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殿堂入り: 交響曲  管弦楽  協奏曲  器楽曲  室内楽  声楽曲  オペラ  バロック レーベル・カタログ チャイ5



チャイコフスキー:交響曲第5番〜全レビュー
TCHAIKOVSKY : :Symphony No.5 in e minor Op.64
ウラジーミル・ヴェルビツキー(指揮)
Vladimir Verbitsky



掲載しているジャケット写真と品番は、現行流通盤と異なる場合があります。あらかじめご了承下さい。



チャイコフスキー:交響曲第5番
ウラジーミル・ヴェルビツキー
スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団
第2楽章ホルン・ソロ:
CLASSIC
VISIONS

5366[CV](2CD)
録音:不明  【デジタル録音】
演奏時間: 第1楽章 14:24 / 第2楽章 11:47 / 第3楽章 5:42 / 第4楽章 11:57
カップリング/カップリング/序曲「嵐」、交響曲第6番「悲愴」、ロマンスOp.5、舟歌
“無私無欲!“無表情という表情”で一貫した不思議な説得力!”
チェコのOPUSレーベルのライセンスCD。これは他に類を見ない不思議な魅力を持つチャイ5です。この演奏はとにかく地味。迫力、スケール感、ロシア的な情感など、この曲に期待しがちな要素の一切がここにはなく、普通ならただ聴き映えのしない演奏で終わるところですが、なぜか最初から最後まで引き付けて離さない魅力あるのです。テンポの変動も極めて少なく、オケにも華々しい技巧を感じることもないので、その魅力を説明するのは困難ですが、一言で言うとしたら、「誠実さ」でしょうか?確かに、誠実なだけなら他にもたくさんあります。しかし、自分の主張を出すのではなく、スコアに書かれた音符を音楽的に鳴らすことに終始しながら無味乾燥に陥らず、音色の統一感、内声の完璧かつ自然なバランスを一貫して保持したこの安定感は、とても偶然の産物とは思えず、通常使われる「誠実」という言葉の意味以上の誠実さを込めているからこそ、最後まで聴き手を引きつけるのではないでしょうか?そのスタイル、音色の統一感は終始一貫しており、どの部分をとっても、目立たない裏のパートに至るまで、惰性で鳴っている箇所などまずありません。これらの要素が一体となった安定感が、音楽的な感銘に繋がっているように思えます。ヴェルビツキーのその姿勢と、スロヴァキア・フィルのひたむきにアンサンブルに徹する態度が幸せな形での融合していることも無視できません。スロヴァキア・フィルは、チェコ・フィル同様、やや細身の音色ですっきりと音が立つ反面、中低域の量感には不足するため、骨太で豪快な解釈をする指揮者との演奏は、両者の持ち味が出し尽くされないまま終わってしまうことが多いですが、その点でもこの演奏はまさに理想的。第2楽章のコーダなど、どんな指揮者でもそれらしく詩情を漂わせるのに苦心するものですが、ここでは「無表情と紙一重」の表情があるのです!このチャイ5は、演奏において奏者の個性の反映が不可欠とする常識を覆す可能性をも孕んだ演奏として、いろいろ考えさせられるものであることは確かです。なお、ヴェルビツキーは、ぺシェックの後任として、1982年から1984年まで、このオケの主席を指揮者を務めました。【湧々堂】
第1楽章のツボ
ツボ1 クラリネットも弦も陰影に乏しいが、響きの均整は取れている。テンポは標準的で、インテンポを基調。
ツボ2 牧歌的な素朴さが漂う。
ツボ3 不器用ながら誠実な奏で方。
ツボ4 テンポこそ落とさないが、一音ごとに丁寧に下降する。
ツボ5 強弱の振幅は抑え目。誠実なフレージングを心がけている。
ツボ6 決して表情を誇張しない。響きの美感に欠けるが、しみじみとした共感が滲み出る。
ツボ7 インテンポで、ここでも表情を変えない。しかし無機質ではなく、端正な職人芸の雰囲気を醸しだしている。
ツボ8 ここもほとんどテンポを落とさず、積極的に表情が沸き立つこともない。しかし誠実なフレージングが好感触。
ツボ9 テンポは変えていない。16分音符の頭は聞き取れる。スケール感はないが、響きが制御され、心からの共感を込めた朴訥な音像が印象的。
第2楽章のツボ
ツボ10 弦は各音符の表情を入念に施すのではなく、楽譜の指示の範囲を出ない。ホルンが素晴らしい。インテンポを貫きながら呼吸感を感じさせ、微かなヴィヴラートも嫌味でなく心に迫る。オーボエも巧い!
ツボ11 強烈なパンチで圧倒せず、インテンポでサラッと流れる洗練されたフレージング。
ツボ12 クラリネットは明朗すぎるが、技術的には万全。続くファゴットが心に迫る。
ツボ13 ここもテンポを変えないので、結果的に通常よりも速めのテンポになっている。ピチカートの木目調の響きが印象的。続く弦と管楽器の温かな風情が漂う対話も美しい。
ツボ14 142小節の冒頭は迫力に欠けるが、やや速めのインテンポで堅実にフレージングを重ね、フォルテ4つの高揚は、今までが地味路線だっただけに強いインパクトがある。142小節最後の8分音符と次の2連の8分音符を全く同じ音価で弾かせているのが珍しい。
ツボ15 全く情に溺れない。やや速めのテンポで淡々と進行するが、無機質な印象はなく、むしろ内面から込み上げる共感が滲み、不思議な求心力がある。この曲全体の演奏スタイルを象徴している箇所。
第3楽章のツボ
ツボ16 ほとんどテンポを変えない。
ツボ17 全くと言っていいほど特徴がなく、技術的に華麗な面もないのだが、なぜか訴え掛けるものがある。音色の均質性によるところが大きいかもしれない。
ツボ18 強く張り出さないが、美しい下行ラインを描く。
第4楽章のツボ
ツボ19 弦はまさにメゾフォルテで、節度を持って鳴らしている。大袈裟に威厳を振り撒いたりしない。
ツボ20 ホルンは木管はほぼ同等のバランス。
ツボ21 固いティンパニが冒頭でクレッシェンドした後、62小節で少しだけクレッシェンド、66小節で明確にクレッシェンド。弦が明確にリズムを刻むが、ティンパニと溶け合ってはいない。テンポは中庸。
ツボ22 無視。
ツボ23 明確に旋律線として打ち出すのに止めている。室内楽的なバランスが保たれている。
ツボ24 主部冒頭のテンポのまま。
ツボ25 強打ではないが、響きが固いのでよく響く。
ツボ26 イン・テンポ。
ツボ27 ややテンポアップ。しかしこれ見よがしにテンションを高めることはない。
ツボ28 8分音符は本来の音価より長め。
ツボ29 テンポは標準的。全パートが絶妙のバランスで融合している。堅実かつ地味な進行だが、音楽的な説得力に満ちている。
ツボ30 弦ははっきりと音を切り、トランペットはテヌート気味。このトランペットの美しさは必聴!
ツボ31 502小節のみ、弦の音型と合わせているようだ。全体の響きが飽和していないので、フルートの音型まで生かされていて、絶妙なバランス。
ツボ32 一音ずつ丹念に響かせている。
ツボ33 546小節から完全なインテンポ。最後のティンパニ連打が固い響きで轟くが、威圧感はない。スケール感には乏しいのだが、しっかりと味わいを残す。


チャイコフスキー:交響曲第5番

ウラジーミル・ヴェルビツキー
西オーストラリア交響楽団
第2楽章ホルン・ソロ:
豪ELOQUENCE
446058[EL]
録音:1994年 【デジタル録音】
演奏時間: 第1楽章 14:00 / 第2楽章 13:12 / 第3楽章 5:39 / 第4楽章 12:03
カップリング/スラブ行進曲
“堅実路線のチャイ5の中で屈指の名演!”
★スロヴァキア盤では全く自己主張を抑えた演奏に終始し、オケの素朴な佇まいを大切にすることで、自然発生的な味わい残したヴェルビツキーが、ここでは大きく変貌!オケの機能性と豊かな表現力を生かして、もてる表現意欲の全てを投入した、活気に満ちた演奏を披露しています。外面的な派手さはなく、堅実路線に変わりありませんが、表現の幅が格段に広がっているのです。それにしてもこの2つの盤の指揮者のアプローチの違いは尋常ではありません。スロヴァキア盤はライセンスを受けた廉価盤でしたので、別の指揮者の可能性も頭を過ぎりましたが、テンポの切り返しの特徴や、終楽章コーダ直前のトランペットの独特の改変は共通しているので、ほぼ同一人物と見て間違いなさそうです。まず印象的なのが、音色の見事な統一感。冒頭の弦とクラリネットの溶け合いから、第2楽章の強靭なトゥッティの凝縮力、終楽章の輝きに至るまで、全パートがその領分をわきまえて奏でていることが十分に感じられます。特に第1楽章の副次旋律が切々と歌われる箇所のオケの質感、フレージングのしなやかさは絶品!第2楽章のピチカートで始る主部再現の直前の渾身のトゥッティも強烈なインパクト。108小節以降のピチカートの意味深さ、アルコの弦と木管の対話の妙が醸し出す至福の空間の素晴らしさも例えようもありません。終楽章も衒いが一切なく、正攻法そのものですが、内面の燃焼度が高く、響きのムラも皆無。まさに音楽の魅力そのものが確実に伝わってきます。終楽章の主部突入直前で不可解な約2小節半の欠落があるのを除けば、正攻法路線のチャイ5としてはトップランクの名演だと思います。
 カップリングの「スラブ行進曲」がこれまた素晴らしい!リズム、テンポが確実にキマり、オケの技量とセンスも磐石。全ての音がその末端まで強固な意志で貫かれ、見事な10分間のドラマを築き上げています。ティンパニ連打から始る後半は超高速で一気呵成!しかも軽薄さはなく、響きのバランスを保持してインテンポのまま締めくくります。ヴィルトゥオーゾを誇るオーケストラと有名指揮者の演奏でも、強固な凝縮力を欠くことなく全体を構築し切った演奏は決して多くないだけに、これはいくら賞賛してもし尽くせません。
第1楽章のツボ
ツボ1 クラリネットの弦の融合ぶりが絶妙。際立った特徴はないが、その響きの安定感が音楽的な共感の結びついて心に迫る。
ツボ2 やや速めのテンポ。木管が決然とした意思で、はっきりとリズム感を打ち出す。主題が弦に移ってからも、活力が漲る。
ツボ3 繊細な中に切れ味がある。
ツボ4 楽譜に忠実。
ツボ5 かなり思い入れたっぷりで深い呼吸。しかも弦の質感が高いので、フレージングは高潔の極み。
ツボ6 回りくどい表情ではなく、ストレートに情感をぶつけている。アニマート以降のテンポの落とし方も自然。
ツボ7 ピチカートが見事に響き切っている!テンポは速くしていないが、縦の線がよく揃い、生き生きとした表情が素晴らしい。木管の跳躍音型の音色がまろやかなのも印象的。
ツボ8 スロヴァキア盤同様、ほとんどインテンポのまま突入するが、アゴーギクのセンスが全開で、半音階で下降する172〜173小節の感じ方など絶品!その後も、呼吸と寄り添ったテンポの揺れが心に響く。展開部に至るまでのこの箇所は、全チャイ5録音の中でも指折りの素晴らしさ!
ツボ9 テンポは変えていない。頭のフォルティッシモはかなり強靭にもかかわらず、16分音符の頭は聞き取れる。威厳に満ちた素晴らしい進行。495小節でピアニッシモに落としてじりじりとクレッシェンドするのは、スロヴァキア盤では見られなかった解釈で、これが実に自然。ダイナミズムのメリハリ付けに完全に生かされている。
第2楽章のツボ
ツボ10 弦は一音ごとに表情を付加せず、自然体のフレージングに徹している。完全に弦のテンポと一体となったホルンのフレージングが素晴らしい!音色的な特徴はないが、その音の末端まで感じ切った歌のセンスと共に、忘れがたい。
ツボ11 スロヴァキア盤同様、冒頭で強烈なパンチは見せないが、しなやかなフレージングが美しく、共感もしっかりと伝わる。
ツボ12 ややテンポを速める。クラリネットは、音が明るく表情がやや平板。ファゴットは逆に弱々しい。
ツボ13 温かみがある。このピチカートと木管の魅惑的な対話も絶品。このムラのない音色と音楽の感じ方は、なかなか他に例を見ない。
ツボ14 来たるべきフォルテ4つの頂点に備えてか、142小節の冒頭は激烈に叩きつけず、爽やかに駆け抜ける。頂点でも極限の炸裂というほどではないが、ここに至るまでのフレージングに弛緩はなく、美しいラインとなって描かれている。スロヴァキア盤では142小節最後の8分音符と次の2連の8分音符を全く同じ音価で弾かせていたが、ここでは、通常通り短めに弾いている。
ツボ15 これまた美しい!ヴァイオリンとチェロのピアニッシモの質感が見事に揃い、深々とした沈静感に息を呑む。ほのかな香気さえ立ち込めている。
第3楽章のツボ
ツボ16 ほとんどテンポを変えない。
ツボ17 このオケの技量とセンスの高さを思い知る瞬間。ここでも各パートの音色の統一が素晴らしく、連携も絶妙。
ツボ18 パーフェクト!クラリネットとファゴットのつなぎ目を意識させないほどスムースな上に、各音が明確。
第4楽章のツボ
ツボ19 節度のあるメゾフォルテ。高貴な雰囲気が漂う。
ツボ20 ホルンは裏方に徹しているが、木管のアンサンブルが美しく際立っている。
ツボ21 奇怪!主部突入直前の2小節半(56〜58小節)がすっぽり抜けている!弦の音型の最後の繰り返しを行っていいないわけだが、編集ミスならば、その間トレモロを続けているティンパニに一瞬音の隙間ができると思うのだが、それもないと言うことは、指揮者の解釈か?ティンパニは短めのクレッシェンド。後はアクセントを置かずに一定音量でトレモロのまま。テンポは標準的。70小節〜73小節までの弦のパートの徹底的に抑えて、管の音型を浮き立たせている。
ツボ22 控えめに生かしている。
ツボ23 芯のある立派な響き。
ツボ24 主部冒頭のテンポのまま。
ツボ25 やや強打。
ツボ26 イン・テンポ。
ツボ27 この直前で徹底的にテンポを落としておいて、ここからその2倍のテンポで進行する美しい移行。響きの凝縮力も万全。
ツボ28 8分音符は本来の音価より長め。
ツボ29 テンポは標準的。弦は終始輝かしいレガートが素晴らしい。スロヴァキア盤ではもっと細かくフレーズを区切っていた。
ツボ30 弦はレガート、トランペットは音を切る。スロヴァキア盤とは逆。
ツボ31 502小節のみ、弦の音型と合わせているようだ。これはスロヴァキア盤同様。
ツボ32 決然とした立派な響き!
ツボ33 546小節から完全なインテンポ。輝かしい勝利の行進として手ごたえのある演奏を繰り広げている。最後の打ち込みは特に強調はしていない。


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