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新譜速報: 交響曲 管弦楽曲 協奏曲 器楽曲 室内楽 声楽曲 オペラ バロック 廉価盤 シリーズもの マニア向け  特価品!!
殿堂入り: 交響曲  管弦楽  協奏曲  器楽曲  室内楽  声楽曲  オペラ  バロック レーベル・カタログ チャイ5




チャイコフスキー:交響曲第5番〜全レビュー
TCHAIKOVSKY:Symphony No.5 in e minor Op.64
クリスティアン・リンドベルイ(指揮)
Christian Lindberg



掲載しているCDジャケットとそのCD番号は、現行流通盤と異なる場合があります。あらかじめご了承下さい。



クリスティアン・リンドベルイ(指)
アークティック・フィルハーモニー管弦楽団
第2楽章ホルン・ソロ:
BIS
BISSA-2018
(1SACD)
録音:2012年1,2月&2013年2月/ハルスタド文化会館(ノルウェー)
演奏時間: 第1楽章 13:10 / 第2楽章 12:16 / 第3楽章 6:02 / 第4楽章 12:16
カップリング/バレエ組曲「白鳥の湖」〜第2幕第10番『情景』、第2幕第2番『ワルツ』、第3幕第13番『白鳥の踊り』、第2幕第13番-変奏第5『情景』*、第3幕第20番『ハンガリーの踊り』、第4幕第28番、第29番『情景』
“「チャイ5」録音史上トップクラスの超優秀録音!”
オケの技術は非常に優秀で、リンドベルイの指示を忠実に実行。録音が優秀なことは近年では当たり前ですが、この録音の素晴らしさは特筆ものです!唯一残念なのは、リンドベルイのこの作品に対するコンセプトが一貫していないこと。
まず第1楽章は、「皆さん音楽を楽しみましょう!」という掛け声だけで、一気に録音してしまったかのような「軽さ」に違和感を覚えます。それなら、最後の楽章までその爽やかさを貫けば良いのですが、意外にも第3楽章でやや憂いを帯びた響きが聴かれ、終楽章では、急に「ロシアらしさ」に目覚めたかのように、じっくり足場を固めるような重厚さを敷き詰めようとしています。楽章単位で言えば、この終楽章がテンポ設定にも見識が感じられ、表現としての説得力も高いと思うのですが、曲全体を通して聴くと、そのチグハグ感が拭えません。部分的に個性的なアプローチをしている点も有るだけに、全体を大きく俯瞰する力が、特に交響曲の演奏では不可欠と言えましょう。
そういう点から言うと、「白鳥の湖」の方が、個々の作品の持ち味を楽しめるでしょう。やはり録音の凄さが物を言っているのも確かですが。特に終曲の打楽器の克明さにはびっくり!【湧々堂】
第1楽章のツボ
ツボ1 クラリネットも弦も情感を漂わせているが、強弱対比がやや恣意的に響く。テンポはごく標準的。
ツボ2 小気味良いテンポになるのがやや唐突。ピクニックに出かけるかのように楽しげ。フレーズを憂いを持って流すより、爽やかなダイナミズムを実現することに専念。独特の迫力を生み出していることは確か。
ツボ3 スラーを完全に無視し、リズムを弾ませることを優先。
ツボ4 呼吸を意図的に浅くしていると思われ、感覚的な爽快感を際立たせている。
ツボ5 完全にイン・テンポ。表情にさらなる陰影が加味されることはない。
ツボ6 このスフォルツァンドは素晴らしい!楽譜の指示をうまく活かしている。
ツボ7 ピチカートは美感を欠く。管楽器の合いの手はあまりにも脳天気。
ツボ8 ここから新たな楽想が始まるという心のときめきがないまま、すんなりと進行してしまう。
ツボ9 冒頭の16分音符はあまり聞こえない。クライマックスに達するという緊張感に欠ける、イン・テンポで物怖じしないダイナミズムには、独特の魅力がある。
第2楽章のツボ
ツボ10 冒頭の弦は、音程が素晴らしく、音のブレンドも完璧なのに、なぜか平板に響く。ホルンは平凡。クラリネットのほうが音楽を感じている。
ツボ11 無難な出来栄え。
ツボ12 クラリネットは、音楽を感じているものの、ややスウィングし過ぎか?
ツボ13 ホルン主題と同じテンポに戻る。ピチカートは平凡。管の絡みは上々。
ツボ14 音量はスコアどおりに大きくなるが、音楽自体は大きく膨らまない。164小節以降、ティンパニに他の楽器と同じリズムを叩かせている。
ツボ15 弱音が痩せ気味で、ニュアンスが結晶化していない。
第3楽章のツボ
ツボ16 イン・テンポのまま。
ツボ17 どういうニュアンスを目指しているのかが伝わってこない。
ツボ18 ファゴットのほうが少し強い。
第4楽章のツボ
ツボ19 テンポは標準的。レガートを避けた進行は、リンドベルイの趣味か?
ツボ20 ホルンは完全に裏方。43小節以降の金管のハーモニーは、制御しきれていない。ホルンも雑然とした響き。
ツボ21 ティンパニは終始聞こえないくらいの最弱音。74小節から明確に響かせる。足元を確かめるようなテンポ設定が意外。カラヤンよりも遅いテンポ。第1楽章で見せた爽やか路線は、終楽章にこそ相応しいと思うが、急にロシア的な泥臭さを出したくなったのか?テンポに重厚感を持たせても、響き自体が健康的すぎるので、今ひとつ説得力が生まれないのが残念。
82小節からのオーボエは、付点音符を弾ませ過ぎる。
ツボ22 アクセントは完全に無視。
ツボ23 コントラバスの旋律はよく聞こえる。録音の優秀さを物語る。
ツボ24 主部冒頭よりも速いテンポ。
ツボ25 聞こえる程度。
ツボ26 主部冒頭のテンポに戻る。
ツボ27 直前で一旦テンポを落としてからイン・テンポで進む、王道スタイル。緊迫感は希薄。
ツボ28 ティンパニは、やや外面的な強調が見られる。467-468小節の長い間合いを意識しているのが珍しい。但し、フェルマータ付きの全休止は、意識していない。複付点は、ほぼスコア通り。
ツボ29 重戦車モードとは正反対。やや速めのテンポで颯爽と進行し、弦のテクスチュアの清潔さは古今を通じて屈指のもの。運命動機475小節の4分音符も明確な意志を持って音を切り上げ弾力性を持たせている。
ツボ30 ここから、ロシア情緒路線は決別。再び健康志向のフレージングとなる。弦は音を明確に音を切るが、トランペットは曖昧。この間の全体の響きのバランスの良さは、史上トップクラス
ツボ31 改変なし。
ツボ32 輝かしさはないが、良く響く。
ツボ33 寸分をテンポを落とさない、確信に満ちたイン・テンポ終結。

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