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ジョン・バルビローリ(指) |
ハレO |
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TreasuresTRT-023(1CDR)
¥2,200 |
録音:1959年3月30日-31日月 マンチェスター・フリー・トラッド・ホール(ステレオ) ※原盤:Pye |
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演奏時間: |
第1楽章 |
14:55 |
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第2楽章 |
12:40 |
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第3楽章 |
5:42 |
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第4楽章 |
11:57 |
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カップリング/モーツァルト」「魔笛」序曲、ワーグナー:「タンホイザー」序曲、チャイコフスキー:スラブ行進曲 |
“敵なし!バルビローリならではの怒涛のロマン!” |
NYO盤は、ここぞという箇所以外はテンポの揺れを抑え、逞しい精神が漲る名演でしたが、基本ラインはこちらも同じ。随所に弦のポルタメントを挟むなど、ややロマン的なニュアンスに傾斜していますが、テンポ自体は一層正当的なものになり、過度に感傷的なニュアンスに陥らない配慮も変わりません。第1楽章で、特に展開部に照準を合わせて、テンポ加速とともに激情を過熱させるのもNYOと同じ。全楽章を通じで一貫したコンセプトを感じ、共感の熱さも並々ならぬものを感じます。
第1楽章第2主題でのテンポを落とさなず一気呵成を貫くのは、聴き手の期待から少しズレたアプローチをするバルビローリらしさですが、副次主題(5:32~)では、バルビローリならやってくれるだろうという期待以上のむせ返るようなポルタメントの大放出!ただそれが、お上品なのレガートに流れない点にご注目。その直後の猛烈な突進力にも唖然としますが、その勢いを温存したまま弾丸モードで進行する展開部以降は手に汗握ること必至。コーダにおける決死の熱さは、逆に寸分の隙もない高性能なオケだったらなら醸し出されなかったかもしれません。
第2楽章は、素朴な愛の告白の連続。表面的な美などどこにも存在しません。中間のクラリネット・ソロの後に現れるチェロのフレージング(5:26~)は絶妙な強弱を交えてリアルに感情を吐露するねど前代未聞。そして、8:47以降のヴァイオリン群の弦が切れんばかりの夢中な歌いっぷり!一流オケによる数々の名盤を思い返しても、これほど音楽の本質を抉ったアプローチはなかったと思います。まさに体裁など二の次のバルビローリ節の真骨頂と言えます。
3楽章は、バルビローリ独自の色彩力が開花。コーダのティンパニを軸とした強烈なパンチ力はこの復刻を通じて初めて認識。
CDではとかくこのティンパニの音は細身で硬質に感じられましたが、本来はこのように男性的な逞しさを湛えたものだったのです。
それをさらに痛感するのが終楽章。テンポこそ中庸ですが、ニュアンスは常に勇猛果敢を貫き通しますが、全休止直前は世界の終わりの如き絶叫!それだけならまだしも、多くの演奏が小さくしぼんでしまう全休止後においても、音の張りと輝きを後退させない凄さたるや他に比類なき成果で、それを実現させているのも愚直な愛だけというところに、本物の芸、本当の美を感じずにはいられません。【2024年6月(修正,追加)・湧々堂】
※以下は以前に正規盤(EMI:763962)を聴いた上でのコメントですが、オケの技術的な不完全さが演奏全体が低水準のようにしか伝わらないことが多いCD化の弱点を象徴していますので、あえて併記しておきます。
ただ、ここでのハレ管の響きはやや量感、重量感に欠け、全体の響きも、ティンパニが硬い響きで強打される箇所以外は、雑然とした印象が最後まで拭えません。第2楽章や終楽章は、構築の妙が光り、終楽章最後の4小節の響きは、素晴らしく凝縮し切っているだけに、素朴なニュアンスばかりが目立ってしまうのが残念でなりません。 |
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第1楽章のツボ |
ツボ1 |
テンポ自体中庸。クラリネットの音色が、2管の効果とともに暗い色彩を見事に表出。弦も入念に表情が付いている。 |
ツボ2 |
冒頭は、バルビローリ特有の短めのスタッカート。クラリネット&ファゴットは線が克明。悲哀よりも素朴さを感じる。 |
ツボ3 |
多少アクセントが付く。 |
ツボ4 |
虚弱の振幅の幅は大きくなく、インテンポでで直進するが、響きが熱い。スラー付きのスタッカートは、通常より短め。楽譜に忠実かもしれない。 |
ツボ5 |
NYO盤同様、完全なインテンポ。ここでも共感の熱さが顕著。 |
ツボ6 |
animatoの箇所で少しテンポを落とすだけで、基本的にインテンポを崩さない。 |
ツボ7 |
南国的な色彩。 |
ツボ8 |
この直前で大きくテンポ・ルバートして、ここから初めてテンポが落ちる。172小節で現にポルタメントをかける。この後も、弦の上行音型ではポルタメント気味にするが、恣意的な嫌らしさはない。 |
ツボ9 |
前の部分でテンポを速めておいて、そのままインテンポで直進。パッション炸裂!NYO盤では最後にテンポを徐々に落としていたが、ここでは最後までそのテンポをキープしている。 |
第2楽章のツボ |
ツボ10 |
ここの弦も線が明確。過度に感傷に浸らない。テンポもやや速めで毅然と佇まいを醸し出す。ホルンは巧妙さはなく、ロシアの大地よりもイギリスの田園風景を思わせる雰囲気。その後のオーボエが絶品!ロスウェルか? |
ツボ11 |
あまり響きに厚味がないが、豊かに呼吸している。 |
ツボ12 |
ここでも泣かない。クラリネットの音色は明快で素朴。テンポは変えない。 |
ツボ13 |
弱音寄りの優しげなピチカート。 |
ツボ14 |
深く熱い呼吸で盛り上げ、フォルテ4つの直前で急加速して、見事な頂点を築くが、NYO盤ほどの熾烈さはない。 |
ツボ15 |
繊細なカンタービレだが、ホルンの伴奏のひなびた音色が不釣合い。174小節頭(10:51)でポルタメントが掛かる。 |
第3楽章のツボ |
ツボ16 |
少しだけテンポを落とす。 |
ツボ17 |
器用さは全くなく、牧歌的なニュアンス。 |
ツボ18 |
しなやか。 |
第4楽章のツボ |
ツボ19 |
弦の導入は、最初やや不安げに始る。音量もむしろ控えめで、風格よりも優しさが先に立つ。テンポは標準的。 |
ツボ20 |
ホルンはほとんど裏方。 |
ツボ21 |
クレッシェンドしてから一撃を加え、その後は強弱をつけずにトレモロを続ける。テンポは標準的なもの。弦の切り込み激しいものの、量感に乏しい。 |
ツボ22 |
無視。 |
ツボ23 |
ことさら強靭ではないが、バランス良好で、しっかり主張を果たしている。 |
ツボ24 |
テンポ不変。 |
ツボ25 |
強打ではないが、弱すぎでもない。 |
ツボ26 |
テンポ不変。 |
ツボ27 |
中庸のテンポを守り通す。ティンパニの固い強打が、全体の全体の緊張を高めるのに効を奏してしている。 |
ツボ28 |
本来の音価よりかなり長い。 |
ツボ29 |
重量感に欠けるが、やや遅めのテンポで入念にフレージング。 |
ツボ30 |
弦は音を切るが、トランペットは切らない。 |
ツボ31 |
改変している。 |
ツボ32 |
良く鳴っている。このモルト・メノ・モッソ(9:54)からは再び荘重なテンポに切り替えるのはNYO盤と同じ。その後は、少しだけ加速する程度。 |
ツボ33 |
最後の4小節で和音の打ち込みは、渾身の強打!全体も見事に凝縮。 |