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カリーナ・カネラキス |
| ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 |
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LPO
LPO-0137(2CD)
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| 録音:2023年3月15日 ロイヤル・フェスティバル・ホール(ステレオ・ライヴ) |
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| 演奏時間: |
第1楽章 |
14:06 |
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第2楽章 |
12:10 |
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第3楽章 |
5:30 |
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第4楽章 |
11:36 |
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| カップリング/チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」 |
| “恐るべき芸術的昇華!ハイセンスなチャイコフスキーを求める方必聴!” |
★父は指揮者、母はピアニスト、弟はチェリストというまさに音楽一家に育ったカリーナはヴァイオリンと指揮の両面で活躍していましたが、ラトルやギルバートの後押しもあり、次第に指揮にウェイトを置くようになりました。LPOデヴューは2018年、2019年には女性指揮者で初めてプロムスのオープニングを飾りました。同年、オランダ放送POの首席指揮者、ロンドン・フィルの首席客演指揮者に就任するという躍進ぶりです。動画サイトでショスタコーヴィチの5番を振る彼女の指揮ぶり見ると、もはや指揮者を性別で区別する必要がなくなったという印象を強く持つほど、明確な表現イメージをオケに妥協することなく伝達する力量が備わっていることが分かりますが、この「チャイ5」でも、そのことを再認識させます。
彼女が目指しているのは自然体の響きと佇まい。ヴァイオリンを対向配置にしているのもその一環と思われます。もちろん奇をてらった演出や個性のひけらかしはなく、土臭く物々しいサウンドとは無縁です。
第1楽章では、展開部における声部間の連動が緊密で見通しよく推移するのが印象的で、カネラキスの特徴の一つ。266小節のティンパニはなぜか音程を下げていますが、その真意は謎。驚くのは再現部冒頭のファゴット!ピアニッシモを無視して即興的なフレージングを展開。ここだけ取ると味わい満点ですが、全体のバランスからするとかなり異質です。
ソロの奏者では、第2楽章のホルンがとてつもなく巧い!7:20以降のテーマに寄り添うオーボエの美しさを筆頭に、副次主題の再現に至るまでのテンポ・ルバートのセンスは、カネラキスの真価を如実に示しています。第3楽章は近年稀に見る完成度!吸い込まれそうなほどしなやかなフレージングは、洗練美の極み!中間部の淀み皆無の楽しさも格別で、あっという間の5分半。終楽章は実に爽やかでありながら、決して無機質に傾くことがありません。172小節からの運命動機は重戦車モードとは一線を画しており、カネラキスが目指しているのはローカル色を炙り出すことではなく、グローバルで普遍的なチャイコフスキーであることが分かります。楽章終盤10:57から僅かに加速して546小節のの4分の6拍子へと自然になだれ込むスタイルというのは、前代未聞のスマートさ!この自然さは奇跡と言えるかもしれません。
なお、ライヴ録音とされていますが、会場ノイズは聞き取れず、最後の拍手もありません。【2026年2月・湧々堂】 |
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| 第1楽章のツボ |
| ツボ1 |
標準的なイン・テンポを基調としているが、音色は太く濃く、ふくよかな呼吸感を伴っているので短調に陥らない(。クラリネットの歌いこみも安定。 |
| ツボ2 |
クラリネットとファゴットのテーマは哀愁を込めすぎずむしろ淡白に推移。 |
| ツボ3 |
楽譜通り。 |
| ツボ4 |
楽譜通り、感傷が入り込み余地を残さないようにしているかのよう。 |
| ツボ5 |
テンポは変えず、呼吸と一体化させた強弱変化によってエスプレッシーヴォを実現。 |
| ツボ6 |
最低限のルバートのみでテンポの揺らしはほとんどないが、爽やかなフレージングの中にほんのり哀愁が滲む。 |
| ツボ7 |
続く副次主題に備えてか、強靭なフォルティッシモではなくソフトで軽妙なピチカート。 |
| ツボ8 |
デリカシー溢れるフレージング。181小節の4分音符に僅かにポルタメントが掛かる。 |
| ツボ9 |
16分音符は僅かに聞き取れる、テンポは不変。 |
| 第2楽章のツボ |
| ツボ10 |
冒頭の低弦はヴィヴラート抑えめ。強弱記号を遵守。ホルンは極美!技術的にも盤石で、息の長いフレージングをじっくり聴かせる。 |
| ツボ11 |
呼吸と一体化したふくよかなフォルティシシモ。 |
| ツボ12 |
巧いだけでなく音の意味を感じきった妙技! |
| ツボ13 |
ホルンのテーマと同じテンポ。縦の線が完璧の揃い、イン・テンポを貫きながら切なさを表出。 |
| ツボ14 |
爆発力ではなく、洗練されたタッチで内燃エネルギー増幅。感覚的な威圧を避けている。 |
| ツボ15 |
楽譜どおり。 |
| 第3楽章のツボ |
| ツボ16 |
一瞬テンポを落とす程度。 |
| ツボ17 |
対向配置の効果もあってパート間の連動の楽しさが余すことなく繰り広げられる。 |
| ツボ18 |
美しい一本のライを形成。 |
| 第4楽章のツボ |
| ツボ19 |
ヴィヴラート控えめ。威厳よりも品格重視。 |
| ツボ20 |
ホルンは完全に裏方。 |
| ツボ21 |
ティンパニはスコアの指示どおり。テンポはカラヤンよりやや速い。木管楽器の対旋律は浮上せず曖昧。 |
| ツボ22 |
控えめながらアクセントあり。 |
| ツボ23 |
第1ヴァイオリンの後方から、くっきりとした輪郭を伴って聞こえる。 |
| ツボ24 |
主部冒頭のテンポに戻る。 |
| ツボ25 |
強打ではないが、克明な一撃。 |
| ツボ26 |
そのままイン・テンポ。 |
| ツボ27 |
あまり切迫感はないが、自然なテンポ運び。 |
| ツボ28 |
8分音符の音価は長め。最後のティンパニ一撃はなし。 |
| ツボ29 |
明るく健康的な進行。 |
| ツボ30 |
四分音符と付点二分音符は音を切る。トランペットの音量が小さい。 |
| ツボ31 |
499小節で一旦音量を落とすムラヴィンスキー・スタイル。ここもトランペットの音量が弱いので不確かだが、改変型と思われる。ここまで一貫してトランペットの音量を抑制しているのは全体の響きが安定的に美しく融合させるための作戦かもしれない。 |
| ツボ32 |
強奏ではないが明瞭な響き。 |
| ツボ33 |
響きを凝縮しきったパーフェクトなイン・テンポ。 |