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ホルスト・シュタイン(指) |
| バンベルク交響楽団 |
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EUROPA
100317.8
廃盤 |
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| 演奏時間: |
第1楽章 |
14:32 |
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第2楽章 |
12:07 |
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第3楽章 |
5:28 |
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第4楽章 |
11:23 |
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| "渋いドイツ流儀の中で垣間見られるシュタインの血の通ったアプローチ" |
★ホルスト・シュタインは、デビッド・レナード・ミラーが設立した独Europaレーベル(David
L. Miller,)に数点の録音を遺していますが、中でも大きな存在意義を誇るのがこの「チャイ5」。世界各国の廉価レーベルで発売され、日本盤のLPも出ていました。録音年は判然とせず、新たにCD復刻したAts(日本?)レーベルによると1973年とのことですが、ここではMichael
Gray氏のディスコグラフィーに記載されている1976年を採用しておきます。
演奏は全く気奇を衒わない典型的なドイツ職人的スタイルですが、シュタインならではの共感が確実に息づき、楽譜の指示鵜呑みにせずに一旦解きほぐした上で、遵守すべき指示は徹底して従っていることでも分かるとおり、最大公約数的な演奏でやり過ごしたものではなく、内容は決して「廉価」ではありません。
ただ、第1楽章でいきなりドキッとする現象が!展開部に入る直前の202〜205小節がカットされているのです。ここは前のフレーズの繰り返しの箇所なので気づきにくいですが、あえてこの4小節だけを割愛すべき理由があるとは思えないので、録音上の編集ミスだと思われます。演奏そのものは安定感抜群で、続く第2楽章では個々の奏者のセンスの高さも際立って、安心して音楽に身を委ねることができます。特にオーボエとクラリネットは秀逸。第3楽章はもちろん軽妙さや華やかさとは無縁ながら、弾き飛ばしのない真剣な姿勢が音楽に「チャイコフスキーらしさ」以上の説得力を与えています。終楽章も音楽の構築を念頭に置いた進行。再現部冒頭のテンポの入れ替えをほとんどイン・テンポで通すなど、大方のドイツ系指揮者と同様のアプローチを基軸とする一方で、意外なニュアンスも登場。4:38からの運命動機の斉奏は、トランペットをテヌートで吹かせるロシアン・テイストを醸し、再現部の7:42あたりから突如テンポが前のめりになってライヴ的なノリを発散。響きの凝縮度も増してワーグナー的な音像が繰り広げられるのです。
これは、録音の技術的な面ではやや疑問があるものの、シュタインが晩年まで持ち続けた音楽作りのヴィジョンが40代にして既に確立していたことが窺い知ることが出来る、意義深い記録と言えましょう。
ちなみに、2025年にAtsレーベルが発売したCDは、音ボケを低減させ、「通常CDプレイヤーによる再生でも抜けの良さは如実」というMQR方式による復刻だそうですが、音質の差は感じられませんでした。また、各楽章の演奏時間の表記がこのEUROPA盤と全く同じ。まさか、EUROPA盤をダビングしただけということはないとは思いますが…。【2026年5月・湧々堂】 |
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| 第1楽章のツボ |
| ツボ1 |
標準的なテンポでルバートを抑えた進行がいかにもドイツ流。クラリネットの響きがかなりクローズアップされた録音。弦は中低域が堅牢。 |
| ツボ2 |
実に模範的なアンダンテ進行ながら、安定感は抜群。クラリネットとファゴットのユニゾンのバランスも良好。 |
| ツボ3 |
楽譜どおり。 |
| ツボ4 |
ごく僅かにリテヌート気味。旧スタイルの名残をほんのり漂わせて良い雰囲気。 |
| ツボ5 |
スラーを無視して4小節を一息で歌い上げる。その歌い方には、確かな共感が宿っている。「きわめて表情豊かに」の指示のみを愚直に敢行した成功例。 |
| ツボ6 |
僅かにテンポを落とす。フォルティシシモは強調しない。 |
| ツボ7 |
縦の線は見事に揃い、響きも芯がある。 |
| ツボ8 |
わずかにテンポを落とすが甘美さに傾かずに強い意志を湛えたフレージング。感傷に浸らないシュタインの志向が如実に反映されている。 |
| ツボ9 |
イン・テンポのままに進行。16分音符は長めの残響に埋没気味。 |
| 第2楽章のツボ |
| ツボ10 |
冒頭の弦はスラーで細かく括られていないが、4小節で一呼吸をおいて5小節目から再浮上するフレージングは、なかなかの職人芸!ホルンは素朴一辺倒だが、全体の演奏スタイルにむしろマッチしていて、違和感はない。その後のオーボエ、チェロの歌い方が迫真。このシーンの求心力の高さは無視できない! |
| ツボ11 |
抑制を効かせたフォルティシシモ。呼吸の浅さに起因するものではなく、誇張を避け、全体の流れから自然なものを選択した結果と感じられる。ただの迫力不足の印象しか残さないとしたら、指揮者の力量の問題だろう。 |
| ツボ12 |
クラリネットは実に巧い。少しテンポを速める。クラリネットの入りのタイミングが若干フライング気味だが、むしろ緊張感が途切れずに良い雰囲気。70小節で一旦音量を落とすのはスコアにない解釈。 |
| ツボ13 |
何の味付けも施さない淡々とした進行ながら、これまた安定感がある。オーボエ、クラリネットがここでもセンス満点のフレージングを披露! |
| ツボ14 |
特定の楽器の突出に頼らず、全体の呼吸を増幅させるスタイルがいかにもシュタインらしい。 |
| ツボ15 |
スコア通り。 |
| 第3楽章のツボ |
| ツボ16 |
イン・テンポ。 |
| ツボ17 |
地に足の着いた進行が安定感を生み、色彩的な華やぎを上回る魅力がある。 |
| ツボ18 |
2回とも見事な連動技。 |
| 第4楽章のツボ |
| ツボ19 |
ややニュアンスが希薄。真面目な正攻法。テンポは標準的。 |
| ツボ20 |
ホルンは完全に裏方ながら、程よく響かせてハーモニーに厚みを与えている。 |
| ツボ21 |
ティンパニはスコアどおりでアクセントは皆無。テンポは標準的。 |
| ツボ22 |
アクセント実行。 |
| ツボ23 |
よく聞こえるが強調はしていない。そこに被さるクラリネットとフルートのクローズアップが過剰。明らかに録音編集によるもので、そのセンスの低さは残念。 |
| ツボ24 |
イン・テンポ。 |
| ツボ25 |
響きは聞き取れるが、強打ではない。 |
| ツボ26 |
そのままインテンポ。 |
| ツボ27 |
主部冒頭よりも少し速いテンポ。3連音が崩れない範囲での高速感を実現。 |
| ツボ28 |
楽譜の音価よりやや長め。ティンパニはアクセントなし。 |
| ツボ29 |
ハリのある弦の響きを基調とした進行。 |
| ツボ30 |
弦は一貫して音を切るが、トランペットは不徹底。 |
| ツボ31 |
改変なし。 |
| ツボ32 |
朗々とした響き。強奏はさせていない。 |
| ツボ33 |
イン・テンポによる決然とした意志を湛えたエンディング。 |