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チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調 Op.64
ダニエル・ラザレフ(指)読売日本交響楽団 
第2楽章ホルン・ソロ: 山岸博
オクタヴィア
OVCL-00215
(1SACD)

録音年:2005年2月9日 サントリー・ホール
演奏時間: 第1楽章 16:39 / 第2楽章 13:18 / 第3楽章 5:22 / 第4楽章 11:49
“西欧的な洗練とロシアン・ダイナミズムを完全融合させた画期的チャイ5!”
ラザレフのオケのドライブ能力の高さを改めて痛感することしきり!決して過度な要求はしていませんが、独自の音色感、音の厚み、ダイナミズムが隅々にまで浸透し、ライヴの雰囲気とも相俟って10年来の主兵のオケのような一体感を見せているのがまず印象的。しかもそのアプローチは終止確信に溢れ、演奏されつくされたこの曲に一切マンネリなど感じさせる暇を与えず、オケも聴き手もグイグイ牽引する力に圧倒されます。第1楽章は冒頭からロシア的憂いそのものの暗さが耽溺に終わらず、芸術的格調まで高めているのに身が引き締まり、提示部のインテンポに込められた万感の思いも痛いほど伝わります。衝撃的なのは、副次主題のテンポの落とし方!いきなり100年前にタイムスリップしたような超低速による泣きの連続で、特に弦楽器はこの意味を体で感じ取って淀みなく歌いぬくのは相当苦労があったと思いますが、こんな極端な表現も借り物のような鳴り方ではなく、共感が滲んでいるだけに感動もひとしお。しかしあくまでも全体像は逞しい精神を絶やさず、決して悲観を肯定せずに希望を信じてて突き進む姿勢が最後まで一貫しているのがまた見事です。第2楽章でも表現が後ろ向きにならず、常に推進力を絶やさないフレージングの強固さが素晴らしく、それこそよく言われるC・クライバーとの類似を感じさせる構成の凝縮力の強さ!第3楽章はサロン的なワルツとして演奏されること多いですが、速めのテンポの上に響きが骨太。ラザレフがイメージした音色が完全にオケに浸透していることを実感できます。コーダまさに勇壮さの極み。終楽章も非の打ち所のない素晴らしさ!特に提示部冒頭から「運命動機」斉奏までの各声部の緊密な連動ぶりと響きの充実は、ロシアのオケかと思うほどの安定しきった鳴りっぷりで、低弦の動きが独自の推進力に拍車をかけているのも特徴的。金管の運命動機斉奏部で2度目に音量をアップさせるのはテミルカーノフなどの例もありますが、その効果がこれ程激烈な演奏はかつてありませんでした。そういったロシア的な力感を象徴する場面も随所に盛り込みながら、スコアにあるテンポ指示よりもストレートな推進性を優先し、全体のフォルムの美しさも保持している点も見逃せません。キタエンコの演奏などは、ロシアと西洋の狭間で悩みながら終わってしまった感が否めなかったのに対し、ここではその両面を見事に融合させ、しかも普遍的とも言える存在感を示した点で、画期的と言ってももよいのではないでしょうか。
第1楽章のツボ
ツボ1 温かくも孤独な響きが印象的。低弦も憂いを湛えて雰囲気満点。かなり濃厚に強弱を施して濃厚に歌わせている。
ツボ2 その雰囲気を引きずりながら優しく開始。テンポは標準的なアンダンテ。クラリネットとファゴットのバランスも理想的。
ツボ3 楽譜どおりだが、多少アクセントが掛かる。
ツボ4 楽譜に忠実。呼吸が減衰する中でも逞しさは保持。参照楽譜冒頭(68小節)の符点リズムが厳格なまでに正確
ツボ5 冒頭で弱音部分を長く引き伸ばすのが特徴的で、120小節から繰り返す時には強弱の振幅を更に大きくして情感を煽る。
ツボ6 タイでつながった音符と次の音符を少し切り離し、後ろ髪引かれるニュアンスを表出。
ツボ7 低弦を良く効かせた骨太な音色。
ツボ8 ここまで一貫してインテンポを通してきたが、ここから突如、テンポを約倍にまで落とす!ここまで低速で、ヴィヴラートもたっぷりと楽譜の指示通り連綿と歌いぬいた演奏は例がない!これが、194小節のTempTの指示まで続く。展開部からは、また提示部冒頭のテンポ。
ツボ9 インテンポ。なんと16分音符が聞き取れる!まさにロシア的な重心の低いリズム感と厚味たっぷりの音像が見事!
第2楽章のツボ
ツボ10 低弦の導入の表情が実に入念!ホルンが入る直前の弱音の意味深さと響きのクオリティの高さが絶品!山岸のホルンは、その雰囲気とはやや異質でゴツゴツとしたドイツ風の歌いまわしと音色だが、日本の誇りであるこの技量はかけがえのないもの。
ツボ11 テンポを溜め込まず、直前の2連音の流れのままフォルティティに達する。
ツボ12 ここでのクラリネットはあっけらかんとしているが、続くファゴットが素晴らしい。ヴィヴラートがまさに心の震え!
ツボ13 堂々とフォルテで鳴らしきっている。直前の大高揚を受けるには、これが自然に思えてくる。
ツボ14 ここからややテンポを速めて一気に駆け上がり、迫力満点で、フォルテ4つに達しても腰砕けにならない。
ツボ15 繊細ながら男性的な強さも感じさせるフレージング。直前の11:20で携帯電話のような音が聞こえる。このような不心得者は、罰金を徴収した上で向こう5年間演奏会には出入り禁止にすべきだ!
第3楽章のツボ
ツボ16 強固な意志が漲るインテンポ。
ツボ17 クラリネットが音を外し気味。急速なテンポだと軽いテクスチュアになりがちだが、骨太さを保っているのが流石。
ツボ18 見事な連鎖。
第4楽章のツボ
ツボ19 テンポは標準的。繊細さと逞しさの入り混じったニュアンスを見事に表出。
ツボ20 ホルンと木管はほぼ同等バランス。
ツボ21 最初にクレッシェンド。62小節でクレッシェンドして66小節で一撃アクセントを置くスコア指示通り。テンポは、文字通りのアレグロ・ヴィヴァーチェ。ここから運命動機斉奏部までの響きの立派さは近年稀な見事さ!
ツボ22 忠実にアクセントを生かしている。
ツボ23 バランス的にはヴァイオリンのほうが強いが、コントラバスの力感に不足はなく、ブレンド感も良好。
ツボ24 テンポを変えない。
ツボ25 意図的には強調はしないないようだが、明快に響かせている。
ツボ26 ここの同じテンポ。
ツボ27 テンポアップ。緊迫の度を高めながら、トランペットも破綻せず見事に高揚。
ツボ28 音価を思い切り伸ばす。ティンパニは最後に一撃を置いている。
ツボ29 直前の全休止は、やや長すぎる感じ(編集の跡は感じられない)。テンポは標準的だが、響きの制御が行き届き、輝かしい進行。特に弦が熱い!
ツボ30 弦も金管もレガートで「統一。
ツボ31 改変型。しかもかなりトランペットを強調。
ツボ32 強奏ではないが、明瞭に鳴っている。
ツボ33 請ったテンポ操作こそないが、堂々と確信に満ちた進行が素晴らしく、インテンポのままの終結にも納得させられる。


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