声楽曲M〜モーツァルト

レーベルと品番、ジャケット写真は管理人が所有しているものに拠っていますので、現役盤と異なる場合があります。

モーツァルト/MOZART
エクスルターテ・ユビラーテ、ピアノ協奏曲第27番、ピアノノ四重奏曲ト短調
リヒテル(P)、アメリンク(S)、シリトー(Vn)、アーロノヴィツ(Va)、ヒース(Vc)、
ブリテン(指)ECO
1969年、1965年、1971年
ステレオ・ライヴ録音
BBC
BBCB8010
“ブリテンのモーツァルトへの愛をふんだんに盛り込んだ贅沢な一枚!”
「エクスルターテ〜」は、オケ序奏の愉悦感に満ちた表情から、こうあらねばというモーツァルトの音楽の息吹に溢れていて心を捉えますが、アメリンクが歌い始めると更にその魅力は倍増!声そのものが美しい上に、一音一音慈しむように端正なフォルムを守りながら、言葉の意味を余すところなく紡ぎだす様は、例えようもなく魅惑的です。2曲目後半(4:49〜)の真綿のような感触でゆったりと下行するフレーズなど、美しすぎて言葉が出ません。超高音を誇示するように声をはり上げることが多い“アレルヤ”の最後も、音の立ち上がりが柔らかく、自然に伸び、絶頂期の彼女の芸風を如実に伝えています。「オペラを歌わないのは歌手とは呼べない」と言う人もいますが、これほど歌の意味を感じさせる歌手が何人いるでしょうか?リヒテルの弾く協奏曲も極めつけ!ところが、曲が始まって早々、ちょっとしたハプニングが起きます。なんと、第1楽章でリヒテルが弾き始めてすぐに主題の中程のフレーズを弾き飛ばし、結尾の部分を弾いてしまうのです。結局ここを二度弾くことで帳尻を合わせる機転もさることながら、その不測の危機を見事に乗り切るブリテンの裁きも見事!演奏全体に流れる思慮深さ、瞑想性も何ものにも変えがたい魅力で、特に第2楽章の息の長さはシューナーベルの名盤と双璧の魅力を放っています。同シリーズの22番の協奏曲と共に忘れえぬ逸品です。

レクイエム、ヴェスペレ・ソレムネス ハ長調 K.339〜ラウダーテ・ドミヌム、
フリーメイソンのための葬送音楽、アヴェ・ヴェルム・コルプス、他
マンフレート・ホーネック(指)スウェーデンRSO、スウェーデン放送cho 2001年11月15日 デジタル録音
QUERSTAND
VKJK0615
“マーラーだけではなかった!ホーネックの感性と指揮能力の高さを実証!!”
¥1995
ウィーン・フィルのヴィオラ奏者を経て、指揮者に転向して成功を収め、2007年からはシュトゥットガルト歌劇場の音楽監督に就任予定のマンフレート・ホーネックは、来日時に聴かせてくれたマーラーの名演でも明らかなように、近年少なくなった骨太で濃厚なロマンをふんだんに湛えた表現力の持ち主。このモーツァルトも、学究臭さの入り込む隙のない、血のたぎりを感じさせる表現が衝撃的。モーツァルトが、自身の他の作品にも例を見ない生身の人間ドラマをホーネックが身を持って表出しきった素晴らしい演奏です。まず驚くのは、最初に静かに鳴らされる鐘の音。続いて、グレゴリア聖歌「永遠の安息を死者にお与え下さい」が歌われ、モーツァルトから父へ宛てた手紙の朗読、「ヴェスペレ・ソレムネス」を挟み込み、それからモーツァルトのレクイエムが演奏されます。第1曲の導入部、実に透明度の高いオケの響き(古楽奏法を取り入れているようですが、実に有機的な響き)に続いて、強弱の差を広くとった合唱の大きなフレージングが飛び込みますが、その表現意欲は最後まで一貫しています。「キリエ」も極めて求心力が高く、合唱の細かい走句での正確な音程等、技術的にも磐石。「怒りの日」はまさに火の玉!速いテンポで終始攻撃的にのしかかります。「ラッパの響き」は、トロンボーンとバスの絶妙な一体感が聴きもの。テノールも、ソプラノも強烈な個性を出さず、独唱者全員に共通する清楚な美声が豊かなハーモニーを築きます。「涙の日」は、単なる悲しみではなく、この世のあらゆる不条理を内包するような深さ!フレーズの振幅はここでも大きく、その嘘のない表現が心を打ちます。なおこの後、「サンクトゥス」以降の曲はカットされ、「涙の日」の未完成断片をそのまま演奏、続いて「アヴェ・ヴェルム・コルプスが演奏されます。この「アヴェ・ヴェルム・コルプス」がまた感動的!質の高い録音が豊かなホールトンと一体となった響きを見事に捉え、そのうえ合唱の最弱音の質感が極上!ホーネックの指揮もその浄化しきった空間を十分に感じ取りながら、敬虔な音像を育んでいます。最後は、最初と同じ鐘の音で締めくくられます。レクイエムは終始まろやかに優しく語り続けて欲しい、という方も多い思いますが、この作品はそんな一面的な表現で支えきれるものではないということをはきりと実証しています。CD全体の構成の魅力と、ホーネックの音楽性を知る上でも欠かせない一枚です。

ミサ曲 ハ長調Anh.C1.20(疑作)、エクスルターテ・ユビラーテ、レチタティーヴォとアリア「故に問題は、天上を求めて」K.143 (73a)
I. ガランテ (S)、S.アスムッセン(Ms)、P. ブルスリク(T)、M. ティーマン(Bs)、
ダグラス・ボストック(指)チェコ室内O
2001年 デジタル録音
CLASSICO
396
“世界初録音の「ハ長調ミサ曲」に溢れるこの情緒!”
ジョン・アーヴィングらの校訂によるハ長調ミサの世界初録音がまず素晴らしい!演奏に50分以上を要し、独唱も4声の独唱、オルガン、オーケストラという大掛かりな編成ですが、魂のこもった演奏によって全く冗長さを感じさせません。第1曲目の“キリエ”で最初に合唱が入るところから、合唱の人数を抑えた透明で均質なテクスチュアが耳を捉え、オケとの溶けあいが絶妙!このバランスが終曲まで保たれ、人間的な表情となって訴え掛けるのです。その直後にソプラノとメゾ・ソプラノとのデュエットが、ヴィヴラートをしっかり使いながら表情過多にならずに豊かなハーモニーを聴かせますが、特にイネッサ・ガランテの格調の高い美声は、例えようもありません。第5曲の全声域に渡る輝かしいさとリズムの感じ方など絶品で、曲の素晴らしさ、オルガンのチャーミングなニュアンスと共に繰り返し聴きたくなります。12曲“ベネディクットゥス”の全独唱陣参加による豊穣なニュアンスも鮮烈。この曲は、是非とも通常の演奏会のレパートリーとしても定着してほしいものです。「エクスルターテ・ユビラーテ」は、ガランテの魅力が全開。周りを包み込むボストックの、堅実でありながらモーツァルトらしい愉悦のニュアンスを香らせる手腕も見事。レチタティーヴォとアリアは、15才と16才の二人のカストラートのために書かれた10分に満たない曲。アリアの冒頭は「フィガロの結婚」の伯爵夫人のアリア「愛の神よ、御覧ください」と似ている指摘されることもあります。ここでもボストックの実に音楽的な語り口が絶妙な上に、ガランテが一点の曇りもない美声で丹念に歌い上げています。残響の取り入れ方が自然な録音も特筆ものです!

ミサ曲 ハ短調 K.427
イレアナ・コトルバス、キリ・テ・カナワ(S)、ウェルナー・クレン(T)、ハンス・ソーティン(Bs)
レイモンド・レッパード(指)ニュー・フィルハーモニアO、ジョン・オールティーズcho
1974年 ステレオ録音
EMI
5737512
“ドイツ的な重厚さと、イギリス的なしなやかさが完全調和!”
\945 最初のオケの導入からして尋常ならざるニュアンス!従来の大編成による奥行きを感じさせる音像が着実に迫り、ホルンが更に素晴らしい幻影を映し出すと、ただ一点を見据えたような緊張に満ち女声合唱が開始。ここへ強靭な男声合唱が加わり、ティンパニの深みのある一打に至るまでの異様な説得力は例えようもなく、カール・リヒターのバッハで感じたあの感動を思い起こすほどです。その緊張を和らげるように現われるのが、コトルバスの気品溢れる美声!この厳粛な雰囲気の中で、オペラチックな歌い込みを排してひたむきに祈る姿が目に浮かびます。このコトルバスとは全く声質が異なるキリ・テ・カナワと絡んだ時のニュアンスも魅力。幅広いレパートリーを誇るジョン・オールティーズ合唱団の敬虔な雰囲気を湛えながらの強固なハーモニーもあまりにも素晴らしく、レッパードの神経の行き届いた構築と一体となって、一点の隙もないアンサンブルを聴かせる「グローリア」の終盤は、特に聴きもの。たっぷり1時間、深い音楽に打たれたい方、必聴です!artリマスタリング仕様。