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チャイコフスキー:交響曲第5番
カール・ベーム(指)ロンドン交響楽団
第2楽章ホルン・ソロ: デイヴィッド・クリップス(?)
ユニバーサル
UCCG-4161(2CD)
録音年:1980年5月 ロンドン・聖ヨハネ教会  【デジタル録音】
演奏時間 第1楽章 15:16 / 第2楽章 15:16 / 第3楽章 6:16 / 第4楽章 13:56
カップリング/交響曲第4番、第6番「悲愴」
“ロンドン響がベームへの尊敬の念を演奏態度で表明”
ベームがチャイコフスキーの4番を録音したというニュースが飛び込んできた時は、そのあまりにも意外な選曲に誰しも驚いたものですが、それが3大交響曲の録音にまで繋がるとは、まさにベーム最後のサプライズでした。この時期に至るまで大切に温めていた作品ではないはずですから、「ドイツものしか振れない指揮者」というイメージを少しでも払拭したいという気持ちが少なからず働いたものと想像されますが、最初の4番から最後の5番の録音までは約3年の隔たりがあるので、気力の面で多少の差がありますが、人生の終焉を目前にしてここまで挑戦意欲を持続させた事に対しては、全く頭が下がります。この第5番は、3曲の中でも一番最後に録音されたもので、演奏も最晩年のベームの芸風を最も反映しているものになっています。色彩やリズムの切れ味といった感覚とは無縁で、頑固なまでに禁欲的な武士道に徹したような演奏で、聴き手を心地よい世界に誘うような瞬間はほとんどありません。第1楽章は歌うべきところはしっかり歌い込んでいるものの、シューベルトを聴いているような錯覚に陥るほど、色香や甘味をサッパリ洗い流してしまった音の流れには、はっきりと好き嫌いが分かれるところでしょう。第2楽章で頻出するカンタービレでは、ベームがここまで!というハッとする共感に満ちた歌い回しをするところもありますが、基本的にLSOの自発的なセンスに委ねているという面が否めません。第3楽章は、ワルツというよりメヌエット的。丁寧なフレージングを心がけていますが、「夢」がありません。終楽章は老人的なリズムの弛緩があると思いきや、意外とリズムがキリッと立ち上がっていて立派ですが、ベーム自身が統制した結果というよりも、これもLSOに備わっている機能性がものを言った結果に聞こえます。したがって、作品への共感の乏しさゆえ、踏み込んだ解釈にまで繋がらなかったことを露呈し、オケの側が自発的に、LSOの会長を務めるベームに対する尊敬の念を一途に燃やして誠心誠意演奏した、という印象が最後まで拭えません。このことは実に感動的な4番の演奏と比べるとより明白となります。第1楽章のコーダのテンポの畳み掛けは、全盛期のベームが蘇ったような緊迫感を持って迫りますし、2楽章のフレージングも心の底から哀愁を滲ませ、終楽章の求心力の高さも、なぜ今まで頻繁に取り上げなかったのか不思議なほど説得力に満ち溢れています。それだけに、この5番の出来ばえが残念でなりません。
第1楽章のツボ
ツボ1 テンポはやや遅め。いかにも晩年のベームらしい朴訥さ一辺倒のフレージング。木管と弦楽は常に同等のバランスを維持。色彩感も表情も抑制されている。
ツボ2 文字通りのアンダンテでリズムを刻む。16分音符と8分音符の感覚は短く、ベームの本来志向するリズム感覚とは異なるはずで、オケの裁量に委ねている節がある。結果的に鈍重な進行に陥らず、フレージングも引き締まっている。
ツボ3 媚びる要素は一切なし。
ツボ4 感傷は入り込ませず、スコアどおり。クレッシェンドの振幅もそれほど大きくない。
ツボ5 スフォルツァンドは避けて弱音からクレッシェンドのみでフレーズを膨らませている。ここぞとばかりに泣きを見せることはもちろんないが、いくぶんテンポを落として、ここへ来て初めて表情に意思を滲ませている。
ツボ6 ここもスフォルツァンドは回避。強弱の幅も抑え目。水平にフレーズが流れることのみに集中している。ベームが作曲家の心情に直接触れることを本能的に避けていることを窺わせる典型的なシーン。表面的には高潔とも言えるが、感興には欠ける。
ツボ7 実直な進行。
ツボ8 ほとんどリタルダンドせず、そのまま突入してしまうのがベームらしい。最少のアゴーギクでクールに進行。
ツボ9 全くのインテンポ。録音が良いので16分音符は聞き取れる。
第2楽章のツボ
ツボ10 弦の導入は無骨でブラームス的。ホルンの響きは美しいが、音を踏み外さないように慎重に徹した感が強い。クラリネットは分を弁えて柔らかく絡む。
ツボ11 誠実によく歌い上げて入るが、思い切り息を吸い込んで芯から歌い抜くまでには至っていてないので、音楽全体がぶら下がり気味。体力の減退を痛感させる。
ツボ12 極めて低速。このテンポに見事に乗せてクラリネットもファゴットも実に音楽的なニュアンスを聴かせる。ここから108小節までの数分間は、聴き応え満点!
ツボ13 ほとんど表情がない。
ツボ14 団員が一丸となって歌い上げているが、ここでも音が立ち上がりきれず、最高潮点でも足場に緩みを感じる。
ツボ15 優しい風情だが、ひたひたと迫り来るものがない。
第3楽章のツボ
ツボ16 全くインテンポ。場面展開における統制も取れておらず、ファゴットの冒頭は完全に埋没。「ツボ18」同様、次の違う楽想に備えて表情を準備することが一切ないところに、この作品へ踏み込みきれていないことが露呈しているようだ。
ツボ17 もちろん音のパノラマといった雰囲気はないが、各声部を絡みもどこか散漫。
ツボ18 お見事!一人の奏者が吹いているかのよう。
第4楽章のツボ
ツボ19 やや遅めでのテンポ。キリッとしたところはないが、晩年のベームの威厳そのものを反映したような表情が、曲想にマッチ。
ツボ20 ホルンはほとんど裏方。
ツボ21 ティンパニはスコアどおり。微弱なクレッシェンドに徹している。弦の刻みは決然とした意思に溢れ、アンナンブルにも弛緩無し!テンポは中庸。
ツボ22 ほとんど無視。
ツボ23 パンチに欠けるが、明快な録音効果も手伝い、厳格に弾き込んでいるのがわかる。
ツボ24 主部冒頭のテンポと同じ。
ツボ25 強打ではないが、硬質な音で明確に捉えられている。
ツボ26 そのままインテンポ。
ツボ27 若干テンポを上げる程度。トランペットの3連音は曖昧なところもある。ワーグナー的な風格を感じさせる。
ツボ28 8分音符の音価は長め。ティンパニの最後の8分音符は不明瞭。
ツボ29 勇壮な足取り。華やいだ雰囲気や開放感はなく、一切の煩悩を捨て去った純朴な響きに打たれる。ベームの人生の年輪の重みを感じさせる瞬間。
ツボ30 弦もトランペットも、テヌート気味ながら音は切ってる。このトランペット登場以降の音楽の厚みが見事
ツボ31 改変型。しかもかなりトランペットの旋律線を強調
ツボ32 明快に鳴っているが、明るい開放ではなく、無骨そのもの。
ツボ33 最後の4小節で少しテンポを落とす。


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