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殿堂入り: 交響曲  管弦楽  協奏曲  器楽曲  室内楽  声楽曲  オペラ  バロック レーベル・カタログ チャイ5



チャイコフスキー:交響曲第5番〜全レビュー
TCHAIKOVSKY : :Symphony No.5 in e minor Op.64
クラウディオ・アバド(指揮)
Claudio Abbado



掲載しているジャケット写真と品番は、現行流通盤と異なる場合があります。あらかじめご了承下さい。



チャイコフスキー:交響曲第5番
クラウディオ・アバド
ロンドン交響楽団
第2楽章ホルン・ソロ:
ユニバーサル
POCG-91006(1CD)
録音: 1970年12月 イギリス・デンハム・バックス・クァンヴィル・フィルム・スタジオ【ステレオ録音】
演奏時間: 第1楽章 14:53 / 第2楽章 12:27 / 第3楽章 5:50 / 第4楽章 12:06
カップリング/チャイコフスキー:スラブ行進曲(ヤルヴィ&エーテボリSO)
“アバドの「チャイ5」初録音”
アバドの同曲最初のスタジオ録音。この盤に施されている“アンビエント・リマスター”のせいか、ノイズ除去と共にレンジが狭くなってしまったようで、金属的な響きになってしまった感も否めません。従って、全体の感銘度も、LPのときと比べて著しく落ちてしまいました。その点を差し引いたとしても、ここでのアバドは、表現意欲というものがあまり感じられないのは、どういう訳でしょうか?音楽に芯を感じないのです。しかし、、第2楽章のふとした瞬間に、アバドならではの歌心や細やかなアーティキュレーションが垣間見られたり、第3楽章ではLSOの木管の巧さが効を奏して、華やぎのある音楽を展開しているので、全く無視してしまうのは忍びない気がします。 【湧々堂】
第1楽章のツボ
ツボ1 仄暗い雰囲気を持ち、クラリネットも危なげなし。ただ、途中で妙に音量が弱まり、弦に埋没してしまうのが不思議。録音のせいか?
ツボ2 第1主題を導く最小の弦の刻みが妙に弱々しい。続くクラリネットは前奏から一変して何事もなかったようにサクサクとリズムを刻む
ツボ3 楽譜どおり。
ツボ4 呼吸は平板。スタッカートも淡白。
ツボ5 曲弱をしっかり付けているが、呼吸が伴っているように感じられない。多くの例のように、主題の最後をリタルダンドするが、暗黙の了解のようであまり意味を感じない。
ツボ6 強弱の振幅が弱く、フォルティッシモになっても情感を溢れさせることがない。
ツボ7 直前のホルン・ソロが絶妙に巧い!柔らかな音色のまま自然にリタルダンドしていくのも魅力的。ただ、次のピチカートの第1音が、弦の糸がプツンの切れたような妙な音を発している。
ツボ8 こういう箇所こそアバドの本領発揮のはずだが、ただきれいに流れるだけ。
ツボ9 テンポの変化なし。フォルティッシモの次の16分音符は聴き取れない。
第2楽章のツボ
ツボ10 音色はメロウで美しいものの、やや表面的に響く。
ツボ11 このくだりは素晴らしい!アバドの感性にようやく火がついたのか、実に豊かな呼吸で心からの歌心が花開ティンパニのトレモロも意味深い。
ツボ12 実に巧いが、やや音色が明るい。
ツボ13 縦の線が完璧に揃っている。109小節と110小節の間を若干長めに取っているのは、アバド本来のセンスの高さを感じさせる。他では見られない配慮。
ツボ14 なかなか熱のこもったカンタービレが聴ける。
ツボ15 楽譜どおり。
第3楽章のツボ
ツボ16 ほんの少しテンポが緩むが、意図的に遅くしている感じはしない。
ツボ17 さすがロンドン響!特に低弦の細かい動きが絶妙。
ツボ18 見事な連鎖!ファゴットの結尾まで聞こえるのは、ソロ奏者の技量の成果か。その後のティンパニの一撃も意味深い。
第4楽章のツボ
ツボ19 とても丁寧な滑り出しだが、特に威厳は感じず、かといって繊細を極めるわけでもなく、やや焦点が曖昧。弦のピチカートが妙に克明なのが面白い。
ツボ20 あくまでも木管主体で、ホルンは裏方に徹している。
ツボ21 ティンパニが一度山を築いてから、弦が滑り出す。主部冒頭は一撃アクセントを挟まずにトレモロをキープする、ほぼスコアどおりの進行。
ツボ22 ほんの少しアクセントを付ける程度。
ツボ23 力を込めて弾いているのが分かるが、録音のせいか、力感があまり伝わって来ない。
ツボ24 主部冒頭のテンポを取り、そのテンポを維持。
ツボ25 ズボッという鈍いアクセント。これも録音(マスタリング)のせいか?
ツボ26 そのままのテンポで進行。
ツボ27 ややリタルダンドして、トランペットのファンファーレから快速テンポに転換。451小節目の3連音の刻みはパーフェクト!
ツボ28 ほぼスコアどおり。ティンパニの一撃アクセントはなし。
ツボ29 決然とした意志が漲る輝かしい鳴りっぷり。
ツボ30 切るでもなく、滑らかにつなげるでもなく、スコアどおり。
ツボ31 スコアどおりで改変なし。
ツボ32 明確に聞こえはするが力感は乏しい。
ツボ33 テンポもダイナミックスも変化せず、淡々と終結。


チャイコフスキー:交響曲第5番
クラウディオ・アバド
シカゴ交響楽団
第2楽章ホルン・ソロ:デイル・クレヴェンジャー
SONY
93062[SO](4CD)
録音:1985年2月25日、27日 シカゴ・オーケストラ・ホール【デジタル録音】
演奏時間: 第1楽章 14:35 / 第2楽章 12:40 / 第3楽章 6:14 / 第4楽章 12:02
カップリング/チャイコフスキー:交響曲全集
“ついに裏技出現!アバドの成熟を感じさせる壮大なチャイコフスキー”
ロンドン響との共演盤から15年を経て行ったこの再録音は、さすがにアバドの大きな成熟ぶりを随所に感じさせ、シカゴ響のヴィルトルオジティも充分に生かしながら、立派な演奏に仕上がっています。特にフォルティッシモの箇所の確信に満ちた表情は素晴らしく、第2楽章で聴かれる美しいカンタービレも、無機質になりがちなシカゴの弦から、ほぼ思い通りに引き出すことに成功しています。楽譜の細部へのこだわりも、この録音あたりから出現(特に終楽章)し始めますが、その真意が良く分からないがアバドらしいところでもあります。ただ、録音のせいもあると思いますが、全体的に人工的な響きになっているのが残念で、アバドの表現意欲も、BPOと比べると更に上を望めそうな気もします。オケは巧いことは言うまでもありませんが、その巧さが音楽的感銘に結びついていない箇所もあります。【湧々堂】
第1楽章のツボ
ツボ1 分厚く安定しきった響きで開始。4分音符のテヌートをかなり意識して吹かせている。支える低弦もかなり重厚。
ツボ2 技術的な巧さはもちろんのこと、各ソロパートがセンスよく感じ切っており、美しくフレーズを紡ぎだしている。テンポも良い。
ツボ3 このスラーの箇所でふわっとアクセントをつける。
ツボ4 楽譜どおり。ヘッドフォンで聴くと、編集でつないだように聞こえる箇所がある。
ツボ5 ほぼ楽譜どおりに強弱をつけ、情感もたっぷりだが、弦の響きがメカニック。
ツボ6 強弱の振幅が大きいが、アニマート以降が平板に聞こえる。
ツボ7 ことさら大きな音は出していないが、馬力と底力を感じさせるピチカート。アルコはさらっと流す。
ツボ8 アバドのカンタービレのセンスが開花しているが、弱音がやや表面的。オケの特性だと思うが…。
ツボ9 テンポの変化なし。16分音符は聴き取れない。木管の動きよりも、続く弦の細かい動きのヴォルテージの高さに意識が行ってしまう。
第2楽章のツボ
ツボ10 導入ではバスをかなり強調し、分厚い響き。優しさはなく、猛獣が眠っているよう。
ツボ11 LSO盤同様、まさに堂に入った呼吸が素晴らしく、ここに差し掛かるまでにCSOの弦も、ここでは弱音から強音まで音楽的なニュアンスを感じる。
ツボ12 このクラリネットは、全ての面でパーフェクト!
ツボ13 縦の線が完璧に揃っている。LSO盤では109小節と110小節に若干の間を置いていたが、ここでは普通どおり。
ツボ14 フォルテ4つに差し掛かる直前に通常通り大きなリタルダンドが掛かるが、金管が呼吸に乗りきれていない。
ツボ15 冒頭は、病的なほどのピアニッシモがとても不気味だが、そこから先のフレージングは実に美しい。どちらかというとCSOが苦手なところだと思うが、心に染みてくる。
第3楽章のツボ
ツボ16 ほんの少しだけテンポを落とす。
ツボ17 全くストレスなく、全パートが完璧。
ツボ18 CSOにしては無難な吹きこなし。
第4楽章のツボ
ツボ19 テンポは程よいアンダンテ。ここでもバスが効いている。威厳も充分感じられる。
ツボ20 ホルンは完全に裏方だが、下地を支えていることを明確に主張。
ツボ21 ティンパニが一度クレッシェンドしてから弦が入り、主部冒頭に一撃アクセントを追加し、62小節の頭でも一撃。更なる新機軸は70小節以降で、木管音型をホルンが補強!アバドお得意の出典不明の技。
ツボ22 ほんの少しアクセントを付ける程度。
ツボ23 ここでもバスが分厚く出てくるが、人工的な感じもする。
ツボ24 主部冒頭のテンポを取り、そのテンポを維持。
ツボ25 なんとも鈍い音。
ツボ26 そのままのテンポ。
ツボ27 トランペットのファンファーレからやや速める。
ツボ28 ほぼスコアどおり。最後にティンパニの一撃を軽く置く。
ツボ29 悠然というより、しっかりした意志の力が漲る。
ツボ30 弦もトランペットもレガート寄りで統一している。
ツボ31 LSO盤とは打って変わって、旧来の改変を行っている。
ツボ32 非常に明確に聴こえるが、力感はあまりない。
ツボ33 インテンポでそのまま終わり、どこか物足りなさを感じる。このスタイルで、圧倒的手応えを感じさせながら締めくくることに成功した例はあまりない。


チャイコフスキー:交響曲第5番

クラウディオ・アバド
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
第2楽章ホルン・ソロ: シュテファン・ドール
SONY
SICC-10002(1CD)
録音:1994年2月18日〜20日 ベルリン・フィツハーモニー【デジタル録音】
演奏時間: 第1楽章 14:54 / 第2楽章 13:04 / 第3楽章 5:50 / 第4楽章 12:08
カップリング/カップリング/ムスルグスキー:歌曲集「死の歌と踊り」
"S・イッセルシュテット以上にドイツの意地を露骨に誇示した熱き名演!"
アバドの成熟した音楽性とBPOの機能性が完全に一体化し、究極の凝縮力を示した名演です。スケール感が過去2回の録音をはるかに上回っているうえに、今まで模索してきた解釈が、ここで最終結論として一気に説得力のニュアンスとなって現われており、全く独自のチャイ5像を打ち立てています。熱いカンタービレは入念を極め、ソロ・パートもアンサンブルも、完全にアバドの意のままに心地よく鳴り響くのは、アバドのBPO音楽監督としての全盛期を示すものと言えるでしょう。オケの自発性を尊重しながらやる気を奮い立たせる、アバドの面目躍如です。特に第2楽章、第4楽章の表現の幅と確信に満ち溢れる構成は、このコンビの絆の強さの賜物でしょう。 【湧々堂】
第1楽章のツボ
ツボ1 翳りのあるクラリネットの音色が美しい。符点2分音符をテヌートして、クレッシェンド気味に膨らませているのが新機軸。クラリネットと弦とのブレンドも見事。
ツボ2 その翳りをそっくり受け継いで弦を刻み、第1主題を奏でる。テンポは程よいアンダンテ。
ツボ3 かすかに上行ポルタメント風になる。
ツボ4 楽譜どおり。
ツボ5 センス満点のアゴーギクと共に豊かに呼吸。
ツボ6 強弱の指示を遵守。テンポはほとんど変わらない。アニマート以降にややテンポを落とすが、情に溺れず、共感の深さのみが伝わる。
ツボ7 完全に縦の線が揃っているわけではないが、それがかえって微かな色彩を生んでいる。アルコは通常通りだが、響きに厚みがある。
ツボ8 なんと艶やかなカンタービレ!しかも171小節では、ハイセンスな上行ポルタメントが花を添える。BPOの弦の魅力が満開!
ツボ9 テンポはそのまま。16分音符は明確には聴き取れない。
第2楽章のツボ
ツボ10 弦は、符点2分音符ごとに呼吸を膨らませる。
ツボ11 フォルティシシモから美しく沈静していく。
ツボ12 クラリネットは、8分音符の下りが多少ぎこちないが、最後のフレーズの消え入り方が美しい。
ツボ13 次の弦のテーマの伏線として、柔らかくピチカートを刻む。
ツボ14 凄い凝縮力でヴォルテージを高め、BPOならではの威力を如何なく発揮。
ツボ15 こんなに息を潜めて、切々と歌った例は他にあっただろうか?ここの感銘度は、過去トップクラス。
第3楽章のツボ
ツボ16 ほんの少しテンポを落とす。
ツボ17 高密度の弦の進行に続き、管との音楽的な連携が聴ける。
ツボ18 均整の取れた連動。
第4楽章のツボ
ツボ19 安定しきった威厳に満ちた進行。
ツボ20 ホルンは裏方に徹しているがしっかり響き、美しいハーモニーを表出。
ツボ21 ティンパニが一度クレッシェンドしてから弦が入り、主部冒頭に一撃アクセントを追加し、62小節の頭でも一撃しているように聴こえる。CSO盤同様、70小節からのホルンの補強はここでも実行。しかも明快な鳴り方。
ツボ22 少しアクセントを付ける。
ツボ23 強く張り出している方。クラリネットの伸びやかに突き抜ける響きが印象的。
ツボ24 展開部のテンポと同じ。
ツボ25 強くはないが、しっかり響く。
ツボ26 自然に提示部冒頭のテンポに戻る。
ツボ27 トランペットのファンファーレから快速。
ツボ28 ほぼ音符どおりの音価。CSO盤で見られた、最後のティンパニの一撃はない。
ツボ29 輝かしい勝利の行進。
ツボ30 ほぼ楽譜どおり。
ツボ31 旧来の改変版だが、499小節でトランペットをムラヴィンスキー風にサッと引っ込め、一瞬弦楽器主導として、再びトランペットを浮上させる。また、494小節のティンパニの音が通常と違うようだ。
ツボ32 非常に明確に轟かせる。来日公演の映像ではベル・アップしているのが確認できる。
ツボ33 インテンポでそのまま突き進むが、カロリー価が高く、全ての音が熱し切っているので、凄い手応えがある。


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