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殿堂入り:交響曲 管弦楽 協奏曲 器楽曲 室内楽 声楽曲 オペラ バロック SALE!! レーベル・カタログ チャイ5



湧々堂が心底お薦めする"殿堂入り"名盤
ドヴォルザーク
交響曲



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ドヴォルザーク/DVORAK
交響曲全集

PHILIPS
432602(6CD)


DECCA
478-2296(6CD)
ドヴォルザーク:交響曲全集
序曲「謝肉祭」、「わが家」、「オセロ」、「フス教徒」
ヴィトルド・ロヴィツキ(指)LSO

録音:1965年〜1972年
“「ドボ4」の魅力を最大限に引き出した、ロヴィツキの偉業!”
 ロヴィツキが6年の歳月を掛けて完成させたドヴォルザークの交響曲全集の中で、「第4番」は、民族的色彩と生命観が特に濃厚なこの曲の魅力を、堅固な構築と表現意欲とで最大限に引き出した最大の名演で、「第7番」と共に鮮烈な印象を与えます。
 第1楽章は、まず勇壮な響きが魅力で、粗野なまでのダイナミズムが、LSOの見事な機能美と共に美しいフォルムと共に迫ります。微妙にワーグナー的な和声が入り混じる第2楽章の奥行きの深い音色も魅力。
 未だに超える演奏がないのが第3楽章!これはまさに血の躍動です。主題がホルンの強奏でスーッと伸びる痛快さと、音場の広がりが絶品で、トリオでの色彩放射力も並ぶものがありません。
 終楽章も活力全開!渾身の力を込めて弾き切る弦は、今にも血が噴き出そうな勢いに満ち、天空を付きにけるような金管は、全盛期のLSOを象徴しています。しかも、音色は雄渾な風情を失わないというこの究極の職人的バランス感覚の冴え!副次主題の入念極まりないフレージングの振幅とアゴーギクの繊細さ、そこから漂うノスタルジックな抒情は、それと見事なコントラストを成して、心に染み入るのです。
 「第7番」ともなると、さすがに競合盤がひしめいていますが、それでもこの演奏の価値は色褪せていません。ドイツ的な構築が勝ったこの曲の演奏は、その辺りに焦点を当てたものが多く、またそのスタイルでの名演も数多く存在しますが、民族の血の活力を源とした演奏の筆頭として、この感動的な演奏をあげないわけにはいきません。独特の雄渾な響きとうねりまくるフレージングはここでも変わりません。
 第1楽章は、第2主題が登場する前から音の奔流に圧倒されます。
 第2楽章の山場(3:58)の決死の高揚は、チェコのオケも顔負け。
 終楽章の絞り出す激情の応酬にも手に汗握ります。展開部前半の弦のフレーズ(3:53)はヴァイオリンをピチカートに変更しているのが独特ですが、これが緊張感を生む絶妙な効果を発揮。この楽章の鍵の一つであるホルンの発言力も破格で、コーダの絶叫には背筋が凍ります!【湧々堂】

BRILLIANT
BRL-93635(6CD)
ドヴォルザーク:交響曲全集 ネーメ・ヤルヴィ(指)スコティッシュ・ナショナルO(第1番-第4番)、
イルジ・ビエロフラーヴェク(指)チェコPO(第5番-第7番)、マリス・ヤンソンス(指)オスロPO(8番、9番)

録音:1987年(ヤルヴィ)、1992年(ビエロフラーヴェク)、1988年(第8番)、1992年(第9番)
“3人の指揮者による共感溢れる全集”
 ヤルヴィとビエロフラーヴェクの録音はCHANDOS、ヤンソンスはEMIが原盤。どれも定評のある演奏ですが、3人の指揮者のドヴォルザークへの対峙の仕方が見事なまでに異なっているのが一つのポイント。中でもヤルヴィの「第4番」とビエロフラーヴェクの演奏が際立って見事!「第4番」は、ヤルヴィにとってもオケにとっても決して慣れ親しんでいる作品とは言えないはずですが、表情の練り上げ方はまさに職人芸の極みで、楽想の変化にともなってテンポを自在に操作し、心を込めて歌い上げた素晴らしい演奏です。
 第3楽章のリズムの湧き上がりも渾身のもので、軽はずみに喚きたてるそれではなく、ホルンの均整のとれた強奏も含め、共感の限りを尽くしています。
 終楽章のコーダの畳み掛けもスリリング。「第7番」はワーグナーやブラームスの影響をいけた作品として、その構築性を重視した演奏が多い中で、後年の2つの交響曲に繋がるドヴォルザーク特有のメローディの魅力、素朴な風情のこだわり、忘れかけていたこの作品の本当の魅力に気づかせてくれる貴重な存在。感覚的に淡白に聞こえるかもしれませんが、さり気ない歌の背後にある真の歌心をきっと感じ取っていただけることと思います。
 「第5番」もビエロフラーヴェクらしい真面目一徹なアプローチですが、シンフォニックな重厚感と民族的な味わいを同時に満足させてくれる演奏が少ない中、この録音の価値は絶大。
 特に終楽章の後半の抉り込みの深さはまさに迫真!「第6番」は自然な共感に満ちた演奏であり、この作品の録音の最高峰の名演!この「自然な共感」というのは頭で考えて簡単に実現できるものではなく、例えば第1楽章第2主題、わずかにテンポを落として滑り出しますが、これほど静かな心のときめきを感じさせる演奏はクーベリック以来かもしれません。
 第3楽章は拍節感が極めてストイックですが、表情はかなりアグレッシブで、強弱の入れ替えによる遠近感の表出、中間部の明確な色彩感のなど、強烈な印象を与えます。
 終楽章は田園風の風情に傾きすぎることなく、とシンフォニックな立体感が見事に共存。チェコ・フィルがルーティンな演奏に陥っていない点も注目で、積極的に作品の潜在的な魅力を根底から出し尽くそうとする意欲に最後まで酔いしれてしまいます。もちろん小細工など一切ありませんが、コーダに達すると思い切ったテンポ・ルバートが出現し、本物の共感の有り様を強烈にアピール。和やかさ以上の手応えと感動を届けてくれるかけがえのない演奏です。【湧々堂】

ドヴォルザーク/DVORAK
交響曲第1番〜第6番

COLOSSEUM
COL-9037.2
スメタナ:「売られた花嫁」序曲
ドヴォルザーク:交響曲第4番
 スラヴ舞曲第1番Op.46-1
アレグザンダー・シェリー(指)
ニュルンベルクSO

録音:2010年11月11日、ウィーン、楽友協会ホール、ライヴ
“父の七光とは呼ばせない確信に満ちたニュアンスの連続!”
 アレクザンダー・シェリーは1979年英国生まれ。父はピアニストのハワード・シェリー。25歳の時にリーズ指揮者コンクールで優勝。2009/2010年シーズンからニュルンベルク交響楽団の首席指揮者を務めています。この俊英、只者ではありません!これは、2010年にウィーンの殿堂、ムジークフェラインでの公演ライヴですが、ドヴォルザークでもあえて民族色の強い「第4番」を選んだところに並々ならぬこだわりを窺わせますが、演奏はその期待に違わぬ素晴らしさ!主旋律も対旋律も恣意的に強調することなく、全体を美しく調和させ有機的に響かせる力量に感服することしきりです。
 第1楽章は風格のあるテンポを基調としながら、終始安定した進行。第2主題も決して媚びることなく郷愁満点のフレージングがふんわりと香ります。展開部に入るとますます閃きが冴え渡り、これほど響きに立体感を持たせて陰影に富んだ表現に徹した演奏はかつてあったでしょうか?再現部直前の山場の築き方も巨匠のような重量感。11:01からの第2主題の再現を奏でるヴァイオリンの共感の限りを尽くした美しさも必聴。
 ワーグナーの影響が濃厚な第2楽章は、その楽想の魅力を十全に引き出しつつ、息の長いフレージングを美しく緊張感を保って呼吸させるセンスの何と素晴らしいこと!これが30歳前後の若手の技とは信じられませんが、なんといっても素晴らしいのは、その表現に一切の嘘がないこと。
 第3楽章はあのロヴィツキ盤の血の吹き出るような演奏の存在を忘れさせる瑞々しさ!なんていい曲なのだろうと痛感させる味わいに満ちています。特に中間部でテンポを落として色彩の変化を入念に刻印しながら大きく羽ばたく設計とコーダでの起伏の付け方の妙には驚かされます。
 終楽章は小気味よいテンポとリズムを絶やさず生命感が横溢。しかも、勢いに任せて惰性で進行する箇所など皆無。さらにリズムの芯もしなやかにして強靭なので、その躍動力は迫真。第2主題がこれまた感動的で、シェリーのこの作品への無条件の愛を最も強く感じさせる瞬間です。3:40以降のドラマティックな盛り上げも素晴らしく、4:04のティンパニの強打の意味深さは無類。圧巻はコーダ!大平原を駆け抜ける俊馬のように向こう見ずな疾走を続け、遂にはアッチェレランドを敢行したまま締めくくる粋な演出!この第4交響曲の魅力を更に押し広げてくれた画期的名演です。
 アンコールと思われる「スラブ舞曲」も迫力満点。音の重心が常に安定しているので、手応えも味わいの深さも格別です。 【湧々堂】
CANTUS
800131
ドヴォルザーク:交響曲第4番
交響曲第7番*
ヴァーツラフ・ノイマン(指)プラハSO、
ズデニェク・コシュラー(指)チェコPO*

録音:1959年、1964年* ステレオ録音
“チェコ・フィルに専念する前のノイマンの雄渾な音作り!”
 共にスプラフォン原盤。「第4番」では、ノイマン持ち前の折り目正しさが既に現れていますが、ここでは更に、根源的な迫力が魅力。第2楽章は、ワーグナーに酷似した半音階が頻出しますが、ノイマンはそれを意識しすぎてドヴォルザークらしい土臭さを見失うことなどありません。後半のオケの弦の艶やかさも魅力。
 コシュラーの「第7番」は、彼の本格デビュー録音。終楽章の民族的な血の噴出ぶりは、穏健な彼のイメージとはかけ離れていて驚異的!【湧々堂】

SUPRAPHON
SU-3771
ドヴォルザーク:交響曲第6番
交響詩「金の紡ぎ車」
チャールズ・マッケラス(指)チェコPO

録音:2002年デジタル・ライヴ録音(交響曲)、2001年デジタル録音
“あの懐かしいチェコ・フィルサウンドを復活させた感動の“ドボ6”!”
 ドヴォルザークの「田園交響曲」の異名を取り、意外と隠れファン(?)も多い6番ですが、これでいきなり同曲のベスト盤の地位は決定的!もちろんクーベリック&BPOの艶やかな演奏も捨て難いですが、マッケラスならではの知的構築美のみならず、良い意味でのひなびた風情も充分に感じさせるこの演奏は、まさにこの曲の理想的姿ではないでしょうか。
 第1楽章冒頭のニュアンスからして、あの懐かしいチェコ・フィル・サウンドそのもので、実に薫り高い空気が部屋中を満たします。アンチェル以前のあのサウンドを思い起こさせるなど、最近あったでしょうか?展開部はテンポを落としての幻想的な陰影が心を捉えます。どんな細部も心の震えを感じさせるのはマッケラスの常ですが、例えば再現部冒頭、テーマが戻って来て軽くティンパにがポンポンと2つ叩く箇所(7'36'')に耳を澄ましてみてください。こんな何でもない合の手さえ優しく問い掛けてくるのです!
 第2楽章も情緒満点。ハイセンスなアゴーギクと共に作曲家の心情をそのまま吐露したような歌い回しで魅了します。
 終楽章ではマッケラスの構築力と熱い共感が遂に全開となり、感動も最高潮に達します。交響詩は、各場面が品格を保ちながら大きくうねる、25分間の大パノラマで、最後まで聴き手の心を掴んで離しません!【湧々堂】

ドヴォルザーク/DVORAK
交響曲第7番ニ短調Op.70

豪ELOQUENCE
466-9062[EL]
ドヴォルザーク:交響曲第7番、
交響詩「野鳩」*、序曲「謝肉祭」*
ズビン・メータ(指)
イスラエルPO、ロス・アンジェルスPO*
“1970年代のメータの最高の業績!”
 イスラエル・フィルの絹ごしのような弦の魅力は有名ですが、この「ドボ7」はその魅力を余すところなく伝ええいるだけでなく、メータの'70年代の表現意欲と、誠実なアプローチによって作品の持ち味を自然に引き出す力を如実に示した1枚として忘れるわけにはいきません。 まず第1楽章。冒頭から恰幅が大きく、深く伸びやかな音色が耳を捉え、やや遅めのテンポに威容が湛えながらフレーズが大きくうねります。第2主題の清潔で細やかなリリシズムも聴きもの。展開部の立体的な構築力と高揚感も感動的。コーダでの陰りのアルホルンの音色を経て、ティンパニの弱音によるトレモロの意味深さも格別の味。
 第2楽章の切なく深遠なニュアンスも、メータに対する一般的なイメージを覆すのに十分なもの。3:26からの荒涼とした大地に立ち向かうような風格、4:24以降の弦の唸りを上げての熱い高揚は必聴!
 第3楽章も自然体でありながらこの陰影の濃さ!中間部ではディリケートに情感が息づきますが、木管群の有機的の発言がこれまた魅了します!終楽章はシンフォニックな安定感が抜群!特にティンパニとホルンがオンマイクで捉えられていますが。それがここでは最高に功を奏し、作品の輪郭がリアルに現出されて感動もひとしお。6:54から、そのホルンと至高の弦の高鳴りが一体化した渾身の歌い上げも、オケとメータの強固な結びつきがあって始めて成立するものでしょう。ちなみにこの演奏はLP時代からの個人的に愛聴してきましたが、CD化されたものを聴いても少しも感動は色褪せていません。
 「野鳩」の掘り下げの深い解釈も聴きもの。「謝肉祭」以上に表現意欲が発揮され、色彩も沸き立っています。ロス・フィルがかくもしなやかで、凝縮力の強いアンサンブルを聴かせるというのも意外ですが、各場面が継ぎはぎ的にならずに緊密に一本のラインで連携させるメータの手腕にも脱帽です。コーダの精緻な描写力に至っては信じがたいほど。チェコの指揮者以外でこの曲を真剣に抉った演奏はないように思います。【湧々堂】
DECCA
433-4032
ドヴォルザーク:交響曲第7番
ベートーヴェン:交響曲第7番
ピエール・モントゥー(指)LSO

録音:1959年、1961年 ステレオ録音
“はちきれんばかりの熱情と優美さを兼ね備えたモントゥー晩年の至芸!”
 2曲とも、若手のやる気満々の指揮者のような情熱の発散ぶりに驚きを禁じ得ません。メカニックな響きはどこにもなく、細部を緻密に掘り下げるのではなく、全体の曲の雰囲気作りと大きな有機的なフレージングを信条とした演奏は、今聴いても新鮮な感動を覚えます。
 ドヴォルザークの第1楽章冒頭などは、どんな指揮者でも神妙な空気が漂うものですが、モントゥーはそんな回りくどい表現は御免とばかりに、さらっとしたした感触で素朴な情感を漂わせます。アゴーギクは最小限度に止めながら、一途な共感だけで一貫した構築美を確立しているのは、まさにモントゥーならではの至芸です。展開部やコーダではかなり荒々しく激情をあらわにし、アンサンブルもいきり立った表情を見せますが、押し付けがましくならないのも魅力。
 第3楽章の独特の土俗的な雰囲気も、モントゥーの気品ときりっとしたリズムの跳躍センスによって、もぎたての果実のような瑞々さに一変!ピチカートの潤い、木管のしゃれたセンスにも耳を洗われ、ヴァイオリン両翼配置の効果も真に生きています。
 終楽章も大伽藍のように聳える演奏とは正反対。まず無骨なまでのインテンポにびっくりしますが、第2主題では実にしなやかにテンポを落として郷愁を湛えたり、ふとした瞬間にしゃれたニュアンスが顔を覗かせたりと、その芸の懐の深さに感じ入るばかりです。誤魔化しの一切ない生きた表情を湛え切っているオケの意気込みも並ではありません。
 ベートーヴェン
も同様のスタイルで、ズシンと響くドイツ流儀の演奏にはない魅力が満載。なんとこの録音時にはモントゥーは86歳でしたが、全く音楽が硬直せず、フレッシュな感覚に満ち溢れているのには驚愕です。このリズムの弾力は一体どこから出てくるのでしょうか!
 第2楽章も陰鬱さ皆無で、どのフレーズも呼吸一筋!終楽章は、生の喜びが大全開。6分半という快速テンポで一気に駆け抜けますが、スポーツ的なノリに陥らずに、素朴な共感が熱い音の塊と化して飛び交い続けるのです。アンサンブルの精度、リズムの正確さを演奏の大前提と考える人には決しておススメできませんが、心のこもった名演奏です!

ドヴォルザーク/DVORAK
交響曲第8番ト長調Op.88

LPO
LPO-0055
ドヴォルザーク:交響的変奏曲
交響曲第8番
チャールズ・マッケラス(指)LPO

録音:1992年4月24日ロイヤル・フェスティヴァル・ホール・ライヴ
“マッケラスが火を噴いた!知性を上回る熱血ライヴ!”
 常に完成度が高く、出来不出来などありえないとさえ思わせるマッケラスの至芸の中でもこれは異色と言える大名演!ライヴという条件を考慮しても、この音楽の突き抜け方、ダイナミックな揺さぶり、人為的コントロールを感じさせない一発勝負的な熱さは尋常ではなく、ほぼ同時期に同じロンドン・フィルと第8交響曲をセッション録音を行なっていますが、同じ指揮者とは思えぬヴォルテージの高さ。
 第1楽章は、主部冒頭のティンパニの精度の高い強打(1:15)から異様なテンション!この打ち込みが寸分でも違ったらまるでニュアンスが異なるというこんな確信的なニュアンスが他で聴けましょうか。その後の推進力は目覚しく、微妙なアゴーギクも伸縮自在。
 最大の驚きは終楽章。造形のフォルムから外れるスレスレのところで根底から音楽から湧き立ち、音をバリバリに割ったホルン・トリルの雄叫び、3:38からはそのホルンが完全に主旋律を強靭に補強。特に9:08以降の再現ではまさに火の玉と化して体当たり!締めくくり数秒は思い出すだけでも鳥肌が!ロンドン・フィルとも半世紀近く関係を持ち、ドヴォルザークの音楽ともデビュー当時から共感を持って取り組んできたマッケラスだからこそ、知的な計算が表面化せず、隙のない灼熱の演奏に普遍的な説得力が生まれたのでしょう。
 なお、スタジオ録音同様
主題が再びチェロで静かに回想される箇所で、シルヴェストリ盤同様の版(通常聴かれるものと若干旋律が異なる)を採用しています。【湧々堂】

BERLIN CLASSICS
0090242BC
(廃盤)

BC-32282
ドヴォルザーク:交響曲第8番
シューベルト:交響曲第6番
ヘルベルト・ブロムシュテット(指)
ドレスデン・シュターツカペレ

録音:1974年、1979年 ステレオ録音
“いぶし銀の音色美を味わえる録音の筆頭!!”
 このオーケストラの伝統的な音色美を堪能できるCDは、サヴァリッシュのシューマンなど数々ありますが、録音の自然な音場感、指揮者の丹念な音楽作りと相俟ってその魅力が十二分に醸し出され、その音に触れるだけで幸せを感じさせるこのCDの存在は、別格と言っても過言ではありません!
 ドボ8の序奏のチェロもフルートも、木目調と風合いと香りをさっそく湛え、一気に美しい異空間に誘われます。第1楽章の主部はかなりの快速で畳み掛け、一心に生気を発散させますが、どんなに強奏で加熱しても、聴き手の耳に優しく浸透するあの音の質感は、全く変わらないのです!ブロムシュテットならではのスタイリッシュに洗練された構築力と声部バランスがまた絶妙なので、一層その魅力も引き立つのです。
 その得も言われぬ風合いが、第2楽章になるとボヘミアの森の夕暮れを想像させる色合いに変わり、第3楽章は実にゆったりとしたテンポと一体となって、気品が静かに息づきます。終楽章は、木管がスーッと伸びる室内楽的なテクスチュアが魅力。カロリー価の高い怒涛の突進とは正反対の、決め細やかな音楽作りがここでも真の安らぎを与えてくれます。
 シューベルトも格別の味わい!最初のレントラー風の序奏は、まさにこのコンビのための音楽とさえ言いたくなるほどの風情!本皮ティンパニの溶け合い方も、これ以上考えられません。どこまでもしなやかな弱音と、耳に優しいフォルテの魅力がここでも横溢。
 終楽章も、頭で考えた解釈を聴かされているという印象が皆無で、ただ楽譜通りに鳴っているだけですが、音そのものがときめいているので、一音たりとも聴き洩らす訳にはいきません。この曲の魅力を引き出すには、モーツァルトに臨むのと同じような心持ちが不可欠だと痛感します。【湧々堂】

メキシコ州立響
EB-28
ドヴォルザーク:交響曲第8番ト長調
ムソルグスキー(ラヴェル編):展覧会の絵*
エンリケ・バティス(指)
ロイヤル・リヴァプールPO、LPO*
“「ドボ8」ファン必聴!バティス・マニア以外の方にもお聴きいただきたい感動作!”
 ドヴォルザークは、バティスの最上のフォームを示した逸品!第1楽章冒頭から情感と力感のバランスが絶妙で立体的なこと!最後までそのバランスを保って独特の凄味溢れるドラマを確立しているのです。第2楽章のスケール感と呼吸の深さも感動を誘い、特に8分以降から終結にかけての細やかな表情は、何度も聴き返したい衝動に駆られます。8'40"で一瞬のクレッシェンド効果にも御注目を。第3楽章中間部ヴァイオリンのポルタメントも趣味の良さが光ります。
 終楽章は突きぬけるようなファンファーレがバティス節!主部に入ると猛スピードで疾走し、その上ビートの効き方が尋常でないので、他に例のない凄みで迫ります。【湧々堂】

EMI
CZS-5750912(2CD)
ヴォルザーク:交響曲第8番*、
 スラブ舞曲第8番**、
ヤナーチェク:タラス・ブーリバ、
クレイチー:管弦楽のためのセレナード、
ノヴァーク:交響詩「タトラ山にて」、
ショスタコーヴィチ:祝典序曲、
マルティヌー:交響曲第5番#、
スメタナ:モルダウ#、
マーハ:ジャン・リフリークの死と主題による変奏曲
カレル・アンチェル(指)
チェコPO、ACO*、ウィーンSO**、トロントSO#

録音:1950年〜1971年
ノヴァーク、クレイチー以外はステレオ録音
“アンチェル美学の集大成! ステレオ録音によるアンチェルの「ドボ8」!”
 1970年のコンセルトヘボウ管との「トボ8」のステレオ・ライヴ録音が、アンチェル芸術の粋を結集した大名演!全ての音が灼熱色に染め抜かれ、一切の弛緩を許さぬ激流で圧倒し続けます。ティンパニの強打、間合いの妙、第1楽章コーダや終楽章のホルンの激烈トリル、第3楽章でのポルタメントを排した真のリリシズムなどの全てが心に響き、名門コンセルトヘボウ管の音色美と共にこの上ない感動をもたらしてくれます。なお、この演奏はTAHRA盤でも発売されましたが、音質は断然こちらが上。
 トロント響のサウンドがチェコ・フィルのそれのように高純度の音像で迫るマルティヌー('71)もライヴならではの暑さは漲る名演で、終楽章でホルンのパッセージが現れて以降、弦の高潔な精神が漲る響きと、それに続く迫真の高揚が見事。
 ウィーン響との「モルダウ」(Philips録音)の、かつてないクリアな復刻にも注目!「祝典序曲」('64)の気品と透明感溢れる演奏は、当時のチェコ・フィルの魅力が大全開で、冒頭の金管の深々と斉奏から音楽的な訴え掛けが強く、全く淀みのないリズムの活力も清潔な音像と相俟って比類なき魅力。
 クレイチーの「管弦楽のためのセレナード」
('57)も一度聴いたら虜になること必至!クレイチーは、メルティヌー等と共にスターリンの政策に対抗して徹底して全音階的な楽しい作品を遺した人。彼と親交のあったアンチェルの指揮はその楽しさに芸術的な香気を注入。第1楽章の無窮動的なリズムと色彩の沸き立ち、第2楽章のメランコリックな旋律美とショスタコーヴィチ的な苦悩の織りなす陰影が心に染みます。
 「スラブ舞曲
('58)は、これ以上にリズムの粋なセンスを感じさせる演奏を他に知りません!【湧々堂】

EMI
5757612[cfp](2CD)
ドヴォルザーク:交響曲第8番
交響曲第7番、交響曲第9番「新世界より」、
ロマンス、交響的変奏曲
チャールズ・マッケラス(指)
LPO、ECO他

録音:1991年、1994年(ロマンス)、1992年(変奏曲) 全てデジタル録音
“目から鱗!スコアをクリアに鳴らし切った痛快さ!”
 全声部に光を当てるマッケラスのこだわりがここでも全開ですが、特に異彩を放っているのが腹の底から音楽する喜びに溢れた第8交響曲!ここぞというパートの突出ぶり、オケの鳴りっぷりが尋常ではなく、終楽章最後の壮絶なクレッシェンドや、終楽章でのホルンのトリルの明瞭さなど、魅力は尽きません。ちなみに、終楽章後半で主題が再びチェロで静かに回想される箇所で、シルヴェストリ盤同様の版(通常聴かれるものと若干旋律が異なる)を採用しているのが興味深いところです。「新世界」の第1楽章冒頭、弦の旋律線のクリアな表出、深く沈静する佇まい、
 第3楽章のリズムのキレとティンパニ強打のバランス、終楽章最後の弦による主題ユニゾンの完璧なキマり方も、鮮烈この上なし。2枚で1枚分の価格とは、なんともったいない!【湧々堂】

ドヴォルザーク/DVORAK
交響曲第9番ホ短調Op.95「新世界より」

WEITBLICK
SSS-0198
ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」
マーラー:交響詩「葬礼」
ジョルジュ・プレートル(指)
シュトゥットガルトRSO

録音:1996年10月14日〜28日リーダーハレ、1998年6月28日リーダーハレ*
“表面的な愛情では追いつかない、色彩と歌とダイナミズムの饗宴!”
 プレーヤー再生前に一言!ドヴォルザークの「新世界」の後にマーラーがカップリングされていますが、最初にマーラーから聴かれることを強くお勧めします。
ニ作品品とも、各音楽に込めた作曲家の思いをこれ以上に追求し引き出すことは不可能と思われる超絶的な名演なのですが、まずはマーラー
 「復活」第1楽章の原型となった「葬礼」は、過去の録音は、珍曲の紹介程度の意味しか成さなかったものが多い中、これは一個の作品として完全に結実していることを実証した初めての例と言っても過言ではありません。暗さにばかり焦点を当てず、明暗をくっきりと描き、作品の潜在力を出し尽くしたこの演奏。特に灼熱のコーダの凄さは、当分これを超える演奏は出現しないでしょう。
 そのニュアンスの徹底注入ぶりは、ドヴォルザークも同じ。「新世界」の名演は数々あれど、録音の優秀さも含め、これ以上のものはかつて聞いたことはなく、こんな感動があり得るとは夢にも思いませんででした。
 第1楽章冒頭の弦の質感から、清潔なテクスチュアへの志向がはっきり伺えますが、続くホルンは硬質の響きで聴き手を覚醒させ、次の木管はとことんメロウに歌う…というように、各楽想への配慮と共感は、古今を通じて比類なし!主部以降も響きの硬軟の使い分けは尋常ではなく、そのそれぞれが他のニュアンスなど考えられないほどの説得力で迫ります。テンポ・ルバートも誰にも真似出来ない個性的なものですが、少しも押し付けがましくなく、どの部分を取っても瑞々しさが横溢。
 第2楽章では逆にテンポを動かさず、心の底からの呼吸の妙味で聴かるという、これまたこの巨匠ならではの奥義。
終楽章の感動に至っては筆舌に尽くせません!まず冒頭の1分間、相当の高速進行にも拘らず暴走に傾かない点にご注目!これほど全ての音が高度に結晶化し、根底から主張している演奏が他にあったでしょうか?この必死さ、夢中さは、現代においてまさに奇蹟と呼ぶしかありません。第1楽章同様、各楽想のニュアンスの炙り出しはここでも徹底敢行。単なるやりたい放題の爆演とは違う心の襞への訴え掛けが、月並みの名演とは桁違いなのをお感じいただけると思います。そして、聴後に訪れるのは、全身の血液を全てリフレッシュしたような爽快感!そんな後に、マーラーで落ち込む必要がどこにあるでしょうか!【湧々堂】

オクタヴィア
OVCL-00480
ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」
シベリウス:悲しきワルツ
イオン・マリン(指)チェコPO

録音:2011年4月3日
プラハ、プラハ城、スペイン・ホール・ライヴ
“チェコの伝統スタイルに寄りかからず自らの感性で作品を刷新!”
 急遽決まったこの東日本大震災チャリティーコンサートは、当初オケ側は小林研一郎に指揮を希望していたそうすが、予定が付かず、抜擢されたのがN響との競演でもおなじみのイオン・マリン。その演奏は準備不足など全く感じさせないどころか、チェコ・フィルに染み付いているこの作品への伝統的な演奏スタイルを根本から刷新したと言っても過言ではないほど、瑞々しいアプーローチが目白押しで、イオン・マリンの並外れた音楽センスを痛感するばかりです。
 第1楽章序奏から一音一音に丁寧に感情を込め抜き、その入念さが押し付けがましくならずに聴き手の心に自然に染み渡ります。主部は終始落ち着いたテンポで、デリカシーとダイナミズムを織りまぜた構築が魅力。第2主題は徹底的にテンポを落としてノスタルジー満点ですが、これも決して恣意的に響かないのです。その後のフルートの主題でも同様にテンポ落とし、音楽の流れが停滞してもおかしくないところですが、楽想間の間の取り方が絶妙なので、有機的なフレージングが弛緩することがないのです。
 第2楽章もマンネリズムは皆無で、呼吸がどこまでも深く、団員も改めてこの作品の素晴らしさに感じ入りながら演奏している姿が目に浮かびます。
 第3楽章はリズムの切れの良さが際立ちますが粗暴にならず、音に一定の品格が確保されているのはまさにチェコ・フィルの特色が生きた結果と言えましょう。
 終楽章も一切のけれん味を排したストレートな表現ですが、湧き上がる情熱を一旦熟成させてから放出するような独特の深みを湛えた音の塊に終始心奪われます。特に2:56からに音の厚みと腰のすわった安定感、神々しさは、かつてのチェコ・フィルからはあまり想像できないもの。6:29でも大きくテンポ落としますが、教会の豊かな残響とも見事に調和することで混濁することなく荘厳な音像を打ち立てることに成功しています。
 アンコールで演奏されたシベリウスがこれまた感動的!最初のピチカートを経てアルコで弾き始めてからの霊感に満ちたニュアンスに一気に鳥肌。アゴーギクをかなり大胆に施したフレージングは、これ以上不可能なほど内省的なニュアンスを育み慈しみぬかれており、5:37で打ち鳴らされるティンパニも前代未聞の意味深さ!
 なんとなく復興支援という慈善精神を満たすのではなく、こういう真に素晴らしい演奏と共に歩むことこそが日常を取り戻そうとする活力になるのではないでしょうか。【湧々堂】

SWR music
93-251
ノリントンの「新世界」
ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」
 序曲「謝肉祭」

◆ボーナスCD(74’03”)
「ザ・ベリー・ベスト・オブ・ノリントン」
ハイドン:交響曲第104番「ロンドン」〜第1楽章
モーツァルト:交響曲第40番〜第3楽章
ベートーヴェン:交響曲第8番〜第2楽章
ベルリオーズ:幻想交響曲〜第2楽章
シューベルト:交響曲第9番「グレイト」〜第2楽章
メンデルスゾーン:交響曲第4番「イタリア」〜第4楽章
シューマン:交響曲第4番〜第3楽章
ブルックナー:交響曲第4番〜第3楽章
チャイコフスキー:交響曲第5番〜第3楽章
マーラー:交響曲第2番「復活」〜第3楽章
ロジャー・ノリントン(指)
SWRシュトゥットガルトRSO

録音:2008年7月9−11日シュトゥットガルト・リーダーハレ、ベートーヴェンザール(ライヴ
“急ごしらえの共感からは生まれない渾身のダイナミズム”
 この「新世界」は言うまでもなくノリントンだけが許される代物。チャイコフスキーときよりも何倍も作品に対する親近性が感じられ、フレージングも渾身そのもの。フレーズの結尾に向かってクレッシェンドさせる手法も大いに功を奏して目の覚めるようなダイナミズムを獲得しています。しかしここであえて強調したいのは、序曲「謝肉祭」の空前絶後の素晴らしさ!いつも交響曲の「おまけ」のように収録され、お祭り騒ぎに徹するのは恥ずかしく、真面目に演奏すればちっともワクワクくしないという曲かと思いますが、ここでのノリントン、この両面を見事に融合したスタイルを確立し、最後まで聴き逃せないニュアンスの連続技を披露しているのです!
 演奏時間は9:21とごく標準的なテンポですが、まずそのテンポのセンスが抜群に良好。冒頭テーマの結尾はやはりクレッシェンドさせて、独特の遠近間を表出。これが音楽そのものに臨場感を与えています。第3主題の弦はもちろんノン・ヴィブラート、経過部の弱音フレーズも決してウェットになりませんが、共に共感の限りが尽くされており、嘘っぽさなど皆無。後半はハーモニーの色彩の華やぎ方が絶妙。内声を鮮明に抉り出すことによる陰影の綾にも心奪われます。金管も打楽器も前半以上にソリッドに立ち上がり、音楽はいよいよ大きく醸成。痛快さに走らず、シンフォニックな重みを堅持しながら毅然と曲を締めくくります。聴後は贅沢な食事をした後のような満足感を味わっていただけることでしょう。 【湧々堂】

BPR
BPR-002
ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」
スラヴ舞曲集第1集Op.46
ミシェル・タバシュニク(指)ブリュッセルPO

録音:2011年7月5、6日 スタジオ4
“タバシュニクの職人芸が光る、洗練美と民族色の絶妙な融合!”
 透明度の高いテクスチュアと洗練されたフレージングを駆使しながら、内声部を有機的に絡ませ、作品全体の構成感にも配慮しながら堅実に音楽を再現するタバシュニクのセンスが光る一枚です。
 「新世界」第1楽章序奏の丁寧なフレージングには本物の共感が宿り、清潔感も満点。これが全楽章を通じて貫徹されています。第2楽章も清々しさを感じさせ、第3楽章第2トリオをレガートで歌い上げるセンスの高さも必聴。
 終楽章は共感の熱さが最も迸り、6:43からのテーマの味わい深さは格別。コーダではアッチェレランドが掛かりますが、その作為を感じさせないしなやかな推進力もタバシュニクの芸の懐の深さを反映したものと言えましょう。
 更に素晴らしいのが「スラブ舞曲」。ヨーロッパで最高と評されるスタジオ4の音響効果も手伝って、響きは常にクリアでありながらシンフォニックな厚みも同時に引き出し、各曲の持ち味が余すところなく生かされています。まず第1曲の、感覚的な洗練さを超えた意外なまでの土俗的雰囲気に耳を奪われます。音の色彩も「新世界」とは異なる原色志向。
 第2曲はテンポ設定が実に鮮やかで、そこには共感の限りが尽くされています。第4曲の前半部分は単純なフレーズが繰り返されますが、その陰影の豊かさ、テンポの微妙な揺らぎと完全連動したニュアンスの変化の妙にビックリ。微に入り細に入り表情を付け過ぎると素朴な味わいが後退しかねませんが、
 第8曲では十分にリズムを沸き立たせながらも、ニュアンスの勘所だけを確実におさえ、あとはオケの自発性に任せたような伸びやかさです。物々しい響きで圧倒する演奏とは明らかに異なる手作り感をご堪能下さい。ソロ・パートの力量の高さにもご注目を。
 【湧々堂】

Serenade
SEDR-5035(1CDR)
カラヤンのドヴォルザーク&スメタナ
ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」
スメタナ:交響詩「モルダウ」*
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指)BPO

録音:(1)1957年11月28-29日、1958年1月5-6日、 1958年5月18-20日
(2)1958年5月18-20日* 全てグリューネヴァルト教会
音源:Angel (U.S.A.) ZS-35615 (4 Track Reel to Reel Tape, 7.5 IPS) 4トラック、19センチのオープンリール・テープ
“フルトヴェングラーの残り香とカラヤンの現代感覚が絶妙に融合!”
 2曲ともカラヤンの最初のステレオ録音。このディスクの魅力は、何と言ってもフルトヴェングラー時代の名残を思わせる深々とした響きと、カラヤンが早くも獲得していた独自の流麗な音楽作りのブレンド感。当時のBPOの響きを特徴付けているティンパニ、金管、弦の質感が、録音会場であるグリューネヴァルト教会(クリュイタンスのベートーヴェンやケンペの「チャイ5」もここで録音された)に見事に溶け合った美しさがまず格別です。
 「新世界」第1楽章冒頭のティンパニは、まさに鄙びた味わいで続く弦の奥深さも当時のBPOの魅力全開ですが、4:18以降の小結尾主題の研磨され尽くした美しさはカラヤンならでは。第2楽章の弱音の美しさに細心の注意を払い、スタイリッシュな印象を与えるのも、カラヤンのカラーを早くもオケに浸透させている手腕に改めて驚かされます。終楽章は内声の抉り出しなどせずに主旋律主体の進行ながら、音楽が平板化しないのも流石。
 「モルダウ」においても、早くもカラヤンレガートの片鱗が窺え、最初のテーマは一筆書きのように流麗に流れます。2:48からの狩りのシーンでのホルンのアルペジョ音型は純ドイツのワーグナー・サウンド!これら新旧の魅力が連綿と折り重なりながら進行する演奏の魅力は最後まで尽きることはありません。【湧々堂】

WEITBLICK
SSS-0131-2
ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」
 スラヴ舞曲第3番Op.46-3
エフゲニ・スヴェトラーノフ(指)
スウェーデンRSO

録音:1983年1月14日ベルワルドホール・ライヴ(ステレオ)
※英語、日本語、ドイツ語によるライナーノート付。
“晩年の重戦車モードに入る前のスヴェトラーノフが見せる一途な気迫!”
 「新世界」は、ロシア国立響との録音も個性的な名演として知られていますが、そのアグレッシブさはそのままに、ここでは録音はより鮮明で、スヴェトラーノフのダイナミズムが更に説得力を増して迫ります。全楽章を通じてテンポは速め。第1楽章冒頭のティンパニ・ソロなどでは、リズムにあの独特の粘着力を見せますが、基本的にイン・テンポで音楽を先へ向かって牽引する力が漲ります。硬いバチを用いたティンパニ強打も物を言い、サウンドの引き締め力も抜群。序第2主題ではたっぷりとテンポを落とし、得も言われぬ郷愁が滲みます。第2楽章は淡々と進行しながらも金管を伴う強奏で見せる響きの厚みと重量感はまさにスヴェトラーノフ節。終楽章は10:11という快速で進行しますが、驚愕はなんといってもそのコーダ!ティンパニのトレモロのまま、勝利の雄叫びのように締めくくる痛快さがたまりません!
 それ以上の名演と言いたいのがスラヴ舞曲!最初にゆったりとした風情と速いテンポの場面のコントラストがこれ程明瞭で、しかも互いに美しく調和している演奏があったでしょうか?柔らかいトランペットで始まるテーマ(1:36)の溜息混じりの情感、音像の奥行き感も想定外の素晴らしさで、涙を禁じえません! 【湧々堂】

King International
KKC-2024(2CD)
シュヒターの「新世界」
ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」*
レスピーギ:交響詩「ローマの松」*
ドヴォルザーク:交響曲第8番
スメタナ:交響詩「モルダウ」
ドヴォルザーク:スラヴ舞曲第10番ホ短調Op.72-2
ウィルヘルム・シュヒター(指)NHK響

録音:1959年3月21日、1959年11月8日(ステレオ・ライヴ)*、1959年10月4日(モノラル・ライヴ) 以上,旧NHKホール
“ただの鬼トレーナーではない!シュヒターの深い歌心と色彩感覚にご注目!”
 1959年から62年までN響の常任指揮者を務めたドイツの指揮者シュヒターの、厳しいトレーニングの成果を凝縮した貴重な録音集。
シュヒターのお披露目演奏会である「新世界」は、トスカニーニ張りの快速テンポで厳格な構成力が際立つ演奏。第1楽章の第2主題では明確に減速処理を行い、続くフルートの小結尾主題もノスタルジックな性格を確実に刻印するなど、シュヒターの強固な意志に一切の揺るぎはありません。終結部のトランペットのクレッシェンドもスコアの指示を露骨なまでに厳守。終楽章も感傷を排したイン・テンポ進行。団員の決死の形相が眼に浮かぶほど緊張が渦巻いまています。シュヒターの唸り声も随所に聞かれます。
 それに対して「交響曲第8番」は、第1楽章の序奏からローカルな味わいを全面に出し、フルートソロも懐かしさを噛み締める風情を漂わせる、「新世界」と同じ指揮者とは信じがたいほど。主部に入ってからも推進力よりも濃厚なアゴーギクを盛り込みながら感情のひだに訴えるフレージングを敢行。2:22からの弦のフレーズのなんと物憂げなこと!第2楽章の滑り出しも同様に憂い満点。呼吸の大きさと余韻の深さが心の響きます。
 更に第3楽章では後ろ髪をひかれる風情がますます濃厚となり、第2主題直前で一旦ルフト・パウゼを挿入してからテンポを落として中間部へ入るその情感たるや、溜息が出るばかりです。3:28からの弦のフレージングでは、掛けられる全ての箇所にポルタメントを付加しますが、嫌らしいどころか音が結晶化し切っているので芳しさの限り!終楽章冒頭のファンファーレはごく標準的なテンポで始まりますが、続くチェロの主題はこれまた郷愁の塊!主部はまさにシュヒターならではの厳格な構成力を駆使して凝縮力の高い演奏を展開しますが、それでも「新世界」終楽章のような向こう見ずな推進力とは別物。
 驚愕の名演がスラブ舞曲!全曲の中で最も感傷的なこのOp.72-2の性格を更に押し広げ、緩急自在の即興的なテンポ変動を交えながら感情の揺れをここまで徹底的に炙り出した演奏が他にあったでしょうか?しかも中間部との音像コントラストの実に鮮やかなこと!
し かし、全収録曲の中で白眉は「ローマの松」でしょう。まず驚くのが音質の良さ!「新世界」同様ステレオ収録ですが、こちらは放送のために万全の体制で行われた録音(拍手なし)で、ホールの空間的な広がりまで見事に捉えられています。妥協のないリズムの躍動はもちろんのこと、「カタコンブ」に象徴されるように幻想的な音の色彩の表出と、しなやかなフレージングの訴求力の高さ、綻びが皆無に近いアンサンブルの質の高さなど、驚異の連続!。そして最後は、恐ろしく陰影の濃いド迫力の「アッピア街道」に打ちのめされることになります。【湧々堂】

豪ELOQUENCE
4768482[EL]
ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」
チェロ協奏曲 ロ短調*
アンタル・ドラティ(指)ACO、
コリン・デイヴィス(指)ACO*、
ハインリヒ・シフ(Vc)*

録音:1959年、1980年* ステレオ録音
“当時のACOの威力を知るのに不可欠の歴史的名演!”
 ドラティの「新世界」といえばDECCAのフェイズ4録音が有名で、このステレオ初期の録音はすっかり忘れられているのが現状。しかし、最初数分を聴けば、正に歴史的と呼ぶに相応しい名演奏であることは疑いようもなく、なぜ影に追いやられてしまったのか不思議でなりません。DECCA録音では極めて厳格にアーティキュレーションを施し、それがかえって息苦しい感もなきにしもあらずでしたが、この録音はそれとはまるで別人!もちろん全体の造型には厳しさが漲っていますが、何よりも音楽が生き生きと沸き立っているのが実に新鮮で感動を呼びます。第1楽章序奏の丁寧なフレージングから惹きつけられるものがありますが、ティンパニの固く熱く安定感抜群のティンパニの打ち込みでノックアウト。主部に入ると相当の高速で駆け抜け、しおの厳格な精神力溢れる進行が実に見事。自在にフレージングが息づき、ニュアンスが自然と表出している点も特筆ものです。そして、第2主題のキリッとしたアクセントの瑞々しさ!コーダでは渾身のアッチェレランドが掛かりますが、恣意的な印象は一切与えず、正に音楽の流れに相応しい表現として迫真の説得力を持って迫ります。これがスタジオ録音で敢行されたのですから、本当に驚きを禁じ得ません。
 第2楽章の音像をぼかすこのとない明確は表現。冒頭序奏からはっきりと音のニュアンスを伝えようとする意思が感じられます。イングリッシュ・ホルンのソロもか太くて明朗。しかも味わいがあります。
 第3楽章はバーンスタインばりの高速テンポ。深み満点のティンパニから弦が橋渡しをする瞬間の緊迫の空気!2つのとりお主題の純朴なニュアンスも聴きもので、特に第2トリオで頻出する木管のトリルの巧さと意味深さは格別です。
 終楽章も全声部が渾身の鳴りっぷりを示し、終始手に汗握る凄演!4:37からのフルートで主題が回帰する箇所は、なぜか最初の音符を符点音符に変更しており、その真意は不明ですが、それが実に味!最後にテーマを弦のユニゾンで再現する箇所は決然とした意思の凝縮力が見事で、ACOの響きの均一感を再認識。そしてコーダはこれまた決死のアッチェレランドを敢行しますが、その全くブレを生じない灼熱の駆け上がりは正に圧巻!最後の音符に付されたフェルマータが、かくも真の余韻と奥深さをもって響いた例も滅多にないでしょう。メンゲルベルク後のACOがいかに凄い集団であったかを知る上でも、これは欠かせない一枚です。
 カップリングのチェロ協奏曲も推進力に満ちた素晴らしい演奏。レスポンスが俊敏でありながら表現が小さくなることのないシフの音楽つくりを堪能できます。デイヴィスの指揮も入魂。【湧々堂】

仏DECCA
464-087
ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」
チェロ交響曲*
ロリン・マゼール(指)ベルリンRSO
モーリス・ジャンドロン(Vc)、
ハイティンク(指)ACO*
“直截なダイナミズム!若きマゼールの理性スレスレの没入!”
' 60年代のマゼールの直情と知性が一丸となって炸裂した快演!誰も予想し得ないアイデアを引き出し、それを露骨に強調することの多いマゼールですが、この「新世界」では、その知的好奇心と抑え切れない曲への共感が切り離されることはなく、瑞々しい音楽に仕立て上げています。全体にテンポは速めで、特に第3、第4楽章の快速ぶりと鋭利なリズムの放射は、数多い録音の中でもトップクラスですが、ただ乱暴に突き進むのではなく、トスカニーニをよりフレッシュにしたような音像が鮮烈!
 しかもそこに独特のアイデアを惜しげもなく注入し、ここぞという部分で躊躇わずに隠し玉を出す痛快さは、若きマゼールでなければ成し得ないものです。第3楽章での、第2主題が出るぎりぎりまでインテンポで通し、ルフト・パウゼを挟んでからガラリとテンポを変えて第2主題に入る切り替えしの冴え、終楽章コーダで弦がユニゾンでテーマを熱く再現する際に、全ての音を切ってアクセントを付けるなど、本物の感性の賜物です!【湧々堂】

ORFEO DOR
ORFEOR-395951
ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」
 ヴァイオリン交響曲、
スメタナ:歌劇「売られた花嫁」序曲
カレル・アンチェル(指)チェコPO、
ヨセフ・スーク(Vn)

録音:1963年 モノラル・ライヴ録音
“チェコPO、ザルツブルク音楽祭初参加時の渾身のライヴ゙!”
 アンチェルの「新世界」は、スタジオ録音があまりにも感動的な出来栄えなので、これ以上別のディスクは必要ない、と思ったら大間違い!ここではそのスタジオ盤では見逃されやすい、拘りぬいた明確なアーティキュレーション、惜しげもないパッションが一層完熟した凄演が繰り広げられています。
 まず、第1楽章コーダのティンパニの灼熱のクレッシェンドなどの個性的解釈が、ライヴとは思えぬ完成度でビシッと決まるのに驚愕!しかも冷徹さは皆無。熱い共感の全てを注入して圧倒的な感銘をもたらし、聴き慣れた曲ながら、初めて聴くような鮮烈さを覚えます。VPOと錯覚する程のチェコPOの弦の美音にも是非ご注目を!
 ヴァイオリン協奏曲
は、そんなアンチェルの資質とスークの持ち前の端麗さが融合し、お国物の強み以上の説得力を持って迫ります。モノラルながら音質良好。【湧々堂】
MERCURY
431-3172
ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」
シベリウス:交響曲第2番
ポール・パレー(指)デトロイトSO

録音:1960年、1959年  ステレオ録音
“トスカニーニもびっくり!テンポを意地でも変えずに驀進する「新世界」!”
 名匠パレーの音楽信条が、フランスもの以外でも決して変わることがないことを痛感させる、圧倒的迫力に魅した演奏です。もはやここでは、「テンポ・ルバート」「アゴーギク」といった表情に応じてテンポを変えるという概念自体が存在しないかのように、こうと決めたらそのテンポを最後まで押し通すのです。その徹底ぶりといったら、トスカニーニ以上かもしれません。
 とにかく、第1楽章の第2種主題に入っても全くお構いなしというのには唖然とするばかりですが、全体の構築が非常に引き締まり、音の一つ一つに十分なカロリーも感じさせるため、全く無機質な印象を与えず、その一見無表情なフレージングも、妙に心に訴え掛けるものを持っているのです。この独特の求心力は、ハマる人はハマります!もちろんシベリウスも同様。【湧々堂】

DG
457-6512
ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」
序曲「オセロ」
クラウディオ・アバド(指)BPO

録音:1997年 デジタル・ライヴ録音
“気迫全開!アバドの表現意欲が噴射した目の覚める快演!!”
 アバドは、チャイコフスキー、ドヴォルザークといった民族色の強い作品において、自らの呼吸を完全に内包し尽くした時に凄い名演を繰り広げますが、これはその好例。アバドの全ての交響曲録音の中でも指折りの迫真の名演でしょう!BPOも昔からドヴォルザークとの相性は抜群のものがありますが、これほどの有名曲にもかかわらず惰性に流されず、久々に本来の機能性を惜しげもなく全開にし、全身で物凄いうねりを築いています。
 第1楽章は、提示部の繰り返しも絶対不可欠と思わせるだけの推進力と表情の多様性、説得力を持ち、第2楽章の歌も実にハイセンス!第2楽章は人生の黄昏そのものの色彩と優しい温もりに溢れています。第3楽章は鋭利なリズムの陰に宿る絶妙な陰影が印象的。終楽章ではヴォルテージが最高潮に達し、ふと現れる熱いカンタービレにも心を奪われます。
 ドヴォルザークの管弦楽曲の中でも最もドラマティックな「オセロ」は完全にヴェルディ調で、今までの誰よりも生々しい迫力で圧倒します。特にコーダは圧巻!【湧々堂】

メキシコ州立響
EB-19
ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」
ブラームス:大学祝典序曲*
エンリケ・バティス(指)
LPO、RPO*
“「新世界」第2楽章の信じ難い深遠さ!!”
 「新世界」は、同オケを振った「チャイ5」同様に正攻法に徹した名演。ノリで突っ走る瞬間など皆無!終始悠然たるテンポを貫き、丹念かつ格調高く表情を醸し出すという巨匠的威風を見せつけます。それはリズムが横溢する第3楽章でも変わらず、表情の抉り出しとスケール感が見事の一言。終楽章冒頭の弦で歌われる主題が、まるで後ろ髪を引かれるようにむせび泣く瞬間も忘れられませんが、
 白眉は第2楽章!どこまでも深い呼吸で全ての音から単なる郷愁を超えた余情を引き出し、一音たりとも聴き逃す訳には行きません。これはLPOの多くの録音の中でも、特に傑出した感動作と言えましょう。なお、この演奏もティンパニ・パートにLPO版とも言える独自の改変が施されており、感覚的にも新鮮。ブラームスは豪快な佳演。【湧々堂】


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