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殿堂入り: 交響曲  管弦楽  協奏曲  器楽曲  室内楽  声楽曲  オペラ  バロック レーベル・カタログ チャイ5



チャイコフスキー:交響曲第5番〜全レビュー
TCHAIKOVSKY : :Symphony No.5 in e minor Op.64
ピエール・モントゥー(指揮)
Pierre Monteux



掲載しているジャケット写真と品番は、現行流通盤と異なる場合があります。あらかじめご了承下さい。



チャイコフスキー:交響曲第5番

ピエール・モントゥー(指)
ボストン交響楽団
第2楽章ホルン・ソロ:ジェームズ・スタリアーノ
WEST HILL RADIO ARCHIVES
WHRA-6022(8CD)
廃盤
録音:1957年4月12日 ボストン・シンフォニー・ホール(モノラル・ライヴ)
演奏時間: 第1楽章 13:40 / 第2楽章 12:14 / 第3楽章 5:52 / 第4楽章 11:58
モントゥー・イン・ボストン - 1951-58ライヴ録音集
“ダントツのヴォルテージ!既に完成されていたモントゥーのチャイ5解釈の真髄!”
★2025年現在、これがディスクで聴ける最も古いモントゥーのチャイ5の録音。この日の他の演目は、メンデルスゾーン:「フィンガルの洞窟」とストラヴィンスキー:「春の祭典」でした。
 まず、既にこの時点で晩年まで一貫して踏襲することになる全体の構成、ヴィジョン、細部のアプローチが完全に練り上がっていたことが確認できます。そして、その演奏の熱さが尋常ではない!太く濃い音色といい、筋肉質な力感といい、「ライヴならでは」という範疇を超えており、もちろん「爆演」という一言では収まらず、ミュンシュのようなタガを外した暴走とも一線を画します。空中分解寸前のところで強力に手綱を締める知的制御力いうモントゥーのあまり語られない特質を思い知る格好の録音と言えましょう。
 第1楽章の展開部直前でのテンポを煽るところから始まり、その後はヴォルテージが増す一方。第2楽章は各場面をメリハリをもって描き分け、表面的に感傷的な表情を施してお茶を濁す演奏とは次元が違います。とにかく呼吸が本物なのです。第3楽章は中間部の淀みのなさが、ボストン響の楽器自体の響きの素晴らしさを堪能。そして感動的なフィナーレ!他の録音でも見られる188小節で大きくテンポを落として運命動機を強調する解釈は、そのテンポのコントラストの強さ、ニュアンスの重みが他とは段違いで強烈。後半の全休止前の切迫感からコーダにかけて一切弛緩を見せずに強固なアンサンブルと集中力でコーダの大団円を迎えるまでの見事さを目の当たりにすると、モントゥーのチャイ5のベスト1はこれだと断言しても良いと思います。音質もモノラルながらとてもクリア。
 これは、モントゥーの指揮芸術が、スタイルの新旧を問わず普遍的な価値を誇る一級品であることを如実に証明死ている点でもかけがえのない貴重な録音なのです。【2025年9月・湧々堂】
第1楽章のツボ
ツボ1 中庸のインテンポ進。クラリネットも弦の刻みもレガートを避けた素朴な表情で開始したかと思いきや、11小節から急にセンチメンタルな表情に変化行する。特に低弦とクラリネットとのブレンド感が聴きもの。
ツボ2 クラリネットと弦の溶け合い方が素晴らしい。
ツボ3 デリカシー満点。
ツボ4 テンポをごく僅かにテンポを落とす。テヌートで甘美さを協調このバランス感覚の素晴らしさはこの録音特有のもの。
ツボ5 テンポを一弾落とす。その濃厚さ、圧の強さは、モントゥーのチャイ5録音の中でもトップクラス。
ツボ6 アニマートでのはち切れんばかりの幸福感の表出は、他の指揮者ではなかなか聴けないもの。
ツボ7 養分をたっぷり湛えたピチカート。
ツボ8 憂いを捨てきったラテン的な幸福感の発散ぶりが尋常ではない。
ツボ9 16分音符は聞き取れない。その木管がこれほど憑かれたような切迫感を露骨に出した演奏は他に思い当たらない。ここからテンポアップするのは他の録音でも聞ける解釈だが、やはりここでも暑さが尋常ではない。
第2楽章のツボ
ツボ10 冒頭の弦は、1小節+2小節に区切って丁寧にフレージング。ホルンはどこかたどたどしいが、それが切ない表情として迫る所もある。
ツボ11 深い呼吸感をストレートに飛翔させた見事な高揚!
ツボ12 テンポは変えない。クラリネットはニュアンスが中途半端で素っ気ない。ファゴットは音量は弱い。
ツボ13 縦の線が見事に揃い、弦の温もりのある質感も十分に感じ取れる。
ツボ14 モントゥー他の録音同様に凄い粉砕力!その威力はこれがトップか?
ツボ15 長いスパンで最後の一音に向けてじっくりとテンポを落とす。
第3楽章のツボ
ツボ16 わずかにテンポを落とす。
ツボ17 ややテンポアップ。古今を通じて各パートがこれほど有機的に連動している例は稀。
ツボ18 やや遠くて曖昧だが、美しく一本のラインを形成しているように聞こえる。
第4楽章のツボ
ツボ19 テンポは標準的。威厳ある進行。20小節からテンポを落とす
ツボ20 ホルンはオーボエの主旋律とほぼ同等の音量で吹いている。
ツボ21 テンポはカラヤンよりやや速いテンポ。ティンパニは、58小節冒頭に強靭な一打、その後は一定音量でロールを継続。
ツボ22 完全に無視。
ツボ23 ごく標準的なバランスだが、前のめりな熱気が伝わる。
ツボ24 主部冒頭と同じテンポ。
ツボ25 強烈な一撃。
ツボ26 そのままイン・テンポで突進。
ツボ27 ごくわずかにテンポを落とす。452小節でガクンとテンポを落としてトランペットのフレーズを強調
ツボ28 本来の音価よりもかなり長め。ティンパニは最後にアクセントを置かない。ティンパニの力感が凄い!
ツボ29 弦もトランペットも全身全霊で勝利を讃えて進行!ここまで徹底して熱を込めないとこのシーンの演奏は厚みを欠く響きに陥ってしまいがち!
ツボ30 弦は音を切り、トランペットはレガート気味。ティンパニの打ち込みも激烈!
ツボ31 弦の音型と合わせる改変型。改変しないなどありえないと言わんばかりの咆哮!
ツボ32 トランペットもホルンも極限の強奏!
ツボ33 最後の4小節のみテンポを落とし、ティンパニの強烈な打ち込みとともに締めくくる。

チャイコフスキー:交響曲第5番
ピエール・モントゥー(指)
ボストン交響楽団
第2楽章ホルン・ソロ:ジェームズ・スタリアーノ
BMG
09026-61901
廃盤
録音:1958年1月8日 ボストン・シンフォニー・ホール(ステレオ・セッション)
演奏時間: 第1楽章 13:26 / 第2楽章 12:14 / 第3楽章 6:02 / 第4楽章 12:00
カップリング/チャイコフスキー:交響曲第4番、交響曲第6番「悲愴」
第1楽章のツボ
ツボ1
ツボ2
ツボ3
ツボ4
ツボ5
ツボ6
ツボ7
ツボ8
ツボ9
第2楽章のツボ
ツボ10
ツボ11
ツボ12
ツボ13
ツボ14
ツボ15
第3楽章のツボ
ツボ16
ツボ17
ツボ18
第4楽章のツボ
ツボ19
ツボ20
ツボ21
ツボ22
ツボ23
ツボ24
ツボ25
ツボ26
ツボ27
ツボ28
ツボ29
ツボ30
ツボ31
ツボ32
ツボ33

チャイコフスキー:交響曲第5番

ピエール・モントゥー(指)
フランス国立管弦楽団
第2楽章ホルン・ソロ:
Spectrum Sound
CDSMBA-050(4CD)
録音:1958年5月8日シャンゼリゼ劇場(モノラル・ライヴ)
演奏時間: 第1楽章 13:52 / 第2楽章 12:02 / 第3楽章 5:52 / 第4楽章 12:05
偉大なる指揮者たち ~ モントゥー、クーベリック、ディクソン、パレー、クリップス、シュミット=イッセルシュテット
“フランス的な洗練美とモントゥーの直截なダイナミズムとの融合!”
Living StageやPECO*SSCD-003などでも発売されていた録音と同一ですが、Spectrum Sound盤はフランス国立視聴覚研究所(INA)の音源を採用。より鮮明な音質となっており、これ以上の音質は望めないと思われます。
ここでも、モントゥーの基本解釈は他の盤と同じ。その迷いのない堂々たる演奏は、十分に推奨に値します、フランス流儀のオケとの化学反応と生演奏での突発的なニュアンスの発生によって、その基本解釈が微妙に違ったニュアンスを発するところが面白いのですが、モントゥーの多くのチャイ5録音の中では、総合的に見て、必聴盤というほどではない気がします。凡庸な演奏に比べたら何倍も素晴らしいのです。しかし、モントゥーのチャイ5としてはやや不徹底感が残るのです。オケがこの曲の演奏に不慣れなことが要因とシて考えられますが…。
 全楽章を通じて、モントゥー独自のストレートなダイナミズムにフランス的な洗練美が融合して、攻撃性よりもスタイリッシュな美しさと推進力が際立ちます。特に第1楽章、展開部直前や再現部直前、楽章コーダなど。展開部に入ってすぐの226小節からテンポを一弾落とす解釈はモントゥーの他の盤でも見られますが、一番徹底しているのはこの演奏。第2楽章は、管楽器のフランス風のヴィブラートや明るい音色が作品のテクスチュアに新鮮な息吹を与えるなら良いのですが、場違いな印象を与えてしまうのが残念、第3楽章は、特に中間部におけるオケの機能美不足が、楽想の愉悦感や華やぎを沸き立たせるには至っていません。終楽章は、冒頭の主題から立ち昇るニュアンスがなんとなく希薄。品位を優先し羽目を外すことを良しとしないオケの体質が、演奏の幅を狭めているのかもしれません。テンポ一つ取っても、思い切りが悪く、熱狂的な高速感は見られません。コーダに至ってようやくオケと指揮者が一心同体となったまさに渾身の熱演になるのですが、だったらそのスタンスで1楽章から実行して欲しかったとほしかった言わざるを得ないのです。
 なお、終楽章372小節冒頭の4分休符は2分休符に変更。これは、クーセヴィツキー、バーンスタインといったボストン響と縁が深い指揮者が採用している変更点ですが、モントゥーがフランスの地においてもこの変更版を採用しているということは、ボストン響由来というよりも、クーセヴィツキーにインスパイアを受けた指揮者がその解釈を踏襲していたと見るのが妥当だと思います。ちなみに、ボストン響を指揮した小澤盤(DG)もラインスドルフ盤(ICA)も、通常の4分休符です。【2025年10月・湧々堂】
第1楽章のツボ
ツボ1 中庸のイン・テンポ進行.。明るめのクラリネットと弦が均等のバランス溶け合い、淀みのないフレージングを行う。
ツボ2 やや遅めのテンポ。クラリネットとファゴットのブレンドも良好。
ツボ3 しなやかでシルキーな感触。
ツボ4 毎度のごとくスラーの8分音符でテンポを落とす旧スタイルだが、あからさまではなく、実に自然に推移。
ツボ5 直前のアッチェレランドはなく、冷静に第2主題へ移行。
ツボ6 強弱を伴ったニュアンスのコントラストはそれほど強くない。フォルティッシシモの高揚もモントゥーの他盤と比べて控えめ。
ツボ7 テンポはほとんど同じまま。ピチカートの精彩あふれる響きが印象的。
ツボ8 直前で一瞬だけテンポを落としてすぐに副次主題へ以降。その洗練されたセンスにご注目を!
ツボ9 16分音符は不明瞭で聞き取れない。ここからテンポアップするがアクセルの効きがやや遅い。モントゥーと何度もこの曲を演奏しているボストン響と違って、瞬発力が劣るのは致し方ない事かもしれない。
第2楽章のツボ
ツボ10 冒頭の低弦は、大きなスパンでフレージングすることと、付点2分音符の一つ一つを刻印するスタイルを融合。あからさまにドどちらかに傾くことのない自然な造形を目指すモントゥーらしさが出たシーン。ホルンは、いかにもフランス風のヴィブラートが印象的。その独特の風合いを活かしきれずやや暢気なニュアンスに聞こえてしまう。続くオーボエは更に明る過ぎる。
ツボ11 呼吸の振幅とエネルギーの溜め方が合致しないうちに、フォルティシシモに達してしまう感じ。
ツボ12 テンポは同じまま。クラリネットは、爽やかな朝を告げる小鳥のよう。憂いなど皆無。
ツボ13 微妙に声部バランスが崩れるが許容範囲。その後のアルコの7:32でヴァイオリンがほんの一瞬ポルタメント風に弾いており、それが絶妙のニュアンスを醸し出している。おそらく偶然の産物だと思うが、むしろこのニュアンス表出は多くの指揮者に目指してほしいと思うほど素晴らしい!
ツボ14 他の録音同様に包み隠さず激情を爆発させているが、それが表面的とは言わないまでも、どこか裸になりきれない気がする。
ツボ15 淡白なまでにサラサラと進行するのが特徴的。最後の一音に向けて少しずつテンポを落とす。
第3楽章のツボ
ツボ16 ほとんどインテンポのまま進行。繰り返し時にはテンポを落とす。
ツボ17 決してもたついているわけではないが、ボストン響ほどの機能性と求心力がないので、やや散漫のイメージ。
ツボ18 2回とも音量が弱く、ニュアンスが聞き取れない。
第4楽章のツボ
ツボ19 テンポは中庸。威厳とか風格といったニュアンスが希薄。トランペットが2つの16分音符を32分音符のように詰めて吹いているのはあまりにも気まま過ぎて、ワルター・ゲールような「味」には達していない。
ツボ20 ホルンは裏方に徹している。
ツボ21 カラヤンに近い標準的なテンポ。ティンパニは、58小節と62小節にアクセントを置いてから一定の弱音を持続。
ツボ22 完全に無視。
ツボ23 標準的なバランス。
ツボ24 主部冒頭と同じテンポ。
ツボ25 強烈ではないが、存在感を示す一打。
ツボ26 そのままイン・テンポ。なぜか、ここでもパワー噴射力は凄い!
ツボ27 少しテンポを落とす。更に452小節でガクンとテンポを落とす。
ツボ28 本来の音価よりも長め。ティンパニはやや散漫で締まりが無い。最後にアクセントを軽く置くというのも中途半端な感を否めない。
ツボ29 荘重な滑り出し。よく響きが通るオーボエの存在感が功を奏して、芯のある音像を確立。この場面の弦の輝かしさは、モントゥー盤に一貫した美点。
ツボ30 弦は音を切り、トランペットはレガート気味。ティンパニの打ち込みが強固で入魂なのもントゥー盤の常で、説得力絶大。
ツボ31 弦の音型と合わせる改変型。改変型を採用するなら、ここまでトランペットを明瞭に浮き彫りにしなければ意味がないことを再認識させられる。
ツボ32 トランペットは極めて明瞭。ホルンはやや遠い。
ツボ33 コーダのテンポ運び、安定感は盤石。最後のティンパニの4音をテンポを落として決然と締めくくるスタイルでの最高の成功例。

チャイコフスキー:交響曲第5番

ピエール・モントゥー
ボストン交響楽団
第2楽章ホルン・ソロ:
WEST HILL RADIO ARCHIVES
WHRA-6034(11CD)
廃盤
録音:1959年7月19日 タングルウッド(ステレオ・ライヴ)
演奏時間: 第1楽章 13:12 / 第2楽章 11:48 / 第3楽章 5:35 / 第4楽章 11:14
モントゥー &ボストン交響楽団 1958 & 1959 シーズンのコンサート・ライヴ集
“ライヴならではのノリの良さとラテン的な開放感で心揺さぶる超快演!”
★1959年の録音で、ややドライながらかなり良好なステレオ録音であることが嬉しい限り。モントゥーお得意の曲だけに基本コンセプトは完全に出来上がっていいますが、オケの自発性が全開で、予定調和ではない即興的なニュアンスで訴えかける魅力に事欠きません。
 第1楽章、展開部直前の容赦ない加速はセッションにはない魅力。その熱いモードのままかなり感情むき出しになる箇所があるのが印象的。終結部487小節以降の凄まじい熱量にも驚かされます。
 第2楽章のホルンのソロの後、主題を弦が歌う箇所の気品あるフレージングが心を捉え、クラリネット・ソロ開始前の60小節のクレッシェンドがこれほど意味深く迫る録音は他に思い当たりません。この世代の指揮者で、スコアを大掴みではなく細部の意味を自然に再現する指揮者は稀有でしょう。とにかく緩急の入れ替えや、呼吸、緊張の持久力、全てが名人芸!特に142小節以降の決死の駆け上がりは、近年のどの指揮者に期待できましょうか!
 終楽章主部の快速ぶりもライヴならでは。トランペットなどはホールの響きを意識してかかなりダイレクトな強音を発しますが、決して煩くなく、一定の品位を保つモントゥー特有の空気感がビシッと張り巡らされているのを感じずにはいられません。最後の拍手を除いて実測で11秒弱という猛烈なスピード感ですが、粗野な走行性ではなく人間味と爽快感を感じさせるのも、モントゥーの芸を堪能する醍醐味と言えましょう。
 なお、この録音は「US&G "UNVERGESSLICH SPIELS" GmbH」という名の非正規盤も存在し、テープ・ヒスが気になるものの、生々しい迫力、特に弦の生き生きとしたニュアンスは、丁寧にマスタリングが施されているこのWHRA盤を凌ぐように思います。【2025年8月・湧々堂】
第1楽章のツボ
ツボ1 中庸のインテンポ進行するも。弦もクラリネットもかなり濃密に悲哀を湛えている。
ツボ2 その悲哀を引きずりながら、やや大遅めのテンポでおもむろに開始。
ツボ3 インテンポながら悲哀はそのまま。
ツボ4 スラーの8分音符でテンポを落とす旧スタイルだが、繰り返すたびインテンポへと移行する。
ツボ5 直前までアッチェレランドで煽り、ここからテンポを一弾落として濃厚に歌い上げる、冒頭のスフォルツァンドは無視。
ツボ6 これは理想形の一つ!スフォルツァンドの意味合いと、アニマートからの発作的な明るい色彩の表出に成功している。
ツボ7 鮮やかな駆け上がり。
ツボ8 「語るフレージング」の妙!1小節ごとに丁寧に進行しつつ、176小節から一息で呼吸するその自然さは名人芸!
ツボ9 16分音符は聞き取れない。ここからテンポアップして一気呵成に突進。
第2楽章のツボ
ツボ10 冒頭の弦は、息の長いフレージングと言うより、一音ごとに丁寧に思いを込めるスタイル。ホルンは、野外会場のせいか、ホールと美しく溶け合うトーンは望めないが、しっかりと音楽を感じたフレージングを実現している。弦に主役を移してからの美しさは格別
ツボ11 呼吸を溜めに溜めた後の気高い高揚!
ツボ12 テンポは変えない。クラリネットもファゴットも素朴な響きながら悲哀は十分。
ツボ13 ボストン響の目の詰んだ弦のアンサンブルの魅力を存分に堪能!
ツボ14 凄い粉砕力だが気品は失わず、呼吸も停滞せず、緊張感を増幅させる名人芸!
ツボ15 最後の一音に向けて少しずつテンポを落とす手法が得も言われぬ余韻を与えている。終了後に拍手が湧くのが野外ならでは。
第3楽章のツボ
ツボ16 わずかにテンポを落とす。少しリズムの崩れあり。
ツボ17 弦の機敏な動きが、機械的にならずに愉悦感を放射。
ツボ18 やや遠いが、美しく見事に一本のラインを形成。
第4楽章のツボ
ツボ19 テンポは標準的。上質な弦の響きが印象的。20小節からテンポを落とす
ツボ20 ホルンは裏方に徹している。
ツボ21 テンポはムラヴィンスキーに近い快速ティンパニは、58小節に少しアクセントを置いてから一定の弱音を持続。66小節で一打。
ツボ22 完全に無視。
ツボ23 ごく標準的なバランスで、意図的な突出はない。
ツボ24 主部冒頭と同じテンポ。
ツボ25 強い意志を込めた一撃。
ツボ26 そのままイン・テンポ。
ツボ27 ごくわずかにテンポを落とす。更に452小節でガクンとテンポを落としてトランペットのフレーズを強調
ツボ28 本来の音価よりも長め。ティンパニは最後にアクセントを置かずにそっと引き下がる感じ。会場の拍手を避けるための処置かも知れないが、拍手は沸き起こる。
ツボ29 弦もトランペットも開放感全開!
ツボ30 弦は音を切り、トランペットはレガート気味。ティンパニの打ち込みも入魂!
ツボ31 弦の音型と合わせる改変型。
ツボ32 トランペットもホルンも明朗そのもの。ラテン的な痛快さを感じさせる!
ツボ33 最後の4小節のみテンポを落とし、決然と終わる。

チャイコフスキー:交響曲第5番
ピエール・モントゥー
ロンドン交響楽団
第2楽章ホルン・ソロ:バリー・タックウェル(?)
Vanguard
OVC-8031(2CD)
廃盤
録音:1963年5月31日 ウィーン・コンツヶルトハウス大ホール(ステレオ・ライヴ)
演奏時間: 第1楽章 13:38 / 第2楽章 12:20 / 第3楽章 5:57 / 第4楽章 11:58
カップリング/チャイコフスキー:ロメオとジュリエット、ピアノ協奏曲第1番(ピアノ;ジョン・オグドン)
“90歳目前の老匠とは思えぬ意欲と色彩の大放射!”
★他の録音と基本コンセプトは変わりなし。条件ん条件の整ったステレオ・ライヴの音質を期待しましたが、マスタリングのせいか音のフォーカスがやや甘いこと、ティンパニが遠く音像が締まらないこと、オケの技術は高いもののLSOならもっと機能美と表現力をを全開のチャイ5」にすることも可能と思われることを考えるとやや期待外れ。つまり、どこか中途半端で、「モントゥーのチャイ5」を聴くなら他の録音を聴くべきだと思います。作品に対するコンセプトの揺るぎなさ、確信に満ちた表現の説得力は決して侮れないのですが…。
 この録音で傑出しているのは、第2楽章のホルンのとてつもない上手さ。弦のアンサンブルがッ極に整ったときの求心力の高いフレージングの魅力。ヴァイオリンは両翼配置。【2025年9月・湧々堂】
第1楽章のツボ
ツボ1 中庸テンポ。クラリネットと弦のバランスが良好。クラリネットの音色が2人で吹いていることによる色彩的揺らぎを感じさせず、やや単調に響く。
ツボ2 低速だが、符点リズムが崩れることなない。クラリネットとファゴットから醸し出されるそこはかとない悲しみは印象的。
ツボ3 楽譜どおり。
ツボ4 スラーの8分音符は、確実にテンポを落とす旧スタイル。オケとモントゥーとの相思相愛ぶりを示すように、そのニュアンス弐ブレがない。
ツボ5 冒頭のスフォルツァンドは無視。強弱を伴う呼吸の深さが印象的。
ツボ6 心は込めぬいているが、どこか微温的。録音のせいだろうか?
ツボ7 やや機械的。
ツボ8 これみよがしな歌い方はせず、むしろ朗々と歌うのがモントゥーらしい。
ツボ9 直前の音のパンチ力を抑えているため、16分音符は聞き取れる。
第2楽章のツボ
ツボ10 冒頭の弦はもう少し息の長いレガートが欲しいところ。ホルンのソロはタックウェルだろうか?ホールのと溶け合い方も弁えながら入念なフレージングを見せ、メロウな雰囲気を十分に湛えて実に素晴らしい。
ツボ11 わずかにテンポを落としておいてフォルティシシモへ向かうが、爆発力はない。
ツボ12 テンポは変えない。クラリネット、ファゴット共に、技巧も表現も極めて優秀。
ツボ13 ホルン主題のテンポに戻る、木目の風合いを感じさせる良い響き。
ツボ14 どこまでも大きく深い呼吸を続けるが、高圧的な響きを発せず温かみを感じさせるのが特徴的。
ツボ15 入念に歌うが感傷的になるのを避けて、最後の3小節に入るまでインテンポを守り抜く。
第3楽章のツボ
ツボ16 わずかにテンポを落とす。
ツボ17 強弱のメリハリを自然な形で実現し、機能的な響きに傾くのを避けている。
ツボ18 一本のラインを形成している!
第4楽章のツボ
ツボ19 テンポは標準的。弦の響きのブレンド感がアンサンブルの優秀さとも相まって最高20小節からテンポを落とす
ツボ20 ホルンを裏方。その分、木管を徹底的に表面化させている。43小節から倍近くにまでテンポを落とす
ツボ21 テンポは標準的。ティンパニは、58小節に少しアクセントを置いてから一定の弱音を持続するのみ。
ツボ22 完全に無視。
ツボ23 ごく標準的なバランスで、殊更には強調はしない。
ツボ24 主部冒頭と同じテンポ。
ツボ25 意思を欠く一打。
ツボ26 そのままイン・テンポだが。何故か音に推進力と凄みが加味される。
ツボ27 ほとんどインテンポのまま進行。
ツボ28 本来の音価よりも長め。
ツボ29 弦の響きの充実度が尋常ではない。
ツボ30 弦は音を切り、トランペットはレガート気味。
ツボ31 改変型。
ツボ32 破綻なく、明瞭に響き渡る。
ツボ33 イン・テンポが基調だが、562と563小節のみテンポを落とす。

チャイコフスキー:交響曲第5番

ピエール・モントゥー
北ドイツ放送交響楽団
第2楽章ホルン・ソロ:
Treasures
TRT-024(1CDR)
録音:1963年10月(ステレオ)
演奏時間: 第1楽章 13:23 / 第2楽章 11:40 / 第3楽章 6:05 / 第4楽章 11:55
カップリング/R=コルサコフ:スペイン奇想曲、ムソルグスキー(R=コルサコフ編):はげ山の一夜
“90歳目前の老匠とは思えぬ意欲と色彩の大放射!”
★コンサートホールのステレオ録音は雑味が邪魔して、頭の中でバランスを一旦補正しなければならない場合が多いですが、ここに収録した3曲もコンサートホールらしい音ながら、ほとんどそんな余計な作業をせずに純粋にモントゥーの芸術を味わうことができます。それによって実感できるのは、モントゥーの音楽には「老境」という概念が存在しないこと。思えば、今世紀に亡くなったプレートルに至るまでの殆どのフランス系の指揮者が同傾向にあるのは不思議といえば不思議です。
 ここに聴くモントゥーの十八番の「チャイ5」も、なんという瑞々しさ!この復刻盤で聴くと、作品への本気の愛をを示すかのようなエモーショナルな表現はモントゥーの同曲異演盤と遜色ないばかりか、多くの人が聴き映えのしない録音のせいで気付けなかったモントゥーの作品のディティールに対する信念まで伝わってきます。 第1楽章の第2主題に差し掛かるまでの突進ぶりは、まるで恋に溺れて一途に燃える青年のよう。スコアに書かれた強弱の指示に対しては拘泥しすぎないのも特徴的で、それが音楽に伸びやかさと明るさを与えています。これもかつての埃っぽい音質で聞くと、それが単に大雑把な演奏に聞こえてしまって、真剣に聴く気持ちが萎えてしまった方が多いのではないでしょうか。5:20からの副次主題の歌わせ方は、ルバートを極力避け、全く媚びず、これみよがしにすすり泣きしないモントゥーの健康的な音作りが色濃く象徴されているシーンです。コーダの自然な突進ぶりも必聴。
 特筆すべきは3楽章の素晴らしさ!開始まもなくエレガンスな空気が広がり、芳醇なロマンに惹きつけられます。しかも1:18からのフォゴット・ソロはの甘美な味わいは空前絶後。そこから中間部に入るまでの楽想の感じ方、香りの高さは比類なし。そこにドイツ的な暗さなど微塵もありません。また、中間部はアンサンブルに破綻が一切ないのにメカニックな印象を与えないのが実に不思議。これほど音の粒立ちの妙味を感じさせる演奏も珍しいでしょう。
 終楽章は、モントゥーの健康的なアプローチが全開。序奏部の途中20小節(0:57〜)でテンポを落とすのは1958年盤から一貫したアプローチ。提示部の声部間の融合ぶりが音楽的なニュアンスとして結実しているのは見事と言うしかなく、これはコンサートホールのステレオ録音としても奇跡的と言えます。172小節の運命動機の斉奏で少しテンポを落とし、188小節から更にテンポを落とすのもかつての録音と同じですが、最もニュアンスが音楽的にビシッと決まっているのがこの録音!372小節のトロンボーンの4分休符(7:38)は、バーンスタイン盤と同じく2分休符に変更。なお、コーダ11:38でトランペットが派手に音を外しているのに録り直しをしていないということは、これが一発録りだったということが想像されます。
モントゥーの「チャイ5」はRCA盤だけで十分などと言わず、先入観なしでこの復刻盤をお聴きいただければ、上記以外にも気付かされることがきっとあると思いますので、ぜひご体感ください。
 カップリング曲では、「スペイン奇想曲」が必聴。大名演です!各シーンの的確な性格付けと関連付け、無理のないテンポ設定の妙、スペイン的な妖しい空気の醸し出し、養分をたっぷり湛えた音の弾け方など、どれをとっても魅力的。これも、オン・マイク気味の録音がプラスに作用ていることは間違いないでしょう。 なお、ヴァイオリンは両翼配置です。【2025年7月・湧々堂】
第1楽章のツボ
ツボ1 中庸テンポ。2本のクラリネットがユニゾンが微妙な色彩の揺れを表出。全体の表情はむしろ淡白でカラッとした感覚で一貫。
ツボ2 低速だが、符点リズムが崩れるほどの低速ではない。クラリネットとファゴットのユニゾンから発する音は確実に色彩を帯びている。
ツボ3 細部にこだわらずにおおらかな印象。
ツボ4 スラーの8分音符は、確実にテンポを落とす旧スタイル。その落とし方が、フレージングを停滞させるほどかなり露骨。まるで、突然現れた幻想に心を奪われているかのよう。
ツボ5 冒頭のスフォルツァンドは無視。ここでも強弱の変化を杓子定規に捉えずおおらかさが優先。それでも、決して呼吸は決して浅くならない巨匠芸。
ツボ6 強弱の変化よりも、音符に込める愛の熱さ一本で通すイメージ。
ツボ7 縦の線が揃っているとは言い難いが、オケの潜在的な純朴サウンドと共にヒューマンさが滲む。
ツボ8 ルバートを極力避けてサラッと進行するのは、昨今の多くの演奏よりも洗練度は上。
ツボ9 16分音符は聞き取れない。ここからテンポアップ。インテンポのまま、そのエネルギーを最後の最後まで維持。
第2楽章のツボ
ツボ10 冒頭の繊細さよりもおおらかさで包み込む。ホルンは危なげはないが、色香を欠きあまりにもぶっきらぼう。純ドイツのオケを象徴する音色。
ツボ11 テンポを溜め込まずに一気に走る。
ツボ12 テンポは変えない。クラリネットは冒頭のホルン・ソロ同様に色香ゼロ。
ツボ13 弱音寄りで、続く主題へ優しく橋渡しをするかのよう。
ツボ14 凄い突進力だが破壊性はなく、ここでも一途さ、熱さが際立つ。
ツボ15 感覚的には淡白。締めくくりだけテンポを落とすのが粋。
第3楽章のツボ
ツボ16 わずかにテンポを落とす。
ツボ17 機能的な機敏さではなく、音の粒立ちの妙味を感じさせる演奏。
ツボ18 見事に一本のラインを形成している!
第4楽章のツボ
ツボ19 テンポは標準的。弦の上手さと味わい深さが印象的20小節からテンポを落とす
ツボ20 かつての録音ではホルンを徹底的に突出させていたが、ここでは完全に脇役に徹している。
ツボ21 テンポは標準的。ティンパニは、58小節に少しアクセントを置いてから一定の弱音を持続するのみ。
ツボ22 完全に無視。
ツボ23 ごく標準的なバランスで、殊更には強調はしない。
ツボ24 主部冒頭と同じテンポ。
ツボ25 抑制の効いたアクセント。
ツボ26 そのままイン・テンポ。
ツボ27 ほとんどインテンポのまま進行。
ツボ28 本来の音価よりも長め。ティンパニは最後に軽くアクセント。
ツボ29 オンマイクの弦の存在感により、輝かしい勝利を演出。
ツボ30 弦は音を切り、トランペットはレガート気味。
ツボ31 弦の音型と合わせる改変型。
ツボ32 いかにも渋いドイツサウンド。音を外し気味だが強靭さは伝わる。
ツボ33 完全なインテンポ進行が清々しい。


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