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チャイコフスキー:交響曲第5番
アンドリス・ネルソンス(指)バーミンガム市交響楽団
第2楽章ホルン・ソロ:
ORFEO
ORFEO-780091

録音年:2008年10月16-17日バーミンガム、シンフォニー・ホール
演奏時間: 第1楽章 14:53 / 第2楽章 13:21 / 第3楽章 5:44 / 第4楽章 12:16
カップリング/幻想序曲「ハムレット」Op.67
“草食系“の音楽はついにここまで浸透!”
アンドリス・ネルソンスは、1978年ラトヴィアのリガの出身。同郷の指揮者マリス・ヤンソンスに見出され、2007年に29歳の若さでバーミンガム市響の首席指揮者と第12代音楽監督に指名され、これがネルソンスの本格的デヴュー盤となります。とくれば当然大いに期待せずにはいられませんが、結果は残念賞。とにかくどういう音楽として再現したいのかイメージが固まっていないのではないでしょうか?ロシア的な郷愁をふんだんに盛り込むわけでも、律儀にスコアに奉仕するでもなく、思いつきのような表情付けがいちいち空回りする結果となっています。音色のイメージと洗練が中途半端で、根源的な迫力も不足。第2楽章の45小節冒頭やクラリネット・ソロ直前などで顕著なように、おおむね弱音が弱すぎて、聴き手の心に届く発進力を持ち得ていません。最近のJ-ポップでは、超高音域でもないのにやたらとかすれた裏声を挿入する歌い方が大はやりですが、ついそのことを思い出してしまいました。そうすればいかにも感情がこもっているように聞こえるから、という発想でしょうが、そんな嘘にリスナーはウットリしてはいけないのです。3楽章はなぜか内向的に開始。ここでもイメージが固まっていないのでしょうか?たびたび登場する全休止は、そのほとんどが間延びしており、これは指揮者としての根本的力量が備わっているとはどうしても思えません。終楽章は明らかにスタミナ不足。魅力的な部分を少しでも発見しようと努力しましたが、結局以下に記す以外は見出せませんでした。とにかく、コンセプトが見えてこない上に迫力にも欠けるというのでは、どうにもなりません。
ちなみ先述のように、ネルソンスはM・ヤンソンスに多くを学んだそうですが、彼の指揮する姿を見て驚愕!(ttp://www.youtube.com/watch?v=ANmeMiKz5bA)なんとそのヤンソンスと瓜二つで、棒の振り方から腰のかがめ方まで全く同じと言っても過言ではないのです。そういえばアバドの薫陶を受けた若手指揮者のほとんどが、例外なくあの目に突き刺さりそうな独特な指揮スタイルを踏襲しているのを不気味に思っていましたが、ネルソンスはその極地です。ヤンソンスもアバドも、斎藤秀雄ばりに棒の振り方を伝授したとは思えません。にもかかわらずこういう結果となると言うことは、佐渡裕が師のバーンスタインの指揮スタイルを踏襲しているなどと言う次元を越えています。つまりは、まず「形」ありきで、自身の中に切実に表現したいものを持ち合わせていないということではないでしょうか?でなければ、師匠の他に「指揮者」という人種を全く知らないか、どちらかです。暗澹たる気持ちになります…。
第1楽章のツボ
ツボ1 クラリネットも、弦のバランスも模範的で、際立った特徴はない。ややクラリネットのバランスが強い。
ツボ2 テンポは標準的。テーマを吹く木管は、ファゴットに比重を置いているのが珍しい。
ツボ3 スラーを無視。しかも無表情。
ツボ4 サラッと下降するのみ。最後の一音の末端まで思いを込める気概がどうしてもてないのか?
ツボ5 ここはなかなか入魂。最初のスフォルツァンドの効果が見事に生かされ、全体を一息で膨らませつつ、細やかなアーティキュレーションにも配慮。
ツボ6 感情の高揚が見られず平板。
ツボ7 ここでもまた全休止が長い!これはネルソンスの癖なのか?呼吸が浅いのも困るが、休符で間をもてあますくらいなら、音楽の流れを最優先して欲しい。
ツボ8 直前までインテンポで駆け込み、ここから急に女性的な繊細さを出す。しかもその直前でも軽くルフト・パウゼが入るので、恣意性が際立ってしまい、さらにこの藤時主題の途中でもさらにピアニッシモに変換する箇所があり、実に不自然。
ツボ9 冒頭は完全に埋没。そのままイン・テンポ。
第2楽章のツボ
ツボ10 弦の導入は、強弱の指示を慎重に守るあまり、流れが停滞。ホルンは問題あり。技術的には万全で、スコアにも忠実だが、音楽的なデリカシーが感じられない。絡むクラリネットのほうが、よほど音楽を感じている。
ツボ11 ベチャッとフレーズが横に流れてしまい、盛り上がらない。
ツボ12 クラリネットはデリケートだが、その割には平板。ファゴットは心を打つ。
ツボ13 最初の2小節は無機的。3小節目から一段音量を落とす。
ツボ14 この冒頭部分は既にフォルテ3つの指示なのだ。これがネルソンスの思い描くフォルティティもなのだろうか?まさに草食系。命を削ルほど熱くなるなど、全く眼中にないようだ。
ツボ15 これまた弱音が極端に弱い。弦のみならず管楽器を含めた全体を徹底的にてテヌートで演奏させ、幻想的な雰囲気を醸し出そうとしているようだが、その意思だけが透けて見えてしまい、音楽的な説得力に繋がっていない。
第3楽章のツボ
ツボ16 完全にインテンポ。直前の音が消え入る前に無慈悲にファゴットが飛び込む。ファゴットは他の箇所でも巧さが際立っているが、ここは多少自己顕示が過ぎる。
ツボ17 トランペットを含めた管楽器の突出ぶりがユニークだが、その代わり弦との融合がみられない。
ツボ18 緊密に連動。
第4楽章のツボ
ツボ19 テンポは標準的。特徴なし。
ツボ20 ホルンは完全に裏方。管楽器全体のリズム感が抜群に良い。
ツボ21 マイクのせいだろうか?主部に入る前の48小節からティンパニが明瞭に浮上。ただ、それをやるなら、mf→p→pp→クレッシェンと、細かく書かれた指示を遵守すべきだが、一定音量のまま主部に入ってしまう。しかもそのクレッシェンドがむしろディミニュエンドになっており、主部冒頭では全く聞こえない有様。全く意味不明のアプローチ。主部以降のティンパニは緩やかにクレッシェンド。テンポは標準的。あっけらかんとした木管が興を削ぐ。
ツボ22 アクセントは生かしている。
ツボ23 根源的な迫力不足。
ツボ24 主部等々と同じテンポ。直前のリタルダンドとの連動が不完全。
ツボ25 鈍い一撃。
ツボ26 そのまま主部冒頭と同じテンポ。澄ました顔で同じテンポのままここを(通過してしまうのが最近の傾向のようだ。
ツボ27 テンポは安定しているが、音楽がどこか軽い。
ツボ28 決然とスコアどおりの音価を遵守!
ツボ29 やや速めのテンポで颯爽と進行。ただこれがネルソンスの精一杯の開放感だろうか?全てが予定調和的。
ツボ30 弦はに音を切るが、トランペットは曖昧。
ツボ31 499小節はトランペットは完全に消滅。500小節から次第に浮上。502小節は弦の動きと合わせる改変型。
ツボ32 明瞭に鳴り響き、、全体との調和も良好。
ツボ33 完全にイン・テンポのまま終結。

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