湧々堂HOME 新譜速報: 交響曲 管弦楽曲 協奏曲 器楽曲 室内楽 声楽曲 オペラ バロック 廉価盤 シリーズもの マニア向け  
殿堂入り:交響曲 管弦楽 協奏曲 器楽曲 室内楽 声楽曲 オペラ バロック SALE!! レーベル・カタログ チャイ5


Serenade
CD-R盤です)



GRANDSLAMでもお馴染みの音楽評論家、平林直哉氏の自主制作CD-R。マニアックで大量に売れることが見込めない内容ながら、見過ごすにはあまりにも惜しい、価値ある録音を厳選してリリースし続けています。
「廃盤」も少なくないですが、契約の関係でやむをえない処置とのこと。あらかじめご了承くださいませ。


現在、全て製造中止です。ご注文いただけませんのでご了承ください。



※品番結尾に特に表記のないものは、全て1CD-Rです。
品番 内容 演奏者
SEDR-0001
「世界初録音集」(ハイライト)
(1)ガーシュウィン:ラプソディー・イン・ブルー〜冒頭
(2)グリーグ:ピアノ協奏曲〜第1楽章
(3)サン=サーンス:交響曲第3番「オルガン付き」〜第2部
(4)R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」〜冒頭
(5)シューベルト:交響曲第7番「未完成」〜第1楽章
(6)シューマン:チェロ協奏曲〜第3楽/
(7)チャイコフスキー:交響曲第5番〜第2楽章
(8)ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」〜第4楽章
(9)ドビュッシー:弦楽四重奏曲〜第2楽章
(10)バルトーク:弦楽四重奏曲第4番〜第4楽章
(11)フォーレ:レクイエム〜ああイエズスよ
(12)プロコフィエフ:「アレクサンドル・ネフスキー」〜第7楽章
(13)ベートーヴェン:交響曲第7番〜第4楽章
(14)ベルリオーズ:幻想交響曲〜第4楽章
(15)モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番〜第1楽章
(16)ラヴェル:左手のための協奏曲〜第3楽章
(1)ヘスス・マリア・サンローマ(P)、アーサー・フィードラー(指)ボストン・プロムナードO[SP=[輸]ビクターM358(1935年録音/41ページ)]
(2)ヴィルヘルム・バックハウス(P)、ランドン・ロナルド(指)新SO[SP=[輸]グラモフォン05523(1909年録音/44ページ)]
(3)ピエロ・コッポラ(指)グラモフォンSO/アレクサンダー・セリエル(Org)、[SP=[輸]ビクターM100(1930年録音/52ページ)]
(4)エドゥアルト・メーリケ指揮、ベルリン国立歌劇場O[SP=[輸]パーロフォンE10306〜10(1924年録音/71ページ)]
(5)エドゥアルト・メーリケ(指)大SO[SP=[輸]オデオン5008〜10(1921年録音/85ページ)]
(6)グレゴル・ピアティゴルスキー(Vc)、ジョン・バルビローリシLPO[SP=ビクターJD353〜5(1934年録音/94ページ)]
(7)ロマノ・ロマーニ(指)ミラノSO[SP=[輸]コロンビア487〜8(1914年ごろ録音/120ページ)]
(8)ランドン・ロナルド(指)ロイヤル・アルバート・ホールO[SP=[輸]HMV D613(1920年ごろ録音/131ページ)]
(9)スペンサー・ダイクSQ[SP=[輸]ナショナル・グラモフォニック・ソサエティD〜F(1924年録音/138ページ)]
(10)ギレーSQ[SP=[輸]コンサート・ホール・ソサエティA3(1946年録音/163ページ)]
(11)ギュスターヴ・ブレー(指)バッハ協会O、マルノリー=マルセイラ(S)[SP=[輸]グラモフォンW1154〜8(1930年録音/172ページ)]
(12)ユージン・オーマンディ(指)フィラデルフィアO、ウエストミンスターcho[SP=[輸]コロンビアLX8547〜51(1945年録音/218ページ)]
(13)アルバート・コーツ(指)交響楽団[SP=[輸]ビクター55174(1921年録音/225ページ)]
(14)ルネ=バトン(指)パドゥルーO[SP=[輸]グラモフォンW608〜13(1924年録音/241ページ)]
(15)イエーリ・ダラニ(Vn)、スタンリー・チャップル(指)エオリアンO[SP=[輸]ヴォカリオンA0204〜4(1925年ごろ録音/281ページ)]
(16)ジャクリーヌ・ブランカール(P)、シャルル・ミュンシュ(指)パリPO[SP=ポリドールE167〜8(1938年録音/297ページ)]
本CDRは『クラシック名曲初演&初録音事典』で取り上げられている世界初録音のオムニバス盤です。これは丸善丸の内本店のイベント用として特別に制作し、そのイベントの来場者のみに配布されました。しかし、イベント終了後、「販売して欲しい」という希望が多数寄せられましたので、今回は本の宣伝ということで、利益を無視して限定で販売することを決定しました。このCDRを併せて聴くことによって、『クラシック名曲初演&初録音事典』の面白さが倍増します!!!(平林 直哉)
 
SEDR-0002
世界初録音集U(ハイライト)
(1)バルトーク:弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽〜第2楽章
(2)ブルックナー:交響曲第6番〜第3楽章
(3)ベルク:ヴァイオリン協奏曲〜冒頭
(4)ベートーヴェン:歌劇「フィデリオ」序曲
(5)ブラームス:交響曲第1番〜第2楽章
(6)ラヴェル:歌劇「子供と魔法」〜冒頭
(7)チャイコフスキー:交響曲第4番〜第4楽章
(8)ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番〜第3楽章
(9)モーツァルト:交響曲第41番「ジュピター」〜第4楽章
(10)ブルックナー:交響曲第8番〜第4楽章
(11)ベートーヴェン:交響曲第5番〜第2楽章
(12)シェーンベルク:浄夜より
(1)ハロルド・バーンズ(指)ロスアンジェルス室内PO/LP=〔輸〕キャピトルL8048(1949年録音/154ページ)
(2)ヘンリー・スウォボダ(指)ウィーンSO/LP=〔輸〕ウェストミンスターWL5055〜6(1950年録音/204ページ)
(3)ルイス・クラスナー(Vn)、アルトゥール・ロジンスキー(指)クリーヴランドPO/SP=〔輸〕コロンビアM465(1940年録音/238ページ)
(4)ゲルハルト・プフリューガー(指)ライプツィヒ放送PO/LP=〔輸〕オーシャニックOCLP301(1950年録音/236ページ)
(5)オスカー・フリート(指)ベルリン国立歌劇場PO/LP=〔輸〕パースト・マスターズPM(1924年頃録音/178ページ)
(6)ヴィクトル・デ・サーバタ(指)ほか/SP=〔輸〕コロンビアLFX784〜9(1948年録音/300ページ)
(7)ランドン・ロナルド(指)ロイヤル・アルバート・ホールPO/SP=〔輸〕HMV DB1037〜41(1925年録音/119ページ)
(8)ヨーク・ボーウェン(P)、スタンリー・チャップル(指)エオリアンPO/SP=〔輸〕ヴォカリオンA0237〜40(1925年頃録音/230ページ)
(9)ビクター・コンサート・オーケストラ/SP=〔輸〕ビクター17707(1914年頃録音/276ページ)

(10)オイゲン・ヨッフム(指)ハンブルク国立PO/SP=〔輸〕ドイツ・グラモフォンLV68338〜48(1949年録音/207ページ)
(11)大オデオン弦楽合奏団/SP=〔輸〕オデオンXX76153(1910年録音/223ページ))
(12)ユージン・オーマンディ(指)ミネアポリスSO/SP=〔輸〕ビクターM207(1934年録音/58ページ)
拙著『クラシック名曲初演&初録音事典』(大和書房)に掲載されている初録音集のハイライト盤(SEDR-0001)を制作したが、これが思いのほか大好評で、ここに第2弾を制作した次第である。以下、第1弾と同様に詳細なデータは本書を参照していただくとして、以下はその補足である。
 (1)は本書にも記した通り、指揮者もオーケストラも一般的にはほとんど知られていないので、録音史からは全く忘れられた演奏である。モノーラルではあるが当時としては音質も優秀であるし、演奏自体も決して悪くないので、遠からず全曲の復刻が望まれよう。要望があればSEDRシリーズで全曲復刻しても良いと考えている。
 (2)は本書の原稿を入れた時点で1枚に詰め込んだ再発売のLPしか手に入らず、やむなくそのジャケットを使用した。しかし、その後最初に発売された2枚組をやっと入手した。この初出2枚組は当時としては破格の豪華ジャケットに入ったLPで、第4面にはブルックナーの詩篇第115番、第120番が収録されている。入手したLPはやや状態が悪いが、希少盤ゆえにご容赦願いたい。
 (3)は初演者クラスナーの演奏である。ダンテのCDが現在廃盤なので、目下のところ全曲を聴く手だてとしてはそのCDか、もしくはLP、SPを手に入れるしかない。
 (4)のプフリューガーはかつてブルックナーの交響曲第5番などのCDも発売されていた。強烈な個性はないものの、手堅くまとめる手腕はなかなかのもである。この序曲も生き生きとした演奏である。
 (5)の演奏のオリジナルのSPはいまだかつて現物はおろか、リスト上でも過去に一度も見たことはない。以前、全曲を復刻したいと考え、このパースト・マスターズの原盤制作者に連絡を取ろうとしたが、すでに故人のようであり、調べはつかなかった。このLPのマスター・テープ、あるいは復刻に使用したSP盤はどこに保管されているのだろうか?
 (6)はSPで聴くと独特の雰囲気があって良い。ただし、本書ではイギリス盤の番号を掲載しながらも、写真はこの復刻に使用したフランス・コロンビア盤のレーベルを使用するという間違いを犯してしまった。
 (7)のロナルドは最初期に積極的に録音を行った指揮者のひとりである。しかし、伴奏指揮者以上の知名度がないために、この演奏の全曲復刻はかなり難しいかもしれない。この最終面ではいきなり弦楽器のポルタメントが現れるが、この当時はこうした部分でさえも使用していたのでだる。他にもロナルドが録音したブラームスの交響曲第2番(179ページ)もあるが、いまだに入手出来ない。
 (8)は本書にもあるように、ここではボーウェン自作のカデンツァが使用されている。なお、全曲は最近発売された「ヨーク・ボーウェン全SP録音集」(APR 6007/2枚組)に収録されている。
 (9)の全曲は随所にわたってカットを施しているが、この第4楽章も例外ではない。最初に録音されたという意外にこれといって特色はないが、こういった機会でなければなかなか聴けないのも事実である。 
 (10)の全曲はCDもあるが、このSP盤の音を聴く機会はあまりないので加えてみた。このLV番号のSP盤は電気再生用のもので、蓄音機では使用出来ない。
 (11)は全曲の中の第2楽章だけを入手したので加えてみた。本書にも記した通り、これはフリードリヒ・カークなる指揮者の演奏のとのこと。ポルタメント奏法が目立つ。全曲は(ウィング・ディスク WCD62)で聴くことが出来る。
 (12)だが、このCDRを制作する際、所持していたSPをかけようとしたら1枚目のふちが欠けていて再生できない状態になっていた。従って、ここでは曲の途中を収録した。当時のミネアポリス響はヨーロッパから移住してきた団員がほとんどのようで、柔らかい音色が特色である。(平林 直哉)
 
SEDR-0001
「世界初録音集」(ハイライト)
(1)ガーシュウィン:ラプソディー・イン・ブルー〜冒頭
(2)グリーグ:ピアノ協奏曲〜第1楽章
(3)サン=サーンス:交響曲第3番「オルガン付き」〜第2部
(4)R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」〜冒頭
(5)シューベルト:交響曲第7番「未完成」〜第1楽章
(6)シューマン:チェロ協奏曲〜第3楽/
(7)チャイコフスキー:交響曲第5番〜第2楽章
(8)ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」〜第4楽章
(9)ドビュッシー:弦楽四重奏曲〜第2楽章
(10)バルトーク:弦楽四重奏曲第4番〜第4楽章
(11)フォーレ:レクイエム〜ああイエズスよ
(12)プロコフィエフ:「アレクサンドル・ネフスキー」〜第7楽章
(13)ベートーヴェン:交響曲第7番〜第4楽章
(14)ベルリオーズ:幻想交響曲〜第4楽章
(15)モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番〜第1楽章
(16)ラヴェル:左手のための協奏曲〜第3楽章
(1)ヘスス・マリア・サンローマ(P)、アーサー・フィードラー(指)ボストン・プロムナードO[SP=[輸]ビクターM358(1935年録音/41ページ)]
(2)ヴィルヘルム・バックハウス(P)、ランドン・ロナルド(指)新SO[SP=[輸]グラモフォン05523(1909年録音/44ページ)]
(3)ピエロ・コッポラ(指)グラモフォンSO/アレクサンダー・セリエル(Org)、[SP=[輸]ビクターM100(1930年録音/52ページ)]
(4)エドゥアルト・メーリケ(指)ベルリン国立歌劇場O[SP=[輸]パーロフォンE10306〜10(1924年録音/71ページ)]
(5)エドゥアルト・メーリケ(指)大SO[SP=[輸]オデオン5008〜10(1921年録音/85ページ)]
(6)グレゴル・ピアティゴルスキー(Vc)、ジョン・バルビローリシLPO[SP=ビクターJD353〜5(1934年録音/94ページ)]
(7)ロマノ・ロマーニ(指)ミラノSO[SP=[輸]コロンビア487〜8(1914年ごろ録音/120ページ)]
(8)ランドン・ロナルド(指)ロイヤル・アルバート・ホールO[SP=[輸]HMV D613(1920年ごろ録音/131ページ)]
(9)スペンサー・ダイクSQ[SP=[輸]ナショナル・グラモフォニック・ソサエティD〜F(1924年録音/138ページ)]
(10)ギレーSQ[SP=[輸]コンサート・ホール・ソサエティA3(1946年録音/163ページ)]
(11)ギュスターヴ・ブレー(指)バッハ協会O、マルノリー=マルセイラ(S)[SP=[輸]グラモフォンW1154〜8(1930年録音/172ページ)]
(12)ユージン・オーマンディ(指)フィラデルフィアO、ウエストミンスターcho[SP=[輸]コロンビアLX8547〜51(1945年録音/218ページ)]
(13)アルバート・コーツ(指)交響楽団[SP=[輸]ビクター55174(1921年録音/225ページ)]
(14)ルネ=バトン(指)パドゥルーO[SP=[輸]グラモフォンW608〜13(1924年録音/241ページ)]
(15)イエーリ・ダラニ(Vn)、スタンリー・チャップル(指)エオリアンO[SP=[輸]ヴォカリオンA0204〜4(1925年ごろ録音/281ページ)]
(16)ジャクリーヌ・ブランカール(P)、シャルル・ミュンシュ(指)パリPO[SP=ポリドールE167〜8(1938年録音/297ページ)]
本CDRは『クラシック名曲初演&初録音事典』で取り上げられている世界初録音のオムニバス盤です。これは丸善丸の内本店のイベント用として特別に制作し、そのイベントの来場者のみに配布されました。しかし、イベント終了後、「販売して欲しい」という希望が多数寄せられましたので、今回は本の宣伝ということで、利益を無視して限定で販売することを決定しました。このCDRを併せて聴くことによって、『クラシック名曲初演&初録音事典』の面白さが倍増します!!!(平林 直哉)
 
SEDR-0002
世界初録音集U(ハイライト)
(1)バルトーク:弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽〜第2楽章
(2)ブルックナー:交響曲第6番〜第3楽章
(3)ベルク:ヴァイオリン協奏曲〜冒頭
(4)ベートーヴェン:歌劇「フィデリオ」序曲
(5)ブラームス:交響曲第1番〜第2楽章
(6)ラヴェル:歌劇「子供と魔法」〜冒頭
(7)チャイコフスキー:交響曲第4番〜第4楽章
(8)ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番〜第3楽章
(9)モーツァルト:交響曲第41番「ジュピター」〜第4楽章
(10)ブルックナー:交響曲第8番〜第4楽章
(11)ベートーヴェン:交響曲第5番〜第2楽章
(12)シェーンベルク:浄夜より
(1)ハロルド・バーンズ(指)ロスアンジェルス室内PO/LP=〔輸〕キャピトルL8048(1949年録音/154ページ)
(2)ヘンリー・スウォボダ(指)ウィーンSO/LP=〔輸〕ウェストミンスターWL5055〜6(1950年録音/204ページ)
(3)ルイス・クラスナー(Vn)、アルトゥール・ロジンスキー(指)クリーヴランドPO/SP=〔輸〕コロンビアM465(1940年録音/238ページ)
(4)ゲルハルト・プフリューガー(指)ライプツィヒ放送PO/LP=〔輸〕オーシャニックOCLP301(1950年録音/236ページ)
(5)オスカー・フリート(指)ベルリン国立歌劇場PO/LP=〔輸〕パースト・マスターズPM(1924年頃録音/178ページ)
(6)ヴィクトル・デ・サーバタ(指)ほか/SP=〔輸〕コロンビアLFX784〜9(1948年録音/300ページ)
(7)ランドン・ロナルド(指)ロイヤル・アルバート・ホールPO/SP=〔輸〕HMV DB1037〜41(1925年録音/119ページ)
(8)ヨーク・ボーウェン(P)、スタンリー・チャップル(指)エオリアンPO/SP=〔輸〕ヴォカリオンA0237〜40(1925年頃録音/230ページ)
(9)ビクター・コンサート・オーケストラ/SP=〔輸〕ビクター17707(1914年頃録音/276ページ)

(10)オイゲン・ヨッフム(指)ハンブルク国立PO/SP=〔輸〕ドイツ・グラモフォンLV68338〜48(1949年録音/207ページ)
(11)大オデオン弦楽合奏団/SP=〔輸〕オデオンXX76153(1910年録音/223ページ))
(12)ユージン・オーマンディ(指)ミネアポリスSO/SP=〔輸〕ビクターM207(1934年録音/58ページ)
拙著『クラシック名曲初演&初録音事典』(大和書房)に掲載されている初録音集のハイライト盤(SEDR-0001)を制作したが、これが思いのほか大好評で、ここに第2弾を制作した次第である。以下、第1弾と同様に詳細なデータは本書を参照していただくとして、以下はその補足である。
 (1)は本書にも記した通り、指揮者もオーケストラも一般的にはほとんど知られていないので、録音史からは全く忘れられた演奏である。モノーラルではあるが当時としては音質も優秀であるし、演奏自体も決して悪くないので、遠からず全曲の復刻が望まれよう。要望があればSEDRシリーズで全曲復刻しても良いと考えている。
 (2)は本書の原稿を入れた時点で1枚に詰め込んだ再発売のLPしか手に入らず、やむなくそのジャケットを使用した。しかし、その後最初に発売された2枚組をやっと入手した。この初出2枚組は当時としては破格の豪華ジャケットに入ったLPで、第4面にはブルックナーの詩篇第115番、第120番が収録されている。入手したLPはやや状態が悪いが、希少盤ゆえにご容赦願いたい。
 (3)は初演者クラスナーの演奏である。ダンテのCDが現在廃盤なので、目下のところ全曲を聴く手だてとしてはそのCDか、もしくはLP、SPを手に入れるしかない。
 (4)のプフリューガーはかつてブルックナーの交響曲第5番などのCDも発売されていた。強烈な個性はないものの、手堅くまとめる手腕はなかなかのもである。この序曲も生き生きとした演奏である。
 (5)の演奏のオリジナルのSPはいまだかつて現物はおろか、リスト上でも過去に一度も見たことはない。以前、全曲を復刻したいと考え、このパースト・マスターズの原盤制作者に連絡を取ろうとしたが、すでに故人のようであり、調べはつかなかった。このLPのマスター・テープ、あるいは復刻に使用したSP盤はどこに保管されているのだろうか?
 (6)はSPで聴くと独特の雰囲気があって良い。ただし、本書ではイギリス盤の番号を掲載しながらも、写真はこの復刻に使用したフランス・コロンビア盤のレーベルを使用するという間違いを犯してしまった。
 (7)のロナルドは最初期に積極的に録音を行った指揮者のひとりである。しかし、伴奏指揮者以上の知名度がないために、この演奏の全曲復刻はかなり難しいかもしれない。この最終面ではいきなり弦楽器のポルタメントが現れるが、この当時はこうした部分でさえも使用していたのでだる。他にもロナルドが録音したブラームスの交響曲第2番(179ページ)もあるが、いまだに入手出来ない。
 (8)は本書にもあるように、ここではボーウェン自作のカデンツァが使用されている。なお、全曲は最近発売された「ヨーク・ボーウェン全SP録音集」(APR 6007/2枚組)に収録されている。
 (9)の全曲は随所にわたってカットを施しているが、この第4楽章も例外ではない。最初に録音されたという意外にこれといって特色はないが、こういった機会でなければなかなか聴けないのも事実である。 
 (10)の全曲はCDもあるが、このSP盤の音を聴く機会はあまりないので加えてみた。このLV番号のSP盤は電気再生用のもので、蓄音機では使用出来ない。
 (11)は全曲の中の第2楽章だけを入手したので加えてみた。本書にも記した通り、これはフリードリヒ・カークなる指揮者の演奏のとのこと。ポルタメント奏法が目立つ。全曲は(ウィング・ディスク WCD62)で聴くことが出来る。
 (12)だが、このCDRを制作する際、所持していたSPをかけようとしたら1枚目のふちが欠けていて再生できない状態になっていた。従って、ここでは曲の途中を収録した。当時のミネアポリス響はヨーロッパから移住してきた団員がほとんどのようで、柔らかい音色が特色である。(平林 直哉)
 
SEDR-2001
ベルリン・フィルと偉大な指揮者たち第1巻
(1)ワーグナー:「パルジファル」第3幕転景音楽
(2)ウェーバー:「オイリアンテ」序曲*
(3)サン・サーンス:交響詩「死の舞踏」*
(4)グルック:「アウリスとイフィゲニア」序曲*
(5)ワーグナー:「さまよえるオランダ人」序曲
(6)ポピー:バレエ組曲<'32>*
(7)シャブリエ:狂詩曲「スペイン」*
(8)ベートーヴェン:「フィデリオ」序曲*
(9)グルック:「アルチェステ」序曲
(1)アルフレッド・ヘルツ(指)<'14.9.16>
(2)マックス・フォン・シリングス(指)<'21>*
(3)ブルーノ・ザイトラー=ヴィングラー(指)<'23>*
(4)ユリウス・プリューヴァー(指)<'28>*
(5)カール・シューリヒト(指)<'30.1.13>
(6)アロイス・メリヒャル<'32>*
(7)ハンス・シュミット=イッセルシュテット(指)<'38.3.10-11>*
(8)ヘルマン・アーベントロート(指)<'38.10.1>*
(9)ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)<'42.10.28>

全て、BPO
*印=世界初CD化
●アルフレッド・ヘルツ Alfred Hertz(1872-1942)…フランクフルト生まれ。ドイツ各地で活躍したのちにニューヨークのメトに渡り、そこで主にドイツ・オペラの指揮者として活躍した。これはベルリン・フィルの最初の録音として知られるが、この時の全録音はNaxos  8.11049/50のCDに含まれる。マックス・フォン・シリングス Max von Schillings(1868-1933) デューレン生まれ。バイロイト、ベルリン国立歌劇場で活躍、フルトヴェングラーの先生としても知られる。
●ブルーノ・ザイトラー=ヴィンクラー Bruno Seidler-Winkler(1880-1960)… ベルリン生まれ。ピアニスト、指揮者で、のちにドイツ・グラモフォンの録音の音楽監督を務め、レコードの黎明期に多数の録音を行った。このSPの盤面には表示がないために独奏者名は不明である。録音時期から推定すると、当時の主席Henry Holstであるかもしれない。
●ユリウス・プリューヴァー Juliusu Pruwer(1870-1943)…ウィーン生まれ。ベルリン高等音楽院教授。ベルリン・フィルのポピュラー・コンサートのシリーズをしばしば指揮していた。
●アロイス・メリヒャル Alois Melichar(1896-?)…ウィーン生まれ。フリーの指揮者、映画音楽の作曲家として活躍。なお、作曲家Popyについては経歴不詳。  【平林直哉】
 
SEDR-2002
ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)VPO

録音:1944年12月16日
原盤:URANIA URLP7095
このディスクの演奏は“ウラニアのエロイカ”と呼ばれるもので、フルトヴェングラーの録音遺産の中でも特に有名なもの。この演奏はこれまで実に多種多様なレーベルからおびただしい数のLP、CDが発売されているが、熱心なファンの間ではいまだにオリジナル盤LPであるURLP7095の音質が最も鮮明とされている。しかし、このオリジナル盤LPは現在相当な高値で取り引きされているために、その音質を実際に確かめることの出来た人は少数である。そのため、本CDRではそのオリジナルLPの音質を可能な限り忠実に再現し、少なくともその雰囲気だけでも多くの人に味わってもらえるように制作されたものである。これを聴くと、確かにLP特有の歪みは感じられるものの、各パートの明確さや、彫りの深さは他のどのLPやCDよりも優れており、一部のファンがオリジナル盤を探し求めている理由もそれなりに理解出来るものと思われる。なお、オリジナルのLPは通常の回転数で再生すると半音近くもピッチが高いが、これは通常のCDプレーヤー、あるいはCDRプレーヤーで再生することを考慮すると、最も標準的なピッチに修正せざるを得なかった。また、このオリジナルのLPは現在の録音特性RIAAで再生すると中高域が出過ぎて派手な音質となり、この派手さが音質の良さだと勘違いされる場合もあるが、むろんここでは当時の録音特性に合わせて復刻されている。 【平林直哉】 
SEDR-2003
ベートーヴェン:「コリオラン」序曲*、
ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲**、
ブラームス:交響曲第4番#
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)BPO

録音:1943年6月27-30日*、
1943年12月12−15日*、#
(原盤:Melodiya 33D09867/8*、#、33D01085/4**のLP)
米URANIA盤LP/URLP7095よりの復刻盤であるベートーヴェンの「英雄」(SEDR2002)を制作したところ、予想以上に反響があり、と同時にさまざまなオリジナルLPの復刻を希望する声が届いた。しかしながら、いくらオリジナル盤とはいえ、過去に流通しているLP、CDと同等、もしくはそれ以下の音質のものを復刻しても意味がないので、素材には十分吟味する必要があった。ところが、SEDR2002を制作した直後に極めて保存状態の良いメロディア盤LPを複数入手することが出来、試聴の結果、その中でもいわゆる〈たいまつレーベル〉と呼ばれるブラームスの交響曲第4番、ベートーヴェンの「コリオラン」序曲のLPが鮮明な音質であることが判明した。しかも、幸いなことにこのLPはスクラッチ・ノイズも驚くほど少ないので、ここで新たに復刻することになった。LPの音質を限りなく忠実に復刻するという方針は今回も変わってはいないが、以下に述べる点が異なっている。オリジナルのLPの順序は第1面に交響曲第4番の第1、2楽章、第2面に同じく第3、4楽章、続いて「コリオラン」序曲となっている。当初はこの順番通りに2曲だけ収録する予定だったが、これではあまりにも収録時間が短いので、ベートーヴェンの交響曲第9(Melodiya33D010851/4、ピンク・レーベル)の第4面に入っているハイドンの主題による変奏曲を入れ、演奏会風に表記のような曲順に入れ替えた。従って、このCDRでは交響曲第4番と「コリオラン」がメインで、変奏曲はあくまでも付録となる。なお、録音データはオリジナルLPには表記されていないので、このCDRでは種々の資料を参考にして明記してある。  【平林直哉】
SEDR-2004
ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱つき」 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)BPO

録音:1942年3月
原盤:メロディアLP 33D010851/4
ブラームスの第4(SEDR2003)は〈たいまつレーベル〉であるが、この第9は〈ピンク・レーベル〉である。未確認の情報によると、この第9もまた〈たいまつ〉が最も鮮明な音質らしいが、それを確認する手だては今のところ全くない。本来であれば〈たいまつレーベル〉のLPも入手し、この〈ピンク・レーベル〉と比較して、良い方を出すべきであろう。だが、いくら〈たいまつ〉とはいえ、やはり問題なのは保存状態である。つまり、保存状態の良くない〈たいまつ〉と、状態の良い〈ピンク〉となると選択はむずかしくなるだろう。また、音録り、リマスタリングも最終的な音質に大きくかかわってくる。この復刻に使用したLPは、あるコレクターから提供されたものだが、その人物によると、海外の倉庫に眠っていた手つかずの、つまりは全くの新品であるという。しかも、私たちにとって幸いだったのは、その提供者がフルトヴェングラーの信奉者ではなく、盤面がほとんどすり減らされていなかったことである。従って、現時点でこのCDRは当時のメロディアの第9の音を偲ぶには最適な資料となりうる、このように考えて復刻を決意した次第である。また、若干の補足をさせていただくと、この第9は第1楽章と第2楽章が第1面に、第2面には第3楽章、第3面には第4楽章がそれぞれ収録されている。第4面に入っているブラームスの〈ハイドンの主題による変奏曲〉はすでに復刻したSEDR2003に含まれている。なお、復刻に際しては原音を可能な限り忠実に再現し、大きなノイズ除去以外の音質調整は一切行っていないのは、これまでと全く同じである。  【平林直哉】
SEDR-2005
ベルリオーズ:幻想交響曲、
R・シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」*
ブルーノ・ワルター(指)NBC響

録音:1939年4月1日、1940年3月2日*
驚異的とも言える鮮明な音質!完全にワルターの意思を汲んだオケのの反応も素晴らしく、「幻想」第2楽章のまさに夢見るようなアゴーギクや、第4楽章のピチカートの激烈な衝撃、機能美全開の猛進の末、後半で猛烈なアッチェレランドを掛ける手法などなど、ワルターの満足気な様子が目に浮かびます。そして終楽章の何という素晴らしさ!冒頭の悪魔の嘲笑は弦の巧さが尋常でなく、古今を通じて最も不気味!!ピアノを重ねる鐘の音のおどろおどろしさと相まって、怒りの日の漆黒の闇にも戦慄が走り、曲が進むに連れてすべての表現が地に染まる様には手に汗握ります。それにしてもオケの技術の見事なこと!もやもやした箇所が全くないアンサンブルの妙と確信に満ちたニュアンスの連続に古さなど感じている暇はありません!【湧々堂】
ワルター/NBC響の録音は、これまでさまざまなレーベルから発売されていたが、このディスクに含まれた演奏は過去にいかなる形でもリリースされていないものである。NBC響は言うまでもなく、トスカニーニに徹底的に鍛えられたオーケストラであり、この演奏にもそのトスカニーニの刻印が明瞭である。しかし、テンポや表情をはじめ、音楽はワルターそのものであるし、指揮者の意図を先回りして表現してしまうようなオーケストラの反応の良さに、ワルターも満足だったのではと想像している。特にこのディスクに含まれた2曲は従来のワルターの録音であれば、それらしい迫力がないと指摘されるところだが、その点についての不満はこの録音の場合、完全に解消されていると言っていいだろう。なお、提供されたテープには収録場所が記載されていないが、音の状態やいくつかの断片的な資料から推測すると例の8Hスタジオでの収録と思われる。しかし、完全に裏がとれていないので、ジャケットにはあえて記載しなかった。また、復刻にあたっては基本的には最低限の音質補正しかしていないので、若干の不備はあるものの、全体の音質は当時としては破格な高音質であると思う。この SEDR2005〜7が好評であれば、他レーベルで出ていた音源を新たに復刻することも検討している。  【平林直哉】
SEDR-2006
ブラームス:交響曲第1番、
ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲*
スメタナ:交響詩「モルダウ」*
ブルーノ・ワルター(指)NBC響

録音:1939年3月1日、1940年3月2日*
ワルター/NBC響の録音は、これまでさまざまなレーベルから発売されていたが、このディスクに含まれた演奏は過去にいかなる形でもリリースされていないものである。NBC響は言うまでもなく、トスカニーニに徹底的に鍛えられたオーケストラであり、この演奏にもそのトスカニーニの刻印が明瞭である。しかし、テンポや表情をはじめ、音楽はワルターそのものであるし、指揮者の意図を先回りして表現してしまうようなオーケストラの反応の良さに、ワルターも満足だったのではと想像している。なお、提供されたテープには収録場所が記載されていないが、音の状態やいくつかの断片的な資料から推測すると例の8Hスタジオでの収録と思われるが、完全に裏がとれていないのでジャケットにはあえて記載しなかった。また、復刻にあたっては基本的には最低限の音質補正しかしていないので、若干の不備はあるものの、全体の音質は当時としては破格な高音質であると思う(交響曲第1番には若干回転ムラがあるが)。また、この SEDR2005〜7が好評であれば、他レーベルで出ていたワルター/NBCの音源を新たに復刻することも検討している。  【平林直哉】
SEDR-2007
ヘンデル:合奏協奏曲Op.6-2、
ワーグナー:ジークフリート牧歌*
ブラームス:交響曲第2番#
ブルーノ・ワルター(指、P)NBC響

録音:1940年2月17日、1939年4月8日*、1940年2月7日#
このディスクに含まれるヘンデル、ワーグナーが世界初出の音源で、さらにヘンデルはワルターの初のレパートリーという貴重なものである。ところが、提供されたテープに「作品6の12」と明記されていたために、予告の段階でうっかりこの誤情報を流してしまい、一部に混乱を招いたことはお詫びせねばならない。また、ブラームスは1940年2月24日と表示されたEklipse T5と同一の演奏である。日付について、現時点では当盤とEklipse盤のどちらが正しいかの判断を下せるだけの材料がないため、ここでは提供されたテープの表記に従っている。ちなみに、最近イタリアで出版されたワルターの写真集『BRUNO WALTER/LA PORTA DELL'ETERNITA VOL.3』(MICHELE SELVINI)の巻末のディスコグラフィにはEklipse盤の日付は2月17日と記されている。なお、Eklipse盤は最新の技術を駆使してノイズをきれいに除去しているが、このSERENADE盤は基本的にはもとのテープの音質をそのまま生かしており、その音質の違いはかなり大きいので、機会があれば聴き比べていただきたい。また、このSERENADE SEDR2005〜7のワルター/NBCのシリーズの原テープにはアナウンスも入っているが、そのアナウンスが全部入っているものや、途中で切れているものなどバラツキがあったため、ディスク化に際してはすべてカットした。  【平林直哉】
SEDR-2008
ベートーヴェン:交響曲第4番
ベートーヴェン:交響曲第7番*
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)BPO

録音:1943年6月27-30日、1942年11月31日*
原盤:Melodiya D09083/4、
Meolodiya D02779/80*
このCDRはメロディアの初期LPより復刻したものである(第4番がホワイト・レーベル、第7番がイエロー・レーベルをそれぞれ使用)。最初の第4番は全楽章ともに聴衆入りのライヴ演奏である。この録音は低音にハム音が混入しているが、これは言うまでもなくLP通りである。このハム音の除去は容易であるが、それを行うと音質は間違いなく軽く、安っぽいものに変貌するので、そのままにしておいた。逆に言えば、のちの復刻盤はこのハム音を除去しているので、その分軽くなっているとも考えられる。第7番の方は第4番よりはもともと軽い音質であるが、それでもこのCDRは従来の多くの復刻盤よりは豊かに響くはずである。また、第4楽章の冒頭は数々の文献にあるとおり、欠落している。近年になって再プレスされたメロディアのLP、CDによって完全版が初めて日の目を見たが、それまでは再現部の冒頭をコピーして編集したものが世界中に流布していたのである。このCDRのように欠落のまま復刻する方針には異論があろうが、今や伝説と化した事故を実際に音で確かめられる復刻盤が、世の中にひとつくらいはあってもよいのではないかと思っている。  【平林直哉】
SEDR-2009
ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」
ウェーバー:「魔弾の射手」序曲
R・シュトラウ:交響詩「ドン・ファン」
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)BPO

録音:1944年3月20-22日*、**、
1942年2月15-17日#
原盤:Melodiya D027777/8*、
Melodiya 33M10-41233/4**、#
メロディアLPからの復刻盤であるブラームス第4(SEDR2003)、ベートーヴェン第9(SEDR2004)を発売して以降、幸いにもフルトヴェングラーのメロディア盤LPを十数枚入手した。それらを過去のLP、CD等と比較試聴し、復刻に値する結果が得られると判断したものだけを、今回、 SEDR2008、2009、2010、2011の4枚として発表することになった。このCDRでは「田園」がホワイト・レーベル、それ以外はピンク・レーベルから復刻したものである。これらのLPが、過去に発売されたメロディアのLPの中でも最高の音質かどうかは判断できないが、現時点では望みうる最上の音質であると考えている。とにかく、このCDRはその昔出ていた伝説のメロディア盤がどのような音であったか、それを知るひとつの手がかりとして世に問うたもので、各方面からのご意見、ご批判をいただければ幸いである。  【平林直哉】
SEDR-2010
シューベルト:交響曲第9番「グレート」
R・シュトラウス:4つの歌曲(森の幸福/愛の賛歌/誘惑/冬の恋)*
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)BPO、
ペーター・アンデルス(T)

録音:1942年5月31日ー6月1日、1942年2月15-17日*(原盤:Melodiya D010033/4、
Melodiya 33M10-41233/4*)
このCDRはメロディアのホワイト・レーベル(シューベルト)、ピンク・レーベル(R.シュトラウス)から復刻したものである。ホワイト・レーベル、イエロー・レーベル、たいまつレーベルは1950年代後半から1960年頃に製造されたもののようだが、それぞれについての詳細は明かではない。一方、ピンク・レーベルは1960年代から1970年代初頭にかけて製造されたようである。いつ頃製造されたものが、あるいは何色のレーベルのフルトヴェングラー盤が最上の音質かについては諸説あるが、少なくともこの復刻盤では現時点で望みうる最上の音質で楽しめるように心がけている。  【平林直哉】
SEDR-2011
ベートーヴェン:交響曲第5番(2種の演奏) ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)BPO
録音:1943年6月27-30日、1926年

原盤:Melodiya D05800/1、
Polydor(日本)60024/8
(174/5bm、216/8bm、
179bm、3301/2bm、214/5bm)
1943年の演奏はメロディアのピンク・レーベルから復刻したもので、出来上がりの音質はまずまずであると思う。しかし、この復刻CDRでは、むしろ音の良くない1926年の演奏が重要である。このSPは一時期アコースティック録音(ラッパ吹き込み)説が出たほど、当時としても良くない録音とされていた。確かにその通りであるが、SPを再生してみると、ピアニシモは極端すぎるほど弱く繊細であり、逆にフォルティシモの爆発は凄まじい。つまり、音の悪さも確かにあるが、演奏自体がもともと破格であったことも、結果としての音質に大きく影響しているように思われる。また、第2楽章で第4面は185小節冒頭で終わっているが、第5面は176小節から戻って演奏されている。つまり、復刻する際にはダブっている9小節は破棄されねばならないが、このCDRではボーナス・トラックとして盤に刻まれたすべての音を聴くことが出来るようにしてある。さらに、周知の通り、第3楽章にはオリジナルの演奏に欠落がある。  【平林直哉】
SEDR-2012
ハイドン:交響曲第86番
モーツァルト:交響曲第35番「ハフナー」*
シューベルト:交響曲第5番#
ブルーノ・ワルター(指)NBC響

録音:1940年2月10日、1940年2月17日*、1940年3月9日#)
SEDR2005〜2007の3点は大半が初出の音源であったが、今回のSEDR2012〜2014の3点は過去にいずれかのレーベルで出ていた実績のあるもので、初発売の音源は含まれていない。しかしながら、当シリーズはこれまで通り復刻に際しては過度のノイズ・カットを施していないために、過去に出ていたLP、CD等とは印象が大きく異なっている。なお、Arturo Toscanini THE NBC YEARS(M. H. Frank、 Amadeus Press)の本の巻末にある演奏記録では1940年2月10日はハイドンの交響曲第88番となっているが、これは明らかに誤りである。  【平林直哉】
SEDR-2013
ウェーバー:「オベロン」序曲
ハイドン:交響曲第92番「オックスフォード」
ベートーヴェン:交響曲第1番*
ブルーノ・ワルター(指)NBC響

録音:1939年3月18日、1939年3月25日*
SEDR-2014
スメタナ:「売られた花嫁」序曲
シューベルト:交響曲第9番「グレート」*
モーツァルト:メヌエットK.568、399#
ドイツ舞曲K.605#
ブルーノ・ワルター(指)NBC響

録音:1940年3月2日、1940年2月24日*、1940年3月9日#
SEDR-2015
ブラームス:弦楽四重奏曲第1番
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」*
ブッシュSQ
[アドルフ・ブッシュ、ブルーノ・シュタウトマン、フーゴー・ゴッテスマン、ヘルマン・ブッシュ]、
アドルフ・ブッシュ(Vn)*、ルドルフ・ゼルキン(P)*

録音:1951年1月25日ヘッセン放送・ライヴ(世界初出)、1933年5月17日*
ブラームスの弦楽四重奏曲第1番は、今回初めて公開されるものである。ブッシュ弦楽四重奏団は1951年1月から2月にかけて戦後初めてのドイツ公演を行ったが、これはその一貫である。この日のライヴはヘッセン放送によって中継放送されたが、当日のほかのプログラムや収録場所は残念ながら不明である。この時の4人のメンバーはブッシュ弦楽四重奏団最後のメンバーで、この公演のあった年の暮れにブッシュが引退を表明し、この団体は活動を停止している。なお、上記のドイツ公演は、新星堂SGR8518〜20のCDでも聴くことが出来る。(このSGR盤の解説ではドイツ公演は2月としか書いていないが、実際は1月より行われている)
一方の「春」は有名なHMV録音である。このCDRでは米ビクター盤を使用しているが、これはカートリッジで再生する場合、HMVのSP盤は高音に独特のきついノイズを発生するためである。コレクターの中には文字通りオリジナルの固執する人も多いが、あのHMV盤独特の針音は一般のリスナーにとってはあまりにも過酷である。では、HMV盤を使用して高域のノイズを処理出来れば良いが、これが非常にむずかしく、たいていは無惨な結果に終わってしまう。このビクター盤による復刻はSPの原音を100%再現出来たとは言えないものの、従来の復刻盤では聴けなかった、暖かく伸びやかな音質で楽しんでいただけると思う。 
 【平林直哉】
SEDR-2016
ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」(改訂版) ブルーノ・ワルター(指)NBC響

録音:1940年2月10日ライヴ
ブルックナーの交響曲の〈改訂版〉は特に第5、第9に象徴されるように、今日では第三者の手を経た“改悪版”として認識されている。しかし、ブルーノ・ワルターら、当時ブルックナーをレパートリーとしていた指揮者たちは皆、〈改訂版〉をごく当たり前に振っていたのである。その理由は簡単である。その当時は〈改訂版〉しか世の中に存在していなかったからである。その後、1935年からロベルト・ハースによって〈ハース版〉が、1951年からはレオポルド・ノヴァークによってそれぞれ〈原典版〉が出版されたが、ほとんどの指揮者がハース、あるいはノヴァークの〈原典版〉に宗旨替えをしつつも、細部には〈改訂版〉の痕跡を残している例はいくつも知られている。ワルターの指揮する「ロマンティック」の録音は、このNBC盤とは別にコロンビア響を振ったステレオ録音が有名だが、そこにも明らかに〈改訂版〉の残滓がある。   【平林直哉】
SEDR-2017
ブルックナー:交響曲第8番(改訂版) ブルーノ・ワルター(指)NYO

録音:1941年1月26日ライヴ
ワルターの指揮した交響曲第8番の録音は目下のところ、これしか知られていない。ワルターは後年、この曲を指揮した際には〈原典版〉を用いたことはまず間違いはないだろう。しかし、それがどのようなものだったか、現時点では全く想像の域を出ない。   【平林直哉】
SEDR-2018
ラロ:スペイン交響曲
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」*
ベートーヴェン:ロマンス第2番**
バッハ(ヴィルヘルミ編):G線上のアリア#
ジャック・ティボー(Vn)
ジャン・マルティノン(指)
オルケストル・ナショナル、コルトー(P)*、
ハロルド・クラクストン(P)**、#

録音:1953年2月19日、1929年5月27-28日*、1925年11月25日**、1927年2月14日#
このディスクに含まれるラロの「スペイン交響曲」は初めて公開されるライヴ録音である。この録音はアセテート盤から起こしたテープを苦心して編集したもののようだが、ディスク化に際しては以下の部分を編集した。まずひとつは第1楽章の39小節がダブっていたが、これはカットするだけで問題はなかった。問題はスケルツァンドの80小節めとロンドの100小節めの、それぞれ1小節分の欠落であった。欠落の原因は不明だが、ともかく最初は他のティボーの演奏で欠落を埋めて編集したが、修正すると逆に編集箇所の不自然さがいっそう目立つこととなったために、やむなくオリジナルのままを採用した。また、オーケストラ名については、音源供給元や他の資料にもOrchestre Nationalとしか表記していないので、それをそのまま表記した(恐らくは、フランス国立であると思うが)。そのほかの演奏はHMVのSPを復刻したもので、音源としての目新しさはない。しかし、これまで同様にSP盤独特の音の伸びを大切に復刻したもので、個人的には「クロイツェル」がまずまずの出来ではないかと思っている。   【平林直哉】
SEDR-2019
クナッパーツブッシュT
ブラームス:交響曲第4番、
チャイコフスキー:「くるみ割り人形」組曲*
ハンス・クナッパーツブッシュ(指)
ケルンRSO、BPO*

録音:1953年5月8日、1950年2月2日*
ブラームスの方はクナッパーツブッシュの演奏の中でも特に個性的なものとして知られているが、これまで発売されたLP、CD等は音質が今ひとつでああり、その真価を堪能するまでにはいたらなかったように思う。ところが最近入手したテープは状態がかなり良く、ごく一部に音のカスレや揺れ、または小さな音で別の音楽が聴こえてくる部分(第1楽章の後半部分など)もあるが、全体的には十分に鑑賞に堪えうると判断し、CDR化を決断した次第である。チャイコフスキーの方はTahraから出ているものと全く同一である。Tahraの方はノイズをやや抑えめにして聴きやすく処理してあるが、このCDRではそのような処理は基本的には行っていない。部分的には明らかに低音が過剰と思われるが、そのようなデコボコに手を加えるとどうしても雰囲気感が損なわれてしまうので、最終的にはほとんど原音のままを採用した。もしもお聴き苦しい場合は、アンプのトーンコントロールやグライコ等で調節していただきたい。   【平林直哉】
SEDR-2020
クナッパーツブッシュU
ブラームス:交響曲第3番*
ニコライ:歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲
J・シュトラウス:歌劇「こうもり」序曲
ヨハン&ヨゼフ・シュトラウス:ピチカート・ポルカ
コムツァーク:ワルツ「バーデン娘」
ハンス・クナッパーツブッシュ(指)BPO

録音:1944年9月9日*、1950年2月2日
原盤:Melodiya 33M10-4175/78*
ブラームスはメロディアのLP(33M10-41175/78)からの復刻である。この2枚組LPはブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」(この演奏はSEDR2021でCDR化)と組み合わされており、いささか詰め込み気味ではあるものの、それでも従来のLP、CD等よりも良い結果が得られると判断してCDR化した。金管楽器がマイクに近いためか、時おり刺激的に響くが、これを抑えすぎると今度は弦楽器のふくよかさが失われるために、そのあたりの操作はあまり過剰にならぬように配慮した。なお、メロディアのLPには録音データは記載されておらず、このCDRでは『ハンス・クナッパーツブッシュ・ディスコグラフィ』(吉田光司著、キングインターナショナル)に準拠している。ニコライ以下はベルリンでのライヴである。「ウィンザー」や「こうもり」の終わりの拍手は何やらわざとらしいが、カットすると唐突な感じがするのでそのままにしておいた。また、「こうもり」では冒頭がフェイド・イン気味になっているが、これはオリジナルのままである(同一演奏のTahra盤も同様にフェイド・イン気味になっている)。   【平林直哉】
SEDR-2021
クナッパーツブッシュV
ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」(改訂版)
ハンス・クナッパーツブッシュ(指)BPO

録音:1944年9月8日
原盤:Melodaiya
 33M10-41175/78
このブルックナーは2枚組4面のうちの3面にカッティングされたもので、同じLPの3面から4面にカッティングされているブラームスの交響曲第3番は当シリーズの(SEDR2020)に含まれている。使用している版はいつものように改訂版だが、改訂版にはない表情が随所に付加されているがこの演奏の特色でもある。なお、LPには例によって録音データは記載されていないので、このCDRでは『ハンス・クナッパーツブッシュ・ディスコグラフィ』(吉田光司著、キングインターナショナル)に準拠している。   【平林直哉】
SEDR-2022
ブルックナー:交響曲第8番 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)BPO

録音:1949年3月15日
これはアメリカのコレクターから提供されたテープをもとに復刻したものである。この演奏は最初期のLP(ロココ、ディスココープ、日本コロムビア)が良い音だったと一部では評判だが、今回のテープはそのLPなどと音の傾向が似ているため、同系列のコピーと思われる。この録音は全体的に入力が過剰気味で、特に強い音では歪みがちになるが、逆によく知られているCDなどには見られない、異様なまでの生々しさがある。過去にCDR化したクナッパーツブッシュ指揮、ベルリン・フィル(SEDR-2019、2020)の録音も、同じティタニア・パラストの収録でありながら、眼前で演奏しているような生々しい音質だった。フルトヴェングラー、ベルリン、そしてティタニア・パラストの録音で、このような傾向の音のものはほとんどない。つまり、フルトヴェングラー/ベルリン・フィルの録音テープも、どこかにお化粧を施していない、会場の雰囲気を生々しく伝える録音テープが残っているのではと思っている。なお、第3楽章10分27秒にやや大きな音ゆれがあるが、これは原テープによるものである。   【平林直哉】
SEDR-2023
ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)BPO

録音:1950年6月20日
このCDRはヨーロッパのコレクターより提供されたテープをもとにしている。今回CDR化した理由は、より良い音質で聴けるという点もさることながら、それ以上にピッチの問題があった。過去に出たこの1950年演奏の「英雄」のLP、CDは、同じくベルリン・フィルの2種の「英雄」の1952年盤と比較すると明らかにピッチが低い。フルトヴェングラー/ベルリン・フィルの演奏で、たとえば年代が離れて複数以上の演奏を比較した場合(ベートーヴェンの第5= 1947、1954、ブラームス第3=1949、1954、シューベルト「グレート」=1942、1953など)、はっきりと聴き取れるようなピッチの違いは見られない。つまり、1950年と1952年の2種の「英雄」とのピッチは、ほかの録音と比べると突出して差があるのである。もちろん、1950年6月当時、従来のLP、CDのピッチで演奏した可能性も否定は出来ない。しかし、常識的に考えて、従来のピッチが誤りである可能性の方が強いと判断、今回のCDR化では1952年のピッチに近づけて復刻した。むろん、この措置はあくまでも個人的な見解であり、絶対的なものではないのでご批判、ご意見は甘受したい。なお、第3楽章の48秒〜51秒付近に音ゆれとノイズが入るが、これは原テープに混入しているもので、除去は出来なかった。 【平林直哉】
SEDR-2024
シューベルト:交響曲第9番「グレート」
「ロザムンデ」序曲*
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)
VPO、トリノ・イタリアRSO*

録音:1953年8月30日、1952年3月11日*
このディスクに収録されている「ザ・グレート」は、EMIなどからリリースされているものと同一の音源である。よく知られているように、フルトヴェングラーは肺炎のため1952年7月から約五ヶ月弱の間活動を休止し、以来体調は常に不安定だった。残されている録音からも、そういったフルトヴェングラーの好不調の波が感じられるものもあるが、この「ザ・グレート」は最も調子の良かった時の演奏と思われる。この曲には戦前のベルリン・フィルとの荒れ狂ったライヴがあまりにも有名だが、この「ザ・グレート」はそのベルリン・フィルと比較しても激しさという点ではほとんど遜色はない。しかも、この曲で主役となるホルン、クラリネット、オーボエ、チェロなどの音色はまさにウィーン・フィルならではである。一方の「ロザムンデ」序曲の方はそれほど優れた演奏とは言えないが、入手したテープがフルトヴェングラーのイタリアでの記録としては比較的音質が良好だったために、埋め草としてCDR化した。   【平林直哉】
SEDR-2025
ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)BPO

録音:1952年11月26-27日
原盤:HMV<英> ALP-1060 初出LP)
「このディスクは英EMIの初出LP、ALP-1060より復刻したものである。このLPは1953年秋にイギリスで発売されているが、以来、世界中で最も愛聴されている演奏のひとつであることは言うまでもなかろう。復刻にあたってはLPの再生音を可能な限り忠実に再現するように、これまで通り不必要な加工は一切行っていない。とはいえ、LPの再生音と出来上がったCDRとではそれなりに印象が異なるので、このCDRはあくまでもALP盤の代替品として愛聴していただければ幸いである。なお、このLPの面の切り方は、第2楽章の104小節の途中で第1面が終わり、105小節のアウフタクト以降は第2面にカッティングされている。また、ジャケットの裏面は当時のLPがどれもそうであったように、曲目の解説のみで演奏者の紹介や録音データに関する記述は全くない。」(平林直哉)
※2007年の年頭までにGRANDSLAMから再リリース予定。その際にはSERENADEに使用したLPよりも、さらに状態の良いLP(LP番号は同一)を使用するそうです。
SEDR-2026
ブラームス:交響曲第1番、
ハイドンの主題による変奏曲
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)
北ドイツRSO

録音:1951年10月27日
このディスクは1951年10月27日、フルトヴェングラーが北西ドイツ響(現北ドイツ放送響)に招かれた時のライヴ録音で、当日はこれ以外にブラームスの二重協奏曲が演奏されている。これまでは、この1951年の公演がフルトヴェングラーと同オーケストラの初の公演とされていたが、最近の調査では両者の初の顔合わせは1947年9月22日ということが判明している。面白いのは1947年、1951年共にブラームスの二重協奏曲が演奏されており、ソリストのレーン、トレースターもまた同じであった。その二重協奏曲は2回共に中継放送されたようだが、残念ながらその録音は未だ発見されていない。このディスクに収録されたブラームスは、フルトヴェングラーがベルリン、ウィーンの2つのオーケストラ以外を振った記録の中でも、最も充実したものと言われている。残念ながらこのディスクに使用した音源も他に流布しているものと同様に、一番最後の和音がレベル・ダウンしているが、全体的には当時としてはかなり鮮明な音質で、フルトヴェングラーの特色はかなり明瞭に捉えられるものであろう。 【平林直哉】  
SEDR-2027
ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」*
◆リハーサル風景
ブラームス:交響曲第2番〜第4楽章 (1943)、
ベートーヴェン:「コリオラン」序曲(1944)、
ヴェルディ:歌劇「ファルスタッフ」(1950)、カンタンド、カンタンド (1947)、
レスピーギ:交響詩「ローマの泉」(1950)、
ヴェルディ:歌劇「椿姫」 (1946)、
ベートーヴェン:交響曲第9番〜第4楽章
アルトゥーロ・トスカニーニ(指)NBC響

録音:1939年2月27日&3月1日&29日
ベートーヴェンの交響曲第5番はSP時代にフルトヴェングラーと双璧と言われた演奏で、それについては今さら説明は不要と思う。この演奏はこれまでにもいくつか復刻盤は出ているが、それらにいささかの物足りなさを感じたために新たに復刻を試みた。実際に復刻してみると、部分的に盤面の難は感じられるものの、全体的な演奏の雰囲気をそれなりにうまく伝えられるものに仕上がっていると思う。余白の部分にはリハーサル風景、それも指揮者が爆発している部分を抽出して収録した。これを収録したのは以下のような個人的な理由によっている。その昔、私自身はトスカニーニの良さがなぜだかあまりわからなかった。しかし、ある時、このリハーサル(の一部)を聴いて、トスカニーニに対する認識がほとんど一変したのである。この、音楽に対するとてつもなく凄まじい情熱、これこそがトスカニーニの本質ではあるまいか。彼は1867年生まれだから、このリハーサルの時は70歳代の後半から80歳代前半である。あなたの周囲に、このようなエネルギーを持った老人がいるのだろうか!   【平林直哉】
SEDR-2028
偉大な指揮者たち
(1)スメタナ:歌劇「売られた花嫁」序曲<'44.11.9/Melodiya M10 46981 001>
(2)ベートーヴェン:序曲「レオノーレ」第3番<'26.11.23&'27.1.4/Parlophone E10545/6>
(3)チャイコフスキー:交響曲第5番〜第3楽章<'48/Melodiya 16417/8>
(4)R・コルサコフ:スペイン奇想曲<'48/Melodiya 0170279/82>
(5)ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー<'53/Supraphon H24436/7>
(6)ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ<'50.1.17/Pathe PD116 >
(1)クレメンス・クラウス(指)VPO
(2)ジョーゾ・セル(指)ベルリン国立歌劇場O
(3)ムラヴィンスキー(指)モスクワRSO
(4)コンドラシン(指)モスクワ青年SO
(5)ヴァーツラフ・スメターチェク(指)プラハSO、
ヤン・パネンカ(P)
(6)クリュイタンス(指)パリ音楽院O
全点が初復刻!これこそプロデューサーのやりたかったものです!当時としては破格の高音質のクラウスのスメタナ、若々しいセルの「レオノーレ」、引き締まったムラヴィンスキーのチャイコフスキー、特に後半が凄まじい盛り上がりのコンドラシン、珍しいチェコの団体によるガーシュウィン、典雅なクリュイタンス、どれも聴きものです。このディスクに含まれる演奏のうちクラウスのみがLPから、残りはすべてSPからそれぞれ復刻したものである。クラウスはいわゆる聴衆なしの放送録音で、記録によるとコンツェルトハウスにて午前11時半からまずR.シュトラウスの歌曲(詳細不明、独唱はユリウス・パツァーク)が演奏され、その後にこのスメタナが演奏されたらしい。また、終了直前の462小節(6分46秒)の四分休符がわずかに短く聞こえるが、これは編集ミスではなく、オリジナル通りである。セルの「レオノーレ」は第1、2面と第3面、第4面が明らかに違う回転数でカッティングされており、しかも第3面は後半に行くに従ってピッチが次第に低くなっており、このあたりの調整は完全には出来ていないことをご了承願いたい。【平林直哉】
SEDR-2029
ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」 ハンス・クナッパーツブッシュ(指)ミュンヘンPO

録音:1953年12月17日
クナの代表的な「英雄」が太く生々しい音質で聴けます。この「英雄」はTahra、セブンシーズ等のレーベル、あるいはLP時代にチェトラ系の原盤で1950年、バイエルン放送響として出されたものと同一の音源である。今回使用した原盤はヨーロッパのコレクターから入手したもので、これまで出ていたLP、CD等よりもいっそう情報量が豊かな音質のためにCDR化を決意した次第である。日本ハンス・クナッパーツブシュ研究会のホームページ(http://www.syuzo.com)によると、この日は12月16日、17日の2日間に行われた公演の2日目にあたり、プログラムは以下のようなものだった。ヴォルフ:イタリアのセレナード、ザルムホファー:ヴァイオリン協奏曲(独奏:フリッツ・ゾンライトナー)、ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」、この3曲の中でザルムホファー(Franz Salmhofer)のみ未CD化。ゾンライトナーは当時のミュンヘン・フィルの首席奏者で、彼の独奏はクナの指揮するブラームスの二重協奏曲でも聴くことが出来る。   【平林直哉】
SEDR-2030
モーツァルト:ピアノ協奏曲第18番*
ピアノとヴァイオリンのためのソナタ第39番#
ピアノ協奏曲第17番**
リリー・クラウス(P)*#、
ワルター・ゲール(指)LPO*、
シモン・ゴールドベルク(Vn)#、
エルンスト・フォン・ドホナー**

録音:1937年4月21日#、1928年6月17日**
原盤:Parlophone SW8035/8
(CXE9025-1、 9026-1、
9027-1、 9028-3、
9029-1、9030-2、 9031-4)*、
Parlophone SW8035(CEX8292-1)#、
Columbia L2215/8(WAX3790/77)**
このアルバムには2人のハンガリー出身のピアニストによるモーツァルトが収録されている。リリー・クラウス(1903-1986)の経歴については今さら触れるまでもないが、このパーロフォンによるK.456は私の知る限り、これまではLPの復刻すらなかったものである。ゴールドベルクとのソナタは協奏曲のSPの最終面(4枚組、第8面。使用した盤はオートマチック用)に収録されていたもので、これはすでにCD化されてはいるが、付録として収録した(第3楽章トラック3の3分15秒付近、ピアノの入りが若干不安定だが、これはオリジナル通りで、編集ミスではない)。エルンスト・フォン・ドホナーニ(1877-1960)はプレスブルグ生まれ。ブダペスト音楽院で学び、ブダペスト・フィルの指揮者、あるいはピアニストとして活躍、第二次大戦後はアメリカに移住、ニューヨークで死去した。作曲家として作品もいくつか知られており、現在活躍中の指揮者クリストフ・フォン・ドホナーニ(1929-)はエルンストの孫に当たる。ドホナーニの残した録音は非常に少なく、これは彼が優れたピアニストであることを証明する数少ない記録で、同一演奏の復刻盤は過去にはあまり出ていなかった(LP=米Past Masters PM8、CD=Koch Schwann 311136)。なお、この2つの協奏曲録音は世界初録音でもあった。 【平林直哉】
SEDR-2031
ゴロワノフT
R・コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」*
チャイコフキー:序曲「1812年」**
バッハ:管弦楽組曲第3番〜アリア#
ニコライ・ゴロワノフ(指)
ボリショイ劇場O*ダヴィッド・オイストラフ(Vnソロ)*、
ゴロワノフ(指)モスクワRSO**、
ボリショイ劇場ブラス・バンド**
ゴロワノフ(指)モスクワ放送響の10人のチェロ奏者達#

録音:1947年*、**、1945年#
原盤:Melodiya 014691/014702*、
015175/8**、12414/5#
このCDRに含まれる「シェラザード」はゴロワノフ唯一の録音である。この録音セッションには、ゴロワノフと親しかった父アノーソフに連れられて、ロジェストヴェンスキーが録音に立ち会っている。その時、ロジェストヴェンスキーは、ゴロワノフがコンサート・マスターの独奏を気に入らず、「オイストラフを連れて来い!」と叫んだのを目撃している。「1812年」序曲はゴロワノフのお気に入りだったようで、1942年、1947年、1948年、1952年と4回も録音している。1942年の録音のみ未CD化で、1952年盤は2003年に季刊「クラシックプレス」第14号の付録としてCD化されている。コーダの編曲は未聴の1942年盤以外の3種類ともに共通している。バッハはゴロワノフにしては珍しいレパートリーだが、編曲者はゴロワノフ自身か、あるいは当時のオーケストラのチェロ奏者のものなのか、はっきりしたことは不明である。このCDRは2001年に発売されたGRAND SLAM GS-2003としてCD発売された原盤を使用しています。なお、GS-2003に含まれていたハチャトゥリアンは著作権の関係上、省かれています。 【平林直哉】
SEDR-2032
ブルックナー:交響曲第3番(改訂版) ゾルタン・フェケテ(指)
ザルツブルグ・モーツァルテウムO

録音:1950年
原盤:Remington R199-138
このディスクに収録された演奏は改訂版とはいえ、ブルックナーの交響曲第3番の世界初の全曲録音である。SP時代、ブルックナーの作品自体は認知度が低く、しかも片面が4分強しか収録出来ないSP盤にとって、ブルックナーの交響曲はレコード会社にとっては決して魅力的なものとは言えなかったが、それでもこの時代に第4番、第5番、第7番、第9番のそれぞれ全曲録音が行われていた。この交響曲第3番は1928年にアントン・コンラートAnton KonrathがHMVに第3楽章のみを収録しただけで、SP時代に全曲録音 は行われなかった。しかし、1953年頃、このディスクのフェケテ指揮のものと、Allegro-Royaleレーベルのゲルト・ルバーンGerd Rubahn指揮、ベルリン交響楽団(番号:1579)の2種の全曲LPが 登場した。このルバーンは長くヤッシャ・ホーレンシュタインの偽名ではないかと言われていたが、ドイツのLP研究家E.ルンペ氏の調査によると、このルバーン盤の正体は1952年3月2日、3日、ベルリンのティタニア・パラストにおけるレオポルト・ルートヴィヒ指揮、ベルリン・フィルによるこの曲の第2版の世界初演の記録であるという。この調査により、フェケテ盤が最初の全曲盤と確定出来たわけだが、このフェケテ盤には妙な現象が起こっていた。このフェケテ盤はおそらく最初にコンサート・ホール・ソサエティ(CHS-1065)から発売され、のちにレミントン(R199-138)からも発売されている。ところが、このコンサート・ホール盤のLPは、第3楽章がトリオで終わっており、繰り返しのスケルツォが欠落しているのである。レミントン盤の方は繰り返しのスケルツォが楽譜通りに入っているが、コンサート・ホール盤を作った時、トリオが終わってからパウゼがあるので、ここで第3楽章が終わったのだと勘違いしてカッティングされたと想像される。ゾルタン・フェケテ(1909-?)はブダペスト生まれ。フランツ・リスト音楽院卒業。1937年にアメリカに移住し、主にニューヨークで活躍。戦後はヨーロッパでも活躍し、マーラーやブルックナーの交響曲を積極的に指揮するほか、グルックやヘンデルの研究でも知られている。    【平林直哉】
SEDR-2033
ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」 フリッツ・シュライバー(指)ドレスデン国立SO
録音:1954年頃?

原盤:Allegro (U.K.) ALL 701
かつて初期LP時代にはゲルト・ルバーン、カール・リスト、エリック・シルヴァー、カール・ブランドなど、架空の演奏者による名曲盤が大量に発売されたことがあった。その中のいくつかは正体が判明しているが、大半は依然、謎のままである。このフリッツ・シュライバー指揮の「英雄」は、かつて「戦時中のフルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルの録音ではないか?」と噂されたものである。事の発端はイギリス・フルトヴェングラー協会の会長であり、ユニコーン・シリーズの仕掛け人でもあったポール・ミンチン氏が同協会の会報でこのシュライバーの演奏に触れたことによるものらしい。しかし、お聴きのようにこのシュライバー盤の解釈はフルトヴェングラーとは似ても似つかぬものである。その後、この演奏についてはカラヤン、コンヴィチュニー、カイルベルトらの説が流れたが、確定はされていない。なお、このCDRはイギリス・アレグロ盤から復刻したものだが、アメリカ・アレグロ(番号は3113/1954年頃発売?)とは中身が違うとの情報もある。さらに驚くことに、このシュラーバー指揮、ドレスデン盤はイギリス・ピックウィックよりCD化されていたのである(SMC61)。しかも、このSMC61は明らかにステレオ録音であり、かつて流布していた演奏、つまりこのディスクのものとは全くの別演奏なのである。これにより、このシュライバー盤の謎は、いっそう深まったとも言えよう。※おことわり:原盤には音ゆれや種々のノイズが混入しています。   【平林直哉】
SEDR-2034
(1)ブルックナー:交響曲第9番(原典版)
(2)ワーグナー:「ニュルンベルクのマイスタージンガー」〜徒弟たちの踊りと名歌手の入場*
(3)ワーグナー:「神々の黄昏」〜ジークフリートのラインへの旅*
(4)R・シュトラウス:「サロメ」〜7つのヴェールの踊り
ブルーノ・ワルター(指)VPO、
ブリティッシュSO*、BPO#

録音:(1)1953年8月20日、(2)1932年3月、(3)1932年4月、(4)1930年2月
原盤:(1) Private archive、
(2) Columbia(仏)LFX329
 (CAX 6398-2)、
(3) Columbia(米)68101-D
 (CAX 6385-2、 6386-2)、
(4) Columbia(米)67814-D
 (WAX 5444/5)
ブルーノ・ワルターは1953年のザルツブルグ音楽祭で2度ウィーン・フィルを指揮している。最初は8月19日で、プログラムはウェーバーの歌劇「オベロン」序曲、モーツァルトの交響曲第38番「プラハ」、そしてメインがブルックナーの交響曲第9番だった。2度目は翌8月20日で、メインは同じくブルックナーの第9、そして前半にはベートーヴェンの交響曲第2番が演奏されている(開演は両日とも午後8時)。ワルターと他の同時代の指揮者たちがブルックナーの交響曲を知り始めた頃、楽譜は悪名の高い改訂版しか存在しなかった。のちに原典版が出版されるとクナッパーツブッシュ、フルトヴェングラーのような例外を除き、当然のことながら多くの指揮者は原典版へと移行していった。しかしながら、改訂版を通過した指揮者たちの演奏は原典版と明記してありながらも、かつて身体に染みついた改訂版の響きが所々に顔を出すケースが多い。ヨッフム、シューリヒト、マタチッチなどはすべてこの例にあてはまるが、これはワルターとて例外ではない。この1953年の第9にも特にティンパニの扱いに改訂版の名残りがあるが、のちのステレオ録音になるとこの改訂版の影響はほとんど前面には出ていない。なお、このライヴ録音には音揺れやわずかなドロップ・アウトなどがある。第2楽章などは繰り返しの部分をコピーをして張り付けて修正するなどの措置が考えられたが、やはりライヴ演奏の1回性を考慮し、そのような編集は行わなかった。後半の3曲はSPからの復刻である。これらの演奏は他のCDでも聴くことが出来るが、過去に出ていたものはノイズをカットしすぎて原音の輝きを失っているように感じたので、自分なりの結論をだすためにあえて復刻してみた。これらの3曲は英コロンビア盤がオリジナルだが、英コロンビア盤は英HMV盤と同様にカートリッジで拾うと高域にかなりきついノイズを生じるので、このCDRではフランス、およびアメリカ・プレスの盤を使用した。   【平林直哉】
SEDR-2035
フルトヴェングラーとヴァイオリニストたち
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲
メンデススゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調
ジークフリート・ボリース(Vn)、
フリッツ・リーガー(指)ミュンヘンPO
ユーディ・メニューイン(Vn)*、
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)BPO*

録音:1955年頃?、1952年5月26日ベルリン・イエス・キリスト教会*
ジークフリート・ボリース(1912-1980)はミュンスター生まれ。15歳からソロ活動をし、のちにフルトヴェングラーに認められてベルリン・フィルの首席コンサートマスターに就任し(コンサートマスター在籍期間は1933-1941、1946-1954)、同楽団を1961年に退任している。ベルリン高等音楽院で教鞭をとり、ピアノ三重奏などの室内楽の活動も行っていた。このベートーヴェンはドイツ・オペラ・レーベル(1113)で出たものが初出と思われる。おそらくは1955年から1956年頃の録音と推定されるが、"100 JahreMuncher Philharmoniker" (Alois Knurr Verlag)の中のディスコグラフィにも録音データが欠落しており、その他あれこれと調査をしたが、結局は詳細については判明しなかった(ご存知の方はご教示願いたい)。なお、今さら言うまでもないが、ボリースの弾いている映像は「フルトヴェングラーと巨匠たち」(ドリームライフ)で観ることが出来る。また、ボリースの未復刻の大曲としてはブルッフのヴァイオリン協奏曲がある(エレクトローラのSP)。フリッツ・リーガー(1910-1978)はボヘミア生まれ。プラハ音楽院でセルに学ぶ。1946年から1967年までミュンヘン・フィルの音楽監督を務め、その後はメルボルン交響楽団の首席指揮者も務めた。ハイドンの交響曲第92、93番(マーキュリー)、シューベルトの「未完成」(アリオラ・オイロディスク)、バッハの管弦楽組曲第2、3番、ラロのスペイン交響曲(ギンペル、以上DG)などがある。メニューインとのメンデルスゾーンについては特につけ加えることはないが、メニューインとフルトヴェングラーはベルリン・フィルの定期公演で1952年5月24日から3日間連続で共演している。初日の24日はこのディスクのホ短調の協奏曲、そして25日は同じくメンデルスゾーンのニ短調の協奏曲、そして3日目の26日はベートーヴェンの協奏曲がそれぞれ演奏されている。この録音はその3日目の本番前のセッションだが、なかなか過密なスケジュールだったようだ。   【平林直哉】
SEDR-2036
ブラームス:交響曲第4番 ハンス・クナッパーツブッシュ(指)ケルンRSO

録音:1953年5月8日ケルン
原盤:Private archive
ブラームスはクナッパーツブッシュの演奏の中でも特に個性的なものとして知られているが、これまで発売されたLP、CD等は音質が今ひとつ冴えないので、その真価を堪能するまでにはいたらなかったように思う。ところが最近入手したテープは状態がかなり良く、ごく一部に音のカスレや揺れ、または小さな音で別の音楽が聴こえてくる部分(第1楽章の後半部分など)もあるが、全体的には十分に鑑賞に堪えうると判断し、CDR化を決断した次第である。この演奏は初出以来1957年と明記されていたため、いまだに1957年と記されたCD等があるが、1957年のこの曲の演奏は存在しない。クナはブラームスの交響曲第3番を得意とし、現在では戦前から最晩年にいたる7種類もの録音が確認されているが、この第4番のライヴもあと1、2種類程度は揃って欲しいものである。ちなみに、クナのブラームスの交響曲では一番演奏回数の少ないのは交響曲第1番で、これは1940年代を最後に、彼のレパートリーからは脱落してしまっている。  ※この音源はSEDR-2019で出ていたものと同一です。 【平林直哉】
SEDR-2037
(1)ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」
(2)ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」
(3)ベートーヴェン:ロマンス第2番ヘ長調
(4)バッハ(ヴィルヘルミ編):G線上のアリア
(1)アドルフ・ブッシュ(Vn)*、ルドルフ・ゼルキン(P)
(2)ジャック・ティボー(Vn)、アルフレッド・コルトー(P)、
(3)(4)ジャック・ティボー(Vn)、ハロルド・クラクストン(P)

録音:(1)1933年5月、(2)1929年5月27-28日、
(3)1925年11月25日、(4)1927年2月14日
原盤:(1)London、 Victor (米) 8351/3
(2)B6702T、 6703U、 6704U、 6705T、 6706U、 6707U)、
(2)HMV (Italy) DB1328/31 (CS3716V△、 CS3717U△、 CS3718V△、 CS3719T、 CS3720U△、 CS3721T△、 CS3722U△、 CS3723V△) 、
(3)HMV (France) DB904 (Cc7400U△、 Cc7401T△)、
(4)HMV (France) DB1017 (Cc9913U△)
このCDRに含まれたブッシュの演奏はSEDR-2015(2002年)、ティボーはSEDR-2018(2003年)でそれぞれ出ていたものの再発売である。ブッシュ、ティボーの両者ともに全盛期は戦前と言われている。ブッシュは戦時中にナチスから逃れ、のちにアメリカに移住するが、新天地での生活は決して平坦ではなかったようだ。地位、名誉、財産等を捨て、さらには日常会話では母国語を失うというさまざまなストレスにより、アメリカでのブッシュの健康状態は必ずしも良好ではなかった。それが演奏に影響を与えたのは無理もないことである。なお、ブッシュは1941年にアメリカ・コロンビアに「クロイツェル」を録音しているが、このディスクの「春」と比べるとやや精彩を欠いている。一方のティボーは練習嫌いで知られたため、技術的な衰えは意外に早かったとも言われている。たとえば、1953年のライヴであるブラームスのヴァイオリン協奏曲は痛々しいほど衰えているが、ほぼ同じ頃のラロやモーツァルトはそれほど崩れてはいないので、演奏の頻度にもよるのであろう。また、この「クロイツェル」には珍しくイタリア盤を使用している。使用した理由はごく単純で、SP盤をたまたま安く手に入れ、テストしてみたところ予想以上の結果が得られたからである。ブッシュの「春」もイギリスHMV盤ではなくアメリカ・ビクター盤を使用している。私自身の考え方としては、オリジナルや初版かどうかが問題ではなく、結果として良い音、聴きやすい音に仕上がればそれで十分だと思っている。    【平林直哉】
SEDR-2038
ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付」 ガリーナ・ヴィシネフスカヤ(S)、
ニーナ・ポスタフニチェーヴァ(Ms)、
ヴラディミール・イヴァノフスキー(T)、
イヴァン・ペトロフ(Bs)、
アレクサンドル・ガウク(指)モスクワRSO、
ソビエト国立アカデミーcho

録音:1952年
※原盤:Melodiya ND 03652/4
ロシア史上初の第9、ロシア語による歌唱!このディスクの演奏は、公式録音としてはロシア史上初めての第9の録音である。第4楽章はロシア語の歌唱だが、過去にはこの第4楽章のみがCD化されたこともあるが、全曲のデジタル化は世界初である。ガウクの指揮はテンポこそ大きく揺れたりはしないが、オーケストラが本来持つ独特の音色が随所に顔を出している。また、響きにより厚みや輝かしさを持たせるために、たとえば第2楽章にはっきりと聴き取れるように、全曲に渡ってオーケストレーションをかなり変更しているのも特色である。
ガウク(1893-1963)はオデッサ生まれ。ペトログラード音楽院でチェレプニンとグラズノフに師事。レニングラード音楽院ではあのムラヴィンスキーにも教えている。ソビエト国立交響楽団、モスクワ放送交響楽団の音楽監督を務め、モスクワ音楽院で教鞭をとった。録音はロシア物を中心に多量に行っており、リヒテル、ネイガウス、ギレリス、コーガン、オイストラフなどのソリストの伴奏を行ったものも多い。
ヴィシネフスカヤ(1926-)はレニングラード生まれのソプラノ歌手だが、世界的なチェリスト、ロストロポーヴィチ夫人としても有名。1952年にボリショイ劇場の専属歌手となり、ロシア・オペラはむろんのこと、ヴェルディも得意とし、オラトリオや歌曲でも活躍した。ペトロフ(1920-)はロシアを代表するバス歌手で、ムラヴィンスキー指揮のショスタコーヴィチの「森の歌」のレコードでも有名。1959年、初来日。他の2人の歌手の経歴は不明。なお、合唱指揮はアレクサンドル・スヴェシニコフ。 ※LPより復刻しており、LP特有のノイズが混入します。(平林直哉)
SEDR-2039
カリンニコフ:交響曲第1番*、
グラズノフ
:演奏会用ワルツ第1番/第2番、
抒情的な詩Op.12# 
ナタン・ラフリン(指)モスクワRSO*、
サミュエル・サモスード(指)モスクワRSO、
ボリショイ劇場O#

録音:1952年*、1956年、
音源:Westminster WL5136*、
Melodiya 33ND3370/71
カリンニコフの交響曲第1番は20代でこの世を去った作曲家の代表作で、1894年から翌年にかけて書かれ、1898年2月8日、キエフにてアレクサンドル・ヴィノグラドスキーAlexander Vinogradsky (1855-1912)の指揮で初演された。この交響曲はCD時代になってからスヴェトラーノフ、ドゥダロワ、ヤルヴィ、クチャルなどの指揮者の演奏が流布するにつれ、急速に人気が高まった作品のひとつである。ここに初めてデジタル化されたラフリン盤はオリジナルはメロディア録音(D0385/6、 022338/47)だが、このCDRではウェストミンスターがメロディア音源を ライセンス発売していたLPを復刻に使用している。ラフリンの指揮は何と言ってもそのむせ返るようなロシア色が魅力的である。たとえば第3楽章のトリオなど、実に田舎風だ。だが、聴きものは第4楽章だろうか。この楽章はスヴェトラーノフが7分54秒に対し、このラフリンは10分45秒と3分弱の差があり、非常に遅い。しかも、遅いだけではなく途中でガクンと減速したり、コーダはいっそうテンポが落ち、それに加えて金管楽器が咆哮するなど、それはまさに“ロシアのクナッパーツブッシュ”と言っても良かろう。また、スコアにはないシンバルを追加している点にも注目したい。 ラフリン(1905-1979)はウクライナ国立交響楽団、ソビエト国立交響楽団などの指揮者を歴任したが、ショスタコーヴィチの交響曲第11番を初演した指揮者としても知られている。サモスード(1884-1964)は最初チェリストとして活躍し、一時はカザルスにも師事していた。のちに指揮者に転向し、マリンスキー劇場、ボリショイ劇場の指揮者として活躍した。彼もまたショスタコーヴィチの歌劇「鼻」を始め、プロコフィエフなどの作品を数多く初演している。(平林 直哉)
SEDR-2040
グラズノフ:祝典序曲、バラードOp.78、
交響詩「ステンカ・ラージン」Op.13*、
ベートーヴェン:交響曲第1番
ニコライ・ゴロワノフ(指)モスクワRSO

録音:1951年、1947年*、1948年#、
音源:Melodiya C10-14667、
Melodiya 33D-025856(a)、
Old Melodiya D-516/7、
Melodiya D-012713
「祝典序曲」は、ゴロワノフならではの噴射力で圧倒!「1812年」で聴かせた天空を駆け抜けるよぅな音の塊の放射は眩いばかりで、強弱の減衰は吸引力満点。オケ全体をひとつの巨大な楽器と変貌させて縦横無尽に共感のたけを容赦なく表現し尽くすゴロワノフの面目躍如。ベートーヴェンともなると完全に今まで抱いていたこの曲のイメージをぶち破って異次元に誘います。第1楽章序奏部はただ濃密なだけでなく、メルヘンの世界!決して思いつくではなく、確固とした表現として見事の制御されているので、訴えかける力を孕んでいるのです。主部は猛烈なスピード。スルスルと滑りこむ管楽器フレージングなどは従来のイメージとはあまりにも異なりますが、そうせずにはいられないほどのスピード感と求心力を兼ね備えたフレージングのうねりは、体裁を取り繕った演奏とは比べものにならない手応え。第2主題で突然テンポが落ちますが、それにも一切嘘がないのです!第2楽章冒頭の美しさもお聴き逃しなく!どんなにベートーヴェンの音楽を神格化しようとも、この美しさを感知できないのでは、何のために音楽を聞いているのか分かりません。【湧々堂】
CDRでゴロワノフの第1巻を発売して以来、ずいぶんと時間が経過してようやく第2巻にたどりついた。まず、このディスクのグラズノフ3曲は初のデジタル化である。この中で最初の2曲である祝典序曲、バラードは演奏内容、および使用原盤ともに全く問題がないと思う。しかしながら、SP盤(78回転)から復刻した「ステンカ・ラージン」は残念ながら盤の状態に難がある。これに替わる盤を過去15年近く探していたが、とうとう巡り会うことはなかった。今回ディスク化するにあたってこの「ステンカ・ラージン」は予定には入れていなかったが、改めて聴き直し、その個性的な表現を考慮して最終的には加えることにした。希少性ゆえにご容赦を願う次第である。
一方のベートーヴェンは私が知る限り、1995年10月にキングレコードがCD化(KICC-2396)して以来、久しく市場からは消えていたように思う。ロシアの指揮者のベートーヴェンということで、CD化される機会がなかったようだ。だが、演奏は知る人ぞ知る怪演奏である。宇野功芳氏はこの演奏について「教養がない演奏」と述べているが、これは教養とは無関係と思う。むろん、これを聴いて共感よりも嫌悪を感じる人の方が一般的には多いに違いないが、これはまぎれもなくゴロワノフ独自のものである。このベートーヴェンは復刻に際して3枚のLPを入手した。最初は古い25pのLPだったが、これはノイズがあまりにも多く、使用には不向きだった。2番めに手に入れた30pのLPはかなり状態が良く、これでいったんは作業を進めた。だが、その直後、都内某所でより状態の良いLPを発見し、やや高額ではあったがそのLPを入手、それを使用して作業をやり直した。(平林 直哉)

SEDR-5000
ベルリオーズ:幻想交響曲、
モーツァルト
:アイネ・クライネ・ナハトムジーク*
オスカー・フリート(指)ソビエト国立SO、
ベルリン国立歌劇場O*

録音:1937年、1928年*
音源:独Eurodisc 88329XAK、
独Polydor66669/70
(322bc、468be、324/325be)*
超奇怪な表現が続出!世にも恐ろしい幻想交響曲。これまたとんでもない録音が埋もれていたものです!フリートは、マーラーの「復活」を初録音した指揮者として知られます。「幻想」第1楽章冒頭は空前絶後の低速でいきなり亡霊モード。終楽章では音程がメチャクチャの鐘が荘厳に打ち鳴らされ、それがかえって地獄絵図の様相を呈します。アカデミックなスタンスときっぱりと決別したアプローチの徹底振りには最後まで翻弄されること必至!モーツァルトも終楽章冒頭を装飾音風にアレンジするなどユニークなニュアンスが横溢!録音状態もそんなニュアンスをたっぷりと伝えています。【湧々堂】

SEDR-5001
ベルリオーズ:幻想交響曲、
ラヴェル
:ラ・ヴァルス*、
フォーレ:パヴァーヌ*
ポール・パレー(指)
コンセール・コロンヌO、デトロイトSO*

録音:1950年12月4日-6日、1953年12月7日*
音源:VOX(米) PL 6950、
Mercury (米) MG 50029*
パレーの幻想交響曲といえば1959年にデトロイト交響楽団を振ってマーキュリーに入れたステレオ録音が非常に有名である。一般的にはこの録音が唯一ものと思われているが、実はコンセール・コロンヌ管弦楽団を振ったモノーラル録音も存在するのである。このLPの録音データはマイケル・グレイ氏より提供されたものによると1950年12月4日、6日、パリのサル・プレイエルでの収録で、5日にはセッションがなかったらしい。ジャケットにも“Copyright 1951 by Vox Productions、 Inc”とあり、録音年とつじつまが合うのでこのCDRもグレイ氏のデータを採用した。また、レーベルには"A Polydor Recording"、 "Rec. in France"と記されているが、フランス・ポリドールから発売された形跡はない。John Huntのディスコグラフィ"A Gallic Trio"(Charles Munch、 Paul Paray、 PierreMonteux)には「1946-1947年、パリ」とあるが、同書が何を根拠にこのように記したかは不明であるし、ジャケットのCopyrightの1951年という表示とも食い違うので、これは誤りであると思う。また、音をお聴きになればおわかりのように、これはSPやアセテート等の録音ではなく、明らかにテープで収録されたものである。レンジの狭いモノーラル録音ゆえにオーディオ的な快感には乏しいが、デトロイト盤よりもいっそう若々しく張りのある演奏であり、いかにも明るくしゃれた味わいを持つオーケストラの音色も聴きものである。 ラヴェルとフォーレはマーキュリーのLPより復刻したもので、このLPにはフランクの「プシュケ」が収録されている。LPの解説には「指揮台の上15フィート(約7.6メートル)につるされた1本のマイクで収録し、セッション中オーケストラは通常の演奏会と同じ位置に着席していた」とある。特にラヴェルはマーキュリーの鮮明な音質とパレーの輪郭をくっきりと描いた解釈とで、非常に冴えた音がしていると思う。【平林直哉】
パレーによる「幻想」は、有名なステレオ録音がこの作品の猟奇的な側面をダイレクトに伝える名演として忘れることができませんが、この知られざるモノラル録音も音の隈取りが極めて明瞭で太く、活力満点。ザッハリヒな凄みという点ではこちらの方が上かもしれません。第2楽章でも優雅さは皆無。強力な音圧が聴き手の鼓膜をダイレクトに刺激し続ける様はトスカニーニも真っ青!第3楽章でも音の張り出し方が強烈ですが、その果敢なドラマ性の表出が実に新鮮で、安穏とした演奏が多い中で、この演奏の価値は際立っています。ティンパニもニュアンス満点。終楽章もパレーの芸風を偲ぶにはうってつけ。モノラル特有のレンジの狭さを越えてこの楽章の激性を余すところなく伝えています。「ラ・ヴァルス」がミリタリー調に響くのはステレオ盤と同様ですが、5:10からの最弱音の囁き方、5:51に突然現れるルフト・パスゼは衝撃的。いつもの快速インテンポを基調とした進行が続きますが、決して音楽が単調化しないところがパレーならではのマジック!快速といえばフォーレの「パヴァーヌ」。実はこのディスクの最大の聴きものとして声を大にしてお勧めしたいのはこれなのです!なんと演奏時間は5分に満たず、アゴーギクを感じさせずにどこまでもすらすらと流れる演奏ですが、その流れの気品、アンサンブルの精緻さ、声部の美しい融合など、このデリケートな作品に必要な全ての要素が見事に凝縮され、聴く側もその一筆書きのよなしなやかな流れに自然と呼吸を合わせ、純潔を際めたフレージングに吸い込まれてしまうのです。デトロイト響との録音でこれほど弱音の美しさを印象付ける演奏も他に知りません。特に弦のピチカートの憂いのある響きはどうでしょう!まさに幻のように目の前をかすめて行くこの演奏。その不思議な余韻も含め、ちょっと他には類を見ない魅力です。  【湧々堂】

SEDR-5002
チャイコフスキー:交響曲第5番 エフゲニー・ムラヴィンスキー(指)レングラードPO

録音:1956年6月ウィーン・コンツェルトハウス大ホール
音源:DG(Germany) LPM 18333
1956年4月から5月にかけてムラヴィンスキーとレニングラード・フィルはドイツ、スイス、オーストリアに演奏旅行に出かけた。その最後の訪問地であるウィーンでこの交響曲第5番を含む後期3大交響曲がドイツ・グラモフォンによって録音されたが、なぜか第4番のみ同行したザンデルリンクが指揮を担当した。ムラヴィンスキーとレニングラード・フィルは1960年秋にヨーロッパ公演を行い、その際には同じくドイツ・グラモフォンによって後期3大交響曲の全てがムラヴィンスキーによってステレオ録音された。3曲ともムラヴィンスキーの指揮であり、しかもステレオ録音となると、このモノーラル盤は商品価値が低いとみなされ、その後長くカタログから消え、ようやく復活したのはCD時代になってからである。この録音は発売された当初から音質に難があるとされていた。しかし、当時の録音特性を調査し、それを元に注意深くリマスタリングを行った結果、かなり聴きやすい音質を得ることが出来た。もちろん、元々のややこもり気味な傾向はそれほど変わりはないが、弦楽器は思った以上に艶やかに鳴り響き、金管楽器の腰の強い輝きにも改めて感心した次第である。 このドイツ・グラモフォンのムラヴィンスキーの録音についてはほとんど何も伝えられていない。わずかに知られていることと言えば、たとえばステレオ録音の際にはムラヴィンスキーが終生貫き通したオーケストラの古い配置が、恐らくは録音技師の要請によって変えられたことである。もうひとつは、ステレオによる後期3大交響曲集が完成して以来、ドイツ・グラモフォンはムラヴィンスキーに対して交響曲第1番から第3番の3曲を録音し、チャイコフスキーの交響曲全集を完成させるように何度も要請していたことである。(平林 直哉)
SEDR-5003
ブラームス:交響曲第4番、
ワーグナー
:「ローエングリン」第3幕前奏曲、
「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕前奏曲、
「タンホイザー」序曲、
「ワルキューレ」〜ワルキューレの騎行
ポール・パレー(指)デトロイトSO

録音:1955年3月26日、1953年2月13-20日
音源:Mercury (米) 1-4 MG 50057、
5-8 MG 50021
パレーがマーキュリーに録音したワーグナーの管弦楽曲集は、すべて最初にモノーラルで発売されている。しかし、その中でステレオで収録されたものはのちにステレオLPで発売され、さらにこのステレオ録音はCD化もされた。しかしながら、モノーラルで録音された方はある時期以降は全く再発売されていない。もちろん、ステレオとモノーラルでは大きく違うわけだが、モノーラルの方の演奏内容が著しく落ちるということではない。それどころか、この男性的な迫力に満ち、きりりと引き締まった冴えた音を聴いていると、CDR化して良かったと心底思う。
  ブラームスの方は唯一の正規録音で、目下のところパレーのブラームスを聴こうとすればこれしかない。この演奏はかつてアメリカでプライヴェートCDR盤が発売されたが、このCDRはなぜかアメリカ以外には出荷しないので、国内では事実上初CDR化となる。演奏はワーグナー同様、端正で力強いが、第4楽章をはじめ、意外にテンポが揺れる場面も少なくない。なお、第2楽章の7分30秒付近では音が歪むが、これはオリジナル通りである。(平林 直哉)

SEDR-5004
チェリビダッケの芸術/ベートーヴェン&ベルリオーズ
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲、
 「エグモント」序曲、
ベルリオーズ
:序曲「宗教裁判官」
セルジュ・チェリビダッケ(指)
ローマ放送O、BPO*、ベルリンRSO#、
ヴォルフガング・シュナイダーハン(Vn)

録音:1954年1月30日、1951年*、#
※音源:Electrecord (Rumania)
ELE 02957、
Period (米) SPL 716
(Soundtrack from the film
"Botschafter der Musik")*、
Urania (米) URLP 7024#
このCDRは若きチェリビダッケの珍しい録音を集めたものである。協奏曲は伴奏とはいえその若々しさのみなぎる表現は聴きものであろう。指揮者の気迫に押されたのか、シュナイダーハンも実に訴求力の強い演奏を繰り広げている。また、シュナイダーハンは1953年の録音(ケンペン、フルトヴェングラー)ではヨアヒムのカデンツァを、そして後年のヨッフムとの録音(1959、62年、DG)ではベートーヴェン自身のものを独自に編曲したカデンツァをそれぞれ使用しているが、この演奏では珍しくヨアヒムのものを弾いている。復刻に使用したエレクトレコードはメロドラム(MEL 201)からのライセンス契約盤のようだが、そのメロドラムのLPよりも聴きやすいとの説もある(ただし、このエレクトレコードは録音年が1956年と誤記されている)。
 「エグモント」序曲は有名な映画「フルトヴェングラーと巨匠たち(原題「音楽の使者たち」)のサウンドトラックである。フィルムの音声なのでもともと音質は良くないが、それでも初出LPの重量プレスから復刻した音質は予想以上に聴きごたえがあり、当時のチェリの凄さを偲ぶのに十分である。ベルリオーズは目下のところチェリのディスコグラフィでは唯一のもの。たいへんに貴重であると同時に、演奏も素晴らしい。(平林 直哉)

「エグモント」は、若き日の才気が炸裂!主部の突進力はこの時期のチェリならではの魅力ですが、弱音の部分で精緻で贅肉を削ぎ落とした響きは後年のチェリのこだをりを窺がわせます。アンサンブルの強固な凝縮ぶりも見事。コーダでティンパニをロールに変更しているのも特徴的。演奏スタイルの時代性にとらわれず、洗練された凄みを表出する同曲の演奏スタイルの典型を示すものとして忘れられない演奏です。
ベルリオーズは、序奏部の金管の斉奏にまずご注目。いかにもドイツ的で腹に響く音色が実に魅力的。伝統的なドイツ軍楽隊特有のあの響きを愛する方は必聴!主部のテーマのスタイリッシュでありながら清々しいニュアンスも何度聴いても素晴らしく、このフレーズがこんなに美しかったかと思い知らされます。リズムの躍動感は絶頂期のシューリヒトのように有機的に息づき、和声のバランスは常に鉄壁。ベルリオーズの序曲の中では地味な存在ですが、これは同曲の間違いなくベスト演奏!
メインの協奏曲は超絶品!なぜ今までこんな逸品が埋もれていたのか、怒りさえ覚えます。まずオケの導入は完全なインテンポで進行しますが、常に音に意志が漲り、響きも雄渾で手応え満点。これは単なる偶然の産物ではなく、この引き締まったニュアンスは終曲まで一貫。この曲の伴奏だけに絞っても、この録音が破格の価値を持つと確信させられます。そしてシュナイダーハンがこれまた見事!後年のヨッフムとの録音のときとは別人のように、ニュアンスを積極的に表に出すアプローチでに徹し、テンポの推進力もチェリと張り合う勢い。しかも音色のハリと艶も素晴らしく、音楽の流れを完全に掌握した上での結晶化された緊張の糸が終始途絶えることがないのです。ヨアヒム作のカデンツァに入ると、作品の確信に鋭く迫るアプローチはますます冴え渡ります。なお、イタリアではよくあることですが、第1楽章が終わった途端に拍手が湧き起こります。第2楽章に入っても安らぎに浸らず、常に音楽が立っています。この研ぎ澄まされた弱音の緊張感!これはやはり一般的なシュナイダーハンのイメージと大きく異なります。後半5:09からのオケのピチカートに乗せたヴァイオリン・ソロの音程の正確さ、そして呼吸のなんというしなやかさ!インテンポで活力に満ちた終楽章もあまりにも見事。やや強めの弓圧も功を奏し力感も満点ですが、強弱にレンジもますます豊かとなり、迫真の表現が続きます。全体を通じて、オケとヴァイオリン・ソロは一心同体と言うよりも一定の距離を置いているようで、それがかえって絶妙な緊張を生んでいる点もポイントです。  【湧々堂】
 
SEDR-5005
ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)VPO、
ウィーン・ジングアカデミーcho、
イルムガルト・ゼーフリート(S)、
ロゼッテ・アンダイ(A)、
ユリウス・パツァーク(T)、
オットー・エーデルマン(Bs)

録音:1951年1月7日ウィーン・ムジークフェライン大ホール
音源:Fonit Cetra (Italy) FE 33
その昔、日本の絵画の価値を最初に認めたのが外国人であったのと同じく、フルトヴェングラーの放送録音の価値を見出し、それらを積極的に世に送り出したがったのはヨーロッパ大陸以外の人々だった。たとえば、旧ソ連メロディアのフルトヴェングラーのLPが初めて雑誌に紹介されたのはアメリカの『ハイ・フィデリティ』誌だった。そして、それらのソ連盤LPを世界中に流布させたのはイギリスのレコード・ハンター社だった。このソ連盤発掘は世界中に衝撃を巻き起こし、その後はアメリカではワルター協会が、そしてやや遅れてイタリアのレーベル、フォニット・チェトラもフルトヴェングラーの録音を精力的に発売した。これらのレーベルは現在では非正規盤という位置付けがなされ、そのレーベルから発売されたLPはもはや過去の遺物ともみなされている。しかしながら、今になってこれらのLPを冷静になって聴いてみると、近年発売されているCDよりも聴きやすいと感じるものは決して少なくない。特にフォニット・チェトラが発売したFE番号のシリーズは音質の明瞭なものが多く、しかも盤質も非常に安定しており、、そうしたフルトヴェングラーのLP起こしを継続的に行ってみたいと思った次第である。
この第9公演は1951年1月6日、7日、8日の三日間行われたが、当ディスクの演奏はその2日めのものとされるものである。この公演の前後にはHMVのチャイコフスキーの交響曲第4番の収録も併行して行われており、特に8日には第9の本番とチャイコフスキーのセッションとの両方が行われている(Grand Slam GS-2014の解説参照)。この第9は特に逸話などが知られていないためか、フルトヴェングラーのディスクの中ではそれほど話題にはならないが、改めて聴き直してその気力の充実した表現に魅了されたしだいである。(平林直哉)
SEDR-5006
ブラームス:交響曲第3番、
ワーグナー:ジークフリート牧歌
ハンス・クナッパーツブッシュ(指)BPO、VPO*

録音:1944年9月9日、1949年8月30日
原盤:Melodiya(露)D 06429/30、
Melodram (伊) MEL 711*
この演奏と同じブラームスの交響曲第3番を含むSEDR-2020(2003年発売)は原盤提供者との契約ですでに廃盤となっている。その時に復刻に使用したLPはブラームスの交響曲第3番とブルックナーの同第4番「ロマンティック」を2枚に詰め込んだものだったが、今回復刻したブラームスは、ゆったりとLP1枚両面にカッティングしたものを使用している。音質はSEDR-2020と比較して演奏の印象を大きく変えるほどの違いがあるとは言えないものの、やはり36分程度の曲をLP1枚両面にカッティングしたこのディスクの方がゆとりが感じられる。このブラームスがクナお気に入りの作品だとすれば、このジークフリート牧歌もまた彼がこよなく愛したものだった。吉田光司著『クナッパーツブッシュ・ディスコグラフィ』(キングインターナショナル)によると、この曲の録音はこれまで7種類が知られているが、このディスクに収められた演奏は目下のところ最古のもとして知られている。しかも、この演奏は世界初CDR化である。この日は周知の通りブルックナーの交響曲第7番が演奏されているが、ジークフリート牧歌は編成が小さいせいか非常に鮮明に収録されていたことは幸いだった。(平林 直哉)
SEDR-5007
ブルックナー:交響曲第5番(原典版) ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)VPO

録音:1951年8月19日ザルツブルク祝祭大劇場
音源:Discocorp RR 314(米)
この演奏はすでにEMIクラシックスから正規盤が発売されているため、あえて競合盤を出す必要がないと思う人もあろう。しかしながら、以下の2点の理由で出す意義があると判断した。まずひとつは、第1楽章の9分43秒、9分52秒のようなホルンのミスがEMI盤ではきれいに修正されていること。もうひとつは、EMI盤は全体的にノイズ・カットが過剰であり、必ずしも最上の復刻とは言えないということである。EMIのバイロイトの第9は本番とリハーサルのテイクが編集されているが、最終的にどちらのテイクを使用してもフルトヴェングラーの演奏であることには変わりはない。しかし、この場合は元がノン・ストップの放送用録音であるため、修正した部分は人工的に作られたか、他人の演奏を挿入してあるのではないかと疑われても仕方がない。音質に関しては個々人の好みの違いがあるので断定的には言えないが、いわゆる熱心な聴き手は出来るだけ原音に忠実な音質を好むので、このディスクを聴いて今までとは違った印象を抱く人も多いのではないかと推測する。この演奏はカナダ・ロココによって初めてLP化されたが、このロココ盤(ロココのライセンス盤である日本コロムビアDXM-179/80も同様)の音質は芳しくなかった。復刻の候補としてあがったのはチェトラ FE42とこのディスココープ盤で、甲乙はなかなか付けがたかったが、最終的には中低音が豊かで聴き疲れのしない後者を選択した。(平林 直哉)
SEDR-5008
チャイコフスキー:交響曲第5番、
ワーグナー
:「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)
トリノ・イタリアRSO

録音:1952年6月6日(音源:米Discocorp DIS 3702)、
1952年3月11日*(使用音源:伊Fonit Cetra FE 43)
このチャイコフスキーは宇野功芳著『フルトヴェングラーの全名演名盤』(講談社+α文庫、絶版)の中でも「これは数多いフルトヴェングラーのCDの中でも、おそらく最悪のものではあるまいか」と指摘されているように、一般的にも評価は高くない演奏である。たしかにオーケストラの魅力はベルリン・フィルやウィーン・フィルとは比較にならないし、第4楽章の大幅なカットもマイナスであろう。しかしながら、フルトヴェングラーのこの曲の録音はこれが唯一のものであるし、冷静になって聴き直してみると、フルトヴェングラーらしい個性が随所に聴かれ、決して悪いものではないような気がする。音質ももともとデッドではあるが、復刻に使用したディスココープ盤は思いのほか肉厚な響きである。また、シールドされた新品を使用したのだが、アメリカ盤はもともと盤質が良くなく、その盤に起因するノイズが多少混入する。また、第2楽章で部分的に音量が下がったり、音揺れ等も含まれるが、これは修正出来なかったことをご了承いただきたい。ワーグナーは1947年の「トリスタンとイゾルデ」抜粋(ベルリン国立歌劇場管弦楽団)の3枚組LPに付録のような形で収録されたものである。もともとそれほど音質は鮮明ではないが、それでも他のCDよりもずっと自然な音であると思う。(平林 直哉)
 
SEDR-5009
ベートーヴェン:交響曲第1番、
交響曲第6番「田園」
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)
BPO、ローマ・イタリアRSO*

録音:1954年9月19日(RAI)、1952年1月10日*
※音源:Movimento-musica(伊)08.001、
FonitCetra(伊)FE5*
第1番は言うまでもなくフルトヴェングラーの生涯最後の演奏会の記録で、イタリアのMovimento musicaより1981年に初めてLP化された。その後、この演奏は国内でもLP化され、CD時代になってからTahraやドイツ・フルトヴェングラー協会からも発売されている。最後のライヴ故に演奏内容は枯れきっており、音質もいかにも地味な印象だった。今回CDR化するにあたってさまざまなLPやCDを比較試聴したが、意外にもこのMovimento musica盤は一番明瞭であった。聴いてみると、たとえばTahraや協会盤は高域のテープ・ヒスを気にしたのか、その帯域をカットして聴きやすくしているように思うが、そういった処理はノイズを減らすと同時に響きの成分も失っているような気がする。
第6番「田園」はアメリカ・オリンピックの史上初のベートーヴェン交響曲全集(OL8120、第2番はのちにエーリッヒ・クライバーの演奏と判明)として1974年に初めて登場したものである。最近、この全集からのバラ売(OL8128)の未開封の新品を手に入れ、ここから音を採るつもりであったが、新品にしては盤質にやや難があり、なぜか第1楽章の冒頭に大きな音揺れがあった。チェトラ盤(FE5)はオリンピック盤よりもやや軽い音質ではあるが、盤質は良好であり、第1楽章冒頭部分も正常なので最終的にはこれを素材とした。(平林 直哉)
 
SEDR-5010
ベートーヴェン:交響曲第2番、
交響曲第7番*
カール・シューリヒト(指)ベルリンRIAS響、
オットー・クレンペラー(指)スイス・ロマンドO*

録音:1953年11月19日、1957年3月6日*
1981年にMovimento Musicaから発売された「9人の指揮者によるベートーヴェンの交響曲全集」は一部のマニアでは話題となった。その内訳は、第1番=フルトヴェングラー、第2番=シューリヒト、第3番=ワルター、第4番=ベーム、第5番=E.クライバー、第6番=ヨッフム、第7番=クレンペラー、第8番=クナッパーツブッシュ、第9番=カラヤンであり、音源としても当時大半が初登場となるものだったと記憶する。しかし一方で、特定の指揮者のファンが手を出し辛いということもあったようで、その全貌を知る人もまたそれほど多くはなかった。この全集の音源はその後他レーベルからも発売されているが、全体的な音質は思った以上に優れていたことである。 その中ではこのシューリヒト指揮の第2番とクレンペラーの第7番は他の復刻盤も少なく(クレンペラーはこのLPが唯一?)、貴重である。なお、第7番のデータは全集LPの解説書には「1955年3月4日、ローザンヌ」とあるが、"Otto Klemperer hislife and times Volume 21933-1973"(Peter Heyworth、 Cambridge University Press)の巻末にあるディスコグラフィによると(ディスコグラフィはマイケル・グレイの制作)、このディスクの表記が正しいという。(平林 直哉)
SEDR-5011
ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」、
ピアノ協奏曲第4番
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)
ローマ・イタリアRSO、
ピエトロ・スカルピーニ(P)

録音:1952年1月10日、1952年1月29日*
※音源:Olmypic(米)、
Fonit Cetra(Italy)FE2*
交響曲の方は1974年秋、アメリカ・オリンピックから発売されたベートーヴェンの交響曲全集(OL-8120)に含まれていたもので、これは同年12月に国内でも発売された(日本フォノグラム SETC-7501〜7)。復刻に使用したのはオリンピックのバラ売りLPである。この演奏はその後イタリア・フォニット・チェトラからも発売されているが、このオリンピック盤はチェトラよりも腰の強い、いかにもフルトヴェングラーらしい音質である。
 協奏曲は1976年、Educational Media Associates(通称ワルター協会)RR-441のLPが初出である。裏面にはハイドンの交響曲第104番「ロンドン」、1944年、ベルリン・フィルとの録音が組み合わされていたが、周知の通りこれは後に別人の演奏と判明した(国内盤は1978年6月、同じ組み合わせで日本コロムビアよりOZ-7550として発売された)。この協奏曲はのちにフォニット・チェトラからも発売されたが、これはRR-441とは違ってこの協奏曲のみをLP両面にゆったりとカッティングしたものだった。むろん、音質もこのチェトラ盤の方が優れており、復刻にはこれを使用した。
 ピエトロ・スカルピーニ(1911、ローマ−1997、フィレンツェ)はイタリアのピアニスト。サンタ・チェーチーリア音楽院でカセッラにピアノ、レスピーギに作曲をそれぞれ学ぶ。レパートリーは古典派から現代まで非常に幅広いが、特にヒンデミット、ブゾーニ、スクリャービン、ダラピッコラなどには造詣が深かったと言われる。(平林 直哉)
 
SEDR-5012
トスカニーニ/ファイナル・コンサート
ワーグナー:歌劇「ローエングリン」第1幕前奏曲、
「ジークフリート」より森のささやき、
「神々のたそがれ」〜夜明けとジークフリートのラインへの旅、
「タンホイザー」序曲とバッカナーレ、
「ニュールンベルクのマイスタージンガー」第1幕前奏曲
アルトゥーロ・トスカニーニ(指)NBC響

録音:1954年4月4日(モノラル)
演奏が止まった瞬間の長い沈黙も収めた完全実況生中継版!このディスクはトスカニーニの生涯最後の演奏会をすべて収録したものである。この演奏会の「タンホイザー」序曲とバッカナーレの途中、トスカニーニは記憶障害を起こし、そこで演奏が中断されるというショッキングな出来事が起きたため、トスカニーニは引退を決意したと言われている。この演奏会はよく知られているようにステレオでも収録されているが、そのステレオ版にはその空白の時間が収められていない。しかし、ベン・グラウアーのアナウンスにより生中継されたラジオ放送は、音声そのものはモノーラルではあるが、この空白の時間が克明に記されている。それは突然襲ってくる。長い沈黙のあと、グラウアーが"Due to operation difficulties、 there is a temporary pause of our broadcast from CarnegieHall" (技術上の不手際により、ただいまカーネギー・ホールからの放送が中断しています)と言い、一瞬だが調整室のスタッフが凍り付いているような緊張感も伝わってくる。そして、急きょトスカニーニ指揮のブラームスの交響曲第1番の冒頭部分が流され、しばらくするとようやく舞台上の音声に切り替わり、音楽は再び何事もなかったかのように進んでいく。(表紙の写真はその空白の瞬間を捉えたものと言われている。)(平林 直哉)
SEDR-5013
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲、
ブゾーニ
:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調Op.35a*
アルバート・スポールディング(Vn)、
ジークフリート・ボリース(Vn)*、
ヴィルヘルム・ロイブナー(指)オーストリアSO、
アルトゥール・ローター(指)ルリン放送O*

録音:1952年、1944年7月21日ベルリン*
※音源:Remington(米) R 199.145、
Urania (米) URLP 7043*
知る人ぞ知るアルバート・スポールディング(1888-1953)によるブラームスの美演が蘇った。スポールディングはシカゴに生まれたが、ボローニャ、フィレンツェ、パリで学んでいる。1904年にパリでデビュー、そして1908年にはアメリカ・デビューを果たしている。ピアニスト、オシップ・ガブリロヴィチとしばしば共演し、1950年に引退、1952年まで録音を続けた。レミントンのLPジャケットによると、この録音はウィーンのブラームス・ホール(おそらくムジークフェラインザールのブラームス・ザールと思われる)で収録されたものらしい。コピーライトが1953年になっているが、これは彼の活動した最後の年の1952年に収録されたものと推測される。なお、J.クレイトンの"Discopaedia of the Violin" (Records Past
Publishing)によると、第1楽章のカデンツァはスポールディング自身とのこと。彼は作品もいくつか残しているが、このカデンツァも非常にうまく書けている。また、このオーストリア交響楽団とはウィーン・トーン・キュンストラー管弦楽団がその実体とも言われている。
 ジークフリート・ボリース(1912-1980)はフルトヴェングラー時代のベルリン・フィルのコンサートマスター。彼のベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲(リーガー指揮)はこのシリーズで聴くことが出来る(SEDR-2035)。ボリースの弾いたブゾーニはチェリビダッケとのライヴ(1949年)も存在するが、このウラニア盤LPは意外なことにこの作品の世界で初めてのレコードであった。(平林 直哉)
 
SEDR-5014
ブラームス:交響曲第1番、
ハイドンの主題による変奏曲*
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)BPO

録音:1953年5月18日、1950年6月20日*、ティタニア・パラスト
※原盤:Fonit Cetra (Italy)
FE 13、FE 16*
フルトヴェングラーのブラームス第1というと、カタログ上では1947年のウィーン・フィルとのHMV録音が唯一という状況が長く続いた。この演奏はSP録音という性質上、良く言えば冷静な、そして悪く言えば生煮えのものだった。1976年、そこにドイツ・グラモフォンより発売された1952年2月10日、ベルリン・フィルとのライヴ録音が加わったが、これは長年のファンの渇きをいやす演奏内容だった。それよりやや遅れて登場した翌1953年5月18日、同じくベルリン・フィルとのライヴは、日付が接近していて演奏も酷似していたためか、二番煎じのような印象を与えたのも事実だった。そして、それを今もなお引きずっている感がなきにしもあらずである。この演奏は現在、ドイツ・フルトヴェングラー協会(TMK-005294)などの正規盤CDも発売されているが、その音を聴くと素晴らしいとは思う反面、聴きやすく整音された感じも受ける。その点、このチェトラ盤は元のテープをほとんどそのまま起こしたような雰囲気がある。(中略)ハイドンの主題による変奏曲も1976年、ドイツ・グラモフォンから初めて発売(組み合わせはヒンデミットの「ウェーバーの主題による交響的変容」)された音源と同一である。こちらの方も余計な手間をかけずにLP化されたような、実にすっきりとした音質である。(平林 直哉)
 
SEDR-5015
★★★
TD>
バッハ:ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調BWV.1041、
2つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調BWV.043*、
ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調BWV、1042
ラインホルト・バルヒェット(Vn)、
ウィル・ベー(Vn)*、
ヘルマ・エルスナー(ハープシコード)、
ワルター・ダヴィッソン(指)
シュトゥットガルト・プロ・ムジカ弦楽合奏団

録音:1954年シュトゥトガルト
※使用音源:英VOX PL 9150)
「こんな素晴らしい演奏があったのか!」。最近、このLPを入手した私は針を落としてすぐにこう思った。盤鬼としてはただちにCDR化するしかない。シュトゥトガルト生まれのヴァイオリニスト、ラインホルト・バルヒェット(1920−1962)について、詳しいことはあまり知られていない。何せ彼の名前はハルトナック、シュワルツ、ロートなどが著した有名な著作にさえ出てこないのである。バルヒェットはシュトゥトガルト室内管弦楽団のコンサートマスターやバルヒェット弦楽四重奏団のリーダーとして活躍し、主にバッハ、ヘンデル、ヴィヴァルディの作品を数多く録音している(その大半はヴォックス)。
このバッハは1955年に初めて発売されたものだが、復刻に使用したのはイギリス・ヴォックス盤である。本来ならばアメリカ盤を使用すべきなのだが、当時のアメリカ盤はおしなべて盤質が良くなく、しかも保存状態の悪いものも多い。このイギリス盤はおそらくは英デッカのプレスによるもので、とても半世紀を経過したものとは思えないほどのきれいな状態の重量盤であり、迷わず復刻に使用した。それにしても何と奥ゆかしく控えめでありながら、品格と温かい抒情に溢れた演奏だろうか。この作品のモノーラル録音ではバリリのものが忘れがたいが、このバルヒェットはより正統的な様式で昇華された尽くした名盤と言えるだろう。ダヴィッソン(1885-?)はフランクフルト生まれ。最初はヴァイオリニストとして活躍し、のちに教鞭をとっている。指揮者としては伴奏したものがわずかに残されている。べー、エルスナーの経歴は不明。(平林 直哉)
 

SEDR-5016
チェリビダッケの芸術U
ドビュッシー(ビュッセル編):小組曲、
ルーセル
:小組曲Op.39、
ショパン
:ピアノ協奏曲第2番
セルジュ・チェリビダッケ(指)ベルリンRSO、
ラウル・コチャルスキ(P)

録音:1949年5月、1949年10月*
※音源:URANIA(米)URLP5006、
Rococo(Canada)*
このディスクのドビュッシー、ショパンは現在チェリビダッケのディスコグラフィでは唯一の記録となっており、ルーセルの方もこのディスクの演奏以外には1種類しか残されていない。しかもドビュッシー、ルーセルは今や消滅したレーベルDante/Arlecchino ARL157としてCD化されただけで、一般的にはほとんど知られていない。さらに、ショパンの方は過去にLPしか発売されておらず、CDR化は全く初めてである。
 ドビュッシーとルーセルは1952年に発売されたアメリカ・ウラニア盤の10インチ(25センチ)のLPから復刻している。当時のアメリカ盤は盤質そのものが良くないうえに、保存状態の良いものが非常に少ないことでも知られている。従って、この2曲はややノイズが多いが、たいへん希少なLPからの復刻と言うことでご容赦願いたい。
 ショパンはチェリ・ファンはもとより、ショパンのファンにいっそう注目されよう。弾いているコチャルスキはショパンの弟子カロル・ミクリ(1819-1897)に師事したピアニストであり、これはショパンの孫弟子の模範演奏ということになる。コチャルスキは1884年にワルシャワに生まれた。父の影響で4歳からピアノを始め、1893年には自作曲にてロンドンで演奏会を開いた。その後は主にフランス、ドイツ、スウェーデンで活躍するが、第二次大戦後はポーランドに戻り、後進の指導にあたった。交響曲やバレエ、室内楽曲やオペラなどの作品も残してる。1948年死去。復刻に使用したLPにはオーケストラがベルリン・フィルと記されているが、これはベルリン放送響の誤りである。なお、録音データはJ.ハントのディスコグラフィ“thegreatdictators"に準拠した。(平林 直哉)
※Serenadeは平林氏が良質なアナログ版から復刻したこだわりのCD-Rレーベルです。

まず最初のドビュッシーが絶品!「小舟で」の0:14のハープのつまびきの生彩にびっくり!フレーズがふわふわと揺れながらもしっかりと目の詰まったハーモニーには程良く緊張が孕み豊かな振幅を繰り返します。このビュッセル版によるとくにこの第1曲は、パステル調で極力アクセントを配して横に流れる演奏が大勢を占めていますが、この演奏のように精緻なハーモニー表出によってこの編曲の色彩の素晴しさをここまで具現化してくれた演奏には、かつて出会った記憶がありません。エレガンスを保ったままリズムの生き生きとし息づきが素晴しい「行列」も心を打ちます。古い音にもかかわらず、中間部では色彩の濃淡の描き分けの妙をたっぷり堪能できます。「メヌエット」はただでさえメランコリックな旋律が流れる中、これを支える対旋律、内声の豊かさが着実に音楽の底辺を成して、比類なき質感を誇る音楽に変貌させています。ただなんとなく鳴っているパートなどどこにもありません。終曲もいわゆるドイツ臭さなど微塵を感じさせないリズムの洗練としなやかな推進性が魅力。
このCDのメインと言えるショパンは、その孫弟子にあたるコチャルスキが死の年に録音したもので、待望の音盤化!Pearlレーベル等でも彼の演奏を聴くことができますが、この演奏はさらに枯淡の境地とも言えるしみじみとした味わいが特徴。タッチのまろやかさが最大の魅力で、スタイルそのものは決して古さを感じさず、ある意味クールとさえ言えます。闊達な強弱のメリハリこそ後退していますが、尋常ならざる共感が縦横に息づいているのを感じさせ、ひとひた胸に迫るものがあります。第2楽章でも極端なアゴーギクは用いずこれまた意外なほど情感たっぷりのチェリビダッケの棒と相まって、説得力を生んでいます。終楽章は3拍子リズムの滑らせ方にご注目!まさに血と伝統がなせる業で、この微妙な「揺らぎ」は第2楽章の叙情性も含めて、他ではなかなか味わうことができません。なお、当時としては珍しく短縮版を用いていません。  【湧々堂】
 
SEDR-5017(2CDR)
シューベルト:「ロザムンデ」序曲、
交響曲第8番「未完成」、
交響曲第9番「グレート」*
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)BPO

録音:1953年9月15日ティタニア・パラスト
※音源:Cetra(Italy)FE11、
IGrandiConcerti(Italy)GCL43*
まず、あえて2枚組としたのは当日の演奏会の雰囲気を再現するためである。さらに、音質的な面での大きな収穫は「ザ・グレート」である。この録音は従来、ティタニア・パラストで収録されたライヴの中でも最も冴えないものと言われている。放送局のオリジナル音源を使用してCD化した日本フルトヴェングラー協会盤(WFJ-13/14)も音が冴えない上に疑似ステレオ化され、不自然なエコーが加えられている(ドイツの協会盤LPも基本的にはこのWFJ盤と同傾向の音)。比較的良好と思われるイタリア・チェトラ盤LP(FE 12)も著しく鮮度を欠く。その他、さまざまなレーベルから出ているCDも軒並み音質は良くない。
 ところが、このディスクで使用したLP(IGrandiConcertiGCL-43)は驚くほど鮮明な音なのである!同じくイタリア盤のチェトラがあのような音なので、このGCLも同程度の音質だと思われていたが、実際は全く異なっていた。しかもこのGCL盤はチェトラ盤のように第2楽章の途中で面が切り替わっていない。使用音源についての情報は記載されていないが、いずれにせよ恐るべしイタリア盤である(ただし、このGCL盤のジャケットは日付が9月10日と誤記されている)。
 「ロザムンデ」はフルトヴェングラーが登場する際の拍手が入っており、臨場感たっぷりである。終わりの拍手は音が途切れて不自然だが、特にカットする理由はないのでそのままにしておいた。「未完成」の終わりの拍手もやや唐突だが、これもあえて手を加えていない(以上の2曲、DG盤には拍手はない)。「ザ・グレート」は拍手、インターバル等は入っていない。(平林 直哉)
※Serenadeは平林氏が良質なアナログ版から復刻したこだわりのCD-Rレーベルです。
 
SEDR-5019(2CDR)
ザルツブルク音楽祭1954
ベートーヴェン
:交響曲第8番、
大フーガ変ロ長調Op.133*、
交響曲第7番Op.92#
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)VPO

録音:1954年8月30日ザルツブルク音楽祭(当日の全プログラム)
※使用音源:Cetra LO 530、
Educational Media
Associates RR 520*、
Movimento Musica 01.02#
 フルトヴェングラー演奏会再現シリーズ。当日のプログラム付き。このディスクはフルトヴェングラー指揮、ウィーン・フィル、1954年8月30日(午後8時開演)、ザルツブルク音楽祭における全プログラムを収録したものである。音源に使用したLPはそれぞれの曲の初出で、発売年度は順にLO-530が1979年、RR-520が1976年、01.029が1982年である。交響曲第8番ではやや大きなドロップ・アウト(Disc1のトラック1の1分27秒)や他の音楽の混入、大フーガでは冒頭部分が弱く始まったり、交響曲第7番では楽章ごとに出力に差があったりなどの瑕疵はあるが、それでもなお全体の雰囲気感は主要なCDよりもまさっていると判断し、ディスク化に踏み切った。やはり、一晩の録音が全部揃っている場合、このようにひとつにまとめた方がドキュメントとしての価値はいっそう高まるのではないだろうか。また、大フーガ終了後の拍手も短く唐突ではあるが、元のLPに入っているので、あえてカットせずにそのままにしておいた。
 指揮者の大町陽一郎はこの日の公演とそのリハーサルに立ち会った数少ない日本人である。大町の回想によると、リハーサルではフルトヴェングラーが細部にこだわりすぎ、楽団員が時々ざわついたりして、第三者的に見れば決してうまくいっているように思えなかった。そのため彼は本番の出来を心配したらしいが、それは全くの杞憂に終わったとのことだった。なお、言うまでもないが、この時の公演がフルトヴェングラーとウィーン・フィルの公の場での最後の演奏である。(平林 直哉)
 
SEDR-5021(2CDR)
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲、
交響曲第1番*
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)
トリノ・イタリアRSO、ジョコンダ・デ・ヴィート(Vn)

録音:1952年3月7日
※原盤:Fonit Cetra (Italy)FE 3、
Rococo(Canada) 2017*
このディスクは1952年3月7日、フルトヴェングラーがトリノ・イタリア放送交響楽団を指揮した全公演である。まず、ヴァイオリン協奏曲の方は1972年頃、カナダ・ロココから2027として出たLPが最初で、同一原盤による国内盤LPは1973年1月に日本コロムビア(現コロムビア・ミューッジックエンタテインメント)よりDXM-159として発売された。復刻に使用したのはチェトラのLPである。ロココ原盤は同じくデ・ヴィート/フルトヴェングラーのメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲が組み合わされているが、このチェトラ盤はブラームスのみ1枚のLPにカッティングされており、溝に余裕が感じられる。しかも、嬉しいことに入手したのは未開封盤であった。 交響曲第1番の方はカナダ・ロココより2017として出たLPが世界で唯一のものである(CDは複数のレーベルより発売)。しかし、宇野功芳著『フルトヴェングラーの全名演名盤』(講談社+α文庫/絶版)でこの演奏は「フルトヴェングラーの数多いディスクの中でも最も録音の劣悪なものの一つで、音量も著しく弱く、オケも良くなく、採るべき何ものもない」と評されているように、一般的にも決して評判は良くない。だが、問題はもともとのLPの極端に低い出力レベルにある。これを正常に戻し、相性の良いカートリッジで再生すれば、お聴きにようにかなり印象が変わってくる。従来、この演奏をさほど重要視していない人にこそ聴いて欲しいものである。なお、イタリア・ウラニア URN22.224のCDでは第3楽章の冒頭にわずかではあるが音の欠落があるが、このディスクにはそのような瑕疵はない。また、復刻に使用したLPはヴァイオリン協奏曲同様、新品の未開封盤である。(平林直哉)
 
SEDR-5023(2CDR)
フルトヴェングラー演奏会再現シリーズ IV〜1951年5月1日ローマ
ブルックナー:交響曲第7番(改訂版)*
ドビュッシー:夜想曲#〜雲/祭
R・シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」Op.20+
ワーグナー:歌劇「タンホイザー」序曲++
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)BPO

録音:1951年5月1日、Auditorium del Foro Italico、ローマ
※音源 Cetra (Italy) FE 42*
Private Record BWS 708 #
Cetra (Italy) FE 41+
Discocorp (U.S.A.) RR 413 ++
使用したLPは特に初出にこだわらず、もっとも状態の良いと思われるものを選択した。いつものように盤に刻まれたものは、たとえインターバルの音であろうとも、すべてCDRにそのまま転写している。過去に出たすべてのディスクをチェックしたわけではないが、ブルックナーの交響曲第7番の終わりの拍手はTahraやキングレコードのCD等には含まれていないし、「タンホイザー」序曲の同じく万雷の拍手もドイツ・グラモフォンのLP、CDには含まれていない。』(平林 直哉)
 

SEDR-5025(2CDR)
チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調Op.64 (1)フランツ・コンヴィチュニー(指)ベルリンRSO
(2)アーネスト・マクミラン(指)トロントSO
(3)レオポルド・ストコフスキー(指)フィラデルフィアO(第2楽章のみ)

(1)録音:1951年、音源:URANIA(米) URLP 7134
(2)録音:1953年、音源:RCA CAMDEN(米) CAL 374
(3)1923年4月23日Camden
※音源:Victor(米) 6430/31(C27904-2/05-1/06-2)
このディスクのチャイコフスキーの第5交響曲はすべて世界で初めてCDR化されたものである。演奏史の観点から見るとそれぞれに興味深いが、まずこの曲の唯一の録音となるコンヴィチュニーは、徹底してドイツ風の解釈だ。第1楽章の主部の遅さはあのチェリビダッケを思わせるし、第4楽章の洗練されない遅いテンポはフルトヴェングラーに似ている。また、コーダの全く唐突な急発進、急加速は珍演奏として知られるワルター/NBC響(1940年)とうり二つと言っていいだろう。こうした田舎臭さは当時のドイツでは定番的な解釈だったと思われる。一方のマクミランはもっと洗練されており、すっきりした現代風の演奏である。しかし、第3楽章ではメンゲルベルク風にテンポが落ちたり、第4楽章にはシンバルを追加するなど、後期ロマン派の名残りが随所に感じられる。ストコフスキーはラッパ吹き込み時代のもので、しかも第2楽章のみの収録なので付録として加えた。管楽器のソロがルバートをかけたり、弦楽器にはポルタメント奏法が多用されるなど、ロマン的な色彩が強い。なお、マトリックス番号はSP盤に印字されていないので、Arnol d著の『The Orchestra on Record、 1896-1926』(Greenwood Press)を参照した。
コンヴィチュニー、ストコフスキーの略歴については省略するが、マクミランは日本ではほとんど無名に近く、彼の一番有名なレコードはグレン・グールドの伴奏をしたものかもしれない。生まれはカナダ。のちにイギリスに移住し、オルガンを学び、その後、エディンバラ大学、トロント大学でも学ぶ。1914年、パリに行き、そのあとバイロイトに滞在中に第1次世界大戦が勃発、ベルリン近郊のルーレーベンに収容される。その間の音楽活動が認められてオックスフォード大学より学位が贈られた。戦争後はカナダに戻り、オルガニスト、後進の指導に活躍し、1931年からはトロント交響楽団の常任指揮者に就任し、同楽団を短期間に一級の団体に仕上げた(1957年まで)。さらに、メンデルスゾーン合唱団の指揮者として活躍し、作曲家としても多数の作品を残した。1935年、イギリス政府よりサーの称号を与えられる。録音はSP時代にホルストの「惑星」、エルガーの威風堂々等があるが、量的には少なく大半は地味なレパートリーだった。(平林 直哉)

熱烈リクエストがついに結実!このような録音に価値を見出してくれるのは、いまや平林を置いて他に思い当たりません。全てCD復刻を待ちこがれていたものばかりですが、中でも最大の目玉は、トロント響の第2代主席指揮者マクミラン!終楽章でシンバル追加を含む改訂版で豪放な名演!
詳細についてはこちらをどうぞ!→ コンヴィチュニーマクミラン   【湧々堂】
 
SEDR-5027
ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」、
ラヴェル:スペイン狂詩曲*
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)
ローマ・イタリアRSO、トリノ・イタリアRSO*

録音:1952年1月19日、1952年3月3日*
音源:Cetra(Italy)FE6、
Private Record(米)BWS708*
ローマ・イタリア放送響とのベートーヴェンの交響曲第5番(SEDR-5011)、同第6番「田園」(SEDR-5009)を出して以来、同じくローマ・イタリアとの「英雄」はいつ出るのかという問い合わせがちらほらとあった。そこで今回もこの演奏の初出LPであるアメリカ・オリンピック盤を素材としようとしたが、大きな問題があることが発覚した。それは、第4楽章の冒頭部分のみ極端にピッチが高いのである。これは全集、バラ売りとも全く同じで、曲のすべて、ないしはある楽章のみピッチに異変があれば対処の方法はあるが、途中から変化したのでは修正はまず不可能である。そこで急きょイタリア・チェトラ盤を調達したのだが、それが吉と出た。そのチェトラ盤の音質は予想以上に明瞭であり、明らかにオリンピック盤を上回っていた。第2楽章の途中で面が変わるのは仕方がないとしても、おそらく望みうる最上の音質ではないだろうか。制作をしながら、あらためて演奏の素晴らしさに感銘を受けた。また、演奏とは無関係だが、このLPは終わりの拍手もずいぶんと長く収録されている。
 「英雄」が時間的に長いので、余白は時間の都合でラヴェルを選択した。これは場違いなほど湿度が高く、重厚なラヴェルだが、良し悪しはともかく、指揮者の刻印がはっきりしたフランス物の演奏は案外ないものだ。その点でも貴重なドキュメントと言える。なお、意外なことにこのラヴェルは現在CDはひとつしか出ていない。その点でも喜ばれるのではないか。(平林 直哉)
 
SECR-5028(2CDR)
フルトヴェングラー演奏会再現シリーズX
ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」、
モーツァルト
:ピアノ協奏曲第20番K.466*、
R・シュトラウス:交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」#
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)BPO、
イヴォンヌ・ルフェビュール(P)

録音:1954年5月15日
音源:Cetra(Italy)LO529、FE18*、FE41#
このディスクは1954年5月15日、ルガーノで行われた演奏会の全プログラムを収録したものである。この中で問題だったのは「田園」である。この演奏は初出のLP以来、ずっとピッチが高いまま発売されており、それはCD時代になっても全く変わっていない。元のテープがすでにそうした状態なのだろうが、中には半音近くも高いCDもあり、これではとてもこの演奏の価値は伝わらない。従って、今回のディスク化にあたっては最も標準的と思われるピッチに直して復刻してある。この「田園」はフルトヴェングラーの数ある録音の中でも最もテンポの遅い、寂しい雰囲気に満たされたものだが、このピッチで聴くとそれがいっそう心にしみてくる。この演奏を気にしていた人はこのディスクで聴き直して欲しい。
 モーツァルトのピアノ協奏曲は言うまでもなくフルトヴェングラー唯一の録音である。この日は本来フィッシャーが弾くはずだったらしいが、急病によってこのルフェビュールが代役に選ばれたとのことである。この演奏はフランス・フルトヴェングラー協会やイギリス・ユニコーン、さらにはこの日の全公演集としてイタリア・チェトラからLO529として発売されたが(1979年)、最も良い結果を得られたのは同じくチェトラのFE18のLP(1981年)であった。
 R.シュトラウスは「田園」と同じくチェトラ LO529が初発売である。しかし、音質は1984年に発売されたFE41の方が明瞭である。チェトラのヒストリカル・シリーズは最初LO番号で発売されたが、その後再発売されたFE番号は盤質も良く、音の明瞭なものが多い。残念なのはこのFE番号で「田園」が出ていないことである。
 復刻にあたっては原音を忠実再現しているが、「田園」の第1楽章冒頭での音質の変化、第4楽章途中での唐突な音量の変化、途切れた第5楽章最後の和音、あるいは「ティル」の冒頭部分の音質の変化等、元のLPの不具合の中で修正出来なかった個所があったことをお断りしたい。(平林 直哉)
 
SEDR-5030
ブルックナー:交響曲第8番ハ短調 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)BPO

録音:1949年3月15日ティタニア・パラスト
音源:Educational Media
Associates RR 457
このディスクの演奏は2003年にSEDR-2022として発売している。その際、私は2022の解説の中で使用した音源を「ロココ、ディスココープ系のものと同じ」と書いていた。つまり、私はロココとディスココープとは同じ音だと思いこんでいたのである。しかし、その後2007年にRR457の2枚組を聴く機会があった。すると、このLPの音は非常に明瞭なのである。SEDR-2022で使用した音源はロココ系列と同じく入力過剰であり、それがまた独特の激しさを演出していたのである。ところが、このRR457はそのような欠点はなく、実にすっきりと見通しが良い音なのである。言うまでもなく、この演奏はドイツ・フルトヴェングラー協会制作による正規盤があるが(MMS-9099)。それも非常に明瞭だが、妙にこざっぱりとした音にも思えなくはない。その点、このCDRはLPの小さなプチパチ・ノイズは発生するものの、全体の雰囲気はまことに優れていると思う。
 このLPの欠点をあえて言うとするならば、第1楽章と第2楽章が片面に詰め込まれており、その2つの楽章のおとがわずかながら窮屈なことである。これがもし2枚4面にゆったりとカッティングされていれば文句の付けようがないところだが、こうした4面カッティング盤は発売されていないので、あきらめるしかない。なお、このRR457の第4面はブルックナーの交響曲第7番の第2楽章、戦時中のテレフンケンのSPから復刻したものが収録されている。(平林 直哉)
 
SEDR-5031(2CDR)
フルトヴェングラー演奏会再現シリーズY
メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」、
マーラー
:「さすらう若人の歌」*
ブルックナー:交響曲第5番(原典版)#
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)VPO、
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(Br)

録音:1951年8月19日 
※音源:Cetra(Italy)
FE 35、FE 29*、FE 42#
このディスクは1951年8月19日、ザルツブルク音楽祭での全公演プログラムを収録したものである(当時のプログラムによると、開演は午前11時)。この中でブルックナーの交響曲第5番はアメリカ・ディスココープ盤、RR-314から復刻したSEDR-5007(廃盤)として1度発売している。このRR-314はこの日の公演を全部収録した2枚組のLPだが、その後イタリア・チェトラのLPを入手して聴いたところ、音質がなかなか良かったことに加え、全曲に拍手まで入ったものであることが判明したのである。この日の公演はフルトヴェングラー協会(日本とドイツ)でもLP化されていたが、このLPもディスココープ盤と同じく拍手は含まれていない。さらに、EMIやオルフェオからCDも発売されたが、これらにも同様に拍手はカットされている。たかだか拍手とはいえ、その日の会場の雰囲気を伝えるものとしては貴重であると判断し、いささか2度手間にはなったがこうして再現シリーズに組み入れる次第である(ただし、ブルックナーの交響曲の楽章間のインターバルはチェトラのLPには含まれていない)。言うまでもないが、この日はフルトヴェングラーとフィッシャー=ディースカウとの初めての共演である。フィッシャ=ディースカウは当時フルトヴェングラーがマーラーに関心がなかったことを知らず、この「さすらう若人」を提案したのである。しかし、これがきっかけとなってフルトヴェングラーはマーラーを再認識したらしく、両者は1953年12月にベルリンでマーラーの「亡き子をしのぶ歌」を共演している(この両者の共演はこの時が最後だった)。なお、フルトヴェングラーとフィッッシャ=ディースカウとの出会いは『自伝フィッシャー=ディースカウ追憶』(メタモル出版)に詳しい。(平林直哉)
 
SEDR-5033(2CDR)
フルトヴェングラー演奏会再現シリーズZ

スウェーデン国歌オーストリア国歌
ハイドン:交響曲第94番「驚愕」
シベリウス:交響詩「エン・サガ」、
R・シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」、
ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」
ウィルヘルム・フルトヴェングラー(指)VPO

録音:1950年9月25日ストックホルム
※音源:Private Record(Japan?)
GC 570234/5、
Educational Media
Associates RR
399(Haydn)、
460(R.Strauss)
and 507(Sibelius & Beethoven)
このディスクは1950年9月25日、ストックホルムで行われた公演をすべて収録したものである。この日の演奏は1970年代に制作されたプライヴェートLP(GC-57023/4)が初出で、このLPは当日の全プログラムだけではなく、演奏に先立って行われた2曲の国歌も収録されている貴重盤だった。その後、この国歌はごく一部のLP、CD等にしか含まれておらず、さらに本編の演奏も他の公演と組み合わされてバラバラに発売されており、このようにまとめて聴けるディスクは過去にあまりなかった(最近ではフルトヴェングラー・センターからWFHC-009/10として国歌も含めた全公演がCD化されている)。
 当初は上記のプライヴェート盤からの復刻を計画したが、国歌の部分でお気づきのようにハム音が強く入っており、出力レベルもかなり低く、いささか聴きづらいものである。しかし、この国歌に関しては他に代替盤が見あたらない。一方、本編の演奏ではプライヴェート盤よりもRR番号のものが比較的明瞭でしっかりした音だった。そのため、いささか不釣り合いということを承知の上で、あくまでも観賞用の音質を獲得するために、これら2種類のLPを混合させて当日の全プログラムとした。この措置に関しては批判の声もあるかもしれない。さらに付け加えるならば、演奏途中のインターバルが入っているという点ではこのGC盤とRR盤は同じだが、たとえばベートーヴェンの交響曲第5番の演奏前の拍手はRR盤には入っているが、GC盤には含まれていない。(平林 直哉)

SEDR-5035
カラヤンのドヴォルザーク&スメタナ
ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」
スメタナ:交響詩「モルダウ」*
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指)BPO

録音:(1)1957年11月28-29日、1958年1月5-6日、 1958年5月18-20日
(2)1958年5月18-20日* 全てグリューネヴァルト教会

音源:Angel (U.S.A.) ZS-35615 (4 Track Reel to Reel Tape, 7.5 IPS)
このディスクは4トラック、19センチのオープンリール・テープより復刻したものである。もともとこの録音は初期のステレオのためか、それほど広がりはないし、多少テープ・ヒスも耳に付くが、既存のディスクよりは余裕のある音がしていると思う。カラヤンは同じベルリン・フィルと1940年にこのディスクの2曲を収録(ドイツ・ポリドール、CD復刻あり)しており、ともに2度目の録音となる。この演奏はカラヤンがベルリン・フィルの常任指揮者に就任(1955年4月)して約2年半から3年近く経過した頃のものである。カラヤンはその就任直後に首席奏者を大幅に入れ替え、新時代に備えようとしたが、カラヤン自身が「自分の音を引き出せるようになるのに10年かかった」と語っていたように、この頃のベルリン・フィルにはまだまだフルトヴェングラーの影響が色濃く残っていた。たとえば、第1楽章の序奏部のしっとりと温か音色はフルトヴェングラー的である。また、音が次第にふくれ上がるところになると、火柱が立つように燃え上がるのも、これまた前任者そのものである。スメタナの「モルダウ」の途中、夜の風景が描写される箇所の繊細な響きも、まさにフルトヴェングラーであろう。カラヤンは1960年代になるとあの華麗、豊満な響きを獲得し、世界のクラシック界の中心的人物になるのだが、このディスクはその過渡期の記録として、あるいはベルリン・フィルの響きがどのように変わっていったかも知る素材のひとつとして珍重されるべきだろう。なお、この2曲ともにオリジナルのプロデューサーはウォルター・レッグである。(平林 直哉)
*おことわり:古いテープから復刻していますので、わずかな音揺れやノイズが混入しています。

2曲ともカラヤンの最初のステレオ録音。このディスクの魅力は、何と言ってもフルトヴェングラー時代の名残を思わせる深々とした響きと、カラヤンが早くも獲得していた独自の流麗な音楽作りのブレンド感。当時のBPOの響きを特徴付けているティンパニ、金管、弦の質感が、録音会場であるグリューネヴァルト教会(クリュイタンスのベートーヴェンやケンペの「チャイ5」もここで録音された)に見事に溶け合った美しさがまず格別です。
「新世界」第1楽章冒頭のティンパニは、まさに鄙びた味わいで続く弦の奥深さも当時のBPOの魅力全開ですが、4:18以降の小結尾主題の研磨され尽くした美しさはカラヤンならでは。第2楽章の弱音の美しさに細心の注意を払い、スタイリッシュな印象を与えるのも、カラヤンのカラーを早くもオケに浸透させている手腕に改めて驚かされます。終楽章は内声の抉り出しなどせずに主旋律主体の進行ながら、音楽が平板化しないのも流石。
「モルダウ」においても、早くもカラヤンレガートの片鱗が窺え、最初のテーマは一筆書きのように流麗に流れます。2:48からの狩りのシーンでのホルンのアルペジョ音型は純ドイツのワーグナー・サウンド!これら新旧の魅力が連綿と折り重なりながら進行する演奏の魅力は最後まで尽きることはありません。【湧々堂】

SEDR-5036
ハイドン:交響曲第94番「驚愕」
交響曲第99番変ホ長調
ヨゼフ・クリップス(指)VPO

録音:1957年9月9-14日ウィーン・ムジークフェライン
音源:London (U.S.A.) LCL-80018 (4 Track Reel to Reel Tape, 7.5 IPS)
 ヨゼフ・クリップス(1902、ウィーン-1974、ジュネーヴ)はウィーン音楽アカデミーで学び、最初はウィーン・フォルクスオーパーのヴァイオリン奏者として活躍した。その後、ワインガルトナーの推薦で指揮を始めるようになるが、第二次大戦中は祖父母がユダヤ人だったという理由で、ナチスから食品工場の労働を強制された。戦後の混乱期にはいち早く楽壇に復帰、復興の一翼をになった。その頃のクリップスをウィーン・フィルの第2ヴァイオリン奏者オットー・シュトラッサーは「復興に対するクリップスの情熱と献身は高く評価されるものだった」と語っている。その後、フルトヴェングラー、カラヤン、クラウス、ベームらの指揮者が復帰するとクリップスの影は若干薄くなったが、それでもウィーンでは根強い人気があった。 ロンドン交響楽団(1950年〜)、サンフランシスコ交響楽団(1963年〜)のそれぞれ音楽監督に就任した際も、オーケストラがウィーン風の典雅な響きを身につけたことは高く評価された。クリップスは生前「あたかもモーツァルトが手がけたように指揮をしている」と語っていたが、古典派はもちろんのこと、後期ロマン派のような作品でさえも軽く、優雅に振ろうとしていた。従って、作品によってはあまりにも保守的にすぎる印象を与えたことも事実であった。 しかし、このディスクに収録されたハイドンはクリップスの芸風にぴったりである。しかも、ウィーン・フィルのまろやかな音色が見事に捉えられており、クリップスの代表的名演と言えるだろう。復刻に使用したのは4トラック、19センチのオープンリール・テープである。古いテープゆえに多少音が濁り気味の場合もあるが、全体的にはLPとはひと味違った余裕のある響きで楽しめる。なお、英デッカの初出LPもこの2曲の組み合わせで発売されていた(LXT-5418=モノーラル、1958年6月発売/SXL-2089=ステレオ、1959年11月発売)
*おことわり:古いテープから復刻していますので、わずかな音揺れやノイズが混入しています。

SEDR-5037
ベートーヴェン:「レオノーレ」序曲第3番
交響曲第5番「運命」*
ヨゼフ・ローゼンストック(指)マンハイム国立SO
フェリックス・プロハスカ(指)ウィーン国立歌劇場O(フォルクスオーパー)*

録音:1955年、1958年5月*(共にステレオ)
音源: Livingston (U.S.A.) 2020 C (2 Track Reel to Reel Tape, 71/2 IPS)、
Vanguard (U.S.A.) VRD 1 (2 Track Reel to Reel Tape, 71/2 IPS)*
“オペラ叩き上げ指揮者の真骨頂!、これがプロハスカの底力!”
「運命」は湧々堂「殿堂入り!!
 この2曲はともに2トラック、19センチのオープンリール・テープから復刻したものである。録音年代はかなり古いものではあるが、2トラックゆえか音質は年代を考慮すれば上々ではないだろうか。それよりも、演奏が非常に良い。まずローゼンストックだが、序奏部からスケールが大きく、主部に入るとその男性的な迫力は聴きごたえがある。オーケストラのアンサンブルは特別に優れているわけではないが、この音の勢いと瑞々しさは出色であろう。  一方のプロハスカはオーソドックスな軽量型演奏だが、オーケストラの何ともひなびた音色と、明るくしゃれた雰囲気が独特である。こんなに純な響きのベートーヴェンも珍しいと思う。なお、オーケストラだが、テープのジャケットには国立歌劇場とありながらカッコ書きでフォルクスオーパーと記してあるので、実体はフォルスクオーパーなのだろう。いずれにせよ、ローゼンストックもプロハスカも、古き良き香りの色濃く漂うものとして貴重である。
 ローゼンストック(1895-1985)はNHK交響楽団の発展に大きく寄与した指揮者として有名。生まれはポーランド。ウィーン音楽アカデミーで学び、のちにフリッツ・ブッシュのアシスタントとなる。1920年からはダルムシュタット・オペラの指揮者となり、その後メトロポリタン・オペラなどでも活躍、1930年からはマンハイムの音楽監督に就任するが、間もなくナチスの妨害を受ける。そんな折り、NHK交響楽団の依頼を受け、1936年から同響を頻繁に振り、のちに常任指揮者、さらには名誉常任指揮者に昇格する。戦後はニューヨーク、ケルン等で活動を続けた。
 プロハスカ(1912-1991)は作曲家、指揮者のカール・プロハスカの息子として生まれる。父から音楽の手ほどきを受け、のちにグラーツ・オペラ、ストラスブール・オペラ、プラハ・ドイツ・オペラ等の指揮者を歴任し、1945年からはウィーン国立歌劇場の指揮者となる。戦後も主にオペラで活躍し、後進の指導にも力を注いだ。多くの録音を行っているが、レパートリーの大半はバッハ、ヘンデル、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンなどのバロック、古典派のものだった。その彼の遺産の中ではシューベルトの「ガシュタイン交響曲」(「グランド・デュオ」作品120の管弦楽版)が珍品として知られる。(平林直哉)

ローゼンストックの「レオノーレ」は、オーケストラビルダーとしての能力を遺憾なく発揮してアンサンブルを引き締め、ストイックで強靭な音楽作りを貫徹。クレッシェンドで盛り上げるシーンの力感は相当なものですが、常に緻密に設計されており、決して雰囲気に任せたものではないので全体に漲る緊張感が最後まで持続。13:01からのフルートにホルンを重ねたり、13:23からの金管の強弱付加、コーダでのテンポ・ルバート等も古さを感じさせることない確固たるベートーヴェンを打ち立てています。
更に素晴らしいのが「運命」!プロハスカは歌劇場を中心に活躍し、バッハの権威としても知られる指揮者。ウィーン国立歌劇場との付き合いは1945年以来のものなので十分に気心は知れていたと思いますが、彼の意図する直截な音楽作りが終始徹底され、ウィーン的な柔和さとは違う凝縮力の高いアンサンブルを築いているのにまず驚き!とにかく凄い迫力です。オペラ指揮者としての血がそうさせるのか、その振幅の大きなドラマの展開、各パートの強力な連動ぶりは、優雅なアンサンブルを旨とするオケの性質を考えるとなおさら驚異的です。第2楽章の山場で、ティンパニの凄い発言力と共に壮麗に音楽がそびえる様はまさに圧巻!終楽章は、各パートのバランスとクレッシェンド効果に徹底したこだわりを見せながら、火の玉のような豪快さ!セル&VPOの「運命」を愛する方、ティンパニ好きな方は、特に必聴です!【湧々堂】


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