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チャイコフスキー:交響曲第5番
ウォルフガング・サヴァリッシュ(指)アムステルダム・コンセルトヘボウO   
第2楽章ホルン・ソロ: /
TOWER
PROA-129
(6CD)
録音年:1962年アムステルダム 【ステレオ】
演奏時間: 第1楽章 13:24 / 第2楽章 11:57 / 第3楽章 5:18 / 第4楽章 11:47
チャイコフスキー:交響曲全集/ティルソン・トーマス、アバド、アツモン、ハイティンク、ドラティ、アーロノヴィチ
“名門オケの威光と過去の名匠の亡霊に少しひるんだ(?)サヴァリッシュ!”
メンゲルベルク、ケンペンと歴史的名演奏を遺した名門オケを起用し、俊英サヴァリッシュがこの作品に挑んだという点で初発売当時話題になった録音。サヴァリッシュのステレオ初期には、フィルハーモニアOとのウェーバーの序曲集をはじめ、当時のこの指揮者の才気と細部をきっちり処理しながら強固な構築を見せた名演が存在しますが、これらの条件を満たしたこの時期の録音にしてはやや期待はずれ。
まず、オケが指揮者の指示に完全には反応しきっていないか、サヴァリッシュ自身の作品への共感度にムラがあるかどちらかの原因で、ニュアンスの焦点が定まらない点が多いこと。特に第1楽章提示部まではその印象がつきまとい、個々の奏者(特にクラリネット)の音楽的表現皆無とさえ言える吹き方は、これを良しとするサヴァリッシュの意図が分かりません。しかし、展開部直前辺りから音楽がにわかに凝縮力を強め、このオケの魅力もサヴァリッシュの意思も明確に反映されるのがなんとも不思議。この第1楽章中盤以降の出来栄えは、全体を通じての最高の演奏といえるほど見事なものです。その後は、消化不良気味のニュアンスは少なくなりますが、今度はサヴァリッシュ自身がこの作品に対して今一歩踏み込みきれない壁のようなものが多々出現するのです。感情の高ぶりを持続させて遂には爆発させるシーンや、曲想そのものがセンチメンタルなフレーズなどでは、何かが心にブレーキをかけるのか、極めて淡白というか、スコアの指示だけを頼りにやり過ごしていることが多いのが気になります。
これが本当にあのコンセルトヘボウOだろうかと疑うほど、オケが雑然とした響きを出しているのも残念で、かろうじてトランペットの比類なき素晴しさ(当時のACOのトランペットの素晴しさについては他の「殿堂入り」アイテムでも触れることになると思います)に接してようやく安堵した次第。
またサヴァリッシュは一時代前のドイツの巨匠の伝統スタイルとは決別し、現代的なすっきりした音楽作りを実現したことで知られていますが、第1楽章の第1主題で聴き取れるように、メンゲルベルク流儀のルバートを中途半端な形で採用している点も、その真意が分かりません。
ただこの企画盤の常で、このディスクも周到な準備と必要な処理を施したうえでの復刻とは思えないので、オリジナル盤に込められた音楽的な情報量を最大限再現することに努めた復刻が今後実現したら、この演奏に対する印象も変わる可能性は大いにあります。
第1楽章のツボ
ツボ1 クラリネットは明瞭に聞こえてくるが、びっくりするほど陰影皆無の無頓着な響き。弦も雑然としている。
ツボ2 テンポは標準的。木管には共感がまるで感じられず、ただ譜面を追っているだけの感じ。
ツボ3 かすかにアクセントが付く。
ツボ4 テンポを落としてメンゲルベルクの流儀を踏襲しているのが興味深いが、その表情が際立たず消化不良気味。
ツボ5 オン・テンポ。強弱の振幅も弱く、くっりりとニュアンスが伝わってこない。アニマート以降の表情も特徴なし。
ツボ6 幾分テンポを落とし気味にするが、ここでも胸を焦がすようなグッと来る表情が感じられない。
ツボ7 ここも当時のACOとわ思えぬ美感を欠く響き。なんだか埃っぽい。
ツボ8 あり得ない!169〜170小節へ全く間と取らずに滑り込む。ニュアンスの異なる世界へ入ろうとするのに余韻も何も受け付けないこの進行は音楽的とは思えない。洗練されたセンスという形容はここでは当てはまらない。
ツボ9 16分音符は曖昧だが、響きが有機的で美しい。確固たる意思を持った緊張感の高い進行が素晴しく、楽章終盤に来てようやくACO本来の魅力とサヴァリッシュの意欲ががっちリ融合したようだ。
第2楽章のツボ
ツボ10 当時のACOの弦ならもっとコクのある響きも出せたと思うが、表情として訴えかけてくるものがある。ホルンは響きに深みはあるが表情に結びついていないのが残念。合の手のクラリネットはここでも野放図。せめて感じるそぶりだけでも見せて欲しかった。
ツボ11 サヴァリッシュらしい生真面目さが出た瞬間。フォルティシシモ直前で微妙に間をおいてから爆発。「ツボ8」とは逆で、ここではそれまでの感情の高ぶりが、このわずかな間によって寸断されてしまう感が拭えない。
ツボ12 クラリネットは、とっとと仕事を終えて家に帰りたいのだろうか?ファゴットは切ない風情がある。
ツボ13 特徴的な表情付けこそないが、ACOの弦の深みが良く出ている。
ツボ14 フレージングはなかなか熱いものがあるが、アゴーギクが固い。最強奏部への到達感は素晴しい。
ツボ15 情に溺れないまでも、もう少し繊細に余韻を漂わせて欲しいところ。このようなチャイコフスキーならではの繊細なメロディに対しは、サヴァリッシュの知性が自然と拒否反応を示してしまうのだろうか?
第3楽章のツボ
ツボ16 全くテンポを落とさない。
ツボ17 ACOの巧さ全開。軽妙なニュアンスも良く出ており、声部が絡み合う妙を堪能できる。
ツボ18 これも優秀。
第4楽章のツボ
ツボ19 襟を正して整然と進行。ニュアンスとしてしっかり確立している。トランペットが最高に巧い!
ツボ20 ホルンは裏方徹している。木管の醸し出す響きのニュアンスが素晴しい。
ツボ21 ティンパニは一定音量でトレモロのまま。テンポはカラヤンに近い標準的なもの。決して闘志を剥き出しにはせず、いわゆる中庸の表現に徹しているが、安定感があるので音楽の持ち味は伝わってくる。
ツボ22 アクセントは無視。
ツボ23 これは聴きもの!8分音符の下降音型が一糸乱れず切り込む様が捉えられている。良質な初期LPで聴けばその威力はより一層明確に伝わる戸思われる。
ツボ24 テンポ不変。
ツボ25 弱々しい。
ツボ26 テンポ不変。
ツボ27 ここでもトランペットの巧さに脱帽!このシーンの史上トップクラスの素晴しさ!438小節の冒頭をスタッカートにさせてリズムに腰を与えるのは、サヴァリッシュの指示というより、当時のACOのトランペット・チームのセンスに寄るところが大きいと思うが、縦の線の揃いかたといい響きの奥深さといい、これ以上のものはも想像できない。
ツボ28 楽譜の音価に忠実。
ツボ29 弦のテーマの張りのある進行と金管の輝かしさが完全に融合して見事な音像を確立。
ツボ30 弦も多ランペットも音をスタッカートで切る。
ツボ31 改変版。303小節で、トランペットのみがクレッシェンドするのがユニーク。
ツボ32 決して絶叫型ではないが、芯のある見事な鳴りっぷり!
ツボ33 546小節から一貫してインテンポ。そのまま見得を切ることもなく締めくくる。


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