小品集
 第2集op.38より第8曲「カノン」
 第1集op.12より第1曲「アリエッタ」
 第3集 op.43より第1曲「蝶々」、第2曲「孤独なさすらい人」
 第4集 op.47より第3曲「メロディ」
 第5集op.54より第3曲「小人の行進」、第4曲「夜想曲」
 第6集 op.57より第6曲「郷愁」
 第9集 op.68より第3曲「あなたのそばに」、第5曲「ゆりかごの歌」
 第10集op.71より第1曲「その昔」、第7曲「思い出」
ハヴィエル・ペリアネス(P)
サカリ・オラモ(指)BBC響

録音:2014年10月24日(ライヴ録音、バービカン・センター、ロンドン)*、2014年6月5-6日テルデックス・スタジオ・ベルリン(セッション)
スペインの俊英、ハヴィエル・ペリアネスの新譜は、グリーグ。協奏曲と、抒情小品集からの抜粋というプログラムで、グリーグの魅力をあますところ なく味わわせてくれます。グリーグが25歳で作曲したピアノ協奏曲は、ロマン派の伝統と、ノルウェーの伝統音楽(ハリングなどの舞曲のリズム)が融 合された作品として、非常に高い人気を誇る名曲。オラモ指揮のBBC交響楽団が醸し出す心地よい緊張感の中、ペリアネスのピアノの音色が冴えわたり ます。協奏曲のダイナミックな世界とは一変、ペリアネスの静寂を思わせる音楽性がひときわ輝く抒情小品曲は、どれも優しさを湛えた表情が魅力です。 (Ki)
HMC-902206
ミシェル=リシャール・ドゥ・ラランド(1657-1726):ルソン・ド・テネブル ゾフィー・カルトホイザー(S)
セバスティアン・ドゥセ(指)
アンサンブル・コレスポンダンス

録音:2014 年7月
ルソン・ド・テネブルは、復活祭に先立つ聖週間(受難を受けるためにキリストがエルサレムに入城した棕櫚の主日(日曜日)から、受難の金曜日の翌 日にあたる土曜日まで)の、聖木曜日から聖土曜日にかけての3日間の職務日課のうち、原則として明け方におこなわれる礼拝のこと。闇を意味するテネ ブルという語は、この礼拝では、朗読を進めるにつれ、ロウソクが一本ずつ消されてゆくことに由来しています。この聖務日課は、それぞれ3つの朗読(フ ランス語でルソン)を含み、そのテキストはエレミアの哀歌に基づきます。キリスト教にとってとりわけ重要な受難を思う礼拝の音楽というだけあり非常に 重要視され、このテネブルのための音楽は、ルイ14世(太陽王)の時代に多く作曲され、社会的イベントのひとつにまでなりました。
1714年から太陽王の宮廷に仕えていたラランドも、作品を生み出しました。ラランドの作品は、その没後、パリでとりわけ高い人気を誇っていました。 この作品も1730年に出版されました。ラランドが粋を尽くして書いた、ルソン・ド・テネブルが、カルトホイザーの清冽な歌声で見事によみがえりました。 ゾフィー・カルトホイザーは、モーツァルトの『偽の女庭師』やペルゴレージのオラトリオ『十字架上のキリストの最後の7つの言葉』(HMC902155)でもヤー コプスの指揮のもと素晴しい歌声を披露、近年はプーランクの歌曲などもレコーディングするなど(HMC 902179)、世界で高く評価されているベルギー 出身のソプラノです。 (Ki)
HMC-902207(2CD)
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲集op.18
弦楽四重奏曲第3番 ニ長調 op.18-3
弦楽四重奏曲第1番 ヘ長調 op.18-1
弦楽四重奏曲第2番 ト長調 op.18-2
弦楽四重奏曲第4番 ハ短調 op.18-4
弦楽四重奏曲第5番 イ長調 op.18-5
弦楽四重奏曲第6番 変ロ長調 op.18-6
エルサレムSQ
〔アレクサンドル・パヴロフスキ(1st Vn)、セルゲイ・ブレスラー(2nd Vn)、オリ・カム(Vla)、キリル・ズロトニコフ(Vc)〕

録音:2014年12月
2015年6月に約10年ぶりに再来日し、そのエレガントなスタイルで聴衆を魅了したエルサレム弦楽四重奏団。1993年に創立、96年にデビュー、 2011年録音以降ヴィオラメンバーの交代がありましたが、ヨーロッパを中心にその活動はますます充実をみせており、まさに「弦の国」イスラエルが世 界に誇る完全無欠のアンサンブルの感が強くなっています。今は様々なタイプの弦楽四重奏団がありますが、彼らの演奏スタイルは非常に美しくバランス も整った、いわゆる正統派に属するといえるでしょう。そんな彼らによるベートーヴェンは、各パートが見事に調和しており、きわめて流麗。もちろん激し い感情が顔をのぞかせるところもありますが、美しい音色とバランスが損なわれることはなく、充実の演奏を聴かせています。 (Ki)

HMC-902209
初回限定特典付き
デュティユー:ザッハーの名による3つのストローフェ
ドビュッシー:チェロとピアノのソナタ*
デュティユー:チェロ協奏曲「はるかな遠い国へ」**
エマニュエル・ベルトラン(Vc)
パスカル・アモイヤル(P)*
ジェームズ・ガフィガン(指)ツツェルンSO**

録音:2014年11月(協奏曲)、12月
フランス音楽の二人の巨匠、ドビュッシーとデュティユーのチェロ作品の世界。 ドビュッシーのチェロ・ソナタは、彼が最晩年に構想した一連の器楽曲のシリーズ「様々な楽器のための6つのソナタ」の中の1曲として書かれ ました。(実際ドビュッシーが死の前に完成できたのは「ヴァイオリン・ソナタ」「フルート、ハープ、ヴィオラのためのソナタ」そしてこの「チェロ・ ソナタ」の3作のみ。) フランスの古楽、とりわけクープランの音楽へ回帰するような端正な作品群の中で、この「チェロ・ソナタ」もまた、チェ ロの音色の渋みや切なさと相まって、高貴さに溢れています。 デュティユーの「ザッハーの名による3つのストローフェ」は、スイスの指揮者パウル・ザッハーの70歳の誕生日を記念してデュティユーの他 12人の作曲家たちが彼の名前の綴り(SACHER)を音名に読み替えたものを素材に作曲した際の作品。独奏チェロから紡ぎだされる多様な表情や質 感に、チェロという楽器の雄弁さを感じる1曲です。 デュティユーのチェロ協奏曲「はるかな遠い国へ」は、チェリスト、ロストロポーヴィチの委嘱で作曲された全5楽章からなる作品です。タイトルは、 ボードレールの詩集「悪の華」におさめられている「髪」の一節からとられています。チェロのモノローグで幕を開けるこの曲は、繊細な響きの中 で移り変わる多様な景色の中を通り抜け、再び静寂の中へと収束していきます。 近代フランスのチェロ作品を堪能できる1枚です。 (Ki)
【ダウンロードクーポンについて】
ブックレット内に、CDと同内容のハイレゾ音声トラック(44.1kHz/24bit)音源の無料ダウンロードクーポンが封入されています。初回限定特典。
HMC-902211
バッハ:「レーオポルト侯のための葬送音楽」BWV 244a
(モーガン・ジュルダンとラファエル・ピションによる復元)
ラファエル・ピション(指)
アンサンブル・ピグマリオン
サビーヌ・ドヴィエイル(S)
ダミアン・ギヨン(A)
トーマス・ホッブス(T)
クリスティアン・イムラー(Bs)

録音:2014年5月/ヴェルサイユ宮殿内王立礼拝堂
消失していた「レーポルト侯のための葬送音楽」の復元録音の登場です!これを手掛けたのは、ラファエル・ピション。彼は、アルファ・レーベルから、 たび重なる改訂などで謎が多い「ロ短調ミサ曲」の原点を、見事に再現してみせた、研究と演奏両面にひいでた指揮者。あくなき探求と研究が、また ひとつの素晴らしい成果を生み出しました。
J.S.バッハは、レーオポルト侯(アンハルト=ケーテン侯)(1694-1728)の宮廷で1717-23年の間楽長を務めました。侯は、音楽を愛し、音楽 に精通した主君で、優れた宮廷楽団を有し、バッハのよき理解者でもありました。バッハはこの時期に、「ブランデンブルク協奏曲」「無伴奏ヴァイオリン・ ソナタとパルティータ」、「インヴェンション」、「平均律クラヴィーア曲集第1巻」など多くのすぐれた器楽曲を作曲した充実した日々を送っていました(た だしこれらのほとんどは浄書であり、作品自体がこの時期に成立したかどうか明確でない部分もあります)。
この「レーオポルト侯のための葬送音楽」は、1728年に亡くなった侯のために1729年3月24日に演奏されたもの。楽譜資料は消失しているものの、 「マタイ受難曲」のテキストも手掛けたピカンダーによる、この作品のためのテキストが残されています。このテキストが、マタイ受難曲(初版、1727年版) などの既存のアリア楽曲旋律にそのままあてはめられる構造であることから、この葬送音楽はバッハの自作のパロディの技法を用いて作られたと考える ことができます。たとえば、マタイ受難曲の有名なアルトのアリア「主よ、憐れみたまえ(Erbarme dich)」は、この葬送音楽では「Erhalte mich(私 を忘れないでください)」というテキストに置き換えられており、完全に入れ替え可能なものとなっています。このようにテキストを既存の楽曲にあては めながら、この復元・録音の実現となりました。ブックレットのトラック表には、マタイ受難曲のほか、「侯妃よ、さらに一条の光を」BWV198、ロ短 調ミサ曲など、元になった楽曲との対照表もついています(欧文)。
演奏陣も、俊英アンサンブル・ピグマリオン、さらに歌唱陣もフランスの新しい歌姫ドヴィエイルや、ダミアン・ギヨンらと充実の布陣で、つやがあっ て引き締まった素晴らしい演奏を展開しています。  (Ki)
■ラファエル・ピション
カウンターテナー歌手としてサヴァール、レオンハルト、コープラマンらと共演したことがあり、また、ピアノ、ヴァイオリンも学び、その後、ピエール・ カオの下で指揮も学んだという逸材。バロックから現代作品の初演までを手掛け、2006年、アンサンブル・ピグマリオンを設立。ラモーのオペラ録音、 そして、バッハのロ短調ミサ曲の録音(アルファ)でも話題となりました。
HMC-902212(2CD)
ラモー:歌劇「カストールとポリュックス」(1754年版) カストール/コリン・アインスワース(テノール)
ポリュックス/フロリアン・センペイ(バリトン)
テライール/エマニェル・ド・ネグリ(ソプラノ)
フェーブ/クレマンティーヌ・マルガイヌ(メゾ・ソプラノ)
ジュピター/クリスティアン・インムラー(バリトン)
クレオン、幸運な影、ヘベの侍女/サビーヌ・ドヴィエイル(ソプラノ)
ジュピターの大司祭/ヴィルジル・アンスリー(バス)
ラファエル・ピション(指)
アンサンブル・ピグマリオン

録音:2014年7月/ジャケット絵画:ターナー「マーゲイトの日没」(1840)
ラモーのカストールとポリュックスは、1737年に初演された後、1754年に再上演されました。1750年代といえば、音楽史上重要なブフォン論争の まっただなか。ラモーを代表とするフランス派と、フランス・バロックオペラの豪奢な世界を不自然だとするルソーに代表されるイタリア派との争いとなっ たブフォン論争において、ラモーの一連の作品は非難の対象となってしまっていました。そんな中、1754年にいわばフランス側の最後の切札として再上 演されたのが、この「カストールとポリュックス」でした。再上演に際し、ラモーはプロローグを削除、第1幕は全く新しく創作、さらにいくつかの改訂 をくわえ、よりドラマティックな構成に仕立て直しました。この再演版は大成功をおさめ、翌年の1755年まで定期的に上演され、1763年には宮廷で上演、 さらに1764年と、ラモーの死の半年前65年にも上演されました。その後1770-82年までもたびたび上演されています。神話の世界のきらびやかさと、 洗練されたオーケストレーションは、古典派のオーケストラ時代の到来を告げているともいえるでしょう。この1754年版を、ピション率いるアンサンブル・ ピグマリオンが、実に鮮烈に演奏しています。

HMC-902214(2CD)
モーツァルト:歌劇「後宮からの誘拐」 コンスタンツェ:ロビン・ヨハンセン(ソプラノ)
ブロンデ:マリ・エリクスモーエン(ソプラノ)
ベルモンテ:マキシミリアン・シュミット(T)
ペドリッロ:ジュリアン・プレガルディエン(T)
オスミン:ディミトリー・イヴァシュチェンコ(Bs)
太守セリム:コルネリウス・オボニャ(語り)
RIAS室内Cho
ベルリン古楽アカデミー
ルネ・ヤーコプス(指)

録音:2014年9月/テルデックス・スタジオ・ベルリン
ヤーコプスが「後宮からの誘拐」を録音しました!これが実に鮮烈痛快きわまりない演奏。パーカッションもにぎにぎしく活躍する快速序曲から、トル コを思わせる世界に一気に引きこまれる痛快な演奏です。セリフ部分にも演技と音楽の両面で様々に工夫がなされ、聴いていて実にたのしい「後宮」の 誕生となりました!
1782年の「後宮からの誘拐」のウィーン初演は、聴衆および批評家たちから、かつてない大成功の反響となりました。エキゾチズム(東洋趣味)に 重きを置いた音楽、啓蒙主義思想の礼賛、当時のオスマン帝国に対する偏見とは間逆の筋書が当時の人々にとってまさにドンピシャ、ツボにはまったもの だったのです。また、このオペラはジングシュピール(歌芝居)なのでレチタティーヴォがなく、アリアとセリフで構成されています。現在では、演奏に際 し、セリフ部分は多くの部分がカットされてしまいますが、この録音では改訂を施しながらもフルに収録。さらに、アリアの途中でもセリフを挿入させるな ど、耳のための音楽劇として聴き手が場面や登場人物の心情を想像しやすいような工夫も随所に見られます。さらに、様々な資料から、ヤーコプスは、セ リフ部分でモーツァルトが自らフォルテピアノを操り場面を盛り上げ、次のアリアへのよい橋渡しとなるような即興、あるいは自作の鍵盤音楽からの引用を 織り交ぜたのではと考え、この録音に際してもセリフ部分の何か所かで、フォルテピアノ奏者にちょっとした楽曲を演奏させ、さらにアリアの中でも通奏低 音の枠を超えたようなものを演奏させています。このような細かな工夫により、セリフとアリアのつながりにも自然な流れが生まれ、オペラの内容がよりリ アルなものとして見事によみがえっています。
歌唱陣は、バイロイトにも出演、カルダーラの世界初録音アリア集CD(マルコン指揮)でも注目を浴びたソプラノのロビン・ヨハンセン、既にバロック からロマン派のアリアまで多数のCDをリリース、2015年のザルツブルク音楽祭デビューをしたテノールのマキシミリアン・シュミットなど、今が旬の顔 ぶれがズラリ。なお、ヤーコプスはこれまでにモーツァルトの歌劇として「偽りの女庭師(HMC 902126)」、「皇帝ティートの慈悲(HMC 901923)」、 「イドメネオ(HMC 902036)」、「フィガロの結婚(HMC 901818)」、「ドン・ジョヴァンニ(CD・HMC 901964/映像・HMD 9909013[DVD], HMD 9809013[BD])」、「コジ・ファン・トゥッテ(HMC 901663)」、「魔笛(HMC 902068)」、また交響曲として「第38&41番[HMC 901958]」、「第 39&40番[HMC 901959]」と録音してきましたが、この後宮からの誘拐でいったんオペラ・プロジェクトから離れるということ。今後は、モーツァルト のレクイエムなどが予定されています。 (Ki)
HMC-902216
ヘンデル:「水上の音楽」HWV348-50 (1717)
第1組曲ヘ長調HWV348(10曲)
第2組曲ニ長調HWV349(5曲)
第3組曲ト長調HWV350(6曲)
ベルリン古楽アカデミー
ゲオルク・カールヴァイト(音楽監督)

録音:2015年11月5日
名人集団ベルリン古楽アカデミーの最新盤はヘンデルの「水上の音楽」。1717年7月17日にロンドンのテムズ河を舞台に行われた豪華絢爛な川遊び のお祭り用に、ヘンデルが書いた豪華な本作品を、ベルリン古楽アカデミーがこれまた卓越したアンサンブルで煌びやかに鳴り響かせています。 「水上の音楽」は独奏楽器(ホルン、トランペット、フルート)と合奏による合奏協奏曲の様式で書かれており、管楽器がソリスティックに活躍し、明るく 華やかな雰囲気を演出します。実際にジョージ1世は演奏にいたく感動し、約1時間のこの曲を計3回演奏させ、50人の楽士に対するギャラが150ポ ンドかかったという話まで残っており、音楽も観客も非常に盛り上がった上演だったことがうかがえます。 「水上の音楽」はヘンデルの作品としては珍しく自筆譜が残っておらず、どのような曲順で演奏されていたか長らく謎に包まれており、様々な版(レートリッ ヒ版、クリュザンダー版、ハーティ版、ハレ版など)が存在します。曲の成立を踏まえてヘ長調、ニ長調、ト長調の3つの組曲を主流として演奏されています。 ベルリン古楽アカデミーは、各人のもつ名人芸と一糸乱れぬ精緻なアンサンブル、そして鋭敏なリズム感と絶妙なバランス感覚を駆使して、「水上の音楽」 に生命感を与え作品のもつイベント性をよい一層演出し、色彩豊かな演奏を繰り広げています。 (Ki)
H MC-902217
ベートーヴェン:歌曲&バガテル集Lieder & Bagatellen
希望に寄す op.32
遠い国からの歌 WoO.137
バガテル op.126-2*
私はあなたを愛す WoO.123
バガテル op.126-1
連作歌曲「はるかなる恋人に寄す」 op.98
バガテル op.126-3
アデライーデ op.46
バガテル op.126-5
アリエッタ「口づけ」op.128
バガテル op.126-4
バガテル op.126-6
寂しさの喜び op.83-3(ゲーテの詩による3つの歌より)
あきらめ WoO.149
希望に寄す op.94
ヴェルナー・ギューラ(T)
クリストフ・ベルナー(フォルテピアノ/J. B. Streicher, 1847, G. Hecher's collection)

録音:2014年9月
モーツァルトや宗教作品などでとりわけ優れた演奏を聴かせているギューラの最新盤はベートーヴェン。長年のパートナー、名ピアニスト、クリストフ・ ベルナーのソロを交えてのプログラムとなっております。ベートーヴェンの歌曲は、彼の歌曲や器楽作品に比べると演奏機会が多いとはいえず、もっと評価・ 演奏されてしかるべきと思われます。ギューラの自然でやわらかな、それでいて針の穴を通すような精確な音程が心地よい声は、ベートーヴェンの歌曲の 世界を何にも邪魔されることなく楽しむことができます。ベルナーが奏でているのはJ.B.シュトライヒャーの銘器。歌曲、バガテルの世界のどちらにも理 想的な響きで魅了されます。 (Ki)
HMC-902218
モーツァルト:ピアノ協奏曲集
ピアノ協奏曲第12番 イ長調 KV414
ピアノ協奏曲第11番 ヘ長調 KV413
ピアノ協奏曲第13番 ハ長調 KV415
クリスティアン・ベザイデンホウト(フォルテピアノ)
フライブルク・バロック・オーケストラ
ゴットフリート・フォン・デア・ゴルツ(指))

録音:2014年11月15-17日、フライブルク・アンサンブルハウス
ザイデンホウト&FBOによるモーツァルトのピアノ協奏曲集第2弾の登場。「モーツァルトの再来」とも称されるフォルテピアノの天才ベザイデンホウト。 今回も彼のマジックは冴え渡り、耳になじんだこれらの作品でも、新鮮な驚きを与え楽しませてくれます。ひとつひとつのパッセージが実に活き活きと愛 らしい表情に満ちています。また、ピアノをささえるオーケストラも実に細やか。愉悦の極みのモーツァルトです!ここに収められた3曲はいずれも1782 年頃に作曲され、管楽器を抜いた弦四部でも伴奏できるというもの。これは、モーツァルトが当時の演奏会のありよう、さらに玄人たちが私的な場所でも 楽しめるように、と当時のウィーンの市場に対して配慮した結果。もちろんここでは管楽器も含むかたちで演奏されております。作品を純粋に聴いてもモー ツァルトの才を感じますが、モーツァルトがマーケティングにも実に長けた人物であったことにもまた感心させられます。 (Ki)
HMC-902219
ブラームス:ヴァイオイン・ソナタ第3番 ニ短調 op.108
シューマン:3つのロマンス op.94
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ長調 op.100
ディートリヒ/シューマン/ブラームス:F.A.E.ソナタ
イザベル・ファウスト(Vn/1704 年製ストラディヴァリウス「スリーピング・ビューティ」)
アレクサンドル・メルニコフ(P/ 1875 年製ベーゼンドルファー(メルニコフ所蔵))

録音:2014 年9月
快進撃がとまらないイザベル・ファウスト。次なる新譜は、こちらも充実著しい盟友、アレクサンドル・メルニコフとのコンビによるブラームス&シュー マンです。 このブラームス&シューマン(&F.A.E.ソナタ)のプログラムは、2014年6月に日本でも公演があり、大きな話題となりました。既にファウストとメルニ コフはブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番を録音しており(HMC 901981(現在廃盤)。この時の録音でも同じベーゼンドルファーが用いられまし た)、これでファウストとメルニコフはブラームスのヴァイオリン・ソナタを全曲録音したことになります。 第3番の冒頭から、ファウストの振幅の大きな歌にメルニコフもぴたりと応えた最高のアンサンブルが展開されています。ファウストが奏でる音楽は非常 にやわらかで優しく、強弱や音色の幅も非常に豊か。そんなファウストにぴたりと寄り添うようにメルニコフが奏でるベーゼンドルファーの音色も、いぶし 銀のような音色から輝かしいものまでその幅広さに驚かされます。また、強弱の幅も実に豊かで、モダンのピアノよりも劇的に感じる瞬間もあるほど。ファ ウストとメルニコフ、充実著しいアーティストたちの作品に対する愛情と思いがつまった1枚となっています。 (Ki)

HMC-902220
チャイコフスキー:交響曲第1番 「冬の日の幻想」
幻想序曲「テンペスト」op.18
パブロ・エラス=カサド(指)
セントルークスO

録音:2014年11月7日、2015年10月30-31日、DiMennaセンター、ニューヨーク
HMFレーベルでの、FBOとのメンデルスゾーン・プロジェクト、およびシューマン・プロジェクトでも高く評価されている指揮者エラス=カサド。オペ ラでの活躍もあり、世界が注目する若手の一人です。そんなエラス=カサドが現在首席指揮者を務めるセントルークス管弦楽団とのチャイコフスキーの登 場です。 セントルークス管弦楽団は1974年からの歴史をもつ室内管弦楽団。近年では、音楽監督としてノリントン(1990-94)、マッケラス(1998-2001)、 ドナルド・ラニクルズ(2001-2007)らが歴任、エラス=カサドは4代目の首席指揮者です。2011年に楽団の首席指揮者に4年の契約で就任、契約 は更新され、2017年の9月まで、その関係はつづきます。 交響曲第1番はチャイコフスキー最初期の作品。全曲を通してあらわれる民謡風旋律をエラス=カサドは熱っぽく響かせています。カップリングは、海 を舞台とした劇的な「テンペスト」。メック夫人もこの作品を聴いてチャイコフスキーを支援するようになったというこのドラマティックな作品にちりばめら れた抒情的旋律の一つ一つを、エラス=カサドはたっぷりと歌わせています。 (Ki)
HMC-902221
IL TEATRO ALLA MODA〜当世流行劇場
ヴィヴァルディ:「オリンピアーデ」からシンフォニア ハ長調 RV 725〔1.アレグロ 2.アンダンテ 3.アレグロ〕
ヴァイオリン協奏曲 ヘ長調 RV 282(オリジナル版)〔1.アレグロ・ポーコ 2.ラルゴ 3.アレグロ〕
スコルダトゥーラ調弦されたヴァイオリンの協奏曲 ロ短調 RV 391〔1.アレグロ・マ・ノン・トロッポ 2.ラルゴ 3.アレグロ〕
ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 RV 228〔1.アレグロ 2.ラルゴ 3.アレグロ〕
ヴァイオリン協奏曲 RV 314a〔アダージョ〕
ヴァイオリン協奏曲 ト短調 RV 323〔1.アレグロ 2.ラルゴ 3.アレグロ〕
ヴァイオリン協奏曲 ト短調 RV 322*〔1.アレグロ 2.ラルゴ 3.アレグロ〕
「ヴィオリーノ・イン・トロンバ」のための協奏曲 ト長調 RV 313〔1.アレグロ 2.アンダンテ 3.アレグロ〕
「ポントスのアルシルダ王妃」RV 700より第1バレエ ト短調**〔1.ラルゴ 2.アレグロ〕
ヴァイオリン協奏曲ト短調 RV316より第3楽章ジーグ(プレスト)***
ヴァイオリン協奏曲 変ロ長調「キアーラのために」RV 372a、アンダンテ
ラルゴ RV 228(ピゼンデルの版?)
アマンディーヌ・ベイエ(Vn)
リ・インコーニティ

録音:2014年11月
フランス古楽界の新時代の担い手、ベイエ率いるリ・インコーニティ(名もなき者たち、の意)による、非常に生き生きとしたヴィヴァルディの登場。「F.クー プラン:讃歌集(HMC 902193/ KKC 5408)」でも高い評価を得たグループとあって、注目です。 タイトルにある「IL TEATRO ALLA MODA」は、バロック時代の作曲家・音楽評論家であるベネデット・マルチェッロが1720年代終わりに出版した、 当時の音楽・オペラをめぐる様々を風刺した書籍(邦訳書が出版されており、その書名は『当世流行劇場』)。この本の中でマルチェッロは当時最大の人 気を誇っていたヴィヴァルディを攻撃しています。貴族階級に属し、正統的な作曲技法のみを重んじて作曲するマルチェッロとは対照的に、ヴァイオリンを 自ら縦横無尽に弾き、劇場主らと組んで興業の部分にまで関わるなど、いわゆる商売の部分にも積極的だったヴィヴァルディ。ヴィヴァルディのこれみよ がしなヴィルトゥオジティ、作曲技法、オペラの派手な演出などをマルチェッロは本の中でこっぴどく書きました。しかし、書物から300年ほどたった今なお、 ヴィヴァルディの音楽の新鮮さ、才気煥発さ、鮮やかなコントラストなどが私たちを楽しませてくれているのは周知の事実。ベイエ率いるリ・インコーニティ は、ヴィヴァルディの様々な作品を新たなひとつの舞台作品の物語のように仕立て、ヴィヴァルディの音楽の斬新さや多様性をあらためて私たちに感じさせ てくれます。 ベイエの魅力である喜びに溢れたようなリズム、愛に満ちた明るい音色がアンサンブル全体にゆきわたり、非常に自由闊達なヴィヴァルディが展開され ています。1パート1人で展開され、互いのバランスのとりかたや前への出方など、呼吸のほどが実に見事なアンサンブルです。
HMC-902222
ブラームス:ピアノ三重奏曲第1番ロ長調Op.8(初稿版)
ピアノ四重奏曲第3番ハ短調Op.60※
トリオ・ヴァンダラー
【ジャン=マルク・フィリップス=ヴァイジャベディアン(Vn)、ラファエル・ピドゥー(Vc)、ヴァンサン・コック(P)】
クリストフ・ゴーゲ((Va)

録音:2015年1月、ベルリン、テルデックス・スタジオ
1987年結成されたトリオ・ヴァンダラー。1999年からハルモニア・ムンディでリリースを続けており、そのどれも高い評価を得ています。古典派か ら現代まで幅広いレパートリーをもち、各メンバーの技術力の高さはもとより、3人の息のあったアンサンブルで繰り広げられる演奏は圧倒的。 今回リリースされるのはブラームス。以前2枚組のピアノ三重奏曲全集(廃盤)に続くもの。ブラームスはピアノ三重奏曲を3曲書いています。1854 年に第1番の初稿が完成、1866年に第3番を書き終えた後、1891年に第1番を自身の手によって大幅に改訂しています。ブラームスは通常改訂版を 出した場合は、オリジナル版を破棄していますが、これはブラームスが唯一自ら2つの版を残した作品。現在演奏されるのは改訂版がほとんどで、トリオ・ヴァ ンダラーも全集の際は改訂版で録音しています。2つの版は主題を入れ替えたり、長さを短縮したりと大幅に書き直されています。初稿版はやや冗長になっ ている部分もありますが、若々しい輝きも感じ取ることができます。トリオ・ヴァンダラーの演奏は、しなやかで自然体の表現が魅力的で、3人の個性が 見事にとけあった美しい演奏を聴かせてくれます。カップリングには、ヴィオラのクリストフ・ゴーゲを迎えピアノ四重奏曲第3番を収録。後期特有の難 解さはありますが、円熟の境地に達したともいえる音楽を、深い情緒を感じさせる演奏で聴かせます。 トリオ・ヴァンダラーは2016年6月に日本ツアーが予定されています。 (Ki)
HMC-902225
シュニトケ:12の回心のための詩篇 (1988)
3つの聖歌 (1984)
ハンス=クリストフ・ラーデマン(指)
RIAS室内Cho

録音:2015年2月/イエス・キリスト教会(ベルリン)
「12の回心のための詩篇」は1988年、ロシアのキリスト教受洗千年祭を記念して書かれました。旧約聖書のアダムが楽園を追われてから回心するま でのいきさつを描いています。古いロシア聖歌を基本にしながらも、シュニトケならではの不協和音や対位法を駆使して斬新。人声の表現力の豊かさに驚 かされます。興味深いのは、この作品に取り組んでいる際にいくつか疑問が生じ、作曲家デニーソフの先妻が所有していた自筆譜を見ることができ、出版 の際にヴィクトル・ススリンが行った変更を元に戻しての原典版初録音となりました。「3つの聖歌」は1984年に、当時国立シンフォニー・カペレ合唱団の指揮者だったヴァレリー・ポリャンスキーの依頼で作曲したもので、ソ連時代な がらロシア聖歌の様式にのっとっているのが斬新。 どちらも教会スラヴ語による歌唱。現在ドイツ合唱界を牽引するハンス=クリストフ・ラーデマンの見事なバランス感覚が光ります。 (Ki)
HMC-902226
スペインの室内楽
グラナドス:ピアノ五重奏曲ト短調Op.49
トゥリーナ:ピアノ五重奏曲ト短調Op.1
 アンダルシアのミューズOp.93〜カリオペ
ハヴィエル・ペリアネス(P)、
キローガSQ

録音:2015年2-3月テルデックス・スタジオ(ベルリン)
1978年スペイン出身のハヴィエル・ペリアネス、独特の繊細なピアニズムで世界の注目を集める俊英。彼が母国の室内楽作品に挑戦しました。 グラナドスの数少ない室内楽曲のひとつピアノ五重奏曲ト短調は、有名なスペイン舞曲集などと同時期1895年の作で、対位法などの探求がみられつ つも生来のスペイン風味が魅力的。ペレアネスの演奏で聴くことができるのはたいへんな贅沢と申せましょう。 カップリングはトゥリーナの「作品1」。ベートーヴェンかフランクを思わせるこれも力の入った作品ですが、やはり全体にみなぎるスペイン調が嬉しく なります。円熟期1942年の「アンダルシアのミューズ」は9名の女神を描いていて、それぞれ楽器編成が異なりますが、カリオペはピアノ五重奏により ます。偉大な後輩ホアキン・ロドリーゴに捧げられています。 ペレアネスは的確な技巧と詩的な音楽性が絶美。キローガ弦楽四重奏団がスペイン色濃厚な演奏を繰り広げ、華を添えています。 (Ki)
HMC-902228
メンデルスゾーン:交響曲第3番イ短調OP.56「スコットランド」
交響曲第4番イ長調OP.90「イタリア」
パブロ・エラス=カサド(指)
フライブルク・バロック・オーケストラ

録音:2015年3月スペイン、オーディトリオ・イ・セントロ・デ・コングレス、ムルシア
注目のスペイン人指揮者パブロ・エラス=カサドによるメンデルスゾーン第2弾。第1弾は、バイエルン放送響との「賛歌」(HMC902151/ KKC5407)でしたが、今回は「古楽界のベルリン・フィル」とも称されるフライブルク・バロック・オーケストラとの演奏で、「スコットランド」と「イタリア」 を収録しました。エラス=カサドは、2011年本家ベルリン・フィルにデビューした際も「スコットランド」を取り上げており、本アルバムでも力演を聴か せてくれています。 1829年にメンデルスゾーンがスコットランドへ旅行した時の印象を書いた交響曲第3番「スコットランド」は、詩的な叙情を湛えた美しい旋律が魅力で、 大変人気のある作品です。そしてメンデルスゾーンの5曲の番号付き交響曲のうち「スコットランド」とともに有名なのが交響曲第4番「イタリア」です。 1830/31年にイタリアへ旅した際に作曲に取りかかっており、明るく躍動感に満ちたリズムと魅力的な旋律はメンデルスゾーンの代名詞といってもよいで しょう。 エラス=カサドは知的な解釈とスピード感溢れる指揮が特徴です。各パート間の流れを際立たせ、各楽器のバランスの取り方が見事で、作品のすみずみま でを見渡すことのできる情報量の多さ、そしてメンデルスゾーンの品格と快活さを失わない音楽を作り上げています。 (Ki)
HMC-902229
OVERTONES(倍音)〜調和する季節
「The Chant of Stars(星の歌)」、
「Overtone Dance I. Autumn(倍音の歌T 秋」)、
「Far away to Home(はるか家路)」、
「Overtone Dance II. Summer Wind(倍音の歌U 夏の風)」、
「Overtones of the Sky(空の倍音)」、
「Seismic Echo(地震波)」、
「Sun and Snow(太陽と雪)」、
「Dragon Dance(ドラゴン・ダンス)」、
「Morning Prayer(朝の祈り)」、
「Overtone Dance III. Spring(倍音の歌V 春)」、
「Overtone Dance IV. Winter Heart(倍音の歌W 冬の心)」
「Five Leaf Clover(5つ葉のクローバー)」、「Away」
ワン・リ(口琴、フルス、声ほか)
ウー・ウェイ(中国笙、芭烏、玲琴、声、馬頭琴)

録音:2015年1月、テルデックス・スタジオ(ベルリン)
中国笙のウー・ウェイ、そして口琴のワン・リ、東洋の伝統音楽の第一人者である2名のコラボレーション・アルバムの登場。ウー・ウェイは、37本 の竹管から成る中国笙をはじめ、芭烏(リードをもつ中国の笛)、玲琴(胡弓の一種、擦弦楽器)、馬頭琴を自在に操り、また、自身の声をもって世界を 表現。ワン・リも、口琴のほか、フルス(ひょうたん笛)、玲琴(チェロの弓を用いて奏する胡弓の一種)などを用いてこたえます。聴き手を虜にする倍音 と独特の音色の宝庫のようなアルバム。伝統音楽でもなく現代音楽でもなく、何の楽器で演奏されているか俄かには判別できないような、非常に独特な 世界が広がっています。 (Ki)


HMC-902230(2CD)
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲(全曲)
ヴァイオリン協奏曲第1番 変ロ長調K207
ロンド 変ロ長調K269(261a)
ヴァイオリン協奏曲第2番 ニ長調 K211
ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K216 a
ロンド ハ長調 K373
ヴァイオリン協奏曲第4番 ニ長調 K218
アダージョ ホ長調 K261
ヴァイオリン協奏曲第5番 イ長調 K219
【※カデンツァ/すべてアンドレアス・シュタイアー作】
イザベル・ファウスト(Vn/ストラディヴァリウス「スリーピング・ビューティ」(ガット弦使用))
イル・ジャルディーノ・アルモニコ
ジョヴァンニ・アントニーニ(指)

録音:2015年3月21-23日、2016年2月4-8日/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
イザベル・ファウストのモーツァルトのヴァイオリン協奏曲、全曲での登場。管弦楽はイル・ジャルディーノ・アルモニコ、さらに、カデンツァは鍵盤楽 器奏者のアンドレアス・シュタイアーの筆によるもの、と大注目の新譜です! 近年ますます充実著しいファウスト。その音色はますます輝かしさとやわらかさを増し、音楽の深化もとどまるところを知りません。直近のシューマン・ プロジェクトでも、作品に対する既成概念を払拭するような素晴らしいシューマンのヴァイオリン協奏曲を聴かせてくれました。このモーツァルトでも、 シューマン録音と同様、愛器スリーピング・ビューティにガット弦を張って録音に臨んでいます。アレグロ楽章でのファウストならではのまっすぐな音色、 緩徐楽章でのえもいわれぬ弱音の美しさ。刻々と変化する魅力の表情。そして管弦楽とのアンサンブルの妙!ファウストの音色と、イル・ジャルディーノ・ アルモニコのとろみがありつつエッジの効いた音色が実によく合っています。弦の美しさが最高の状態でとらえられた録音も見事。すべてが想像を越えた 素晴らしさです。 ファウストは、シュタイアーがピアノ協奏曲で素晴らしいカデンツァを自作で演奏していることに注目し、シュタイアーにヴァイオリン協奏曲のカデンツァ を作ってほしいと依頼したということ。シュタイアーは最初は躊躇したものの、最後は覚悟を決めて引き受けたそう。様々な研究を重ねた上でのシュタイアー のカデンツァ、こちらも大注目です! (Ki)
HMC-902232
アントニオ・ソレール神父:チェンバロ・ソナタ集
前奏曲第3番ハ長調/ソナタ第1番ハ長調/同第2番ハ長調/同第17番イ短調/同第18番イ短調/同第40番ニ短調/同第38番ニ短調/同第11番変ロ長調/同第12番変ロ長調/間奏曲/ソナタ第7番イ長調/同第8番イ長調/前奏曲第4番ヘ短調/ソナタ第13番ヘ短調/同第14番ヘ短調/同第42番変イ長調/同第43番変イ長調/間奏曲/ソナタ第25番ロ短調/同第26番ロ短調/ソナタ・パストラール第30番ニ長調/ソナタ第31番ニ長調/間奏曲「迷宮の迷路」/ソナタ第15番ハ長調/同第16番ハ長調/わが人生のこの太陽の名声よ永遠なれ
ディエゴ・アレス(Cem)

録音:2015年3月ゼクエンツァ・スタジオ(モントルイユ)
生涯を聖職者として送ったアントニオ・ソレール(1729-1783)。約150曲残されたチェンバロ・ソナタは師スカルラッティの影響を示しつつも、イベ リア色香る独自の魅力を放っています。このアルバムに収められた26篇はすべて世界初録音。ニューヨークのモルガン・ライブラリー所蔵の自筆譜を使 用して録音されました。当時のイタリアやスペインの鍵盤ソナタは、同じ調性で一対の曲を成していますが、ここではそれをきちんと再現。美しいメロディ と陽光あふれる世界は、何故いままで埋もれていたのか不思議なほど魅力的。1983年生まれのディエゴ・アレスはリチャード・エガーやジェスパー・ク リステンセンらに師事した将来を嘱望される若手。ジョエル・カスマン制作の1734年セビーリャ・チェンバロのレプリカ楽器が、スペイン黄金時代の響 きを味あわせてくれます。 (Ki)
HMC-902233(2CD)
シューベルト:ピアノ三重奏曲集
ピアノ三重奏曲第1番 op.99 D.898 変ロ長調
三重奏曲「ノットゥルノ」変ホ長調 op.148 D.897
ピアノ三重奏曲第2番 op.100 変ホ長調
アンドレアス・シュタイアー(フォルテピアノ/クリストファー・クラーク(1996)〔コンラート・グラーフ(1827, ウィーン)のコピー〕)
ダニエル・ゼペック(Vn/ロレンツォ・ストリオーニ(1780))
ロエル・ディールティエンス(Vc/マルテン・コルネリセン(1992)/ストラディヴァリウスのコピー)

録音:2015年6月15-18、20-22/ベルリン・テルデックス・スタジオ
シュタイアーの最新盤は、シューベルトのピアノ三重奏。ヴァイオリンは、ドイツ・カンマーフィルのコンサートマスターにして、アルカント・カルテット でセカンド・ヴァイオリンを務めるダニエル・ゼペック。チェロは、ハルモニアムンディにも数々の名録音をものしている、しっとりとした音色が魅力の名 手ディールティエンス。嬉しいメンバーでの録音の登場となりました。 チェンバロを弾いてもフォルテピアノを弾いても、はたまた現代のピアノを弾いても、シュタイアーは実に詩情豊かな音色で独自の世界を聴かせてくれる 名手。シューベルト作品では、以前ハルモニアムンディからト長調D894のソナタをリリース(HMC 902021)、シューベルトの心の闇をも優しくつつみ こむような柔らかな音色が印象的でした。ここでもシュタイアーの詩情と慈悲深い音色は全開。弦楽器二人が奏でる音との絡み合いはえもいわれぬ美しさ です。シューベルトの名作、ピアノ三重奏曲にまた新たな名演が誕生しました。 (Ki)
HMC-902235
バルトーク:弦楽四重奏曲集
第2番 イ短調 op.17 Sz.67、
第4番 ハ長調 op.4 Sz.91,
第6番 ニ長調 Sz.114
エルサレムSQ
〔アレクサンドル・パヴロフスキ(1st Vn)、セルゲイ・ブレスラー(2nd Vn)、オリ・カム(Vla)、キリル・ズロトニコフ(Vc)〕

録音:2015年7月
アラブのアクセントを思わせる激しい第2楽章をふくむ第2番、民俗音楽とアヴァンギャルドが巧みに融合された第4番、そして、まもなく亡くなる母、ファ シズムの台頭という失意の中書かれた傑作第6番を収録。バルトークは弦楽四重奏曲を1909年(第1番)から1939年(第6番)の間に6曲作曲 しており、バルトークの人生と作風の転機や変遷が濃厚に反映されていると言われていますが、そのことをあらためて実感するプログラムです。 1996年のデビューから20年を迎え(2011年からヴィオラのメンバーがアミハイ・グロスからオリ・カム(現ベルリン・フィル)に交代)、ますます世 界で活躍しているエルサレム弦楽四重奏団。バルトーク特有の激しいリズムの部分でも、美しい歌声を失わないバランス感覚はさすがです。 (Ki)
HMC-902238
パッヘルベル:4月の嵐〜組曲、カノン、アリア集
音楽の楽しみ〜パルティータ第5番ハ長調
いかに儚き、ああ、いかに空しき、人の人生よ*
音楽の楽しみ〜パルティータ第2番ハ短調
4月の嵐*
音楽の楽しみ〜パルティータ第6番変ロ長調
組曲4声のパルティータト長調
我が命とその十字架*
音楽の楽しみ〜パルティータ第3番変ホ長調
音楽の楽しみ〜パルティータ第4番ホ短調
善良なヴァルター、我らの市参事会員*
音楽の楽しみ〜パルティータ第1番ヘ長調
おお、偉大なムーサの光*
カノンとジーグ
アマンディーヌ・ベイエ(Vn)
リ・インコーニティ
ハンス・イェルク・マンメル(T)*

録音:2015年7月アルセナル文化センター
アマンディーヌ・ベイエ率いる古楽アンサンブル、リ・インコーニティによるパッヘルベルの室内楽、アリア集。パッヘルベルといえば、本アルバムの最 終曲として収録されている「カノン」が大変有名で、世界中で親しまれています。この曲は本来3本のヴァイオリンと通奏低音による「カノンとジーグ」 が対になった作品。軽快なテンポと3声部の絡みが立体的な色彩を構築し、素晴らしい手腕で対位法、カノン進行を処理しており、まさに彼の代表作と 言える楽曲です。 パッヘルベルは現代では「癒し」の音楽の代表のような扱いですが、アイゼナハ、エルフルト、シュトゥットガルト、ニュルンベルクなど、教会・宮廷オ ルガニストとして活躍、バッハ以前のドイツの作曲家として最も重要な人物の一人です。オルガニストとしても多忙でありましたが、大変な多作家でもあり ました。オルガン作品はもちろんのこと、その他の鍵盤楽曲、室内楽、声楽曲、典礼作品など多岐に渡っています。 室内楽曲のうち最も重要な作品が、1695年ニュルンベルクへ移ってから出版された<音楽の楽しみ>。この曲集は、2つのヴァイオリンと通奏低音に よる6つの組曲からなっています。組曲はソナタと一連の舞曲からなり、その多くがフランス風様式で書かれ、特に第4、5番は壮大なシャコンヌで締めく くられており、ドイツの語法から離れていった手法がうかがえます。ベイエ&リ・インコーニティの演奏はタイトル通り音楽の楽しさを表現するような、明 るく生き生きとした演奏を聴かせてくれます。また、テノールのハンス・イェルク・マンメルを迎え、アリアが組曲の間に収録されています。パッヘルベルのアリアのほとんどは、祭典、洗礼、葬式、 新年などの特別な行事のために書かれたもので、艶やかな独唱が響き渡る作品です。 (Ki)
HMC-902239
ラインの娘〜シューベルト、シューマン、ブラームス、ワーグナー
■モルペウスの娘
ワーグナー:ライン川の河底に(女声合唱、ハープ、4つのホルン、2本のコントラバス)
シューマン:子守歌Op.78-4(女声四重唱とハープ)*
ブラームス:私は角笛を苦しみの谷で鳴らすOp.41-1(4つのホルン)
■人魚
シューマン:ロマンス第1集Op.69-5「海の女神」
シューベルト:詩篇23番「主はわが飼い主」D.706(女声とハープ)
シューマン:ロマンス第2集Op.91-6「海の中で」
■セレナーデ
ワーグナー:ジークフリート〜ジークフリートの鐘(ホルン・ソロ)
ブラームス:女声合唱のための13のカノンOp.113-5「かたい決意」
シューベルト:セレナーデD.920(メゾソプラノ、女声合唱)
■嘆きの女たち
シューベルト:私は涙に濡れてD.131b(単純な3声のカノン)
シューマン:ロマンス第1集Op.69-6「礼拝堂」
シューベルト:挽歌D.836(女声合唱、2つのホルン、ピアノ/ハープ)
ワーグナー:神々の黄昏〜葬送行進曲(4つのホルン/ジェームズ ウィルコックス編)
■もの憂い恋のうらみ
イザーク(c1450-1517):インスブルックよさらば*
ブラームス:女声合唱のための13のカノンOp.113-2「愛の神は私に過酷な姿であらわれる」
 女声合唱のための13のカノンOp.113-13「もの憂い恋のうらみ」
■ラインの娘
ワーグナー:神々の黄昏〜ラインの娘(女声合唱、2つのホルン、ハープ)*
ブラームス:2つのホルンとハープを伴う女声合唱のための4つの歌[ハープは鳴り響く/シェークスピアの歌「死と来たれ」/庭師/フィンガルの歌]
*=ヴィンセント・マナック編曲
アンサンブル・ピグマリオン
ラファエル・ピション(指)
ベルナルダ・フィンク(Ms)
エマニュエル・セイソン(Hp)
アネケ・スコット(Hrn)
ヨゼフ・ワルター(Hrn)
オリヴィエ・ピコン(Hrn)
クリス・ラーキン(Hrn)

録音:2015年7月パリ、サン=テスプリ寺院
いま最もフランス古楽界で注目されている1984年生まれのラファエル・ピション。これまでにハルモニアムンディから「バッハ:レオポルト候のための葬送音楽」 (HMC.902211)や「ラモー:カストールとポリュックス」(KKC.5492)など、既成概念を覆すようなアプローチの録音を発表し現代古楽界に衝撃を与えています。 このアルバムは彼が率いるアンサンブル・ピグマリオンと、メゾソプラノのベルナルダ・フィンク、そしてハープのエマニュエル・セイソンをメインに迎え、ライ ン川に魅了された作曲家シューベルト、シューマン、ブラームス、ワーグナーらの女声合唱を中心としたプログラムを収録しています。 スイス、ドイツ、フランス、オランダにまたがって流れるライン川は、美しい少女に魅せられた水夫を誘惑し、船を遭難させるという「伝説」や神話が残され、 数々の歴史の舞台となり、ヒューゴ、ネルバル、ハイネ、アインヒェンドルフ、ターナーなど多くの作家、画家、芸術家を魅了し続けています。ワーグナーの「ラ インの黄金」では、ラインの川底に隠された黄金を守る3人の水の乙女たちが登場します。ピションとピグマリオンはその「乙女」とともに川の流れをたどろう というプログラミングで、それぞれの曲をいくつかのカテゴリーに分け父なるラインの秘密に迫っています。珍しい女声合唱曲の数々をカウンター・テナーとして も活躍するピションならではの解釈で聴かせてくれます。 (Ki)
HMC-902241
アンリ・デュ・モン(1610-1684):ルイ14世の礼拝のためのモテットと聖体奉挙の曲
メモラーレ
イエスよ、わが心の喜び
1000回汝に祈る
おお、永遠に慈悲深い神よ
深い暗闇の影に/おお神々しい神秘よ
天の女王に栄えあれ
おおいと甘き聖母よ
なんと美しき/いと高く神々しい
バビロンの流れのほとりで
アンサンブル・コレスポンダンス
セバスティアン・ドセ(指)

録音:2015年9月、グルノーブル、MC2
1663年から83年の20年間、アンリ・デュ・モンは、ルイ14世のチャペルで音楽監督を務めていました。日々の礼拝のためにデュ・モンは、フル・コー ラスのモテットから、独唱のための親密な作品まで、様々な音楽を作っていました。「夜の王のコンセール」をリリースするなど、ルイ14世関連のスペシャ リストとして活躍するドセ。このディスクでも自ら指揮とオルガンを担当しながら、古の王宮の礼拝で奏でられた音楽をやわらかな響きで再現しています。
HMC-902242
トラキアの伝統音楽〜サンデー・モーニング・セッションズ
フランク・ルリシュ:ハムサ
S.シノプロス:ニハーヴェント・セマーイー
ルトスワフスキ:ザッハー変奏曲
オスタド・モハメアド・レザ・ロフティ:ザブリとシュスタリ
作曲者不詳(伝承曲/アラビアの歌):Visite nocturne
作曲者不詳(伝承曲):私が鳥だったら
作曲者不詳(ギリシャの結婚の歌ほか):日曜日の朝
シェミラーニ兄弟:Dast e Kyan(即興演奏)
イェルク・ヴィトマン:デジタル・エチュード(2015)
作曲者不詳(バルカンの伝承曲):ハサピコ
ロス・ダリー:カルシラマ
トラキアの伝統音楽:7/8のダンス
ジャン=ギ アン・ケラス(Vc)
ソクラティス・シノプロス(リラ)
ケイヴァン・シェミラーニ&ビヤン・シェミラーニ(ザルブ/ダフ)

録音:2015 年 9-10月
ケラスがいざなう、時空を越えた旅路。蠱惑的なリズムに乗ってケラスが奏でる古の旋律と、打楽器、リラの音色が合わさって、古の人々が行き交う喧 騒が聞こえてくるかのよう。古楽から現代まで、おそろしいまでに精確な技術でいとも簡単にその垣根を越えるケラスによる、時代と地域を大きくまたがる プロジェクトの登場。タイトルのTHRACEとは、紀元前2,3世紀に栄えた文化交流も活発なトラキアのことで、歴史的に様々な地域のことを指しますが、 本アルバムでは、ギリシア、トルコおよびブルガリアの音の原風景がとらえられています。ケラスのチェロの音色と、シノプロスが奏でるリラの音色が混然 一体となり生まれる魅惑的な旋律、シェミラーニ兄弟のパーカッションの妙技にも引き込まれる1枚。幼馴染の名打楽器奏者シェミラーニ兄弟、そして12年来の知り合いであるリラの名手、シノプロスの繰り出すリズムと音色が織りなす世界に、ケラス は自分やチェロという存在を融け込ませています。注意深く聴けば紛うことなきケラスのチェロの音色なのですが、チェロという楽器の枠を越えた世界が 広がっています。2016年6月には本アルバムのメンバーとプログラムを携え来日、聴衆を熱狂させました。ケラス自身、「ずっと取り組みたかったプロジェ クト」と語るプロジェクト。変幻自在、きわめて柔軟なケラスの音楽力にあらためて驚嘆させられる1枚です。 本CD1曲目の「ハムサ」は現代の作曲家によるもの。5拍子で書かれているのですが、西洋音楽に慣れ親しんだ耳には馴染みのないリズムに感じられ、 1曲目から聞き手は一気に別世界へと引き込まれます。アルバムのタイトルにもなっているサンデー・モーニングは、ギリシアに伝わる結婚の歌をシノプロ スがアレンジしたもの。クレタ島では、結婚を祝う音楽に、リラは欠かせないと言います。ルトスワフスキの作品は微分音が多様され、伝統音楽の音響とマッ チします。また、ヴィトマンの作品デジタル・エチュード(フランス語のdigitalは「指の」の意もある)は、ブーレーズ追悼のために書かれたもので、弓 をまったく用いず、ピツィカートやチェロ本体をたたく音のみで構成されており、シェミラーニ兄弟のパーカッションにも通じます。全体をとおしてプログラ ムを見ないで聴くと、伝統音楽なのか現代音楽なのか、区別がつかないくらいに巧みに構成された1枚。チェロとリラの音色も絶妙にマッチします。ケラ スのような名手だからこそ為し得た、文化・文明の高度な融合がここにあります。 (Ki)
HMC-902244
ラモー:歌劇「イポリートとアリシー」組曲
ベルリオーズ:幻想交響曲
ダニエル・ハーディング(指)
スウェーデンRSO

録音:2015年10月、ベルワルト・ホール(ストックホルム)
充実著しいハーディングによる注目のアルバムの登場。1975年生まれのダニエル・ハーディング。2016-17シーズンからはパリ管弦楽団の音楽監督 にも就任、ますますの充実ぶりで世界が注目しています。ここで共演しているスウェーデン放送響でも2007年から音楽監督を務めてほぼ10年、互いに 好相性なのは、イザベル・ファウストと共演したバルトークのヴァイオリン協奏曲(HMC-902146/ KKC 5384)などでも既に広く知られるところです。 ここでハーディングが取り上げたのは、バロックの大家ラモーと、ロマン派の極みのベルリオーズ。いっけん遠い存在のようですが、歌劇「イポリート とアリシー」の初演が1733年、「幻想交響曲」の初演が1830年と、主要作品の初演で考えると100年も離れていません。イポリートとアリシーは 1733年10月にラモー初のトラジェディ・リリックとして初演されましたが、この作品で、ラモーは、アリアと合唱の役割を再考し、舞曲と描写的な管弦 楽曲で、器楽の面でも革命をおこしました。いっぽうの幻想交響曲も、具体的な表現の対象をもつ標題音楽の先がけとして、固定楽想などの革新的な技 法が用いられています。ハーディングはそれぞれの作品のドラマを際立たせながら、刺激的なハーモニーやリズムなど、オーケストラを巧みに導きながら 効果的に響かせています。フランスの巨匠による重要作品の核心に迫る演奏です。 (Ki)
HMC-902245
ヴォルフ:歌曲集
4つのミニヨンの歌(ゲーテ)
ねずみとりのおまじない(メーリケ)
捨てられた女中さん(メーリケ)
ニクセのビンゼフース(メーリケ)
花の挨拶(ゲーテ)/四季すべて春
アナクレオンの墓(ゲーテ)/春に(メーリケ)
ある結婚式で(メーリケ)/アグネス(メーリケ)
妖精の歌(メーリケ)/お澄まし娘(ゲーテ)
心がわりした娘(ゲーテ)
秘めた愛(アイヒェンドルフ)
少年と蜂蜜(メーリケ)
ほとんど夜明け前のひと時に(メーリケ)
彼は来た(メーリケ)
エオリアンハープに寄す
少女の初恋の歌(メーリケ)
夏の子守歌(ライニク)
ゾフィー・カルトホイザー(S)
ユージン・アスティ(P)

録音:2015年10月、テルデックス・スタジオ・ベルリン
ベルギー出身注目のソプラノ歌手ゾフィー・カルトホイザーによるヴォルフの歌曲集。モネ劇場でヤーコプス指揮のもとパミーナを歌い「生まれながらの モーツァルト歌手」と喝采を浴び一躍注目を集めました。その後も、劇場での実績を着実に積み、録音ではモーツァルトの『偽の女庭師』やペルゴレー ジのオラトリオ『十字架上のキリストの最後の7つの言葉』(HMC902155)でもヤーコプスの指揮のもと高評価を得ています。
本作はゲーテ、メーリケ、アイヒェンドルフの詩に基づくヴォルフの歌曲集。ヴォルフは一人の詩人に集中して歌曲を作曲することを好んでいました。ヴォ ルフ独特の諧謔的でユーモラスな曲から優しく甘い恋の歌まで様々な表情をもった作品が選曲されています。カルトホイザーのムラのないなめらかで、絶 妙にコントロールされた歌声でじっくりとヴォルフの歌の世界を味わうことができます。 (Ki)
HMC-902246
ファリャ:7つのスペイン民謡
 恋は魔術師(ピアノ組曲)
フェデリコ・ガルシア・ロルカ(1898-1936):古いスペインの歌
エストレッラ・モレンテ(歌)
ハビエル・ペリアネス(P)

録音:2015年12月
スペインのピアニスト、ペリアネスによるファリャ、そしてガルシア・ロルカの登場。歌うのはエストレッラ・モレンテ。2006年公開のスペイン映画「ボ ルベール(帰郷)」では主演女優ペネロペ・クルスが歌うシーンの吹き替えも行った歌手です。 ファリャ、そしてガルシア・ロルカの音楽には、スペインの音楽の歴史が詰まっています。この二人の作曲家に不可欠なのが、フランメンコの歌手。ファリャ に「恋は魔術師」を書くよう勧めたのも、スペイン史上重要な、フランメンコ歌手にしてダンサーのパストラ・インペリオでした。タイトルの「Encuentro(出 会い)」の通り、二人のアーティストはこの録音で初めて出会いました。その邂逅を歓迎したい1枚です。「7つのスペイン民謡」もガルシア・ロルカの古 いスペインの歌も、心にストレートに響いてきます。「火祭りの踊り」のペリアネスのソロも、血が騒ぐような演奏。スペイン音楽の神髄を聴く1枚です。
HMC-902247
シャルパンティエ:クリスマス牧歌劇 H.483
待降節の聖歌集 H.36〜43
クリスマス牧歌劇(第2部・第2稿) H.483a
クリスマス牧歌劇(第2部・第3稿) H.483b
セバスティアン・ドセ(指、Org)
アンサンブル・コレスポンダンス

録音:2016年1月2〜6日
親しみやすく美しい宗教声楽作品を残したフランス・バロックの大家、シャルパンティエによるキリストの誕生を祝う牧歌劇。2部からなる作品で、第 2部はふたつの異稿も収録しています。ソロや重唱に合唱が合いの手を打つヴァラエティ豊かな歌が並び、9人の歌手が入れ替わり立ち代わり幸せな歌を 聴かせます。声の合奏協奏曲とも言うべき音響効果が実に耳に楽しい名品。器楽は弦楽器、2つのリコーダーと通奏低音で構成され、リコーダーが醸し 出す牧歌的イメージも幸福感たっぷり。器楽の活躍するリトルネロ主題もありここぞという所でしっかり音楽を引き締めてくれます。 ★演奏はフランス古楽のスペシャリストとして人気を高めているドセ&アンサンブル・コレスポンダンス。小気味よく颯爽としたリズム感でありながら軽す ぎず激しすぎず、のどかな美しさも存分に感じられる名演奏。柔らかな音色が絶品の、心洗われる素敵なアルバムです。 (Ki)
HMC-902249
ヴィヴァルディ:2つのヴァイオリンのための協奏曲集
2つのヴァイオリンのための協奏曲 ハ長調 RV 507
2つのヴァイオリンのための協奏曲 変ロ長調 RV 529
2つのヴァイオリンのための協奏曲 ハ長調 RV 510
2つのヴァイオリンのための協奏曲 ハ長調 RV 505
4人の協奏曲 ニ短調 RV 127
2つのヴァイオリンのための協奏曲 変ロ長調 RV 527
2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ長調 RV 513
ジュリアーノ・カルミニョーラ(Vn)
アマンディーヌ・ベイエ(Vn)
リ・インコーニティ

録音:2016年2月2-6日、Pontifico Istituto de Musica Sacra, Sala, Roma
フランス・バロック・シーンをしなやかに彩るヴァイオリンのアマンディーヌ・ベイエ&リ・インコーニティ。最新盤は、カルミニョーラをゲストに迎えて のヴィヴァルディの協奏曲集です。カルミニョーラはヴェネツィア・バロックにもとりわけ深い思い入れのある、いわずとしれた名手。すべてのパッセージ、 リズムが活き活きと輝き、物憂げな旋律の絡み合いの場面では、その美しい音色に心奪われる、至高のヴィヴァルディの世界が広がっています。 RV 507は2つのヴァイオリンのための協奏曲の初期作品(それまでにもヴィヴァルディは2つのヴァイオリンが登場する協奏曲を書いてはいましたが、 それらは合奏協奏曲のスタイルをとっていた)ですが、第1ヴァイオリンの方に、華やかなパッセージや曲のしめくくりでも重要な役割を担わせるような書 き方がされていますが、この録音では、随所でソリスト2人が奏でるなど、適宜手を加えながら、自由に演奏しています。また、ヴィヴァルディは、この RV 507を、当時のドイツ屈指の名ヴァイオリン奏者、ピゼンデルと共演。ピゼンデルは手稿譜に装飾音を書き入れており、この録音でも、その装飾音が 採用されています。 (Ki)
HMC-902253
イタリアからのおみやげ〜ハラハ伯爵の音楽日記
ジュゼッペ・サンマルティーニ(1695-1750):フラウティーノのための協奏曲 ヘ長調
レリオ・コリスタ(1629-1680):3声のシンフォニア
ドジョヴァンニ・アドルフォ・ハッセ(1699-1783):フルートのためのカンタータ 変ロ長調
ドメニコ・サッロ(1679-1744):フルート協奏曲 ニ短調
アントニオ・カルダーラ(c.1671-1736):3声のチャッコーナ
レオナルド・ヴィンチ(c.1696-1730):序曲&オペラ「エルピディア」からのアリア
レオナルド・レオ(1694-1744):チェンバロのためのトッカータ第8番
ニコラ・フィオレンツァ(c.1700-1764):フルート・ソナタ.イ短調
アントニオ・マリア・モンタナーリ(1676-1737):フラウティーノ協奏曲 変ロ長調
ジョヴァンニ・アントニオ・ピアーニ(1678-1759(以降没))リコーダーのためのソナタ第4番 ニ長調
モーリス・シュテーガー(フラウト・ドルチェ、リコーダー、指)
ナージャ・ズウィーナー(Vn)
北谷直樹(Cemb)ほか
スイス出身のリコーダーの名手、シュテーガーの新譜の登場。「ハラハ伯爵の音楽日記」と題した興味深いプログラムです。1728年から1733年まで オーストリア領ナポリ副王を務めたハラハ伯爵(1669-1742)は、多くの美術品を収集したことで知られています。そのコレクションには、リコーダーの ための作品も多く含まれていました。このCDのプログラムは、このハラハ伯爵のコレクションから。あまり知られていない作曲家のものも含まれていますが、 当時のナポリの音楽趣味の多様性に驚かされるラインナップです。どれも非常にヴィルトゥオーゾ性の高い作品ばかりですが、シュテーガーは、曲によって ソプラノからテノール・リコーダーまでを華麗に吹き分け、リコーダーという楽器の底知れぬ可能性と表現力を見せつけています。共演者陣との、痛快な までに息のあったアンサンブルで聴かせます。 (Ki)

HMC-905160
バビット:ピアノ作品集
3つの作品(1947-48)/デュエット
セミ=シンプル・ヴァリエーション
パーティションズ/ポスト=パーティションズ
絵画/ピアノと増幅テープの為の「反響」
Canonical Form/Lagniappe
ロバート・タウブ(P)
HMC-905173
パーセル:歌劇「ディドーとエネアス」 ギユメット・ロランス、
ジル・フェルドマン/他
ウィリアム・クリスティ(指)
レザール・フロリサン
HMC-905187(2CD)
バロックじゃないでしょ
ベニヤミン・シュヴァイツァー(1973-):フレッキヒト
ナディル・ヴァッセナ(1970-):超絶のバガテル
ミヒェル・ファン・デル・アー(1970-):刻印
ユリアーネ・クライン(1966-):私のあとについて来なさい
レベッカ・サウンダース(1967-):ルブリカーレ
ゴットフリート・フォン・デア・ゴルツ(指)
フライブルク・バロックO
古楽界ではヤーコプスとの共演など良い仕事をしているフライブルク・バロックオーケストラ。彼らの新譜はバロックではなく、主に30代の若手作曲家の現代音楽集。これがいずれ劣らぬ変人揃いで、ベートーヴェンとヴァッセナ(37歳)の対談とか、意味の分らぬ造語辞典を繰り広げるサウンダース(40歳)とか、みなさん御自分の世界に没入しちゃっていて聴き手を危険な世界へ誘います。フライブルク・バロックオーケストラの真面目さもかえってシュール。かの大企業ジーメンス社が資金提供しちゃっています。  (Ki)
HMC-905221(2CD)
カルダーラ:オラトリオ「キリストの足元のマッダレーナ」 マリア・クリスティーナ・キール(S;マグダラのマリア)
ローサ・ドミンゲス(Ms;マルタ)
ベルナルダ・フィンク(A;地上の愛)
アンドレアス・ショル(CーT;天上の愛)他
ルネ・ヤーコプス(指)
バーゼル・スコラ・カントールム
キアラ・バンキーニ(コンサートミストレス)

録音:1995年
HMC-905231
ホセプ・ソレール(1935-):マーラー歌曲集*
ピアノと室内管弦楽の為の協奏曲#
ヴィルジニア・パラモン(S)*
ルイス・ヴィダル(P)#
ジュゼプ・ポンス(指)
リウレ劇場室内O
HMC-905243
クリストフ・シュトラウス(1575?-1631):9声のミサ・マリア・コンチェルタータ ブルース・ディッキー(指)
コンチェルト・パラティーノ
HMC-905245
ガスパール・コレット(1671頃-1732):第8旋法のオルガン・ミサ
ジュリアン:オルガン曲集第1巻(抜粋)
ルネ・サオルジャン(Org)
HMC-905246
トゥリーナ:ギター作品集
Sevillana Op.29/Fandanguillo Op.36
Rafaga Op.53/Sonata Op.61
Hemenaje a Tarrega Op.69
Tango #2 from Op.8
5 Danzas Gitanas Op.55
ラファエル・アンディア(G)
HMC-905252
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第9番 Op.59-3「ラズモフスキー第3番」
同第10番「ハープ」
ターナーSQ
HMC-905253
1500年頃のリュート二重奏曲集
ハイネ・ファン・ヒーゼヘム(アグリコラ編):すべての幸せに満ちて
作曲者不詳(アグリコラ編):タンデルナーケン
アグリコラ(旋律作曲)/ヨハネス・ギゼリン(伴奏作曲):二重奏曲
ジョヴァンニ・アンブロジオ(グリエルモ・エブレーオ・ダ・ペーザロ):つまらないこと
作曲者不詳:愛することなかれと言われるより
 私は悲しみで死ぬ
 ああ、私に平安はない
 スカラメッラは戦争に行く
 タンデルナーケン/バス・ダンス
 どんなものでも
作曲者不詳/ジョスカン・デプレ:じゅうぶんに報われた召し使い
アントワーヌ・ビュノワ:運命の女神
ヨハン・アンブロジオ・ダルツァ:カラータ
ハイネ・ファン・ヒーゼヘム:愛よ
イザーク:誰が言うのか
 すべての幸せに満ちて(クォドリベット)
イザーク/ハンス・ノイジードラー編曲:タンデルナーケン
ジャン・ジャパール(伝アントワーヌ・ビュノワ):愛よ
ジョスカン・デプレ:スカラメッラは戦争に行く/
運命の女神/愛する者よ、さようなら
エラスムス・ラピツィダ/ハンス・ノイジードラー:タンデルナーケン
マルブリアヌス・デ・オルト:アヴェ・マリア
ロエルリン:すべての幸せに満ちて
フランチェスコ・スピナチーノ:私は恋のとりこになり
 もろもろの/何もしない
 ジュリ・アムール/絶望的な運命
 ベルナルディーナ
カール・エルンスト・シュレーダー(Lute)
クロフォード・ヤング(Lute)

録音:2001年5月、シュトゥットガルト
HMC-905254
ウェーバー:クラリネットとピアノの為の協奏的大二重奏曲 変ホ長調 Op.48
 歌劇「シルヴァーナ」の主題による7つの変奏曲 Op.33
フェルディナント・リース:クラリネット・ソナタ ト短調 Op.29
ピエール=アンドレ・タイヤール(Cl)*
エドアルド・トルビアネッリ(Fp;+)

録音:2001年10月
HMC-905260
ショパン:24の前奏曲Op.28
バラード(全4曲)
シュテファン・ヴラダー(P)
HMC-905261
インドのラーガとヨーロッパ中世の歌、旋法音楽の2つの世界
ジャンノ・ド・レスキュレル:バラッド「親切、知性、価値と値段」
ヴィルレ「甘き愛よ、私を慰めよ」
ヒルデガルド・フォン・ビンゲン:おお、輝く宝石よ
グレゴリオ聖歌:グラドゥアーレ「あなたに望みをおくものは誰も」
アレルヤ、主の天使が天より下り
作曲者不詳(12世紀):コンドゥクトゥス「栄光の王の誕生日に」
作曲者不詳:イスタンピー「美徳の始まり」
セファルディ:おいで恋人よ
インド伝統音楽:ラーガ「ビンパラシュリ」/ラーガ「パハリ」/ラーガ「マンジュ・カマジュ」/ラーガ「ビハグ」/ラーガ「バイラヴィ」
ケン・ズッカーマン:ドリア旋法による作曲と即興/フリギア旋法による即興
バーゼル・スコラ・カントルム・ドクメンタ・シリーズ
[ケン・ズッカーマン(リュート/サロド)
ドミニク・ヴェラール(T)
スワパン・チュウドゥリ(タブラ)
ケィヴァン・チェミラニ(ザルブ)
カジャ・ラィ(ドローン)
エミリー・ズッカーマン(ドローン)]

録音:2003年2月
HMC-905264
ベートーヴェン:八重奏曲 変ホ長調 Op.103
ロンディーノ 変ホ長調 WoO25
七重奏曲 変ホ長調 Op.20
アンフィオン管楽八重奏団
ベートーヴェンが若い頃にマクシミリアン選帝侯の食卓音楽のために書かれた「八重奏曲」。美しい旋律がふんだんにちりばめられ、作曲技法的にも実に凝って作られており、一種の娯楽のための音楽としては超一級の作品です。ハイドンは完全に宮仕えの音楽家、モーツァルトは宮仕えを経て自由の身となった音楽家、そしてベートーヴェンは自由の身となった音楽家、といった表現がありますが、ベートーヴェンもごく若い初期の頃にはこういった貴族の娯楽のための音楽も書いていました。アンフィオン管楽八重奏団はパン・クラシックスレーベルからもいくつかリリースのある、ドイツ語圏のメンバーを中心とする活発なグループ。ガーディナー、クリスティ、レオンハルトら数多くの指揮者のもとでもアンサンブルとして活動しています。 (Ki)
HMC-905265
コダーイ:チェロ・ソナタ Op.8
ヴァイオリンとチェロの為の二重奏曲 Op.7*
クサヴィエ・フィリップス(Vc)
ジャン・マルク・フィリップス=ヴァリャベディアン(Vn)*
甘く切ない音色が魅力的なクサヴィエ・フィリップスが、チェロの金字塔的作品、2 曲を収録しました。ソナタの第一楽章は、深く濃厚な歌を、曲にふりまわされることなく見事に歌いきっています。第三楽章の舞曲風の楽章も、自由闊達に弾ききっています。トリオ・ヴァンダラーの名ヴァイオリニスト、ヴァリャベディアンを迎え、二重奏も最高の出来栄えです。  (Ki)
HMC-905266
サンマルティーニ(c.1693-1750):フルートと通奏低音のためのソナタ集
ソナタOp.2-3 ホ短調、第21番 変ロ長調、Op.2-4 ト長調、第23番 ヘ長調、Op.13-5 ト短調、Op.13-1 ト長調、Op.13-4 ト長調
モーリス・シュテーガー(リコーダー、指)
セルジオ・チオメイ(Cem&Org)、
マルグレート・ケール(Hp)、
マウロ・ヴァッリ(Vc)、
クリスティアン・ボイゼ(Fg)、
エドゥアルド・エギューツ(テオルボ&G)
北谷直樹(Org)

録音:2004年
ジュゼッペ・サンマルティーニは、ミラノで活躍した弟のジョヴァンニ・バティスタ・サンマルティーニ(交響曲の父ともいわれる)に対 して、「ロンドンのサンマルティーニ」とも呼ばれます。オーボエの名手として活躍し、その腕前は、フリードリヒ大王にフルートを教え ていたクヴァンツに、北イタリアの最も優れた器楽奏者と激賞されたこともあるほどでした。彼はその後ロンドンに活動の拠点を移し、主 に演奏者として活躍していました。当時のオーボエ奏者はりコーダーにも精通しているのが普通で、サンマルティーニもまたリコーダーの ことも知り尽くしていました。18世紀初頭の英国は、リコーダーが高等な趣味を持つ人々の間で大流行していた頃。パーセルやバルサン ティ、ヘンデルら英国で活躍した作曲家達によるリコーダーのための作品は多く残されていますが、中でもこのサンマルティーニの作品は 注目に値するもの。ソロ・パートの充実度はもちろんのこと、不協和音や半音階が効果的に用いられた作品は、現代の私たちにもエキサイ テイングな喜びをもたらしてくれます。ソロをつとめるシュテーガーは、1971年スイス生まれ。毎回毎回リリースのたびに、目のさめるよ うなテクニックと、すがすがしい音楽性、そして選曲のセンスで私たちをたのしませてくれています。このディスクでも、目のまわってし まいそうなヴィルトゥオーゾ・テクニックで私たちの度肝をぬいてみせています。また、通奏低音チームの抜群のセンスがききもの。
HMC-905267
ティエリー・ペク(b.1965):作品集
ジャガー交響曲(2002)〜クラリネット,トロンボーン,ヴァイオリンとチェロ,5人の女声
石の波(2007)〜大オーケストラのための*
フランソワ=クサビエ・ロス(指)、
ヨナサン・ストックハマー(指)*
アンサンブル・ゼーリヒ
抑制しようのないエネルギーに満ちたペクの作品集。ジャガー交響曲は、森林の奥から聴こえてくるサルの鳴き声、ゴリラのドラミングの音、鳥の鳴き声など、さらには人間による呪いの祈りのような声が飛び交うユニークな作品。中国の古代画家の絵画や、マヤ文明にインスピレーションを得たというペクが色彩鮮やかに独特の世界を展開します。両作品とも、ラジオ・フランス委嘱作品。 (Ki)
HMC-905268
デニーソフの世界
デニーソフ:室内交響曲第1番 (1982)
 天のいと高き所に(バタイユ詩)〜Sopと室内管弦楽 (1987)
 室内交響曲第2番 (1994)
エカテリーナ・クプロフスカヤ=デニーソワ:アンナ・アフマトワの5つの詩〜Sopとアンサンブル (1994) (デニーソフによるオーケストレーション)
ブリジット・ペイレ(S)、
ダニエル・カウカ(指)
アンサンブル・オルケストラル・コンタンポラン

録音:2011年10月/リヨン音楽院
エディソン・デニーソフ(1929-1996)は政治的発言、活動をしなかったにもかかわらず、社会主義リアリズムに背を向け、ひたすら西側的前衛音楽を 追求したため、フレンニコフに目を付けられ辛酸をなめ、ソ連末期にフランスへ逃げています。あくまでも芸術至上主義で、同世代のシュニトケやグバイドゥー リナのような精神的反体制でなかったため、判官贔屓的人気はありませんが、作品の水準は旧ソ連の範疇を越えています。
このアルバムには、デニーソフの室内アンサンブル作品と、彼の妻で作曲家のエカテリーナ・クプロフスカヤ=デニーソワの歌曲に彼がオーケストレー ションを施したものが収められていて興味津々。「室内交響曲第1番」は2E2Mの、「天のいと高き所に」はアンサンブル・アンテルコンタンポランの委嘱 で作曲され、いずれの精緻を極めた前衛技法によりますが、デニーソフの音楽の特徴である霊的、聖的な雰囲気も満ちています。「室内交響曲第2番」は 1994年の「東京の夏」音楽祭のためアリオン音楽財団から委嘱され、その初演のためにデニーソフ自身も来日する予定でしたが、直前に交通事故に逢い 中止となり、モスクワ現代音楽アンサンブルにより作品のみ演奏されました。
アンサンブル・オルケストラル・コンタンポランは指揮者ダニエル・カウカにより1992年に結成された現代音楽集団。現代音楽を本領とし、リヨンの あるローヌ・アルプ地方を本拠に世界中の音楽祭に参加、その演奏技量を注目されています。
HMC-905269
ティエリー・ペク(b.1965):畏怖(2005-2010)
ソレイユ・ティグル(太陽・虎)(2009)
マノア(2005)/花の咲いた木(2010)
改革の散歩道(1995-2011)/ダンソン
アンサンブル・ヴァリアンス、
ペルキュシオン・クラヴィエ・ドゥ・リヨン

録音:2012年1月
現代音楽と伝承音楽を融合した作風で世界的に高い注目を集めているフランスの現代作曲家、ティエリー・ペクの作品集。本アルバムでは、とりわけア メリカ・ラテン音楽の要素を強く盛り込んだ作品を中心に収録。多様な音楽が混ざりあうブラジルの謝肉祭にインスピレーションを受けて作曲された「畏怖」 では、躍動感あふれるリズム感と、目まぐるしく入れ替わる多彩な曲調に引き込まれます。原曲は管弦楽編成ですが、今回はピアノ、フルート、サックス、チェ ロ、打楽器という小編成。今回のアルバムの収録のためにペク自身が編曲した新版での演奏です!フルート独奏曲「ダンソン」は、様々な演奏法を駆使し た多彩な音色が愉しい小品。「改革の散歩道」では、ラテン情緒あふれる旋律とリズミカルなアンサンブルに心踊ります。技巧的な作品から親しみやすい 民俗音楽まで多彩な曲調を含む、まさに “グローバル” なペクの魅力に迫る1枚です!
アンサンブル・ヴァリアンスはペクが2009年に設立したアンサンブル団体。ペクの作品に造詣深く、鍵盤打楽器アンサンブル団体、ペルキュシオ ン・クラヴィエ・ドゥ・リヨンとのセッションも見事。卓越したアンサンブルで、躍動感にはあふれつつも、安定したアンサンブルを聴かせてくれます。 halmonia mundiレーベルでの録音も着々と進み、ロト指揮による『ジャガー交響曲』(HMC 905267)も好評のペク。2012年4月にはレ・ヴァン・ フランセの来日公演で六重奏曲が委嘱初演され、今後日本でもさらなる注目必至の作曲家といえましょう! (Ki)

HMC-905270
シューマン:ピアノ協奏曲
幻想小曲集 Op.12*
弓張美季(P)
クリスティアン・アルミンク(指)
ベルリン・ドイツSO

録音:2011年3月10日、2011年8月14日*
ヨーロッパで活躍するピアニスト、弓張美季(ゆみはり・みき)がハルモニアムンディ・フランス・レーベルから世界デビュー!
シューマンのドラマティックな出だしで響かせる硬質な和音から、流れるような展開部の繊細な色彩を帯びた音色など、冒頭から弓張の魅力満載。オー ケストラとピアノの親密な対話が聴きものの第2楽章では、アルミンク率いるベルリン・ドイツ響の室内楽的なサウンドの好サポートを得て、甘い平和が じんわりと広がります。フィナーレの華やかなエンディングは天晴れ!弓張の未来への希望が広がるようです。シューマンの詩情に溢れた幻想小曲集でも、 幻想的で息の長い歌で聴かせる「夕べに」に始まり、ほとばしるような「飛翔」、小気味よいユーモアに満ちた「夢のもつれ」など、一曲一曲が宝石のよ うな輝きを放っています。8月以降日本でもコンサートが予定されており、大注目ピアニストの登場です!
弓張美季は神戸生まれ。幼少時に家族とともにフランクフルトに移り、オペラハウスなどに囲まれた豊かな音楽環境の中、ドイツでピアノの研鑽を積み ました。スタインウェイ・コンクールで第1位を獲得。また、ドイツ青少年コンクールで第2位を受賞し、その演奏のもようはドイツ全土で放送されまし た。その後、英国でメニューイン音楽院、ニューヨークでジュリアード音楽院やマネス音楽院に学び、1998年にはカーネギー・ホールでリサイタルを開催。 ロシアでも、日本人として初めてロシア国立エルミタージュ劇場で演奏、サンクトペテルブルク音楽院でも学んでいます。2004年以降、活動拠点をウィー ンにおき、ヨーロッパ各地で演奏活動を行っています。 (Ki)
HMC-905271
ヒンデミット:様々な楽器とピアノのためのソナタ集
アルト・ホルンとピアノのためのソナタ(1943)
チェロとピアノのためのソナタ(1948)
トロンボーンとピアノのためのソナタ(1941)
ヴァイオリンとピアノのためのソナタ ホ調(1935)
トランペットとピアノのためのソナタ(1939)
アレクサンドル・メルニコフ(P)
トゥーニス・ファン・デア・ズヴァールト(アルトHrn)
アレクサンデル・ルーディン(Vc)
ジェラール・コスト(Tb)
イザベル・ファウスト(Vn)
イェルン・ベルヴァルツ(Tp)

録音:2013年9、12月/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
ジャケット絵画:カジミール・マレーヴィチ「新しい人物のプロトタイプ」
自身楽器演奏に長けていたヒンデミットは、管弦楽を構成する様々な楽器とピアノのために30のソナタを書きました。どの作品も、メロディと伴奏、とい うかたちではなく、対等な対位法で書かれた、両者に高度な技術と集中が要求されるものばかり。近年ますます雄弁になり、闊達さも冴えてきているメルニ コフのピアノに全篇を通して耳が釘付けです。各楽器奏者に迎えたゲストも、イザベル・ファウストを始めとする豪華な顔ぶれ。注目の1枚です。
ヒンデミットを積極的に取り上げ録音したピアニストには、グレン・グールドがいます。対位法の父ともいえるバッハの作品をあれだけ弾き込み、録音も数 多く残したグールドは、ヒンデミットのことを現代のすぐれたフーガ作曲家と賞賛していました。そんなグールドのヒンデミット演奏は、まるでバッハ作品を聴 いているような感覚になることもあるものでした。
このメルニコフの演奏は、線的で流れるような美しさに満ちています。特にヴァイオリン・ソナタ ホ調では、終始柔らかな表情。一方で、空威張りする軍 人を模したトロンボーンとピアノのためのソナタは、迫力の和音が連続するピアノとソロ楽器が織りなす緊迫の世界を見事に構築ヒンデミットの魅力を様々に 引き出しています。
メルニコフは、ショスタコーヴィチの難物「24のプレリュードとフーガ」op.87の名録音をものしています。この作品は、ニコラーエワが演奏するバッハに 強烈な印象を受けたショスタコーヴィチが作曲したもの。ショスタコーヴィチは、若いころから、バッハやベートーヴェン、ブラームスを熱心に研究しただけ でなく、ヒンデミット作品も熱心に勉強していました。旧ソ連の音楽家にとって、ヒンデミットは西側の重要な作曲家の一人でした。ショスタコーヴィチや指 揮者ムラヴィンスキー、さらにはピアニストのリヒテルら、ソ連の音楽家はヒンデミットを尊敬していました。
ヒンデミットもショスタコーヴィチも、当時の社会状況による創作活動への大きな影響があったこと、また、ショスタコーヴィチの最後の作品(亡くなる五 日前に完成)がヴィオラ・ソナタであり、ヴィオラはヒンデミットにとっても特別な楽器であり、彼の作品は現代のヴィオラ必須レパートリーとなっているなど、 この二人の作曲家には不思議な共通点があります。
グールドが現代の究極の対位法作品として我々に投げかけたのがヒンデミットであり、ショスタコーヴィチを究めたメルニコフもヒンデミットにたどりついた、 というのはなんとも興味深いといえるでしょう。2013年はヒンデミット没後50年でF.P.ツィンマーマンや五嶋みどりらもヒンデミットを録音、話題となりま した。ショスタコーヴィチ作品で、ニコラーエワをも超える気魄の演奏を聴かせたメルニコフ。グールドとはまた違ったアプローチの新時代のヒンデミットの 登場です! (Ki)
HMC-905273
見えざる言葉/ユニヴァーサル・リズム
1. Dawar/2. Attar
3. To Bandegui/4. Mochaere
5. Kam Kam/6. Shekaste
7. Sahar/8. Dar e Omid
9. Yade Saman/10. Adjab
11. Haft Rang/12. Arezoust
13. Reng e Kyan/14. Reng e Elijah
15. Raqse Dastan part 1
16. Ba namak part 2
17. Rodadad Kodjast part 3/18. Dawar
ジャムシド・シェミラーニ(ザルブ、声)
ケイヴァン・シェミラーニ(ダフ、サントゥール)
ビヤン・シェミラーニ(ザルブ、ダフ、サズ)

録音:2014 年7月
テヘラン出身のジャムシド・シェミラーニ(b.1942)は、harmoniamundiのLP時代からのアーティスト。40年ほど前に初のアルバムを録音以降、独 自の芸術を究めておりましたが、このたび、息子であるケイヴァン&ビヤン・シェミラーニ兄弟とのコラボレーションによる新録音の登場となりました。シェ ミラーニ兄弟といえば、チェロ奏者ジャン=ギアン・ケラスと幼少のころから交流があり、ケラスの音楽観にも影響をあたえた人物。クラシック音楽とは異 なるリズム・サイクルはタイトルにもあるように、見えざる言葉のように、世界共通の言語のように響きます。サントゥールなどのリュート属の楽器の音色 も実に美しい、イラン色満載の魅惑の1枚です。 (Ki)

HMC-905274
アルヴォ・ペルト:カノン・ポカヤネン(悔恨のカノン) カペラ・アムステルダム
ダニエル・ロイス(指)

録音:2015年9月
ペルトの記念碑的作品「カノン・ポカヤネン」の登場。ペルトはラテン語や英訳の詩に多く付曲していますが、この「カノン・ポカヤネン」はロシア正 教の言葉に付曲されています。ケルンの大聖堂の750周年を記念して委嘱された本作は、1997年に完成、1998年3月17日に大聖堂で初演されまし た。悔恨は、教会では神の前に進む際に欠くことのできない要素。全篇にわたってニ短調で書かれており、張りつめた緊張感は、聴き手を悔恨の世界に いざないます。1970年代初期に正教会に入信、単声聖歌やグレゴリオ聖歌、中世の音楽、バロック音楽に傾倒したペルト。ここでもキャッチーな旋律は 一切ありませんが、静かに動く各声部が織りなすハーモニーと言葉の重なり合いはえもいわれぬ透明感のある美しさです。 (Ki)

HMC-905275(CD)
ショパン:ピアノ作品集
バラード第1番Op.23ト短調
夜想曲第16番Op.55-2変ホ長調
幻想即興曲Op.66嬰ハ短調
ワルツ第9番Op.69-1変イ長調「告別」
前奏曲第15番Op.28変ニ長調「雨だれ」
ワルツ第10番Op.69-2ロ短調
スケルツォ第1番Op.20ロ短調
夜想曲遺作嬰ハ短調
ワルツ第6番Op.64-1変ニ長調「子犬」
夜想曲第8番Op.27-2変二長調
ワルツ第11番Op.70-1変ト長調
夜想曲第2番Op.9-2変ホ長調
スケルツォ第2番Op.31変ロ短調
弓張美季(P)

録音:2015年4月テルデックス・スタジオ、ベルリン
※日本語解説・帯付仕様
ヨーロッパで活躍するピアニスト、弓張美季のハルモニアムンディ・フランス第2弾。世界デビューとなった第1弾は、クリスティアン・アルミンク指揮 ベルリン・ドイツ響とのシューマン/ピアノ協奏曲。アルミンクの好サポートを得て、ダイナミックな演奏を披露し世界から注目されました。 今回は彼女自身幼い頃から思い入れのあるショパンのピアノ作品を収録。ノクターン、ワルツ、バラード、スケルツォなど彼女が日頃から熱心に取り組ん でいる作品を集めています。ショパンの美しい音世界を情緒たっぷりに演奏しています。 (Ki)
■弓張美季
神戸生まれ。幼少時に家族とともにフランクフルトに移り、オペラハウスなどに囲まれた豊かな音楽環境の中、ドイツでピアノの研鑽を積む。スタインウェ イ・コンクールで第1位を獲得。また、ドイツ青少年コンクールで第2位を受賞し、その演奏はドイツ全土で放送された。その後、英国でメニューイン音 楽院、ニューヨークでジュリアード音楽院やマネス音楽院に学び、1998年にはカーネギー・ホールでリサイタルを開催。ロシアでも、日本人として初め てロシア国立エルミタージュ劇場で演奏、サンクトペテルブルク音楽院でも学ぶ。2004年以降、活動拠点をウィーンにおき、ヨーロッパ各地で演奏活動 を行っている。
HMC-905277
HAWNIYAZ
Delale(私のいとしい女)
Rewend(ノマド(遊牧民))
Xidire min(ああ、わたしのKhidir)
Malan Barkir- Berivane(漂流〜日記おぼえがき)
Ehmedo- Ez Reben Im(Ehmedo〜私は絶望して)
カイハン・カルホール(カマンチェ)、
アイヌール(歌)、
セミル・コクギリー(タンブール)、
サルマン・ガンバロフ(P)
ペルシャの伝統楽器カマンチェの天才、カイハン・カルホール。2011年頃、BSプレミアムで放送されていた音楽番組「Amazing Voice〜驚異の歌声」 トルコ編で取り上げられ、注目を集めたクルドの女性歌手、アイヌール。タンブールの名人セミル・コクギリー、そしてアゼルバイジャン出身のジャズ・ピ アニスト、サルマン・ガンバロフという4 人のコラボレーション・アルバム。 2012 年にオスナブリュックで開催されたモルゲンランド・フェスティバル。モルゲンランド・フェスティバルは、ジャズ、ワールドミュージックの音楽 家が集う「東」が意識された音楽祭です。ある夜、偶然のかたちで共演した4人のアーティストは、翌朝、タンブールのセミルが呼びかけて再び共演します。 この4人の共演は非常に素晴らしく、このたびの録音のはこびとなりました。 アルバムタイトルのHawniyazとは、クルド族の言葉で「誰もが人を必要とする、我々一人一人は他人のためにある」といった意味。この言葉は、ここ に集まった4人の素晴らしいアーティストたちが結成するアンサンブルにもごく自然に合う言葉。彼らの繊細さとそれぞれのメンバーのサウンドが、クルド 音楽とペルシャ音楽の伝統を融合した中に、少しだけ西洋音楽のエッセンスも加えられた世界を作り上げています。アイヌールの胸に刺さる、哀愁と力強 さに満ちた歌声がとりわけ印象にのこります。 (Ki)8


HMC-952223(2CD)
夜のコンセール・ロワイヤル〜4部または4夜からなる「夜の王のバレ」
1653年2月23日、王によって踊られた「夜の王のバレ」に基づく

テキスト:イサック・ド・バンスラード(1613?-1691)
音楽:ジャン=ド・カンブフォール(c.1605-1661)、アントワーヌ・ベッセ(1587-1643)、ルイ・コンスタンタン(c.1585-1657)、ミシェル・ランベール(1610-1696)、フランチェスコ・カヴァッリ(1602-1676)、ルイージ・ロッシ(1597-1653)&作曲者不詳のものも含まれる
再構築:セバスティアン・ドセ
セバスティアン・ドセ(指)
アンサンブル・コレスポンダンス
時、シンシア/ヴィオレーヌ・ル・シュナデク(S)
エウリディーチェ/カロリーヌ・ウェイナン(S)
ジュノン/カロリーヌ・メン(S)
ヴィーナス、沈黙/カロリーヌ・バルド(S)
ほか

録音:2015年1,2月/グルノーブル、MC2
高さ 193mm/背幅 17mm/横幅 146mm
豪華 190 ページフルカラー
ブック CD 仕様
★あらすじ及びドセの「この素晴らしき冒険 」(制 作ノート)
初回限定:ハイレゾ音源無料ダウンロードクーポン封入!
日本語翻訳つき
2015年は、「太陽王」とも称されるフランスの王、ルイ14世(1638-1715)の没後400年にあたります。フランスではこれにあわせて様々な催し が行われていますが、このリリースも、ルイ14世にちなんだ注目盤。 ルイ14世といえば5歳にして国王即位、72年にもわたる在位期間に王朝の最盛期を築き、「大世紀」(グラン・シエクル)と称されます。ヴェルサイユ 宮殿を建設した王でもあります。そんなルイ14世は、バレエを奨励し、自らもバレエの名人であったと言います。1651年(13歳)に初舞台を踏み、 1653年(15歳)、初主役を演じました。その初主役を演じたのがこの「夜の王のバレ」(ここでの再構築版は「夜のコンセール・ロワイヤル」と題され ています)でした。これは、1653年2月23日、プチ・ブルボン宮のホールで上演されました。 1653年といえば、17世紀フランスで起こった貴族の最後の反乱、フロンドの反乱(1648-1653)が終息した年。戦火を避けていたルイ14世は52 年の秋にはパリに戻り、宰相マザランも53年にはパリに戻りました。絶対王政を浸透させ、国王の権力を、パリ市民、そして諸外国の代表に知らしめる ためにマザランが企画したのが「王の夜のバレ」でした。音楽、台本(詩はイサック・ド・バンスラードによるもので、君主とその従臣の間のことを様々 に描きつつも、王が至上の存在として輝くように書かれている)、すべてがルイ14世=「太陽王」の登場を讃えるために作られました。  この作品は、4部にわたる前夜祭から始まります。〔第1夜(18:00-21:00)=奇怪な闇の社会/第2夜(21:00-24:00)=ヴィーナスの庇護のもとに 繰り広げられる恋愛模様/第3夜(24:00-3:00)=再び夜の世界に戻り、恋人のエンディミオンに心奪われ本業を忘れた「月」の話と、闇夜の世界で広 げられる悪魔や魔女たちによる異様なサバトのもよう/第4夜(3:00-6:00)=オルフェウスとエウリディーチェの物語をなぞったストーリー〕その後、グ ラン・バレ「昇る太陽」となり、オーロラでさえも目がくらむほどの強烈な一条の光とともに太陽王=ルイ14世が現れ、幕となります。 主役を踊ったルイ14世の他にも、総計60名弱のダンサーたちがこの作品に登場したという記録が残っています。一方で音楽については、カンブフォー ルが各前夜祭の幕開けのアリアなどを作曲したのは確かのようですが、その他の音楽、また、演奏者についての詳細な記録はないのが実情(演奏者には、 王宮でいつも演奏していた音楽家たちが駆り出されたと考えられています)。この一大スペクタクルを現代の人に届けるために作品を再構築すべく立ちあ がった指揮者のセバスティアン・ドセが行った調査などを記した手記「この素晴らしき冒険」、およびあらすじの日本語訳がオリジナルブックレットに含ま れています。 2000年の映画「王は踊る」でもこのバレエのもようは描かれていますがもちろんそれはごく一部。ここでは音楽のみではありますが、当時の人々に強烈 なインパクトを与えた作品を完全に再現、鮮烈な演奏で収録されています。400年以上前の遠いフランスで、一人の王を印象づけるために企画されたこ の一大スペクタクルの驚異的なパワーに、フランス文化の底力を見せつけられるようです。 (Ki)

HMC-971630(2CD)
バッハ:クリスマス・オラトリオBWV248 ドロテア・レッシュマン(A)
アンドレアス・ショル(C-T)
ヴェルナー・ギューラ(T)
クラウス・ヘーガー(Bs)
ルネ・ヤーコプス(指)
RIAS 室内Cho
ベルリン古楽アカデミー

録音:1997年1月
HMC-971644
バッハ:アルトのためのカンタータ集
カンタータ第54番「いざ、罪に抗すべし」BWV 54
カンタータ第170番「喜ばしい安息、好ましい魂の歓喜」BWV 170
カンタータ第35番「心も魂も乱れはて」BWV 35
アンドレアス・ショル(C-T)、
マルセル・ポンセール(Ob)、
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
コレギウム・ヴォカーレ

録音:1997年7月
HMC-972019(2CD)
ショスタコーヴィチ:24の前奏曲とフーガ Op.87 アレクサンドル・メルニコフ(P)

録音:2008年5,12月&2009年3月
レコード芸術誌でも特選、また、一晩での全曲公演(来日公演)でも非常に話題となった、メルニコフの「ショスタコーヴィチ:24の前奏曲とフーガ op.87」。発売当初はDVDが付属しておりましたが、この度、仕様変更となり、ジュエルケースに収納され、DVDは付属しないかたちでの発売となります。 ※これに伴い、HMC.902019およびKKC.5105は廃盤となります。
ショスタコーヴィチ壮年期の「24 の前奏曲とフーガ」はその巨大さ、深さ、技術的難度ゆえ、ピアニストにとって最高峰のひとつとなっています。全曲 の録音も多くはなく、いまだに初演者ニコラーエワのものが超えるものなき決定盤の地位を保っています。しかし、今回ロシアの俊英メルニコフがまさに 命をかけてチャレンジした録音は驚くべき完成度で、この世のものとは思えぬ域に達しています。この音楽的深み、さらに時折見せる暗黒の情念など30 代とは思えぬ成熟度、さらにニコラーエワにはない21 世紀的な新しさなど、どこをとっても非の打ちどころなし、ついにニコラーエワの盤を超える演奏の 出現と思えます。 (Ki)

HMD、HMDVD-***** (DVD、Bluray)


HMD-9809028
(Blu-Ray)

HMD-9909028(2DVD)
ヘンデル:オラトリオ「ベルシャザル」 ケニス・ターヴァー(Tベルシャザル)
ローズマリー・ジョシュア(Sニトクリス)
ベジュン・メータ(CTサイラス)
クリスティーナ・ハマーストレム(Msダニエル)
ニール・デイヴィス(Brゴブライアス)
ルネ・ヤーコプス(指)
ベルリン古楽アカデミー,RIAS室内cho

演出:クリストフ・ネル
収録:2008年7月,エクサン・プロヴァンス

(Bluray)
HD-16:9 PCM-tereo
2h46m
字幕:英独仏

(DVD)
リージョン・オール/NTSC/16:9
Dolby-Digital2.0,
Dolby-Digital5.1
2h46m/字幕:英独仏
「ベルシャザル」は1744年に作曲されたオラトリオで、英語で歌われます。初演は1745年3月27日に行われました。ヘンデルのオラトリオは演奏会上演を前提としていますが、多くのオラトリオは物語性が強く、この「ベルシャザル」も十分舞台上演が可能な程度です。物語は、名高いペルシャの王キュロスによる新バビロニア王国滅亡に基づいており、旧約聖書のダニエル記などに描かれているエピソードから台本が作られています。ベルシャザルとは、新バビロニア王国最後の王の王子で、ここでは王として描かれています。ヤーコプスがヘンデルを指揮すると熱が入るのが常です。ここでも音楽はじつにダイナミックで、ヘンデルならではの生々しい感情描写が存分に楽しめます。もちろん歌手も高水準。中でもサイラスのベジュン・メータ、至難なアリアも惚れ惚れするほど見事に歌い切り、圧倒的。さらに近年モーツァルト、ロッシーニのテノールとして活躍する米国のテノール、ケニス・ターヴァーのベルシャザル、英国の美声古楽ソプラノ、ローズマリー・ジョシュアのニトクリス、スウェーデン出身でやはり古楽畑で活躍するクリスティーナ・ハマーストレムの神秘的なダニエル、そしてヤーコプスが「メサイア」のソリストにも起用したウェールズのバス=バリトン、ニール・デイヴィスのゴブライアスと、ヤーコプスらしいこだわりの強い配役です。演出のクリストフ・ネルは、1944年、シュトゥットガルト生まれの、今非常に人気のある演出家です。ここでは、様式化された城壁を広げた舞台に、古代風の衣装と現代風の衣装を混ぜ込んだ舞台作りをしており、楽しめる舞台になっています。「ベルシャザル」のDVDは初めて、もちろんBlu-Rayでも初めて。鮮明映像でヤーコプスのヘンデルをお楽しみください! (Ki)

HMD-9809060
(1BluRay+1DVD)
ワーグナー:歌劇さまよえるオランダ人」 クワンチュル・ユン(バス/ダーラント)
インゲラ・ブリンベルイ(ソプラノ/ゼンタ)
ニコライ・シュコフ(テノール/エリック)
カイ・ルーッテル(メゾ・ソプラノ/マリー)
ベンジャミン・ブルンズ(テノール/舵手)
サミュエル・ユン(バリトン/オランダ人)
アレックス・オッレ(演出)
パブロ・エラス=カサド(指)
マドリード王立歌劇場O&cho

収録:2016年、王立劇場、マドリード
■Blu-Ray
画面:16:9
音声:DTS5.1
PCMステレオ
リージョン:All
字幕:伊独英、2h24’
■DVD(NTSC)
画面:NTSC 16:9
音声DTS5.1
PCMステレオ
リージョン:All
字幕:伊独英、2h24’
スペインの指揮者エラス=カサド、初めてのワーグナー、しかも映像での登場です。モンテヴェルディからブーレーズ、シューマンまで、なんでもものに してしまうエラス=カサド、初のワーグナーは「さまよえるオランダ人」。ふるさとスペインのオペラの殿堂、マドリード王立劇場での収録、スペインの前 衛パフォーマンス集団ラ・フラ・デルス・バウスに属するアレックス・オッレが手がけた演出です。映像を駆使しながらも奇をてらったところのない演出で、 序曲で舞台に投影される荒れる海の映像から、観客は物語の世界に自然に引き込まれていきます。歌唱陣も現代を代表するワーグナー歌いが集められた、 最高の布陣です。クワンチュル・ユンは、ネルソンス指揮RCOのオランダ人でもダーラントを務めていましたし、ゼンタ役で世界の歌劇場から引っ張りだ このスウェーデン出身のソプラノ、インゲラ・ブリンベルイは、この舞台でも揺るぎのない歌唱を展開しています。最後の場面まで、舞台演出も歌唱もオー ケストラも大きなひとつのうねりとなって観客を魅了しています。耳も目も大満足の「さまよえるオランダ人」の登場です。 (Ki)

HMD-9809062
(Bluray+DVD)
モンテヴェルディ:歌劇「オルフェオ」 シリル ・オ ー ヴィティ( オル フェ オ/ T )
ハンナ・モリソン(エウリディーチェ、音楽/S)
ポール・アグニュー(アポロ、エコー/T)
ミリアム・アラン(プロセルピナ、ニンファ/S)
レア・デザンドル(使者、希望/S)
カルロ・ヴィストリ(羊飼い、黄泉の国の使い/CT)
シーン・クレイトン(羊飼い/T)
ザカリ・ワイルダー(黄泉の国の使い、羊飼い/T)
アントニオ・アベーテ(プルトーネ、黄泉の国の使い、羊飼い/Bs)
シリル・コスタンツォ(カロンテ、黄泉の国の使い/Bs)
レザール・フロリサン
ポール・アグニュー(指、演出)

収録:2017年2月28日、カーン劇場(フランス)
◆Blu-Ray
リージョン:All
画面:16:9
音声:PCMステレオ、DTS5.1
字幕:伊仏英独、3h28'
◆DVD(NTSC)
リージョン:All
画面:16:9
音声:PCMステレオ、DTS5.1
字幕:伊仏英独、3h28'
レザール・フロリサンによる「オルフェオ」公演が映像で登場!ポール・アグニューは2007年より創設者クリスティと共にレザール・フロリサンのジョ イント音楽監督を務めており、10年を経て満を持してのオルフェオ上演のライヴ映像となります。ストリッジョのテキストをあらためて熟読し、オルフェオ(アポロ=(太陽神)の息子)と冥界の対比をあらわす美しい照明、そしてケルトのストーン・サークルにヒントを得た装置など、アポロ崇拝にも重きを置いた、 あらたな舞台が作り上げられています。
歌唱陣では、クリスティに見出されバロック・オペラを中心に活躍している逸材、シリル・オーヴィティによるオルフェオの、若々しい歌声が抜群。エウ リディーチェのハンナ・モリソン(ソプラノ)はブロムシュテット指揮のドイツ・レクイエム日本公演(2017年11月)でも高く評価されたソプラノです。 ほかにもクリスティの声のアカデミーに選ばれた歌手ら、気鋭のソリストたちをキャストにそろえています。 (Ki)

HMD-9859051
(1Blu-Ray+1DVD)
ラモー:歌劇「ダルダニュス」(1739年初演版)

【ボーナス映像(Blu-Rayのみに収録)】
リハーサル風景、演奏者へのインタビュー
カリーナ・ゴヴァン(S/ヴィーナス)
ガエレ・アルケス(S/ イフィス)
ライノー・ファン・メヘレン(T/ ダルダニュス)
フロリアン・センペイ(Br/ アンテノール)
ナウエル・ディ・ピエロ(Bs/ テュセル、イスメノル)
キャスリーン・ワトソン(S/ アムール、羊飼いの娘、ベローネ、夢)
エティエンヌ・バゾラ(Br/ 羊飼い)
ヴィルジル・アンスリー(Bs/ 夢)、ギョーム・グティエーレ(T/ 夢)
ラファエル・ピション(指)
管弦楽:アンサンブル・ピグマリオン
演出:ミシェル・フォー、装飾:エマニュエル・シャルル、
衣 装:ダヴィド・ベルグ、振付:クリストファー・ウィリアムズ

収録:2015年4月、ボルドー国立歌劇場 グラン・テアトル
字幕:英・独・仏(フランス語上演)
◆Blu-Ray
画面:16:9
音声:DTS5.1, PCMステレオ
リージョン:All
3h33’ (ボーナス映像つき)
◆DVD
NTSC
画面:NTSC 16:9
音声:DTS 5.1
リージョン:All
3h12’ 24(ボーナス映像はつきません)
ラモーの「ダルダニュス」のライヴ映像の登場。魔術や怪物が登場する、演出もみものの舞台は、大評判となりました。演出を手がけたのは、キャンディ のようにカラフルな舞台づくりでも定評のあるミシェル・フォー。フランス・バロック界の新たな旗手、ピション率いるアンサンブル・ピグマリオンと気鋭 の歌手たちによる大評判となった上演の記録です。  1739年の「ダルダニュス」は、ラモーのオペラ作品の重要な分岐点を示します。1733年のイポリートとアリシ、1734年のサムソン、1735年の優 雅なインドの国々、そして1737年のカストールとポリュックスにつづく、抒情悲劇(トラジェディ・リリック)となる本作は、1739年11月に初演され ました。ダルダニュスを立て続けに発表しました。同年5月に発表されたオペラ・バレ「ヘベの祭典」は大成功に終わりましたが、「ダルダニュス」はま ずまずの評判ではあったものの、28回の上演で打ち切られる、という結果となりました。当時経験浅かった若手のライター、ブリュエールの手による台本 も、この評価の一因でした。以降、ラモーは抒情喜劇や英雄的牧歌劇、そしてバレ音楽に注力し、ふたたび抒情悲劇の新作を発表したのは1756年の「ゾ ロアストル」を待つこととなります。  1738年に完成、39年に初演されたリブレットの内容は、次のとおり==フリギアの王テュセルの娘、イフィス姫は、敵であるダルダニュスと恋に落ちます。 王は、家臣のアンテノールにダルダニュスを倒したら、娘と結婚してよいと宣言します。イフィス姫はダルダニュスとの思いを遂げるため、魔法使いのイス メノルに相談します。実はこのイスメノルはダルダニュスが魔法の力で化けた姿。ダルダニュスはイフィス姫の思いに喜び、その場で真の姿を現します。ほ どなくしてダルダニュスはアンテノールにとらえられます。アンテノールが勝利を宣言した時、怪物が現れ、アンテノールはとらえられてしまいます。ダルダニュ スはヴィーナスの力で怪物を倒し、アンテノールを助けだします。最後はヴィーナスがイフィス姫の父テュセルを説得し、イフィス姫とダルダニュスはめでた く結ばれる==というもの。魔術や怪物がやや多い、などの問題を指摘されましたが、この題材を気に入っていたラモーは、初演から4年半後の1744年、 リブレットと音楽を一新したかたちで改訂版を発表、名誉挽回を果たしたのでした。  ピション率いるピグマリオンによるこの上演は、基本的には1739年の魔術や怪物が活躍する初演版に基づいていますが、ところどころ44年改訂版の エッセンスも取り込んで、ラモーが新たに書いた充実の楽曲も楽しめるという、一石二鳥の内容となっています。どの歌い手も現在活躍している若手たち、 さらに指揮のピション自身もこれからのフランス・バロック界を背負う逸材、というだけあって、若いエネルギーにも満ちた、楽しい充実した上演を存分 に楽しめる内容です。魔法使いのいでたちなど衣装・演出も存分に他のしめる内容です。 ※リハーサル風景、演奏者へのインタビューが収められたボーナス映像は、ブルーレイ盤のみに収録されています。

HMD-9809053
(1DVD+BluRay)
ベルク:歌劇「ヴォツェック」 ウラディーミル・ユロフスキ(指)VPO
ザルツブルク音楽祭劇場児童cho
マティアス・ゲルネ ( バリトン/ ヴォツェック)
ジョン・ダスザック(テノール/鼓手長)
マウロ・ペーター(テノール/アンドレス)
ゲルハルト・ジーゲル(テノール/大尉)
イェンス・ラーセン(バス/医者)
フランチェス・パッパス(メゾ・ソプラノ/マルグレート)
演出:ウィリアム・ケントリッジ

収録:2017年8月、ザルツブルク音楽祭、モーツァルト・ハウス
字幕:独英仏
16/9、PCMステレオ
リージョン: all、1h41’
※DVD[NTSC]とBlu-rayは同内容です。
ユロフスキによるヴォツェック、2017年ザルツブルク音楽祭の映像。ユロフスキは管弦楽を見事に率いて物語を冷静に展開している印象。ゲルネのヴォツェッ クがとにかく素晴らしい。舞台装置と映像が巧みに融合されている演出も見事で、ところどころにケントリッジのドローイング・アニメも映写されています。
HMD-9859058
(1BluRay+1DVD)
ルイージ・ロッシ(c.1597-1653):歌劇「オルフェオ」
(再構成/ラファエル・ピション&ミゲル・アンリ(2016))
ユディト・ファン・ワンロイ(オルフェオ)
フランチェスコア・アスプロモント(エウリディーチェ)
ジュゼッピーナ・ブリデッリ(アリステーオ)
ジュリア・セメンツァート(ヴェネレ(ヴィーナス)、プロセルピーナ)
ルイジ・デ・トナート(占い師、プルトーネ)
レイ・シュネ(乳母、アモーレ)
レナート・ドルチーニ(サテュロス)
ドミニク・ヴィス(バッコ)
ヴィクトル・トレス(エンディミオーネ、カロンテ)
マルク・マウイヨン(モーモ)
ダヴィド・トリク(アポロ)
ラファエル・ピション(指)、
ピグマリオン
イェツケ・ミーンセン(演出)

収録:2016年2月7,9日/ロレーヌ国立歌劇場(ナンシー)
■Blu-Ray
画面:16:9
音声:DTS5.1
PCMステレオ、リージョン:All
字幕:伊仏英、3h04’
■DVD(NTSC)
画面:NTSC16:9
音声DTS5.1
PCMステレオ、リージョン:All
字幕:伊仏英、3h04’
1647年、パリでロッシの「オルフェオ」が上演され、フランスは「オペラ」を知り、その芸術に衝撃を受けました。この何年か前に、サクラーティの 作品が上演されてはいましたが、それはロッシのこのオルフェオの上演の前座にすぎませんでした。この「オルフェオ」の上演は、当時大変な経済的困難 を引き起こし、後のフロンドの乱のきっかけの一つともなりましたが、オーケストラ・ピットの中では状況は少し違いました。この上演ではイタリアとフラ ンスのミュージシャンがオーケストラを構成、そこでは化学反応がおこり、オーケストラから豊かな色彩が生みだされました。この初演時の衝撃を、ピショ ンが再現したのがこの舞台。オーケストラの楽器もなるべくルネッサンス〜バロック期のものを集め、オルフェウスの竪琴はリラ・ダ・ブラッチョが受け持っ て、万人を惹きつけてやまない音色を聴くことができます。他にもオルフェオの長大なアリアや、嘆きの女声の合唱など、どの場面もまるで今起こっている かのようなみずみずしさ。演出家イェツケ・ミーンセンによって現代に置き換えられた舞台は、非常に品が良くしっとりとまとめられており、有名なオルフェ オとエウリディーチェの神話を通して、人間が常に求め畏れている、愛と死がフォーカスされ、聴衆は、神話の世界を堪能しながら、現代の我々が生きる 上で生じる様々な問題が人類永遠のテーマであることを痛感します。 (Ki)
HMD-9907535
(DVD)
コンスピラーレ・イン・コンサート
モルテン・ラウリドセン:Sure on This Shining Night
カーリー・サイモン:Let the River Run
伝統曲:The Water is Wide
黒人霊歌: Didn't My Lord Deliver Daniel?
クレイグ・ヘラ・ジョンソン: Will There Really be a “Morning " ?
ドリー・パートン: Light of a Clear Blue Morning
クレイグ・ヘラ・ジョンソン:Collage
バーバー:アニュス・デイ
黒人霊歌:深き河
モリコーネ:Gabriel's Oboe
モーテン・ローリドセン:Soneto de la Noche
エドワード・ハーマン:私が恋におちるとき
エリック・ウィタカー: What If
イライザ・ギルキソン:レクイエム
アニー・レノックス:1000の美しいこと
タリク・オリーガン:三連画〜 Each shall rise
ラリー・ノーマン&ランディ・ストーンヒル:アイ・ラヴ・ユー
シドニー・カーター:The First of My Lovers
クレイグ・ヘラ・ジョンソン(指)
コンスピラーレ(cho)
トーマス・ブリット(Perc)

録音・収録:2008年10月12日、ライヴ
DVD仕様: NTSC/16:9
DTS
56'+38' + ボーナス映像
HMD-9909006
(DVD)
ブクステフーデ:受難曲「われらがイエスの御体」 ルネ・ヤーコプス(指)、
マリア・クリスティーナ・キール(S)、
ローザ・ドミンゲス(S)、
アンドレアス・ショル(A)、
ゲルト・テュルク(T)、
ウルリヒ・メスターラー(Bs)、
バーゼル・スコラ・カントルム
キアラ・バンキーニ、
レイラ・シャイエフ(Vn)、
ジェーン・アハトマン、
セルジオ・アルバレス、
フランソワ・フランソワ・ジュベール=カイレ、
クリストフ・ウルバネス(ヴィオラ・ダ・ガンバ)、
ペトラ・シャルカ(Vc)、
デイヴィッド・シンクレア(ヴィオローネ)
ペーター・クロトン(テオルボ)、
イエルク=アンドレアス・ベッチャー(Org)

収録:2004 年 パイェルヌ修道院教会堂 [SCHWEIZER FERNSEHEN]
字幕:羅, 仏, 英, 独/5.1DTS
PCM/ステレオ2.0/NTSC
53’30”
ブクステフーデの名声が絶頂期の時に作曲された「われらがイエスの御体」。足、膝、手、側面、胸、心臓、そして最後に顔、とキリストの体の7つの部分を思うもので、敬虔で厳かな雰囲気が全体に流れています。途中の非常に美しいアリアの数々が、なんとも豪華な顔ぶれによるソリストたちの歌で聴けるのはうれしいところ。ヤーコプスは、1990年にもこの作品を録音していますが、今回は10年以上時を隔てた2004年の収録だけあって、その完成度成熟度は類を見ないものとなっています。映像がついているので、器楽の名手たちの演奏姿、さらにはヤーコプスの音楽の美しさの秘密を垣間見ることができる映像作品となっています。キオ
HMD-9909008
(2DVD)
ヘンデル:「ジューリオ・チェーザレ」 アンドレアス・ショル(CT;ジューリオ・チェーザレ)
インガー・ダム=イェンセン(S;クレオパトラ)
トゥーヴァ・セミングセン(Ms;セスト)
ランディ・ステーネ(Ms;コルネーリア)
クリストファー・ロブソン(CT;トロメーオ)
パーレ・クヌーセン(Br;アキッラ)
マイケル・マニアチ(男声S;ニレーノ)
ラース・ウルリク・モーテンセン(指)
コンチェルト・コペンハーゲン
演出:フランシスコ・ネグリン
HMD-9909013(2DVD)

HMD-9809013
(Bluray)
モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」(ウィーン稿) ヨハネス・ヴァイサー(Brドン・ジョヴァンニ)、
マルコス・フィンク(BsレポレッロB)、
アレクサンドリーナ・ペンダチャンスカ(Sドンナ・エルヴィーラ)、
マリン・ビストレム(Sドンナ・アンナ)、
ウェルナー・ギューラ(Tドン・オッターヴィオ)、
スンハエ・イム(Sゼルリーナ)、
ニコライ・ボルチェフ(Brマゼット)、
アレッサンドロ・グエルツォーニ(Bs騎士長)、
ルネ・ヤーコプス(指)
フライブルク・バロックO、RIAS室内cho

録音:2006年10月6日バーデンバーデン
リージョン・オール/NTSC
dts5.1,PCM/STEREO2.0
字幕:伊英仏独西/3h46m
モーツァルト・イヤーの2006年にはたくさんのモーツァルトのオペラが上演されましたが、その中でも最も絶賛されたものが、ルネ・ヤーコプスが指揮する「ドン・ジョヴァンニ」でした。2006年8月にインスブルック古楽祭で上演、さらに10月にドイツのバーデンバーデンで再び上演、ここで収録されたのが、このDVDの映像です。ヤーコプスがドン・ジョヴァンニ役に抜擢したのは、ノルウェー出身の若いバリトン、ヨハネス・ヴァイサー。1980年生まれといいますから、まだ20代半ば。これは初演時のドン・ジョヴァンニ役の歌手が21歳だったことを踏まえたもの。若さに溢れたヴァイサーはまさに貴公子、魅力的です。対するレポレッロは、アルゼンチンのベテラン・バス、マルコス・フィンクは、老練なレポレッロを演じています。そして女性3人には、劇的なアレクサンドリーナ・ペンダチャンスカのドンナ・エルヴィーラ、濃厚なマリン・ビストレムのドンナ・アンナ、可憐なスンハエ・イムのゼルリーナと、実に適役。さらにドン・オッターヴィオには、美声テノールのウェルナー・ギューラ、と極めて優れたキャストが集められています。そして何といってもヤーコプスの素晴らしい音楽!輝かしく張りのある音楽が、モーツァルトの革新性を引き立てています。 ヴァンサン・ブサールの演出は、劇中劇に仕立てることで、表裏の作品の重層性を浮き彫りにしたもの。また、この上演ではプラハでの初演の半年後にウィーンで上演された時の形態を採用、通常上演される形態とは何箇所か相違があります。 本編に加えて、約50分のインタビュー映像を収録。ヤーコプスや歌手たちの話、リハーサル風景をたっぷり楽しめます。   (Ki)
HMD-9909018
(DVD+CD)
アルフレート・デラー没後30周年
[DVD](1h05’)
「アルフレート・デラーPortrait of avoice」
演奏風景:カンピオン:Shall I come sweet love to thee?
ロスター:What then is love but mourning?
作者不詳:Have you seen the white lily grow?
ドキュメンタリー:「カウンターテナーについて」、「単一の性の声?」、「練習風景」、「音域」、「発見」、「音楽と好奇心」他
[CD]
シェークスピア劇の音楽、
ダウランド:流れよわが涙、パーセル:O Solitude
カッチーニ:アマリッリ他
デスモンド・デュプレ(Lute)、
ヴィーラント・クイケン(ヴィオラ・ダ・ガンバ)、
デイヴィッド・マンロウ(リコーダー)ほか

[DVD]映像初放送:1976年2月、リマスタリング2008年(ina)/字幕:英・独・仏・西
[CD]録音:1967-1979年
HMD-9909026
(DVD)
ジャン=フェリ・ルベル:バレエ音楽「四大元素」
ヴィヴァルディ:四季
ベルリン古楽アカデミー
ミドリ・ザイラー(ソロVn)
ダンス:ホアン・クルス・ディアス・デ・ガライオ・エスナオラ

収録:2008年11月17、18日(ベルリン/ラディアルシステムV)-LIVE
2007年の初演以来、ヨーロッパで大旋風を巻き起こした、ベルリン古楽アカデミーとダンサーとのコラボレーションによるヴィヴァルディ「四季」と、ルベル「四大元素」の映像。最高峰の古楽アンサンブル、ベルリン古楽アカデミーによる「四季」が、美しい映像で登場です。暗闇の中でリュート奏者が横倒れになっている一人のダンサーに腰掛けて演奏する場面から映像は始まります。「四大元素」はショッキングな不協和音から始まり、世の混沌を表します。ダンサーは始め石を口の中いっぱいにくわえながら這うような動きを繰り返します。ダンサーは、その後「四大元素」の音楽に則して、「土」「火」「水」「空気」などを、実際に土や炎や水などを用いながら象徴的に表現していきます。時折、ダンサーは音楽を演奏している奏者と目線を交わします。続く「四季」では、奏者たちとダンサーとのコラボレーション具合は更に高まります。まず、注目すべきは楽団の配置。通奏低音のチェンバロを含む小編成アンサンブルグループが二つ、舞台の下手・上手に配され、中央に開かれたスペースに、ソロ奏者たちがダンサーとともに自在に動くという手法をとっています。
ダンサーは、90年代に話題になったDV8フィジカル・シアターでロイド・ニュートンらと活躍したホアン・クルス・ディアス・デ・ガライオ・エスナオラ。もともとはカウンターテナーの歌手だったという一風変わった経歴の持ち主。演奏者のこともダンスのことも知り尽くした彼ならではの斬新な身のこなしに注目です。ヨーロッパ中でsoldoutを連発、単なるダンスと音楽のコラボレーションを越え、世に美しき衝撃を与え続けた伝説のステージが見事なカメラワークで収められています。音も鮮烈で見事。 (Ki)


HMD-9909028
(2DVD)

HMD-9809028
(Blu-Ray)
ヘンデル:オラトリオ「ベルシャザル」 ケニス・ターヴァー(Tベルシャザル)
ローズマリー・ジョシュア(Sニトクリス)
ベジュン・メータ(CTサイラス)
クリスティーナ・ハマーストレム(Msダニエル)
ニール・デイヴィス(Brゴブライアス)
ルネ・ヤーコプス(指)
ベルリン古楽アカデミー,RIAS室内cho

演出:クリストフ・ネル
収録:2008年7月,エクサン・プロヴァンス

(DVD)
リージョン・オール/NTSC/16:9
Dolby-Digital2.0,
Dolby-Digital5.1
2h46m/字幕:英独仏

(Bluray)
HD-16:9 PCM-tereo
2h46m
字幕:英独仏
「ベルシャザル」は1744年に作曲されたオラトリオで、英語で歌われます。初演は1745年3月27日に行われました。ヘンデルのオラトリオは演奏会上演を前提としていますが、多くのオラトリオは物語性が強く、この「ベルシャザル」も十分舞台上演が可能な程度です。物語は、名高いペルシャの王キュロスによる新バビロニア王国滅亡に基づいており、旧約聖書のダニエル記などに描かれているエピソードから台本が作られています。ベルシャザルとは、新バビロニア王国最後の王の王子で、ここでは王として描かれています。ヤーコプスがヘンデルを指揮すると熱が入るのが常です。ここでも音楽はじつにダイナミックで、ヘンデルならではの生々しい感情描写が存分に楽しめます。もちろん歌手も高水準。中でもサイラスのベジュン・メータ、至難なアリアも惚れ惚れするほど見事に歌い切り、圧倒的。さらに近年モーツァルト、ロッシーニのテノールとして活躍する米国のテノール、ケニス・ターヴァーのベルシャザル、英国の美声古楽ソプラノ、ローズマリー・ジョシュアのニトクリス、スウェーデン出身でやはり古楽畑で活躍するクリスティーナ・ハマーストレムの神秘的なダニエル、そしてヤーコプスが「メサイア」のソリストにも起用したウェールズのバス=バリトン、ニール・デイヴィスのゴブライアスと、ヤーコプスらしいこだわりの強い配役です。演出のクリストフ・ネルは、1944年、シュトゥットガルト生まれの、今非常に人気のある演出家です。ここでは、様式化された城壁を広げた舞台に、古代風の衣装と現代風の衣装を混ぜ込んだ舞台作りをしており、楽しめる舞台になっています。「ベルシャザル」のDVDは初めて、もちろんBlu-Rayでも初めて。鮮明映像でヤーコプスのヘンデルをお楽しみください! (Ki)
「ルソン・パティキュリエ」(個人レッスン)シリーズ第2弾
フランスの伝説的番組「ルソン・パティキュリエ」(プライヴェート・レッスン; 1987年から1991年にかけて、フランスの放送局 Arteの前身 La Sept が12回にわたって放映した映像です。
HMD-9909030
(DVD)
ルネ・ヤーコプス/プライベート・レッスン
ヘンデル
:Alla sua gabbia d 'oro[生徒:マリア・クリスティーナ・キール]
Quanto dolci(フラーヴィオより)[生徒:スザンヌ・リデーン]
Mi palpita il cor[生徒:マリア・クリスティーナ・キール]
Mi palpita il cor[ヤーコプス自身による歌唱、イヴォン・ルペラン(Cemb)、ロエル・ディールティエンス(Vc)マルク・アンタイ(Fl)]
放送:1987年
字幕:仏・英・独監督:クロード・ムリエラ
HMD-9909031
(DVD)
スコット・ロス/ライベート・レッスン
バッハ:半音階的幻想曲とフーガBWV.903〜フーガ[生徒:ニコラウ・デ・フィゲイレド]
クープラン:神秘的なバリケード[生徒:アレッサンドロ・デ・マルキ]
バッハ:パルティータBWV.825[生徒:ニコラウ・デ・フィゲイレド]
ラモー:「コンセールによるクラヴサン曲集」〜ヴェジネ[スコット・ロス独奏]
放送:1989年
字幕:英・独監督:ジャック・ルナール
HMD-9909032
(DVD)
イヴォンヌ・ロリオ/プライベート・レッスン
メシアン:幼子イエスに注ぐ20のまなざし〜そのかたによりて、すべては成された[生徒:ニコラ・アンゲリッシュ]
鳥の話(メシアンとロリオの対談、インタビュー、ドキュメンタリー映像)
ベートーヴェン:「テンペスト」〜終楽章[生徒:五月女 慧]
ロジェ・ムラロとロリオの対談(音楽院の授業の思い出など)
モーツァルト:2台ピアノの為のソナタK.448より[生徒:金子 陽子、安田 正昭]
メシアン:復活(天と地の歌より)[イヴォンヌ・ロリオ独奏]/ノエル
放送:1991年
字幕:英・独監督:フランソワ・マンソー
HMD-9909033
(DVD)
ヘルマン・バウマン/プライベート・レッスン
シューマン:アダージョとアレグロOp.70[バウマンによる演奏、生徒:カエターノ・グラノドス=コネホへのレッスン、ルドガー・マックスザイン(P)]
ベートーヴェン:ソナタOp.17 より[アンゲラ・エームケへのレッスンルーシー・サンソン(P)]
フィデリオ序曲(一部)[エックハルト・シャール、エームケ、グラノドス=コネホ]
プフリューゲル:インペート[パウル・ファン・ゼルムへのレッスン]
モーツァルト:ホルン協奏曲第2番[エッセン・フォルクヴァング室内SO]
放送:1990年
字幕:英・仏監督:ハインツ・ペーター・シュヴェルフェル
HMD-9909034
(DVD)
ピエール・イヴ・アルトー(Fl)/プライベート・レッスン
ドビュッシー:シランクス[生徒:ヴェロニク・ローラン]
平義久:シンクロニー[生徒:エマニュエル・パユ、クララ・ノヴァコヴァー]
Maya[ジャン=イヴ・アルトー自身のソロ]
ファーニホウ:カッサンドラの夢の歌[生徒:エマニュエル・パユ、クララ・ノヴァコヴァー]
Unity Capsule[アルトー自身のソロ]
放送:1988年
字幕:英・独監督:ロジェ・カアネ
HMD-9909035
(DVD)
アンナー・ビルスマ/プライベート・レッスン
フランショーム:エチュードOp.35-11[ロデヴィク・シュパンヤード]
ドメニコ・ガブリエーリ:カンツォーネ[生徒:ルシア・スヴァルツ]
アンリ・プスール: La ligne des toits[生徒:ヨブ・テル・ハール]
バッハ:無伴奏チェロ組曲第5番 BWV.1011〜プレリュード[生徒:ルシア・スヴァルツ]
インタビュー(聞き手:オリヴィエ・ベルナジェール)
バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV.1007〜プレリュード[ビルスマ自身によるソロ]
放送:1989年
字幕:仏・独・英監督:フランソワ・マンソー
HMD-9909036(DVD)
ケネス・ギルバート(オルガン、チェンバロ)〜プライベート・レッスン【監督:ミシェル・フォラン】
バッハ:イタリア協奏曲より第1楽章
 パルティータ第4番ニ長調BWV828より序曲(ギルバート自身による演奏)
F.クープラン:空想にふける女(LaVisionnaire()ボーモン)
 さまよう亡霊たち(Les Ombreserrantes)(ボーモン)
 パッサカイユ(ギルバート自身による演奏)
フローベルガー:ファンタジー(ボーモン/オルガン)
放送:1990年
ギルバートは音楽の勉強を始めた時からチェンバロ一筋。少年の時に聴いたチェンバロの音色に魅せられて、音楽の世界に入るきっかけとなったのはチェンバロでした。そんなギルバートが、生徒役として登場している愛弟子のボーモンの演奏を聴く際の真剣さがまず印象的。生徒はオリヴィエ・ボーモン。当時すでに演奏者として活躍している名手ということもあってか、ボーモンの素晴しい演奏をまずたっぷりと観ることができる造りになっています。その後でのギルバートの非常に真摯なアドヴァイスも印象的。イタリア協奏曲では第1楽章冒頭の和音の鳴らし方についてもボーモンと対話をしながらアドヴァイスをします。ギルバートはF.クープランの楽譜の校訂もしている、フランス・バロックの権威。クープラン作品のレッスンでは様々な貴重なコメントが飛び出します。空想にふける女(LaVisionnaire)はフランス風序曲でありながら、フランス風序曲の形式に則っていないこと(つまり、グラーヴェではない)ことの意味について思慮深い発言をしています。また、さまよう亡霊たちではクープラン作品でのアーティキュレーションの付け方について、細やかに話します。実際にお手本でほんの少しだけ演奏していますが、その演奏が素晴らしくてハッとさせられます。フローベルガー作品ではオルガンに楽器をかえてのレッスン。音色の選択やフレーズの進め方などについて多いに語っています。ギルバートの、音楽に対する真摯で献身的な態度が滲みでています。 (Ki)
HMD-9909037(DVD)
マレク・ヤノフスキ(指揮、指導者)〜プライベート・レッスン【監督:ミシェル・フォラン】
モーツァルト:交響曲第41番「ジュピター」より第1楽章(生徒:オリヴィエ・デジュール)*
ベルリオーズ:レクイエム(指揮はヤノフスキ自身/練習風景)
ベートーヴェン:エグモント序曲(生徒:オリヴィエ・デジュール)*
ベートーヴェン:エグモント序曲(ヤノフスキ指揮による演奏)*
オーケストラ:ラジオ・フランスO*
ケルン・ギュルツェニヒO管、ラジオ・フランス・デュッセルドルフcho

放送:1989年
巨匠マレク・ヤノフフスキ(b.1939)のレッスン。考えてみれば指揮のレッスン風景を目にする機会は少ないのではないでしょうか。ここでのレッスンの流れは、楽譜とピアノを前に生徒とテンポや間の取り方、強弱などについて生徒とディスカッションしたあと、実際にオーケストラを指揮しながらレッスンをつけていきます。オーケストラは当時自身が音楽監督を務めていたラジオ・フランス管が担当しているというなんともいえない豪華さ。エグモント序曲では弱拍の取り方についてきめ細かな指摘と指示。生徒と先生がたがい違いに振りますが、オーケストラの鳴り方や音の方向性がまったく違って響いてくるのにびっくりします。指揮のレッスン風景のほか、ヤノフスキがオーケストラと指揮者との間の人間関係の大切さなど、指揮者としての心得などについて語っている場面も収録。あらゆるものに対する感覚を磨くことの大切さ、語るよりもジェスチャーで示せ、説明は最小限にせよ、説明をするとするならば明確なイメージを呼び起こすような言葉を選ぶことの大切さなどを説いています。指揮者の神秘を少しだけ垣間見ることのできる1枚。 (Ki)
HMD-9909038(DVD)
ジェラール・プーレ(Vn)〜プライベート・レッスン【監督:キャスリーン・ジン】
イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタop.27-2イ短調(生徒:ティエリー・フシン)
ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ(生徒:ティエリー・フシン、ジョン・マグヌッソン(P)/特別出演(譜めくり):ノエル・リー)
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第2番K.211(生徒:ルノー・カプソン/ジャン=マリ・コッテ(P))
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲(生徒:マリー・シュブレ)
ブラームス:ピアノ三重奏曲第2番op.87ハ長調より第2楽章(プーレ(Vn)、グザヴィエ・フィリップス(Vc)、ノエル・リー(P))
放送:1989年
プーレの熱血レッスン。イザイのソナタを顔色ひとつ変えずに超絶技巧の重音を寸分の狂いもなく鮮やかに弾く姿から始まります。ドビュッシーのレッスンでは、自身の父がドビュッシー自身のピアノ伴奏でこのソナタを初演した人物ということもあり、ヴァイオリンにもピアノにも音色のひとつひとつの出し方に熱い指示が飛びます。モーツァルトのレッスンでは若きカプソンが登場。プーレは「君の音色は素晴らしいし、語り口もとてもうまい」とカプソンを絶賛しますが、「ひとつ君が忘れていることがある。聴衆は必ずしも奏者の傍にいないってことだ。遠くの人に聴かせるように演奏しなければならない」と演奏者としての心持を説きます。ヴィブラートやレガートのかけ方についての熱のこもった指導、脱力してレガートで奏することの重要さを説くあたりに、プーレの音色の魅力の秘密があるのかもしれません。対談風の場面では、プーレが、シェリングやカール・フレッシュに受けた影響や演奏することと指導することの両論の活動の大切さなどについても語っており、大変興味深い内容です。 (Ki)
HMD-9909039
(DVD)
ユーリ・バシュメト(ヴィオラ)〜プライベート・レッスン【監督:ジャック・デュシャン】
序章(ドヴォルザーク:弦楽セレナーデ/指揮;バシュメト)
シューベルト:アルペジオーネ・ソナタ(生徒:アンドレイ・グリドチュク(Va)、ミハイル・ムンティアン(P))
バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタBWV1001ト短調〜アダージョ(生徒:クレール・ボビィ(Va))
ブラームス:クラリネット・ソナタop.120ヘ短調(ヴィオヴァ版()生徒:ダニロ・ロッシ)
ブリテン:ラクリメより第5楽章(バシュメト自身による演奏)
シューベルト(マーラー編):死と乙女(バシュメト指揮/モスクワ=モンペリエ管のソリストたち)
ブラームス:三重奏曲第5番op.114イ短調(ボリス・バラズ(Vc)、クセニア・バシュメト(P))
放送:1991年
ジプシー風のお涙ちょうだい風の節回しはシューベルトには厳禁であること、つねに距離感を保つことの大切さを説きます。バッハでは、音と時間との関係の大切さ、音楽が線となって進んでいくこと、拍の取り方、さらにハーモニーを大きくとらえることの大切さについても語ります。真摯に音楽に向き合う姿が印象的なバシュメトによる、音楽に溢れたレッスン。 (Ki)
HMD-9909040
(DVD)
ニキタ・マガロフ(P)〜プライベート・レッスン【監督:ミシェル・フォラン】
ショパン:バラード第2番(生徒:パトリシア・パニー)
ムソルグスキー:展覧会の絵(生徒:フィリップ・カッサール)
シューベルト:ピアノ・ソナタ第17番「マリアの苦しみにのせて」D.632(生徒:フィリップ・カッサール)
 即興曲第2番変ホ長調D899(生徒:坂上博子)
シューマン:夢のもつれ(幻想小曲集より)(生徒:フィリップ・カッサール)
ストラヴィンスキー:タンゴ(マガロフ自身の演奏)
ショパン:舟歌(マガロフ自身の演奏)
放送:1989年
これは貴重!洗練の巨匠、ニキタ・マガロフのレッスン。マガロフは演奏者としても優れた功績を残していることは言うまでもありませんが、教師としてもアルゲリッチをはじめ、ルイサダにも影響を与えるなど優れた弟子を育てています。レッスン風景を見ていると、マガロフの高貴な人格と音楽性が滲みでており、まさに「音楽家」の姿がここにあると感じます。ショパンの権威として名高いマガロフ、ショパン作品のレッスンでは、テンポ設定、左手の扱いの重要さを説きます。ちょっとしたお手本を示しながら話すのですが、そのお手本演奏がとにかく巧い!引き込まれてしまいます。「君のテンポは速すぎるよ」「エスプレッシーヴォに」「君のフォルテは強すぎるよ」という指示の語り口もなにもかも、実にエレガントで洒脱。マガロフが高貴なる家柄の出であることも多いに納得です。レッスン場所は雰囲気溢れるジュネーブ湖畔のマガロフの自宅。レッスンに訪れる生徒をまず奥様(シゲティの娘)があたたかく迎え入れる姿も印象的です。室内には畏友リパッティの写真などが飾られています。楽譜に書かれていること、テキストを尊重することの大切さなどを語ったドキュメンタリーをはさみながら、マガロフの高貴なる人格溢れるレッスンが続きます。マガロフの演奏姿からは気品が滲みでています。マガロフに魅了されてしまいます。 (Ki)
HMD-9909041
(DVD)
ジョゼ・ヴァン・ダム男爵のレッスン
■第1部〜声〜
ロッシーニ:セビリアの理髪師より「今の歌声は」(生徒:フロランス・ボンナフー)
モーツァルト:フィガロの結婚より「もう飛ぶまいぞ」(生徒:ルノー・ドゥルー)
 フィガロの結婚〜スザンナのアリア(生徒:キャロリン・フェヴル)
リエージュ音楽院でのレッスン風景(発声練習)
R.シュトラウス:万霊節(生徒:マリー・ポール・フェイ)
フォーレ:ゆりかご(生徒:ルノー・ドゥルー)
■第2部〜オペラのキャラクター
ヴェルディ:ドン・カルロについて(フェリペ2世)(生徒:ジャン=ルイ・スマニャ)
ドビュッシー:ペレアスとメリザンドについて(ゴローとメリザンドについて)(生徒:エレーヌ・ペッラギン&ヴァンサン・
ル・テクシエ)
R.シュトラウス:サロメ(ヨカナーンについて)(ジョゼ・ヴァン・ダム自身による演奏)
放送:1990年
日本でもファンの多いベルギーの名バリトン、男爵ジョゼ・ヴァン・ダムによるレッスン。声のこと、オペラの登場人物についてのヴァン・ダム自身による分析など様々な話を交えながら、オペラ・アリア、ドイツ歌曲、フランス歌曲の名曲に細かなレッスンをつけていきます。実際に演奏をする人にとっては最高の指南DVDとなることでしょう。DVDの最後にはリヨン歌劇場でフランス語によるサロメ上演の一部が収録、ヨカナーン・パートの自身の練習風景も収録されています。ジョゼ・ヴァン・ダムがどのように曲を創りあげていくかを垣間見ることができ、非常に興味深い1枚です。 (Ki)

HMDVD-9909001
(2DVD)
カヴァッリ:歌劇「カリスト」 マリア・バーヨ(S;カリスト)
マルチェッロ・リッピ(Br;ジョーヴェ)
ソーニャ・テオロリドウ(S;ジュノーネ)
ハンス・ペーター・
カンメラー(Br;メルクーリオ)
グレアム・プシェ(CT;エンディミオーネ)
ルイーゼ・ヴィンター(S;ディアーナ)
ドミニク・ヴィス(CT;サティリーノ)
バリー・バンクス(パーネ)他
ルネ・ヤーコプス(指)
コンチェルト・ヴォカーレ

収録:1993年,ブリュッセル・モネ劇場
3h 52’ /オール・リージョン
NTSC/4/3/5.0 DTS/PCM stereo 2.0
字幕:伊英独仏蘭/日本語帯付
HMF のDVD 第1弾に選ばれたのは、ヴェネツィア・オペラの名作、カヴァッリの「カリスト」です!フランチェスコ・カヴァッリ(1602 ミ 1676)はモンテヴェルディの直弟子で、ヴェネツィア・オペラに興隆をもたらした作曲家として名高い人。「カリスト」は1651年に初演されたカヴァッリの代表作。女神ディアーナに仕えるニンフ、カリストにジョーヴェ(=ジュピター)が惹かれ、ディアーナの姿に変身して彼女を欺くものの、それを嫉妬したジョーヴェの妻ジュノーネがカリストを熊の姿に変えてしまい、ジョーヴェが彼女を天空の星にする…というようなお話。ギリシャ神話の世界に乗せて、コミカルな登場人物も交えながら、様々な恋愛模様が繰り広げられます。ヤーコプスは1994 年に録音、CD はレコード芸術で特選となり話題となりました。今回は、その時の故ヘルベルト・ヴェルニッケ演出の上演を完全収録!初演当時のヴェネツィアの舞台を意識した美しい舞台づくりに加え、時に思いっ切った官能表現を盛り込んだりと、見ごたえたっぷり。ことにジョーヴェが女装してカリストを口説く場面で、バリトンがファルセットで歌う面白さは、映像でないと伝わりきらないでしょう。ヴェネツィア・オペラの賑やかさに満ちた豊かな娯楽性を完璧に描いています。音楽も極上、特にマリア・バーヨがカリスト役にピタリとはまっています。オーケストラに目を向ければ、ニコラウ・デ・フィゲイレドとアレッサンドロ・デ・マルキが鍵盤に名を連ねるわ、ユングヘーネルがリュートを弾いてるわ、ロール・ディールティーンスがチェロだ、えらい豪華な面々!もちろんヤーコプスの指揮は完璧の一言!!さらに特典として、メイキング映像54 分を収録。
HMDVD-9909003
(2DVD)
モンテヴェルディ:歌劇「オルフェオ」 サイモン・キーンリサイド(Br;オルフェオ)
フアニタ・ラスカロ(S;エルリディーチェ)
グラシエラ・オッドーネ(S;使者の女)
マルティーナ・ダイク(Ms;プロセルピーナ)
スティーヴン・ウォレス(CT;希望)
トーマス・トーマソン(B;プルトーネ)
ポール・ジェリモン(B;カロンテ)他
ルネ・ヤーコプス(指)
コンチェルト・ヴォカーレ

収録:1998年,ブリュッセル・モネ劇場
2h 50’/オール・リージョン
NTSC /16/9 /5.0 DTS
PCM stereo 2.0
字幕:英仏独蘭/日本語帯付
ヤーコプスの「オルフェオ」、DVD で登場です!ヤーコプスは、大傑作モンテヴェルディの「オルフェオ」を何度も取り上げていて、1993 年にはヴェルニッケの演出で、1998 年にはこのトリシャ・ブラウン演出で、さらに2003 年にはバリー・コスキーの演出で上演、さらに新演出が予定されていると言うから、数年毎に新しい「オルフェオ」を作り上げているわけで今回DVD になったのは、モネ劇場で上演されたブラウン演出のプロダクション。ブラウンはニューヨークを拠点に活躍するモダン・バレエの振付の大家。この舞台でも、ダンサー達が目覚ましい効果を上げています。歌手は、サイモン・キーンリサイドの素晴らしいオルフェオを筆頭に、極めて充実しています。ボーナスに、メイキングを約55 分収録。
HMD-9909056
(1BluRay+1DVD)
ルイ14世の葬儀
1. 作曲者不詳:Subvenite Sancti Dei(聖歌)
2. ジャン・コラン(16??-1694?):デ・プロフンディス
3. 作曲者不詳:Libera me Domine(聖歌)
[王を運ぶための行進]
4. アンドレ・ダニカン・フィリドール(1652?-1730):Marche pour les Ponpes funebres des ceremonies extraordinaires
[サン=ドニ 厳格なる葬儀/死者のミサ]
5. ミシェル=リシャール・ド・ラランド(1657-1726):デ・プログンディス
[許し&地下納骨堂への安置]
6. 作曲者不詳:Subvenite Sacti Dei(聖歌)
7. ルイ・シェイン(1637-1694):Ne recorderis
8. Qui Lazarum resuscitasti(聖歌)
9. ルイ・シェイン:Dirige Domine
10. シャルル・デルファー(1598-1661):ピエ・イエズ
11: 作曲者不詳:In paradisum(聖歌)
[最後の別れ& 賛歌]
12. ド・ラランド:La Grande piece royale(S161) (王の夜食のための第5サンフォニー組曲より)
[1周忌]
13. 14. ド・ラランド:怒りの日〔Dies irae, dies illa / Juste judex ulrionis〕
ラファエル・ピション(指)
ピグマリオン(管弦楽・合唱)
セリーヌ・シェーン(S)
ルシル・リシャルドー(Ms)
サミュエル・ボーデン(C.T)
マルク・モワヨン(T)
クリスティアン・イムラー(Bs)
〔演出:ステファヌ・ヴェリテ、照明:ベルトラン・クデルク〕

収録:2015年11月3,4日、ヴェルサイユ宮殿内王立礼拝堂

◆Blu-Ray
PCM STEREO 2.0
Format 16/9
Region all
◆DVD(NTSC)
PCM STEREO 2.0
Region all
17,18世紀の音楽作品を、当時の歴史と資料などに具に当たって独創的な視点から再構築、そして軽やかな演奏で私たちをたのしませてくれるピショ ン率いるピグマリオン。「太陽王」ルイ14世の葬儀の音楽を再現した舞台のライヴ映像の登場です。1715年9月1日の朝、「太陽王」とも称され72 年の長きにわたってフランスを支配したルイ14世が亡くなりました。人々は歌い踊り、酒を飲み、お祝いの火を焚き、棺を見ると唾棄して侮辱したと言 われていますが、それでも宮廷はしきたりに則り、死者への賛辞、そしてきたる王の交代のための厳粛な葬儀を行いました。ルイ14世の亡骸は、内臓を 除き防腐処理をされた後に第一の棺に納められ、次いで第2のオーク材の棺に納められ、りっぱな祭壇にまつられました。1週間ほどの間、王に仕えた 音楽家たちによってミサが演奏されたといいます。9月9日の夕刻以降に、サン=ドニの地に8頭の馬による馬車で運ばれ埋葬されました。その後も特別 な礼拝やミサが仕立てられました。このピション率いるピグマリオンによる一連の葬儀の再構築を試みた舞台は、王立礼拝堂でおこなわれ、簡易な演出と 照明も施され、ルイ14世の死後300年の年に上演されました。王室が絶頂期を誇った時期の音楽の魅力にあらためて感じ入るとともに、ピション率い るピグマリオンの、力みのなく軽やかな演奏に聴き入り、礼拝堂の美しさにも魅了される稀有な映像となっております。 (Ki)

“HM GOLDエディション”HMG-*****)
H.M.F創立50周年を機にスタートしたシリーズ。選りすぐりのタイトルを、新たに書かれ編集された充実のフルカラーブックレットと、豪華装丁ディジパックで再上程。再リリースながら、歌詞(欧文のみ)もきちんと掲載されております。さらに裏ジャケットには、オリジナル・ジャケット写真も掲載されているなど、どこまでも心配りの行き届いたシリーズです。
もちろん価格はお買い得価格。
HMG-50244(2CD)
ダウランド:リュート歌曲集 アルフレート・デラー(C-T)
ロベルト・スペンサー(Lute)
伝説のカウンターテナー、アルフレート・デラー。彼の声を思う存分堪能できる名盤の貴重な復刻。ダウランドの名曲を世に広めたという意味でも価値 あるCD。 (Ki)
HMG-50249
嘆きの歌〜パーセル歌曲集
パーセル:嘆きの歌、音楽は愛の糧、
恋の病から、美しい島、ばらの花よりも甘く、
わが苦悩のすべて、幸福な恋人、
夕べの賛歌、ばら色のすみかから、
おお平和な物陰に、人の目を逃れて、
しばしの間の音楽、アストレアとの別れ、
おお孤独よ
アルフレッド・デラー(C.T)

録音:1979年7月
ハルモニア・ムンディの歴史を語る上で欠くことのできないアルフレッド・デラー。もともと、創立者は彼の歌声を聴いて深い感銘を受け、クラシック音楽、とりわけ古楽の録音に本格的に取り組むようになったのです。この盤は、デラーの死のたった三ヶ月前に録音されたリサイタル。デラーが生涯をかけて取り組み続けていた、パーセル作品の至上の姿がここにあります。
HMG-50252
パーセル:歌劇「アーサー王」(全曲)*
「アテネのタイモン」付随音楽#
アルフレッド・デラー(CT、指)
デラー・コンソート

録音:録音:1978年10月*、1976年頃#

HMG-501048
シューベルト:ピアノ三重奏曲第1番、
ピアノ・ソナタ第13番イ長調op.120
ジャン=クロード・ペネティエ(P)、
レジス・パスキエ(Vn)、ロラン・ピドゥー(Vc)

録音:1980年2月
ピアノ三重奏曲冒頭から、純粋なシューベルトの世界が広がります。第2楽章はシューベルト独特の内面的な世界が展開されますが、巨匠三人によるデリケートな音運びに耳と心を奪われます。ピアノ・ソナタでも、ペネティエのどこまでも丁寧に行き届いた完成度の極めて高い、音楽の純粋さに打たれます。 (Ki)
HMG-501099
クレマン・ジャヌカン:鳥の歌
夜ごと夜ごとに/のぞみはゆるぎなく
その昔、娘っこが
悲しいかなそれははっきりしたもの(声楽、およびギョーム・モルレイによる同曲のリュート編曲を収録)
ある日コランは/ああ、甘い眼差しよ
ひばりの歌/もしもロアールが上流に
ああ、わが神よ/私の苦しみは深くない
ああ、愛の苦しみよ/草よ花よ
盲目なった神は(A.ド・リップによるリュート編曲)
この美しい五月/満たされつつも
ある日、あの人
が私に言うに/ある朝目覚めた私
私の愛しい人は、神の贈りものを授かっている
うぐいすの歌
クレマン・ジャヌカン・アンサンブル
〔ドミニク・ヴィス(C-T)、
ミシェル・ラプレニ(T)、
フィリップ・カントール(Br)、
アントワーヌ・シコ(Bs)〕
クロード・ドゥボーブ(Lute)

録音:1982年7月/ラジオ・フランス106スタジオ
ドミニク・ヴィス率いるクレマン・ジャヌカン・アンサンブルの数ある盤の中でもベストセラーだったのがこの「鳥の歌」。「鳥の歌」は「ピッピッピッ、トゥ ルルルル・・・・、トットットットッ・・・」と、各メンバーが歌う鳥のさえずりを模したオノマトペ(擬音)の歯切れ良い響きとリズム感が、心地よいハー モニーとなって聴き手に押し寄せます。ほかにも恋の歌など千変万化の舌の魔術、怒濤の言葉の洪水の合い間に、リュート・ソロの2曲が息抜き的に入っ ているのも魅力のひとつ。「音像も3次元的にソリッドでリアルで、口のあけ方までわかる感じだ」と、長岡氏も大絶賛の、演奏・オーディオ両方で大満 足のたのしい1枚です。 (Ki)
HMG-501108
モンテヴェルディ:マドリガーレ集に基づくバレエ
バレエ音楽「つれない娘たちの踊り」(マドリガーレ集第8巻より)、
セスティーナ
ウィリアム・クリスティ(指)レザール・フロリサン
アニェス・メロン(S)、ギユメット・ロラン(Ms)、
グレゴリー・ラインハルト(Bs)、
ジジル・フェルドマン(S)

録音:1982年9月
1608年、マントヴァ公は自身の息子の誕生日を祝うため、音楽イベントを企画しました。このイベントの中に含まれたのが、宮廷楽長であったモンテヴェルディのマドリガーレ集の音楽にバレエを振付けた「つれない娘たちの踊り」です。同時収録されている「セスティーナ」は、初演のときにキャスティングされていた歌手の一人が急死してしまい、その死を悼んで編まれたものです。 (Ki)
HMG-501137
モーツァルト:教会ソナタ集
変ロ長調K.212、変ホ長調K.67、
変ロ長調K.68、ヘ長調K.145、
ヘ長調K.224、ヘ長調K.244、
ハ長調K.336、ハ長調K.328、
ト長調K.241、ト長調K.274、ニ長調K.245、
ニ長調K.144、ニ長調K.69、イ長調K.225
ロンドン・バロック
〔イングリート・ザイフェルト(Vn)、
アンヌ・レーリヒ(Vn)、チャールズ・メドラム(Vc)、
ウィリアム・ハント(ヴィオローネ)、
ジョン・トール(オルガン)〕

録音:1984年2月
教会ソナタというと、緩−急−緩−急という楽章構成のソナタを思い浮かべますが、モーツァルトのソナタにつけられた「教会ソナタ」というジャンル名はそれとは異なります。モーツァルトのこれらのソナタは、教会の典礼ミサの中の「グラドゥアーレ」の合間に、言葉のない器楽曲として演奏されたという、まさに「教会ソナタ」なのです。ミサの全体時間が長くなり過ぎないように、というお達しもあったため、このような単楽章の形をとっています。ブックレットのトラックリストには、各曲の冒頭テーマの譜例が掲載されているというこだわりの仕事ぶりも注目。 (Ki)
HMG-501169(2CD)
バッハ:フーガの技法 デイヴィット・モロニー(Cemb)

録音:1985年1月
幾何学模様のフーガをモロニーがものすごいテクニックで解きほぐしていく圧巻の2枚組。デイヴィット・モロニー(b.1950)はイギリス出身の鍵盤楽 器奏者で音楽学者。ケネス・ギルバートとレオンハルトにチェンバロを師事し、トマス・タリスとウィリアム・バードについての論文で博士号を取得。ウィ リアム・バードの作品を様々な楽器(ヴァージナル、クラヴィコード、チェンバロなど)で演奏した全集(7CD/グラモフォン・アウォード(2000))を 発表するなどしています。音楽学者として、バッハのフーガの技法を補筆完成したことでも知られています。この自らの版を用いて演奏した当盤は、グラモ フォン・アウォード(1986)に輝いた名盤。 (Ki)
HMG-501239
ジョスカン・デ・プレ:ミサ「パンジェ・リングヮ」 マルセル・ペレス(指)
クレマン・ジャヌカン・アンサンブル
(ドミニク・ヴィス、ミシェル・ラプレニー、
フィリップ・カントール、アントワーヌ・シコ)、
アンサンブル・オルガヌム
(ジェラール・レーヌ、ジョゼ・ベネ、ジョゼ・カプレ、フランソワ・フォシェ)

録音:1986年1月
ルネサンス最大の作曲家、“音楽の君主”ジョスカン・デ・プレ。その精緻を極めたポリフォニーの頂点を示す傑作、ミサ≪パンジェ・リングヮ≫もハルモニアムンディが誇る名盤のひとつです。単旋律聖歌をモティーフに、複雑怪奇、絢爛豪華なポリフォニーが展開されています。作曲者も君主なら作品も実に「君主」風、思わず姿勢を正してしまうような厳格さに満ちた演奏です。人の声なのに、リード・オルガンのようにビリビリと響きます。 (Ki)
HMG-501247(2CD)
モンテヴェルディ:聖母マリアの夕べの祈り フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
シャペル・ロワイヤル、
コレギウム・ヴォカーレ、
トゥールーズ・サックブーティエ
アニェス・メロン(S)、
ギユメット・ロランス(S)、
ヴィンセント・ダラス(A)、
ハワード・クルーク(T)、
ウィリアム・ケンドール(T)、
ジェラール・オベイルヌ(T)、
ペーター・コーイ(Bs)、
デイヴィッド・トーマス(Bs)

録音:1986年7月
当時の典礼の進行にしたがって、各詩篇の間にそれぞれにふさわしい「アンティフォーナ」(グレゴリオ聖歌)を演奏。6声のマニフィカトTを含む全13曲版です (Ki)
HMG-501251
カンプラ:レクイエム フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
エリザベス・ボウドリー、
モニク・ザネッティ(S)
ジョゼ・ベネ(オート・コントル)、
ジョン・エルウェズ(T)
スティーヴン・ヴァーコー(Bs)
シャペル・ロワイヤル

録音:1986 年 8月
ノートルダム大聖堂楽長カンプラが次々発表する舞台作品は、謹厳な要職にはふさわしくない、と物議をかもしたそうですが、このレクイエムにもそう した性格が窺えます。穏やかで平明な抒情と牧歌的情緒が、彼の生地、南仏プロヴァンスの自然を思わせるようです。ひとつひとつを含めるように紡ぐ響 きは、差し込む光のように暖かく清澄です。 (Ki)
HMG-501261
シュッツ:ムジカーリッシェ・エクセークヴィエンOp.7 SWV279-281
第1部ドイツ鎮魂ミサの形式によるコンチェルト
第2部モテト「主よ、あなたさえいてくだされば」
第3部シメオンのカンティクム「主よ、あなたは今こそこの僕(しもべ)を」
モテト「それほどに神はこの世を愛されました」SWV380
モテト「今よりのち主にあって死ぬ者は幸いです」SWV391
モテト「わたしはキリストのもとに去ります」SWV379
小宗教的コンチェルト作品9より「わたしは復活である」SWV324
小宗教的コンチェルト作品8より「おお、愛する主なる神」SWV287
モテト「天は神の栄光を物語り」SWV386
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)シャペル・ロワイヤル
大バッハのちょうど1世紀前、初期ドイツ・バロック期最大の作曲家ハインリヒ・シュッツ。G.ガブリエリの壮麗なヴェネツィア様式を学びましたが、三十年戦争時代の苦悩の中で、その音楽は深い静寂を湛え、強靭な精神性を秘めるものとなりました。ロイス公のための「音楽による葬送」は、静かな諦観と哀惜の念に満ちています。ヘレヴェッヘはテキスト一語一語を丹念に語らせており、深く敬虔な祈りの音楽となっています。  (Ki)
HMG-501268
ジェズアルド(1561?-1613):5声のマドリガーレ集
第3巻〜3、8、9、11番、第4巻〜1、11、18番、
第5巻〜9、11、14番、第6巻〜1、6、13番
ウィリアム・クリスティ(指)
レザール・フロリサン

録音:1987年7月
ルネッサンスの巨星、ジェズアルド。妻を自らの手で殺め、強烈な気性で、いつも空想にふけっていて、それでいてものすごく高貴な身分だった・・・などという種々の逸話に彩られた人物ですが、彼の残したマドリガーレは、死後400年経とうとしている今なお鮮烈に響きます。彼の手にかかると、言葉はレントゲンで撮影されたように極限まで分解されます。言葉がその意味と音、両方の力強さを得て聴く者に迫ります。  (Ki)
HMG-501270
バッハ:哀悼行事用のカンタータ
「侯妃よ、さらに一条の光を」BWV189
「イエスよ、汝はわが魂を」BWV78
ヘレヴェッヘ(指)シャペル・ロワイヤル、
イングリート・シュミットヒューゼン(S)、
チャールズ・ブレット(A)、
ハワード・クルック(T)、
ペーター・コーイ(Bs)

録音:1987年11月
名曲として名高い2つの哀悼行事用のカンタータを収録。198番は、ザクセン選帝侯アウグストI世の夫人、クリスティアーネ・エーバーハルディーネのための追悼音楽。彼女はプロテスタント信仰の象徴のような女性で、国民の信頼も厚い人物でした。夫がポーランド王の称号と引き換えにカトリックに改宗したにも関わらず、プロテスタントの信仰を貫くために宮廷を離れるといったこともしています。受難曲を思わせる比較的規模の大きな作品で、最後は王妃の栄光と不滅を讃える輝かしい合唱で終結します。ヘレヴェッヘの指揮も冴える名盤です。 (Ki)
HMG-501292
フォーレ:レクイエム(1893年室内楽稿)、
小ミサ曲(1882年オリジナル・オーケストラ版)
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
シャペル・ロワイヤル、
サン=ルイ少年合唱隊、
アンサンブル・ミュジック・オブリク、
アニェス・メロン(S)、ペーター・コーイ(Br)

録音:1988年9月
発売当時、従来のオーケストラ稿とは異なる1893年の室内楽稿によっている点でも話題になった1枚。もともとレクイエムは、1901年にオーケストラ版が出版される以前に、マドレーヌ寺院で執り行われた或る葬儀で1888年に演奏されました。その時の編成が室内楽稿だったのです。残された手稿譜とフォーレ自身の書き込みを基に、マドレーヌ寺院で演奏された響きを忠実に再現したというこの録音、清澄無垢さが際立っており、純化された世界が広がります。 (Ki)
HMG-501298
シャルパンティエ:テ・デウムH.146、
聖母被昇天のミサH.11、
聖母マリアへの連祷 H.83
ウィリアム・クリスティ(指)レザール・フロリサン

録音:1988年10月
「テ・デウム」は轟く打楽器の音色に始まり、つづくファンファーレの見事さと録音の美しさには息をのむばかりです。息の合ったアンサンブル、すぐれた歌い手、そして復興という域にとどまらないオリジナル楽器の使い手たちによる器楽、すべてが最上のクオリティで録音されたシャルパンティエ作品集です。 (Ki)
HMG-501301(2CD)
ラフマニノフ:2台ピアノと4手のための作品集
ロシアの主題による狂詩曲(2台ピアノのための)
2台ピアノのための組曲第2番Op.17
イタリア風ポルカ(4手のための)
ロマンス ト長調(4手のための)
4手のための6つの小品Op.11
2台ピアノのための組曲第1番 op.5『幻想的絵画』
6手のための2つの小品(「ワルツ」、「ロマンス」)*
交響的舞曲 op.45a(2台のピアノのための)
ブリジット・エンゲラー,オレグ・マイセンベルク(P)
エレーナ・バシュキロワ(P)*

録音:1988&1989年(CD1)、1989年(CD2)
ブリジット・エンゲラー(1952-2012)、マイセンベルク(1945-)、さらに6手の作品ではバシュキロワ(1958-)が参加している、という豪華顔 ぶれによるラフマニノフのピアノ・デュオ作品集。エンゲラーはチュニスに生まれ、その後フランスに渡り、9歳でシャンゼリゼ劇場でデビュー。天才少女 で鳴らし、モスクワ音楽院でスタニスラフ・ネイガウスに師事。カラヤンに見出され、晩年はラ・フォル・ジュルネ音楽祭でもたびたび来日、素晴らしい ソロやベレゾフスキーとのデュオで聴衆を魅了していました。マイセンベルクは1981年にソ連からウィーンに亡命、室内楽や歌曲伴奏でも活躍しました。 そしてバシュキロワはモスクワ音楽院で学んだ存在。楽器の底から鳴り響くような濃厚な音色と、まさに完璧な技巧、そしてラフマニノフの音楽がもつロ シア的要素と西洋的要素が見事に汲みとられた演奏で、世界中で絶賛された名演です。 (Ki)
HMG-501308(2CD)
パーセル:歌劇『妖精の女王』(全曲) ウィリアム・クリスティ(指)
レザール・フロリサン

録音:1989年7月
イギリス・バロック最大の作曲家パーセル。その豊かな楽才が本領を見せる珠玉の舞台作品の中でも、最も精緻な作風を見せる傑作が、この『妖精の女王』 といえるでしょう。『ディドーとエネアス』、『アーサー王』の成功の後に書かれたこの作品は、シェイクスピアの真夏の夜の夢に基づいた物語。印象的な 愛の場面や超自然的現象の場面、音楽の機智に満ちた傑作です。才気迸る闊達な音楽を、クリスティが、めくるめく鮮やかなコントラストと機智で描きます。 [原盤:HMC 901308(廃盤)]
HMG-501315
ビザンツ聖歌集〜受難と復活
アレルヤ,見よ夜中の花婿が,
主よあなたの花嫁の寝室を,
主よ多くの罪を犯した女が,
畏怖すべきあなたの晩餐の交わり,
主は私のところに,
今日海に大地を支えるキリストは,
生命であるキリストよ,恩寵溢れる女よ,
キリストは蘇られた,
キリストにおいて洗礼を受けたものは,
天使はマリアに呼びかけます
マリー・キーロウズ修道女,
サン・ジュリアン・ル・パーブル教会聖歌隊

録音:1989年6月
キリストは金曜日に十字架にかけられました。次の日を聖土曜日といい、ビザンチンの儀式では、この日の朝の礼拝では、キリストの復活を信じ、信仰と希望をもって瞑想します。そして翌日の日曜日にキリストが復活したことを祝い、ビザンツの儀式で奏でられる音楽も極めて華やかなものになります。ここで歌うのはマリー・キーロウズ修道女。独特の強い表現をもつ歌声で、強い信念や心の底からの喜びがダイレクトに伝わってきます。 (Ki)
HMG-501323(2CD)
カルミナ・ブラーナ〜13世紀の受難曲
カルミナ・ブラーナの大受難劇
マルセル・ペレス(指)
アンサンブル・オルガヌム
語り手:マルセル・ペレス
イエス:フランソワ・フォーシェ
カヤファ:ジョゼップ・ベネート
祭司長、ロギヌス:ジョゼップ・カブレー
マリア:アストリ・モガール
マルタ:アスカル・ムレー
ユダ:ブリュノ・ボトルフ
マグダラのマリア:キリユ・グルスタンアベル
御使い:ドミニク・ヴィス
ピラト:フィリップ・カントールほか

録音:1989年11月
ミュンヘン近郊オットー・ボイレン修道院に伝えられた「カルミナ・ブラーナ」ラテン語で ‘ボイレン修道院の詩歌集’、の意)写本巻末に付された「大 受難劇」と「聖母哀歌」に基づき、ネウマ譜の独自の解読、グレゴリオ聖歌とペレス自身の作曲も加えた画期的解釈による受難劇。ドミニク・ヴィスが御 使い役を演じているのも魅力です。 (Ki)
HMG-501341
ジャン・ジル(1668-1705):レクイエム
ディリガムテ・ドミネ(「主よ、われ汝を愛せん」
ヘレヴェッヘ(指)
シャペル・ロワイヤル
アニェス・メロン, ヴェロニク・ジャン(S)
、ハワード・クルック, エルヴェ・ラミ, トム・フィリップス(T)、ペーター・コーイ(Bs)

録音:1990年5月
ジャン・ジルは、南仏プロヴァンス出身の作曲家。パリやヴェルサイユ宮殿とは関係を持たなかったにも関わらず、その作品がパリや王室で演奏されて いたというジャン・ジル。彼の現存する作品は、モテットが15曲、詩篇曲が7曲、そしてレクイエムが1曲のすべて宗教音楽のみ。ここに収められてい る2曲はパリで特に人気のあった作品でした(演奏されたのはジルの死後)。レクイエムはドラム連打で始まりますが、これは現存する筆写楽譜にはない ものですが、南フランスにおける演奏習慣によるものであり、出版楽譜(1764年)にも加えられたものを採用しています。「主よ、われ汝を愛せん」は、 装飾豊かな旋律、活気あふれる合唱、多彩な組み合わせによる重唱など魅力に富んだ作品です。 [原盤:HMC 901341(廃盤)]
HMG-501366
ヴィヴァルディ:「ラ・フォリア」
トリオ・ソナタ ニ短調 Op.1-12RV63「ラ・フォリア」、
トリオ・ソナタ ニ短調 Op.1-8RV64、
2つのヴァイオリンのためのソナタ へ長調 RV98、
2つのヴァイオリンのためのソナタ ト長調 RV71、
2つのヴァイオリンのためのソナタ 変ロ長調 RV77、
2つのヴァイオリンのためのソナタ へ長調 RV70
キアラ・バンキーニ(Vn)、アンサンブル415

録音:1991年1月
「四季」で名高いヴィヴァルディは、自身天才的なヴァイオリンの名手でもありました。ここに収められている、楽器どうしのかけあいが実に壮観な「ラ・フォリア」を始めとする、火花を飛ばすような技巧がちりばめられたヴァイオリン作品の数々は、どれも聴き応え満点です。キアラ・バンキーニはジュネーヴ生まれ、パリで活躍するヴァイオリニスト。柔らかな情感を湛えたしっとりとした彼女の音色が見事にとらえられた素晴らしい録音です。 (Ki)
HMG-501380
ヤナーチェク:弦楽四重奏曲集
第1番「クロイツェル」、第2番「内緒の手紙」
メロスSQ

録音:1991年5月
「1音1音の陰には、活き活きと力強い、愛すべき君がいるよ。君の体の香り、君の口付け――いや、君のじゃなかった、僕のだね。僕のすべての音符が君のすべてに口付けしているよ。君を激しく必要としているんだ――。」ヤナーチェクが、40歳年下の人妻に対して募る思いを込めて作曲された「内緒の手紙」。このメロス弦楽四重奏団の演奏は、各パート奏者の濃密な音色と、きめ細かなアンサンブルで、作曲者の妄想の官能世界を表現するのに成功しています。聴いているとどうにかなってしまいそうな熱演です。 (Ki)
HMG-501393
モーツァルト:マイスタームジーク(フリーメイソンのための葬送音楽)K.477
ミサ曲 ハ短調 K.427(ベーレンライター版、シャペル・ロワイヤルによる校訂版)
クリスティアーネ・エルツェ(S)、
ジェニファー・ラーモア(S)、
スコット・ワイア(T)、ペーター・コーイ(Bs)
ヘレヴェッヘ(指)コレギウム・ヴォカーレ、
シャペル・ロワイヤル、シャンゼリゼO

録音:1991年9月
マイスタームジークは、モーツァルトが所属していたフリーメイソンのメンバーのいわば「親方昇進の音楽」とされています。この作品からコーラス曲を 外すと、「フリーメイソンのための葬送音楽」となります。このコーラス曲はフィリップ・A・オートクシェなる人物が復元したといういわくつきのもので、 発売当時話題になりました。ミサ曲 ハ短調はヘレヴェッヘならではの美音が存分に堪能できる演奏です。ソリスト陣も豪華。20年以上前の録音ながら、 名盤の誉れ高い 1 枚です。 (Ki)
HMG-501406(2CD)
コレルリ:合奏協奏曲集Op.6(全12曲)(1687年ローマ編成版) キアラ・バンキーニ&ジェスパー・クリステンセン(指)
アンサンブル415(39人編成)

録音:1991年10月
1687年にコレッリ自身がローマのスペイン広場で指揮した演奏を忠実に再現した盤。メンバーの情熱と長年の研究により、当時のオーケストラの人数(ヴァイオリン16人、ヴィオラ5人、チェロ6人、コントラバス6人、リュート5人チェンバロ2人、ソリスト6人)、テンポを割り出し、細心の注意をもって演奏されています。リュートとキタローネが入っているのも注目です。彼らの演奏はそうした学術的な興味を越えて美しく楽しいもの。この曲集の決定的演奏として名高い盤です。 (Ki)
HMG-501430(2CD)
ショパン:ノクターン全集
変ロ短調Op.9-1,変ホ長調Op.9-2
ロ長調Op.9-3,ヘ長調Op.15-1,
嬰ヘ長調Op.15-2,ト短調Op.15-3,
嬰ハ短調Op.27-1,変ニ長調Op.27-2,
ロ長調Op.32-1,変イ長調Op.32-2,
ト短調Op.37-1,ト長調Op.37-2,
ハ短調Op.48-1,嬰ヘ短調Op.48-2,
ヘ短調Op.55-1,変ホ長調Op.55-2,
ロ長調Op.62-1,ホ長調Op.62-2,
ホ短調Op.72-1,嬰ハ短調,ハ短調
ブリジット・エンゲラー(P)

録音:1992年12月,1993年5-6月
エンゲラー自身大変気に入っている名盤、ノクターン集がHMGシリーズの豪華装丁で再登場します。約20年前の録音ですが、濃密な音楽性は今も色あせることなく芳香を放っています。LFJ期間、ノクターンを含むプログラムのコンサートが予定されていることもあり、注目盤です。 (Ki)
HMG-501432
ファリャ:七つのスペイン民謡、
クラヴィチェンバロのための協奏曲、
世界大劇場、プシシェ
ビクトリア・デ・ロス・アンヘレス(S)、
ジョゼプ・ポンス(指)

録音:1992年7月
スペインの伝統と民俗音楽を意識した作風のファリャ。七つの民謡では特にその意識が強く感じられます。2曲目のクラヴィチェンバロのための協奏曲はどちらかというと前衛的な音づくりながら、所々にやはりスペインの血が感じられます。 (Ki)
HMG-501498(2CD)
ヘンデル:メサイア ウィリアム・クリスティ(指)
レザール・フロリサン
バーバラ・シュリック(S)、
サンドリーヌ・ピオー(S)、
アンドレアス・ショル(A)、
マーク・パドモア(T)、
ネイサン・バーグ(Bs)

録音:1993年12月
クリスティによる絶美のメサイアの復活。序曲から非常に美しい端正な高貴さに満ちており、演奏への期待が高まります。パドモアにピオー、そしてア ンドレアス・ショルら、非常に豪華な歌唱陣にも注目の名盤です。 (Ki)
HMG-501502
メンデルスゾーン:真夏の夜の夢 フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
シャペル・ロワイヤル、
コレギウム・ヴォカーレ
シャンゼリゼO
サンドリーヌ・ピオー、
デルフィーネ・コロー(S)

録音:1994年2月
約20年まえの録音。「ピリオドオーケストラ」の風雲児的存在であったヘレヴェッヘとシャンゼリゼ管の意気軒昂ぶり、意気揚々とした管楽器の音色は かくも美しく衝撃的なものであったかと驚かされます。再感動ものであります。2012年9月に来日予定のピオーの若き歌声にも興味津々です。 (Ki)
HMG-501505
ドイツ・バロック歌曲集
ヨハン・ナウヴァッハ:「夜の帳が近づき」、
 「わが愛しの人よ、さあ急ごう」
ハインリヒ・アルベルト:「醜い老兵士、醜い老人の恋」、
 「悲しく響く女神の悲嘆」
ヨハン・カスパー・フェルディナンド・フィッシャー:前奏曲とシャコンヌ第8番(チェンバロ独奏)
アダム・クリーガー:「恋の炎は勇気をくじく」、
 「あなたは変ってよいのです」、
 「愛の力は昼夜を支配する」、
 「ラインワインは優雅に踊る」
ヨハン・フィリップ・クリーガー:ヴァイオリンとヴィオラ・ダ・ガンバの為の2声のソナタ、
 「やわらげておくれ、かたくなな心を」
 「愛の泣き笑い」「熱烈なる恋人」
 「孤独」「優しき夜」
アンドレアス・ハンマーシュミット:「口づけの秘法」
ベルンハルト・ヨアヒム・ハーゲン:ロカテッリによるメヌエットと変奏(リュート独奏)
ヨハン・ヴァレンティン・ゲルナー:「夜」、
 「眠りに際して」
アンドレアス・ショル(C-T)
M.メルクル(Cemb)
K.E.シュレーダー(Lute)
A.ヴェルツァー(Vc)
P.ヴァレッティ,S.ピフィシュター(Vn)
F.ナウマン,J.M.クインターナ(Gamb)

録音:1994年8月
正統派の伝統を忠実に守る実力派ショルの初期の録音。17〜8世紀ドイツのバロック歌曲を、若々しい感性をきらめかせながら歌い紡いでいます。 (Ki)
HMG-501508
ヤナーチェク:ピアノ・ソナタ「1905年10月1日」
草かげの小径にて第1集
草かげの小径にて第2集
霧の中で/回想
アラン・プラネス(P)

録音:1994年2月
どの曲も冒頭はすんなりとプレーンな感じですが、次第に曲の奥に潜む暗い情熱が顔を出しますが、プラネスは曲の情念に流されることなく、むしろ曲を見事にコントロールしているのが見事。アンサンブル・アンテルコンタンポランで核的な活躍をしていた名手プラネスによる、情念と理の完璧なバランスによる理想的なヤナーチェクです。 (Ki)
HMG-501509(2CD)
ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲&五重奏曲
弦楽五重奏曲 変ホ長調 op.97
弦楽四重奏曲 ヘ長調「アメリカ」op.96
弦楽四重奏曲 ニ短調 op.34
弦楽五重奏曲 イ長調 op.81
メロスSQ〔ヴィルヘルム・メルヒャー(Vn)、イダ・ビーラー(Vn)、ヘルマン・フォス(Vla)、ペーター・ブック(Vc)〕
ジェラール・コセ(Va/ CD1)、カール・エンゲル(P/ CD2)

録音:1996年6&9月(CD1)/1994年3月&1995年5月(CD2)
1965年に結成されたメロス弦楽四重奏団によるドヴォルザーク。1970年代の初めには日本やオーストラリアなどのツアーも行い、世界を席巻した名 門四重奏団といえるでしょう。ここでは第2ヴァイオリンは、創設メンバーのゲルハルト・フォスではなく、現在もソロで活躍しているイダ・ビーラーが務 めています。ドヴォルザークの五重奏曲で、ヴィオラは1976年から約3年半にわたってアンサンブル・アンテルコンタンポランのメンバーとしても活躍し、 近年はラ・フォル・ジュルネ音楽祭でも来日、渋みの冴えわたる演奏で聴衆を魅了した名手ジェラール・コセ、そしてピアノはコルトーの下で研鑽を積み、 シューマンやモーツァルトのピアノ協奏曲、歌曲伴奏および室内楽で活躍したカール・エンゲルがゲストとして迎えられているという豪華な顔ぶれです。ドヴォ ルザークがプラハの音楽を(再)発見した時期に書かれたもので、熱き魂に貫かれた作品を、高貴かつ包み込むような音色のアンサブルで聴かせます。 (Ki)
HMG-501521
ハイドン:フルート三重奏曲集
第28番 ニ長調 Hob.XV:16、
第29番 ト長調 Hob.XV:15、
第30番 へ長調 Hob.XV:17
パトリック・コーエン(フォルテピアノ/アントン・ヴァルター製(1790年頃))
コンラート・ヒュンテラー(Fl)
クリストフ・コワン(Vc/Testore, 1758)

録音:1994年6月
ンラート・ヒュンテラー(1947年生まれ)は、コレギウム・アウレウム、ロンドン・クラシカル・プレイヤーズ、18世紀オーケストラなどで活躍の名手、 コーエンとコワンの三人が繰り広げるアンサンブルは典雅で極上のたのしさに満ちています。
HMG-501522
ベルリオーズ:歌曲集「夏の夜」Op.7
 叙情的場面「エルミニー」
ブリジット・バレー(Ms)
ミレイユ・ドゥランシュ(S)
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)シャンゼリゼO

録音:1994年6月,10月
ベルリオーズの魅力は、大編成のオーケストラによる狂おしいロマンティシズムばかりではありません。ゴーティエの詩に基づいた「夏の夜」の控えめな美しさ、幻想的で夢に満ちた音楽は心に響く美しさがあります。「エルミニー」はベルリオーズがローマ大賞に入選した時の作品。ヘレヴェッヘはベルリオーズを演奏するにあたり、19世紀音楽向けに当時の楽器を使用したシャンゼリゼ管弦楽団を編成、現代オーケストラでは再現の難しいベルリオーズが意図した通りの色彩の調合を可能にしています。 (Ki)
HMG-501544(2CD)
J.S.バッハ:世俗カンタータ集
フェブスとパンの争い「早く、早く、渦巻く風よ」BWV 201
満足するエオルス「墓を裂け、破け、打ち砕け」BWV205 
岐路のヘラクレス「われにまかせて見張りをさせよ」BWV213
ルネ・ヤーコプス(指)
ベルリン古楽アカデミー、
RIAS室内Cho
マリア・クリスティーナ・キール(S)、
アンドレアス・ショル(C-T)、
クリストフ・プレガルディエン,
クルト・アゼスベルガー,
ジェイムス・テイラー(T)、
ローマン・トレーケル(Br)、
ペーター・リカ(Bs)

録音:1994年, 1995年
ヤーコプスによるバッハの世俗カンタータ集。ソリスト陣もショルや若き日のトレーケルをはじめ、最高の布陣。さすがはオペラも多く手掛けているヤー コプス、ここに収録された劇的要素の強い作品群も極上のたのしさ。ベルリン古楽アカデミーの管弦楽パート、通奏低音パートも冴えわたっています。 [原盤:HMC 901544(廃盤)]
HMG-501551
クシェネク(1990−1991):預言者エレミアの哀歌 マルクス・クリード(指)RIAS室内cho

録音:1992年12月
この作品を書いていた当時(1941年完成)、クシェネクの作品はナチ政権に「退廃音楽」として弾圧され、クシェネクはアメリカに亡命していました。預言の書から自身で選んだ言葉に、12音技法をとりいれたポリフォニー作品です。1948年に創立され、第2次世界大戦後の混乱期のベルリンの音楽シーンを支え続けた伝統と実力の合唱団の技が冴えます。 (Ki)
HMG-501557
ベートーヴェン:ミサ・ソレムニス ブリジット・レンメルト(Ms) 
ローザ・マニヨン(S) 
ジェームズ・タイラー(T)
コルネリウス・ハウプトマン(Bs)
ヘレヴェッヘ(指)シャペル・ロワイヤル、
コレギウム・ヴォカーレ、
シャンゼリゼO

録音:1995年2月
発売当初、そのあまりの神々しいまでに衝撃的な美しい響きで人々を圧倒したミサ・ソレムニス。ロマン・ロランに「音楽史上もっとも偉大な神曲」と言わしめたのが納得できる、やわらかな神々しさに包まれた演奏は今聴いても心に響きます。(HMC.901557通常盤は在庫終了次第廃盤となります。) (Ki)
HMG-501566(2CD)
モンテヴェルディ:聖母マリアの夕べの祈り マリア=クリスティーナ・キール(S)
バーバラ・ボーデン(S)
アンドレアス・ショル(C.T)
ジョン・ボーウェン(T)
アンドリュー・マーガトロイド(T)
ヴィクトル・トレス(Br)
アントニオ・アベーテ、イェーレ・ドライエル(Bs)
ルネ・ヤーコプス(指)
コンチェルト・ヴォカーレ,
オランダ室内Cho

録音:1995年6月
610年の秋に法王パウル5世に献呈されたこの「聖母マリアの夕べの祈り」は、今なお音楽史上の名作として名高く、また人気も高い作品。非典礼 的なテクストの採用や、名人芸の器楽パート、多彩な楽曲ながら、典礼文のテクストにはグレゴリオ聖歌の旋律を用いることによって全体の統一を図って いる点など、いたるところに工夫が見られます。このモンテヴェルディの意欲作を、ヤーコプスや若きショルら、綺羅星のような歌唱陣が煌びやかかつ厳 かに演奏しています。 (Ki)
HMG-501570
モーツァルト:セレナード第10番 変ロ長調 K.361「グラン・パルティータ」
セレナード第12番 ハ短調 K.388「ナハトムジーク」
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
シャンゼリゼOのメンバー
〔マルセル・ポンセール、
北里孝浩(Ob)
ジェーン・ブース、ロレンツォ・コッポラ(Cl)
ギ・ヴァン・ワース、
ヨッヘン・ゼゲルケ(バセットホルン)
クロード・モーリ、
ペトルス・ドンブレヒト、
クリストフ・フェロン*、
デニス・メイトン*(Hrn)
マルク・ヴァロン、
ジャン=ルイ・フィアット(バッソン)、
ミシェル・マルドナード(Cb)〕

録音:1995年6月
*はK.361のみの参加
レヴェッヘによるモーツァルト。管楽合奏の名曲2篇の、オリジナル楽器の名手ぞろいのシャンゼリゼOのメンバーによる演奏です。ポンセー ルや北里といった名手のほか、現在フライブルク・バロック・オーケストラでも活躍している名手コッポラのクラリネットの音色も堪能できる魅力盤。ヘレ ヴェッヘの、しなやかで自然にして、上品な着地のフレージングを見事に実現した演奏で、数ある同曲の名盤のなかでもユニークアな光を放つ名盤です。 (Ki)
HMG-501578(2CD)
バッハ:管弦楽組曲(全曲)
[CD1]第3番 ニ長調 BWV 1068、
 第1番 ハ長調 BWV 1066
[CD2]第4番 ニ長調 BWV 1069、
 第2番 ロ短調 BWV 1067
ベルリン古楽アカデミー

録音:1995年9月
タログ付CD(2008)としても発売された名盤、ベルリン古楽アカデミーによるバッハの管弦楽組曲が復活します!組曲第1番プレリュードの冒頭の、 品格漂うテンポ感と音色はさすが。第2番の終曲「バディヌリ」で魅せる絶妙なリズム感覚が冴えたアンサンブルは絶品です。名人たちによる抜群のアン サンブルをたのしめるセットです。 (Ki)
HMG-501590
ギョーム・ド・マショー:ノートル・ダム・ミサ マルセル・ペレス(指)アンサンブル・オルガヌム

録音:1995年11月
中世の薫りが濃厚に立ち上ってくる名演奏です。ここに収録されているのは作曲者の名前がわかるものとしては、ミサ通常文に作曲された最古のミサ曲。中世・ルネサンス期の声楽を研究しているペレスらによる演奏は、長く引く低音をリード・オルガンのようにビリビリと響かせたり、しゃっくりのようなホケトゥスの技法をふんだんに用いたりするなど、通常のミサ曲のイメージとの違いに今もなおびっくりさせられます。鮮烈かつショキングな名演奏です。再発売の呼び声も高かった、根強いファンのいる名盤です。 (Ki)
HMG-501591
ブラームス:宗教合唱曲集
2つのモテットop.74、祝辞と格言op.109、
3つのモテットop.110、ミサ・カノニカ、
2つのモテットop.29
マルクス・クリード(指)RIAS室内cho

録音:1994、1995年
ブラームスはその生涯を通じて合唱曲を書いていました。宗教的なモテットは、ルターがドイツ語に訳した聖書のテクストに基づいています。ルターのテクストの敬虔な世界と、ロマンティシズム溢れる世界が見事に調和しています。  (Ki)
HMG-501592(2CD)
ブラームス:世俗合唱曲集
[CD1]3つの歌op.42、
 2つのホルンとハープの伴奏による女声の為の4つの歌op.17*
 7つの歌op.62/5つの歌op.104
[CD2]4つの四重唱曲op.92
 3つの四重唱曲op.31
 3つの四重唱曲op.64
 2つの四重唱曲op.112a
[CD1]ステファン・イェジェルスキ、マフレット・クリール(Hrn)*、
マリー=ピエール・ラングラメ(Hrp)*

[CD2]アラン・プラネス(P)
マルクス・クリード(指)RIAS室内cho

録音:[CD1]1995年11月、1996年4月[CD2]1997年4月
「申し分のない声のブレンド具合、生まれ出た響きはどこまでも愛おしいもの、まちがいなく、彼らの演奏は聴き手にこれ以上ない愉悦の時をもたらすだろう」とグラモフォン誌でも絶賛された、RIAS室内合唱団によるブラームスの合唱作品集。共演の器楽奏者たちも注目の、豪華な2枚組となっています。 (Ki)
HMG-501595
ピアソラ:「天使のミロンガ」
バンドネオン協奏曲
タンゴ・ポルテーニョの3楽章
5つのタンゴ
パ ブロ・マイネッティ(バンドネオン)
ジョセフ・ポンス(指)リウレ劇場CO
リュイス・ビダール(P)

録音:1995年12月
バンドネオンとオーケストラによるピアソラ。「5つのタンゴ」には、ピアソラの代表作ともいえる「天使のミロンガ」が含まれています。パブロ・マイネッ ティは1971年ブエノスアイレス生まれ。録音当時まだ20代前半という若さでしたが、タンゴの世界では当時から世界的に有名な天才です。 [原盤:HMC 901595(ともに廃盤)]
HMG-501608
ブラームス:ドイツ・レクイエム クリスティアーネ・エルゼ(S)、
ジェラルド・フィンリー(Br)、
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)シャンゼリゼO、
シャペル・ロワイヤル、コレギウム・ヴォカーレ

録音:1996年6月8、9日/スイス、モントルー
ヘレヴェッヘの数ある名盤の中でも特に名高いドイツ・レクイエム。ヘレヴェッヘの奏でる音楽は、どこまでも自然で流麗。そして白くなめらかな陶器のようにはっとするほど美しいフレーズ運びで、聴く者の心に、静かで熱い感動を呼び起こす不思議な力に満ちています。このドイツ・レクイエムもそんなヘレヴェッヘの魅力が存分に発揮された名演奏です。ハルモニア・ムンディ・レーベルのベスト・セラーです。 (Ki)
HMG-501629
ブクステフーデ:宗教カンタータ集 コンラート・ユングヘーネル(指)
カントゥス・ケルン
〔ヨハンナ・クスロフスキ、
ケルスティン・ブルンス、
ヘドヴィク・ヴェストホフ=ドゥッパーマン、
エリザベス・ポピエン、ゲルト・テュルク、
ヴィルフリード・ヨッヘンス、
ステファン・シュレッケンベルガー〕

録音:1997年4月
ブクステフーデの美しい宗教カンタータ集。待降節(クリスマス前の約1ヶ月)になると毎週行われていたアーベントムジーク(夕べの音楽)では、名オルガニストでもあったブクステフーデがオルガンを演奏、さらいここに収められているような比較的短いカンタータも演奏されていたといいます。教会で一番忙しい時期のひとつで、教会に仕える音楽家も様々なイベントのために作曲をしなければなりませんでしたが、これらの作品は一つ一つが宝石のような輝きを放つ名作カンタータばかりです。 (Ki)
HMG-501632(2CD)
ベルリオーズ:オラトリオ「キリストの幼時」
ヘロデの夢/エジプトへの逃避
サイスへの到達
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)
コレギウム・ヴォカーレ、
シャペル・ロワイヤル、シャンゼリゼO
ヴェロニク・ジャン(Ms) 
ポール・アグニュー(T) 
オリヴィエ・ラルエット(Br)
ローラン・ナウリ(Bs) 
フレデリック・キャトン(Bs)
このオラトリオは、木管楽器と弦楽器が主体で古雅な響きがするという点で、ベルリオーズの作品群の中でもひときわ異彩を放っている作品です。特に、最初に作曲された「エジプトの逃避」第2部の合唱曲は、悪意に満ちた偏見と先入観に基づく酷評を見返すために、バロック時代の他人の作品として発表されており、バロック風の響きを持っています。ヘレヴェッヘ率いるシャンゼリゼ管弦楽団、コレギウム・ヴォカーレ、シャペル・ロワイヤル及び、ジャンスをはじめとする独唱陣による演奏は、これらの背景にある演奏様式を踏まえ、作品に深みのある表現を与えています。 (Ki)
HMG-501634(2CD)
バッハ:ブランデンブルク協奏曲(全6曲) ベルリン古楽アカデミー

録音:1997年5,10月
HMXなどの限定盤などでの再リリースを繰り返していたこの名盤も、HMG-に組み込まれたことでやっと安定した流通が見込まれることとなりました。そもそもこの盤は、ハルモニアムンディ・フランスにとって初のブランデンブルク協奏曲録音でした。それもあって、満を持してのリリースで、新鮮かつショッキングな内容。その威力は今なお色あせることなく燦然と輝いています。 (Ki)
HMG-501647
ドビュッシー:フルートを伴う室内楽曲集
フルート,ヴィオラとハープのためのソナタ
シランクス
牧神の午後への前奏曲(サマズイユ編曲によるフルート&ピアノ版)
ビリティスの歌(ピエール・ブーレーズの補筆完成版)
シランクス(フルート&朗読オリジナル版)
フィリップ・ベルノール(Fl)
ジェラール・コセ(Va)
イザベラ・モレッティ(Hrp)
アリアーヌ・ジャコブ (P)
イレーヌ・ジャコブ(朗 読 (4))

(旧品番:HMC-901647)
フィリップ・ベルノールほか、豪華顔ぶれによるドビュッシーの室内楽曲集。ベルノールは、リヨン国立歌劇場の第一フルート奏者を務め、1987年に はピエール・ランパルコンクールで優勝しています。しばしば来日もしており、人気フルート奏者の一人といえるでしょう。シャルル・ミュンシュの孫弟子 にあたり、指揮者としても活躍しています。
HMG-501651
ドイツ・バロック・カンタータ集
シュッツ:おおイエスやさしき御名SWV308
トゥンダー:ああ主よ、あなたの愛する天使たちに命じて、
ヨーハン・クリストフ・バッハ:哀歌「ああ私の頭に涙がたくさんあったなら」、
トゥンダー:めでたしイエスよ、
レグレンツィ:ヴィオラ・ダ・ガンバのためのソナタ第5番
ブクステフーデ:哀歌「どんな堕落がもたらすことのないものを死がもたらさなければならないのだろうか?」、
エルレバッハ:おのが身を天に任せるものは、
シュッツ:おお主よ私はあなたを心から愛する、
ブクステフーデ:主に向って喜びの叫びを上げよ、
アルベルティーニ:ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ第4番、
シュッツ:どうなさったのですか
アンドレアス・ショル(C.T)、
コンチェルト・ディ・ヴィオーレ、バーゼル・コンソート

録音:1997年10月
名実ともに世界一のカウンターテナー、アンドレアス・ショル。ドイツ人である彼による、母国のバロック作曲家たちのカンタータ・アリア集です。一見渋いラインナップですが、ショルの清澄で深い歌声にうっとりとひらせてくれるものばかりです。 (Ki)
HMG-501652(2CD)
シュッツ:『ダヴィデの詩篇歌集』SWV 22〜47 コンラート・ユングヘーネル(指)
カントゥス・ケルン、
コンチェルト・パラティーノ
ユングヘーネルによるシュッツの名作が久々の復活登場となりました。緻密な書法とそれを実現化する声楽アンサンブルの確かな技量にはただただ圧倒されてしまいます。 (Ki)
HMG-501669
シューベルト:森の夜の歌D.913*,
墓と月D.893,ゴンドラ漕ぎD.809,
詩篇第23番「主はわが羊飼い」D.706,
昔を今にD.710,
コロナッハD.836,夜の明りD.892,
夜D.983c,セレナードD.920,
水上の精霊の歌D.714*,
雷雨の中の神D.985
マルクス・クリード(指)RIAS室内cho
ブリギット・レンメルト(A/ D.920)
ウェルナー・ギューラ(T/ D.710, 892)
フィリップ・マイヤース(フォルテピアノ、ヨハン・フリッツ、ヴィーン、1825年頃製/エドウィン・ボインク・コレクション)
*シャロウン・アンサンブル(D.913はホルンのみ、D.714はヴィオラ、チェロ、コントラバス、ホルンのアンサンブル)

録音:1997-1998年
夜」をテーマに選ばれた珠玉のシューベルト合唱(重唱・独唱と合唱のための作品も含む)集。いずれもシューベルトの独唱曲に勝るとも劣らない 優れた作品が並びます。名曲「森の夜の歌」でのホルン・アンサンブルも見事。弦による美しい前奏で始まる名曲「水上の精霊の歌」は8パートによる 男声合唱ですが、完璧なアンサンブルに圧倒されます。
HMG-501674
ピアソラ:「タンゴの歴史」(Fl,G)、
6つのタンゴ練習曲(Fl)、
タンゴ組曲第3番(Fl,2G)、
5つの小品(G)、
「忘却」(A−Fl,バンドネオン,G,Cb)
セシル・ダルー(Fl)
パブロ・マルケス(G)
マウリシオ・アンガリータ(Cb)
レオナルド・サンチェス(G)
フアン・ホセ・モサリーニ(バンドネオン)

録音:1998年12月ラジオ・フランス・スタジオ103

(旧品番:HMN 911674)
人気が高かったにも関わらず長らく入手できなかった「タンゴの歴史」が復活。ブーレーズも絶賛した女性フルート奏者、セシル・ダルーのデビュー盤。 ダルーは1969年に生まれ、パリ国立高等音楽院で学び最優秀のアルトー賞を受賞して卒業、ランパル、ニコレらに師事し、ダルムシュタットでの国際コ ンクールで優勝。1997年から2000年まで、ルーアン歌劇場でソロ・フルート奏者を務めました。2000年、ニューヨークのヤング・コンサート・アー ティスト受賞者となり、2001年にはブーレーズとリンカーンセンターで共演。古典のものから現代もの、さらに即興演奏、ジャズ、クロスオーヴァーなど で才覚を発揮しましたが、2011年、病のため惜しまれながら若くして亡くなりました。ブーレーズからも「セシル・ダルーはヴィルトゥオーゾ・フルート 奏者であるとともに、完璧で洗練された音楽家である。繊細でよく練られたやり方で、彼女は自分の表現の幅を自在に操っている。」と絶賛されたダルー の魅惑の演奏をご堪能下さい。 (Ki)
HMG-501682
ルネサンスの哀歌〜預言者エレミアの哀歌
ティブルツィオ・マッサイーノ:聖週間における預言者エレミアの哀歌のための音楽(5声,1599)〜聖体の秘蹟制定の聖木曜日の第1課、第2課、第3課、
ロバート・ホワイト:哀歌(5声)第1課、第2課、
マルブリアヌス・デ・オルト:預言者エレミアの哀歌(4声,1506)導入―アルフ―ベート―ギメル、
ラッスス:聖金曜日のためのエレミアの哀歌 第1哀歌、第2哀歌、第3哀歌(5声,1585)
パウル・ヴァン・ネーヴェル(指)
ウエルガス・アンサンブル

録音:1997年4月
エレミアの哀歌とは、旧約聖書にある預言者エレミアが、バビロン捕囚の時代に、エルサレムの陥落を嘆いて詠んだもの。各連の冒頭の文字が、ヘブライ語のアルファベットの順番になっているのも特徴です。すべてエレミアが目撃して衝撃を受けたことがそのまま詠まれているので、内容は実に壮絶で悲愴。想像を絶する悲しみが歌われます。ウエルガス・アンサンブルの声楽と器楽が、深い悲しみの表情を湛えた音色で聴かせる名盤です。 (Ki)
HMG-501684
ジョン・ブロウ(1649-1708):歌劇「ヴィーナスとアドニス」〜王の愉しみのための仮面劇 ロースマリー・ジョシュア(ヴィーナス:S)、
ジェラルド・フィンリー(アドニス:Br)、
マリア・クリスティーナ・キール(S)、
クリストファー・ジョシー、ロビン・ブレイズ(C-T)、
ジョン・ボウエン(T)、ジョナサン・ブラウン(Br)、
クレアー・カレッジ・シャペルXCho.
(合唱指:ティモシー・ブラウン)、
ルネ・ヤーコプス(指)エイジ・オブ・エンライトゥンメントO

録音:1998年10月
1681年、オックスフォード1世のために書かれたオペラ。1680年代に英国で書かれた数少ないオペラの一つで、フランスとイタリアの様式が取り入れられた極めて典雅な序曲に始まり、一貫して洗練された名作です。パーセルの名前があまりにも大きいということが原因で、長らく歴史に埋もれてしまっていたのです。 (Ki)
HMG-501686
シュッツ:イタリア語マドリガル集第1巻SWV1-9(1611年ヴェネツィア刊) ユングヘーネル(Lute,指)
カントゥス・ケルン

録音:1998年ドイツ/ノイシュタット=マンデルスローの聖オスダク教会
偉大な芸術家の処女作・初期作というのはやはりただならぬ風格をもっているものです。シュッツ26歳の時に出版されたこのイタリア語による19のマドリガルも、大変な力作です。ヴェネツィア楽派の生ける神のような存在であったG.ガブリエリの下で研鑽を積んだシュッツ。2年ほどの修行の後に書かれたこれらの作品は、師がそれほど善しとしなかった、極めて難しい技術が歌い手に要求されるもの。5声の各パートの独立性が高く、通奏低音の支えもなく、さらに歌詞もミサ曲のように繰り返しではなく、通常の歌詞を歌わなければなりません。もちろん、作曲者の腕がなければこのようなものは書けませんが、見事な構築性をもってシュッツはこの作品を書き上げています。 (Ki)
HMG-501698
「マグダラのマリアの歌」
アニェレッティ:グローリア(1673)、
ルイジ・ロッシ:「マグダラのマリアの嘆き」、
フレスコバルディ:「どちらに消え去ったのだろう」、
 ハープによるトッカータとカンツォーナ、
 「十字架のもとに悲しめるマグダラのマリア」、
ミケランジェロ・ロッシ:チェンバロのためのトッカータ第7番、
グラツィアーニ:モテット「主はわが光」、
マッゾッキ:「それでは主よあなたはどこに」
 「マグダラのマリアは再び泣いた」
 「キリストの死についての考え」、
カプスベルガー:リュートのためのトッカータ、
ベルナベイ:「ああ、私はみすぼらしく不幸だ」、
フェルラーリ:「これらの鋭い刺は」
マリア・クリスティーナ・キール(S)、
ジャン=マルク・エーメ(指)
コンチェルト・ソアーヴェ

録音:1999年5月
マグダラのマリアは、聖書に様々な重要エピソードがあり、イエスの復活を最初に目の当たりにした人物でもあることから、聖書の中でも特別な存在の女性です。彼女はまたキリストの磔刑も見守っており、ここに収められているのはそのときの彼女の嘆き。どの楽曲も、厳密な対位法ではなく、歌詞の表出性、表現性を重視して書かれているため、マリアの心の嘆きが痛いほど伝わってきます。キールのまっすぐな歌声が直接心に響き、打たれます。 (Ki)
HMG-501700
デュファイ(c.1400-1474):アイソリズムによるモテトゥス全集
「喜べ、ビザンツ帝国の妃」
「おお、聖セバスティアヌスよ」
「おお、輝きわたる宝石」
「誉れある使徒に」
「偉大なるヤコブをわれら正しくたたえん」
「戦う教会」「バルサムと上品なる蝋が」
「人には平和が最高のもの」
「バラの花が先ごろ」
「めでたし、トスカナ人の花」
「度量ある人々の称賛を」
「神の教会の輝ける星」
「キリストとともにヨハネが」
パウル・ヴァン・ネーヴェル(指)
ウエルガス・アンサンブル

録音:1999年7月
アイソリズムとは、違う旋律素材でも、同じリズム・パターンが繰り返し現れるというもの。デュファイはこの手法を大変得意としていました。中世の雰囲気も漂う、独特の世界が広がります。1トラックずつじっくり聴いて、横の線と縦の線の複雑な関連、独特で不思議なハーモニーの万華鏡にたっぷりと身を浸からせたい1枚です。 (Ki)
HMG-501711
C.P.E.バッハ:シンフォニアWq179、
チェンバロ協奏曲Wq20、シンフォニアWq178、
チェロ協奏曲Wq170、シンフォニアWq173
ラファエル・アルパーマン(Cemb)、
ペーター・ブルンズ(Vc)、
ベルリン古楽アカデミー

録音:2000年1月
大バッハの次男で、ベルリンとハンブルクを中心に活躍したカール・エマヌエル・バッハ(1714-1788)。彼が活躍した時代はバロック時代と古典派時代の境、「疾風怒濤期」と呼ばれていた時期で、激しい感情表出、極端なクレッシェンドやディクレッシェンドなど、実に刺激的な作品が多く書かれた時代。ここに収められた作品もどれも刺激的、しかも演奏するのはベルリン古楽アカデミーということで、誰にも止められないまさに「疾風怒濤」の爆演となっております。協奏曲でも、ソリストはオケのメンバーがどんなエネルギーで迫ろうとも流されず、実にたっぷり聴かせており、その対比がまた一興。刺激的なだけじゃない、実に楽しい1枚です。 (Ki)
HMG-501721
1906年のスタインウェイで聴くショパン
ショパン:24の前奏曲Op.28
4つのマズルカOp.41、
夜想曲嬰ハ短調(遺作)(オリジナル稿)、
子守歌Op.57、舟歌Op.60
アラン・プラネス(P;1906年スタンウェイ製)

録音:2000年3月
1906年製スタインウェイの骨太で色々な表情を含む響きが魅力の、プラネスによるショパンの前奏曲集。プラネスは、決して感傷に走ることなく、極めて粒立ちの良いタッチで一曲一曲の世界を描き奏でます。 (Ki)
HMG-501724
ロッシーニ:小ミサ・ソレムニス クラッシミーラ・ストヤノヴァ(S)ブリギット・レンメルト(A)、スティーヴ・ダヴィスリム(T)、ハンノ・ミュラー=ブラッハマン(Bs)、マルクス・クリード(指)RIAS室内cho
フィリップ・メイヤーズ、フィリップ・モル(P)
諸岡涼子(ハルモニウム)

録音:2000年5月
長く沈黙を守っていたロッシーニが最晩年の1864年に作曲した小ミサ・ソレムニス。4人の独唱と合唱、伴奏は2台のピアノとハルモニウムという特 異な編成によりますが、旋律自体はオペラ的で魅力。作曲当時のピリオド楽器を用いて録音した世界初の盤。RIAS室内合唱団の素晴らしさと相まって、 美しい世界が展開されています。 (Ki)
HMG-501725
A.スカルラッティ:カンタータ集
美しき花々の母、
オルフェオはそれを知って、
愛する胸に飛び込んで
マリア・クリスティーナ・キール(S)、
ジャン=マルク・エメ(指)
コンチェルト・ソアーヴェ

録音:2000年5、6月
神話の登場人物である恋人たちが、運命によって引き裂かれてしまう悲しみを歌った作品集。キールの深く語るような歌声が、悲しみの物語をしみじみと聴かせます。コンチェルト・ソアーヴェによる伴奏も、キールの語る悲劇を哀しげに美しくなぞってゆきます。  (Ki)
HMG-501734
ブリテン:「神聖と世俗」Op.91
ヴォーン=ウィリアムズ:3つのシェークスピア歌曲
エルガー:パート・ソング集(1904)
スタンフォード:「青い鳥」
ディーリアス:2つの無伴奏パート・ソング集
マルクス・クリード(指)
RIAS室内cho

録音:2000年10月
独伊の合唱曲レパートリーを録音してきたクリード&RIAS室内合唱団によるイギリスもの。彼らの安定した素晴らしい技術と、高い音楽性は、合唱曲 の宝庫、イギリスのレパートリーも自家薬籠中の出来に仕上げています。また、アルバム自体が1905年作のエルガーの「パート・ソング」(混声合唱)から、 ブリテン最晩年1975年の「神聖と世俗」と、20世紀の英国合唱作品を俯瞰できるような作りになっているのも興味深いところです。 (Ki)
HMG-501735
「20世紀ハンガリーのチェロ音楽集
クルターク:しるしUOp.5b-1,2
 影/信仰
ピリンスキ・ヤーノシュ:ジェラール・ド・ネルヴァル
アツェール・ジェルジュの思い出に
コダーイ:無伴奏チェロ・ソナタop.8
チェロとピアノのためのソナチネ*
 アダージョ
ヴェレシュ(1907-1992):無伴奏チェロ・ソナタ
ジャン=ギアン・ケラス(Vc)
アレクサンドル・タロー(P)*

録音:2000年10月
ケラスの腕が冴えわたる!20世紀以降のハンガリー・チェロ音楽の俯瞰的名盤です。クルタークの「影」での金属製のミュートを使っての半音階的なパッセージの非現実的な壮絶感は圧巻。名手ケラスにしか出せない味わいです。コダーイの「チェロとピアノのためのソナチネ」ではタローがピアノを務めています。民謡を思わせる音構造やの旋律線と、ロマン派を思わせる雰囲気の合わさった独特の世界に、名コンビが大胆に斬り込みます。ともすれば土臭さが全面に押し出されがちなコダーイですが、ここではがらりと違った表情が展開されており、その斬新さは今なおくらりとさせるショッキングさ。強烈な説得力と凄み、ケラスの腕前の確かさを痛感する名盤です。 (Ki)
HMG-501753
シューマン:「女の愛と生涯」
「女の愛と生涯」Op.42、
「ミニョン」Op.79-29(子供のための歌のアルバムより)、
「くるみの木」Op.25-3(「ミルテの花」より)、
「ことづて」Op.77-5(リートと歌第3集より)、
「はすの花」Op.25-7(「ミルテの花」より)、
「セレナード」Op.36-2(6つのリートより)、
「夜の歌」Op.96-1(リートと歌第4集より)、
「眠りの精」Op.79-13(子供のための歌のアルバムより)、
「捨てられし乙女」Op.64-2(ロマンスとバラード第4集)、
「トランプ占いの女」Op.31-2(3つの歌より)、
「レーナウ歌曲集」Op.90(レクイエムを含む)
ベルナルダ・フィンク(Ms)、
ロジャー・ヴィニョールズ(P)

録音:2001年6月
深く美しい歌声で私たちを魅了し続けるベルナルダ・フィンクによるシューマン歌曲集。シューマンの歌曲の魅力に、精神的深みが挙げられます。特に優れた作品は、人の手による芸術で他に比肩しうるものがあるだろうか、と思わずにはいられない高みを感じさせます。夜、ひとり静かにじっくりと味わって聴きたい1枚です
HMG-501758
リスト:エレジー、忘れられたロマンス、
アルカン
:演奏会用大ソナタop.47
リスト:悲しみのゴンドラ、
 ノンネンヴェルトの僧房、エレジー(第2番)
エマニュエル・ベルトラン(Vc)、
パスカル・アモワイヤル(P)

録音:2001年3月
リストもアルカンも、19世紀の音楽シーンを飾った超人気のヴィルトゥオーゾ・ピアニストでした。そんな二人によるチェロとピアノのための作品は、ロマン派色濃厚。そしてなによりピアノ・パートの美しさが魅力です。チェロのベルトランは日本でのコンサート優勝経験もある若手実力派、ピアノのアモワイヤルは1971年生まれで作曲もしています。親密な雰囲気と練り上げられた楽想が聴くものを惹きつけてやみません。 (Ki)
HMG-501759
プーランク:「人の声」、
「モンテカルロの女」
フェリシティ・ロット(S)
アルミン・ジョルダン(指)スイス・ロマンドO

(旧品番:HMC-901759)
プラノの大御所、フェリシティ・ロットによる、プーランク2品が収録された貴重な盤が復活。「人の声」の登場人物は、電話に向かって話している女性一人。電話の相手は、明日、他の女性と結婚する男性。電話での対話という一件普通の光景の中、主人公の男性に対する思いのあきらめや、どん底の絶望といったものが、要所要所での中断などの劇的効果なども巧みに用い、表現されています。地中海に身投げしようとしている年老いた女性のモノローグの「モンテカルロの女」でも、ロットの表現力に感嘆するほかありません。言語も非常に美しく、また、アルミン・ジョルダン率いるスイス・ロマンド管がプーランクのハーモニーを美しくクリアに響かせつつロットと見事なアンサンブルを展開しています。
HMG-501762(2CD)
ハイドン:ピアノ・ソナタ集
ピアノ・ソナタ第6(13)番ト長調(Hob.XVI−6),同第34(53)番ホ短調Op.42(Hob.XVI−34),同第28(43)番変ホ長調Op.14−2(Hob.XVI−28),同第24(39)番ニ長調Op.13−4(Hob.XVI−24)
アンダンテと変奏曲へ短調Op.83(Hob.XVII−6)
ピアノ・ソナタ第32番(旧47番)ロ短調、第20番(旧33番)ハ短調、
第37番(旧50番)ニ長調、第51番(旧61番)ニ長調、第43番(旧35番)変イ長調
アラン・プラネス(P)

録音:2001年8月、IRCAM
ンサンブル・アンテルコンタンポランでも活躍、LFJでも何度か来日し、そのゆるぎない音楽性と確かなアンサンブルなどで聴き手を魅了したアラン・ プラネスのハイドンが復活。抜群に安定感のあるテクニックで、ハイドンの機知に満ちたソナタを完璧に弾きこなしています。 (Ki)
HMG-501764
新時代の「アランフェス」
ロドリーゴ:アランフェス協奏曲
ある貴紳のための幻想曲
庭園のための音楽、3つの古風な舞曲
マルコ・ソシアス(G)
ジョゼプ・ポンス(指)グラナダ市O

録音:2001年9月
ロドリーゴの名作「アランフェス協奏曲」を、生前の作曲者が高く評価していたスペインの新鋭ソシアス(1966年生まれ)が演奏したディスク。予想外のデリケートな解釈に驚かされます。もうひとつのギター協奏曲である「ある貴紳のための幻想曲」も透明な味わいに満ちています。カップリングは珍しいロドリーゴのオーケストラ曲。グラナダ市管弦楽団のいきいきとした演奏が魅力です。 (Ki)
HMG-501766
シューマン:リーダークライスop.39、
詩人の恋op.48
ヴェルナー・ギューラ(T)
ヤン・シュルツ(P)

録音:2001年10月
端正な美声のテノールとして活躍するギューラのシューマン。知性と情熱のバランスのとれた歌声で聴く詩人の恋は、一言一言、1フレーズが美しく真珠のように心に響いてきます。 (Ki)
HMG-501732
パオロ・ダ・フィレンツェ(1390〜1425):マドリガル集〜見つめるナルシス
「波荒き暗礁の中にて」
「さすらう鳥は」
「愛よ、教えておくれ」
「レーナ、貞節にして」
エスタンピー「イサベッラ」(器楽曲)
「もはや不幸では」
「ビーナス(ウェヌス)は」
エスタンピー(器楽曲)
「喜べ、フィレンツェよ」
「美しき鷹は」/エスタンピー(器楽曲)
ペドロ・メメルスドルフ(指)
マーラ・プニカ

録音:1999年9月ボローニャ
15世紀初頭のフィレンツェの大修道院長にして歌手でもあったドン・パオロ・ディ・マルコの作品集。当時の人々には衝撃的であったろう技巧を尽くし たマドリガルなども多くのこしています。約700年前の音楽作品の力強さを実感する1枚。 (Ki)
HMG-501777
バルトーク:バレエ音楽「中国の不思議な役人」(Op.19)Sz.73〔オリジナル・スコア復元版〕
舞踏組曲Sz.77
4つの管弦楽組曲(Op.12)Sz.51
デイヴィッド・ロバートソン(指)リヨン国立O

録音:2001年4,10月
亡きブーレーズも絶賛したデイヴィッド・ロバートソンのバルトークが復活。「中国の不思議な役人」は、1999年に作曲家の次男ペーテルによって、オ リジナル・スコアから、存在しながら欠落していた30小節が加えられ、ディナーミク、ボウイング他の演奏指示を補われた復元版を使用。全篇を通して 鋭い緊張感、炸裂するリズムに満ちた熱演です。 (Ki)
HMG-501778
ファリネッリのためのアリア集
ポルポラ:オルフェーオのアリア「いかなる苦悩からも」(歌劇「オルフェーオ」)、
ブロスキ
:ダーリオのアリア「忠実な霊よ、我もまた」(歌劇「イダスペ」)、「戦場のあの兵士」(歌劇「イダスペ」)、
ジャコメッリ
:ファルナスペのアリア「おお神よ」(歌劇「シリアのハドリアヌス帝」)、
ガルッピ
:4声のための協奏曲ハ短調、
ポルポラ
:「甘く清々しいそよ風」(歌劇「ポリフェーモ」)、「今や嵐の雲が」(ハッセ:歌劇「アルタセルセ」への追加アリア)、
ハッセ
:アルバーチェのアリア「この甘き抱擁もて」(歌劇「アルタセルセ」)、
ジャコメッリ:エピディーデのアリア「あの夜鳴きウグイスは」(歌劇「メローペ」
ヴィヴィカ・ジュノー(Ms)、
ルネ・ヤーコプス(指)ベルリン古楽アカデミー

録音:2002年1月ベルリン
映画「カストラート」の成功もあって広く知られるようになった、歴史上のカストラート歌手、ファリネッリのために書かれたアリアを集めた1枚です。もとをただせば男性(声)のために書かれたこれらの楽曲、どれも長い息と激しい表現、超絶のテクニックが要求されるものばかりですが、アメリカ出身のメゾソプラノ、ジュノーが見事に歌いきっています。歌、そして声のもつ可能性の幅広さをあらためて世に知らしめた、センセーショナルな1枚です。
HMG-501783(2CD)
アルトバッキッシェス・アルヒーフ〜バッハの祖先の音楽
ヨハン・バッハ、ハインリヒ・バッハ、ヨハン・クリストフ・バッハ、ヨハン・ミヒャエル・バッハ、ゲオルク・クリストフ・バッハ、ヨハン・セバスティアン・バッハらの作品(全 24 曲)
ヨハン・クリストフ・バッハ:カンタータDie Furcht des Herren[9:02]
 モテットLieber Herr Gott, wecke uns [3:13]
 ラメントWie bist du denn, o Gott, in Zorn auf mich entbrannt [11:48]
作曲者不詳:アリアNun ist alles uberwunden[3:32]
ヨハン・クリストフ・バッハ:カンタータEs erhub sich ein Streit [8:34]
ヨハン・ミヒャエル・バッハ:モテットIch weiss, dass mein Erloser lebt [1:46]
 アリアAuf, lasst uns den Herren loben [4:15]
ヨハン・クリストフ・バッハ:モテットUnsers Herzens Freude hat ein Ende [7:26]
ヨハン・バッハ:アリアWeint nicht um meinen Tod [2:54]
ヨハン・クリストフ・バッハ:カンタータMeine Freundin, du bist schon [23:17]
 モテットHerr, nun lassest du deinen Diener in Frieden fahren[4:18]
 カンタータHerr, wende dich und sei mir gnadig[12:55]
 モテットDer Gerechte, ob er gleich zu zeitlich stirbt [4:29]
ヨハン・バッハ:モテットUnser Leben ist ein Schatten [6:44]
ヨハン・ミヒャエル・バッハ:アリアAch wie sehnlich wart’ ich der Zeit [5:03]
 モテットHerr, wenn ich nur dich habe [3:14]
ゲオルク・クリストフ・バッハ:カンタータSiehe, wie fein und lieblich ist [7:12]
 アリアMit Weinen hebt sichs an [5:13]
ハインリヒ・バッハ:ラメントAch, das ich Wassers genug [7:16]
ヨハン・ミヒャエル・バッハ:モテットNun hab’ ich uberwunden [3:37]
ヨハン・クリストフ・バッハ:アリアEs ist nun aus [4:19]
ヨハン・バッハ:モテット Sei nun wieder zufrieden [3:28]
ヨハン・ミヒャエル・バッハ:モテットDas Blut Jesu Christi [3:18]
ヨハン・セバスティアン・バッハ: Ich lasse dich nicht, du segnest mich den [3:50]
コンラート・ユングヘーネル(指)
カントゥス・ケルン,コンチェルト・パラティーノ

録音:2002年2月
バッハ一族の音楽というと、バッハの子孫の録音はありますが、バッハの祖先の録音は意外と少ないもの。大バッハの祖父の兄ヨハン・バッハ(1604-1673)、大バッハの祖父の弟ハインリヒ・バッハ(1615-1692)、ハインリヒの長男ヨハン・クリストフ・バッハ(1642-1703)と次男ヨハン・ミヒャエル・バッ ハ(1648-1694)。さらに大バッハの伯父ゲオルク・クリストフ・バッハ(1642-1697)の現存する唯一の作品が収録されています。最後は大バッハのモテッ トで締めくくるという秀逸企画です。 (Ki)
HMG-501786
シューベルト:ミサ曲第5番変イ長調D.678
メンデルスゾーン:詩篇42番
アンナ・コロンディ(S)、アンケ・ヴォンドゥング(Ms)、アンドレアス・カラジアク(T)、カイ・スティーファーマン(Bs)、フィリップ・ヘレヴェッヘ(指)シャンゼリゼO
RIAS室内cho

録音:2002 年 3月ベルリン・フィルハーモニーホール
録音当時、ヘレヴェッヘ初のシューベルトということでも話題になった名盤。ここでは手兵コレギウム・ヴォカーレではなく、RIAS室内合唱団と演奏し ています。しなやかな旋律の歌わせ方と優しい情感、そして美しい音色はさすがヘレヴェッヘです。 (Ki)
HMG-501789(2CD)
シューベルト:ピアノ・ソナタ集
第4番イ短調D.537、
第9番ロ長調D.575、
第14番イ短調D.784
第13番ヘ短調D625、
さすらい人幻想曲 D760、
第17番ハ長調D840(「レリーク」)
アラン・プラネス(P)

録音:2002 年 5月
フランスの名手プラネスによるシューベルトが2枚組になって登場。「さすらい人幻想曲」でのカチっとした構築感と安定のテクニック、ソナタで聴かせ る抜群の安定感はさすがです。 (Ki)
HMG-501792
フンメル:ピアノ五重奏曲変ホ短調op.87、
シューベルト
:ピアノ五重奏曲「ます」
トリオ・ヴァンダラー、
クリストフ・ゴーグ(Va)、
ステファン・ログレ(Cb)

録音:2002年6月
「ます」には名演が数多くありますが、この「ます」は流麗さが際立っているといえます。この珍しい編成でシューベルトが曲を書いたのは、あるパトロンがここに収録されているフンメルの作品を聴いてその響きに感銘を受けたからという話が残っています。フンメルは彼が生きていた当時ベートーヴェンと並び称されていた大作曲家にして、大変なピアノの名人でした。このピアノ五重奏曲もピアノ・パートの充実ぶりが際立っており、疾走感と緊張感に満ちた傑作です。トリオ・ワンダラーはラ・フォル・ジュルネ音楽祭などで何度か来日もしているアンサンブルの名集団で、ハルモニアムンディが誇るアーティストです。 (Ki)
HMG-501794
ドイツのクリスマス合唱作品集
カール・エドゥアルト・ネッスラー(1863-1943):わが民をなぐさめよ
レーガー:高く戸を上げよ
 私たちの慕う聖母がop.138-4
 Es kommt ein Schiff geladen
 Das Volk, das im Finstern wandelt op.84-2
 高き天より、われは来たれリ
 Kommt und last uns Christum ehren
 甘き喜びの
 うちに/わが子よ、眠れ
 言葉は肉となり/おお、甘きエルサレムよ
メンデルスゾーン:歓び歌わしめよ、救い主は近い
 歓呼せよ、汝ら地の民よ
ジルヒャー(1789-1860):いと高きところに神あれ
ロベルト・フックス(1847-1927):喜びに満ちた日よ
ブルッフ(1838-1920):Lasst uns das Kindelein wiegen
キーンズル:わが魂は汝に感謝す
ヘルマン・リーデル(1847-1913):来たれ羊飼いよ
フランス・ヴュルナー(1832-1902):Herbei, o ihr Glaub’gen/Kindelein zart
マンディチェフスキ:静かな夜、聖なる夜
ヘルマン・リーデル(1847-1913):O du froehliche
ウヴェ・グロノスタイ(指)
RIAS室内Cho
ロマン派、後期ロマン派のクリスマスのためのドイツで生まれた合唱作品集。レーガーなど合唱団でもよく歌われる作品が、名門RIAS室内合唱団によって演奏されている貴重盤です。
HMG-501802
ベートーヴェン:オラトリオ「オリブ山上のキリスト」Op.85 ルバ・オルゴナソヴァ(S)
プラシド・ドミンゴ(T)
アンドレアス・シュミット(Br)
ケント・ナガノ(指)
ベルリン・ドイツSO
ベルリン放送cho

録音:2002年9月
ケント・ナガノ、HMF初登場盤、超豪華メンバーによるベートーヴェン唯一のオラトリオ「オリブ山上のキリスト」の復活です(SACD HYBRIDでし たが、ここでは通常盤CDとなります)。イエスが十字架にかけられる前にオリブ山(ゲッセマネの丘)に登って苦悩を語る場面が描かれたこのオラトリオ。 イエス(テノール)、天使セラフイム(ソプラノ)、ペテロ(バス)の独唱・重唱に、天使、弟子、兵士の合唱が加わり、曲が進行していきます。ちょうど ハイリゲンシュタットの遺書を書いた頃の作品だけあって、苦悩色に満ちた作品。エロイカと同時期に作曲されたため、やや埋もれてしまっている感もあり ますが、第九を理解するうえでも避けて通れない重要な作品の、まさに決定的な名演といえるでしょう。ドミンゴは今やバリトン歌手としても活動していま すが、ここではもちろんテノールとして苦悩に満ちたイエス役を熱唱しています。ナガノ率いるベルリン・ドイツ響の明晰な伴奏も圧巻です。 (Ki)
HMG-501808
ヒナステラ:作品集
《エスタンシア》より4つの踊りOp.8a
ハープ協奏曲Op.25
南米のファウスト序曲Op.9
協奏的変奏曲Op.23
ジョゼップ・ポンス(指)グラナダ市O、
マグダレーナ・バッレーラ(アルパ)
ルゼンチンの伊福部昭として名高いヒナステラ。彼の作品の名曲ばかりを集めた一枚です。≪エスタンシア≫とはアルゼンチンの広大な農場のこと。そ こを舞台に繰り広げられるほほえましい色恋沙汰を題材としたバレエ音楽から4つの舞曲を抜粋して組曲にしたのが一曲目。吹奏楽ファン垂涎の超かっこ いい組曲です。二曲目のハープ協奏曲もヒナステラ傑作中の傑作。ところで、ヒッチコック監督の映画では、監督自身が出演しているのがトレードマーク ですが、ヒナステラ作品にもトレードマークがあります。それは「ミラレソシミ」という音列。これはギターの開放弦の音列なのですが、これを探しなが ら聴いてみるのもまた一興です。 (Ki)
HMG-501813(2CD)
バッハミサ曲ロ短調 J.コスロフスキ、M.バッハ、
M.マウク、S.リュデンアルト(S)
E.ポピエン、H.ヴォス(A)
H.J.マメル、W.ヨヘンス(T)
S.シュレッケンベルガー、W.M.フリードリヒ(Bs)
コンラート・ユングヘーネル(指)
カントゥス・ケルン

録音:2003年2月
HMC901813(2CD)の再発盤。冒頭の「キリエ」から、ゾクっとするほどなまめかしさ。時にクールな響きにまとめられたロ短調は、まさに「耽美」。合唱部でもソロでも、器楽パートが対等に対話をしていて、どこか新鮮に響きます。すみずみまで行き届いた表現のきめこまやかさに感服。全体にやわらかみのある優秀録音です。 (Ki)
HMG-501816
ハイドン:チェロ協奏曲第1番ハ長調Hob.VIIb−1
 チェロ協奏曲第2番ニ長調Hob.VIIb−2
モン(1717〜50):チェロ協奏曲ト短調
ジャン=ギアン・ケラス(Vc)
ペトラ・ミュレヤンス(指)
フライブルク・バロック・オーケストラ

録音:2003年3月
チェロ奏者ならだれもが演奏するレパートリーのハイドンのチェロ協奏曲をケラスとフライブルク・バロック・オーケストラという最高の布陣の演奏で。カッ プリングのモンの協奏曲も、ハイドン以前(バロックから古典派への移行期に生きた)に書かれた傑作です。ハ長調の協奏曲で聴かせる活きのよい音楽(と くに終楽章のアグレッシヴさは快感です)、ニ長調の協奏曲で聴かせる優しい明るさ。ケラスの縦横無尽の才を堪能できる1枚です。フライブルク・バロッ ク・オーケストラの巧さも一聴に値します。 [原盤:HMC 901816(廃盤)]
HMG-501822
月に寄せる〜シューベルト:リート集
月に寄せるさすらいの歌D.870,あこがれD.879,戸外にてD.880,りんご園に寄せてD.197,愛の陶酔D.179,生きる勇気D.883,舟人D.536,双子座に寄せる舟人の歌D.360,水の上で歌うD.774,海の静けさD.216,小人D.771, 墓掘人の歌D.869,夜の曲D.672,弔いの鐘D.871,墓掘り人の郷愁D.842,秋の夜の月に寄すD.614,さすらい人D.649,ヴィルデマンの丘を越えてD.884,悲しみD.772,ブルックの丘にてD.853
ディートリヒ・ヘンシェル(Br) 
ヘルムート・ドイチュ(P)

録音:2003年5月,2004年1月,ベルリン
ヘンシェルと名手ドイチュによるシューベルト。死、夜、さすらいなどをテーマとした、シューベルトの歌曲の中でも特に深遠な作品を集めた1枚です。 [原盤:HMC 901822(廃盤)]
HMG-501824
ドヴォルザーク:歌曲集
愛の歌Op.83 B160
クラローヴェー・ドヴールの写本による歌曲集Op.7 B30
4つの歌曲Op.2 B124
エリシュカ・クラースノホルスカーの詩による愛の歌
4つの歌曲Op.82 B 157
4つの歌曲「民謡調で」Op.73 B146
歌曲集「ジプシーの歌」Op.55 B104
ベルナルダ・フィンク(Ms) 
ロジャー・ヴィニョールス(P)

録音:2003年5月
ドヴォルザークの魅力、素朴ながらも親しみやすいメロディーが満載の歌曲集。ドヴォルザークは100曲近い歌曲を遺しており、このディスクに含まれる 「わが母の教えたまいし歌」など、その旋律は日本人の心にも直截響くものばかり。アルゼンチン生まれのフィンクが、すべて原語歌唱で演奏しています。 (Ki)
HMG-501825
ショスタコーヴィチ:ピアノ三重奏曲第1番ハ短調op.8、第2番ホ短調op.67
コープランド:ピアノ三重奏曲「ヴィテプスク」(ユダヤ主題による習作)
トリオ・ヴァンダラー

録音:2003年5月
ショスタコーヴィチのピアノ三重奏曲第2番はソレルチンスキー追悼のために書かれたもので、ユダヤのメロディを用いています。コープランド初期のピアノ三重奏曲にはベラルーシの町ヴィテプスクの名が付けられています。ヴィテプスクはユダヤ人が多く、シャガールもここの出身。ロシア系ユダヤ移民の子であるコープランドのルーツ探しで、むせかえるようなユダヤ色に満ちています。この2作品、何故か良く似ていて、同世代の米露2大作曲家の意外な関連が興味津々です。 (Ki)
HMG-501835