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器楽曲S〜シューマン



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シューマンSCHUMANN

Simax
PSC-1307(1SACD)
ショパン:即興曲第1番変イ長調Op.29、
 3つの新しいエチュード(1939)、
 即興曲第2番嬰ヘ長調Op.36、
 即興曲第3番変ト長調Op.51、
 ロンド.変ホ長調Op.16(序奏とロンド)
シューマン:花の曲Op.19、森の情景
クリスチャン・イーレ・ハドラン(P)

録音:2009年9月4日-6日 ソフィエンベルグ教会(オスロ)
“奇跡的な余韻!ピアニストの中のピアニスト、ハドランのデビュー盤!”
クリスチャン・イーレ・ハドラン(1983-)は、ノルウェー南西部の都市、スタヴァンゲル出身。11歳でルーガラン音楽院に入学し、その後イジー・フリンカに教わってから、フリンカの弟子、オスロのアンスネスの下で学びました。ソリストとしてノルウェー国内はもとより、ロンドン響、バイエルン放送響に客演、室内楽奏者としてトルルス・モルク、ラーシュ・アネシュ・トムテル、クレメンス・ハーゲン、クリスチャン・ポルテラ、ルネー・フレミングらと共演を重ねました。このCDが彼のソロ・デビュー盤となりますが、なんとも筆舌に尽くし難い素晴らしい演奏なのです!
ショパンの即興曲第1番から驚愕の名演!タッチの使い分けが変幻自在なうえに、天才的閃きに満ちた歌の放射。ともすると独り善がりの嫌味な演奏になりかねないスタイルですが、ハドランのピアニズムは至純な表現そのもので心を奪われます。キーワードは「余韻」!
続く「新しい練習曲」第1番は霊妙を極めたタッチ!行き場のないような楽想に忘我的なニュアンスを見事に重ね、瞬時に聴き手のイメジネーションを喚起させる音像を形成。第3番の色彩濃淡の多彩さにもうっとり。「ロンド」は最初の20秒で只ならぬ名演を確信させる幻想性的ニュアンス!その夢を覚ますような1:01に打ち鳴らされる高音硬質タッチは決して大音量でないにもかかわらず胸を突き刺す衝撃力!この魔力はどこから来るのでしょうか?その後の楽想の激変ぶりにここまで即応しきった演奏は聴いたことがありません。まさに今即興で奏でている生まれたての音楽として響きます。そのスタイルでシューマンを弾くとどうなるか?もちろん大変な感動が待ち受けています!
「花の曲」は、この曲をとりとめのないサロン音楽と思ったら大間違いで、シューマン自身の心象風景を映し出したような奥の深いニュアンスに気付かされること必至です。
「森の情景」も変幻自在にロマンティックなニュアンスを散りばめた感動の逸品!第1曲は「あまり速くなく」という指示に反し、絶妙なアゴーギクも交えて一筆書きのようにサラッとした筆致で幻のような空気を醸しだして開始。第2曲はこれまた他に例がないほど強弱の対比を効かせて独特の緊張感。他の誰とも違う表情で驚かされるのは第6曲「宿屋」。音量を控えめにして平穏な会話的な雰囲気を作り出し、その弱音が痩せることなく余情を紡ぎながら進行します。そんな魅惑のピアニズムにかかると、ただでさえ幻想的な「予言の鳥」も、まさに現実離れした美しさと煌きに変貌!音と音の間の空白に漂うあまりにも神秘的な余韻は、森の精霊がひそひそ話す様子そのもの。第8曲「狩の歌」も単純なマーチではありません。強弱の使い分けが精妙を極めると同時に色彩を刻々と変化させて、曲のイメージを何倍にも膨らませます。特に中間部のなんと想像力豊かなこと!ほんの一握りのピアニストにしか実現できない本当の「余韻のピアニズム」を是非ご堪能下さい! 【湧々堂】

子供の情景、ウィーンの謝肉祭の道化、幻想曲
ジョン・リル(P) 2003年デジタル録音
EMI
5858992[cfp]
“魔法のタッチ!「子供の情景」第12曲の信じ難い陰影!”
ひそやかに慈しみを持って「子供の情景」第1曲が奏でられる演奏は数々あれど、この演奏のように優しくリ揺りかごを揺らすような呼吸感と、タッチの美しさ、ハーモニーの繊細な表出までを同時に感じさせる演奏は少ないように思います。この優しい風情はリルの強面からはとても想像できないもの。第2曲の硬質なタッチと強弱の緻密な配分、第3曲の急速テンポの中でタッチがしっかり着地しているのものも、リルならではの律儀なピアニズムの現れですが、厳格なだけで音楽が湧き上がってこない演奏とは一線を画し、その集中力に支えられたフォルムがここでは音楽的な味わいに不可欠なものになっているのです。第6曲の風格美からアタッカで滑り込む「トロイメライ」の美しさも破格!リルの弱音タッチの美しさをたっぷり堪能できると共に、これ程思慮深く、懐の深さを感じさせる演奏は少ないでしょう。第12曲「「眠りに落ちていく子供」は特に必聴!第1曲同様に優しい風情に溢れていますが、ほとんどインテンポにもかかわらず、次第にリタルダンドしているかのような錯覚を覚えるほどタッチとペダル操作の加減が絶妙を極め、陰影に富んだニュアンスに惹きつけられます。終曲の長い音価に付随する余情も琴線に触れます。「幻想曲」も名演奏!激情の迸りを象徴する第1曲の冒頭は、やみくもにパワーを放出する手法はとらず、全体の起承転結を見越したフォルムの美しさが際立っています。終曲の浮世離れした幻想のテクチュアを精妙に描き切った素晴らしさにも唖然。リヒテルやアシュケナージくらいしか代表盤として取り上げられない「ウィーンの謝肉祭の道化」もそれらと堂々比肩する名演奏。リルの強健なタッチと清潔なリズム感が一体となり、凄い手応え!第1曲4:27からの重厚な響きは持ち前の集中力と共に説得力絶大で、コーダの畳み掛けも激烈!技巧炸裂の終楽章の安定感も見事。

ダヴィッド同盟舞曲集、リスト:ピアノ・ソナタロ短調
ミハイル・ヴォスクレセンスキー(P) 2001年デジタル録音
Classical Records
CR-008
“ストイックな構築の中に無限のニュアンスを込めぬく偉大な才能!”
まずリストが絶品!冒頭で叩きつけられる轟音は垂直に脳天直下!それでいながら音は割れず、貴族的なニュアンスに溢れ、絶妙なペダリングと共に、音として鳴り切っているのにまず唖然とさせられます。5:54からのリリカルな弱音にも皮相な雰囲気が入り込む余地など無く、深い祈りの音楽として着実に響きます。彼の破格の技巧が極限に上り詰めるのが19:18から主題が回帰して以降の急速モード!21:30以降の激烈な打鍵の応酬を目の当たりにすると、演奏家とは音楽性のみならず、かくも殺人的な運動能力が必要なものなのかと、改めてリストが遺した遺産の凄さにも圧倒されることになります。コーダの低音部でうごめくハーモニーの揺らめきの完璧な表出も驚異です!ピンと張り詰めた弱音と、神々しい轟音を同時に味わえる贅沢な一枚です。シューマンでは、彼が、タッチにおいても精神面においても自分を厳しく律していることをひしひしと感じさせ、一見とりとめのないこ小品の集まりが、これほど強固に連動しあっている例に今まで出会った記憶がありません。各曲の表情が濃密であるだけでなく、それらの表情が全体の最後に低音のハ音が12回鳴らされるまでの伏線であることに気付くと、最後の余情も更に倍増されます。第3曲のリズムの変化に完全に対応しようとする厳格さ、「単純に」と題された第4曲の全く取りこぼしのないニュアンス配分など、聴き逃せないニュアンスばかりですが、どうか全体を貫く強靭なメッセージを体全体で受け止めてみてください。ヴァスクレセンスキーは、スクリャービン演奏の権威として知られていますが、この強靭な精神力があってこそ、分裂ぎみのスクリャービンの曲であっても、雰囲気に流れず、確実に聴き手の胸に根を下ろすのではないでしょうか?録音も見事!

交響的練習曲、クライスレリアーナ、謝肉祭
ゲザ・アンダ(P) 1958年 ザルツブルク モノラル・ライヴ録音
ORFEO
ORFEOR-295921
“強靭な打鍵と構築で圧倒する鮮烈なシュマン!!”
「交響的練習曲」は、第4変奏に象徴されるように、アンダの打鍵は強靭この上なく、シューマンがこの曲に込めたピアニズムの極限をリアルに再現する姿勢で貫かれた凄演!安易な感傷が入り込む隙など全くなく、シンフォニックという名のとおりの壮麗な音像の構築が目の前に広がります。第9変奏〜第10の破壊力も尋常でなく、しかもそこには高潔な精神が宿っています。第11変奏では気品に満ちたピアニッシモを聴かせますが、タッチは透徹の限りを尽くし、しっかり前を見据えた気丈さがアンダならでは。最終変奏は、刃金のタッチが容赦なく襲い掛かり、圧倒的なクライマックスを築きます。「クライスレリアーナ」は高揚感、虚脱感、陶酔感と目まぐるしく変わる曲想の持つ表情に完全対応。“モルト・プレスト”のデモーニッシュな畳みかけは、この曲の現実離れした幻想を余すところなく再現した瞬間として忘れられません。終曲の1:20からの怒涛の打鍵は、完全に常軌を逸するスレスレ!この2曲だけでも、他に並ぶものがない独自の逞しさに溢れるシューマン像を打ち立てていますが、「謝肉祭」に至っては、完全にこの曲がアンダのために存在すると言いたくなるほどの絶大な説得力を持って迫ります。“ピエロ”後半で異様なまでに低音部を強調し、続く“道化役者”では強弱を激烈に対比させながら、きらびやかな色彩も織り交ぜ、愉悦の空間を気高く演出。“めぐりあい”の両端の素朴な進行と中間のエレガンスとの対比の絶妙さ、“告白”の優しさと強さを兼ね備えたニュアンスから“散歩”への美しい橋渡しなど、今まで気付かなかったこの曲の魅力がリアルに晒される瞬間が目白押しです。ケンプのような温かみのある演奏とはあまりにもかけ離れていますが、シューマンのエキセントリックな面と激変するニュアンスに対応したアンダの絶頂期のピアニズムを知る上で欠かせない一枚です。録音も、モノラルながら良質。

謝肉祭、クライスレリアーナ、トッカータ、アラベスク、蝶々、色とりどりの小品、ノヴェレッテより
ユーリ・エゴロフ(P) 1978年、1981年、1985年、ステレオ録音
EMI
5741912
(2CD)
“エゴロフがEMIに遺したシューマン録音の全て!”
「謝肉祭」は“前口上”重量感たっぷりの打鍵が拍節感をしっかり携えて確固として鳴り渡り華々しいドラマの幕開けに相応しい空気を一気に築きます。“オイゼビウス”の内省の美、“めぐりあい”のワクワク感は心に染み、“ドイツ風ワルツ”の驚異的な表現の幅は聴き応え満点!「アラベスク」はエゴロフ特有の決然としたタッチとメランコリーが一体となったときに発せられる美しいニュアンスを堪能。「色とりどりの小品」はリヒテルに迫る名演!第5曲(「音楽帳」第2曲)の音の跳躍は、アクロバット的にならずに華麗な色彩を醸し出し、第6曲の濡れたタッチは陶酔的な美しさ。“夜想曲”は、繊細な色彩表出、終曲の装飾音のきらめきにも唖然!エゴロフはソ連時代にロン・ティボー・コンクール、チャイコフスキー・コンクール、エリザベート・コンクールと立て続けに出場したものの優勝は果たせず、1977年にはオランダへ亡命。同年ヴァン・クライヴァーン・コンクールに出場しましたが、予選通過止まり。EMIと専属契約を果たすのは1981年ですから、1978年にアムステルダムで録音された「クライスレリアーナ」と「ノヴェレッテ」は、この時期のエゴロフを知る上で大変貴重なもので、この時点で、技巧に物を言わせたり、表面的な演出で驚かせようなどというそぶりの一切ない、純潔な音楽性は出来上がっているのが確認できます。特に「クライスレリアーナ」は古今の録音を通じても、その尋常ならざる没入、全体のフォルムの潔癖さにおいて、トップクラスであることは間違いありません。当たり前のことですが、改めてコンクールというものが、出場者の一面しか救い上げられないという現実を痛感させられます。

謝肉祭、ョパン:アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズ、ストラヴィンスキー:「ペトルーシュカ」の3楽章
イーゴル・カメンツ(P) 1993年 デジタル録音
PRIMAVERA
AMP-5001
“驚異の天才が見せつける表現力の幅の広さ!!”
1965年、ハバロフスク出身の俊英カメンツは、なんと10歳でハイドンの交響曲を指揮し、11歳から13歳までは、ソビエトの各オーケストラに客演指揮者として迎えられたという大天才!ピアノは名教授、ヴィーターリ・マグルリスの下で研鑽を積んでいます。そのピアニズムは、全体の構築力と最高に美しく有機的なハーモニーのセンスが抜群で、明らかに第一級の芸術性の持ち主です。「謝肉祭」冒頭のテンポの折り目正しさ!中でも“再開”などは、ロシア系ピアニストが弾くとアクセントが濃厚すぎる場合がありますが、彼に限ってはそんな心配は無用です。一方、ショパンストラヴィンスキーでは、これが同一人物とは思えぬほど、技巧もパッションの増幅され、ドラマチックこの上ないピアニズムを披露します。今後の活躍が本当に楽しみです。

謝肉祭、リスト:パガニーニの主題による大練習曲、
ハイドン:ピアノ・ソナタ第48番、ショパン・ピアノ・ソナタ第1番、ボレロ、夜想曲:Op.9-1.2.3、他
ニキタ・マガロフ(P) 1961年、1960年(ハイドン)、1974年〜1977年(ショパン)
ハイドンのみモノラル録音
PHILIPS
456898(2CD)
“作曲家と同じ目線で奏でるということ。”
演奏家の多くは、その使命を「作曲家へ奉仕すること」と答えますが、マガロフほど楽譜を大上段から見下ろさず、作曲家と共にフレーズを紡ぎ出すピアニストはいないのではないでしょうか?シューマンにしてもリストにしても、叩きつける打鍵や、音圧で圧倒する凄みはありません。しかし、それらを避けてでも醸し出さなければものが、ここにはふんだんに詰まっているのです。特にリストの“ラ・カンパネッラ”などは、一般的にはミス・タッチが一切なく、打鍵が鋭利であることが、名演としての暗黙の条件になっている(フジ子ヘミングの心に染み入る演奏は別として)フシがありますが、マガロフは、そんな風潮に反抗する意味からではなく、当然のことのように、音符の一つ一つを丹念に奏でることだけに専念し、今まで忘れかけていた作品本来の味わいに気付かせてくれます。鐘がトリルで連打され、テーマが再現されるところ(2:46)などは、その鐘の音よりも遠くからテーマが近づいてくるような遠近感が実に感動的ですが、これも頭で考えた印象を与えず、ニュアンスが自然と湧き出ます。“狩り”のグリッサンドの音楽的な美しさも忘れられません。「謝肉祭」も、他の演奏とはまるで別世界!単に温かい演奏というのではなく、音を懐に蓄えてから醸し出すゆとりがなければ、この味わいはありえないでしょう。ショパンの夜想曲Op9-1も、彼の真骨頂です。

色とりどりの小品、ムソルグスキー:展覧会の絵、ドビュッシー:映像第2集〜葉ずえを渡る鐘の音
スビャトスラフ・リヒテル(P) 1968年11月19日 モノラル・ライヴ録音
BBC LEGENDS
BBCL-4103
“リヒテルだから実現できた驚異のプログラム!!”
タッチの色彩センスを問われる曲のみで構成!「展覧会」は音圧一辺倒の演奏とは次元が異なり、磨き抜いた音色、厳格なアーティキュレーションで幽玄の森へと誘うのです。強靭な打鍵を要求される“ブイドロ(牛車)”でさえ極美のタッチを死守。“リモージュ市場”の堅固な拍節感から生じる凄味もリヒテルの真骨頂。しかしそれ以上に感銘深いのがシューマン!モノラル録音であることなど完全に忘れてしまうほど、文字通りの色彩の微妙な綾を完璧に表出!シューマン晩年の鬱状態を丸ごと反映したかのような内面性の深さを前にして、もはやこれ以上ものを望むことなど出来ません。第4、7曲の瞑想性には言葉を失いますし、終曲に至ってはもう華麗なピアニズムの応酬!あまり頻繁に弾かれることのない曲ですが、これ以上の高みに達したこの演奏には当分出会えないでしょう。モノラルながら音質良好。

アベッグ変奏曲、蝶々、シューベルト:即興曲Op142-3、ブラームス:「「6つの小品」〜ロマンス、間奏曲Op118-2、メンデルスゾーン:厳格な変奏曲、ファニー・メンデルスゾーン:メロディOp5-4、ノットゥルノ ト短調
仲道郁代(P) デジタル録音
BMG
BVCC-34011
“ただの小品集ではない!世界へ発信したいこの音楽性!!”
定価
大手のレコード会社(特に日本)の中には、有名曲をたくさん詰め込んで、ビギナーにもマニアにも買ってもらえるCDを売り出せば、まず確実な売り上げに結びつくという固定観念を持っているところがあり、一方マニアの人の中には、小品集であるということだけで自分には関係ないものとして遠ざけてしまう傾向があります。しかしこのCDは、そんな安易な発想で作られたものでもなければ、音楽に精通した人が聴かないで済まされるCDでもありません!まず収録曲目!「乙女の祈り」などを含むお気軽なものではないことは曲目を見れば一目瞭然。時代的なまとまりをもたせたコンセプト・アルバムであることも明白です。しかも演奏内容が、「円熟」と言っては失礼かもしれませんが、音楽の骨格が太く、フレーズが伸びやかに飛翔する近年の仲道の本領を余すところなく詰め込んだ逸品揃いです!「蝶々」の各変奏の濃厚な描き分け、リズムの弾力の意味深さは、日本人的感性、または教科書的な演奏とは次元が異なり、長年弾き込んできた巨匠的な風格さえ感じられます。更に驚きは「即興曲」の甘美なロマンチシズム!開始早々テンポを揺らし、タッチもなんと柔らかいこと!あのシュナーベルの歴史的名演奏の方が現代的に感じられるほど没入し尽くしながら、作品の美しいフォルムを見事に再現しているのです。あえて夕暮れ時を待って録音したという最後に置かれたブラームスも、静かな情感が心に染み入ります。言うまでもなく、ここにはアイドル的な軽さなど存在しません。

子供の情景シューベルト:舞曲集、ショパン:アンダンテ・スピアナート、チェルニー:ロンド主題による変奏曲、
フンメル:グルックの「アルミーダ」の主題による変奏曲
リチャード・バーネット(P) 1982年 ステレオ録音
Amon Ra
CD-SAR-7
“バーネットの楽器をいとおしむ気持ちが音楽のニュアンスに転化!”
1826年のグラーフ製のフォルテピアノを使用。フィンチコックス楽器博物館の館長を勤める歴史的鍵盤楽器の権威バーネットが、楽器への愛情を一心に込め抜いた珠玉の逸品です。現代楽器のようなピーンと張った響きは当然望めませんが、当時の音楽の息吹を伝えるだけでなく、バーネットの音楽家としてのセンスを全編に感じる仕上がりとなっています。ショパンなどは、キラキラと硬質に輝く響きに慣れた耳からすると感覚的に新鮮で、特に前半はペダル効果と思われる雲の中をさまようような響きが印象的。シューベルトもたまらなく魅力的!この楽器でなくては醸し出されない愉悦感と程よくひなびた音色が心地よく、バーネットも心から共感し、全身で曲と戯れている様子が目に浮かびます。そんな風情をそのまま持ち込んだシューマンは、これまた心に染みます。第1曲で左手の声部を際立たせたりする細やかさも学究臭などなく、素朴な愛情の現われとして自然に心に響きます。第3曲“鬼ごっこ”の加速の妙と生命感も「展覧会の絵」の一節のようにリアル。そして蜜のようにとろける“トロイメライ”!決して学術的な資料としてではなく、研ぎ澄まされた技巧で再現される以前の本当の作品の姿を味わうCDとして注目して頂きたいものです。

シューマン:幻想曲、ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番「テンペスト」
イリーナ・メジューエワ(P) 2003年〜2004年 デジタル録音
若林工房
WAKA-4104
“驚異的な表現力の広さ!!”
DENONを離れてからのメジューエワの演奏は、どれを聴いても彼女の音楽性の全てを出し尽くしたものばかりで、その都度「これこそ最高峰!」と思わせる魅力に溢れていますが、この「幻想曲」(DENONの録音から5年ぶりの再録音)もパーフェクト!その題名に相応しいロマンの飛翔、シューマン特有の色彩の揺らめき、内面ドラマを一貫して築き上げた演奏が決して多くないだけに、それらの条件の全てを満たしたこの演奏の価値は計り知れません。冒頭でいきなり色彩をぶちまけるのではなく、確かなフォルムを携えて気品を湛えているのからして、メジューエワの真摯な姿勢を窺うことができます。3:36の極限のピアニッシモの一音から約6秒にも及ぶ無音にかけての意味深さ!その直後のテーマ復活との見事なコントラストも実に鮮やか。中間部の艶やかなタッチには熟成の精神が漲り、最後の“遥かな恋人に”のモチーフの余韻も、しっかり聴き手の心に根を下ろします。第2楽章も派手な行進曲のノリに陥らず、何と格調高いことでしょう!それでいながらリズムの跳躍は真の生命力に沸きかえり、最後のテーマが戻ってくる直前の高音域のリズムの華やぎは、まさにシューマン独自の愉悦のニュアンスそのものと言いたくなります。息の長い旋律線に一貫して緊張を張り巡らせた第3楽章も、ノクターン風の優美さに止まらない深い内面のドラマを感じさせます。「テンペスト」も、激変するテンポと強弱の対比、緻密なペダル・コントロール、長い持続音の緊張の維持と、これまたこの曲に不可欠な要素を余すところなく盛り込んだ名演!第1楽章の展開部で頂点をその後半に置くことを目指した着実な進行は、彼女が決して目の前の音符を微視的に捉えず、作品の全体像を感じ取っている証しではないでしょう。硬質なタッチで自然なアクセントを配しながら、フレーズのうねりがくっきりとした輪郭を伴ってで表出される終楽章でも、彼女の並外れたセンスを痛感します。



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