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チャイコフスキー:交響曲第5番
エーリヒ・ラインスドルフ(指)ボストン交響楽団
第2楽章ホルン・ソロ: チャールズ・カヴァロフスキ(?)
Von-Z
S-2-268
(2CDR)
録音:1963年8月25日 ボストン・シンフォニー・ホール(ステレオ・ライヴ)
演奏時間: 第1楽章 14:08 / 第2楽章 13:08 / 第3楽章 5:45 / 第4楽章 10:47
カップリング/プロコフィエフ:交響曲第6番
“情緒を排し、愛も置き去りにしたラインスドルフ”
ワーグナーでもJ・シュトラウスでも、作品に込められた情緒的な面をさっぱり削ぎ落として、スコアを合理的に鳴らすことにこだわったラインスドルフにとって、チャイコフスキーは最も遠い存在で、まして「チャイ5」など眼中にないのではと思っていただけに、このドキュメントの出現は驚愕。その演奏はというと、これがほぼ予想通り、極めて冷酷な演奏。テンポの変動は最小限に抑えること自体はもちろん解釈として成立しますが、トスカニーニのような厳格さにも徹し切れず、そうかと思うと唐突に連綿と歌い上げて聴く者をハッとさせますが、それも必然性を感じさせないまま過ぎ去ってしまう…。オケの意欲も鼓舞し切れてもおらず、端的に言って愛を感じさせない演奏なのです。そんな中、ほとんど唯一、共感を心の底から滲ませているのが第2楽章、3:54からの副次旋律を弦が奏でるシーン。ここだけははなぜか、自らを作品に埋没させるように本物のリリシズムが通っており、深々とした静寂感を残しながら実に滑らかで美しいカンタービレを聴かせてくれるのです。それだけに、なぜ他の部分でもこのモードを徹底してくれなかったのか、それが悔しくてなりません。なお、この当時のアメリカでのライヴ録音の多くがそうであるように、この録音も残響が乏しいので、余計に潤いを求めたくなります。
※WORLD MUSIC EXPRESS(1CD-R)からも発売されていますが、モノラル録音。
第1楽章のツボ
ツボ1 冒頭のクラリネットは、表情に関する指示を与えた痕跡がまるで感じられない無機的な響き。但し、6小節目の付点2分音符から4分音符に掛けてクレッシェンドする。弦はそれよりも表情が感じられるが、クラリネットを掻き消してしまう箇所があり、バランスが良いとは言えない。
ツボ2 テンポは中庸。クラリネットとファゴットのバランスは良いが、ここでも表情は膨らまず、響きの乏しいい録音と相まってドライな印象がつきまとう。
ツボ3 杓子定規で、まるで音楽を感じていない!
ツボ4 スコアどおりに弾いているが、ニュアンスがない。
ツボ5 ラインスドルフなら、ここのアーティキュレーションを緻密に表出してもよさそうだが、普通に流れてしまう。意外なのは122小節から少しずつリタルダンドが掛かり憂いの表情を醸し出そうとしている点。
ツボ6 音量を抑制しながら、デリケートに抒情味をを醸し出そうとしているが、いまひとつ踏み込み切れていない。
ツボ7 特徴なし。
ツボ8 副次主題に差し掛かる前に大きくリタルダンドを施して約2倍のテンポまで減速。そこまでは珍しくないが、なんとそのテンポのまま副次主題を延々と弾き通しているのは驚き!ラインソドルフにしては最大限のカンタービレとも言えるが、逆に取って付けたような違和感が残る。
ツボ9 ここからテンポを速め、最後までインテンポのまま直進。
第2楽章のツボ
ツボ10 冒頭の弦は美しく溶け合い、意外なほど雰囲気がある。ホルンは技術的な傷こそないが、ホールに響き切らず、ニュアンスが伝わりにくい。
ツボ11 ここに差し掛かるまでの弦の副次旋律が感動的で、その脱力した憂いのニュアンスのままフォルティシシモを築く技が見事!56小雪の頭は、ミュンシュ時代によく耳にする突き刺すようなトランペットが突出。
ツボ12 テンポをを少し速めるのはよいが、クラリネットは無表情というよりも、完全に馬鹿にしたような野放図さ!9連音も怪しい。感性が病んでいるとしか思えない。
ツボ13 音量は抑え気味
ツボ14 なかなか堂に入ったアゴーギク。全体の響きはやや窮屈だが、フォルテ4つの直前での大きなリタルダンドも魂がこもっており、エネルギーが高潮しきった瞬間を見事に表出。
ツボ15 デリケートな弦が優しく歌い、決定的な欠点などないが、音楽が香ってこないのがもどかしい。
第3楽章のツボ
ツボ16 一旦テンポを確実に落とす。
ツボ17 アンサンブルは乱れることなく最後まで弾ききっているが、あまりにもニュアンスに乏しい。
ツボ18 緊張感が感じられず、軽く受け流す感じ。
第4楽章のツボ
ツボ19 テンポは中庸。弦はバランスよく響き、風格もあるが、音に意志の強さがあまり感じられない。
ツボ20 モントゥーは。ここでかなりホルンを突出させていたが、ここでもそれとそっくりのバランスで響いているのが印象的。但し、ラインスドルフ個人の明確なアプローチとしてではなく、どうしても、モントゥーの名残りとしか聞こえてしまうところが問題。
ツボ21 ティンパニはほぼスコアどおりだが、主部冒頭で一瞬戸惑ったような変な空白がある。テンポはごく標準的。これからいよいよ未来が開かれるといった希望も意欲も感じられない、漫然とした進行ぶり。
ツボ22 アクセントを生かしているようだが、不明瞭。
ツボ23 細かいパッセージも含めてきちんと弾き尽くしている。
ツボ24 インテンポ。
ツボ25 響きは鈍い。
ツボ26 インテンポ。
ツボ27 インテンポ。さすがに音楽は高揚し、緊張感も良く出ている。ティンパニも盛大に連打。
ツボ28 いかにもドライなラインスドルフらしく、完全にスコアどおり。8分音符の音価は正確にスコアどおり。しかも、全休止をほとんど無視して先へ進んでしまうが、ここでは大いに納得!
ツボ29 速めのテンポで完全にマーチ調。
ツボ30 これはユニーク!474小節では弦をレガート気味に弾かせ、直後の476小節では明確な意思を持ってバッサリ音を切り上げている。その後の繰り返しでも、この法則を遵守。この使い分けの意図は不明。トランペットは音をつなげている。
ツボ31 曖昧だが、改変しているようだ。
ツボ32 トランペットがキンキン鳴り渡るのに対して、ホルンはややくすんでいる。
ツボ33 プレスト以降はかなり速いテンポを採用し、最後まで一気呵成に進行するが、トランペットが目立ちすぎて豊かな風格を醸し出すことなく終わってしまう。最後の4つの音が微妙に前のめり気味になるのは、一瞬ストコフスキーを思い出させるが、もちろんそんな効果は狙っていないだろう。

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